マーケティング・リサーチ特論 2020.07.15補助資料
~ブランド選択モデル(4)~
階層ベイズプロビットモデル
2020年度1学期: 水曜2限 担当教員: 石垣 司
1
• 本講義で紹介する多項ブランド選択モデル
講義の流れ ~IIA特性と異質性の視点から
ロジットモデル
Cox (1958) ロジスティック回帰 Luce (1959) 公理から導出 Marshak (1960) IIA特性と確率的効用 Luce & Suppes (1965) ガンベル分布 McFadden (1974) 現在の形に定式化
プロビット モデル
Hausman & Wise 1978
Nested ロジットモデル
Ben-Akiva 1973
潜在クラスロジットモデル
(有限混合分布モデル)
Kamakura & Russel 1989
ランダム係数 ロジットモデル
(無限混合分布モデル)
Boyd & Mellman 1980 Cardell & Dunbar 1980
階層ベイズ プロビットモデル
McCulloch & Rossi 1994 Rossi, McCulloch & Allenby 1996
IIA特性の緩和
消費者の異質性
参照文献:兵藤・章2000, 土田2010, 髙橋2013等 2
マーケティングと階層ベイズモデリング
1. 計量経済学では、パネル内の少数データに内在するバイアスを 除去して、経済全体を反映する共通性を推定対象としてきた。
異質性はそこでは「バイアス」と呼ばれ、推定対象外であるので 積分して除去される量である。しかし、マーケティングでは、この バイアスこそが貴重な情報であるという逆転の発想があり、こ こに大きな特徴がある。
2. 経済学では意思決定者や分析者の主観的判断を極力排除し ようとするのに対して、マーケティングでは経験やビジネスセンス、
経営手腕としての主観的な判断を意思決定に積極的に取り入 れる土壌がある。そして階層ベイズモデルは、異質性と共通性 の間で情報量の振り分けを自動的に行うというメリットがある。
照井伸彦、 『ベイズモデリングによるマーケティング分析』、東京電機大学出版局、2008
3
データの階層性
• マルチレベルモデリング
– 異なる集団から得られたデータを扱う統計モデル – 社会科学で多用
•
例 地域毎の特性, 学校毎の成績, など
Gelman, "Multilevel (Hierarchical) Modeling: What It Can and Cannot Do", pp.432-435, Technometrics, 2006
– 階層線形回帰モデルの利用が主
•
ランダム係数モデルによる集団のモデル化
•
集団単位の効果と個別単位の効果の分離
4 A高校
生徒 1の 成績
生徒 NAの 成績 生徒
2の 成績
・・・
・・・
B高校
生徒 1の 成績
生徒 NBの 成績 生徒
2の 成績
・・・
・・・
C高校
生徒 1の 成績
生徒 NCの 成績 生徒
2の 成績
・・・
・・・
各高校の階層のデータ
(生徒数、入試の難度など)
各生徒の階層のデータ
(個人の勉強時間、通学時間など)
ベイズ推定と階層性
• ベイズ推定の原理 ( 復習 )
•
データが与えられたパラメータの条件付き分布(事後分布)は、パラ メータに関する情報そのものである
– 尤度関数 , 事前分布
– 事後分布
• 階層性の表現
– が へのみ影響を与える階層構造を仮定する場合、
事後分布は
•
パラメータである 𝜃 にも事前分布 𝑃 𝜃 を仮定
•
𝑃 𝜃 |𝜃 でその確率的構造も記述できる
– 階層構造の統計的モデリングと相性抜群
5
ブランド選択と階層性
• 各消費者の嗜好で , 各購買機会にブランド選択 1. 消費者属性
(消費者の共通性)の階層
– 各消費者は属性
(年代, 職業など)に応じて 共通した行動をとる
(という期待)– その属性が個人の嗜好に 影響を与える
(という期待)2. ブランド選択
(個人の異質性)の階層
– 各消費者は異なる嗜好をもつ
•
異なるブランド価値
•
異なる反応係数
– 各購買は各消費者の嗜好を 反映して生じる
6 消費者1
時刻1 の購買
時刻T の購買 時刻2
の購買 ・・・
・・・
消費者2
時刻1 の購買
時刻T の購買 時刻2
の購買 ・・・
・・・
消費者3
時刻1 の購買
時刻T の購買 時刻2
の購買 ・・・
・・・
消費者異質性のモデル化(1)
• 消費者属性
(消費者の共通性)の階層
– “消費者の属性が個人の嗜好に影響を与える”をモデル化
•
