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消費者の視点から見た農産物ブランドの価値

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(1)

消費者の視点から見た農産物ブランドの価値

関 義 雄

袁 静

馬 淵 キ ノ エ

Ⅰ はじめに

Ⅱ 農産物のブランド化

Ⅲ 消費者の視点から見た産地ブランド

Ⅳ おわりに

はじめに

2001

年度の農業白

1

書によると

2000

年度の日本の供給熱量の総合食料自給率は

40%

となっており,これは先進国の中では最も低いレベルである。特に飼料用穀物の自給率

30% 以下であり,多くを海外に依存している。穀物では米のみが 100% の自給率を

維持しており,穀物生産においては米作のみに頼るいびつな構造となっている。一方,

日本人の年間米消費量は

1962

年に

118 kg

であったのが,2000年には

64.6 kg

とほぼ半 減してい

2

る。米の生産過剰は恒常的となり,価格の暴落を防ぐために生産調整が行われ ている。大量の農産物が輸入されている一方で

40% 近くにおよぶ米の生産調整が行わ

れているという矛盾した農業政策がとられており,日本の米作は国際競争力を失ってい る。

1960

年代米作が農業総産出額の

40% 以上を占めていたが,米作の割合が年々減少

し,現在では米作と野菜作りの比率はそれぞれ

26% と 23% となっており,米作と野菜

作りとがほぼ拮抗してい

3

る。このように米作に代わって野菜生産が日本農業にとって重 要な部分を占めるようになっており,これを支える野菜作り農家戸数はやや減少傾向に あるものの,2000年で

45

万戸となり,販売農家全体の

19% を占めてい

4

る。農業白

5

書 によると米作り専業農家のシェアは

36% にすぎないのに対し,野菜作り専業農家の割

合は

85% と高く,畜産農家とともに日本の農業を支える重要な柱である。これは米作

────────────

1 農林統計協会『食料・農業・農村白書』,2001年,6ページ。

2 前掲書,166ページ。

3 前掲書,108ページ。

4 前掲書,178ページ。

5 前掲書,108ページ。

126(740

(2)

では機械化が進み,少ない労働時間で生産できるため兼業化が進んだのに対し,野菜作 りは人手を必要とし,兼業化が難しいためと考えられる。従って,野菜作りは米作り以 上に日本の農業の中心である。しかし,米作に代わる柱として位置付けられる野菜作り ではあるが,近年,海外からの野菜の輸入が急増しており,日本の農業にとって深刻な 問題を提起している。米に関しては将来的に輸入圧力が増大することは間違いなく,畜 産では既に輸入の自由化が始まっている。さらに,野菜の輸入が増加すれば,日本で作 ることのできる農産物がなくなる危険性すら感じられる。

農業白

6

書によれば,2000年の野菜の作付け面積は前年比で

2.4% 減少となり,作付け

面積,生産量とも減少傾向にある。その要因は野菜の輸入の増加であり,輸入量は

1991

年の

1.7

倍を越えている。しかも,生鮮野菜の比率が高まっており,41.3% にまで拡大 した。生鮮野菜は鮮度が最も重要な品質特性であったため,これまで海外からの輸入は 高価で特殊な野菜に限定され,日本市場は閉じた存在であった。しかし,輸送技術の発 達により鮮度を保ったまま海外の産地から日本市場に輸送できるようになり,輸送技術 の発達は日本の野菜市場を海外に解放した形となった。

生鮮野菜の輸入増加は国内農業に大きな影響を与えている。その

1

例がセーフガード の発動であろう。政府は

WTO

協定に基づき,2000年

12

月に一般セーフガードの発動 について調査を開始し,翌年

4

月に生しいたけ,ねぎ,および畳表の

3

品目を対象に暫 定措置を発動した。これは既に輸入野菜が日本人の食生活に欠かせない存在になってお り,生産者にとって脅威となっていることを示している。特に中国の躍進が顕著であ る。野菜の輸入が増加した背景には,85年

9

月のプラザ合意を契機とした急激な円高 があげられる。国内産の農産物価格に比べて海外の農産物価格がさらに安くなり,国内 産野菜が価格競争力を失って行った。さらに,これまで国内産の端境期や不作による価 格高騰時にスポット的に輸入されていたのが,韓国や中国産の野菜の品質向上と低価格 化により量販店や外食産業を中心に販売が拡大し,国内産に影響されることなく輸入さ れる傾向が強まってきた。特に,韓国と中国では日本市場に照準を合わせ,日本の消費 者の嗜好を分析し,日本の消費者が受け入れられる野菜の生産を行っているため,日本 の野菜作り農家にとって大きな脅威となっている。

