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国土技術政策総合研究所 プロジェクト研究報告

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<技術資料>

外部経済評価の解説(案)

第2編 各手法の解説

平成16年6月

国土交通省 国土技術政策総合研究所

総合技術政策研究センター 建設マネジメント技術研究室

(2)

第2編 各手法の解説 目次

第 1章 評価 手法の概説 ... 77 1-1 評価の視点 ... 77 1-2 評価に用いる手法 ... 78 1-3 評価手法の特性と適用場面の選定 ... 79 第 2章 仮想 市場法(CVM) ... 84 2-1 仮想市場法(CVM)での評価の概要 ... 84 2-2 評価対象の決定 ... 87 2-3 情報収集と事前調査 ... 96 2-4 調査票の作成 ... 98 2-5 プレテスト ... 109 2-6 本調査 ...113 2-7 支払意思額の決定 ...118 2-8 便益の推計 ... 121 2-9 結果の解析と報告 ... 123 第 3章 コンジョイント分析 ... 124 3-1 コンジョイント分析での評価の概要 ... 124 3-2 評価対象の決定 ... 128 3-3 情報収集と事前調査 ... 134 3-4 調査票の作成 ... 136 3-5 プレテスト ... 144 3-6 本調査 ... 148 3-7 支払意思額の決定 ... 151 3-8 便益の推計 ... 155 3-9 結果の解析と報告 ... 156 第 4章 トラベルコスト法(TCM) ... 157 4-1 トラベルコスト法(TCM)での評価の概要 ... 157 4-2 評価対象の設定 ... 166 4-3 データの収集・整理 ... 169 4-4 施設の需要予測モデル(需要関数)の推計 ... 179 4-5 便益の推計 ... 185 4-6 結果の解析と報告 ... 188 第 5章 ヘドニック・アプローチ ... 189 5-1 ヘドニック・アプローチでの評価の概要 ... 189 5-2 評価対象の設定 ... 195 5-3 データの収集整理 ... 199 5-4 地価関数の特定化 ... 206 5-5 地価の予測 ... 216 5-6 便益の推計 ... 219 5-7 結果の解析と報告 ... 221 第 6章 代替 法 ... 222 6-1 代替法での評価の概要 ... 222

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6-2 代替財の決定 ... 224 6-3 代替財の機能分析 ... 224 6-4 代替財の量 ... 224 6-5 便益の推計 ... 225 6-6 代替法適用時の留意事項 ... 225 第 7章 便益 移転(原単位法など) ... 226 7-1 便益移転法(原単位法など)の概要 ... 226 7-2 平均評価額の移転の方法(原単位法など) ... 227 7-3 便益関数の移転の方法 ... 228 7-4 便益移転適用の留意点 ... 229 付 表 )とりまとめの様 式 例 ... 230

図表目次

図 1-1 環境経済評価手法の体系図 ... 77 図 1-2 評価手法の設定フローの一例 ... 82 図 2-1 CVMの実施手順と留意点 ... 85 図 2-2 母集団選択バイアスの例 ... 92 図 2-3 包含効果 ...112 図 3-1 コンジョイント分析の実施手順と留意点 ... 126 図 3-2 母集団選択バイアスの例 ... 130 図 3-3 包含効果 ... 147 図 4-1 TCMの実施手順と留意点 ... 161 図 4-2 需要曲線と生じる便益の範囲 ... 185 図 4-3 需要曲線と近似曲線の示す便益の範囲 ... 186 図 5-1 ヘドニック・アプローチの実施手順と留意点 ... 191 図 5 -2 ヘドニック・アプローチに基づく便益の定義 ... 194 図 5-3 便益の範囲のイメージ ... 197 図 5-4 地域関数適用例 ... 206 図 5-5 サンプル地点選定例 ... 208 図 5-6 広域圏の80エリア ... 215 図 5-7 地価変化分の計測 ... 216 図 6-1 代替法の実施手順と留意点 ... 223 表 1-1 外部効果の計測手法の長所と短所 ... 80 表 1-2 各マニュアルにおける外部効果の定量的評価方法 ... 81 表 2-1 CVMにおけるバイアス ... 86 表 2-2 主な調査方法の特徴 ... 95 表 2-3 支払形態と特徴 ... 100 表 2-4 河川環境整備における支払方法の種類と特徴 ... 102 表 2-5 非集計モデルのパラメータ推定に際しての必要サンプル数 ...113 表 2-6 CVMのサンプル数についての言及例 ...113 表 2-7 肥田野(1999)における信頼区間の構成事例 ...114 表 3-1 プロファイルの例 ... 125

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表 3-2 コンジョイント分析におけるバイアス ... 127 表 3-3 属性と水準の設定例 ... 128 表 3-4 主な調査方法の特徴 ... 133 表 3-5 選択型(タンカー油濁汚染防止の質問例) ... 136 表 3-6 直交配列の例 ... 137 表 3-7 支払形態と特徴 ... 139 表 3-8 河川環境整備における支払方法の種類と特徴 ... 141 表 3-9 非集計モデルのパラメータ推定に際しての必要サンプル数 ... 148 表 3-10 MWTP(円) ... 153 表 3-11 代替案評価(円) ... 154 表 4-1 TCMでの評価の類型(顕示選好データによる推計) ... 158 表 4-2 TCMで必要となるデータ ... 159 表 4-3 [参考]大規模公園における分祈対象公園および競合公園の定義 ... 167 表 4-4 [参考]公園種別誘致圏(単位:km) ... 168 表 4-5 対象とする公園の施設・機能(例) ... 171 表 4-6 年齢階層 ... 173 表 4-7 移動手段別移動速度(km/h)または計測方法 ... 175 表 4-8 徒歩・自転車移動の移動可能な距離 ... 175 表 4-9 走行費用原単位 ... 176 表 4-10 DID別移動手段別選択率 ... 178 表 4-11 データ収集の手法 ... 183 表 4-12 需要推計モデルのパラメータ推計結果 ... 184 表 5-1 地価変化分で計測する便益内容と波及範囲 ... 198 表 5-2 地価関数における(非)説明変数 ... 199 表 5-3 我が国における主要な地価および住宅価格 ... 200 表 5-4 地価関数の主要変数候補 ... 204 表 6-1 間接的な推論から効用を計測する手法 ... 222 表 7-1 メタ分析の一覧 ... 227

第 1 編 外部経済・不経済の評価手法の概説

第1章 総説 第2章 事業効果の体 系と評価 手 法の選択 第3章 評価手法の概 説

付録 表明選好法の詳説

第1章 はじめに 第2章 仮想市場 法(CVM)調査 票の作成 第3章 コンジョイント分 析調査 票の作成 第4章 調査実施 方法 第5章 集計手法の概 説

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第1章 評価手法の概説

1-1 評価の視点 外部経済・不経済を評価するためには、一般社会の中で金銭取引されない、または価格 の付いていないものに対する価値を計測する必要がある。 このような価値を計測する方法は基本的には、①個人の実際の行動結果に基づいた分析 を行うか(顕示選好)、または②個人は実際に行動を行っていないがもしも行動を行うとし たらどのような結果を想定するか(表明選好)、を尋ねる方法の2種類に大別される。 一 般 社 会 の 中 で 金 銭 取 引 さ れ な い 、 ま た は 価 格 の 付 い て い な い も の ( 非 市 場 財 ) に 対 す る 価値を 計測 する方 法の 考え方 とし ては、①個 人の実 際の 行動結 果に 基づい た分 析を行 う方 法 、 ② 個 人 は 実 際 に 行 動 を 行 っ て い な い が も し も 行 動 を 行 う と し た ら ど の よ う な 結 果 を 想 定 す る かを訪 ねる 方法の 2種 類があ る。前者を「顕 示選好 」を 基礎と した 方法、後者 を「表 明選 好」 を基礎 とし た方法 とし て分類 され ている 。 ど の よ う な 価 値 を 計 測 す る か に よ っ て 、 用 い る べ き 手 法 は 異 な っ て く る が 、 本 解 説 ( 案 ) では、顕示 選好に 基づ いた方 法か らトラ ベル コスト 法と ヘドニ ック・アプ ロー チ、代 替法 を 、 ま た 、 表 明 選 好 に 基 づ い た 方 法 か ら 仮 想 市 場 法 ( C V M ) 、 コ ン ジ ョ イ ン ト 分 析 、 ( ト ラ ベ ルコス ト法 、)そ の他 として 便益 移転法 の6 種類を とり あげ、 その 手法の 概略 を整理 する 。

外部経済の

評価手法

顕示選好法 人々の経済活動をもとに 間接的に価値を計測 表明選好法 人々に対象の価値を尋ね 直接的に価値を計測  仮想市場法:回答者に支払意思額や受入補償額をたずねて評価 ヘドニック・アプローチ:賃金や地代をもとに地域のアメニティ等の価値を評価  トラベルコスト法:事前評価時は表明選好法  代替法:対象を私的財で置き換えたときに必要な費用から価値を評価  トラベルコスト法:旅行費用をもとにレクリエーション費用等を評価  コンジョイント法:プロファイルと呼ばれるカードで評価

