第1節 GIS授業実践事例分析の目的と方法
(1)目的
近年,「 IT授業 実践ナビ」 )や「授業でITを使ってみよう」2)のようにインターネッ ト上において,ITを活用した授業のデータベースが構築されるようになってきた。これ にともなってGISを活用した授業実践の事例(以下GIS実践事例)も徐々に増加しつつ
ある。
本章では,学校教育においておこなわれているGIS実践事例をデータベース化し,そ の分析をおこなう。そして現状を把握することにより,教育GISのあり方を考察する。
分析にあたっては,前章で明らかとなった地理的技能とGIS技能の整合性の検討成果を 活かし,技能を軸として進める。具体的には以下に示した3点を検討する。
①GISを活用した授業が,どの校種,科目,学年に多いのかを明らかにする。
②授業におけるGIS機器やソフトの活用の目的や活用形態,活用場所,空間スケールの 傾向を明らかにする。
③授業のどのような過程で,どのように地理的技能の育成をはかろうとしているのか,ま たそれはどのようなGIS技能と関わっているのかを明らかにする。
(2)方法
GIS実践事例の収集は,学会誌上での論文や,研究会における口頭発表資料の収集に加 え,Web資料も対象とした。できるだけ幅広く多くの事例を集めるよう努めたため,一 部授業目標や内容が不明確なものも含まれている。集められた事例は,次に述べる項目に 基づきデータベースとして整理した。なお,ここでいうGIS実践事例とはGISソフトやGIS データ,GIS関連機器を活用していると判断されるものである(第4−1表)。
目的①を明らかにするために,実践授業ごとに校種,学年,実施教科,単元,授業テー マ,授業目標,GIS活用の観点などの項目を設定した。また目的②を明らかにするため,
サポートの有無,GIS活用の方向性,GIS活用の場面,GIS活用の形態,GIS活用の場所,GIS 活用の地域スケール,GIS技能,GIS活用の目的などの項目を設定し,その分類をおこな
った。さらには目的③に関しては,授業内容におけるGIS技能・地理的技能のあり方に っいての項目を設定した。それぞれの記載項目の内容は次のとおりである。またデータベ ースのフォーマットは資料4−1に示したとおりである。
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a.授業内容
授業の内容を授業経過にしたがって簡単に記載し,各内容においてGISが関わってい る場合には,そのGIS項目を記入した。またGIS項目に関わるGIS技能の修得がみられ ると判断した場合は,GIS技能も記入した。さらに授業内容に関わる地理的技能について も記載した。
GIS項目とGIS技能との関わりについて,説明しておく。GIS項目とは,GIS機能の項 目である。しかし授業の内容によっては技能修得に活かせるものもある。その場合はGIS 技能要素でもある。反対にGIS項目を授業で活用していても,生徒が技能を身につけて いると判断できない場合もある。この場合は,GIS項目に記入するものの,GIS技能欄に は記入しないことにした。
b.サポートの有無
外部からのサポートの有無を記載した。サポートにはGIS企業の教育支援プログラム や財団法人によるIT支援事業などがあげられる。具体的にはGIS関連の企業,大学,教 育研修所などによるソフトの事前講習,GISソフトの開発協力,講師派遣を指している。
ティームティーチングや情報教育の補助員は含まない。
c.GIS活用の方向性
GIS活用について,どのレベルまで教授するか,教員が何を目標としているかについて 記載した。r電子地図」,rGIS利用」,rGIS教育」の3つに分類した。
レベルについては,本格的なGIS活用の前段階として,デジタル地図を表示させる段 階が,GIS実践事例に認められた。これを「電子地図」とした。この段階では地図の加工 はおこなわれていない。
電子地図より上の段階は,地図の作製や加工を含む段階である。これについては南埜
(2003)を参考に,「GIS利用」とrGIS教育」とに分けた。GIS利用とは,その目標がGIS を教えることにあるのではなく,地理教育や総合学習など別のところにあると判断できる ものである。すなわち「GISで教える」である。またGIS教育とは,GIS活用の目標がGIS を教えることにある,すなわち「GISを教える」と判断できるものである。
d,活用者
GISソフトや機器を活用しているものを記載した。「教員」,「学習者」,「教員と学習者」
の3つに分類した。教員とは,教員が提示的に活用する場合,学習者とは学習者が実習的 に活用する場合,教員と学習者とは両方が活用する場合である。