これまでは鮮度が大きな輸入障壁となり,異常気象による国内の生産の落ち込みなど 緊急輸入以外は輸入野菜の脅威は存在しなかった。しかし,輸送技術の進歩により,も はや鮮度が輸入障壁とならなくなり,野菜の輸入が急増する事態となっている。このよ うな大きな変化の中で日本の野菜生産地が生き残るためには,価格や鮮度を越えた新し い消費者にアピールするものが必要となる。それが農産物のブランド化である。まだ始 まったばかりであるが,今後急速に普及することが予想される。しかし,農産物のブラ

────────────

6 前掲書,178−179ページ。

消費者の視点から見た農産物ブランドの価値(関・袁・馬淵) (741)127

(3)

ンドを評価するのは消費者であり,消費者の意向を無視してはブランド化する意味はな い。このような観点から本研究では輸入野菜に対する対抗軸としてのブランド化および 産地間競争に打ち勝つためのブランド化について消費者の視点から検討を行った。

農産物のブランド化

青果物は季節性の強い商品であり,一年中出回っているわけではない。商品のブラン ドを確立するために広告宣伝活動を行っても,ほとんどの期間は市場に存在しないた め,青果物そのものをブランド化するメリットはない。そこで商品ブランドの代わりに 多く見られるのは生産者である農家の名前や産地である。生産者を特定することにより 品質を保証する効果が期待できるし,産地ブランドも同じ効果が期待できる。産地ブラ ンドに関しては一定の地域的な広がりである産地を単位として商品化が行われるところ が多く,産地全体で品質を保証し,差別化をはかるものである。消費者は青果物であっ ても品質を保証するよりどころを求めており,農産物ブランドを設定する価値は十分あ る。しかし,桂

7

は農産物のブランド化には他の商品とは違う問題点として農産物の品質 は気候変動によって変化するため品質を制御することが極めて困難であり,同じブラン ドでありながら品質が変動してしまうと指摘している。従って,品質評価の手がかりと してのブランドの信頼性が揺らぐことになる。現在成功している産地ブランドとしては 京ブランドがあげられる。

京野菜のブランド産品マークは,特に品質の優れたものにのみ貼られている。ブラン ドは

21

品目,98産地(2000年度時点)であ

8

る。始まった頃は売上げ

3800

万円にすぎ なかったが,2000年には約

10

億円にまで増加している。京ブランドが成功した背景に は他の地域では栽培していない品種を敢えてブランド化して売り出したところにある。

古都の伝統的な料理のイメージを京の伝統野菜というイメージとドッキングさせること により,他の地域との差別化をはかることができたと考えられる。

香川県では

2001

年度からブランド農産物の認定制度を新たに創設し,県産農産物ブ ランド育成事業を発足させ

9

た。県内で生産される農産物及び農産加工品について,「か がわ農産物流通消費推進協議会」が一定の基準を定め,その基準に適合する農産物等に 対して認証を行なう制度を設け,販売力の強化をねらったものである。認証基準として は土壌成分,有機肥料の使用,糖度などの品質が選ばれている。安全性と品質保証を付

────────────

7 桂 瑛一「農産物ブランドの特質と戦略課題」『農業と経済』,第63巻第1号,1997年,28−33ペー ジ。

8 (a)井上忠司「京野菜ブランド確立による伝統野菜の振興」『農業と経済』,第63巻第1号,1997年,

57−64ページ。

9 Kブランドのホームページは以下を参照;http : //www.k−brand.jp/

同志社商学 第54巻 第5・6号(2003年3月)

128(742

(4)

加価値ととらえ,それを全面に打ち出したものである。しかし,この付加価値は香川県 特有の物ではなく,他の産地が同様な産地ブランド化を行えば,産地間競争の中で埋没 して行くことが予想される。その他のブランドとして兵庫ブラン

10

ド,岩手県純情ブラン

11

ド,みやざきブラン

12

ド,鳥取県米子市の「だんだん育

13

ち」などが現在設定されている。

このように日本各地で農産物のブランド化が進められているが,そのほとんどが香川ブ ランドと同じように,産地,美味しさ,安全性,環境性などを認定基準にしている産地 ブランドであり,香川県のブランドで示した同様な限界を持っていると考えられる。

農産物のブランド化の目的は差別化することにより高価格で販売し収益をあげること である。しかし,多くの産地で同様なブランド化が始まれば,ブランド化の効果が減少 し共倒れになることは予想される。一方,輸入品との競合を考えるとブランド化は安全 性と言う意味で一定の効果を発揮することが期待される。これからの日本の野菜作りを 考える上で消費者が輸入農産物をどのように評価しているのか,農産物のブランド化を どのように受け入れようとしているのかは興味深い問題であり,重要な視点である。そ こで,日本の消費者の輸入野菜に対する意識と香川県の