外部経済の

評価手法

顕示選好法 人々の経済活動をもとに 間接的に価値を計測 表明選好法 人々に対象の価値を尋ね 直接的に価値を計測  仮想市場法:回答者に支払意思額や受入補償額をたずねて評価 ヘドニック・アプローチ:賃金や地代をもとに地域のアメニティ等の価値を評価  トラベルコスト法:事前評価時は表明選好法  代替法:対象を私的財で置き換えたときに必要な費用から価値を評価  トラベルコスト法:旅行費用をもとにレクリエーション費用等を評価  コンジョイント法:プロファイルと呼ばれるカードで評価 図 1-1 環境経 済評 価手法 の体 系図 出 典 : 栗 山 、 北 畠 、 大 島 (2000)を 加 工

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1-2 評価に用いる手法 外部経済評価の手法として、本解説(案)で扱うものは以下の手法とする。これらは、 評価すべき対象の特性に応じて、適宜最適な手法を選定し評価を実施することとなる。 ①仮想市場法(CVM) ②コンジョイント分析 ③トラベルコスト法(TCM) ④ヘドニック・アプローチ ⑤代替法 ⑥便益移転 外部経 済・ 不経済 につ いては 、様 々な評 価手 法が提 案さ れ試算 が行 われて きて いるが 、 ど の方法 によ って、 外部 経済・ 不経 済を評 価す るかに つい ては、 評価 対象の 特性 を考慮 し な が ら判断 して いく必 要が ある。 また、 上に あげた 手法 につい ては 、すべ ての 手法が 同じ 効果を 違う 方法で とら えてい る わ けでは なく 、場合 によ っては 計測 してい る対 象や範 囲が 大きく 異る 場合も ある 。この た め 、 適用に 当た っては 状況 に応じ た手 法の選 定に 留意が 必要 となる 。 ■技術 的外 部経済 性と 金銭的 外部 経済性 整備さ れた 社会資 本の サービ スが 、他の 財・ サービ ス等 の市場 を介 して伝 搬・ 影響し 引 き 起こさ れる 効果が 金銭 的外部 経済 効果と 呼ば れ、社 会資 本のサ ービ ス効果 が市 場を介 さず に 、 環境や 社会 等に変 化を もたら す効 果が技 術的 外部経 済効 果と呼 ばれ る。 外部経 済・ 不経済 (以 下、外 部効 果と略 称) につい ては 、大別 して 金銭的 外部 効果と 技 術 的外部 効果 に分け られ る。こ のう ち、金 銭的 外部効 果は 社会資 本サ ービス の市 場で発 生 し た 効果が 波及 して、 他の 財・サ ービ スの市 場で の受給 に影 響して 引き 起こさ れる 効果で あ り 、 社会資 本サ ービス から 派生し 、こ れらに 付随 して経 済シ ステム の側 面に効 果を 与える 。一 方 、 技術的 外部 効果は 環境 質の変 化( たとえ ば、 社会資 本整 備など によ って地 域ア メニテ ィ が 向 上した り、 反対に 自然 空間が 減少 し、生 態系 ・水系 の状 態が変 わっ たりす るな どの変 化 ) 等 に代表 され る財・ サー ビスの 市場 を介さ ない 直接的 な質 的変化 を示 してお り、 直接金 銭 的 に 取引す る市 場がな いこ とに特 徴が ある。 多くの 場合 、金銭 的外 部効果 につ いては 、当 該社会 資本 のサー ビス が形を 変え て二次 的 に 波及し たも のとし て扱 われ、これ を便益 に加 えると 、一 つの便 益の 流れを 多断 面で計 測し た 、 いわゆ る重 複計算 (ダ ブルカ ウン ト)に なる ものが 多い 。 ■直接 効果 と間接 効果 直接効 果は 整備さ れる 施設の 利用 者が施 設か ら直接 サー ビスを 享受 する効 果で あり、 間 接 効果は それ 以外の すべ ての効 果を いうこ とが 多い。 外部 効果の 検討 を行う 場合 には、 主 に 間 接効果 の中 から評 価項 目が抽 出さ れるこ とと なるが 、間 接効果 の定 義はか なり 広範に 及 ぶ た め、本 解説 (案) では 、この 表現 は避け るこ ととす る。

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1-3 評価手法の特性と適用場面の選定 1-3-1 評価手法の選定 本解説(案)で扱う評価を行うための適用手法は、①仮想市場法(CVM)、②コンジョ イント分析、③トラベルコスト法(TCM)、④ヘドニック・アプローチ、⑤代替法、⑥便 益移転とする。これらの手法は、評価の対象と適用場面の特性に応じて適切に選定されな ければならない。 外部効 果を 評価す る各 手法の 技術 的特徴 から 、すべ ての 手法が 同じ 効果を 違う 方法で と ら えてい ると いうわ けで はなく 、場 合によ って は計測 して いる範 囲が 大きく 異な ってい る こ と がある 。本 解説( 案) で取り 上げ た手法 のそ れぞれ は、 どの様 な対 象や場 面に よって ど の 様 な手法 を選 ぶべき かと いった 、厳 密に対 応関 係は存 在し ていな い。 したが って 、評価 手 法 の 選定に 当た っては 、評 価を実 施し ようと する 評価者 が、 調査す べき 対象の 特性 や各手 法 の 特 徴(長 所と 短所を 表 1-1 に示した)を踏まえて、適切に選定する必要がある。 参考) 手法 併用の 回避 過去 の研 究事例 から は、複 数の 項目を 複数 の手法 でそ れぞれ 評価 してそ の結 果を合 計 し た として も整 合的な 評価 結果は 得ら れない こと が指摘 され ている 。場 合によ って は、手 法 が 変 わると 全く 別の効 果を 評価し てい るくら いの 違いも みら れるな ど、 その大 小関 係を比 較 す る ことは あま り意味 がな いとの 見方 もある 。し たがっ て、 複数の 項目 を評価 する 場合で も 、 項 目に応 じて 別々の 手法 を使う こと は避け 、で きるだ け一 つの手 法で 評価す るこ とが望 まし い 。

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表 1-1 外部効果の計測手法の長所と短所

名称 特徴 長所 短所

仮想市場法 (CVM)

(Contingent Valuation Method)

施設整備状況を回答者に説明した上で、その質の変化に 対してどの程度の支払う意思を持っているか(WTP:支 払意思額)を直接的に質問し、その結果をもとに統計的 に分析する方法 最も適用範囲の広い手法で、原 理的にはあらゆる効果を対象 にできる 適切な手順を踏まないとバイ アスが発生し、推計精度が低下 するおそれがある 調査の段階で効果の符号を一 方に設定しなければならない コンジョイント分析 (Conjoint Analysis) 想定が可能な代替案をプロファイルと呼ばれる形にま とめる。いくつかのプロファイルの組み合わせから、最 も良いと思われるプロファイルを回答者に選んでもら う。その選択結果をもとに、統計的に分析することで定 量的評価を行う。なお、支払意思額を推計する際には、 プロファイルには回答者が支払う必要のある、金額に関 する項目を必ず入れておく必要がある。 同上 複数の項目について評価が可 能 マイナスの評価も可能 適切な手順を踏まないとバイ アスが発生し、推計精度が低下 するおそれがある トラベルコスト法(TCM) (Travel Cost Method)

対象施設までの移動費用をかけてまでも利用する価値 があると認めているという前提のもとで、施設までの移 動費用(料金、所要時間)を利用して施設整備の価値を 貨幣価値で評価する方法 レクリエーション施設など、訪 問の対象施設の評価に適する ・外部不経済が測れない ・複数目的地での行動が含ま れ、過大評価になる恐れがあ る ヘドニック・アプローチ (Hedonic Approach) 施設整備の価値は、代理市場、例えば土地市場(地代あ るいは地価)及び労働市場(賃金)に反映されると仮定 し、施設整備状況を含めた説明変数を用いてこれらの価 格を目的変数とした関数を推定し、施設整備価値を貨幣 価値で評価する方法 地価データを基本とするため、 データが集めやすい 地価関数の変数に騒音や大気 汚染等の密接な関係にある同 志が含まれる場合(多重共線性 がある場合)は、安定性が損な われる 代替法 施設整備によって生じる便益を、それと同じだけの便益 が得られる代替可能な市場財で置き換えたとき、その市 場財を購入するための増加額で評価する方法 代替財の市場価格により評価 を行うため、直感的に理解しや すく、データ収集が比較的容易 である 事業の効果を代替する財が存 在しない場合には用いること ができない。あるいは代替財の 選定によって不適切な評価結 果がもたらされる 便益移転(原単位法など) (Benefit transfer) 他の経済評価事例の中から、基本的な原単位を当該事業 に適用する方法 他事例を用いるので簡易的に 行える 条件が近似していないと適用 が困難

