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日本における教育GISの展開に関する研究

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(1)2004(平成16)年度 学位論文. 目本における教育GISの展開に関する研究. 兵庫教育大学大学院学校教育研究科. 教科・領域教育専攻社会系コース.    MO3161H 小橋拓司.

(2) 目次. 第1節 GIS発展の歴史一教育へのGIS導入を中心に一. 第2節 先行研究の検討     〆    (1)欧米の動向    (2)GISの導入にかかわる研究    (3)教科教育学の立場からの意義や問題点の検討.    (4)GISを活用した教育の実践. 第3節 本研究の目的と方法 第4節 本研究におけるGISの定義. 第1章 高等学校における教育GISの現状 第1節 調査の目的と方法.    (1)調査の目的.    (2)調査の方法 第2節 高等学校教員におけるGIS活用の実態    (1)教員のGIS認知    (2)「地理」教育におけるGISの扱い    (3)GISを活用した授業実践.    (4)教員のコンピュータ利用    (5)教員研修.    (6)GISへの興味と期待度.    (7)GISの利用可能性.    (8〉GISの課題. 第3節 高等学校教育における教育GISの課題    (1)情報機器.    (2)教育に適したソフトやデータ.    (3)教員の研修    (4)授業時間の確保.          111111122222222222. 序論.

(3) 第4節 インターネットGISによる課題解決の可能性. 第2章 学校教育におけるGISの活用 第1節 情報教育におけるGIS    (1)情報活用の実践力とGIS    (2)情報の科学的な理解とGIS    (3〉構報社会に参画する態度とGIS. 第2飾 総合的な学習の時間におけるGIS    (1)横断的・総合的な学習.    (2)地域や学校,生徒の実態,生徒の興味・関心を生かした教育活動    (3)問題(課題)解決学習,体験的学習. 第3章 地理カリキュラムとGIS一地理的技能とGIS技能 第1節 地理的技能    (1)高等学校学習指導要領における地理的技能に関する記述    (2)学習指導要領における地理的技能の内容    (3)地理的技能についての先行研究.    (4)地理的技能とGIS技能についての先行研究.    (5)ナショナルスタンダード. 第2節 GIS技能    (1)GIS技能のフレームワーク.    (2)GIS技能要素の抽出. 第3節 地理的技能とGIS技能    (1)地理的技能要素とGIS技能との整合性    (2)GIS技能要素と地理的技能との整合性.    (3)地理的技能とGIS技能の整合性. 第4章 教育GISの授業事例分析 第1節 GIS授業実践事例分析の目的と方法    (1)目的.    (2)方法. 第2節 GIS実践事例の分析結果 第3節 GIS実践事例分析結果の考察.

(4)     (2)GIS項目. 第5章. 高校「地理」におけるGISを活用した授業教材の開発. 第1節 教材開発の視点     (1)地理情報を処理する過程     (2)地図を活用する技能. 第2節 科目r地理B」の単元目標と教材開発の関連 第3節 GISを活用した学習指導計画:「地図化してとらえる現代世界の諸課題」     (1)計画と各小単元の目標     (2)指導計画.     (3)各単元におけるGISの活用について 結論. 第1節. 本研究のまとめ. 第2節 教育GISの今後 第3節 残された研究課題 (1〉GISソフト. (2)GIS活用事例のデータベース. (3)教育課程とGISの整合性 文献 あとがき.   111111111111111111.     (1)GIS活用事例の全体的傾向.

(5) 図表一覧.  123章            司章 章 論阜序序−H”日図朽朽”H”日M楠岡糊2四3銅健鋪銅健 序表表表第図図図図図図図表表表表表表資第表第図図図表表. GISをめぐる日本国内の主な動き 各文献におけるGISの定義. 教育におけるGIS活用についての2つの考え方. 高校教員の専攻別GIS認知. 教員男女別によるGISの認知. 教員の年齢別GISの認知 教員の地理担当経験別GISに対する認知. 教員の引Sへの興昧 勤務校でGlSは授業に利用できるか. GISを認知する教員が指摘する課題. 質問票調査の概要 開講科目. 地理担当教員の重視する地図学習の内容. 授業におけるコンピュータφ利用. GISの研修を受けたことがあるか. GISに対する認知度別の期待 調査票. 高等学校における教育活動. 地理的技能の内容. GlS技能ごとの地理的技能要素数 地理的技能とGIS技能の整合性(全体). 学習指導要領におけう地理的技能. 地理ナショナル・スタンダードにおける地理的技能要素数.

(6) 3甲 ﹄ 碍 ︻ 0公Uワ489 一 一 一 一 一 一. 表表表表表表表. 本研究における「地理ナショナル・スタンダード』の項目の名称 GロSにおける地理情報処理過程. 野上ほか(20Q1)から抽出したGI6の技能. 河端ほか(2003)にみられるGIS技能 NCGlAコァカリキュラムから抽出したGlS技能. 引S技能の整理 スタンダードにみられる地理的技能要素とGIS技能の関連(地理的問いを提示す る). 表3−10. スタンダードにみられる地理的技能要素とGIS技能の関連(地理情報を収集する). 表3−11. スタンダードにみられる地理的技能要素とGlS技能の関連(地理情報を整理する). 表3司2. スタンダードにみられる地理的技能要素とGIS技能の関連(地理情報を分析する). 表3−13. スタンダードにみられる地理的技能要素とGIS技能の関連(地理的問いに答える). 表3司4. Gis技能ごとの地理的技能要素数. 表3司5. GIS技能ごとの地理的技能要素数(全学年%). 表3−16. スタンダードにみられる地理的技能要素(まとめ). 表3−17. 地理的技能要素と引S技能の整合性. 表β一18. GlS技能要素一覧と地理的技能. 表3司9   匙.  ら. 資料3一蓄. アメリカ舎衆国地理ナショナルスタンダードにおける地理的技能. GlS技能要素と地理的技能の関連. 第4章 図4−1. 学年別実践事例数. 図4−2. 実践事例のサポート. 図4−3. GIS活用の方向性. 図4−4. β’S機器・ソフトの活用者. 図4−5. GlS機器・ソフトの活用場面. 図4−6. GlS機器・ソブトの活用形態. 図4−7. GlS機器・ソフトの活用場所. 図4−8. 実践授業の対象スケール. 図4−9. GISの活用と関連するGIS技能.

(7) 図4刊0. GlS活用の目的. 表4−1. GlS活用授業実践一覧. 表4−2. 実施科目一覧. 表4−3. 学習指導要領における地域スケールとGIS実践事例の関連. 表4}4. GlS実践事例におけるGIS技能と地理的技能の関連. 表4−5. 校種別GIS実践事例におけるGIS項目数. 表4−6. GIS実践事例におけるGIS項目と些理的技能との蘭連. 資料4−1. GIS実践事例データベースのフォーマット. 第5章 表5司. 手作業とGISを活用した作業の特徴. 表5−2. 高等学校地理Bの目標と内容. 表5−3. 指導計画における技能一覧. 資料5珂. 指導計画:単元r地図化してとらえる現代世界の諸課題」(1). 資料5−2. 指導計画=単元「地図化してとらえる現代世界の諸課題」(2). 結論 図結一1. 教育GISのライフサイクル(仮説). 図結一2. 教育GIS発展の論点.