K

ブランドに対する認知度に ついて検討を行った。

消費者の視点から見た産地ブランド

1.先行研究

総理府広報室が

2000

7

月に実施した「農産物貿易」に関する世論調査の結果は興 味深

14

い。食料品を買う際に,国産品と輸入品が並んでいる場合,どちらを選択するかの 質問では「国産品」が

81.9%(内訳は「国産品」64.9%+

「どちらかというと国産品」

17.0%)

,「輸 入 品」が

0.4%(内 訳 は「ど ち ら と い う と 輸 入 品」0.2%+

「輸 入 品」0.2

%),および「特にこだわらない」が

16.5% と言う結果が示されている。都市規模別に

見ると,「国産品」と答えた人の割合は郡部・人口

10

万人未満の都市で多く,「特にこ だわらない」と答えた人の割合は三大都市圏で多くなっていた。性別との関連では「国 産品」と答えた人の割合は女性で,「特にこだわらない」と答えた人の割合は男性で,

それぞれ高くなっていた。性・年齢別に見ると,「国産品」と答えた人の割合は女性の

────────────

10 兵 庫 ブ ラ ン ド に 関 す る ホ ー ム ペ ー ジ は 以 下 を 参 照;http : //www.town.santo.hyogo.jp/gyousei/osirase/

sangyou.htm

11 岩手県純情ブランドのホームページは以下を参照;http : //www.iw.zennoh.or.jp/brand/brand_top.html 12 みやざきブランドのホームページは以下を参照;http : //www.pref.miyazaki.jp/nousei/kikaku/brand/bra1.

html

13 鳥取県「だんだん育ち」のホームページは以下を参照;http : //www.chushi.maff.go.jp/live/live30/dandan 0110.htm

14 総理府広報室編「月刊世論調査」,2000年7月。

消費者の視点から見た農産物ブランドの価値(関・袁・馬淵) (743)129

(5)

30

代から

60

代で高く,「特にこだわらない」と答えた人の割合は男性の

20

代から

40

代と女性の

20

代で高くなっていた。職業別では,家族従業者および主婦が「国産品」

を主に選んでおり,「特にこだわらない」と答えた人の割合は管理職・専門職・事務 職,その他の無職で高くなっていた。

次にその理由を聞いている。国産品を選択した基準は,「安全性」を挙げた人の割合 は

82% と も っ と も 高 く,以 下「新 鮮 さ」

(57.3%),「品 質」(42.3%),「お い し さ」

(26.7%),「価格」(10.5%),「外観」(2.6%),「多様性」(1.8%)の順となっていた(複 数回答)。性別では「安全性」を挙げた人の割合は女性で高くなっていた。職業別には

「安全性」を挙げた人の割合は主婦で高くなっていた。

一方,「輸入品」「どちらかというと輸入品」と答えた人では,国産より輸入品を選択 した基準は「価格」が

64.3% で最も高くなっていた。

「特にこだわらない」と答えた人 の選択基準は主に「新鮮さ」(66.2%)と「価格」(58.7%)であった。以上の結果か ら,「安全性」が国産品の主な選択基準となっていて,女性,主婦,高齢者が比較的高 い割合を示し,一方,輸入品の選択基準は「新鮮さ」と「価格」であり,際立った違い を示していた。以上が総理府広報室が行った「農産物貿易」に関する世論調査の概略で ある。

2.香川県民の農産物に対する意識調査結果

著者らは農産物の地産地消について香川県民の意識を調査するため

2002

10

月に

2707

人を対象にアンケート調査を実施した。1775名から回答があり,回収率は

65.6%

であっ

15

た。調査対象は

3

年前に香川県が実施した買い物袋持参運動のモニターに応募し た県民を対象としているため,分析結果には偏りがあり,一般化することはできない が,比較的環境意識の高い香川県民の意識を探ることができると考えている。調査対象 の属性について簡単に紹介すると,女性が

98.6% を占め,ほとんどが女性であった。

年齢は,20−34才が

20.0%,35−44

才が

29.3%,45−54

才が

21.9%,55

才以上が

28.8%

であった。職業別では専業主婦が

48.8% とほぼ半数を占め,フルタイムとパートタイ

ムの職業を持つ人がそれぞれ

19.1% と 19.0% であった。

まず,輸入野菜に対する意識を聞いた。「しいたけを購入するとき,国産品と輸入品 が並んでいる場合,どちらを選択しますか」と言う質問に対し以下の割合で回答があっ た(第

