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ヒール時の痩せ型船型の操縦流体力微係数

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Academic year: 2021

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(1)

P29 船舶操縦性予測モデルの標準化に関する研究委員会

報告書

(2)

委員名簿 氏 名 勤務先 委員長 安川 宏紀 広島大学大学院工学研究院 幹事 田中 進 広島大学大学院工学研究院 委員 芳村 康男 北海道大学大学院水産学研究科 委員 石橋 篤 東京海洋大学海洋工学部 委員 長谷川和彦 大阪大学大学院工学研究科 委員 片山 徹 大阪府立大学大学院工学研究科 委員 小林 英一 神戸大学海事科学部 委員 土岐 直二 愛媛大学大学院理工学研究科 委員 平田 法隆 広島大学大学院工学研究院 委員 古川 芳孝 九州大学大学院工学研究院 委員 寺田 大介 広島商船高等専門学校商船学科 委員 三好 潤 水産総合研究センター水産工学研究所 委員 岸本 隆 三井造船昭島研究所 委員 金子 唯明 IHI-MU 基本設計部 流力性能グループ 委員 大森 拓也 IHI 技術開発本部 船舶海洋技術開発部 委員 山下 力蔵 住友重機械マリンエンジニアリング営業開発本部性能開発G 委員 牧野 功治 ユニバーサル造船 技術研究所 流体研究室 委員 一瀬 哲也 今治造船株式会社 丸亀事業本部 造船設計グループ 委員 黒岩 良太 三菱重工業長崎研究所 委員 宮崎 英樹 海上技術安全研究所流体性能評価系運動性能研究グループ 委員 橋詰 泰久 西日本流体技研 注:勤務先は,本委員会開始時のものである。

(3)

活動記録 回 期日 場所 出席者数 発表等件数 1 2010.7.28-29 広島大学 15名 11件 2 2010.11.17-18 九州大学 15名 14件 3 2010.3.17-18 大阪大学 18名 14件 4 2011.6.28-29 北海道大学 19名 14件 5 2011.11.28-29 海上技術安全研究所 15名 15件 6 2012.3.29-30 広島大学 16名 13件

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目 次

頁 1.緒 言[安川] 1 2.船の操縦運動の数学モデル 2 2.1 基礎となる考え方[安川] 2 2.2 運動方程式と流体力の数学モデル[安川] 2 2.3 操縦運動シミュレーション計算に必要なデータの整理[安川] 7 2.4 実施すべき水槽試験と流体力係数の決定法:CMT をベースとする場合[安川] 9 2.5 実施すべき水槽試験と流体力係数の決定法:PMM をベースとする場合[橋詰] 14 2.6 補遺 26 2.6.1 非線形流体力係数の座標変換[土岐] 26 2.6.2 舵増速モデルの誘導[土岐] 30 2.6.3 流体力計測上の留意点[芳村] 35 3.流体力の数学モデルの検証 42 3.1 CFD を用いた船体と舵間の相互干渉影響の研究[福井] 42 3.2 バラスト時の舵直圧力[芳村] 50 3.3 バラスト状態における舵直圧力の水槽試験結果[安川] 58 3.4 操縦運動時の船体・舵干渉係数について[安川] 61 4.CMT をベースとした操縦運動シミュレーション計算例 64 4.1 KVLCC2 を対象とした水槽試験結果[安川] 64 4.2 解析[安川] 67 4.3 シミュレーション計算[安川] 70 5.PMM をベースとした操縦運動調査例 76 5.1 回流水槽における PMM 試験例[橋詰] 76 5.2 試験結果[橋詰] 78 6.操縦流体力係数のデータベース 80 6.1 九大データの整理式[古川] 80 6.2 中速商船・漁船船型の操縦流体力データベースと操縦運動の一推定法[芳村] 89 7.結 言[安川] 104 注:[ ]は筆者(敬称略)を意味する。

