吉
蔵
に
お
け
る
「四
種
声
聞
義
」再
考
奥
野
光
賢
(こ
論
題 に いう
「 四 種 声 聞 」 と は、 世 親 造 『 妙法
蓮華
経憂
波提
よ舎
』( 以 下、 『 法 華 論 』 と 略 す ) に 見 え る ( 一 ) 決
定
声 聞 、 ( 二 )増
上
慢 声 聞、 ( 三 ) 退 菩 提 心声
聞 、 ( 四 ) 応 化 声聞
の こ と で、 『 論 』 に は こ の 「 四 種声
聞
」授
記 に 関 す る 、 次 の よう
な有
名
な 一 文 の あ る こ と は 周 知 の 通 り で あ る。 声 聞有
四 種 。 一 者 決 定 声 聞、 二 者 増 上 慢 声 聞、 三 者 退 菩 提 心 声 聞、 四 者 応 化 声 聞 。 二 種 声 聞 如 来 授 記。 謂 応 化 者、 退 已 還 発 菩 提 心 者。 若 決 定 者 増 上 慢 二 種 声 聞、 根 未 熟 故 不 与 授 記, 菩 薩 与 授 記 者、 方 便 令 発 菩 提 心 故 。 ( 大 正 蔵 二 六 ・ 九 上 ) こ の 一 文 に対
す
る 吉 蔵 ( 五 四 九 − 六 二 三 ) の解
釈 を め ぐ っ て、筆
者
と末
光
愛 正 氏 に意
見
の 相 違 の あ る こ と は、 本論
集
第 一号
の 誌 上 に お い て や や詳
し く 述 べ た こ と が あ る煙
い ま そ の 結 論 と も い え る 要 点 を再
び記
せ ば 次 の よう
で あ る 。 駒 澤 短 期 大 學 佛 教 論 集 第 六 號 二 〇 〇 〇 年 十 月 す な わ ち、 筆者
が 、 吉 蔵 は 『 法 華論
』 の いう
四 種 声聞
の す べ て が最
終 的 に は 何 ら か の か た ち で授
記
さ れ る と 考 え て い た と す る の に 対 し、 末光
氏 は 『 法 華 経 』 「 方便
品 」 ( 大 正蔵
九・ 七 上 ) に いう
五 千 起 去 の 増 上 慢 と 決 定 声聞
は い か に し て も授
記 の 機 会 が な く、 し た が っ て 永 遠 に 不 成仏
で あ る と考
え て お ら ユ れ る と いう
こ と で あ る。 も っ と も、 末光
氏 は筆
者
の 批 判 を 受 ゑ け て、 決定
声聞
も 成 仏 で き る 決 定声
聞 と成
仏 で き な い 決定
声
聞
の 二 種類
に 分 け て考
え る べ き こ と を主
張 さ れ て い る か ら 、 ら 当 初 の氏
の 主 張 は 若 干 修 正 さ れ て い る と いう
こ と に な ろう
。 ぢ筆
者 は前
の 拙 稿 を も っ て、 原則
的 に は 吉蔵
に お け る 「 四 種 声聞
義 」 に 関す
る論
究 は な し 終 え た つ も り で い た が 、 今 回 「再
考
」 と 題 し て 改 め て こ の 問 題 を 扱う
こ と と し た の は 、 以 下 の よう
な 理由
に よ る 。 大 蔵 出版
社 よ り、 法華
経 注 釈書
集 成 を 刊行
中 の創
価
大
学
の菅
野 博 史 氏 は、 今 春 三 月、吉
蔵晩
年 の 『 法華
経 』 に対
す
る 注 一 五 三吉 蔵 に お け る 「 四 種 声 聞 義 」 再 考 ( 奥 野 ) あ ご 釈
書
で あ る 『 法華
統
略 』 六巻
の 全 訳 注 を完
成、 上 梓 さ れ た。菅
野 氏 は今
回 の 訳 注 研 究 を なす
に あ た っ て、 伊藤
隆寿
氏 の 「 三 さ 論 宗関
係
典籍
目録
( 稿 ) 」 を 参 照 し 、 現 在 披見
し 得 る す べ て の 『 統 略 』 の 写 本 を 閲 覧 ・ 調査
し て 、名
古屋
真福
寺宝
性 院 に 所蔵
さ れ る 『法
華統
略 』 を 底本
と し て 採 用す
べ き最
も 信 頼 で き る 写本
で あ る と確
定 す る と とも
に 、 同 写本
中
に こ れ ま で散
逸 し た と 思 わ れ て い た 『 統 略 』 の 「薬
草 喩 品 」 「 授 記 品 」 「 化城
喩 品 」 の 釈 文 が 存在
す
る こ と を発
見
さ れ た の で あ る 。菅
野 氏 の新
発 見 に よ っ て 、 失 わ れ た と 思 わ れ て い た 『 統 略 』 の 釈 文 が む ゴ復
元 さ れ、 『 統 略 』本
来 の 全 貌 が ほ ぼ 明 ら か に な っ た こ と は、今
後 の 吉 蔵 研 究 ば か り で な く中
国法
華思
想
の 研 究 に と っ て も 大 き な 意義
の あ る こ と で あ っ た と い え よう
。菅
野 氏 の 訳 注 を 紐解
い て 見 る と、 氏 が新
発見
さ れ た部
分 に は、 こ れ ま で 知 ら れ る こ と の な か っ た 、 次 の よう
な 「 四 種 声 聞義
」 に関
す る記
述 も 存 在 す る こ と が 明 ら か に な っ た の で あ る 。 前 後 の 文 脈 を無
視
し て、 こ れ を 示 せ ば 以 下 の 通 り で あ る 。 至 法 華 約 四 声 聞、 明 有 四 句。 一 者 頓 度 不 中 息、 即 応 化 声 聞。 二 中 息 不 頓 度、 謂 決 定 声 聞 。 三 亦 頓 度 亦 中 息、 即 退 大 心 声 聞。 昔 為 菩薩
欲 度 五 百、 中 途忘
失、 作 於 声 聞、 故 度 三 百、 令 聞 法 華 更 度 二 百 也 。 四 不 頓 度 亦. 不 漸 度、 増 上 慢 声 聞 及 一 切 愛 見 凡 夫 是 也 。 乃 至 夢 中 亦 起 愛 見、 貪 名 楽 利。 況 白 日 耶。 ( 菅 野 『 統 略 』 ( 下 ) 七 三 六 頁 ∀ 一 五 四 こ こ で は特
に 『 法華
論 』 の 「 四 種声
聞
」 と 明 示 さ れ て い る わ け で は な い が 、意
味す
る と こ ろ か ら 推 し て、 こ れ が 明 ら か に 『 法華
論 』 の そ れ に 基 づ い て い る こ と は 疑 い な い と こ ろ で あ ろう
。 そ れ ゆ え、 こ の 一 文 の 解 釈 を中
心 に 、 い ま 一 度 吉 蔵 に お け る 「 四 種 声聞
義
」 に つ い て考
え て み よう
と思
い 立 っ た 次第
で あ る 。 「再
考 」 と 題す
る所
以 で あ る 。 ( 二 ) い ま 示 し た 問 題 と す る 記 述 は、 宝 性 院 本 『法
華
統 略 』 巻 下本
「 釈 化 城 喩 品 」 の 「 五 百 由 旬義
」 を 述 べ た 箇所
に 存 す る 。周
知 の よう
に 「 五 百 由旬
義 」 と は 、 「 五 百 由 旬 」 と いう
険 難 な 長 い 悪 道 を 越 え て 宝 処 に 至 ろ う とす
る 隊 商 と そ の リ ー ダ ー を 仏 陀 と 弟 子 た ち に 譬 え 、 仏 の 涅槃
を 宝 処 に 、疲
労 と 恐 怖 の あ ま り中
途 で 引 返 そ う とす
る 隊員
に 休 息 と安
堵
を与
え る た め に、 三 百由
旬
を 過 ぎ た所