(8) 序論  20世紀後半,コンピュータの技術発展に伴い,地理情報システム(GIS)が急速に発展. してきた。1990年代からは教育においても,GISの導入をはかろうとする動きがみられ. るようになってきた。本章ではGIS発展の流れとともに,教育におけるGIS活用の研究. 史を明らかにする。そして教育におけるGIS活用にっいて,その問題の所在を明らかに          ノロ ーし,本研究の目的を述べる。. 第1節 GIS発展の歴史一教育へのGIS導入を中心に一.  GISの原型となるシステムは,アメリカ合衆国の空軍において1950年代に開発された 防空システムであるといわれている(久保,1980)。1960年代になると,カナダのTomlinson. がカナダ地理情報システムを開発した。このシステムは土地データをデータベース化し,. カナダの農地復興と開発適地を探そうとするものであった(トムリンソン,1985)。コン ピュータがまだ大量のデータを扱うことのできなかった時代に,土地データを総合的に扱 おうとした試みは注目に値し,Tomlinsonは「GISの父」と呼ばれている(野上ほか,2001)。.  その後アメリカ合衆国の大学や研究機関を中心にGIS研究は進展した。1980年代には 多数のGISベンダーが登場し,安価で汎用性のあるGISソフトが販売されるようになる。. 情報機器のハード面においてもパーソナルコンピュータが普及し始め,これ以降GIS研 究が拡大していく (碓井,1995)。矢野(1998)は,1980年代後半以降のこうした状況に. ついて,1950年代後半にみられた計量革命に匹敵しうるとし,地理情報システム(GIS). 革命と呼んでいる。1990年代になると,インターネットの商業利用が始まり,インター ネット上でGISを実現するインターネットGISも広まった。.  こうした流れを受けてGISに関する教育も始まる。1990年,アメリカ合衆国のNCGIA (National Center fbr Geogr母phic Infbmlation and Analysis,国立地理情報分析センター)はGIS. の指導者向け教材『コア・カリキュラム』を発表した(中村ほか編,1998)。続いて1991 ∼1996年にかけてNCGIAは,Secondaly Education Prqlect(中等教育プロジェクト)を実. 施した。これはコア・カリキュラムが高等教育レベルであったのに対し,中等教育教員を 対象にGIS講習・GISワークショップを開いて啓蒙しようとするものである(伊藤,2001)。 2003年には“Joumal ofGeography”において,“Researoh onGIS inEducation”の特集が組. まれている。この中でBaker and Bednarz(2003)は,教育におけるGISの現状と課題を. 騨1一.

(9) 総括し,教育におけるGISが未だ発展途上であることを指摘している。.  日本におけるGISをめぐる主な動きを表0−1にまとめた。行政・企業の動向,研究者・. 学会の動向,教育の動向に分けて示している。日本では1970年代からGIS研究が進めら れた。例えば,東京大学では1976年Areal Land Infbmlation System(ALIS)と呼ばれるシ. ステムが完成した(久保,1980)。1990年には,日本地理学会の研究グループに「地理1青.         ノロ 報システム」が発足,1991年には地理情報システム学会が発足した。そして1998年には. 東京大学に空問情報科学センターが設立されるなど,急速なGIS研究の環境整備がみら れる。データ整備の面では,日本地図センターによる数値地図の販売もおこなわれるよう. になった。2000年日本地理学会において,rGISは地理学にいかに貢献するか」のシンポ ジウムが開催され,その成果は,高阪・村山編(2001)にまとめられた。2000年代以降 インターネット上において,様々な地理情報が公開されるようになっている。例えば国土 地理院による地図閲覧システムの稼働,空間データ基盤の無料公開が知られている1)。ま た総務省統計局の統計GISプラザ2)のようなインターネットGISのサービスもみられる。.  GIS研究者も急速に増加している。地理情報システム学会の会員数をみると1550名(正. 会員・学生会員数,2004年4月現在)を数え,地理学関係の学会としては,非常に大き な勢力を占めるようになってきた3)。.  GISの社会的認知も徐々に進みつつある。朝目新聞を例にみると,地理情報システムと いう用語は,1984年に初めて新聞紙上に登場した4)。その後,1990年代後半から増加し,. 2000年には22件の記事が検索できた。その後,横ばいで推移している。またNHKでは 2004年1月から12月まで・「データマップ63億人の地図」が放送された。この番組の中 でGISが大きく取り上げられている5)。このようにGISの社会的認知も進みつつある。し. かしながら,2004年時点においても,GISをGPSと問違えている新聞記事も散見され, 十分浸透しているとはいいがたい。.  教育分野での動向をみると,まず大学においてGIS教育が1980年代後半より始まった。. 例えば奈良大学では1988年にPc−Arcinfbを導入し,GIS教育を実践している(碓井・酒 井,2002)。日本大学は1990年(高阪・関根,2002)より,立命館大学は1992年(矢野,1998). より始めているが,多くの大学では1990年代後半以降である。.  学校教育では,1996年地理情報システム学会の中に学校教育委員会が設けられ,公開 研究会を開いたり書籍の出版をおこなう6)など活発な活動をおこなわれてきた。さらに. 2002年には教育現場とGIS関連業界とのrブリッジセンター」としての役目を担う目的. 臼2一.

(10) で,教育GISフォーラムが設立されたη。2002年以降,日本地理学会によるシンポジウ ム8),地理情報システム学会による国際シンポジウム9),GIS Day in関西置o),教育GISフ. ォーラム主催のGISキャンプやワークショップ11》など様々な行事が催され,普及活動が 広がりっつある。.         み 第2節 先行研究の検討  本節では1980年代以降の教育におけるGIS活用に関する先行研究を整理し問題点を検. 討する。日本において最も早い授業実践は,笹田・吉川によっておこなわれている (YOSHIKAWA・SASADA,1984;笹田・吉川,1985)。これは,兵庫県三田市内の小学 校社会科授業において,身近な地域の学習支援のため,地域情報提供システムの開発をお こなったものである。GISという用語すら目本では定着していなかった状況下においての. 実践であり,極めて先駆的といるだろう。1988年には板橋区において環境教育にGISが 導入された。小学生以上の区民によって環境観察を地図化する「環境情報システム」であ る。環境観察は1989年から毎年実施されている(伊藤・鵜川,2001)。.  しかしながら上記のような取り組みは極めて少数で,1980年代には教育における実践 はほとんどみられない。この要因としては,①教育において情報機器が導入されるのが 1970年代後半に始まったばかりであること,②授業で使用できるソフトやデータが乏し かったこと,③情報機器が大がかりになったり使いづらいインターフェースであったこと. などがあげられよう。一言でいえば,「未熟な情報システム」であった。1980年代は地図 をコンピュータで扱う方法が議論されていた時期(金安ほか編,1985,久保ほか編,1986). で,コンピュータマッピングという言葉はもてはやされたが,GISの概念はほとんど知ら れていなかった。.  教育の分野において最も早くGISという言葉に言及したのは,太田(1988)である。 太田(1988)では,GISの研究が本格的に始まりつっあることを展望し,地図リテラシー. の重要性を指摘した。以下では,1990年代以降の教育におけるGISに関する論文を,① 欧米の動向,②GISの導入,③教科教育学の立場からGIS活用の意義や問題点の検討, ④GISを活用した教育の実践の4つに分けて詳述する。 (1)欧米の動向.  伊藤ほか(1998),伊藤(1999),伊藤(2001)はアメリカ合衆国におけるGIS利用の 動向を報告している。アメリカ合衆国では,理科の地学や生物などの分野で,社会科にお. 一3一.

