論文審査の結果の要旨
氏名:芦苅 大作
専攻分野の名称:博士(医学)
論文題名:前立腺癌における新規アンドロゲン応答遺伝子G3BP2の同定及び機能解析 審査委員:(主 査) 教授 増田 しのぶ
(副 査) 教授 槇島 誠 教授 吉野 篤緒 教授 相馬 正義
前立腺癌細胞において、アンドロゲンの代謝産物である dihydrotestosterone (DHT)は、androgen receptor (AR)に結合し、アンドロゲン応答遺伝子の androgen response element (ARE)に結合し転写 を促す。本研究は、アンドロゲン応答遺伝子の一つとして Ras GTPase activating protein (SH3 domain) binding protein 2 (G3BP2)を新規に同定し、前立腺癌の治療標的あるいは診断マーカーとして可能性 を明らかにするために、G3BP2 の機能解析を行ったものである。
本邦における前立腺癌の年齢調整罹患率は 2005~2009 年において第 4 位であるが、2025~2029 年に は第 1 位になると予測されている。前立腺癌は、手術療法、放射線療法、ホルモン療法、抗癌化学療 法により加療される。現在、AR を標的とした新規治療薬の開発が進む一方、治療経過中に癌が再燃し、
アンドロゲン非依存的に増殖する治療抵抗性獲得が臨床上の課題となっている。
芦刈氏は、まず AR 陽性ヒト前立腺癌細胞株 LNCaP 細胞を用い、ChIP-chip 法、ChIP-sequence 法に より AR binging site (ARBS)をゲノムワイドに検索し、得られた 9 遺伝子の中から G3BP2 遺伝子を同 定した。次に、G3BP2 promoter-Luc construct および、G3BP2 mutation-Luc construct を LNCaP 細胞 に導入し、G3BP2 がリガンド応答性に発現していることを明らかにした。LNCaP 細胞における G3BP2 の mRNA および蛋白質は、リガンド応答性に有意に増加することを示した。さらに、G3BP2 安定過剰発現 細胞株による G3BP2 高発現系ならびに siRNA を用いた G3BP2 抑制系を用いて G3BP2 の細胞増殖・遊走 能に対する影響を検討し、G3BP2 高発現系における細胞増殖、遊走能亢進を示した。また、日本大学医 学部附属板橋病院において前立腺全摘術が施行された前立腺癌 101 例について G3BP2 に対する免疫組 織学的検討を行った。G3BP2 の高発現は、 pathological T stage (p=0.01)、リンパ節転移陽性 (p=0.0011)、high Gleason score (GS ≧8, p=0.0001)と有意な相関関係を示し、臨床的悪性度の高い 症例との関係性が示された。
以上のように、研究計画は十分考案されたものであり、ChIP-sequence 法という次世代シークエンサ ーを組み合わせた新しい技術方法論を用いたものである。また、研究内容は G3BP2 のアンドロゲン応 答性ならびに細胞増殖、遊走能への関与を証明し、臨床検体における高悪性度群との関係性を明らか にしたものであり、今後の臨床的発展性が大いに期待できる優れた研究である。
よって本論文は,博士(医学)の学位を授与されるに値するものと認められる。
以 上
平成26年2月19日