で リ ー ダ ー が方
便 に よ っ て 化作
し た 城 を 二 乗 の 涅 槃 に 譬 え た も の で あ る 。す
な わ ち、 二 乗 の 涅 槃 は最
終 的 な目
的 で は な く、 仏 の 涅 槃 こ そ 究極
の 目 的 で あ る が、最
初 か ち こ れ を 説 い た の で は、 そ れ が あ ま り に 遠 大 で あ る た め、 志 の 小 さ い 人 々 は 怖 じ 気 づ い て し ま う 、 そ こ で 中 途 で方
便
と し て 二乗
の 涅 槃 を 説 い て 元気
づ け、 最 終的
に 仏 の 涅 槃 に導
く、 と いう
譬 喩 で あ る 。 し た が っ て、 常識
的
に は 五 百由
旬
わ た を度
れ ば 、 成 仏 の 流 れ に 入 る こ と が で き る と いう
こ と に な ろ( 10 )
う
か と思
う
。 さ て、 問 題 の記
述 は、 次 の よ う な も の で あ る 。改
め て 文 脈 が わ か る よ う、 こ れ を 示 し て み よう
。 次 論 今 昔 度 義。 問 日、 昔 有 度 五 百 不。 答 日、 有 也。 令 声 聞 人 但 度 三 百、 令 菩 薩 度 五 百 。 故 智 度 論 釈 聞持
品、 辨 菩 薩 度 四 百 由 旬 。 三 百 即 三 界、 四 百 謂 二 乗 。 問 日、 大 品 己 明 度 五 百、 応 己 辨 化 城。 与 法 華 何 異 。 答 日、 大 品 為 菩 薩 己 熟 二 乗 根 性 猶 生、 直 辨 凡 夫 二 乗 皆 是 悪 道、 故 須 度 之 。 未 明 二 乗 是 化 城 也 。 至 法 華 約 四 声 聞、 明 有 四 句 。 一 者 頓 度 不 中 息、 即 応 化 声 聞。 二 中 息 不 頓 度、 謂 決 定 声 聞 。 三 亦 頓 度 亦 中 息、 即 退 大 心 声 聞 。 昔 為 菩 薩 欲 度 五 百、 中 途 忘 失、 作 於 声 聞 、 故 度 三 百 、 令 聞 法 華 更 度 二 百 也 。 四 不 頓 度 亦 不 漸 度、 増 上 慢 声 聞 及 一 切 愛 見 凡 夫 是 也 。 乃 至 夢 中 亦 起 愛 見、 貪 名 楽 利 。 況 白 日 耶。 ( 菅 野 『 統 略 』 ( 下 ) 七 三 六 頁 ) す な わ ち、 こ れ は昔
( 『 法 華 経 』 以 前 ) に も 「 五 百 由旬
」 を わ た 度 る こ と を 説 く こ と が あ っ た か と の 問 い に 対 し て、 い か に も 『 大 品 般 若 経 』 が そ れ を 説 い て い る が、 そ れ で は 『 大 品 経 』 と 『 法華
経 』 の 違 い は ど こ に あ る の か と 再 び 問 わ れ て い る 場 面 で あ る 。 と こ ろ で、 こ の 『 統 略 』 の 記 述 は、 明 ら か に 『 法 華玄
論 』 吉 蔵 に お け る 「 四 種 声 聞 義 」 再 考 ( 奥 野 )巻
第 八 「 化城
喩 品 ・ 五 百 由旬
義 」 の 次 の 箇所
に 対応
す る 。 次 引 証 。 問、 此 釈 出 何 処 文 耶 。 答、 釈 論 解 大 品 聞 持 品 云、 菩 薩 度 四 百 由 旬 則 去 仏 道 不 遠 。 論 云、 三 百 喩 三 界 、 四 百 喩 二 乗 地。 菩 薩 度 此 二 地、 知 必 作 仏 。 但 大 品 合 二 乗 為 一 百、 法 華 開 為 二 百 。 雖 開 合 不 同 意 無 異 也 。 問、 大 品 已 明 此 譬 者、 与 法 華 何 異 耶 。 答、 大 品 但 明 菩 薩 度 凡 聖 二 地 。 未 明 二 乗 為 権 。 猶 闕 化 城 之 意 也 。 問、 既 未 辨 化 城、 亦 応 未 明 宝 所 耶 。 答、 大 品 已 明 顕 実 相、 故 辨 宝 所。 猶 未 開 権 故 不 明 化 城 也 。 ( 大 正 蔵 三 四 ・ 四 二 八 中 )問、 釈 迦 舎 那 教 門 明 度 云 何 耶。 答、 舎 那 直 説 一 乗。 明 頓 度 法 門、 直 令 菩 薩 度 於 五 百 也 。 釈 迦 初 三 後 一 具 漸 頓 義。 昔 已 令 諸 子 度 三 百、 今 復 令 度 二 百 。 謂 漸 度。 若 為 始 発 心 菩 薩、 説 法 華 経 即 令 頓 度 也 。 問、 昔 亦 明 頓 度 不 耶。 答、 昔 為 菩 薩 亦 令 頓 度 五 百 。 如 大 品 四 百 之 喩、 但 未 明 三 百 為 化 城 耳 。 問、 昔 未 明 三 百 為 化 城、 亦 応 未 明 五 百 悪 道 。 答、 二 乗 是 仏 道 大 患 。 是 故 已 説 是 悪 道 。 但 二 乗 根 縁 未 熟 故、 } 五 五
吉 蔵 に お け る 「 四 種 声 聞 義 」 再 考 ( 奥 野 ) 不 得 明 化 城 也 。 問、 昔 度 今 度 何 異 。 答、 昔 但 令 菩 薩 度 五 百、 令 二 乗 度 三 百 。 今 教 令 菩 薩 度 五 百、 明 二 乗 人 已 度 三 百、 但 令 更 度 二 百 耳 。 〔 大 正 蔵 三 四 ・ 四 二 九 下 − 四 三 〇 上 ) こ こ で 注
意
し て お き た い こ と は、 『 玄論
』 に は 四 種 声聞
に関
す
る 記 述 は見
ら れ な い と い う こ と であ
る 。 し た が っ て、 四 種声
聞
に 絡 め て 「 五 百 由旬
」 を度
る義
を論
ず る の は 晩 年 の 注 釈書
で あ る 『 法華
統 略 』 の 一 つ の特
徴
と い え る の か も し れ な い 。 そ れ は と も か く 、菅
野 『 統 略 』 ( 下 ) の 脚 注 に よ れ ば、 宝 性院
本
が 対 校 し た と 思 わ れ る 「 或本
」 に は、前
の記
述 に 続 け て ハ 次 の よう
な記
述 も存
在す
る と いう
。 又 有 四 種 過 二 乗。 一 発 心 過。 涅 槃 経 云、 発 心 已 為 天 人 師、 勝 出 声 聞 及 縁 覚。 智 度 論 云、 以 飛 言 之、 則 鳥 勝 於 人 。 二 勉 退 為 二 乗、 故 言 過。 位 在 十 信 中 第 六 不 退 信、 或 在 十 住 心 。 三 者 断 惑 過 。 依 摂 大 乗 、 従 十 行 第 六 去 心 、 伏 法 惑、 過 二 乗 。 四 究 竟 過 。 乃 至 仏 也。 又 有 四 句 。 一 頓 度 非 漸 度 、 即 直 往 菩 薩、 発 心 修 行 、 超 彼 二 乗 。 二 漸 度 非 頓 度、 謂 本 乗 声 聞。 初 度 三 百、 後 度 二 百 。 三 亦 頓 度 亦 漸 度、 謂 退 菩 提 心 声 聞 。 初 発 菩 提 心、 即 欲 度 五 百 、 名 之 為 頓。 而 中 途 証 小 乗 度 三 百、 次 聞 法 華、 後 度 二 百、 名 之 為 漸。 四 非 頓 非 漸 度、 即 凡 夫 之 流 。 又 此 四 句 即 四 声 聞 。 初 是 変 化 人、 一 五 六 次 是 決 定 人、 三 是 退 菩 提 人、 四 是 増 上 慢 人 。 問、 云 何 頓 与 漸 耶 。 答、 如 直 往 之 人、 無 有 中 間 息 証 二 乗、 故 名 頓 度 。 如 退 大 心 人、 中 間 息 証 二 乗、 故 名 為 漸 也 。 ( 菅 野 『 統 略 』 ( 下 ) 七 三 六 ー 七 三 七 頁 V こ れ ら の記
