博士(文学)学位請求論文審査報告要旨
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(2) 第三部一章では、又吉栄喜の単行本『ギンネム屋敷』、 『パラシュート兵のプレゼント』所 収の作品を初期作品群とし、とくに「カーニバル闘牛大会」、 「パラシュート兵のプレゼント」 を検討し、本作に現われる沖縄内部へのまなざしを考察している。強権的支配者である「ア メリカ」を、 「少年」である語り手がいかに受容、また排除するのかをたしかめ、同時に「沖 縄=共同体」への違和感をあきらかにする。第二章では「ジョージが射殺した猪」に焦点を あてる。ベトナム戦争から米国が撤退した後に書かれた本作では、弱い米兵としてのジョー ジが設定されている。又吉はアメリカ兵を通して、 「アメリカ」と、そこに交わる「沖縄=共 同体」ともに相対化している。 第四部では、沖縄をめぐる戦後の戦争表象をとらえるために、戦後世代の作家である目取 真俊の諸作品を取り上げている。第一章は、芥川賞受賞作品「水滴」を論じている。 「水滴」 は徳正と清裕といった鏡像的二者の関係を視野に入れることで複層的になるテクストであ り、沖縄戦から生じた記憶の問題は水という主題と関わりながら作品の重要な要因となって いる。そこで「寓意/寓話」がいかに機能しえているのかを分析、徳正の内部で膨れ上がる 懺悔と無力感は、沖縄戦を語ることの困難性を示唆しているとまとめる。第二章では「魂込 め」を考察。中心人物ウタの記憶の問題を中心に「魂落とし」により沈黙を強いられる幸太 郎について、戦争を「語る」あるいは「記憶」することとの関連において分析し、沖縄戦を 語ることの困難性の深まりの中にこそ、なお語ることの重要性と可能性とを見出そうとす る。 本論文は、「戦争文学」と「戦後文学」とが区別されてきた本土中心の現代文学史への、 戦争と戦後とがはっきりと線引きできない沖縄現代文学からの異議申し立てであり、書き換 え要請になっている。ただし、そうであれば、本論文で取り上げられた作品はけっして充分 な数とはいえないだろう。同じ作家でも他の作品と考察対象となった作品との関係はほとん ど語られていない。大城立裕、又吉栄喜、目取真俊という芥川賞受賞作家の代表作を論じて 並べただけではないかという厳しい意見もあった。また、分析の際使用されるキー概念があ いまいという意見もあった。さらに、沖縄=被害者という視点に加えて、沖縄=加害者という 視点も必要ではないか、とも指摘された。しかし、問題意識がはっきりしていること、ひと つひとつの作品分析は、従来の研究を踏まえつつ、精緻かつ斬新なものであることは審査委 員皆の認めるところであり、「今後の課題」にも示された、現代沖縄文学以前の近代沖縄文 学における戦争表象研究は大いに期待できる。 以上から、審査委員一同、本論文が「博士(文学)」を授与するに十分値するとの結論に 達した。ここに報告する次第である。. 公開審査会開催日. 2016 年 6 月 11 日. 審査委員資格. 所属機関名称・資格. 氏名. 専門分野. 博士学位名称. 主任審査委員. 早稲田大学文学学術院教授. 高橋 敏夫. 日本近代・現代文学. 審査委員. 早稲田大学文学学術院教授. 宗像 和重. 日本近代文学. 審査委員. 早稲田大学文学学術院教授. 十重田 裕一. 日本近代・現代文学. 博士(文学)早稲田大学. 審査委員. 早稲田大学文学学術院教授. 鳥羽 耕史. 日本近代・現代文学. 博士(文学)早稲田大学. 審査委員. 早稲田大学名誉教授. 中島 国彦. 日本近代文学. 博士(文学)早稲田大学. 審査委員. 筑波大学名誉教授. 黒古一夫. 日本近代文学.
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審査委員 早稲田大学文学学術院・教授 博士(文学)早稲田大学 池澤 一郎
審査委員 早稲田大学 文学学術院・教授 博士(文学)早稲田大学 中国宋代史 近藤 一成. 審査委員 中央大学 文学部・教授