1

表)。圧倒的に国産品を重視しており,「国産品」および「どちらかと言うと国 産品」を合わせると

78.8% に達した。この結果は総理府が行った世論調査の結果と一

致している。「輸入品」および「どちらかというと輸入品」の合計は

3.8% しかなく,

────────────

15 「グリーン・コンシューマー」に関するアンケート調査;調査票の配布・回収は郵便により行ない,SPSS for Macintoshを用いて分析を行なった。

同志社商学 第54巻 第5・6号(2003年3月)

130(744

(6)

サンプル数が少ないため以後の分析で は,「輸入品」,「どちらかというと輸入 品」,および「特にこだわらない」を統 合した。このグループは国産品にこだわ らないグループであるため非国産派と定 義し,「国産品」および「どちらかとい

うと国産品」を国産派と定義して分析を行った。

次にそれぞれのグループの選択基準について第

1

図に示す。国産派の

94% は「安全

性」を選択基準としていて,その次は「品質」と「新鮮さ」であり,「価格」はほとん ど重視されていない(5% 未満)。これに対して,非国産派の

96% は「価格」を重視し

ており,「新鮮さ」の重視度も

60% 近くある。以上の結果から,国産派が安全性を優先

して国産品を選択しているのに対し,非国産派は価格を優先して選択していることが分 かる。そしてどちらのグループも新鮮さも重視している。

国産派および非国産派と属性との関連について検討を行った。年齢別にみると,年齢 が高くなるほど,国産品を重視して買うという傾向が見られ,若い年齢層ほど国産にこ だわっていない傾向が見られる(第

2

表)。この結果も総理府の世論調査と同じ傾向を 示している。

3

表および第

4

表には経済的ゆとりおよび時間的ゆとりと国産品を選択する割合を 示している。「経済的ゆとりがあるかどうか」の質問では,「ある」が

45.3%,

「ない」

53.1% であったが,国産派ー非国産派との関連の分析では,経済的ゆとりが「ある」

と答えた人の

85.2% は「国産派」で,一方で,

「ない」と答えた人の

76.1% が「国産

派」であった。1% の危険率で有意差が認められた。経済的なゆとりのある人のほうが

第1表 しいたけを購入する時の選択(%)

1)国産品

2)どちらかというと国産品 3)どちらかというと輸入品 4)輸入品

5)特にこだわらない

53.6 25.2 2.9 0.9 15.3

第1図 国産派および非国産派の選択基準(複数回答)

消費者の視点から見た農産物ブランドの価値(関・袁・馬淵) (745)131

(7)

明らかに国産品を重視している。経済的ゆとりと年齢とが強い相関が認められるので,

言い換えれば,経済的ゆとりのない若者が安全性より価格を重視するため国産品にこだ わらないで,価格の安い輸入品を選択していると言う解釈もできる。時間的ゆとりの場 合は「ある」が

53.8% で,

「ない」が

44.6% であった。時間的ゆとりと国産品選択との

関係では,「ある」と答えた人で国産派は

82%,

「ない」と答えたひとで

78.8% であっ

た。時間的ゆとりと国産品選択との有意差は認められなかった。

以上の結果から,国産品を選ぶかどうかの重要な要素として経済的ゆとりと安全性の 重視が大きく効いていることが明かとなった。高齢者は比較的経済的ゆとりがあるの で,価格よりも安全性を重視するため国産品を選択し,若者は安全性のためには国産品 を重視したいが,経済性を考えると価格の安い輸入品を選択しても良いと判断している と解釈できる。従って,輸入品が今後増加するかどうかは消費者の安全性に対する態度 にかかっていると言えよう。安全性を重視する傾向が高まれば輸入品は減少し,安全性 を意識しなくなれば輸入品が増加すると予想される。現在,中国からの輸入野菜の残留 農薬の問題から,安全性への関心度が高くなっており,国産品を選択する傾向が高まっ ていると予想される。

アンケートでは,購買時における価格と産地の重視度を調べるために,にんじん,た まねぎ,なす,ねぎ,しいたけ,春菊,レタス,ほうれん草とトマトといった

9

種類の 野菜類と,もも,いちご,りんご,みかん,オレンジ,バナナといった

6

種類の果物,

および米を対象に価格と産地に対する購買時の重視度に関する質問を行った。それぞれ の重視度を第

5

表に示す。結果の数値は,「常に重視している」を

4

点,「だいたい重視 している」を

3

点,「あまり重視していない」を

2

点,および「まったく重視していな い」を

1

点とし,その平均点を表している。従って,4に近い程重視度が高い。

5

表からは特徴的な傾向を読み取ることはできない。米としいたけを除いて価格を 重視する農産物は産地も重視する傾向が 見られるが,重視度においては大きな違 いは見られない。次に,種類毎の価格お よび産地に対する重視度を価格の重視度 を横軸に産地の重視度を縦軸にプロット し,国産派と非国産派に分けた図を第