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1.緒 言

船の操縦運動予測モデルは,日本独自の MMG モデルと呼ばれるものがベースとなっている。し かしながら,詳細を見ると,各大学や機関で微妙に異なっているのが実状である。その結果,計 算に必要な流体力係数の定義が異なる場合があり,論文等で公表された流体力係数等のデータが, 他の機関ではそのままでは使用できないという問題が生じている。操縦運動研究の効率良い発展 を促すためには,我が国における船舶操縦運動予測モデルの標準化を行う必要があると考えられ る。そこで,本研究委員会では,産官学が集まり,船の操縦運動予測に関する標準モデルを策定 し,あわせて水槽試験による流体力係数を決定する方法や流体力データベースの考え方について の標準化を行うとともに,流体力係数決定のための手順書の整備を行うことを目的とした。 国際水槽試験会議(ITTC)では,標準的な操縦運動予測モデルや水槽試験に関する手順書 (procedure)が作成されている。ただそれらは,既に古くなっていたりして,国内では使われな い場合が多い。本研究委員会の活動は,ITTC の活動を先取りし,我が国独自の操縦運動予測モ デルの策定,関連した水槽試験の手順書作成等を行うものと見ることもできる。 本活動の意義は,操縦運動予測モデルの標準化を行うことにより,流体力係数等の各種データ の融通性が向上し,我が国の操縦運動研究の効率良い発展を促す点にある。現時点では最も進ん でいると考えられる我が国操縦性予測技術を一層強固にできると考えている。 本研究委員会では,国内造船所,大学,研究所等における関係者が定期的に集まり,その都度 タスクを決め,その成果をもとに議論しながら,次を実施した。 1. 現在我が国にいくつか存在する操縦運動予測モデルの整理統合を行い,我が国独自の 標準モデルを策定する。 2. 策定された標準モデルに従い,旋回運動試験(CMT)等をベースとした流体力係数を決定 する手順書を作成する。 3. この手順書に従い,既発表の流体力係数の再解析を行い,新しい流体力係数のデータ ベースを作成する。 以下に成果を報告する。

(6)

2

船の操縦運動の数学モデル

基礎となる 1 軸 1 舵船の操縦運動を表す運動方程式と船に作用する流体力の数学モデルについて述べる。

2.1 基礎となる考え方

特徴は,船のミドシップ位置に原点をとった座標系を用いることにある。船の運動を考えるとき,船の 重心を原点にとった座標系で考えることが多い。それは,運動方程式は重心位置もしくは重心位置まわり で考える必要があるからである。一方,船に作用する流体力を考えるとき,船のミドシップ位置で考える 方が便利なことが多い。例えば,載荷状態を変化させて流体力を計測するとき,載荷状態によって船の重 心 (浮心) 位置が変化するため,検力計の位置を載荷状態毎に変えるのは面倒である。ミドシップ位置を ベースにするとそのような煩雑さが無くなる。また,得られた流体力特性を整理するときも,ミドシップ 位置で計測されたデータの方が,着力点を表すパラメータ等でまとまりがよいことが期待される。このよ うな観点から,ミドシップベースの座標系の下で考えることとする。 数学モデルを考えるにあたり,次のような基礎仮定を設ける。 • 船は剛体として取り扱う。 • 流体力は,準定常的に取り扱える。 • 前進速度を有する操縦運動を考える。離着桟運動 (その場旋回や横移動等) やプロペラ逆転停止運動 は取り扱わない。 • 船速は比較的遅い 1 軸 1 舵船とする (滑走するような高速艇は対象としない)。 • GM が比較的大きく,船体横傾斜の影響は無視できるものとする。 • 舵角やプロペラ回転数は与えられるとする。トルクリッチは考えない。 • 船のミドシップをベースとした座標系で考える。