(11) いては地理分野を中心にGIS利用が試みられていることを指摘し,特に環境教育の分野 においてGISの積極的活用がなされていると報告している。また学校教育におけるGIS 利用が活発化してきた背景には,学校現場で利用しやすいソフトウエアや各種リソースの 提供があると指摘した上で,GISとリモートセンシングを統合した学校教育用アプリケー. ション「GEODESY」を紹介している。また山田(2003)はアメリカ合衆国の教育は技能.         み 重視教育,環境教育に特徴があるとし,その調査・分析ツールとしてGISが活用されて いることを指摘した。アメリカ合衆国の具体的な環境学習の取り組みについては,オーデ ット・ルドウィグ(2002)において13の事例が紹介されている。.  ヨーロッパにおける動向については,山本(2003)がドイツの事情を紹介しているが全 体としては,それほど多くない。日本への紹介は,ほとんどはアメリカ合衆国の事例であ. る。教育におけるGIS利用の分野では,アメリカ合衆国が格段に進んでいることがうか がえる。.  今後は単なる先進地域の紹介だけでなく,日本の教育におけるGIS利用の実情と比較 する視点が必要であろう。すなわち諸外国の事例を,日本で実践するにはどうすればいい のか,あるいはその問題点等を明らかにしつつ紹介をしていく方向がのぞまれる。 (2)GISの導入にかかわる研究.  前述の太田(1988)以降,教育におけるGISの有効性について,いくつかの論考が発表. された。中村(1995)はGISを用いて主題図作成できることを紹介し,秋本(1996)は 高校はGISの基礎教育をおこなう場であると位置づけ,GISを教材として活用できる学習 内容や導入にあたっての課題を検討した。秋本(2001a)は地理教育おけるGISの意義を,. 阿子島(2001)は教育段階ごとにGISの導入をはかることを提案した。南埜(2003)は                                    じ それまでのGIS導入・活用における問題点と今後の課題を整理し,学校教育におけるGIS の活用にはrGIS教育」と「GIS利用」2つの立場があることを指摘した。2003年には,. 日本地理学会春季学術大会において「学校教育におけるGIS利用の可能性を探る」のシ ンポジウムが,2004年には日本地理学会秋季学術大会において,「教育現場におけるGIS 活用の課題と方策」のシンポジウムがおこなわれた。これらのシンポジウムにおいては,. GIS活用の現状と課題について意見の交換がなされた。  地理以外の科目についてみると,秋本(2003a,2004a)は高等学校に新設された普通教 科「情報」において,GISを導入する可能性を論じた。西田ほか(2004)は高等学校の教 科商業において,GIS導入の実践を試みている。. 一4願.

(12)  現在では小中学校の社会科や高等学校地歴科の地理においてGISの活用が有効である ことはほぼ明らかとなっている。今後は理科あるいは情報科・商業科などの専門教科への. 導入の方向性を検討する必要があろう。また,GIS導入後における課題についても展望し ていく段階に来ているように思われる。. (3)教科教育学の立場からの意義や問題点の検討.         み  学校教育(特に地理教育)のどのような内容でGISが利用できるのか,あるいはGIS の教育的効果などについて,教科教育学の立場からGISの利用を論じた論文は数多くな い。.  中村(1999)は地理教科書における情報の扱いを検討し,地理教育では地域のスケール. を自在に操れるかが重要なポイントの1つであることを指摘した。この点について,GIS. は有効であるとしている。中村(2001)はデジタル地理情報を前提に発展してきたGIS と経験的に地理情報を活用してきた中学校・高校の地理との問には,地図活用において齪 甑が生じていることを指摘している。.  大関(1999)は,GISを地理教育の学習システムの中に位置づけようとし,地理教育に. 対するGIS支援を考察した。その中でGISにおいては機能地域(流線図)の分野が遅れ ていることを指摘している。また大関(2001)は,GIsがどのレベルの学習を想定してい るか明示する必要があるとして,地図を活用した教材を作成する際,踏まえる観点を検討. している。また林(2003)はGISを活用することを念頭において,社会科教育における メディア教材利用における課題を指摘している。.  「地理的見方・考え方」に関しては,秋本(2003b)が,「地理的見方・考え方」とGIS による地域分析の基本概念とが一致することを明らかにし,小林(2003a)が地図学習に. かかわる技能を身にっけるためにGISを活用する工夫を提案している。大関(2004)は. 教育GISとのかかわりで,地理的技能が「地理的な見方・考え方」と不可分の関係にあ ることを明らかにした。.  しかしながらこの分野の研究は,GISが新しい分野であるためか教科教育の研究者の関 心を引いているとはいない。特に教育課程とのかかわりや地理的技能全般とのかかわりな. どについての考察が不十分といえる。学校教育においてGISの活用をはかっていくため には,今後これらの点についても検討する必要があろう。 (4)GISを活用した教育の実践.  教育におけるGIS活用に関する先行研究の中では,GISを活用した教育実践例が最も多. 一5一.

(13) くを占める。この分野は授業の実践を中心とした研究とアプリケーションの開発や紹介を. 中心とした研究とがある。無論GISを活用した授業はGISソフトと密接に結びっいてい るので両者を厳密に区別することはできない。そこでGISソフトを中心に述べているも のを教育GISソフトに関する研究とし,それ以外の実践を教育実践論として大別した。 a,教育GISソフトに関する研究.         み  立岡(2001)は低価格アプリケーションGeoBasicを紹介し,これを使った教材化を提 案している。立岡(2002)は統計情報開発研究センターの「使ってみよう国勢調査データ」. の利用の可能性を検討した。また秋本(2001b)は地理教育に使えるソフトの紹介をおこ なっている。.  教育GISソフトの開発を中心とした報告をみると,r太田(2001)は簡易なGISノフト (GISnote)の開発をベンダーとの連携でおこない,これを利用した実践をおこなった。. 谷は,「地理情報分析支援システムMANDARA」の開発をおこない(谷,19941後藤ほか, 2004),谷・佐藤らはこれを用いた地理授業の実践をおこなった(谷ほか,2001;佐藤,2002 ;佐藤ほか,2003)。この他インターネットGIS構築の試み(村山,2002;村山,2004a),. 新旧地形図比較のためのスクールGISの試み(小堀,2002)などがあげられよう。一方 小林(1998,2001,2003b)は表計算ソフトEXCELを用いてGIS的学習教材の開発をお こなっている。GISソフトではなく汎用性のある表計算ソフトを使っている点は注目に値 する。. b.教育実践論.  近年,GISを活用した授業実践は増加しっっある。特にインターネットにおける授業実 践事例の公開が進んでいる。ここでは論文化された報告を中心に概観する。秋本(1999). はGISを活用した実践について,①教員の補助ツール,②生徒の自習用ツール,③調査 ・課題学習のための3つを考えている。この分類にしたがって,GISを活用した実践をみ ていくことにする。. ①教員の補助ツール(データの収集・加工を教員主体でおこう実践).  秋本(1999)は主題図の作成・地図の投影法の学習にGISを活用できることを指摘し,. 阿子島(2001)は地形図における等高線学習・地図投影法に有効であると述べている。ま. た具体的な実践報告としては,秋本(1996)による降水量と植生の重ね合わせの教材開発 などがみられる。地図学習(地図投影法・地形図・統計地図)と主題図の重ね合わせがほ とんどである。. 一6一.