2

第3表 経済的ゆとりと国産品選択 経済的ゆとり 国産派(%) 非国産派(%)

ある ない

85.2 76.1

14.8 23.9

第4表 時間的ゆとりと国産品選択 時間的ゆとり 国産派(%) 非国産派(%)

ある ない

82.0 78.3

18.0 21.7 第2表 国産品の選択割合と年齢との関連

年齢 国産派(%) 非国産派(%)

20−34歳 35−44歳 45−54歳 55歳以上

69.8 75.4 83.4 90.7

30.2 24.6 16.6 9.3

同志社商学 第54巻 第5・6号(2003年3月)

132(746

(8)

図に示す。

全体の平均値を示した第

5

表では価格と産地の重視度において大きな違いが認められ なかったが,国産派と非国産派という別の視点を組み込むと価格と産地の重視度は大き く

2

つのグループに別れた。国産派はすべての種類において非国産派に比べて産地の重 視度が高い。特にしいたけにおいてひときわ高いのは中国からの輸入野菜のセーフガー ドに取り上げられたことから認識が高まったことが要因と考えられる。非国産派は国産 派に比べて価格重視の傾向が見られる。

6

表は価格重視度における種類別の国産派および非国産派の平均値と有意差検定の 結果を表している。すべての野菜において非国産派が国産派に比べて高い値を示し,し かも春菊以外有意差が認められた。一方,果物に関しては,総平均で見ると,野菜と同 様に,非国産派のほうが国産派より価格を重視しているが,果物

6

種類の中で,みか ん,もも,りんごといった自給率の高い種類に関して特に差が大きく見られ,反対にオ レンジやバナナのようなほとんどが輸入品で占められている果物では有意差は認められ なかった。また,いちごに関してはどちらも大きな値が示したが,これはいちごが国産 派と非国産派に関係なく価格を重視して購買されていることを示している。このように 果物でも非国産派の方が高い値を示したが,野菜ほど有意差が認められず,野菜と果物

第5表 種類毎の価格および産地に対する重視度

価格重視度 産地重視度

い ち ご 3.15 し い た け 3.11

レ タ ス 3.10 米 3.11

ほうれんそう 3.07 い ち ご 3.02 も も 3.04 み か ん 3.01 み か ん 3.02 も も 3.01 ト マ ト 3.00 ほうれんそう 3.00 り ん ご 3.00 り ん ご 2.95 バ ナ ナ 2.99 ト マ ト 2.92 し い た け 2.95 レ タ ス 2.90 な す 2.95 オ レ ン ジ 2.88 に ん じ ん 2.95 ね ぎ 2.86 米 2.95 た ま ね ぎ 2.78

ね ぎ 2.94 な す 2.77

オ レ ン ジ 2.93 バ ナ ナ 2.75 た ま ね ぎ 2.90 に ん じ ん 2.74

春 菊 2.84 春 菊 2.73

消費者の視点から見た農産物ブランドの価値(関・袁・馬淵) (747)133

(9)

第2図 国産派および非国産派に分けた種類毎の価格および産地に対する重視度

第6表 種類別価格重視度と国産派・非国産派との関連

野 菜 国産派 非国産派 果 物 国産派 非国産派 し い た け 3.00 3.2 ** い ち ご 3.21 3.29 た ま ね ぎ 2.97 3.21 ** オ レ ン ジ 3.02 3.13 ト マ ト 3.07 3.26 ** バ ナ ナ 3.04 3.15 な す 3.04 3.22 ** み か ん 3.09 3.24 **

に ん じ ん 3.00 3.25 ** も も 3.11 3.22 * ね ぎ 3.02 3.19 ** り ん ご 3.05 3.19 * ほうれん草 3.16 3.28 * 総 平 均 3.09 3.20 レ タ ス 3.17 3.31 **

春 菊 2.97 3.03 総 平 均 3.04 3.22

注:**1% の危険率,*5% の危険率でそれぞれ有意差が認められる 同志社商学 第54巻 第5・6号(2003年3月)

134(748

(10)

では消費者意識に微妙な違いがあることが推察される。なお,米に関しては国産派の重

視度が

3.17,非国産派の重視度が 3.33

となり,どちらも重視度が高く有意差は認めら

れなかった。

次に産地の重視度を見てみると,第

7

表に見られるように,産地に関しては,「価格」

と反対に,国産派が野菜と果物の産地を種類に関係なく重視しているのに対し,非国産 派は産地に対して関心が極めて低い。産地に関する両者間の差の開きが価格の場合より 大きいことがわかる。国産派および非国産派という分け方がそもそも産地を区分してい るためこのような明確な違いが出たのかも知れない。ここで注目すべきは価格では野菜 と果物では大きな違いが認められなかったが,産地では非国産派で大きな違いが認めら れる点である。非国産派の価格重視度の総平均が野菜で

