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学校教育におけるGISの活用

ドキュメント内 日本における教育GISの展開に関する研究 (ページ 44-51)

 学校教育におけるGISの活用は,様々なところで可能性をもっ・ている。表2−1に高等学 校における教育活動の一覧を示した。教科教育においては,地歴はもとより公民・理科・

情報などの普通教育科目,農業・商業などの専門教育科目での活用が考えられる。学校設 定科目や総合的な学習の時間では,比較的自由に教育GISの授業設計ができると考えら         ノ

れる。また特別活動では,人権教育・健康教育・安全教育などにおいてその可能性をもっ ている。例えば烏山(2003)は地理Aにおいて「身近な地域の危険度マップ」を作製し,GIS が生徒指導や安全教育において活用できる可能性を指摘した。筑波大学付属高等学校では,

クラブ活動において教育GISソフトのスクールGISを活用した事例を報告している(E スクエア,2001)監)。本章では,そうした中から科目「情報」と「総合的な学習の時間」

を取り上げ,GIS活用の可能性を検討する。最もGISとの関連が深いと考えられる「地理」

については,次章において別に検討する。

第1節 情報教育におけるGIS

 本節では情報教育と教育GISの関わりについて考察し,情報教育における教育GISの 可能性を指摘する。

 普通教科r情報」の目標は,平成11年度版学習指導要領(文部省,1999a)によれば,

「情報及び情報技術を活用するための知識と技能の習得を通して,情報に関する科学的な 見方や考え方を養うとともに,社会の中で情報及び情報技術が果たしている役割や影響を 理解させ,情報化の進展に主体的に対応できる能力と態度を育てる」と示されている。そ してこの目標は,情報教育の3つの目標と対応していることを明らかにしている(文部省

,1999a)。3つの目標について,1997年「初等中等教育における情報教育の推進等に関す る調査研究協力者会議」は,第一次報告「体系的な情報教育の実施に向けて」(以下第一 次報告)をまとめ,「情報活用の実践力」,r情報の科学的な理解」,「情報社会に参画する 態度」の3つの観点を提言した(文部省,1999a)。この提言はその後の情報教育に大きな 影響を与えている。秋本(2003a)は,GISは情報教育の3つの目標のそれぞれに関わる

と指摘した。秋本(2004a)は具体的教材としてのGISの意義を強調し,高校普通教科「情 報」におけるGIS活用の事例を示している。しかしながら情報教育の目標とGISとがど のように関わるかについては,具体的な検討がなされていない。以下では情報教育の3つ

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の目標とGISとの関連性について論じる。

(1)情報活用の実践力とGIS

 「情報活用の実践力」については,「調査や目的に応じて情報手段を適切に活用するこ とを含めて,必要な情報を主体的に収集・判断・表現・処理・創造し,受け手の状況など を踏まえて発信・伝達できる能力」とされている(第一次報告)。前半の「情報を主体的         ぞりに収集・判断・表現・処理・創造し」とは,情報を処理する一連の流れ(情報処理過程)

を示しているが,これは序論で定義したGISの「コンピュータ技術を用いて,地理情報 を収集・整理・分析し,その結果を地図によって表現すること」とほぼ一致している。情 報教育では「情報処理過程」と呼ぶのに対し,GISではr地理情報処理過程」と呼べるも のである。後半の「受け手の状況などを踏まえて発信・伝達できる能力」に対してGIS は地図による情報発信の能力が対応する。

 情報教育では対象について,「情報」としているのに対し,GISの対象は「地理情報」

である。両者の包含関係で言えば,地理情報は情報の中に包含される。そして地理情報は 属性情報の他に位置情報をもっている点が,地理情報以外の情報と異なる点である。しか し,社会の情報の中には,位置情報をもつものが数多く存在する。したがって情報社会に おいては,地理情報の扱い方も身につけておく必要があると考える。

(2)情報の科学的な理解とGIS

 「情報の科学的な理解」については,「情報活用の基礎となる情報手段の特性の理解と,

情報を適切に扱ったり,自らの情報活用を評価・改善するための基礎的な理論や方法の理 解」と説明している(第一次報告)。「情報を適切に扱ったり,自らの情報活用を評価・

改善するための基礎的な理論や方法の理解」に関連し,高等学校「情報B」では,「問題 のモデル化やコンピュータを活用した解決」の項目があり,モデル化とシミュレーション があげられている。これについては,GISでは地理情報の分析がこれに対応する。ボロノ イ分割・バッファー分析・ネットワーク分析を用いれば,地域事象のモデル化やシミュレ ーションについての教材を作成することが可能であり,「情報の科学的理解」についても 内容的に対応可能と考えられる。

(3)情報社会に参画する態度とGlS

 「情報社会に参画する態度」とは「社会生活の中で情報や情報技術が果たしている役割 や及ぼしている影響を理解し,情報モラルの必要性や情報に対する責任について考え,望 ましい情報社会の創造に参画しようとする態度」を指している(第一次報告)。インタビ