(14) ②自学自習用ツール.  これに関する実践例は全く報告されていない。しかし地理学習においては2,3の事例 を学習する場合が多い。事例で獲得した知識内容を定着させるには,反復的な学習が欠か. せない。反復学習を補うためGISを活用することは今後検討されてよいと考えられる。 ③調査・課題学習のためのツール(データの収集,分析,結果の表現を生徒が主体となっ         ∫・ ておこなうもの).  青木(2001)は図法ソフトを使用し生徒に適地の選定をおこなわせようとした。太田 (2001)はGISソフトのGISNoteを開発し,「身近な地域の学習」で活用を試みた。秋本 は世界の食文化をデータベース化し地図化する学習(秋本,1996)や,避難所の分布・避 難経路・バッファ分析によって人口を算出する学習(秋本2001a).を行っている。福田 (2001)は古地図(絵図)を活用した授業を,伊藤(2004)は新旧地形図を比較する授業. を提案している。単元的には,秋本(1996)を除き,ほとんどが身近な地域の学習におけ る実践例である。.  教育実践論の事例を紹介したが,GIS活用の展望的要素の強いものが多いといえる。近 年徐々に学習指導案を提示した報告がおこなわれるようになってきた。.  以上,教育におけるGIS活用に関する研究を概観してきたが,その結果は次のように まとめることができる。.  第1に論文数の増加である。1980年代においては皆無に近く,1990年代前半において もさほど増加していない。コンピュータマッピングの教材開発が散見されるのみであった。. 今日からみるとGIS的であると考えられる教材であってもGISを名乗っておらず,一般 的には「GIS」はまだ十分認知されていたとはいいがたい。一方,大学の地理学科におい. ては,この頃GIS教育がスタートする。1990年代後半にはいると学校教員による文献も 登場するようになり,GISを活用して学校教育において何ができるかの検討がされはじめ. る。また学習指導要領とGIS活用との関係も論じられはじめる。2000年代になると文献 数は増加し,高等学校地理授業におけるGISを活用した実践報告も盛んにみられるよう になってきた。さらに中学校や小学校における実践報告もみられるようになった。.  しかしながら,教育におけるGIS活用を論じる研究者や学校教育においてGIS活用を 推進する教員者数は少なく,少数の者が論文や報告を多産している状況もうかがえる。つ まり「研究や実践の山は高いが,裾野はせまい」ということがいえよう。. ・7一.

(15)  第2に小中高等学校教員による実践事例がまだまだ少ないことがあげられる。秋本,佐 藤,福田,山田らの先進的な実践はあるが,全体からみれば多くない。インターネットや. 報告書からGISを活用した授業実践事例を収集したところ,学校教育全体でも59事例し か見あたらない(2004年9.月末現在)。今後いかに事例を増やし,それをデータベース化 していくかが,教育においてGISを普及させていく課題となろう。.         み  さらに実践報告の中味の問題についても触れておきたい。学校教員が初めてGISを活 用した授業実践をおこなおうとする際,最も参考にするのは学習指導案であろう。しかし ながら学習指導案のレベルで授業実践を報告している事例は極めて少ない。,多くの場合は 略案である。学習指導案での実践事例の報告が必要である。.  第3に教育課程を念頭においた議論の欠如があげられる。GISを学校教育の中でどのよ うに位置づけるべきなのかが,きちんと論じられていない。GISをどの教科のどの単元に. おいて活用すべきなのか,そのことによってどのような学習効果が得られるのかについて. も不明確である。特にGISを活用することは「学び方を学ぶ」ことと密接にかかわると 考えられるが,GIS活用によって得られる技能についての検討は不十分であろう。.  本研究においては,特に第3の点に着目し次節で本研究の目的と方法を述べる。. 第3節本研究の目的と方法  学校教育において本格的にGISの活用をはかっていくためには,まず学校教育におけ るGIS活用の実態を把握する必要がある。特に教員のGIS活用に対する意識の統計的な. 実態把握が重要となろう。そして最も重要なことは,教育課程でGlsがどのように位置 づけることができるのかを具体的に検討していくことである。GIS活用は様々な教育活動 においておこなうことが可能であり,情報教育や総合的な学習の時間も視野に入れるとと もに,特に内容として最も関係の深い「地理」との関係を十分に検討する必要がある。  以上の問題意識から本研究では,「学校教育におけるて}IS活用の実態を把握し,教育課. 程における地理的技能とGISの技能との関連性を検討する。そしてそれらを踏まえて教 育におけるGISの活用の具体的方法を提案する」ことを目的とする。地理的技能とGIS の技能との関連性を検討するにあたっては,検討の対象は地理教育全体に及ぶが,学校教. 育におけるGIS活用の実態把握,GISの活用方法の提案については,高等学校地理を主な 対象とする。.  具体的には,以下の方法をとる。. 一8一.

(16) ①「教員意識調査,活用の状況を把握」(第1章).  高校教員への質問票調査により,GIS活用の実態を把握し,GIS活用を障害となってい る要因を検討する。. ②「情報教育や総合的な学習の時間におけるGIS活用の可能性の検討」(第2章).  学校教育におけるGIS活用の可能性を検討する。特に情報教育と総合的な学習の時間         ’・ を取り上げる。. ③「地理的技能とGISの技能との整合性の検討」(第3章).  学習指導要領やアメリカ合衆国の地理スタンダードなどを参考として,地理的技能を抽. 出する。アメリカ合衆国のGISコアカリキュラムやGIS入門書等を参考として,GISの. 技能を抽出する。そして地理的技能とGISの技能との比較から類似点や相違点を明らか にする。. ④「これまでのGIS活用実践例の整理」(第4章).  ③において検討した視点から,授業においてGISを活用した実践事例を分析する。GIS. を活用した実践の現状を把握することにより,教育におけるGIS活用のあり方を考察す る。. ⑤「GISを用いた授業実践の開発」(第5章)  GISを活用した具体的な授業実践事例を開発する。. 第4節 本研究におけるGISの定義  GISとはGeographic Infb㎜ation Systemの略称で,「地理情報システム」と訳されている。. 「GISjと言う用語を最初に使用したのは前述のTomlinsonである。現在,地理教育やビ ジネス,GIS専門書など様々な分野においてGISの定義や説明がなされている。これらの うち代表的なものをリストアップしたものが表0−2である。これをみて気付くことは,時 期や分野によって,GISの定義が様々であることである。例えば町田(1994)の定義と,. 高阪・村山(2001),野上ほか(2001)のものとを比べてみると,町田(1994)の定義は 極めて曖昧なものであったことがわかる。近年では,地理情報システム学会(2004)のよ. うにGISはr科学」であるとする定義もみられようになってきた。  これらの定義・説明からGISについてのキーワードを取り出してみたい。.  第1に,対象としてr地理情報」,r地理的データ」,r土地にかかわる情報」,r空間情 報」といった言葉が共通点としてあげられる。そこでまず「地理」と「空間」について検. 一9、.

(17) 討する。「空間」については計量革命以後,盛んに用いられるようになり,計量的分析に. おいてはr空間」の使用が多いように思われる。GISが計量革命期のコンピュータ技術の 進展の延長線上にあると考えるならば,「空間」の使用が適切である。しかしながら「空 間」を他の概念から分ける明確な定義付けは難しい。野上ほか(2001)は地理データと空 問データとの違いについて,明確な区別はないとしながらも,「あえていえば地理データ.         ノ の方が地表面のデータという意味合いが強いのに対し,空聞データは地表面のデータはも とより,大気のような地上データ,地層のような地下のデータを含む3次元的な意味合い が強い」としている。.  次に「データ」と「情報」について検討する。データとは実世界の現象を単に記述した ものであり,情報はある一貫した論理秩序にしたがって,データを処理し,フィルターに かけたものである(高阪,2002b p.327)。すなわち,データに比べて情報の方が抽象度が. 高いといえる。情報が内容や意味を表すのに対し,データは内容を処理のため定形化して 数字,コードで表したもの(野上ほか,2001p.5)ともいえる。.  GISというシステムで実際に処理するものはデータである。しかしながらそれを処理し. 分析する過程ではフィルターがかかっているといえる。そこで,教育においてGISの活 用を考える際には,r情報」を処理すると考えておきたい。  以上の検討から,対象は「地理情報」というキーワードでまとめることにする。.  第2に技術的な観点でみていきたい。表2の定義では,「コンピュータの使用」,「デジ タルデータ」といった言葉がほとんどの定義・説明で取り上げている。コンピュータを利. 用することは,デジタルデータを扱うことであるので,rコンピュータ」というキーワー ドに置き換えることができよう。第2節において先行研究をおこなったが,ほとんどの文. 献において,コンピュータの利用を当然視している。そこで本研究においては,GISはコ ンピュータを利用の前提とする。.  一方,井田(2001p.14−15)は「コンピュータだけでなく手作業で処理する場合も含め. てGISと考えることがある」として,学校教育において「地理情報の収集から始まる一 連の作業をGISと考える」と述べている。コンピュータの利用を前提としていても,一 連の地理情報の処理作業の過程において,手作業が部分的に存在することは当然考え.られ. ることである。したがって,コンピュータ利用にはその周辺の手作業も含めてとらえてお. きたい。教育においてGISを活用する際,手作業が重要である点については,第5章第 1節において述べる。. 一10一.