3.22,果物で 3.20

と同じ値を 示したのに対し産地では野菜が

2.27,果物が 2.45

と明らかに果物では産地の重視度が 高くなっている。そこで,この点に関してもう少し深く分析を行った。なお,米に関し ては国産派の重視度が

3.47,非国産派が 2.83

であり,非国産派の中で最も重視度が高 い農産物であった。

非国産派グループだけを取り出した価格と産地の重視度のグラフを第

3

図に示す。第

3

図では青果物を以下の三つのグループに分けることができる。第

1

は米である。産地 の重視度が最も高い。米は完全に産地ブランド化しているため,以上の結果は当たり前 かもしれな

16

い。第

2

のグループには野菜ではほうれん草,レタス,トマト,果物にはみ かん,もも,いちご,りんごが入っている。みかん,もも,りんごといった自給率が高 く,産地ブランドが形成されている果物と同様に,ほうれん草,レタスのような葉物と

────────────

16 大泉一貫「生産者のマーケティング戦略」『農業と経済』,第63巻第1号,1997年,48−56ページ。

第7表 種類別産地重視度と国産派・非国産派との関連

野 菜 国産派 非国産派 果 物 国産派 非国産派 し い た け 3.49 2.22 ** い ち ご 3.29 2.5 **

た ま ね ぎ 3.31 2.19 ** オ レ ン ジ 3.22 2.32 **

ト マ ト 3.24 2.37 ** バ ナ ナ 3.03 2.23 **

な す 3.11 2.22 ** み か ん 3.29 2.6 **

に ん じ ん 3.07 2.16 ** も も 3.28 2.55 **

ね ぎ 3.21 2.23 ** り ん ご 3.21 2.48 **

ほうれん草 3.32 2.4 * 総 平 均 3.22 2.45 レ タ ス 3.18 2.38 **

春 菊 3.05 2.22 **

総 平 均 3.22 2.27

注:**1% の危険率,*5% の危険率でそれぞれ有意差が認められる

消費者の視点から見た農産物ブランドの価値(関・袁・馬淵) (749)135

(11)

トマトやいちごのような生で食べるもので,価格が重視されていると同時に,産地の重 視度もかなり高い。第

3

のグループには,輸入物がほとんどのオレンジとバナナの果物 と,ねぎ,なす,にんじん,たまねぎといった根野菜や実が成るものと春菊というよう 調理して食べるものが入っている。こういった種類の青果物に対して消費者の産地の重 視度が低いことが分かる。オレンジとバナナの輸入物は,すでに日本の消費者に受け入 れられており,同じ特質を持つことは,上記の調理用の野菜も将来輸入物が国産品と交 代する可能性がないとは言えないことを示している。

以上詳細に見てみると国産の果物と輸入の果物,生食中心の野菜と調理用の野菜で価 格および産地の重視度が異なっていることが分かる。そこで,国産果物グループ(も も,みかん,りんご)と調理用野菜(なす,たまねぎ,にんじん)の

2

つのグループで 産地の重視度に有意差があるか検討を行った。第

8

表から明らかなように国産派も非国 産派も産地において野菜より果物の方が重視度が高く,どちらも有意差が認められた。

既に述べたように農産物のブランド化のほとんどは産地ブランドであり,産地の特徴で 差別化を図るものであった。国産派が産地にこだわるのは安全性であり,これは国産と

第3図 非国産派の価格・産地の重視度から見たグループ分け 同志社商学 第54巻 第5・6号(2003年3月)

136(750

(12)

輸入と言う選択肢では有効である。一方,国産品にこだわらない非国産派の野菜と果物 に対する意識の違いは産地ブランド化に示唆を与えている。つまり,非国産派では調理 用の野菜と国産の果物の産地の重視度が統計的に有意な差を示しており,野菜よりも果 物において産地ブランド化が可能であることを示している。従って,調理用の野菜の産 地ブランド化を目指すことは京都のように地域としてのブランド力がない限り,果物の ブランド化よりも一段と難しいと結論付けることができる。

