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博士(文学)学位請求論文審査報告要旨

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Academic year: 2022

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(1)博士(文学)学位請求論文審査報告要旨 論文提出者氏名 論 文 題 目. 柳井貴士 現代沖縄文学の研究-<戦争>表象を中心に. 柳井貴士氏は本論文で、本土の戦後文学とは著しく異なる沖縄戦後文学、沖縄現代文学に おける「戦争」表象について論じている。本土では主に一五年戦争が題材になり、沖縄でも 沖縄が戦場となった沖縄戦が描かれたが、沖縄ではそれで終わらなかった。アメリカの支配 下、朝鮮戦争、ベトナム戦争と、米軍基地を介して隣接した戦争が文学として捉えられた。 「戦後の戦争」をめぐる文学表象である。四部構成の本論文は、第一部でまず、沖縄戦をめ ぐる文学表象を古川成美の『沖縄の最後』、石野径一郎『ひめゆりの塔』ほかから検討し、 第二部では一九五〇年代の文学状況を雑誌『琉大文学』を通し明らかにしたうえで、大城立 裕の「棒兵隊」「カクテル・パーティー」考察。第三部では、ベトナム戦争敗退前後のアメ リカ軍と沖縄の共同体との関わりを又吉栄喜の初期作品からあぶりだし、第四部は目取真俊 の諸作品から、沖縄戦の記憶の困難性と可能性とが論じられる。 序論「〈戦争〉をめぐる沖縄現代文学の研究にあたって」では、なぜ現代沖縄における戦 争文学を本研究で重視するのかと問い、本土の文学を中心なされてきた戦後文学研究、戦争 文学研究は、明らかに沖縄における戦争文学および「戦後0年」と指摘される戦後なき戦後 文学を排除して成り立ってきたことを批判。そうした戦後文学研究と戦後文学研究は、戦争 をめぐる沖縄現代文学研究によって相対化されねばならないこと、さらに沖縄現代文学研究 が加わることによって、日本における新たな戦争文学および戦後文学研究が始まらねばなら ないと説く。 第一部第一章では、古川成美の記録文学『沖縄の最後』を論じている。従来この作品は仲 程昌徳等に「自己批判」の欠如、「底の浅い現状肯定の楽観主義」と批判されてきたが、作 品の語り手には「本土=ヤマト」と「沖縄」とを分断し、序列化する植民地主義的な態度が 明白である。語り手は沖縄戦を自己のものとしてとらえられていない。従来の研究で取り上 げられなかった再版に際しての書き換えからは、そうした偏向がよりいっそう浮かび上が る、とする。第一部第二章では、古川成美の『死生の門』を論じている。八原博通の手記を 元に作戦参謀の視点から沖縄戦を「再認識、再構成」するとき、『沖縄の最後』にまして、 沖縄との距離は拡大しているとする。第一部第三章では、石野径一郎の『ひめゆりの塔』な ど、「ひめゆり」をめぐる複数の言説、作品をとりあげ論じている。そこに収容所内の捕虜 たちによる語りの欲望の痕跡を見出す。戦争による敗北と、成し遂げられなかった死の代理 表象として「ひめゆり」の少女たちが死を全うする物語は、収容所内の男性のまなざしによ る造形を経ていたと結論付けている。 第二部第一章では、一九五〇年代の文学状況を考察対象にしている。『琉大文学』同人の 抵抗(否)を中心に、同人と先行する作家、大城立裕との「論争」に注目する。 『琉大文学』 同人、とくに新川明と大城の論争は、社会性を重視した新川の文学性と、作品内容や構成を どのように表出するか重視した大城とに分類され語られるが、二者択一的な分類では、大城 のテクストが示す問題を看過すると批判する。第二章では、大城立裕「棒兵隊」を考察して いる。大城は「棒兵隊」によって沖縄戦へ視野を広げ、武器も無く「棒」を持ち戦わざるを 得ない兵隊を物語の中心に置いた。第三章では、大城立裕の「カクテル・パーティー」を考 察する。米国/沖縄/本土/中国人という四種の位相を区別しながら、「語り」の饒舌と、 混在された位相が前景化する際の沈黙に注目している。.