(18)  第3に方法的観点からみていきたい。いくつかの定義において「データ取得」,r管理」,. 「分析」といった表現が含まれている。地理情報を収集し,分析し,表現するという地理. 情報の処理過程であることを重視したい。前述のように,近年ではGISは単なるコンピ ュー. システムではなく,地理的過程や空間関係の理解を目指す科学(GIScience)であ. るという考え方がある。GISをツールとして扱うのか,地理情報科学とするのかについて.         チ は,議論の分かれるところである。いずれの立場をとるにせよ,「地理情報の処理する過 程を扱うこと」とまとめておきたい。.  以上の検討から,本研究においてはGISを「コンピュータ技術を用いて,地理情報を 収集・整理・分析し,その結果を地図によって表現することjと定義しておきたい。.  さてGISをツールととらえるのか,科学ととらえるのかという考え方の違いを受け,「学. 校教育におけるGISの活用」において,「GISを教える」のか「GISで教える」のか,と いう議論がある。主な研究者の見解を表0−3にまとめた。本研究においては,どちらの場. 合も含めて考察を進めていきたい。そこで「学校教育におけるGISの活用」のことを, 両方の意味を含めたものとして,「教育GIS」と呼ぶことにするL2)。教育GISという言葉. について,奥貫ほか(2003)も同様の考え方を示している。村上(2004b)は「GISをど. う教えるか」をGIS教育としたのに対し,「GISを教育にどう使うか」を教育GISとして いるが,本研究ではこの立場はとらない。.  なお,「学校教育におけるGISを活用した教材」については教育GIS教材,「学校教育. において利用されるGISアプリケーション」については教育GISソフトと呼ぶことにす る。. 注. 1〉国土地理院の地形図閲覧サービス「ウォッちず」のURLは,h卯:〃watchizu.gsi.gojp/であ る。. 2)統計GISプラザのURLは,ht‡p:〃gisplaza.statgojp/GISPlaza/である。. 3)日本地理学会の会員数は3,110名(名誉・正・賛助会員,2003年9月現在),人文地理学会 は1,650名(2002年6月現在)である。地理情報システム学会の規模は地理学関連学の中では これらに次ぐ規模となっている。. 4)朝日新聞記事データベースを検索した結果である。. 5)後述する教育GISフォーラムでは,この番組を授業に活用することを目的に,教材化プロ. 一11一.

(19) ジェクトを立ち上げ,4回の研究会を開いている。 6)井田・伊藤・村山編(2001)『授業のための地理情報』古今書院がその例である。. 7)教育GISフォーラムの紹介パンフレットには「本フォーラムは,教育現場とGIS関連業界 との「ブリッジセンター」としての役割を担い,各種団体や地域社会とも連携をはかりながら,. 誰もがGISを基礎的なツールとして活用できるより良い利用環境を提供し,あらゆる教育現 場におけるGISの普友・発展に寄与することを目的とします。」とある。. 8)日本地理学会では2002年春季学術大会でr大学の地理学におけるGIS教育の進め方」,2003. 年春季学術大会で「学校教育におけるGIs利用の可能性を探るj,2004年秋季学術大会で「教 育現場におけるGIS活用の課題と方策」のシンポジウムを開いている。. 9)地理情報システム学会は国際シンポジウム「初等・中等教育における地理情報システム (GIS)の可能性」を2002年に開いている。. 10)地理情報システム学会・人文地理学会・立命館大学地域情報研穽センターの共催で2002. 年,2003年,2004年にGls Dayが催された。内容はGIs教育セミナー,GIs講習会などであ る。. 11)教育GISフォーラム・地理情報システムは2003年にGISキャンプ2003を開催し,徳島大. 学と教育GISフォーラムは教育ワークショップin徳島(2003)を開催した。2004年は奈良教 育大学で開催された。 12)教育GISの英訳については,Educational GIS(教育用GIS)(谷,2003),GIS fbr Education (村山編,2004)などの訳が知られているが,ここでは“GIS in Education”としておきたい。Joumal. ofGeography(2003)の特集号では,特集タイトルに“GIS in Education”という言葉がみえる。. 一12一.

(20) GISをめぐる日本国内の主な動き. 表序一1. 研究者・学会の動向. 年 行政・企業の動向 1974 国土情報のデジタル化計画始. 教育の動向. まる(国土庁). 1976. GISシステムALIS開発(東京大学). 1989. 学習指導要領高校地理Bに「地理情 報と地図」の項目登場. 1990. ヂ. 日本地理学会研究グループ「地理 情報システム」発足. 1991. 地理情報システム学会発足. 1994. 高校地理教科書にGISの用語登場 (帝国書院地理B). 1995 地理情報システム関係省庁連. 絡会議設置 1996 国土空問データ基盤の整備及. 地理情報システム学会内に学校教 育委員会設けられる. びGISの普及の促進に関する 長期計画決定 1998. 空間情報科学研究センター(東京 大学)発足. 2000. 日本地理学会シンポジウムrGISは パソコン用教材『使ってみよう国勢調 地理学にいかに貢献するか」. 2001. 査データ』全国の小中学校に配布. 地理情報システム学会学校教育委 員会の活動をまとめた『授業のため. の地理情報』刊行 2002 GISアクションプログラム2002−2 日本地理学会シンポジウム「大学 教育GISフォーラム設立 005 の地理学におけるGIS教育の進め 国際シンポジウム「初等・中等教育に. GIS関係の雑紙「GIS NEXT」. 方」. おける地理情報システム(GIS)の可. 刊行. GIS Day in関西2002. 能性」. 2003 国土交通省「使ってみようGIS 道具箱j公開. 日本地理学会シンポジウム「学校 GIS教育キャンプ第1回(東京). 教育におけるGIS利用の可能性を 教育ワークショップin徳島 探る」および「GISによる新しい地理. 情報伝達と空問行動支援の可能 性j. GIS Day in関西2003. 2004. 日本地理学会シンポジウム「教育 GIS教育キャンプ第2回(長崎). 現場におけるGIS活用の課題と方 教育ワークショップin奈良 策」. GIS Day in関西2004 筆者作成による. 13.