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e.活用場面
単元のどの段階でGISソフトや機器を利用するのかを記入した。「導入」,「展開」,「ま とめ」の3っに分類した。
f.活用形態
学習者のGISソフトや機器の活用形態を記入した。「一斉学習」,「グループ学習」,「個 別学習」の3つに分類した。
g.活用場所
GISソフトや機器の活用場所である。r普通教室」,rコンピュータ教室」,「特別教室」,
「屋外」に分類した。特別教室の例としては社会科教室,図書館などがあげられる。
h.活用の地域スケール
単元において扱う地域教材の地域スケールである。「身近な地域(校区)」,「市町村」,
「都道府県」,「国」,「世界」に分類した。
i.引S技能
GISを活用することによって育成される技能が,どのようなものであるかを記載した。
第3章の分析をもとに,「地理情報の収集」,「地理情報の整理」,「地理情報の分析」,「地 理情報の表示」の4つの技能に分類した。
j.活用目的
GISソフトや機器を活用する目的である。項目については,r IT授業 実践ナビ」の 事例検索項目を参考に,「課題提示」,「動機付け」,「教師説明資料」,「学習者説明資料」,
r繰り返しによる定着j,rモデル提示」,r失敗例提示」,r体験想起」,r比較」,r振り返 り」,「体験の代行」の11項目とした。各実践事例において2つ程度の該当項目を考えた。
「 IT授業 実践ナビ」に掲載されているGIS実践授業の場合は,活用目的において幾つ 項目があがっていても,そのまま記載した。
第2節 GlS実践事例の分析結果 a.校種・学年別・科目別
59のGIS実践事例は,校種別にみると小学校19,中学校20,高等学校20である(図4−1)。
59事例の分析結果は,資料編として添付している。小学校では第3学年より実践事例が 始まり,低学年ではみられない。これは低学年においては,コンピュータ操作のリテラシ ーが十分ではないことや,GISを扱える単元が少ないことによるものと思われる。中学年
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においては,社会科で地図学習や身近な地域の学習が実施され,GIS実践事例がみられる ようになる。しかしながら実施科目は,社会科が5事例に対し総合的な学習の時間が12 事例もあり,総合的な学習の時間への片寄りがみられる(表4−2)。
中学校においては,第1学年が最も多く 12例にのぼる。教科としては,社会科の実施 が大部分である。第1学年に多いのは教育課程においては,第1学年から第2学年にかけ て社会科地理的分野が学習され,特に身近な地域の単元が前半に登場することと関連して いると考えられる。
高等学校の実施科目としては,「地理」が最も多い。第1学年から第3学年になるにし たがって増加するのは,地理が第2学年,第3学年で開講されることが多いためと考えら れる。また高等学校では,学校設定科目や職業科における課題研究において,多くの実践 がされている点が注目される。こうした科目も第3学年で開講されることが多い。
以上の考察から,実践の時期は教育課程と密接に関係していることが明らかとなった。
b.サポートの有無
59事例のうちサポートのあるものは27事例,ないものは22事例,記入なしが10事例 である。図4−2に校種別にその数をまとめた。記入なしを含めた全体のうち,サポートあ りが45.8%を占めている。サポートの内容は,企業や大学による教育支援を活用したもの で,具体的な事例としては平成12年度Eスクエア エデュマッププロジェクト,平成13 年度Eスクエア4次元GISプロジェクト3),ESRI社の教育におけるGIS利用支援プログ
ラム4)などがあげられる。
校種別にみると小学校においては14事例,中学校では7事例,高等学校においては6 事例となり,小学校においてサポートの多い点が注目される。
c.GIS活用の方向性
図4−3に校種別にGIS活用の方向性の数をまとめた。GIS利用を目指すものが49事例 を占め,全体の83%を占めている。これに対し,電子地図の段階にとどまるものは7事 例である。GIS教育を目指すものは2事例に過ぎない。いずれの校種においてもGIS利用 が大多数を占める。しかしながら,電子地図の5事例,GIS教育の2事例は高等学校のも のである。このことから高等学校においては,GIS活用の方向性に幅のある様子がうかが
える。
d.GlS機器・ソフトの活用者
図4−4には,校種別の活用者をまとめた。GISソフトや機器を活用するのは,学習者が44
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