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1-3-2 費用便益分析マニュアルでの扱い 現在使 われ ている 事業 別の費 用便 益分析 マニ ュアル にお ける主 な外 部効果 便益 の算定 手 法 を整理 する と、 表 1-2 のようになっている。 表 1 -2 各 マ ニ ュ ア ル に お け る 外 部 効 果 の 定 量 的 評 価 方 法 ・土地区画整理事業(原単位はヘドニック・アプローチで作成  されているが、評価には、場合分けされた原単位をそのまま  使うことができる。) ・鉄道事業(NOx、騒音、CO2) ・港湾事業(NOx、CO2) 便益移転(原単位法など) (Benefit transfer) ・大規模公園事業(環境・景観の保全価値) ・下水道事業(生活環境の改善効果、便所の水洗化効果) ・ダム周辺環境整備事業(貯水池の濁水の改善) 代替法 ・市街地再開発事業 ・土地区画整理事業 ・住宅関連整備事業(周辺地価の上昇分) ヘドニック・アプローチ (Hedonic Approach) ・大規模公園事業(直接利用価値) ・港湾事業(交流・レクリエーション価値) ・ダム周辺環境整備事業(ダム湖利用価値等) トラベルコスト法(TCM)

(Travel Cost Method)

  - コンジョイント分析 (Conjoint Analysis) ・河川環境整備事業(親水性、自然環境、景観等) ・ダム周辺環境整備事業(景観、環境の改善等) ・海岸事業(災害による精神的被害、海岸利用、環境保全) ・急傾斜事業(安心感向上効果) ・下水道事業(公共用水域の水質保全効果) ・港湾事業(港湾旅客の利用環境改善、自然環境保全等) 仮想市場法 (CVM) (Contingent Valuation Method) マニュアルで扱われている事業(主な評価項目) 手  法 ・土地区画整理事業(原単位はヘドニック・アプローチで作成  されているが、評価には、場合分けされた原単位をそのまま  使うことができる。) ・鉄道事業(NOx、騒音、CO2) ・港湾事業(NOx、CO2) 便益移転(原単位法など) (Benefit transfer) ・大規模公園事業(環境・景観の保全価値) ・下水道事業(生活環境の改善効果、便所の水洗化効果) ・ダム周辺環境整備事業(貯水池の濁水の改善) 代替法 ・市街地再開発事業 ・土地区画整理事業 ・住宅関連整備事業(周辺地価の上昇分) ヘドニック・アプローチ (Hedonic Approach) ・大規模公園事業(直接利用価値) ・港湾事業(交流・レクリエーション価値) ・ダム周辺環境整備事業(ダム湖利用価値等) トラベルコスト法(TCM)

(Travel Cost Method)

  - コンジョイント分析 (Conjoint Analysis) ・河川環境整備事業(親水性、自然環境、景観等) ・ダム周辺環境整備事業(景観、環境の改善等) ・海岸事業(災害による精神的被害、海岸利用、環境保全) ・急傾斜事業(安心感向上効果) ・下水道事業(公共用水域の水質保全効果) ・港湾事業(港湾旅客の利用環境改善、自然環境保全等) 仮想市場法 (CVM) (Contingent Valuation Method) マニュアルで扱われている事業(主な評価項目) 手  法 注 )代 替 法 及 び 便 益 移 転 に つ い て は 、河 川 事 業 に お け る 被 害 軽 減 効 果 や そ の 他 多 く の 事 業 で、内 部 的 な 効 果 を 計 測 す る の に 用 い ら れ て い る 。し か し 本 解 説( 案 )の 趣 旨 か ら 、技 術 的 外 部 性 を 評 価 し て い な い と 考 え ら れ る 項 目 ( = 内 部 的 効 果 の 項 目 ) に つ い て は 、 記 載 し て い な い 。

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1-3-3 評価方法選定の目安 外部経済の評価方法の選定にあたっては、入手可能なデータの種類や評価対象項目の特 性、調査に要する費用等を総合的に判断して選定する。 外部経 済の 評価手 法は 、前述 のよ うに手 法ご とに様 々な 特長を 有し ている 。経 済評価 を 行 う際に は、これら の手 法ごと の特 長に加 え、入手可 能な データ の種 類や評 価対 象項目 の特 性 、 調査に 要す る費用 等を 総合的 に勘 案して 選定 する必 要が ある。 図 1-2 は外部経済の評価手法選定のフローの一例を示したものである。周辺への影響が 重大な もの や住民 の関 心が高 い外 部経済 効果 に対し ては 、どの 計測 手法が 適当 なのか に つ い て、充 分に 検討す る必 要があ る。 スタート いいえ        便益移転 ヘドニック・ アプローチ トラベルコスト法 コンジョイント分析 CVMor コンジョイント分析 代替法 原単位がある 近似している 他の事例がある 評価対象と相関する 地価データがある 複数or負の便益 を計測 利用者の利用価値を 示すデータがある アンケート調査が 可能である 調査を実施 表明選好法 顕示選好法 手法 はい いいえ はい いいえ はい いいえ はい いいえ はい はい いいえ 原単位法 スタート いいえ        便益移転 ヘドニック・ アプローチ トラベルコスト法 コンジョイント分析 CVMor コンジョイント分析 代替法 原単位がある 近似している 他の事例がある 評価対象と相関する 地価データがある 複数or負の便益 を計測 利用者の利用価値を 示すデータがある アンケート調査が 可能である 調査を実施 表明選好法 顕示選好法 手法 はい いいえ はい いいえ はい いいえ はい いいえ はい はい いいえ 原単位法 図 1 -2 評 価 手 法 の 設 定 フ ロ ー の 一 例 各手 法の 適用検 討に おいて は、 評価の ため の費用 や得 られる 評価 結果の 精度 から、 ど の 手 法を使 うべ きかを 判断 する必 要が ある。 ここ では、 基本 的には 他の 調査な どに よって 得 ら れ た比較 的信 頼度の 高い 原単位 や近 似例が 利用 可能で あれ ば、そ れを 用いる 便益 移転が 評 価 コ ストの 面か ら有利 であ る。便 益移 転が活 用で きない 場合 には、 具体 的な調 査を 実施す る こ と となる が、 データ の有 無によ り実 データ に基 づく顕 示選 好法が 優先 され、 つい で表明 選 好 法 の活用 が検 討され るべ きであ ろう 。代替 法に ついて は、 p14 9の 記述か ら、 他に方 法 が な い場合 に適 用され るべ きであ ろう 。

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1-3-4 評価結果の蓄積 本解説(案)は、多くの場面での活用をいただきながら、さらなる改善を目指していく。 また、外部経済評価の適用結果を数多く蓄積し、最終的には外部経済評価のための基準と なる値(原単位)が作成できる程度に調査精度を高める必要がある。そのため、データ蓄 積を行う必要がある。 現在の とこ ろ、外 部経 済の評 価手 法につ いて は、現 場の 状況に 十分 に対応 でき るまで 成 熟 してい ると は言い 難い 面も多 い。 したが って 、本解 説( 案)の よう な外部 経済 ・不経 済 の 評 価に適 用す ること を疑 問視す る向 きもあ る。 しかし 、外 部経済 を定 量的に 評価 する方 法 は 、 現在の とこ ろ本稿 で示 した以 外に は実用 化さ れてい ない のも事 実で ある。 この ような 手 法 を できる だけ 多く活 用し 、調査 結果 を積み 上げ ること によ って精 度の 向上を 図っ ていく 必 要 が ある。 そのた め、 本手法 によ り実施 され た評価 結果 は実施 内容 等を含 めて 蓄積し 、手 法や結 果 の 改善を 常に 行って いく ことを 念頭 に置い てい る。( 巻末 にとり まと め様式 例を 示す。) ■評価 結果 の蓄積 にと もなう 経年 的なデ ータ の取り 扱い 外部経 済評 価手法 によ る評価 結果 は、評 価実 施時点 の社 会経済 状況 と密接 に関 係があ る 。 たとえ ば、 環境の 価値 等を考 えれ ば、近 年、 地球環 境問 題やそ の他 価値観 の多 様性の 広 が り などに より 、急速 にそ の価値 が高 まって きた もので あり 、数十 年前 の状況 とは 大きく 異 な る ものと 考え られる 。し たがっ て、 全く同 一の 事業の 効果 を計測 した として も、 社会的 な 背 景 や価値 観の 経年的 な変 化の下 では 評価の 結果 も当然 異な ってく るこ とが予 想さ れる。 外 部 経 済評価 の結 果を経 年的 に比較 する 場合に は、 評価実 施時 期の社 会・ 経済的 背景 を配慮 す る こ とが重 要と なる。 ただし 、社 会経済 状態 の変化 が外 部経済 調査 の評価 結果 にどの よう な影響 を及 ぼすか に つ いての 調査 ・研究 蓄積 は、こ れま でほと んど 行われ てい ない。 これ らの点 を明 らかに す る た めにも 、そ の社会 経済 的背景 を含 めた評 価結 果デー タの 蓄積を 進め ていく 必要 がある 。

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第2章 仮想市場法(CVM)

2-1 仮想市場法(CVM)での評価の概要 2-1-1 仮想市場法(CVM)の概要

仮想市場法(以下CVM;Contingent Valuation Method)とは、市場で金銭取引さ れ て い な い 価 値 に つ い て 、 人 々 に 支 払 意 思 額 (WTP) や 受 入 補 償 額 (WTA) を た ず ね る ことで外部経済の価値を直接的に評価する手法である。CVMでは、一般に支払意思額で 評価が行われている。 ■支払 意思 額(W TP ;willingness to pay) ある事 業を 実施す るこ と(実 施し ないこ とに より状 況が 悪化す る場 合)に 対し て支払 っ て もよい と考 える額 の上 限値。 経済学 では 、環境 改善 がなか った 場合の 効用 水準を 維持 すると いう 条件の もと で、そ の 変 化を獲 得す るため に家 計が支 払う に値す ると 考える 支払 額の最 大値 (WT P) で定義 さ れ て いる。