(21) 表序一2 各文献におけるG夏Sの定義 著者・編者. 発行年 1996 前島郁雄他「地理用語集』山川. コンピュータを用い、蓄積されたさまざまなデー生徒向け地理用.  監修  出版. タを地図上に表現する方法。多くの地理情報の. 出典. 定義・説明内容. 備考. 語集. データを組み合わせてデータベースを作成し、 さまざまな情報を検索・解析することにより、行 政や地域研究に役立てることができる。. 高橋 彰他「新鮮地理白最新版』 2003. 地理情報は狭い地域でも膨大な量になるため、.      帝国書院. コンピュータ向けのデータベースの整備が進め. 高校教科書. られている。:コンピュータを用いて、データベー. スから必要な情報を取り出して解析したり、地 図に表現したりすることのできる地理情報シス テム(GIS)…. 帝国書院編「新詳地理資料COM 2003 地理的ないくつかの情報を、それぞれにデータ高校地理資料集  集部  PLETE最新版」帝国. ベース化し、コンピュータを用いて必要に応じて.      書院. 組み合わせるなどの加工をして、視覚的に表示 するシステム。. 船木春仁 「GIS電子地図ビジネ 2000. 地図を媒介として数字データだけではわかりに.      ス入門 GISの最前      線」東洋経済新報. くい現実の動きを分析・解明したり、シミュレーシ. 東明佐久良「完全図解 ビジュ. 啓蒙書. ョン結果を視覚的に捉えようとするシステム。. 2002. コンピュータ上で地図を作製・保存するだけでな. 啓蒙書. く、地理的に分布する情報を、「位置を表す空間.      アルG:S』オーム社. 情報』と『性質を表す属性情報』として管理・利. 用するためのシステムで、空間におけるさまざ まな問題を取り扱うことができます。. 矢野桂司 「地理情報システム. 1999.      の世界一GISで何が. 地図のデジタル化に基づく一連の地図・地域デ. 啓 蒙書. ータベース。.      できるか一」ニュートン.      プレス選書. 杉盛啓明 『授業のための地理      情報』古今書院. 地理情報シ地理情報科学事典 ステム学会   編 高阪宏行 地理情報技術ハンド. 2001. コンピュータ技術にもとづいて地理情報を収集、. 地理教育専門書. 整理、分析、表示する情報処理体系。. 2004. 地理情報科学(GIScience)は、地球上あるい. GIS専門書. は空間上の位置を含む地理情報から生じる基 本的な問題を研究する科学である。. 2002.      ブック. GISが他の情報システムと異なる点は、空間デ. GIS専門書. ータを管理し分析できる能力にある。この能力 はGISの機能性(functionality)と呼ばれ、…空. 間データの取得、処理、蓄積、検索、探索、操. 作、分析、表示・対話の5種類の機能から成り 立っている。. 野上道男他『地理情報学入門』 2001      東京大学出版会. 地理情報の取得・構築→管理→分析→総合吋. GIS専門書. 表示・伝達を有機的に行う…。この処理をコンピ ュータで実装した道具…. 町田 聡 地理情報システム入 1994. 地理情報システムという言葉の定義には、あい.      門マスター. まいな部分がある。デジタルマッピング、マッピ ングシステム、地図情報システムなど、いろいろ. な名称がほとんど同じ意味で使われており、…. 一般には利用の目的に関係なく、図形情報と属. 一14一. GIS専門書.

(22) 性情報を複合的に扱うことができるシステムす べてに対して、この言葉が用いられていること が多い. 高阪宏行・「G1S一地理学への 200書. コンピュータに取り込んだ地図データや属性デ. 村山祐司 貢献』古今書院. GIS専門書. ータを効率的に蓄積・検索・変換して、地図出力. や空間解析、さらには意志決定の支援ができる ように設計されたツールである。. 大竹一彦. 「新版2万5000分 2002. 土地にかかわるさまざまな情報を地図データと. の1地図’デジタル. 関連させて収集・デジタル化してコンピュータに. 化時代の地図』古今. 記録し、それを土地という平面(二次元)、高さを. 書院. もつ三次元、さらに過去・現在・未来という時間. 地図専門書. の要素をいれた四次元の世界について、国土 の計画・防災・環境保全などの行政、…あるい は自然現象の解明などに使おうとするもの。. 浮田典良編「最新地理学用語辞      典改訂版」. 2003. 地理的データを取得し、管理し、統合し操作し、. 分析し、表示する総合的コンピュータ・システ ム。. 各文献より筆者作成. 表序一3教育におけるGIS活用についての2つの考え方 「GISを教える』. rGISで教える』. 対象としてのGIS. 方法としてのGIS. 教育内容. 教育ツール. 南埜(2003). GIS教育. G{S利用. 村山(2004). GIS教育. 高阪(2002). 教育GIS. GISにっいての教育. 奥貫ほか(2003〉. 教育GIS. 本研究. 教育GIS. 筆者作成. 一15一. GISを用いた教育. 地理辞典.

(23) 第1章 高等学校における教育GISの現状 第1節 調査の目的と方法 (1)調査の目的.  前章において,コンピュータの技術発展にともなうGISの発展が,学校教育の分野に おいても影響を及ぼしつつあることを明らかにした。しかしながら,学校教育において,.         ぞ GISの普及は必ずしも進んでいるとはいいがたい。GISの普及を妨げる要因として,秋本 (1996)や立岡(2002)の論点を整理すると,①情報機器の導入の遅れ,②教育に適した. ソフトやデータの不足,③教員のスキルがGISに対応できていないの3点にまとめるこ とができる。また奥貫ほか(2003)は,上記の要因以外に④社会へのアピール,⑤教育へ. 導入する意義,⑥授業カリキュラムを検討する必要性をあげている。村山(2004c)はソ. フト,データ,人材の3つの不足だけが原因だとする考えに疑問を呈し,それ以外に⑦GIS. 提供者と教育現場とのコミュニケーションの欠如と⑧学習指導要領との関連といった課題 を指摘している。.  しかしながら,こうした指摘は狭い範囲の経験に基づいたもので印象レベルの感が否め. ず,実態に即して改めて検討する必要があるように思われる。今後GISを活用した教育 の裾野を広げていくためには,まず教員のGISに対する認知や教育におけるGIS利用の 実態などの現状を把握していくことが重要である。.  こうした中で,中村(1999)は中学校の教員に対して面接調査をおこない,コンヒ。ユー タ設置には自治体や学校間の格差が大きいという問題点を指摘した。また福田・谷(2003). は,埼玉県の高等学校地理教員を対象に,GISを用いた地理教育に対する質問票調査をお. こない,①多くの地理教員はGISに対して明確なイメージをもち合わせていないこと,. ②GISへの期待感を抱いていること,③GISの活用にはコンピュータ環境の不備や教員 の技能研修など課題が多く,具体的利用については暗中模索の状態であることを明らかに した。.  教員のGISに対する認知やGIS利用の実態についての研究は,事例が少ない。本節で はこれまでの研究を踏まえ,高等学校地歴・公民科教員を対象とする質問紙法による調査. を実施し,教員のGISに対する認知と活用の実態を把握することを目的とする。さらに 学校教育においてGIS導入に際しての課題を明らかにしたい。 (2)調査の方法. 一16一.

(24)  調査の対象は,高等学校地歴・公民科教員を調査対象とした。GISの導入をはかりやす いのは地理をはじめとする地歴科であると考え,地歴科教員を対象に考えた。地理を専門 とする教員のみを対象とすることも考えられるが,高等学校の授業では地理専門の教員以 外の教員が地理を担当することも多い。また旧来の取得免許は「社会科」であったため,. 大部分の地歴科教員と公民科教員は重なっている。これが地歴・公民科教員を対象とした 理由である。   〆.  対象教員は,兵庫県立高等学校教員である。またこれに加え,地理教育研究会のメンバ ーに対しても同様の調査をおこなった。この研究会は,自主的に受験指導に関する地理教 育の情報交換をおこなっている。活動としては,主に年1回の研究会と巡検とをおこなっ. ている。メンバーは普通科進学校の高校教員で構成されており,ほとんど全員が地理の受 験指導をおこなっている。したがってこの会のメンバーは地理教育に対する意欲が高いと 考えられる。.  2003年8月におこなわれた兵庫県高等学校教育研究会社会(地歴・公民)部会の授業 研究大会において,調査票を配布し,記入をお願いした。参加した教員54名のうち35名 より有効回答(回収率64.8%)を得ることができだ(表1−1)。.  ここで兵庫県の教育GISの状況について,簡単に触れておきたい。兵庫県では,県立 人と自然の博物館がインターネットGISを公開し,環境教育の分野で参加型のGISを構 築している1)。また県立高等学校教育研究会地理部会の教材開発研究会(2002年2月)に おいては,GISの授業実践報告がおこなわれている2)。しかし,学校教育での具体的取り 組みは少なく今後の課題となっている。.  一方,地理教育研究会に属する高校教員に対しては,2003年8月に研究会がおこなわ れた際,質問票を配布し記入を依頼した。対象は5つの都道府県の高等学校に勤務する11 名であり,全員から有効回答が得られた。  調査票の内容は,冒頭に地理情報システム(Geographical Infb㎝ation System,GIS)に. 関する調査であることを調査対象教員に明示した上で,①GISに対する認知,②教育GIS. の実態,③教育GISへの期待などをたずねた。②については授業におけるコンピュータ. の利用,GIS研修受講の有無,教育GIS実践の有無を,③についてはGISに期待する内 容,教育GISの課題などとなっている(資料1−1)。. 第2節 高等学校教員におけるGIS活用の実態. 一17一.