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ユー 査など地理情報を収集する過程や地図に表現して発信する過程において,「情報モ ラルの必要性や情報に対する責任について考え」させることができよう。インターネット GISが普及すれば,生徒に情報発信させる機会は増加すると考えられる。またGISコンテ ンツのデータベース化が進めば,生徒の作成した内容が行政や生涯学習・地域活動の中で 利用されることも考えられる。「望ましい情報社:会の創造に参画しようとする態度」形成         ゼをはかる重要性は大きくなることが予想される。

 このように「情報社会に参画する態度」においても,GISは重要な役割を果たす可能性 をもっている。

 以上,情報教育の3つの目標とGISの関わりにっいて検討をおこなった。情報機器の 操作については小学校においても取り組まれている。中学「技術・家庭」にも情報分野が 導入されている。高等学校においては普通教科「情報」,専門教科「情報」が設置された。

授業全体における情報教育の重要性は増加している。したがって,情報機器の取扱いやノ フトの操作といった方法だけでなく,「具体的教授内容」が情報教育に必要となってくる だろう。この点について井寄・浅田(2003)は,中学社会科と技術家庭科のクロスカリキ ュラムにおいて,GISの活用を実践報告する中で,技術家庭科教員の立場から,「これま ではコンピュータの使い方を教えているに過ぎなかった。GISは多くの可能性をもってい る。」と発言している。こうしたことからGISはこれまでの情報教育において不十分だっ た具体的内容を提供することができるのではないかと考えられる。

 しかしながら教育GISの実践例にっいては,秋本(2003a)が情報Aの学習内容に沿っ た課題例を示し,小橋(2003)が2っの具体的事例を提案している他は未見である。普通 教科「情報」の教科書を分析した伊禮(2004)は,情報A・B・Cの30冊の中でGISの 記述をしたものは2冊に過ぎないと指摘している。今後,教育GIS教材をどのように開 発するかが大きな課題となろう。

第2節 総合的な学習の時間におけるGIS

 総合的な学習の時間とは,r総合的な学習の時間1こおいては,各学校は,地域や学校,

生徒の実態等に応じて,横断的・総合的な学習や生徒の興味・関心等に基づく学習など創 意工夫を生かした教育活動を行うものとする。」(平成11年度版高等学校学習指導要領第

1章第4款の1)とされている。

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 本節では総合的な学習の時間と教育GISの関わりについて考察し,総合的な学習の時 間におけるGIS活用の可能性を指摘する。総合的な学習の時間におけるGIS活用の可能 性について伊藤(2001)が,環境教育との関わりで若干触れている。しかし具体的にその 可能性を論じたものは松田(2002),福田(2003)などわずかである。松田(2002)は,

総合的な学習の時間においてGISを活用できそうなテーマ8つを紹介している。福田

(2003)は,中学校における総合的な学習の時間におけるGIS活用の事例を示した。し かしながら総合的な学習の時間のねらいとの関わりでGISを論じたものは,筆者の知る 限りではみられない。ここでは学習指導要領のねらいと教育GISの関わりについて考察

し,教育GISの可能性を指摘する。

 総合的な学習の時間のねらいについて,平成ll年版高等学校学習指導要領では,以下 の2点を述べている(第1章第4款の2)。

①自ら課題を見付け,自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,よりよく問題を解決する資 質や能力を育てること。

②学び方やものの考え方を身に付け,問題の解決や探求活動に主体的創造的に取り組む態 度を育て,自己の在り方生き方を考えることができるようにする。

 ①については,r生きるカ」の育成と考えることができ,②についてはr問題解決に向 けての主体的,創造的態度の育成」と「自己の生き方について考える」に分けて考えるこ

とができる。

 ①の「生きる力」に関連して,井田(2001)は,GISを含む地理情報の一連のプロセス が,総合的な学習の時問においても有効であると論じ,「修得した知識を活用し,合理的 判断をし,意志決定する」という「生きるカ」を育成するためには地理情報の考え方は不 可欠であると強調している。また②に関連して,井田(2004)は直接的に総合的な学習の 時間には触れていないが,GISの活用方法として提示だけでなく意見交換のプロセスを提 案している。そして現代社会では受動的な学習から能動的な学習への転換が求められてお

り,GISはそれを学習として具現化できる可能性をもっていると述べている。

 以上のことを踏まえ,ここでは総合的な学習の時間の特徴ごとに,GIS活用の可能性を 検討する。総合的な学習の時間の特徴について宮崎編(2000)は7点をあげている。この うち名称・評価・単位数など実施体制に関わるものを除くと,(1)横断的・総合的な学習,

(2)地域や学校,生徒の実態,生徒の興味・関心を生かした教育活動,(3)問題(課題)解 決学習,体験的学習の3つがあげられる。そこでこの3点と教育GISとの関連について

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