■受入 補償 額(W TA ;willingness to accept compensation)

ある事 業を 実施し ない こと( 実施 するこ とに より状 況が 悪化す る場 合)に 対し て、補 償 し てもら いた いと考 える 金額の 下限 値。 経済学 では 、環境 改善 があっ た場 合の効 用水 準を維 持す るとい う条 件のも とで その変 化 を あきら める ために 家計 が補償 して 欲しい と考 える補 償額 の最小 値( WTA )と 言われ てい る 。 一般に WT A(補 償と して支 払う ことを 要求 する額 )は WTP (自 らが支 払う 意思の あ る 額)に 比べ 過大と なる 。この 理由 として 「全 く同じ 財で も、人 々は 一度手 に入 れたも の を よ り高く 評価 する」 傾向 にある ため である 。し たがっ てC VM調 査で はWT Pを 把握す る 方 法 がとら れて いる。→ 「 環 境 と 行 政 の 経 済 評 価 」 p61、 肥 田 野 よ り 2-1-2 支払意思額(WTP)の把握方法 実際には金銭取引されていない価値についての支払意思額を把握するためには、アンケ ート調査などによって効果・影響を受ける人から直接ヒアリングして聞き取るのが一般的 である。 実際に は金 銭取引 され ていな い価 値(非 市場 財)に つい ての支 払意 思額を 把握 するた め に は、ア ンケ ート調 査な どによ って 効果・ 影響 を受け る人 から直 接ヒ アリン グし て聞き 取 る 。 アンケ ート 調査の デー タから 支払 意思額 を推 定する ため には、主に 条件付 ロジ ットモ デ ル ( 2 -7-2 参 照)と呼 ば れる統 計的 な推定 方法 が利用 され ている 。 また、 アン ケート 調査 を実施 する 箇所は 大き く分け て2 パター ンあ り、居 住地 での調 査 と 目的地(評 価対象 の周 辺)で の調 査があ る。それぞ れ調 査方法 や母 集団推 定の 方法が 異な る 。 居住地 で調 査をす る場 合は、 予め 評価対 象と してい る事 業から 効果 ・影響 を受 ける範 囲 を 特 定して 、そ の中で アン ケート を実 施する 。

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2-1-3 CVMの手順 ①評価対象の決定 ①評価対象の決定 ②情報収集と事前調査 ②情報収集と事前調査 ④プレテスト ④プレテスト ③調査票の作成 ③調査票の作成 ⑤本調査 ⑤本調査 ⑥支払意思額の決定 ⑥支払意思額の決定 ⑦便益の推計 ⑦便益の推計 ⑧結果の解析と報告 ⑧結果の解析と報告 再検討 CVMは対象を広く適用可能 ・ただしバイアスを防ぐために現実的なシナリオが要求 される ・評価対象が何であるかを明確に特定(対象物だけでな くそれが持つ多様な価値のうちどの価値を指すのか) 最低200~300サンプルを確保する必要がある (分析方法によってサンプル数は異なる) ・サンプリングは偏りがないか ・郵送方式かインタビュー形式か ・提示価格があまりにも近すぎると推定が困難になる 本調査の10分の1以下で実施 ・情報が正しく受け止められているか ・金額の設定は妥当か ・必要があれば複数回実施 与える情報が多ければ多いほど良い訳ではない ・NOAAガイドラインは「ひかえめな設計」を要求 ・基本的にはWTAではなくWTPを聞く ・ダブルバウンド二項選択法が最も多い 正確にシナリオを伝えるためにはフォーカスグルー プによるディスカッションが欠かせない ・シナリオは現実的か 平均値よりは中央値を選択 ・平均値を使うほうが理論的には正しいが、積分の範囲 が調査によって異なる、高額なWTP回答の有無の影響 を受けやすい、等の課題もあり、比較的安定して得るこ とができる中央値を選択する。 主にロジットモデルにより推計 ①評価対象の決定 ①評価対象の決定 ②情報収集と事前調査 ②情報収集と事前調査 ④プレテスト ④プレテスト ③調査票の作成 ③調査票の作成 ⑤本調査 ⑤本調査 ⑥支払意思額の決定 ⑥支払意思額の決定 ⑦便益の推計 ⑦便益の推計 ⑧結果の解析と報告 ⑧結果の解析と報告 再検討 CVMは対象を広く適用可能 ・ただしバイアスを防ぐために現実的なシナリオが要求 される ・評価対象が何であるかを明確に特定(対象物だけでな くそれが持つ多様な価値のうちどの価値を指すのか) 最低200~300サンプルを確保する必要がある (分析方法によってサンプル数は異なる) ・サンプリングは偏りがないか ・郵送方式かインタビュー形式か ・提示価格があまりにも近すぎると推定が困難になる 本調査の10分の1以下で実施 ・情報が正しく受け止められているか ・金額の設定は妥当か ・必要があれば複数回実施 与える情報が多ければ多いほど良い訳ではない ・NOAAガイドラインは「ひかえめな設計」を要求 ・基本的にはWTAではなくWTPを聞く ・ダブルバウンド二項選択法が最も多い 正確にシナリオを伝えるためにはフォーカスグルー プによるディスカッションが欠かせない ・シナリオは現実的か 平均値よりは中央値を選択 ・平均値を使うほうが理論的には正しいが、積分の範囲 が調査によって異なる、高額なWTP回答の有無の影響 を受けやすい、等の課題もあり、比較的安定して得るこ とができる中央値を選択する。 主にロジットモデルにより推計 図 2 -1 CVM の 実 施 手 順 と 留 意 点

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2-1-4 CVM適用上の留意点 CVMは、実際には金銭取引が行われていないものを対象として、人々の表明選好で金 銭評価するため、調査方法において様々な誤差(バイアス)が入り込む可能性があること に留意する必要がある。 CVM によ って評 価を 行う場 合、 評価対 象の 決定段 階か ら便益 の推 計段階 の間 におい て 、 様々な 段階 で様々 なバ イアス が入 り込む 可能 性があ る。 NOA Aガ イドラ イン を基に し た C VMに おけ る主な バイ アスを 整理 すると 以下 の通り であ り、本 解説 (案) にお いては 、 そ の 段階に 応じ てその 都度 解説を して いく。 表 2 -1 C V M に お け る バ イ ア ス 項 目 名 内 容 戦 略 バ イ ア ス 対 象 財 が 供 給 さ れ る こ と は 決 ま っ て い る が 、 表 明 し た 金 額 に よ っ て 課 税 額 が 決 ま る の で あ れ ば 、 過 小 表 明 し よ う と す る 誘 因 が 働 く 。 課 税 額 が 一 定 で あ れ ば 、 逆 に 働 く 。 歪 ん だ 回 答 へ の 誘 因 追 従 バ イ ア ス 質 問 者 や 調 査 機 関 に 喜 ば れ る よ う な 回 答 を し よ う と す る 。 開 始 点 の バ イ ア ス 最 初 に 提 示 し た 金 額 が 影 響 す る 。 範 囲 の バ イ ア ス 支 払 意 思 額 と し て 示 し た 範 囲 に 影 響 さ れ る 。 相 対 評 価 に よ る バ イ ア ス 評 価 対 象 と 他 の 財 と の 関 係 を 示 す と 、 そ れ が 影 響 す る 。 重 要 性 の バ イ ア ス 質 問 内 容 が 評 価 対 象 の 重 要 性 を 暗 示 す る と 回 答 に 影 響 す る 。 暗 示 さ れ た 値 の 手 が か り に よ る も の 位 置 の バ イ ア ス 質 問 順 序 を 価 値 の 順 序 を 暗 示 し て い る と 受 け 取 る 。 理 論 的 伝 達 ミ ス 掲 示 し た シ ナ リ オ が 政 策 的 あ る い は 経 済 理 論 の 面 か ら 妥 当 で な い 。 評 価 対 象 の 伝 達 ミ ス 質 問 者 の 意 図 と 回 答 者 の 理 解 が 異 な る 。 シ ナ リ オ 伝 達 の ミ ス に よ る も の 状 況 伝 達 ミ ス 提 示 す る 仮 想 的 市 場 の 状 況 が 調 査 者 の 意 図 す る も の と は 異 な る 。 母 集 団 選 択 バ イ ア ス 選 択 さ れ た 母 集 団 が 評 価 対 象 財 の 便 益 や 費 用 が 及 ぶ 範 囲 か ら み た と き に 不 適 切 。 サ ン プ ル 抽 出 枠 バ イ ア ス サ ン プ ル 抽 出 に 用 い る デ ー タ が 母 集 団 の す べ て を 反 映 し て い な い 。 サ ン プ ル 非 回 答 バ イ ア ス 支 払 意 思 額 を 答 え た 回 答 者 と 答 え て い な い 回 答 者 で 属 性 に 統 計 的 に 有 意 な 差 が あ る 。 サ ン プ ル 設 計 と サ ン プ ル 実 施 バ イ ア ス サ ン プ ル 選 択 バ イ ア ス 評 価 対 象 に つ い て の 関 心 が 高 い ほ ど 有 効 回 答 が 高 く な る 傾 向 が あ る 。 時 間 選 択 バ イ ア ス 質 問 を 行 な う 時 期 に よ っ て 評 価 額 が 影 響 を 受 け る 。 推 量 バ イ ア ス 集 計 順 序 バ イ ア ス 地 理 的 に 離 れ て い る 評 価 対 象 の 支 払 意 思 額 を 不 適 切 な 順 序 で た ず ね て 集 計 し て し ま う ( 地 理 的 集 計 順 序 バ イ ア ス ) こ と や 複 数 の 評 価 対 象 の 支 払 意 思 額 を 不 適 切 な 順 序 で た ず ね て し ま う こ と ( 複 数 財 集 計 順 序 バ イ ア ス )。 出 典 : 栗 山 (1997)、 環 境 経 済 評 価 研 究 会 (2001)を も と に 作 成 ※NO AA ガイド ライ ン CVM の信 頼性を 確保 するた めに 満たさ れる べき条 件を まとめ たガ イドラ イン 。 NOA A: 米国国 家海 洋大気 管理 局 National Ocean Atmospheric Administration