述 が も とも
と 『 統 略 』 に あ っ た も の な の か、 後 コ ユ 人 の加
筆 に よ る も の な の か は 判 断 に 苦 し む と こ ろ で あ る が 、 示 さ れ て い る 前 後 の 四句
は 相 互 に連
関 し、 いず
れ も 同 じ範
疇
に あ る も の と し て使
わ れ て い る こ と が わ か る 。 し た が っ て、 そ の 点 を 念 頭 に 入 れ て 、 前 後 の 文 を 読 み 解 い て み る と 、決
定
声聞
は 本乗
声
聞 に等
し く、 こ れ ら の 声 聞 は 「 五 百 由旬
」 の中
に わ か 途 ( 三 百 由 旬 の 地 点 ) で 休息
し、 頓 に ( 一 気 に 五 百 由 旬 を ) 度 る こ と は な い が、 の ち に は 後 半 の 二 百 由 旬 も度
る と いう
理 解 が導
か れ よう
。 し た が っ て、 常 識 的 に 考 え れ ば 、 決定
声
聞
↑
本 乗 声 聞 ) も 五 百 由 旬 を度
っ て 成仏
の 流 れ に 乗 る こ と が で き る と考
え る の が 一 般 的 で は な い か と 思 う の で あ る 。 も っ と も 、 筆者
はす
で に 別 の 文 脈 に お い て、 『法
華
統 略 』 で は 決定
声聞
と 本 乗声
聞
は 等 し い も の と さ れ て い た こ とを
論 証 た し、 決 定 声聞
も 成 仏 で き る 文 例 を 明 示 し て い た か ら、末
光
氏 は い ま の例
も
あ く ま で そ れ と 同 類 の も の で あ る に 過 ぎず
、 こ の例
は 二 種類
に 分 類す
べ き 決定
声聞
の う ち の 一 つ の 用例
に 過 ぎ な い と い っ て、筆
者
の 意 見 に 取 り 合 わ な い で あ ろう
。 し かし 、 繰 り 返 す が 筆
者
が 前 稿 に お い て 指摘
し た 文 例 は、 問、 仏 滅 度 後 羅 漢 、 凡 有 幾 人 。 答、 有 二 種 羅 漢 。 一 有 大 機 而 未 熟、 故 不 値 仏 聞 法 。 二 無 大 機、 故 不 値 人 聞 法 。 故 法 華 論 有 二 種 声 聞。 有 大 機 者 謂 退 大 取 小 人 。 無 大 機 者 謂 是 決 定 声 聞 。 問、 此 二 人 同 生 浄 土 。 有 何 異 耶 。 答、 悟 有 早 晩 。 根有
鈍 利 。 問 、 住 羅 漢、 幾 時 而 悟 。 答、 楞 伽 云、 至 無 量 億 劫 、 耽 小 乗 空 三 昧 楽。 猶 如 酔 人 、 久 久 方 醒 。 ( 卍 続 蔵 一 ・ 四 三 ・ 一 ・ 三 〇 右 上、 菅 野 『 統 略 』 ( 上 ) 三 二 二 頁 ) と あ る よう
に、 「 法華
論 の 二 種 声聞
」 と 明確
に規
定
さ れ て い た 「 決 定声
聞 」 な の で あ る 。 そ し て い ま見
た よう
に、 「 化 城 喩 品 」 の 釈 文 に 見 ち れ る 「 決 定 声 聞 」も
明 ら か に 『法
華
論 』 の 四 種 声 聞 を 意 識 し た も の な の で あ る 。 と いう
こ と は、 吉 蔵 に は 『 法 華 論 』 の いう
「 決定
声 聞 」 も 成仏
で き る と いう
認 識 が あ っ た 何 よ り の 証 左 と い え は し ま い か 。筆
者
に と っ て 重 要 な の は、 こ の こ と な の で あ る 。 こ れ に 対 し て、 『 法華
論 』 の いう
増 上 慢声
聞 は 一 切 の 愛見
の 凡 夫 と と も に 「不
頓度
亦不
漸
度 」 「非
頓 非漸
度
」 と さ れ、 五 百 由旬
の 険 難 な 道 の り を度
れ な い と さ れ て い た 。 と す る と、 や 吉 蔵 に お け る 「 四 種 声 聞義
」 再 考 ( 奥 野 ) は り 増 上 慢 声聞
は 不 成 仏 と いう
こ と に な る の で あ ろう
か 。 そ こ で、 次 に は増
上 慢 声聞
、 わけ
て も末
光 氏 が 永遠
に不
成 仏 と す る 五 千 起 去 の増
上 慢 の 扱 い を、 主 と し て 『 法華
統 略 』 中 に 見 る こ と に よ っ て、 さ ら に こ の 問 題 を 考 え て 見 る こ と に し た い 。 ( 三 ) 五 千 起 去 の増
上 慢 を いう
『法
華
経 』 自身
が 後 の 経 文中
で 、 こ れ ら の 声 聞 に関
説
す る こ と が な か っ た た め、 そ の思
想 史的
意 味を
め ぐ っ て 後 世 さ ま ざ ま な議
論 の 的 と な っ た こ と は 周知
の 通 り で あ る 。 し た が っ て、 吉 蔵 の 解 釈 を 見 る前
に、 現代
の 諸 学者
の こ の問
題 に 対 す る対
応 を 見 て お く こ と も 、 あ な が ち 無 意 味 な こ と で は な い で あ ろう
。筆
者 の 管 見 に 触 れ たも
の で 、 代 表 的 な も のを
紹介
し て み る と 次 の よう
で あ る 。 まず
、 斎藤
明 氏 は 、 「 は た し て 一 仏 乗 は 例 外 な くす
べ て の 人 を 対象
に す る の であ
ろ う か 。 『 法 華 経 』 に お い て も、 「方
便
品 」 で は、 ブ ッ ダ に よ る 一 乗 思想
の 表 明 を前
に し て、 五 千 人 の 高 慢 ( 増 上 慢 ) の 衆 生 が席
を退
い て お り 、 そ れ を見
た ブ ッ ダ は、 か れ ら を 会 衆 の中
の 汚 れ で あ る と し て、 黙 っ た ま ま 、 そ の 退 さ 出 を 許 し て い る 」 と 五 千 起 去 の 増 上 慢 を 念 頭 に 置 い た 上 で、 三 乗 区 分 説 に 対 抗 す る 形 で、 一 仏 乗 を 宣 揚 し た 『 法 華 経 』 で あ る が、 そ の 受 け 手 の 姿 勢 に 関 し て は、 か な り 手 厳 し い も の 「 五 七吉 蔵 に お け る 「 四 種 声 聞 義 」 再 考 ( 奥 野 ) が あ る 。 同 経 に お け る 】 乗 思 想 は 、 一 見 き わ め て 包 容 力 が あ り、 楽 観 的 に す ぎ る の で は と 思 わ せ る 反 面、 そ の 受 け 手 に 対 す る 現 実 認 識 は、 恐 ろ し い ほ ど に ク ー ル で あ る 。 】 つ の 限 り な く 広 大 な 乗 り 物 ( 一 仏 乗 ) と、 乗 り 手 の 対 応 に お け る 事 実 と し て の 差 異 。 我 々 は、 こ の よ う な 両 面 を 見 据 え た 形 で は じ め て、 教 判 と し て の 『 法 華 経 』 の 一 乗 思 想 が 成 り 立 っ て い る お こ と も ま た、 見 逃 す こ と が で き な い の で あ る 。 と い い、 さ ら に 「