(25) (1)教員のGIS認知.  教員のGISに対する認知が,回答者の属性によりどのような差があるか,教員の専攻, 年齢,性別さらには地理の教授経験による差の4点から検討する。 a.教員の専攻.  高校教員の専攻とGISに対する認知との関連をみてみる(図1−1)。専攻については,.         み 大学の学部名を選択肢としてあげ回答を求めた。全体として多いのは文学系,次いで教育 学系である。法学系,社会学系などは数が少ない。GISに対する認知も文学系と教育系に. おいて高いといえる。これは地理を専門とする教員が,この2つの専攻より輩出されてい る可能性が高いため,それが回答に反映したのではないかと推測される。. b.性別・年齢.  教員男女別によるGISの認知をみたい。女性教員数が5名と少ないための,どちらの 認知が高いという判断はできない(図1−2)。また,教員の年齢を10歳刻みで区切り,GIS. の認知を見たところ,40歳代の認知が他の年代と比べて高い傾向がみられる。また情報. 機器に親しみかつ,近年教員養成課程を終えた20歳代の教員におけるGISに対する認知 が,特に高いわけではない(図1−3)。I c.地理教員.  地理の教授経験の差によるGISに対する認知をみていく。教授経験の差によりA・B ・Cの3つの群に分けた(表1−1)。.  A群は地理を教えたことがない地歴・公民科の教員である。ここでは地理未担当教員と よぶ。質問票において,地理を教えている教員が回答すべき欄に記入がないものをA群と した。.  B群は,地理授業担当経験のある教員である。高校では教育課程の関係で,地理を専門 としない教員であっても地理を担当していたり,反対に地理を専門としていても,地理を. 担当していないことがある。そこでここでは教員が地理を専門と自覚しているかしていな いかに関わりなく,地理の担当経験がある,または現在担当していると回答した教員を一. 群として把握したい。そこで質問票において,地理の具体的な授業内容についてほとんど 回答のみられる教員を地理教員とした。.  さらにC群は,地理教育研究会に参加している教員である。自主的な研究会に参加して いることから,地理教育に対する意識の高い教員と考えられる。前述のようにほとんどの 教員は地理の受験指導もおこなっている。地理専門教員とよぶことにする。. 一18一.

(26)  図1−4をみると,A群では「知らない」が6割以上あるのに対し,B群では「言葉を聞 いたことがある」が58.8%,C群では「よく知っている」が8割を超えている。このこ とから地理教授未経験教員から地理教員,地理専門教員になるにしたがって,GISの認知 が進んでいることは,明らかである。特にB・C群はどちらも地理を教える教員であるが,. それでも認知の差があることに注意を払いたい。B群の地理教員によるGIS理解が表面         み 的理解,言葉だけの理解にとどまっている可能性がある。このことは,福田・谷(2003). が多くの教員はGISに対して明確なイメージをもち合わせていないと指摘したことと符 合する。.  なお現在ほとんどの教科書でGISを取り扱っているにもかかわらず,B群において「GIS を知らない」と回答した教員が3名みられた。これは近年の地理授業を担当していない教 員の回答と考えられる。. (2)r地理』教育における引Sの扱い.  調査時点では,新課程が始まったばかり(2003年4月から)である。また多くの学校 で「地理」は第2学年以上の開講科目であること3》を考えると,調査対象の教員の多くは 旧学習指導要領に基づいて地理授業をおこなっている。旧学習指導要領では,「地図の機. 能と活用」(地理A)あるいはr地理情報と地図」(地理B)という単元があり,教科書 ではGISについても触れられている。そこでこれらの単元では何を重視して教えている のか,どの程度の時問をかけているのか調査をおこなった。.  まず科目開講率についてみた。地理A・Bの開講数は,28校に対してどちらも18校で あり,開講の割合に大きな葦はなかった(表1−2)。しかし教員の地理担当経験(B・C. 群)別に分けてみると,地理専門教員のC群において,地理Bの開講割合がやや高いこと が分かる。受験科目として地理Bの利用が多いことと無関係ではないと思われる。.  次に地図学習において,どのような内容を重視しているか7つの内容から2つ以内で回 答してもらったところ,飛び抜けて多かったのが,「地形図の利用」であった(全回答の714. %)。続いて「統計地図の利用」,「統計地図の作製」「生活の中の地図」であり,リモー. トセンシングやGIS塗指摘した教員は皆無であった。これについてもB・Cの群別に分 けてみると(表1−3〉,B群が生活の中の地図や統計地図の利用を重視するのに対し,C 群では地形図を重視する傾向がうかがえる。.  地図学習の単元にあでている授業時間についてみると,地理Aでは最小で2時間,最大. で8時間という回答が得られ,平均は4.2時間であった。また地理Bでは2時間から15. 一19一.

(27) 時間まで回答が分散し,その平均は5.0時間であった。地理Aと地理Bとで地図学習の単 元にあてる授業時数が異なるのは,標準単位数が異なっていることが理由の1つとして考 えられる。.  以上のことから,現状の地図学習においては,GISは強調されているとはいえないこと,. 地図学習全体にかける授業時間は少ないことが分かった。地図学習にかける授業が4∼5.         み 時閲では,生徒がGISソフトに触れることは極めて難しいと考えられる。  近年の入試問題や模試問題におけるGIS関連の出題事例をみても,GISや地理情報シス テムという用語を問題として出題することはあっても,GISの利用例や処理方法,GISの. 概念に関する出題はほとんどみられない。知識内容としてGISを教えることに限界があ るといえよう。概念としてのGISを教授するには,別の方法が求められる。この点につ いては第5章で考察したい。 (3)引Sを活用した授業実践.  GISを活用した授業実践は,全回答46の中で1例のみであった。これはC群の地理専 門教員が,学校設定科目 「空間情報の分析と認識」という授業において,GISを積極的に. 取り入れようとしたものである。GISソフトはArcView(ESRI社)を用いている。また,. これとは別に実践する予定であると記したものが1例あった。これはB群の地理教員(女 性)が次学期(2学期)におこないたいとしているもので,学校設定科目ギ地域研究」に. おいて,生徒に住民アンケート結果の整理・表現させる際にGISソフトの「地理情報分 析支援ソフトMANDARA」(谷謙二氏作)を用いるとしている4)。.  近年インターネット上において,教育GISの実践事例が公開され,実践事例が増えて. いるように感じられたが,今回の質問票調査の結果,実際の現場においてはGISの実践 事例は極めて少ないことが分かった。また上記2例は,いずれも地理授業ではなく学校設. 定科目である点が注目される。積極的にG【Sを活用していこうとすると,時間的に地理 授業の枠内では収まりきらないのではないかと想像される。逆に言えば学校設定科目を積. 極的に利用し,教育GISの実践をはかろうとする意欲のあらわれととらえることもでき よう。. (4)教員のコンピュータ利用.  GISを授業で活用するためには,コンピュータの利用が前提である。そこで授業におけ るコンピュータ利用の実態をみていきたい(表1−4)。高校地歴・公民科教員の中で授業 においてコンヒoユータを利用する教員は8人(17.4%)に過ぎない。またその利用頻度も. 一20一.