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2-2 評価対象の決定 2-2-1 対象事業の特定とシナリオ作成 対象とする事業を特定し、その事業における事業効果を多角的に検討した上で、CVM での評価対象とする効果の項目を設定する。さらに、その効果が具体的にどのようなもの か、CVM調査の回答者にとってわかりやすいシナリオを作成する。 (1) 計測 すべき 効果 の特定 CV Mで 支払意 思額 を推計 する 場合、 アン ケート 調査 の「何 の効 果を計 測し ようと し て い るのか 」を 明確に 認知 しても らう 必要が ある 。 例えば 、道 路事業 にお けるバ イパ ス整備 に付 帯して 実施 された 景観 形成の ため の事業 効 果 を計測 しよ うとす る場 合、「道 路の 利便性 向上(時間 短縮 等)」、「 道路 利用の 快適 性向上 」、「 沿 道地域 の経 済的活 力の 向上」、「景 観形成 によ る快適 性向 上」等 、道 路事業 の多 くの整 備 効 果 の中か ら、「景観 形成 」のみ が評 価の対 象と なって いる 、とい った 評価対 象と なる事 業の 部 分 を明確 に区 別して おく ことが 重要 となる 。 CVM では アンケ ート の回答 者か ら、今 評価 したい 対象 のみの 支払 意思額 を引 き出さ せ る 工夫が 必要 となる 。 参考) -上 記 with ケースとの比較ケースは、事業を行わない現在のままの状態となる。 (湿地、野生動物の行動範囲、鳥類、水環境など) ・ without ケース -自然 環境 保全の ため に何も 工夫 がされ てい ないの であ れば、現状 と事後 の比 較で、ダ メージ を金 銭化( ダメ ージケ ース が with) → そ れを 評価す る( with ケース)。 -自然 環境 保全の ため に、ど のよ うな工 夫が なされ たか ・環境 改変 /創造 -景観 形成 のため に何 も工夫 がさ れてい ない のであ れば 、現状 と事 後の比 較で 、マイ ナ スの効 果と しての ダメ ージを 金銭 化して みる 必要も ある (ダメ ージ ケース が with)。 -景観 形成 のため に、 どのよ うな 工夫が なさ れたか 。 → なさ れた工 夫に 対する 支払 意思額 を評 価する ( with ケースの設定)。 ・景観 形成

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(2) シナ リオの わか りやす さへ の配慮 シナリ オと は、C VM におい て対 象とし てい る事業 (施 設)の 支払 意思額 を把 握する た め に、評 価対 象とな るも のがど のよ うな内 容で あるか を説 明して いる 部分の こと をいう 。 作 成 するシ ナリ オでは 、対 象とす る事 業があ った 場合と なか った場 合の 2つの 状態 を比較 す べ き である が、 一方で は、 アンケ ート の回答 者が 、設定 した シナリ オを 容易に 理解 できる か ど う かを勘 案す る必要 があ る。こ のた め、設 定す るシナ リオ はでき るだ け単純 なも のとし 、 回 答 者の理 解が 得られ やす いよう に配 慮しな けれ ばなら ない 。 シナリ オの 作成例 を下 記に示 す。 (シナ リオ の例) 設 問 1 以 下 は 、 北 海 道 の 清 流 札 内 川 ( さ つ な い が わ ) に 関 す る 説 明 と 質 問 で す 。 【 説 明 】 札 内 川 は 、 北 海 道 の 十 勝 ( と か ち ) 地 方 を 流 れ る 川 で す 。 建 設 省 の 調 査 で 、 3 年 連 続 「 清 流 日 本 一 」 と さ れ 、 そ の 水 質 は 折 り 紙 付 き で す 。 ま た 流 域 に は エ ゾ リ ス ・ ナ キ ウ サ ギ ・ エ ゾ サ ン シ ョ ウ ウ オ ・ オ シ ョ ロ コ マ ・ ケ シ ョ ウ ヤ ナ ギな ど の 希 少 な 野 生 動 植 物 が 生 息 し て い ま す 。 〔 北 海 道 十 勝 川 水 系 ・ 札 内 川 の 流 域 図 と 写 真 〕 〔 エ ゾ リ ス 〕 〔 オ シ ョ ロ コ マ 〕 し か し 、 こ の 北 海 道 十 勝 地 方 の 札 内 川 を 現 状 の ま ま 放 置 す る と 、 以 下 の 問 題 が お こ る お それ が あ り ま す 。

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・ 札 内 川 の 流 域 は 、 日 本 で も 有 数 の 畑 作 ・ 酪 農 地 帯 で す 。 ま た 北 海 道 十 勝 平 野 の 中 心 都 市 で あ る 帯 広 市 が 位 置 す る こ と か ら 、 産 業 活 動 に よ る 水 質 汚 染 や 、 生 活 排 水 に よ る 水 質 汚 濁 の お そ れ が あ り ま す 。 ・ ダ ム の 完 成 や 道 路 整 備 に よ り 、 今 後 、 日 本 各 地 か ら 清 流 日 本 一 の 札 内 川 を 訪 れ る 人 が 増 え て ゴ ミ が 投 棄 さ れ 、 ケ シ ョ ウ ヤ ナ ギ が 群 生 す る 河 原 や 自 然 林 の 景 観 が 損 な わ れ る お そ れ が あ り ま す 。 ・ 1 0 年 後 に は 清 流 日 本 一 で は な く な り 、 現 在 生 息 し て い る エ ゾ サ ン シ ョ ウ ウ オ や オ シ ョ ロ コ マ は い な く な る お そ れ が あ り ま す 。 【 質 問 】 そ れ で は 質 問 に 入 り ま す 。 こ れ か ら 質 問 す る 内 容 は あ く ま で も 仮 定 で す 。 ( 1 ) 北 海 道 十 勝 地 方 を 流 れ る 札 内 川 の 水 質 と 流 域 の 景 観 を 守 る た め に 、 今 後 5 年 間 だ け 日 本 中 の 世 帯 に か か る 税 金 を 引 き 上 げ る と 仮 定 し ま す 。 国 民 の 賛 同 が 得 ら れ れ ば 徴 税 が な さ れ、 す ぐ に 流 入 水 の 浄 化 対 策 と 定 期 的 な ゴ ミ 回 収 が 始 め ら れ ま す 。 こ の 対 策 に よ り 、 現 状 の 水 質が 維 持 さ れ 、 流 域 の 景 観 を 今 後 2 0 年 間 に わ た っ て 保 全 す る こ と が で き ま す 。 な お 、 こ の 対 策は 流 域 の 自 然 に 配 慮 し て 行 わ れ る た め 、 希 少 生 物 に 悪 影 響 を 与 え る こ と は あ り ま せ ん 。 こ の よ う な 前 提 を も と に お 答 え く だ さ い 。 ( 出 典 : 「 札 内 川 の 清 流 の 価 値 」 H12.3、 北 海 道 開 発 局 ) (3 )シ ナ リオ作 成の 留意点(「 ※ 環 境 と 行 政 の 経 済 評 価 」肥 田 野 、「 環 境 評 価 の 政 策 利 用 」竹 内 よ り ) ① 対象事 業を 特定す る ど の よ う な 事 業 を 実 施 す る こ と で 効 果 が 得 ら れ る か を 明 確 に 示 す た め に 、 対 象 事 業 を 特 定 す る 必 要 が あ る 。 上 記 例 で は 「 す ぐ に 流 入 水 の 浄 化 対 策 と 定 期 的 な ゴ ミ 回 収 が 始めら れま す。」 の部 分が該 当す る。 ② 評価す べき 効果の 内容 を明確 にす る 評価 対象を 曖昧 にする と、 効果の 範囲 が不明 確に なり、 他の 効果と ダブ ルカウ ン ト してし まう 可能性 があ るため 、効 果の内 容を 明確に する 必要が ある 。上記 例で は 「 こ の対策 によ り、現 状の 水質が 維持 され、流域 の景観 を今 後 20 年間にわたって保全す る ことが でき ます。」の 部分が 該当 する。 また、事業 を実施 しな い状況 をは っきり 示し 、純粋 な効 果を示 すこ とが必 要で あ る 。 北海道 十勝 地方を 流れ る札内 川を 守るた めに 、今後 5年 間だけ 日本 中の世 帯か ら寄 附を集 めて 基金を つく ると仮 定し ます。 (悪い 事例 ) ( 「 札 内 川 の 清 流 の 価 値 」 H12.3、 北 海 道 開 発 局 を も と に 作 成 ) 上記の シナ リオで は札 内川の 何を 守るの か明 確にさ れて いない ため 、環境 、水 質 、 景