前
述
の よう
に 、 『 法 華 経 』 自身
がす
で に 厳 し い 現 実 認 識 を 示 し て お り、 こ の 点 で は 、 同 経 の 中 に 唯 識 派 の 〔 16 ) 種 姓区
分 説 に 連 な る 発 想 を み る こ と も不
可能
と は い え ま い 」 と 述 べ て い る 。 こ れ に 対 し て 現 代 に お け る 法 華 経 研究
の 第 】 人者
と 目 さ れ る 苅 谷 定彦
氏 は、 そ れ 故 に、 増 上 慢 と は 一 種 の 一 時 的 な 精 神 錯 乱 状 態 を 指 す も の と 理 解 す べ き で あ る。 即 ち、 あ る 人 を 指 し て 増 上 慢 と 言 う 場 合 、 そ の 増 上 慢 と い う の は そ の 人 の 本 性 を 規 定 す る よ う な 種 姓 論 的 な 規 定 概 念 で は 決 し て な い と い う こ と で あ る。 そ れ 故 に、 こ の 会 座 か ら 退 出 す る 五 千 の 四 衆 に 対 し て 法 華 者 団 が 増 上 慢 と き め つ け て い る の は 、 従 来 考 え ら れ て き た よ う な 厳 し い 排 他 的 な 意 味 合 い を も っ た も の で は 決 し て な い 。 む し ろ、 そ れ は 後 に 明 ら か に さ れ る よ う に、 〈 仏 乗 〉 と 一 五 入 い う 立 場 か ら の 救 済 の 余 地 を 十 分 に 残 し た 寛 容 的 な 判 定 な 【 17 ) の で あ る 。 ま た は、 増 上 慢 と は、 上 述 の 如 く 決 し て そ の も の に 対 す る 本 性 的 規 定 で は な く、 そ の 人 の 一 時 的 に お ち 入 っ て い る 状 態 で あ っ て、 あ く ま で も 一 過 性 の も の で あ る。 こ の よ う な 両 経 の 差 は、 『 迦 葉 品 』 が 種 姓 各 別 論 的 立 場 に あ る の に 対 し て、 『 法 華 経 』 の 〈 一 仏 乗 〉 説 に は 全 く そ の よ う な 思 想 は な く、 む し ろ そ れ に 反 対 す る 立 場 に 立 つ も の で あ る こ と か ら 必 然 的 に 生 じ て き た も の と 言 え よ う 。 『 法 華 経 』 の 〈 一 仏 乗 〉 と い う 立 場 は、 後 述 の よ う に 種 々 の 立 場 に あ る 衆 生 を 全 て 包 摂 す る も の で あ る か ら、 そ こ に は 、 あ る 立 場 を 捨 て て 〈 仏 乗 〉 に 転 向 せ し め る と か、 廻 心 せ し め る と か い う よ う な こ と は 本 来 的 に 存 在 し な い の で あ る 。 ( 中 略 〉 そ れ 故 に、 『 法 華 経 』 の 五 千 起 去 は そ れ の 排 他 性 を 示 す ど こ ろ か、 逆 に 反 対 者 の 存 在 を は じ め か ら 容 認 し て か か っ て い る も の で あ っ て、 『 法 華 礪〕 経 』 の 現 実 主 義 的 な 立 場 を 示 す も の で あ る と 言 え よ う。 と い っ て 、 前 述 の 斎藤
氏 と は対
極的
な 立場
に 立 っ て い る 。す
な わ ち、斎
藤
氏 が 五 千 起 去 の 増 上慢
に 一 分 不成
仏
説 に 連 な る 発 想 を 認 め ら れ る の に対
し、 苅 谷氏
は そう
し た見
解
を 真 っ向
か ら 否 定 さ れ て い る の で あ る 。 こ の よう
に 現代
の 学者
間 に さ え 、 両極
の解
釈 が 見 ら れ る と いう
こ と は 興 味深
い事
実
であ
るの と い え よ
う
。 さ て 、 そ れ は と も か く、 こ こ で 問 題 を再
び吉
蔵
に 戻 し て、 『法
華 統 略 』 中 に 五 千 起 去 の 増 上慢
の 扱 い を求
め て 見 る と、 吉蔵
は こ の 増 上 慢 に対
し て、 殊 の ほ か 厳 し い態
度
を と っ て い の る こ と が わ か る 。 例 え ば、巻
上 本 に は、 次 の よう
な 記 述 が あ る。 雨 大 法 雨 、 明 教 用 。 略有
四 種 。 謂 生 滅 遠 聞 歓 喜。 生 用 有 四 。 一 未 発 心 者 令 発 心 。 即 此 会 二 乗 及 五 道 衆 也。 二 已 発 心 者 令 増 長 。 謂 菩 薩 聞 是 法疑 網 皆 已 除 也。 三 已 増 長 者 令 成 熟 。 即 入 生 一 生 得 仏 者 也。 四 応 退 者 不 退 。 下 経 云、 聞 是 経、 乃 善 行 菩 薩 道 。 及 去 仏 道 近 者 也。 又 顕 。 天 雨 無 私、 不 潤 枯 木 。 即 五 千 退 席 者 也 。 又 顕 。 雖 説 無 心、 欲 令
聞
而 不 聴 。 又 欲 説 一 味 之 法 。 故 如 雨。 又 示 平 等 義、 如 雨 。 又 示 誨 而 無 惓 。 故 如 雨 。 ( 卍 続 蔵 一 ・ 四 三 ・ 一 ・ 一 六 左 上 − 下、 菅 野 『 統 略 』 ( 上 ) 二 入 一 頁 )記
述中
、傍
線 を 付 し た 「 天 雨無
私、 不 潤 枯 木 」 は、 『 注 維 摩 詰 経 』巻
第 一 の僧
肇
釈 に、 経 の 「 諸仏
威 神 之 所建
立 」 ( 大 正 蔵 の 一 四・ 五 三 七 上 ) を 釈 し て、「
肇
日 、 天 沢無
私、不
潤枯
木 。 仏 威 雖 普不
立無
根 。 所 建 立者
道 根 必 深也
」 ( 大 正 蔵 三 入 ・ 三 二 八 下 ) と あ る 記述
を 援 用 し たも
の であ
る こ と は 明 ら か で あ る 。 つ ま り 、 言 う と こ ろ の 意 味 は 、 雨 は平
等
に大
地 に降
り 注 ぎ 、木
々 吉 蔵 に お け る 「 四 種 声 聞 義 」 再 考 ( 奥 野 ) を 潤 し 成 長 さ せ る が、枯
れ 木 だ け は 潤 し よう
が な い ( 成 長 さ せ よ う が な い ) と いう
の で あ ろ う 。 こ う し た 譬 え は 即座
に 『 法 華 まり 経 』 「 薬 草 喩 品 」 の 三 草 二 木 の 譬 え を 想 起 さ せ る が、事
実
、 吉 蔵 は 『 法 華 玄論
』巻
第 一 に お い て、 又、 有 人 疑 、 若 大 慈 平 等、 何 故 衆 生 有 得 聞 法 有 不 聞 法 。 如 以 威 徳 力 令 五 千 之 徒 従 座 而 去。 是 故 釈 云、 天 沢 無 私、 不 在 無 根 。 非 仏 大 慈 不 平 等 也 。 此 釈 薬 草 喩 品。 晩 見 論、 破 大 乗 人 。 自 謂、 言 無 声 聞 明 法 雨 普 潤。 随 根 得 果 、 不 応 言 無。 此 証 上 能 化 功 徳 也 。( 大 正 蔵 三 四 二 二 六 入 中 − 下 ) と い っ て い る 。 前 述 の よ