(28) 5人が年間1から3回としている。4回以上は3人に過ぎない。GISを活用した授業実践 にはコンピュータが授業で利用できることが前提だが,こうした結果から現状ではコンピ ュータ利用は進んでいないことが分かった。.  文部科学省(2004a〉によれば,コンピュータを指導できる教員は,小学校で72.7%, 中学校で53.8%,高等学校で46.1%となっており,高等学校でコンヒ。ユータを指導できる. 教員の割合が低い。きらに高等学校教員の中で,地歴・公民科教員の場合は33.1%と他教 科教員と比べても低く,今回の調査結果と整合している。したがってコンピュータ利用の. という教育GISの前段階に大きな障害があるといえる。.  しかしながら,コンピュータを授業で利用している8人の教員全員がGISを知ってお. り,4人がGIS研修会への参加経験を持っている。さらに2名はGISを授業で活用しよ. うとしている。また8人全員がGISに興味を持ち6人が勤務校でGISを活用した授業が できると回答している。これらのことから少数のコンピュータ利用に興味のある教員が,. GISを活用しようと試みている現状が明らかとなった。.  小橋・鈴木(2004)は,小中高等学校教員のGIS認知を分析する中で,授業における コンピュータ利用が比較的進んだ小学校教員において,GISの認知が進まず,GISの認知 がより高い高等学校において,コンピュータ利用が進んでいないことを指摘している。し かしながら高校地歴・公民科教員の詳細な分析から,高等学校においてコンピュータ利用. に積極的な教員は,GISの活用にも積極的で可能性が高いことが明らかとなった。 (5)教員研修.  GISに関する教育・研修を受けた教員は10名に過ぎない。その内訳をみると,県高等 学校教育研究会地理部会が2002年におこなった教材開発研究会で,GISベンダーの話を 聞いたというものが4名を占め,GIS Day in関西2002および2003をあげたものが3名い. た。その他,立命館大学で2003年3月に開かれたGIS講習会,GISベンダーであるESRI. 社によるArcDesktopの研修会,日本地図センター主催の地理教育研究集会などが1名ず つであった。教育委員会などの公的研修でGIS研修を受けた教員はいない。現状として はGIS関係団体や学会,大学等の役割が大きいといえる。今後,教育委員会のような公 的機関によるGIS研修会の開催が望まれる。.  教員研修への参加を,地理授業担当経験別にみると(表1−5),研修参加者が全体で10. 名と少なく,確実なことはいえないものの,A群(地理未担当教員)からC群(地理専門 教員)になるにしたがい,割合が増加していることが分かる。. 一21一.

(29) (6)GISへの興味と期待度.  調査票の最初にGISとは地理情報システムであることを明記し,GISへの興味をたずね た(図1−5)。その結果,GISに対する認知と比べ,興味があるという回答は増えるものの,. 「大いにあるjという回答は,15.2%に過ぎなかった。また地理授業担当経験の差(A B. C群)別にみるとA群からC群へ向かうにしたがいGISへの興味が増加している。         み  次にGISへの期待度についてみる。GISの活用にっいて,秋本(1999)は教材作成補助 ツール,自習用ツール,調査・課題学習の3っのパターンがあることを指摘している。本 研究ではその枠組みを採用し,教材提示・自習用・地域調査という3つの活用法を示して, G夏Sへの期待度をきいてみた。.  その結果,教材提示・自習用・地域調査というGIS活用のいずれの方法においても,「で きれば活用したい」が最も多く (教材提示25・自習用23・地域調査21),次いで「どち. らともいえない」,r大いに活用したい」の順であった。また3つの活用法において,大 きな差は認められなかった。これは,GISそのものの具体的イメージが理解されていない ことから,活用法についての判断ができなかったことを示しているものと思われる。『3つ の活用法において差がない点については,福田・谷(2003)におい七も同様の結果が得ら れている。.  そこで,rGlsをよく知っている」,r言葉を聞いたことがあるj,r知らない」という認 知の差に分けて,GISへの期待度をみてみた(表1−6)。その結果においても,GISの3つ. の活用法について期待度の大きな差はなかった。しかしGISに対する認知が高い教員ほ ど,活用への期待が大きいことが分かった。地理授業担当経験別にみても,C群(地理専 門教員)の期待度が高かった。.  これらのことから教員への認知を高めれば高めるほど,GIS活用が広まる可能性がある ことを示している。 (7)GISの利用可能性.  勤務校において,GISは授業で利用可能かどうかについてたずねた。その結果,利用で. きるが15,利用できないが25,無回答が6となった。この結果にっいては,GISを知ら ない教員も含んだ数字である。3分の1の高等学校でGISが利用できると即断できない。  むしろ注意したいのは,地理授業経験別の結果である(図1−6)。これをみると,C群 (地理専門教員)ではA・B群と比べ,「利用できる」と回答した教員がやや高いものの, それほどの差はない。. 一22一.

(30)  これまでの検討結果から,C群はGISに対する認知やGIS研修への参加率なども高く, またGISに対する期待も大きかった。しかし利用可能性についてはそれほど高くなく, 意外な結果となった。.  「利用できない」という回答には,教員と環境の2つの要因が関わり合っているものと 考えられる。そこで次にGISの課題として,環境にっいて考える。.         ∫ (8)GISの課題  GISの課題については,GISを活用するにあたっての課題をいくつか提示し,複数回答 してもらった。ここではGISを知らないとする教員の回答は意味を持たないと考え,「GIS. をよく知っている」,「GISという言葉を知っている」と回答した教員(合計31人)が指 摘するGISの課題について分析を進める(図1−7)。.  GISを知っていると答えた全回答数に対する,それぞれの課題の回答率を求め,その高 い項目を順に指摘すると,rソフトやデータに費用がかかる」,r情報機器が不足している」,. 「実施する授業時間数が少ない」の3つが,50%を超えている。次いで「教員の研修機 会が少ない」,r教育に適したソフトが少ない」の順である。本節の(1)において,GISの. 普及を妨げる要因を8点に整理した。その最初に,①情報機器の導入の遅れ,②教育に適. したソフトやデータの不足,③教員のスキルがGISに対応できていないの3点をあげた. が,高校教員自身もその3っをGISを活用するにあたっての課題と自覚していることが 分かる。興味深いのは,「実施する授業時間数が少ない」が50%を超えている点である。. これは地理が大学受験科目の1つであり,そのためGISを授業において活用するゆとり がないことを示したものと考えられる。特にC群の地理専門教員では,11人中10人が「授 業時数が少ない」を課題として回答していることが,そのことを裏付けている。  小橋・鈴木(2004)は,同様の調査で,小学校教員による回答では「授業時数が少ない」. という課題は上位にはないが,中学校教員においては上位にくること,その理由として社. 会科が高校受験科目であり,GISを活用するゆとりがないと教員が判断していることを指 摘している。.  以上の検討から,高等学校地歴・公民科教員においては,地理教員ではGISに対する 認知の高い教員が多いが,それ以外の教員においては認知は不十分であることが分かった。. また科目「地理A・B」における地図学習においては,地形図学習が重視され,GISは軽 視されている。また地図学習に用いられる時間数も多くない。. 一23願.

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