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観など を明 確に分 離で きない 恐れ がある 。こ のため 、例 えば「 札内 川の水 質を 守るた め に」、 と明 確に記 載す る必要 があ る。 ③ シナリ オ伝 達のミ スに 関する バイ アスを 防止 する 評価対 象の 影響範 囲が 大きく なる と、理 論的 には評 価額 も大き くな るはず であ る が 、 大きく 変わ ったに もか かわら ず評 価額が 統計 的に有 意な ほど変 化し ない状 況を 、 ス コ ープ無 反応 性(又 は包 含効果 )と いう。 これは 、シ ナリオ 設計 が不適 切で あるた め、 回答者 と評 価対象 との 関わり が金 銭 的 に連動 した 認識が でき ず、支 払意 思額を 明確 に答え られ ないと いう 「シナ リオ 伝 達 の ミスに よる バイア ス」 が発生 した ことが 原因 である と考 えられ る。 したが って シ ナ リ オ作成 にあ たって は、「この 支払 によっ て、あなた は他 に使え るお 金が、その 分少な く なるこ とを 十分お 考え の上、 お答 え下さ い」 等の追 記を 行い、 回答 者には 予算 の 制 約 がある こと を認識 して もらう こと でこの バイ アスを 緩和 するよ うな 工夫が 必要 とな る 。 なお、 詳細 の対処 方法 につい ては 、付録 でも 記述し てい るので 参照 された い。

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2-2-2 調査範囲(母集団)の設定 調査範囲(母集団)については、事業の効果が及ぶ範囲を対象とすべきである。 ただし、調査範囲の設定にあたっては母集団拡大するため活用可能なデータの区分や制 約を考慮し、市区町村界や町丁目界を調査範囲設定の目安に設定する場合が一般的である。 (1) 調査 範囲( 母集 団)設 定の 考え方 CV Mは 、抽出 した 調査対 象に 対して どの 程度の 支払 意思額 を持 ってい るか を直接 的 に 質 問し、 その 結果を もと に統計 的に 分析し て便 益を算 出す る方法 であ ること から 、調査 範 囲 の 設定が 便益 額を大 きく 左右す る。 調査 範囲 の設定 は、 何を評 価し たいの かに よって 決ま ってく る。 例えば 、あ る環境 質 に 対 して当 該住 民が感 じる 価値を 測り たい場 合は 、地域 住民 が対象 にな る。地 域住 民ばか り で は なく、 距離 が離れ た地 域の住 民に とって 、あ る環境 質が 存在す るこ との価 値を 測りた い の で あれば 、調 査対象 をよ り広げ る。 全国の 動向 を調べ る場 合には 、全 国民が 母集 団とな る。 北海道 十勝 地方を 流れ る札内 川を 守るた めに 、今後 5年 間だけ 日本 中の世 帯か ら寄 附を集 めて 基金を つく ると仮 定し ます。 (札内 川の 事例か ら) ( 「 札 内 川 の 清 流 の 価 値 」 H12.3、 北 海 道 開 発 局 を も と に 作 成 ) 上記 の事 例では 、日 本中の 世帯 から寄 附を 集める こと が前提 とな ってい る。 このた め 、 母 集団も 「日 本中の 世帯 」とい うこ とにな る。 したが って 、調査 の実 施範囲 は日 本中の 世 帯 の 中から ラン ダムに サン プリン グさ れる必 要が あり、 例え ば、調 査対 象の周 辺の みでこ の 調 査 (アン ケー ト)を 実施 し、日 本中 の世帯 の支 払意思 額と 考えて 日本 全体の 人口 で拡大 すれ ば 、 集計結 果は 現場に 近い 人のみ の支 払意思 額が 全国ベ ース で集計 され た、偏 った 結果が 得 ら れ てしま うこ とにな る。 (2) 収集 可能デ ータ と調査 範囲 (母集 団) の対応 CVM によ って実 際に WTP を推 計する ため には、 調査 範囲か ら得 られた サン プルで の 集 計結果 を母 集団全 体に 拡大す る必 要があ る。 このた め、 調査範 囲の 設定に あた っては サ ン プ ルデー タを 母集団 拡大 するた め活 用可能 なデ ータの 制約 を考慮 する 必要が ある 。 一般的 には データ の区 分上、 事前 調査や 既存 の調査 事例 等をも とに 、適切 な集 計範囲 を 想 定して おき 、この 範囲 を含む 市区 町村等 を単 位とし て設 定する のが 有効で ある 。(多 くの 事 例 では、流域 市町村 、周 辺市町 村、利用者 の居 住範囲 等を 集計範 囲と してい る)。より 詳細 な 設 定がで きる 場合に は、 調査範 囲を 町丁目 単位 または 字単 位とし ても よい。 (3) 調査 範囲の 設定 に係わ るバ イアス 調査範 囲の 設定に かか わるバ イア スには 、母 集団選 択バ イアス があ る。 母集団 選択 バイア スは 、選択 され た母集 団が 評価対 象施 設の便 益や 費用が 及ぶ 範囲と 一 致 してい ない ときに 発生 するバ イア スであ る。 母集団 (調 査範囲 )を 特定す る場 合には 、 評 価 対象が 、ど の地域 の人 にどれ くら いの頻 度で 係わっ てい るかを 見定 め、係 わる 頻度が 多 い 地

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区に対 して は、必 ず調 査範囲 の中 に入る よう に設定 する 必要が ある 。また 、係 わる度 合 い が 極端に 少な い地域 につ いては 、調 査予算 との 関連で 範囲 の中に 入ら なくて もや むを得 ない 。 事 業 効 果 の 及 ぶ 範 囲 係 わ る 頻 度 の 多 い 地 区 調 査 範 囲 ( 母 集 団 ) ※ 効 果 を 捉 え 切 れ て い な い 図 2 -2 母 集 団 選 択 バ イ ア ス の 例 (4) 着地 調査に 関す る範囲 の設 定 着地 すな わち評 価対 象の周 辺で 、評価 対象 の影響 を実 際に受 ける 人のみ に調 査を行 う 場 合 には、 範囲 の設定 は特 に考慮 する 必要は ない 。ただ し、 後述す る調 査サン プル を母集 団 に 拡 大する 際に は、サ ンプ ルが代 表す ると考 えら れる範 囲の 設定に は十 分留意 する 必要が ある 。 なお、 利用 者が施 設ま での旅 行費 用をか けて 「利用 する ために 」来 訪して いる 施設の 効 果 を着地 調査 によっ て計 測する 場合 には、 効果 の計測 手法 として CV Mより も旅 行費用 法 が 選 択され るべ きであ る。