う
に、吉
蔵 は 五 千 起 去 の 増 上 慢 を 枯 れ 木 に あ て て い る の だ か ら、常
識的
に考
え れ ば そ れ は 永 遠 に 不 成仏
で あ る と い わ れ て も、 に わ か に は 反 論 の 余 地 が な い こ と であ
る 。 吉 蔵 は 、 後 文 に お い て、 仏 が ま さ に 甘 露 の教
え を い た 垂 れ よう
と す る そ の と き に、 毒 を懐
い て席
を 離 れ る の が、 傷 む べ き こ と 深 き 五 千 の 増 上 慢 で あ り、 そ う し た 増 上 慢 の 「 罪 根 深 重 」 で あ る こ と は、 十 方 の諸
仏 も 抜 く こ と が で き な い も ハ ヨ の であ
る、 と も い っ て い る か ら 、 ま す ま す そ う し た 思 い を 強 く す る 。 ま た 、 『 統 略 』巻
上末
に は 、 仏 が 五 千 の 増 上 慢 を 起 去 さ せ た 理 由 を釈
し て、 次 の よう
に いう
箇 所 が あ る 。 問、 上 明 法 権 実 、 辨 人 真 偽 。 今 何 故 但 勧 信 一 乗 真 実 。 答 、 意 在 一 也 。 一 五 九吉 蔵 に お け る 「 四 種 声 聞 義 」 再 考 ( 奥 野 ) 釈 偈 文 。 頌 上 顕 障 方 便 者、 以 障 道 事 深 故、 上 但 略 説、 今 広 明 之 。 即 用 誡 勧 二 世 衆 生。 又 上 雖 明 退 席、 未 広 釈 起 去 所 由。 容 謂 仏 無 慈 猶 隔 五 千 。 慈 不 能 普、 故 委 曲 釈 之 。 前 広 釈 不 浄 衆。 以 誡 二 世 衆 生、 令 其 捨 小。 次 明 浄 衆。 勧 二 世 衆 生 使 其 求 大。 又 執 小 不 移。 現 在 障 不 聞 一 乗、 則 無 極 楽 因 。 未 来 不 成 仏、 失 極 楽 果 。 現 在 謗 大、 種 極 苦 因 。 未 来 堕 無 間、 受 極 苦 果。 此 過 為 大、 故 誡 二 世 也。 嘆 浄 衆、 令 習 大 捨 小。 故 永 断 極 苦 因 果。 習 大 、 故 得 極 楽 因 果 。 斯 事 不 軽、 故 勧 二 世 衆 生 令 求 大 。 ( 中 略 ) 衆 中 糟 糠 者、 上 明 有 不 堪 用、 今 辨 無 有 堪 用。 如 酒 米 堪 用 糟 糠 不 堪 用 。 問、 何 故 云 衆 中 之 糟 糠 。 答、 衆 中 之 不 堪 用 、 猶 如 糟 糠 。 故 揚 播 於 糠 而 棄 於 糟、 如 仏 威 徳 故 令 去 。 酒 米 堪 用、 喩 住 衆 也 。 酒 即 堪 飲、 如 住 衆 現 在 即 行 因 。 米 転 方 成 食、 喩 住 衆 未 来 得 果 。 糟 不 堪 食、 喩 去 衆 現 在 不 堪 行 因 。 糠 不 堪 転 成 食、 喩 去 衆 未 来 不 得 果。 又 酒 是 果、 米 為 因 。 去 衆 未 来 不 得 仏 果、 現 在 無 有 仏 因。 住 衆 具 此 二 也 。 又 糟 喩 於 教、 米 譬 於 理 。 直 往 及 迴 小 之 人、 因 三 乗 之 教、 得 一 乗 之 理 。 如 因 糠 得 米。 五 千 之 徒 守 三 乗 之 言、 如 得 糠 。 失 一 乗 之 理、 如 不 得 米 。 二 人 得 中 道 真 味、 養 性 陶 神、 如 得 酒。 五 千 之 徒 封 執 断 常 、 喩 如 得 糟 。 ( 卍 続 蔵 一 ・ 四 三 ・ 一 ・ 三 〇 右 下 − 左 下、 菅 野 『 統 略 』 ( 上 ) 一 六 〇 三 二 三 − 三 二 四 頁 ) 引 用 文
前
半 に 傍 線 を付
し た よう
に、 こ こ で 、 吉 蔵 は 「仏
に も も ヘ へ あ ヘ ヘ セ 慈 無 け れ ば、 猶 お 五 千 を 隔 つ と 謂う
容 し 。慈
は 普 き こ と能
わ ざ る が 故 に、委
曲 に 之 を 釈 す 」 と い っ て い る の だ か ら、 こ こ で の 吉 蔵 の 考 え は、 仏 の 「 慈 」 は普
く 及 ぶ も の で は な く 、 五 千 起 去 の 増 上 慢 に は 行 き 渡 ら な い と 判 断 せ ざ る を得
な いも
の と 思 わ れ る 。 ま た、中
略 を 挿 ん で 示 し た 引 用 文 後半
は 、 経 の 「 衆中
糟 糠 」 ( 大 正 蔵 九 ・ 七 下 ) を 釈 し た 部 分 で あ る が、釈
文
中 に 「糠
が 転 じ て 食 と 成 る に 堪 え な い の は 、 去 る 衆 ( 五 千 起 去 の 増 上 慢 ) が未
来 に 仏 果 を 得 る こ と が で き な い こ と を 喩 え た も の 」 で あ り 、 「 去 る 衆 ( 五 千 起 去 の 増 上 慢 ) が 未来
に 仏 果 を 得 ら れ な い の は、 現 在 に仏
因 が な い か ら であ
る 」 と あ る と こ ろ を 見 る と、 や は り 五 千起
去 の 増 上慢
に は 、 永 遠 に成
仏 の機
会 が な い と いう
解 釈 を 首肯
せ ざ る を得
な い と いう
気 分 に な っ て く る 。 と す る と、 こ れ ま で 五 千 起 去 の 増上
慢 にも
成 仏 の機
会 が あ る と し て き た筆
者 の 解 釈 は 誤 り だ っ た の で あ ろ う か 。 こ こ に来
て、 に わ か に 自信
が 持 て な く な っ て き た が、 い ま し ば ら く検
討 を続
け て み た い 。 ( 四 ) さ て、 『 統 略 』巻
上 末 の後
文 に は 、 経 の 「 鈍 根 小 智 人 」 ( 大 正蔵 九 ・ 十 上 ) を
釈
し て 、 次 の よう
に い う 段 があ
る 。 釈 鈍 根 小 智 人 。 即 是 五 千 之 徒 。 今 更 以 四 義 呵 之、 斥 余 保 教 未 悟 之 衆、 令 改 執 也 。 問 、 何 以 知 是 五 千 耶 。 答 、 前 実 得 羅 漢 必 信。 今 云 聞 而 不 信。 故 知 是 也 。 又 傷 五 千 退 席 故 悲、 見 三 根 堪 聞 故 喜。 将 説 一 乗、 而 悲 喜 両 集 。 故 叙 無 機、 謂 大 悲 門 。 述 歓 喜、 大 慈 門 。 又 喜 無 畏、 五 千 既 去、 不 復 憂 之、 不 受 畏 之 起 謗 也。 又 今 昔 相 対 。 昔 憂 三 根 不 受 畏 之 起 謗。 今 無 此 慮、 故 喜 無 畏 。 又 説 尽 理 之 法、 暢 衆 聖 之 心 。 是 故 喜 也 。 不 畏 謗 一 、 亦 不 畏 執 三、 故 無 畏 也 。 ( 卍 続 蔵 一 ・ 四 三・ 三 五 左 下、 菅 野 『 統 略 』 ( 上 ) 三 三 九 ー 三 四 〇 頁 ) 文 中 に 「 四 義 を 以 て 之 を 呵 す 」 と あ る 「 四義
」 が、 具 体 的 に 何 を指
す
の か は 、 こ の 『 統 略 』 の 記 述 か ら だ け で は不
明 だ が、 対応
す
る 『 法華
義