反応係数を属性の回帰モデルで表現
•
消費者の属性データ 𝒛 1, 𝑧 , … , 𝑧
•
回帰係数ベクトル 𝝓 𝜙 , 𝜙 , … , 𝜙
•
Φ 𝝓 , … , 𝝓
– 行列表現
•
𝑽 は誤差項 𝑒 の分散共分散行列
7
消費者i
𝑌
𝑌 𝑌𝑌 ・・・ 𝑌𝑌
・・・
𝒙 𝒙 𝒙
消費者異質性のモデル化(2)
• ブランド選択
(個人の異質性)の階層
– 多項プロビットモデルでモデル化
•
相対効用
uitj= U
itj-
UitJ•
相対効用ベクトル
uit=[uit1,…, u
it(J-1)]
T•
𝑌 𝑗 となるのは 𝑢 max 𝒖 , 0 のとき
•
𝑌 𝐽 となるのは max 𝒖 , 0 0 のとき
– 相対効用
または
•
𝑋 𝑰, 𝒙 , … , 𝒙
(Iはブランド価値を含むとき必要)•
𝜺 𝜀 , … , 𝜀 とすると 𝜺 ~𝑁 0, 𝜮
•
𝜮 をブランド選択間の誤差項の分散共分散行列
8
階層ベイズプロビットモデル
• ランダム係数+共通性のモデル+プロビットモデル
(詳しくは 照井伸彦、 『ベイズモデリングによるマーケティング分析』、東京電機大学出版局、2008)
– 推定するパラメータ
9
消費者属性の階層 消費者異質性の階層
ブランド選択行動
階層ベイズプロビットモデルの推定(1)
• ベイズ推定の原理でパラメータの事後分布を推定
– 尤度関数 – 事前分布 – 事後分布
– マルコフ連鎖モンテカルロ法(MCMC)で事後分布を推定
10
階層ベイズプロビットモデルの推定(2)
• なぜ , ロジットではなくプロビットでモデル化?
1. プロビットの方が自然なモデル
2. ベイズモデルの場合 , 選択肢数が小さいときは , プロビットの方が MCMC の計算効率がよい
– 階層ベイズロジットモデル
•
完全条件付き事後分布が導出できない
⇒Metropolis-Hastings法
※ Pólya-Gamma分布からのサンプリングも可能
(Polson et al. 2013)– 階層ベイズプロビットモデル
•
計算効率が良いトリック
⇒データ拡大
(Tanner & Wong 1987)•
効用 𝑢 も変数とみなしサンプリング
•
完全条件付き事後分布が導出可能
⇒Gibbs サンプラー
– MCMCの計算効率 Gibbs Sampler > Metropolis-Hastings法
11
発展的な事例の紹介(1)
• 複数購買行動の選択モデル
– 同時に複数の商品を買う場合の 無差別効用曲線と
予算制約線の内点解
– [Kim et al. 2002], [Satomura et al. 2011]
– γ: 複数購買のしやすさパラメータ
– λ: 限界効用の形状パラメータ
– ψ: 重み係数
– xj: 商品jの要求量
( , ) ( ) outside goods
{ ,{ },{ }}
, ~ ( , )
ij
i ijt ij i ij
j ijt
i i ij ij
i i i i M
f x
price
N V
x x
D e e 0
[Chintagunta & Nair 2011]より12
発展的な事例の紹介(2)
• 消費者行動理論の導入
– プロスペクト理論と参照価格モデル
[Terui & Dahana 2006](1) (1) (2) (2) (3) (3)
( ,i ijt)
T
ijt i
T
ijt i
T
ijt i
f
if if if
x x α x α x α
参照価格からのズレが大きく負 参照価格からのズレが小さい 参照価格からのズレが大きく正
[Terui & Dahana 2006]より
{ }
, ~ ( , )
各領域でのパラメータ
i
i
D
ie
ie
iN
M0 V
13
マーケティングと時代の要請
市場とマーケティングの進化
効用:Uitj= f (α,xitj)+ εitj
効用:Uitj= f (αs,xitj)+ εitj
効用:Uitj= f (αi,xitj)+ εitj
効用:Uitj= f (αit,xitj)+ εitj
• 消費価値観の変化に準じてマーケティングも進化
– 画一的価値観の市場
•
十人一色の時代 . メーカー主導の市場形成
⇒
マスマーケティング
– 価値観・ライフスタイルの分化した市場
•
少数セグメント毎へのアプローチ
⇒
セグメンテーション・マーケティング
– 価値観・ライフスタイルの多様化した市場
•
十人十色の時代. 個人毎へのアプローチ
⇒
one to oneマーケティング
– 個人の時間異質性、文脈異質性
•
一人十色の時代のマーケティング
14