アンケートでは,香川県の

K

ブランドについての認知度も質問した。「昨年香川県に よって発足した農産物の

K

ブランド産品を知っていますか」という質問に対して,「実 際に利用している」と答えた人の割合は

12.9% で,少数であった。

「名前だけ知ってい る」と答えた人の割合は

49.5% で,半数近くが名前を知っていることが分かる。残り

37.6% は「知らない」と答えた。さらに,第 9

表に示すように

K

ブランドを知って

いるかどうかを国産派と非国産派別に見ると,「実際に利用している」と答えた者の中

95.4% は国産派であって,圧倒的に多いのに対して,非国産派はわずか 4.6% しかな

かった。「名前だけ知っている」と答えた者の中では,国産派が

80.1% で,非国産派の

占める割合は

19.9% まで高くなっている。

「知らない」と答えた者の中では,国産派が

75.4%,非国産派が 24.6% であった。このように国産品を重視する人ほど K

ブランド

の利用および認知度が高いことがわかった。従って,農産物のブランド化は安全性に疑 問がもたれる輸入品に対する対抗手段として機能していることが明かとなった。

おわりに

最近,日中農産物貿易に関連して注目を集めたのが,中国野菜の残留農薬問題であ る。2001年

12

11

日付『産経新聞』に中国野菜

47% に残留農薬と報道されて以来,

ただでさえ信頼性の低い中国輸入野菜に対して,日本の消費者はさらなる不安感を抱く ようになった。また,日本では認可されていない遺伝子組換えとうもろこし「スターリ ンク」の食品等への混入等,食品の安全性への信頼を損なう事態が重なった。このよう な状況下で消費者は安全性を保証するよりどころを求めており,それが産地ブランドで

第8表 野菜と果物の産地重視度比較 産 地 野 菜 果 物 国 産 派 2.92 3.12 **

非国産派 2.11 2.47 **

総 平 均 2.77 2.99 **

注:**1% の危険率で有意差が認められる

第9表 Kブランドの利用および認知度と国産派・

非国産派との関連

国産派(%) 非国産派(%)

実際に利用している 名前だけ知っている 知らない

95.4 80.1 75.4

4.6 19.9 24.6 消費者の視点から見た農産物ブランドの価値(関・袁・馬淵) (751)137

(13)

あった。

このような社会情勢の変化を受けて,2000年

6

月に改正

JAS

法が実施され,有機食 品の検査認証制度が導入され,生産者にとって差別化を図る手段になりうると考えられ

17

る。また,環境保全型農業に取り込んでいる農家は販売農家全体の

21.5% となってお

18

り,その取組みが着実に広がっている。一方,多くの産地ブランドの認証基準は美味し さ,安全性,環境性などであり,共通している。安全性=有機農産物は時代の流れであ り,安全性と品質を全面に押し出した産地ブランド化はこれからも多くの地域で生まれ てくるものと予想されるが,既に述べたように安全性は輸入野菜との差別化には有効で あるが,国内の産地間競争では全ての産地ブランドの中心的な基準であるためその差別 化としての有効性は消滅すると考えられる。その時,差別化は次の新鮮さ,品質,およ び美味しさへと移って行く。

本研究の

1

つの重要な成果は野菜や果物など種類によって産地の重視度に微妙な差が あることが明らかになった点である。生食中心の果物では野菜に比べて産地の重視度が 高かった。これは果物の産地ブランド化が有効であることを示している。他の産地に比 べて美味しさに差があれば,それは差別化することが可能であり,産地ブランドとして 確立することができる。しかし,根野菜のように料理の原材料に使用する青果物では新 鮮さは重要な基準であるが,生で食べるわけではないので美味しさはそれほど重要では ないと考えられる。従って,産地ブランドの効果は限定的とならざるをえない。特に新 鮮さに関しては採れたてが最も新鮮であるので,ブランド化よりも流通経路の短縮化の 方が有効である。

近年,中国政府は国家戦略として有機農産物や減農薬農産物の認可制度を導入してい る。もし,中国での有機農産物の認可制度が日本の消費者に受け入れられるような状況 になれば,日本の野菜生産を取り巻く状況は一変すると予想される。現在の輸入野菜に 対する最大の輸入障壁は安全性への不安である。その不安が取り除かれた時,産地ブラ ンドの効果が消滅することが予想されるからである。

消費者の商品の品質に対する重視度は商品の種類によって異な

19

る。青果物の場合,食 物であるため安全性が最も大きなファクターである。その他,鮮度,美味しさ,価格な どの要素がある。安全性がクリアされ,鮮度も問題なければ最終的には美味しさと価格 の勝負になり,料理に使う野菜の場合は最終的には価格の勝負になる。この時農産物ブ ランド化は意味をなさなくなる。従って,農産物のブランド化の場合,ブランド化が有 効な商品とあまり有効でない商品に分けて考えるべきであり,特に野菜類についてはブ

────────────

17 中島紀一「有機野菜への信頼性確保と産地づくり」『農業と経済』,第63巻第1号,1997年,40−47ペ ージ。

18 農林統計協会『食料・農業・農村白書』,2001年,222−226ページ。

19 関 義雄,馬淵キノエ『豊かな社会の商品学』大学教育出版,1998年,8−15ページ。

同志社商学 第54巻 第5・6号(2003年3月)

138(752

(14)