疏 』 の 釈 文 に、 舍 利 弗 当 知 下、 第 三 明 無 機 之 失 也。 凡 有 四 失 。 一 者 以 不 知 因 三 悟 一 故 名 鈍 根 。 如 守 指 忘 月。 二 者 楽 二 乗 法 称 為 小 智 。 則 但 得 人 無 我 故 也 。 三 封 執 小 教 名 為 著 相 。 四 保 小 究 竟 不 信 一 乗 名 為 橋 慢。 如 此 之 人、 已 離 法 席 。 汝 等 住 者 内 有 実 徳 不 同 彼 人 。 今 我 喜 無 畏 下、 第 四 見有
機 故 歓 喜 無 畏 。 説 】 乗 法 暢 於 仏 心 故 名 為 喜。 如 涅 槃 経 云、 心 喜 説 真 諦 。 故 知 衆 生 必 能 信 受 無 謗 法 吉 蔵 に お け る 「 四 種 声 聞 義 」 再 考 ( 奥 野 〉 之 畏。( 巻 第 四、 大 正 蔵 三 四 ・ 五 一 〇 中 ) と あ る と こ ろ よ り す れ ば、 『
義
疏 』 に いう
「 四 失 」 が 『 統 略 』 あ ね の 「 四義
」 に 相当
す る も の と 思 わ れ る 。 そ れ は とも
か く、 い い た ま 示 し た 『 統 略 』 で、 吉蔵
は 「 五 千 の 退 席 を傷
む が 故 に 悲 し み 、 三 根 の 聞 く に 堪 え る を 見 る が 故 に喜
ぶ 」 と述
べ て、 こ れ を 「 大 悲 門 」 と 「 大 慈 門 」 に対
応 さ せ て い る こ と が わ か る 。前
に 吉 蔵 は 「慈
」 は 五 千 起 去 の 増 上 慢 に は 及 ば な い よ う な主
張 を し て い た が 、 い ま の記
述 を 素 直 に読
む 限 り 、吉
蔵 は、如
来
は 「 悲 」 を も っ て 五 千 の 増 上 慢 を 退席
さ せ た の で あ り 、 「悲
」 ま は 五 千 の 増 上 慢 に も 及 ぶ と 理 解 し て い た こ と が わ か る 。 と こ ろ で、 吉蔵
は、 『 法華
義
疏 』 巻第
六 で は、 五人
の も の の た め に は 『 法 華経
』 を 説 く べ き で は な い と し て、 そ の 第 一 に 五 千 起 去 の 増 上慢
を あ げ 、 そ の 理 由 と し て 「 上来
皆
言 莫為
説
之 。亦
似若
無慈
。 何名
菩薩
。 是 故 釈 言 。 聞 必起
謗
。 無 益有
損
故
不 説 之 。丕
言意 即 是
慈
也 」 ( 大 正 蔵 三 四 ・ 五 四 一 中 ) と 述 べ 、 こ こ で は 「慈
」 を も っ て 五 千 起 去 の 増 上 慢 に は 説 か な い の だ と も い っ て い る 。 し た が っ て 、 「大
悲 門 」 「 大慈
門 」 と 一応
の区
別 は あ る も の の、 そ れ ら は 互 い に連
関 し たも
の と 見 る べ き も の な の か も し れ な い 。 む 「 慈 」 「 悲 」 は 「 抜 苦 与楽
」 と も い わ れ、 仏 教中
の 重 要 な概
念 と な っ て い る こ と は、 こ こ に 改 め て 述 べ る こ と で も な い が、 「 慈 」 「悲
」 に つ い て、 吉 蔵 は 、 例 え ば 『 法 華 遊意
』 で は、 六 一吉 蔵 に お け る 「 四 種 声 聞 義 」 再 考 ( 奥 野 ) 問、 何 故 起 慈 悲 名 入 如 来 室。 答、 譬 喩 品 云、 我 亦 如 是、 衆 聖 中 尊 世 間 之 父 。 】 切 衆 生 皆 是 吾 子 。 則 知 此 経 明 父 母 之 道 。 父 則 有 楽 無 苦、 子 則 有 苦 無 楽。 今 大 悲 抜 子 之 苦、 大 慈 与 子 之 楽 、 令 一 切 衆 生 普 皆 成 仏、 故 説 法 花 経 。 末 世 法 師 既 代 仏 弘 経、 亦 宜 学 仏 之 行 。 是 故 慈 悲 名 如 来 室 。 若 為 利 養 名 聞 勝 他 勢 力 而 講 説 者、 則 不 抜 苦 与 楽、 乖 父 子 恩 情、 非 弘 仏 乗 之 道 也 。 ( 大 正 蔵 三 四 ・ 六 四 八 下 ) あノ と い っ て い る 。 こ こ に い う 「 一 切 衆 生 」 に 五 千 起 去 の
増
上 慢 が 含 ま れ る の か 否 か、 き わ め て 興 味 深 い と こ ろ で あ る が、 い ま そ の こ と は 問 わ な い 。 論 点 が 拡散
し て し ま わ な い よう
、 論 述 の 焦 点 を 再 び 五 千 起 去 の 増 上 慢 そ の も の に 戻 す と、 筆 者 は や は り最
後 に は どう
し て も 『 法 華義
疏 』 巻 第 三 の 次 の 箇 所 に 行 き 着 か ざ る を得
な い の で あ る 。 世 尊 黙 然 而 不 制 止 者 第 三 句 。 以 住 即 有 二 損 故 仏 不 制 之 。 一 者 聞 則 起 謗 堕 悪 道 。 二 者 未 来 当 作 障 隔 大 乗 因 縁 。 爾 時 仏 告 舎 利 弗 下 第 三 歎 浄 衆。 文 有 四句
。 一 歎 浄 衆、 二 毀 不 浄 衆、 三 誠 聴、 四 者 受 旨 、 智 度 論 云、 枝 葉 不 堪 為 用 。 如 五 千 人 無 法 器 用、 雖 能 聞 一 乗 不 能 発 菩 提 心 修 菩 薩 行 紹 仏 業。 是 故 無 用。 貞 実 堪 有 柱 櫟 之 用 。 如 浄 衆 是 法 器、聞
経 堪 有 紹 仏 業 用 。 舎 利 弗 如 下 毀 不 浄 衆 。 上 明 住 則 有 二 損、 今 明 去 両 益。 】 現 在 無 起 謗 法 之 罪、 未 来 不 招 苦 報。 二 者 聞 上 略 説 作 未 来 信 解 因 也 。 復 誡 聴 者 有 二 一 六 二義
。 】 者 五 千 起 席 大 衆 擾 動 。 故 重 令 諦 聴 。 二 者 既 是 浄 器 堪 聞 法。 故 令 諦 聴 也 。 次 受 旨 如 文 易 知 。 問、 五 千 之 徒 既 不 堪 聞 法 華 。 何 故 不 従 定 起、 則 以 神 力 令 其 起剥
。 答、 初 従 定 起 則 以 神 力 令 其 起 去、 便 不 得 聞 於 略 説 作 未 来 得 度 題 に し、 所 で あ る 。 ま ず こ こ で 最 初 に 指 摘 し て お き た い こ と は、筆
者
よ り す れ ば、 因 縁 。 若 聞 於 広 説、 則 起 誹 謗 現 在 無 益 。 以 仏 明 見 三 世 故 有 遺 不 遺 也 。 又 初 歎 仏 二 智 身 子 未 請 。 無 因 縁 故 不 得 遺 之。 今 待 請 後 許 説 。 宜 須 簡 衆 方 始 得 遺 也 。 問、 若 仏 知 住 起 謗 故 不 為 説 者 、 釈 論 明 喜 根 勝 意一 一 人。 勝 意 執 小 喜 根 悟 大、 遂 為 勝 意 説 大 乗 、 而 勝 意 便 誹 謗 堕 大 地 獄、 未 来 因 此 畢 竟 苦 果 而 得 解 脱。 今 何 不 為 説 耶。 答、 去 住 倶 起 誹 謗 者 則 応 為 説 。 如 喜 根 知 勝 意 聞 説 与 不 説 終 自 起 謗、 故 為 其 説 法 作 未 来 得 度 因 縁 也 。 今 去 則 有 益、 住 則有