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2-2-3 調査方法の決定 調査方法の主なものには、面接調査法、郵送調査法等がある。それぞれの方法には長所、 短所があり、どの調査法を選ぶかは調査期間や調査のための予算、調査に動員可能な調査 員の技量等を慎重に勘案して決定する。 出 典 : 「 環 境 と 行 政 の 経 済 評 価 」 p42( 肥 田 野 ) (※以 下は 「札内 川の 清流の 価値 」より 引用 ) (1) 面接 調査法 面接調 査法 とは 、回 答 者に直 接調 査票を 配り 回収す る方 法であ る 。面接調 査法 の長所 は、 その場 で回 収でき るた め、回 答対 象者に 会う ことが 出来 れば非 常に 高い回 収率 が期待 出 来 ること であ る。 欠点 とし ては、 調査 員が直 接面 接する ため 、調査 員の 印象や 説明 能力に よっ て回答 に 影 響がで るこ と等が 挙げ られる 。 (2) 郵送 調査法 郵送調 査法 は、調 査票 を郵送 して 回答し ても らう方 法で ある。 この 方法の 最大 の長所 は 調査費 用が 面接調 査法 に比べ て安 く、比 較的 短期間 で多 くの回 答者 に調査 が出 来るこ と で ある。 反面 、欠 点とし ては 郵送で 行う ため、 回答 率が低 いこ と等が 挙げ られる 。 アンケ ート の回収 率を 高める 手法 として 、参 考1の よう な文献 も散 見され る。 ただし 、 こ のよう な取 り扱い も慎 重にさ れる べきで あり 、参考 2の ように 思わ ぬ誤解 を生 むこと も あ る ことに 留意 が必要 であ る。 参考1 )( 既存文 献/ HPを 引用 ) 今 回 の 調 査 で は ,予 備 調 査 A( 100 通 )と 本 調 査 B( 400 通 )を 行 い ま し た 。CVM は 比 較 的 調 査 事 例 も 多 く , 予 備 調 査 の 代 わ り に 他 の 調 査 事 例 を 参 考 に す れ ば 事 足 り る 場 合 も 多 い の で す が ,コ ン ジ ョ イ ン ト 分 析 の 場 合 に は な か な か そ う も い か な い の で , 念 の た め 予 備 調 査 を 実 施 し ま し た 。 結 果 か ら 先 に 言 う と , 予 備 調 査 の 方 は 回 収 率 が 35% で , 本 調 査 が 75% で し た 。 予 備 調 査 は 締 切 日 を 2 週 間 後 に 設 定 し た 1 回 き り の 郵 送 調 査 で す 。本 調 査 は 2 週 間 の 間 隔 を あ け て 2 回 催 促 を 行 い ま し た 。予 備 調 査 の 方 は , 選 択 実 験 部 分 の 質 問 も 1 問 少 な く , 合 計 4 頁 の 調 査 票 を 使 用 し た に も か か わ ら ず , 6 頁 の 本 調 査 よ り も 回 収 率 が 低 く な っ て し ま い ま し た 。 本 調 査 で は ,最 初 に 郵 送 を 行 う 際 に ,角 2 型 封 筒 の 中 に 挨 拶 状 と ア ン ケ ー ト 用 紙 ,80 円 切 手 添 付 済 み の 長 3 型 封 筒 ,宛 名 ラ ベ ル 添 付 済 み の 官 製 ハ ガ キ( 返 送 の 有 無 確 認 用 )を 入 れ ま し た 。郵 送 料 は 1 部 120 円 で す 。 こ れ は ,今 回 の 調 査 で 標 本 と し て 抽 出 さ れ た 方 の 知 り 合 い と 偶 然 M K デ パ ー ト で お 会 い し た 際 に 伺 っ た こ と で す が , や は り 返 送 確 認 用 ハ ガ キ が 入 っ て い る と ,「 絶 対 に 返 さ な け れ ば ・ ・ ・ 」 と い う プ レ ッ シ ャ ー を 感 じ る よ う で す 。そ の せ い か ,1 回 目 の 郵 送 で 42% 強 が 戻 っ て き ま し た 。ま た ,返 送 用 封 筒 と は 別 に ,確 認 用 ハ ガ キ も 戻 っ て き ま し た 。 こ ち ら の 方 は , 封 筒 よ り も 7 % 程 少 な い 回 収 率 に と ど ま り ま し た 。 次 に , 確 認 ハ ガ キ を 送 っ て く れ た 方 を 発 送 リ ス ト か ら 除 外 し た 上 で , 260 名 ほ ど の 未 返 送 者 に 催 促 の ハ ガ キ を 送 り ま し た 。 そ の 結 果 , さ ら に 20% ほ ど 回 収 率 が ア ッ プ し ま し た 。 こ の 時 点 で 既 に 回 収 率 は 60% を 越 え て い ま す 。 そ し て 最 後 は , そ の 2 週 間 後 で す 。 再 度 催 促 を 行 う た め , も う 一 度 ア ン ケ ー ト 用 紙 を 未 返 送 者 170 名 ほ ど

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に 送 り ま し た 。 そ の 結 果 , さ ら に 10% 以 上 回 収 率 が ア ッ プ し , 最 終 的 に は 75% の 回 収 率 と な り ま し た 。 も ち ろ ん , 2 回 返 送 し て き た 人 も い る で し ょ う か ら , 個 人 属 性 と 筆 跡 を 照 合 し , 同 じ 人 物 が 記 入 し た と み な さ れ る ア ン ケ ー ト 調 査 票 は 除 外 し ま し た 。 こ の 調 査 に 要 し た 費 用 を 整 理 す る こ と に し ま す 。 な お , 角 2 封 筒 ( 単 価 8 円 ), 長 3 封 筒 ( 単 価 3 円 ), 切 手 ( 120 円 と 80 円 ), 官 製 ハ ガ キ ( 50 円 ), 宛 名 ラ ベ ル ( 12 片 100 枚 4,500 円 ) で 計 算 し て い ま す 。 印 刷 代 は 内 部 化 さ れ て い る の で 除 外 し ま す 。 最 初 は 400 通 発 送 し ,107,400 円 か か り ま し た 。2 回 目 は ハ ガ キ と ラ ベ ル だ け で す か ら ,260 通 送 っ て 14,000 円 で す 。3 回 目 は 170 通 送 っ て 36,570 円 で す 。合 計 す る と 157,970 円 と な り ま し た 。回 収 率 は 75% で す か ら , 300 通 回 収 さ れ ま し た 。 1 回 き り の 郵 送 で 300 通 回 収 し よ う と す る と ,回 収 率 が 35% で あ れ ば 860 通 の 発 送 が 必 要 に な り ま す か ら 184,460 円 か か り ま す 。 し た が っ て , 1 回 だ け 郵 送 す る 方 が 25,000 円 以 上 高 く な る こ と が わ か り ま す 。 も ち ろ ん , こ の 結 果 は 1 回 目 の 郵 送 分 の 回 収 率 に 依 存 し ま す が , 丁 寧 な 調 査 を 心 が け れ ば , 低 予 算 で 高 回 収 率 を 達 成 す る こ と が で き ま す 。 た だ し , 前 回 も 書 き ま し た が , 催 促 状 を 何 回 も 送 る と , 回 答 者 か ら の 苦 情 が 多 く な り ま す の で , 催 促 状 が 届 く 頃 に は 研 究 室 を 留 守 に し な い 方 が 良 い と 思 い ま す 。 ま た ,中 央 官 庁 の 名 前 で 調 査 を 実 施 す る と ,「 絶 対 に 市 役 所 が 何 ら か の 意 図 を 持 っ て 自 分 を 選 ん だ は ず・・・」 と お 考 え に な ら れ る 方 も 多 く , 市 役 所 の 方 に 苦 情 や 問 い 合 わ せ が い く こ と も あ る そ う で す 。 さ て , こ の 調 査 で は 回 収 率 は 75% に な り ま し た が , 選 択 実 験 部 分 の 有 効 回 答 率 は そ の 80 数 % 程 度 で , し か も 後 に な れ ば な る ほ ど 無 効 回 答 が 増 え る 傾 向 に あ り ま し た 。CVM や コ ン ジ ョ イ ン ト は 質 問 内 容 が や や 難 し い た め ,「 こ ん な 難 し い も の 答 え ら れ ん ! 何 度 も 催 促 す る な ! 」 と 自 由 記 入 欄 や 電 話 で ( 私 の 代 わ り に T さ ん ら が ・・・)怒 ら れ て し ま い ま し た 。し た が っ て ,回 収 率 は 無 理 に 75% に ま で 上 げ な く と も ,1 回 ハ ガ キ で 催 促 す る だ け で も , 場 合 に よ っ て は 十 分 な の か も し れ ま せ ん 。 参考2 )新 聞記事 より 河 川 環 境 の 価 値 を 郵 送 配 布 ・ 改 修 方 式 の ア ン ケ ー ト に よ る CVM を 実 施 し た と こ ろ 、 ア ン ケ ー ト を 受 け 取 っ た 住 民 か ら は「 公 共 事 業 に よ る 失 わ れ た 自 然 環 境 を 復 元 す る の に 新 た に 負 担 金 を 徴 収 す る の か 」と い う 苦 情 が あ っ た 。 さ ら に 、 こ の 調 査 で は 、 回 収 率 を 高 め る た め 催 促 状 を 出 し た こ と か ら 、 さ ら に 調 査 に 対 し 不 満 が 出 た よ う で あ る 。 こ の 調 査 で は 、C V M の 調 査 内 容 を 十 分 に 伝 え な か っ た こ と に よ り 、調 査 対 象 者 が 調 査 の 意 図 を 十 分 理 解 で き ず 、 誤 解 が 生 じ た も の と 考 え ら れ る 。

