専修ビジネス・レビュー(2006) Vol.1 No.1 :55-63
消費者の値頃感の把握
専修大学商学部 奥瀬喜之
Understanding Consumer's Reference Pricese。shu University, School 。f C。mmer。e Yoshiyuki Okuse
の販売価格を観察する際にその価格が妥当である かを判断するために用いられる価格」 (白 井, 2003)1)である。いわば,消費者の値頃感を 表す概念である。 先行研究においては,内的参照価格は以下のよ うな特徴を持つと考えられている2)。 ●参照価格は「300円」というような「点」では なく「250円∼350円」というように「幅」 を持つもの,即ち価格帯である。これは, Sherifらの「同化対比理論」に基づいている (Sherif et alリ1958) 。 ●消費者は参照価格を参照点として,非対称な 反応をする。参照価格のほうが購入価格より 、●、一 参照価格帯内での値引きと参照価格帯を越えた値引き 消費者の感じる効用 消費者の感じる効用 56 も低い場合には「損失」,参照価格が購入価 格よりも高い場合には「利得」としたときに, 同じ幅の「損失」と「利得」では「損失」の ほうが消費者の心理に与える変化量が大きい とする理論である。例えば,参照価格を基点 として「200円の値引き」 (利得)と「200円 の値上げ」 (損失)があった場合には,値引 きによる「うれしさ」よりも値上げによる 「痛み」のほうが程度として大きいとする考 え方である。これはKahnemanとTversky の「プロスペクト理論」に基づいた考え方で
消費者の値頃感の把握 いう二つの質問を尋ね,その累積を図示し,開催 の上限・下限を決定する手法である。 1950年代 にフランスで開発された,極めて簡便な手法であ る。例えば,図表3の場合には図表4のようなグ ラフを作成できる。この場合,支払っても良いと 考える価格の下限の平均は8ドル,上限の平均は 18ドルとなる。さらに90%以上の回答者が受け 入れられる価格は, 12ドルから14ドルの範囲で あることも読み取れる。
@PSM (Price Sensitive Meter)
消費者の値頃感の把握 (釘回答者は,次に,現在, 100の製品に対して 支払っている価格を述べるように言われる。 (回答者によっては参照製品に支払った価格 を思い出せないということもありうる。しか しながら,大事な点はその回答者が旧(参 照)製品に比して新製品にどのくらい多く (少なく)支払ってもよいと考えるか,なの で,深刻な問題ではない。) ④それから,回答者にその新製品に関して受け 入れられる価格を((彰と同様に比較する形式 で)尋ねる(即ち,その製品にどのくらいよ り多く(少なく)支払っても良いと考える か?)。回答者は現在の製品の正確な価格を 思い出す必要はなく,古い製品を100とした ときに新製品の評価のみを行えばよいことを 注意する。 G)いくつかの製品-価格の組み合わせについて 評価されたならば,オリジナルの参照製品に 対して,次の「新」製品の評価を回答者に尋 ねることによって繰り返される。 ㊥コンジョイント分析 価格調査にコンジョイント分析を用いた事例と
しては, Kohli and Mahajan (1991), Jedidi and Zhang (2002), Jedidi et al. (2003)などがある。
者が選択するものではない。従って,極端な場合, ある回答者にとっては「全ての価格が高すぎる」, あるいは「全ての価格が低すぎる」ということも 起こりうるのである。この場合,コンジョイント 分析では「ブランド選択に価格属性は影響しな い」という結論に達するわけであるが,異なる価 格水準を提示した場合には,異なる結論を得るか もしれない。従って,重要度尺度法やコンジョイ ント分析を用いる前に, PSMや価格カテゴライ ゼ-ションなどの手法で,どのくらいの価格水準 を設定することが適切なのか予め確認することが 必要である。 (2)高価格設定を実現させる理由 値頃感の測定の問題とは別に,マネジリアルな 問題として,それではどうすれば高価格設定を実 現できるか,高価格であっても消費者に受け入れ られるためにはどうしたらよいかという問題があ る。
Peter and OIson (2005)では,コストには①金
銭, ②認知的活動, ③時間, ④行動に関する努力 という4つのコストがあるとしている。それぞれ 簡単に説明すると, ①金銭:財・サービスの価格のみならず,配送 料,手数料といった金銭なども含まれる。 ②認知的活動:例えば,ある製品の使用方法を 学習するのに考えることである。新しいタイ プの製品を使用する場合に取扱説明書を読み 理解しなければならず,またそれに慣れる必 要がある。 ③時間:ある製品を購入するのにかかる時間, あるいは製品の使用方法を覚えるのにかかる 時間など。 ④行動:ある製品を購入するために消費者がと らなければならない行動のことである。例え ば,電車に乗って秋葉原まで行かなければな らない,ソフトウェアをインストールをしな ければならないなどである。 これらのコストは時としてトレードオフの関係 にある。従って,高価格設定を実現するためには, 他のコストを補完するような機能やアフターサー ビスを製品に付帯させることが1つの方策である と考えられよう。 冒頭に述べたように,価格は「犠牲」として捉 えられることが多いが,一方で,品質判断指標と しての役割(奥瀬, 2001を参照)やプレステー ジとしての役割(上田,斉藤, 1999を参照)を 担っているという指摘もある。先に挙げたヘルシ ア緑茶の例などでも,高価格であることが,高濃 度カテキンによる有意な脂肪燃焼効果を裏付けて いると消費者に知覚された可能性はある。今後, マーケテイングミックスとしての有効な価格設定 について,更なる模索が必要であろう。 注 1)店頭価格などの外的参照価格(external reference price)と併せて,参照価格と呼ばれる。参照価格に関 する研究のレビューについては白井(2003)に譲るこ ととする。 2)詳細については,中村(2001)や白井(2003)を参照 のこと。 3)この形状は,最近の研究ではAbe (2003)によるセミ パラメトリックなロジットモデル(一般化加法モデ ル)においても確認されている。 参考文献
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