損、 故 遺 令 去 也。 以 理 言 之 可 有 三 句 。 一 聞 而 起 謗 故 不 為 説 。 如 五 千 之 徒 。 二 聞 必 起 謗 而 為 説 。 如 常 不 軽 也 。 三 知 其 起 謗 亦 説 亦 不 説 。 如 五 千 是 也。 初 為 生 未 来 善 故 令 其 聞 略 開 三 顕 一 、 畏 其 現 在 謗 故 不 為 広 説 也 。 ( 大 正 蔵 三 四 ・ 四 九 三 下 − 四 九 四 上 ) こ の 箇 所 の 解 釈 を め ぐ っ て は、前
稿 に お い て筆
者 自 身 も問
ρ 29 } ま た す で に 末光
氏 に よ っ て も解
釈 が 施 さ れ て い た箇
〔 30〕 そ れ ら の 解 釈 に つ い て は、 後 に 触 れ る こ と と し 、こ の 『 法
華
義
疏 』 巻第
三 に お け る 吉 蔵 の解
釈 は、 著 し く 天 台 む の 『 法 華 文句
』 の 次 の 釈 文 に類
似 し て い る と い う こ と で あ る 。 す な わ ち、 『 法華
文句
』巻
第 四 上 に は、 次 の よう
に あ る 。 説 是 語 時 是 揀 衆 許 。 五 千 在 座 故 如 来 三 止。 今 将 許 説 威 神 遣 去 。 故 名 揀 衆 。 五 濁 障 多 名 罪 重 。 執 小 翳 大 名 根 深 。 未 得 謂 得名
上 慢。 未 得 三 果 未 証 無 学。 有 如 此 失 者、 謂 障 執 慢 =.種
之 失 也 。 而 不 制 止 者、 上 聞 開 三 顕 一 、 言 略 義 隠 猶 未 生 謗 。 足 作 繋 珠 因 縁 。 去 則 有 益 。 若 聞 広 開 三 顕 一 乖 情 起 謗。 住 則 有 損 。 是 故 不 制 止 也 。 此 衆 無 復 枝 葉 者、 枝 葉 細 末 不 任 器 用 。 此 等 執 方 便 之 方 便。 於 大 非 器。 大 品 云、 攀 附 枝 葉 棄 於 根 本。 是 人 為 不 黠 。 即 是 此 義 也 。 退 亦 佳 矣 者、 既 以 小 自 翳、 復 妨 他 大 光 。 今 退 無 謗 法 之 愆、 復 無障
他 之 過 。 故 云 佳 矣 。 上 枝 葉 未 去 。 如 来 三 止 。 貞 実 願 聞 。 故 身 子 四 請 。 師 弟 鑒 機 非 徒 斬 固 也 。 問、 仏 大 慈 悲、 何 不 神 力 使 其 住 而 不 聞 如 華 厳 中 聾 唖、 何 不 増 状 毒 鼓 如 喜 根 勝 意 。 答、 各 有 所 以 。 華 厳 末 席 始 開 於 漸、 未 破 小 執 。 故 在 座 而 隔 。 今 諸 仏 法 久 後、 要 当 説 真 実。 正 欲 滅 化 破 庵 。 宜 須 揀 遣 。 若 去 住 倶 謗、 宜 如 喜 根 強 説 。 今 去 則 有 益、 那 忽 令 住 。 住 則 有 損 、 那 忽 不 遣。 喜 根 以 慈 故 強 説 。 如 来 以 悲 故 発 遣 。 吉 蔵 に お け る 「 四 種 声 聞 義 」 再 考 ( 奥 野 ) 問、 五 千 在 座 即 不 蒙 益。 去 有 何 益 。 答、 此 非 当 機。 是 結 縁 人 耳 。 已 如 上 説 。 昔 大 通 仏 時、 亦 有 無 量 衆 生 心 生 疑 惑 。 世 世 与 師 倶 生 今 皆 得 度 。 此 人 亦 爾 。 説 大 経 時 万 五 千 億 人、 於 是 経 中 不 生 信 心 、 是 人 於 未 来 亦 当 得 信。 例 タ 此 益 在 不 久 。 金 光 明 中、 時 閻 浮 提 有 二 種 人 。 亦 是 斯 例意
。 ( 大 正 蔵 三 四 ・ 四 八 下 − 四 九 上)傍
線
を付
し た 部 分 と ゴ シ ッ ク 体 で 示 し た部
分を
中 心 に、 両書
を 読 み 比 べ て み れ ば、 そ の解
釈 に驚
く ほ ど 共通
性 が見
ら れ る こ と は、 誰 の 目 に も 明 ら か な こ と で あ ろう
。す
な わ ち、筆
者
に は 『 文句
』 の 解 釈 は 『 義 疏 』 の そ れ と ほ と ん ど 同 工異
曲
の も の と 判 断 さ れ る の で あ る。 さ て、 前稿
に お い て筆
者 は、 問 題 の 『義
疏 』 の記
述 を次
の むぽ よう
に 解 釈 し た 。世 尊 が 五 千 の 増 上 慢 を 制 止 す る こ と な く 黙 っ て 退 席 さ せ た の に は 理 由 が あ っ た 。 そ れ は そ れ ら の 声
聞
を 思 っ て の こ と で あ る 。 し た が っ て、 世 尊 が そ れ ら の声
聞
を け っ し て 見 捨 て て 退席
さ せ た の で は な い の で あ る 。世 尊 が 退
席
す
る 増 上 慢 を あ え て 制 止 し な か っ た の は、 そ の ま ま そ れ ら の 増 上 慢 を法
華 の 会 座 に と ど ま ら せ て お け ば、 ( そ れ ら の 声 聞 に と っ て ) 二 つ の 損 失 と な る か ら で あ る 。 損 失 の 一 つ と は 、 こ こ で そ の ま ま そ れ ら の 声聞
が 世 尊 の 説法
を聞
け ば、 か な ら ず 誹 謗 を 起 こ し て し ま い、 悪 一 六 三吉 蔵 に お け る 「 四 種 声 聞 義 」 再 考 ( 奥 野 )
道
に 堕 し て し まう
こ と で あ る 。も
う
一 つ と は 、 い ま こ こ で 世尊
の 説法
を聞
け ば 、 そ れ が未
来
に 大 乗 を受
け る障
害 と な っ て し まう
こ と で あ る 。( 五 千 の 増 上 慢 が い ま 退 席 す れ ば、 そ れ ら の も の に と っ て は ) 二 つ の 利
益
と な る 。 二 つ の 利 益 と は、 具体
的
に は 上記
の 二損
の裏
返 し に ほ か な ら な い 。五 千 の 増
上
慢 が 『 法華
経 』 を聞
く
に 堪 え な い機
根 で あ る な ら ば、 どう
し て 世尊
は 禅定
よ り 起 ち 上 が っ て、神
通力
を も っ て ( 世 尊 の 側 か ち 強 制 的 に ) そ れ ら の声
聞
を 退 席 さ せ な か っ た の か 。世 尊 が 初 め か ら
禅
定 か ら 起 ち 上 が っ て 、 神 通力
を も っ て そ れ ら の声
聞
を 強制
的
に追
い 出 し て し ま い 、 略 説 さ え聞
か せ る こ と が な か っ た な ら ば、 そ れ は そ れ ら の 声聞
の 未 来 に お け る得
度
の 因 縁 ま で も剥
奪
し て し まう
こ と に な る ( だ か ら、 そ れ ら の 声 聞 の 将 来 の こ と を 思 っ て、 そ う し な か っ た の で あ る ) 。 ま た 、広
説 ま で聞
か せ て し ま え ば、 そ れ ら の 声聞
は か な らず
誹 謗 を起
こ し て し まう
に ち が い な い 。 そ れ は そ れ ら の声
聞 の 現 在 に と っ て 利 益 の あ る こ と で は な い ( だ か ら、 広 説 の 始 ま る 前 に 黙 っ て 退 席 さ せ た の で あ る ) 。 仏 は 明 ら か に 三 世 を 見 通 し、 退 席 さ せ る と 退席