(2) 第三部一章では、又吉栄喜の単行本『ギンネム屋敷』、 『パラシュート兵のプレゼント』所 収の作品を初期作品群とし、とくに「カーニバル闘牛大会」、 「パラシュート兵のプレゼント」 を検討し、本作に現われる沖縄内部へのまなざしを考察している。強権的支配者である「ア メリカ」を、 「少年」である語り手がいかに受容、また排除するのかをたしかめ、同時に「沖 縄=共同体」への違和感をあきらかにする。第二章では「ジョージが射殺した猪」に焦点を あてる。ベトナム戦争から米国が撤退した後に書かれた本作では、弱い米兵としてのジョー ジが設定されている。又吉はアメリカ兵を通して、 「アメリカ」と、そこに交わる「沖縄=共 同体」ともに相対化している。 第四部では、沖縄をめぐる戦後の戦争表象をとらえるために、戦後世代の作家である目取 真俊の諸作品を取り上げている。第一章は、芥川賞受賞作品「水滴」を論じている。 「水滴」 は徳正と清裕といった鏡像的二者の関係を視野に入れることで複層的になるテクストであ り、沖縄戦から生じた記憶の問題は水という主題と関わりながら作品の重要な要因となって いる。そこで「寓意/寓話」がいかに機能しえているのかを分析、徳正の内部で膨れ上がる 懺悔と無力感は、沖縄戦を語ることの困難性を示唆しているとまとめる。第二章では「魂込 め」を考察。中心人物ウタの記憶の問題を中心に「魂落とし」により沈黙を強いられる幸太 郎について、戦争を「語る」あるいは「記憶」することとの関連において分析し、沖縄戦を 語ることの困難性の深まりの中にこそ、なお語ることの重要性と可能性とを見出そうとす る。 本論文は、「戦争文学」と「戦後文学」とが区別されてきた本土中心の現代文学史への、 戦争と戦後とがはっきりと線引きできない沖縄現代文学からの異議申し立てであり、書き換 え要請になっている。ただし、そうであれば、本論文で取り上げられた作品はけっして充分 な数とはいえないだろう。同じ作家でも他の作品と考察対象となった作品との関係はほとん ど語られていない。大城立裕、又吉栄喜、目取真俊という芥川賞受賞作家の代表作を論じて 並べただけではないかという厳しい意見もあった。また、分析の際使用されるキー概念があ いまいという意見もあった。さらに、沖縄=被害者という視点に加えて、沖縄=加害者という 視点も必要ではないか、とも指摘された。しかし、問題意識がはっきりしていること、ひと つひとつの作品分析は、従来の研究を踏まえつつ、精緻かつ斬新なものであることは審査委 員皆の認めるところであり、「今後の課題」にも示された、現代沖縄文学以前の近代沖縄文 学における戦争表象研究は大いに期待できる。 以上から、審査委員一同、本論文が「博士(文学)」を授与するに十分値するとの結論に 達した。ここに報告する次第である。. 公開審査会開催日. 2016 年 6 月 11 日. 審査委員資格. 所属機関名称・資格. 氏名. 専門分野. 博士学位名称. 主任審査委員. 早稲田大学文学学術院教授. 高橋 敏夫. 日本近代・現代文学. 審査委員. 早稲田大学文学学術院教授. 宗像 和重. 日本近代文学. 審査委員. 早稲田大学文学学術院教授. 十重田 裕一. 日本近代・現代文学. 博士(文学)早稲田大学. 審査委員. 早稲田大学文学学術院教授. 鳥羽 耕史. 日本近代・現代文学. 博士(文学)早稲田大学. 審査委員. 早稲田大学名誉教授. 中島 国彦. 日本近代文学. 博士(文学)早稲田大学. 審査委員. 筑波大学名誉教授. 黒古一夫. 日本近代文学.

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審査委員 早稲田大学文学学術院・教授 博士(文学)早稲田大学 池澤 一郎

審査委員 早稲田大学 文学学術院・教授 博士(文学)早稲田大学 中国宋代史 近藤 一成. 審査委員 中央大学 文学部・教授