問20−1

食料品を選択する基準は 何でしようか。

○はいくらでも。

(1)新鮮さ

(2)品質

(3)おいしさ

(4)安全性

(5)多様性

(6)外観

(7)価格

問20−2

国産品より輸入品を選択 した基準は何でしょうか。

○はいくらでも。

(1)新鮮さ

(2)品質

(3)おいしさ

(4)安全性

(5)多様性

(6)外観

(7)価格

問20−3

輸入品より国産品を選択 した基準は何でしょうか。

○はいくらでも。

(1)新鮮さ

(2)品質

(3)おいしさ

(4)安全性

(5)多様性

(6)外観

(7)価格 5.特にこだわらない

4.輸入品

3.どちらかというと輸入品 2.どちらかというと国産品 1.国産品

ランド化よりもは中国に対抗できるコスト競争力を持つことの方が優先度が高いと結論 付けることができる。

資料:アンケート調査用紙

地元で生産された食べ物を地元で消費する(地産地消)についてお聞きします

問1.あなたは,「しいたけ」を購入する時,国産品と輸入品が並んでいる場合,どちらを選択しますか。

(○は1つだけ)

問2.あなたは,下記の食料品を購入する時,価格をどの程度重視しますか。(1)〜(8)のそれぞれについ

て,1〜4の適当と思われる番号を1つ選んで,○をつけてください。

常に重視 している

だいたい重視 している

あまり重視 していない

まったく重視 していない

(1)いちご 1 2 3 4

(2)オレンジ 1 2 3 4

(3)しいたけ 1 2 3 4

(4)たまねぎ 1 2 3 4

(5)トマト 1 2 3 4

(6)なす 1 2 3 4

(7)にんじん 1 2 3 4

(8)ねぎ 1 2 3 4

消費者の視点から見た農産物ブランドの価値(関・袁・馬淵) (753)139

(15)

問3.あなたは,下記の食料品を購入する時,価格をどの程度重視しますか。(1)〜(8)のそれぞれについ て,1〜4の適当と思われる番号を1つ選んで,○をつけてください。

問4.あなたは,下記の食料品を購入する時,産地をどの程度重視しますか。(1)〜(8)のそれぞれについ

て,1〜4の適当と思われる番号を1つ選んで,○をつけてください。

問5.あなたは,下記の食料品を購入する時,産地をどの程度重視しますか。(1)〜(8)のそれぞれについ

て,1〜4の適当と思われる番号を1つ選んで,○をつけてください。

問6.2001年度から香川県では県産農産物のブランド化(Kブランド)を推進していますが、知っています

か。(○は1つだけ)

1.実際に利用している 2.名前だけは知っている 3.知らない

常に重視 している

だいたい重視 している

あまり重視 していない

まったく重視 していない

(1)バナナ 1 2 3 4

(2)ほうれんそう 1 2 3 4

(3)みかん 1 2 3 4

(4)もも 1 2 3 4

(5)りんご 1 2 3 4

(6)レタス 1 2 3 4

(7)春菊 1 2 3 4

(8)米 1 2 3 4

常に重視 している

だいたい重視 している

あまり重視 していない

まったく重視 していない

(1)いちご 1 2 3 4

(2)オレンジ 1 2 3 4

(3)しいたけ 1 2 3 4

(4)たまねぎ 1 2 3 4

(5)トマト 1 2 3 4

(6)なす 1 2 3 4

(7)にんじん 1 2 3 4

(8)ねぎ 1 2 3 4

常に重視 している

だいたい重視 している

あまり重視 していない

まったく重視 していない

(1)バナナ 1 2 3 4

(2)ほうれんそう 1 2 3 4

(3)みかん 1 2 3 4

(4)もも 1 2 3 4

(5)りんご 1 2 3 4

(6)レタス 1 2 3 4

(7)春菊 1 2 3 4

(8)米 1 2 3 4

同志社商学 第54巻 第5・6号(2003年3月)

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(16)

あなたご自身のことについてお聞きします。

問7.あなたの性別は。

1.男 2.女

問8.あなたの年令は。 ( )歳

問9.あなたの職業は何ですか。

1.フルタイムのおつとめ 2.パートタイムのおつとめ 3.自営業

4.その他の職業 5.専業主婦

問10.現在のあなたの生活にはゆとりがありますか。(○は1つだけ)

非常にある まあある あまりない ほとんどない

(1)経済的ゆとり 1 2 3 4

(2)時間的ゆとり 1 2 3 4

消費者の視点から見た農産物ブランドの価値(関・袁・馬淵) (755)141

(17)

香川大学経済学部(760−8523 香川県高松市幸町2−1)

**高松大学経営学部(761−0194 香川県高松市春日町960)

同志社商学 第54巻 第5・6号(2003年3月)

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