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(3) その 他の調 査方 法 面接調 査の 中でも 、視 覚に訴 えて 理解を 深め たい場 合に は、回 答者 を1ヵ 所に 集めて ビ デオや 模型 を用い て説 明し、 その 場で回 答を 行って もら う方法 があ る。こ の他 、イン タ ー ネット を利 用して ウェ ブサイ ト上 にてア ンケ ートを 行う 方法も 考え られて きて いる。 主な方 法の 特徴を 表 2-2 に示す。 表 2 -2 主 な 調 査 方 法 の 特 徴 調 査 方 法 内 容 長 所 短 所 面 接( 訪 問 )調 査 法 調 査 員 が 回 答 者 に 対 面 し 、回 収 す る 方 法 。主 に 各 家 庭 へ の 訪 問 ・ 直 接 対 面 す る た め 、 ア ン ケ ー ト に 関 す る 質 問 に そ の 場 で 対 処 可 能 ・ 回 収 率 が 高 い ・ 調 査 費 用 が 高 い ・ 調 査 員 の 技 量 に 左 右 さ れ る 郵 送 調 査 法 ア ン ケ ー ト 表 を 郵 送 し 、回 答 を 行 っ て も ら う 方 法 ・ 調 査 費 用 が 安 い ・ 対 象 と な る 回 答 者 が 多 く て も 対 応 可 能 ・ 回 答 者 に 正 確 に ア ン ケ ー ト 内 容 が 伝 わ ら な い 可 能 性 が あ る ・ 回 収 率 が 低 い 集 団 面 接 調 査 法 回 答 者 を 1 ヵ 所 に 集 め て 回 答 を 得 る 方 法 ・ 文 章 だ け で は 伝 え に く い 内 容 に 関 し て 、 視 覚 に 訴 え る 手 段 が 可 能 ・ 母 集 団 の 偏 り が 生 じ や す い イ ン タ ー ネ ッ ト 調 査 会 員 を 抱 え た 調 査 プ ロ バ イ ダ を 利 用 し 、ネ ッ ト 上 で ア ン ケ ー ト を 実 施 す る 方 法 ・ 調 査 期 間 が 非 常 に 短 い ・ 調 査 費 用 が 安 い ・ 母 集 団 は イ ン タ ー ネ ッ ト を 利 用 で き る 環 境 に あ る 人 の み に 偏 る ・ 細 か い 調 査 範 囲 を 設 定 し に く い 電 話 調 査 電 話 を か け て ア ン ケ ー ト を 実 施 す る 方 法 ・ 調 査 費 用 が 安 い ・ 世 帯 単 位 で の 抽 出 が 可 能 ・With・Without 状況 を 想定 し に く い ・ 回 収 率 を 計 測 し づ ら い ・ 個 人 ベ ー ス で デ ー タ を 採 取 し に く い (4) 調査 結果の 収集 方法選 定に あたっ ての 留意事 項 ア ンケ ート調 査を 通じて 調査 対象の WT Pを推 定す るCV M調 査にお いて 、面接 調 査 や 郵送調 査、 インタ ーネ ット調 査、 電話調 査等 、調査 結果 の収集 方法 につい ては 、回収 率 の 向上や 、表 明され たW TPの 信頼 性の確 保等 に直接 影響 する要 因で ある。 サ ンプ リング 段階 で課題 の残 る電話 調査 は極力 避け ること が望 ましい 。ま た、面 接 調 査 と郵送 調査 につい ては 、分析 手法 の工夫 によ り、W TP の推定 値に は大き な差 が生じ な い と考え られ ること から 、それ ぞれ の特徴 を踏 まえ、 いず れかを 選択 するこ とが 望まし い。 イ ンタ ーネッ ト調 査にお いて は、調 査対 象者が イン ターネ ット を使え る環 境にあ る 人 の みに限 られ ること から 、母集 団に 偏りが ある ことに 注意 しなく ては ならな い。 ただし 、 今 後イン ター ネット がさ らに普 及す れば、 その 限りで はな いと考 えら れる。

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2-3 情報収集と事前調査 2-3-1 概算の支払意思額の把握 CVMは、金銭取引が行われていないものを対象として金銭を評価するため、調査を実 施する前に、評価対象となっている外部経済の支払意思額の範囲を、ある程度予想想定し たうえで調査票を作成する必要がある。そのため、評価対象に関する支払意思額の幅を、 事前調査や情報収集等によって把握しておくことが重要となる。 ■事前 調査 の事例 栗 山 (1996)に よ る 松 倉 川 の 生 態 系 保 全 で は 、 フ ォ ー カ ス グ ル ー プ に よ る 自 由 討 論 形 式 の 議 論 1 回とプレテスト 2 回を実施している。フォーカスグループは、函館在住で松倉川を良 く 知って いる 人に協 力が 依頼さ れ、 約2時 間の 議論が 行わ れてい る。 調査実 施に 先立っ て、 事前に フォ ーカス グル ープに よる 自由討 論形 式の議 論を 行えば 、 上 述のよ うな WTP の概 ねの傾 向が 把握で きる ほか、 調査 票の質 問項 目への 理解 度や回 答 の し やすさ 等に ついて 意見 をもら い、 調査票 や質 問のし かた を修正 する ことが 期待 できる 。 し た がって 、で きるだ け事 前調査 を実 施する こと が望ま しい 。 ※フォ ーカ スグル ープ Focus Group 正確な シナ リオを 作成 するた め司 会者の もと で少人 数の 討議を 行い 問題点 を把 握する 方 法 。 2-3-2 便益集計に必要なデータの整理 アンケートによって得られる結果はあくまでもサンプルデータであり、社会全体の支払 意思額を評価するには、サンプルでの推計値を母集団に拡大する必要がある。その際に必 要となるサンプル属性や母集団シェア等に関するデータについては、事前に収集方法を整 理し、必要に応じて事前調査を行うことが望ましい。 アンケ ート によっ て得 られた 支払 意思額 を、 母集団 に拡 大する 際に 必要と なる サンプ ル 属 性や母 集団 でのシ ェア 等に関 する データ につ いては 、サ ンプル の抽 出方法 によ って異 な る 。 母集団 に拡 大する 際に 必要と なる データ を、 それぞ れの サンプ リン グ方法 ごと に整理 す る と 以下の よう になる 。 (1) ラン ダムサ ンプ リング 母集 団か ら無作 為( ランダ ム) に抽出 され たサン プル から集 計さ れた結 果を 拡大す る た め には、 母集 団人口 とサ ンプル 数か ら得ら れる 抽出率 があ ればよ い。 通常は WTPall = WTPs × 全母集団構成要素の総数 により、社 会全体 の支 払意思 額( WTPall)を算出すればよい。ただし、WTPall:母集団全体 での支 払意 思額の 合計 、WTPs:サンプルで抽出された支払意思額の平均値を示す。

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(2) 段階 抽出 ○ラン ダム 抽出を 行う 際に、 母集 団全て を抽 出対象 とし た場合 、抽 出のた めの 作業量 が 膨 大なも のに なる場 合が ある。 ○その 際、 たとえ ば発 地調査 など におい ては 、まず 市町 村を抽 出単 位とし てラ ンダム に 抽 出し、 つぎ に選ば れた 市町村 の中 で、そ れぞ れさら に世 帯をラ ンダ ム抽出 する など、 標 本抽出 にお いてい くつ かの段 階に 分けて 個体 を抽出 する 。 (3) 層別 サンプ ル抽 出 1)層 別無 作為抽 出( ランダ ムサ ンプリ ング )を前 提と する場 合 母 集団 を構成 する すべて の人・世帯、あ るいは 地域 などを サン プル抽 出の ために 分 割 したグ ルー プを「 抽出 単位」とい い、抽 出の 基本と なる 。抽出 単位 の設定 にあ たって は 、 ①母集 団を 構成す るす べての 世帯 や人が 必ず どれか の抽 出単位 に含 まれて いる こと ②すべ ての 抽出単 位に 等しい 確率 を与え て抽 出した とき 、母集 団全 体に属 する 世帯や 人 が抽出 され る確率 はす べて等 しく なるこ と、 という 2つ の条件 が必 要であ る。 た とえ ば、ある 目 的地域 全体 のサン プル を、市区 町 村ごと のグ ループ に分 けて抽 出 す るとき には 、①の条 件 から、あ る 目的地 域に 属する 全て の市区 町村 からサ ンプ リング を 行う必 要が あり、ま た 、②の条 件 からそ れぞ れの市 区町 村に割 り当 てられ るべ きサン プ ルの抽 出率 は、ど の市 区町村 も同 じであ る必 要があ る。 2)ラ ンダ ム効用 モデ ル(非 集計 モデル )に よって 推計 を行う 場合 ランダ ム効 用モデ ル( 非集計 モデ ル)を前提 とした 層別 サンプ ル抽 出を実 施す る場合 、 上記② の制 約はな くな り、母集 団 全体に 対す る各層 の構 成比率 のデ ータの みが 予め入 手 できて いれ ば推計 が可 能とな る。 層 別 サ ン プ リ ン グ に よ っ て ラ ン ダ ム 効 用 モ デ ル を 推 計 す る 際 の 推 計 式 に つ い て は 、 「非集 計行 動モデ ルの 理論と 実際 」( 土木学 会,丸善 ,H7.5)等の図書を参照されたい。 (4) サン プリン グ資 料例 住民 基本 台帳 ― 個人ベースの便益を算出するとき。 選挙 人名 簿 ― 有権者をベースに便益を算出するとき。

表 1-1  外部効果の計測手法の長所と短所
表  3-1  プロファイルの例  質問: 以下 のよう なレ クリエ ーシ ョン施 設が 実際に 整備 される とす れば、 あな たはど れ を 選 びます か?   プ ロ フ ァ イ ル 1   プ ロ フ ァ イ ル 2   プ ロ フ ァ イ ル 3   プ ロ フ ァ イ ル 4   駐 車 場 の 広 さ   5 0 台   2 0 台 1 0 0 台   遊 歩 道 の 長 さ   3 0 0 m   5 0 0 m 8 0 0 m   キ ャ ン プ 場 の 数   3 ケ 所   5

参照

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