さ せ な い と が あ る の で あ る 。 か か る 解 釈を
も っ て 、筆
者 は、 五 千 起 去 の増
上 慢 と い え ど 一 六 四 も 「 未 来得
度 の 因 縁 」 を 保 証 さ れ て い る が ゆ え に、成
仏 の機
会 は剥
奪
さ れ て い な い と考
え る の で あ る 。 こ れ に対
し て、 末光
氏 は 次 の よう
に解
釈 さ れ る 。 氏 の解
釈 は 詳 細 を極
め、 そ のす
べ て を 紹介
し た い 衝 動 に か ら れ る が、 あ ま り に長
い 引 用 と な っ て は か え っ て 煩 雑 に な る の で 、以
下 に そ の 最 重 要 と 思 わ れ る 部 分 だ け を 引 い て お こう
。 そ れ で も 長 文 に わ た る 引 用 と な る が、 重要
な こ と ゆ え 、 読 者 に は あ ら か じ め ご 理 解 と ご 寛恕
を乞
う 次第
で あ る 。 五 千 の 増 上 慢 の 為 に 法 華 を 説 か な い の は、 今 は 去 ら ば 則 ち 益 あ り て、 住 ま ら ば 則 ち 損 あ る べ き が 故 に 、 遣 っ て 去 ら し む る な り。 理 を 以 て 之 を 言 わ ば、 三 句 あ る べ し 。 一 に は、 聞 い て 謗 を 起 す が 故 に 為 に 説 か ず 。 五 千 の 徒 の 如 し 。 二 に は、 聞 い て 必 ず 謗 を 起 す も 而 も 為 に 説 く 。 常 不 軽 の 如 し 。 三 に は、 其 の 謗 を 起 す を 知 っ て 亦 説 き 亦 説 か ず 。 五 千 の 如 き 是 な り。 初 は 未 来 の 善 を 生 ぜ し め ん が 為 の 故 に 其 を し て 略 開 三 顕 一 を 聞 か し め、 其 の 現 在 の 謗 を 畏 る る が 故 に 為 に 広 説 せ ざ る な り 。 ( 前 同 頁 、 大 正 蔵 三 四 巻 、 四 九 四 頁 上 ” 奥 野 補 ) と、 去 る な ら ば 得 益 し、 留 ま る な ら ば 損 と な る た め、 退 席 さ せ る 。 但 し、 広 説 を 聞 か ば 損 あ る が 故 に 退 席 さ せ た が、 し か し 三 止 三 請 中 に、 略 説 な が ら 開 三 顕 一 を 聞 か し め、 未 来 の 善 を 生 ず る 益 を 作 っ て お い た と 主 張 す る。 即 ち 損 益 と は、世 尊 黙 然 と し て 制 止 し た ま わ ず と は、 第 三 句 な り。 住 す れ ば 即 ち 二 損 あ る を 以 て の 故 に 仏 之 を 制 し た ま わ ず 。 } に は 聞 か ば 則 ち 謗 を 起 こ し て 悪 道 に 堕 し な ん、 二 に は 未 来 に 当 に 大 乗 を 障 隔 す る の 因 縁 と 作 る べ し。 ( 前 同、 大 正 蔵 三 四 巻、 四 九 三 頁 下 ) 或 は 、 今 は 去 る に 両 益 あ り と 明 か す 。 一 に は 現 在 に 謗 法 の 罪 を 起 す こ と な く、 未 来 に 苦 報 を 招 か ず 。 二 に は 上 の 略 説 を 聞 い て 未 来 の 信 解 の 因 と 作 す な り 。 ( 前 同 頁 ) マ マ と、 広 説 を
聞
か ず に 退 席 す る 事 に よ り 大 坑 に 落 ち つ に す み、 又 略 説 の み を 聞 く 事 に よ り 未 来 信 解 の 因 と な る。 仏 が 三 止 三 請 の 略 説 を 経 る の は、 三 世 に 渡 っ て 衆 生 の 救 済 を 考 え て い る か ら で あ る 。 即 ち、 問 う、 五 千 の 徒 既 に 法 華 を 聞 く に 堪 え ず 。 何 が 故 に 定 よ り 起 っ て、 則 ち 神 力 を 以 て 其 を 起 去 せ し め ざ る や。 答 う、 初 め 定 よ り 起 ち 則 ち 神 力 を 以 て 其 を 起 去 せ し め ば、 便 ち 略 説 を 聞 い て 未 来 得 度 の 因 縁 と 作 す こ と を 得 ず。 若 し 広 説 を 聞 か ば、 則 ち 誹 謗 を 起 し て 現 在 に 益 な か ら ん 。 仏 は 明 に 三 世 を 見 る を 以 て の 故 に 遣 と 不 遣 と あ る な り 。 ( 前 同 頁 ) と、 広 説 ま で 聞 く と 誹 謗 を 起 し、 現 在 に お い て 不 益 と な る。 又 神 通 力 を 以 て 略 説 ま で も 聞 か せ な い と な る と、 未 来 得 度 吉 蔵 に お け る 「 四 種 声 聞 義 」 再 考 ( 奥 野 ) の 因 縁 を 全 く な く し て し ま う こ と に な る か ら で あ る 。 こ の 為 吉 蔵 は、 五 千 の 増 上 慢 の 失 に 対 し、 現 在 時 点 の 失 と 限 定 す る 。 又 罪 根 深 重 と は、 過 去 世 の 失 を 明 す 。 過 去 に 於 て 他 の 大 乗 を 説 く を 聴 く こ と を 障 え し を 以 て、 是 の 故 に 現 在 に 正 法 を 聞 か ず 。 及 び 増 上 慢 と は 、 謂 く 現 在 の 失 な り 。 現 在 世 に 於 て 釈 迦 仏 に 値 い 、 小 乗 を 修 習 し て 未 だ 小 果 を 得 ざ る に 小 果 を 得 た り と 謂 う 。 復 此 の 果 を 以 て 究 竟 と な す と 謂 い 大 法 を 受 け ず 。 故 に 名 け て 失 と な す な り 。 〔 前 同 頁 ) 即 ち、 現 在 世 に お い て 五 千 の 徒 は 増 上 慢 な の で あ る 。 過 去 世 に 大 乗 を 聴 く 因 縁 を 作 っ て お か な か っ た が 故 に、 現 在 世 に お い て 正 法 を 聞 こ う と し な い 。 故 に 現 在 世 に 略 説 と 云 え ど も、 開 三 顕 一 を 聞 い て お く な ら ば、 未 来 世、 信 解 の 因 と な る と い う の で あ る 。 所 が 五 千 の 増 上 慢 が 「 略 説 を 聞 い て 未 来 得 度 の 因 縁 と 作 す 」 等 と 云 う も の の、 吉 蔵 の 著 書 中 に、 五 千 の 増 上 慢 が 、 未 来 、 例 え ば 常 不 軽 菩 薩 所 対 の 増 上 慢 の 様 に 、 千 劫 後 に は 成 仏 〔 34) へ の 道 に 入 る と 云 う 明 確 な も の が 見 当 ら な い 様 に 思 う 。 ( 傍 線 部、 ゴ シ ッ ク 体 部 分、筆
者11
奥 野 ) 筆者
よ り す れ ば 、 引 用最
末 尾 の ゴ シ ッ ク 体 で 示 し た最
後 の 一 文 を 除 い て、 私見
と末
光
氏 と の 理 解 に は ま っ た く 径 庭 が な い の で あ る 。 繰 り 返 し 述 べ る が、筆
者 は 五 千 起 去 の 増 上 慢 に 一 六 五吉 蔵 に お け る 「 四 種 声 聞 義 」 再 考 ( 奥 野 ) も、 仏 の 「