2.2 運動方程式と流体力の数学モデル

2.2.1 座標系 Fig.1 に示したような船のミドシップ位置に固定された座標系 o − xyz を考える。船のミドシップ位置 o に原点を一致させ,船の前方に x 軸方向を,船体横方向に y 軸をとる。空間に対し鉛直下向きに z 軸を とる。従って,x − y 平面は静水面に対し平行となる。一方,空間に固定された座標系 o0− x0y0z0を考 える。x0− y0平面を静水面に一致させ,z0軸を鉛直下方にとる。x0軸に対しx 軸の成す角度を方位角と し,ψ と表す。また,Fig.1 に示すように,舵角を δ,ミドシップ位置での斜航角を β とする。 2.2.2 運動方程式

静水面上における船の操縦運動 (surge, sway, yaw に関する運動) に関する解くべき運動方程式は次のよ うに表される。 m( ˙u − vr) = Fx m( ˙v + ur) = Fy IzG ˙r = Mz ⎫ ⎪ ⎪ ⎪ ⎬ ⎪ ⎪ ⎪ ⎭ (1)

(7)

o

U

u

x

x

y

y

-v

m

β

ψ

δ

r

0 0

o

0 Fig.1: 座標系 ここで,m は船の質量,IzGは重心周りの慣性モーメントである。Fx, Fyは船に働く前後力と横力,Mz は重心まわりの回頭モーメントである。式中 ˙ は時間に関する常微分を意味する。未知数は,前進速度成 分u,横方向速度成分 v,回頭角速度 r の 3 つである。この 3 つは船の重心位置で定義される値であるこ とに注意が必要である。 ここで,船のミドシップ位置における速度成分を考える。その場合,u と r には変化は見られない。し かし,横方向速度成分はミドシップ位置と重心位置では値が異なり,次のような関係がある。 vm= v − xGr (2) ここで,vmはミドシップ位置での横方向速度成分,xGは浮心の長さ方向位置座標である (ミドシップよ りも前方が正)。そのときのミドシップ位置での斜航角β は次式で表される。 β = tan−1  −vm u  (3) また,合成された速度U は,次で定義される。 U =u2+ v2m (4) (1) 式において,(2) を用いてv を消去して,vmに関する運動方程式に変換すると次式が得られる。 m( ˙u − vmr − xGr2) = Fx m( ˙vm+ xG˙r + ur) = Fy IzG ˙r = Mz ⎫ ⎪ ⎪ ⎪ ⎬ ⎪ ⎪ ⎪ ⎭ (5)

ここで,Fx, Fy, Mzは CMT(Circular Motion Test) で計測できる流体力成分を用いて表示することを考

える。また,付加質量のv と r の連成項は小さいとして無視すると,Fx, Fy, Mzは次のように表される。 Fx = −mx˙u + myvmr + X Fy = −my˙vm− mxur + Y Mz = −Jz˙r + Nm− xG(Y − my˙vm− mxur) ⎫ ⎪ ⎪ ⎪ ⎬ ⎪ ⎪ ⎪ ⎭ (6)

(8)

ここで,mx, myx 方向ならびに y 方向の付加質量,Jzはミドシップまわりの付加慣性モーメントであ る。(6) 式右辺のX, Y , Nmはそれぞれ付加質量成分を除く,前進力, 横力, ミドシップまわりの回頭モー メントである。 以上をまとめると次のようになる。 (m + mx) ˙u − (m + my)vmr − xGmr2 = X (m + my) ˙vm+ (m + mx)ur + xGm ˙r = Y (IzG+ x2Gm + Jz) ˙r + xGm( ˙vm+ ur) = Nm ⎫ ⎪ ⎪ ⎪ ⎬ ⎪ ⎪ ⎪ ⎭ (7) なお,上式の最後の式は,次のようにも表すことができる。 (IzG+ Jz) ˙r − xG(my˙vm+ mxur) = Nm− xGY (8) これらが基礎となる運動方程式である。 X, Y, Nmは次の形で表す。 X = XH+ XR+ XP Y = YH+ YR Nm = NH+ NR ⎫ ⎪ ⎪ ⎪ ⎬ ⎪ ⎪ ⎪ ⎭ (9) 添え字H, R, P はそれぞれ船体,舵,プロペラを意味する。それらは,水槽試験で計測された船体ミドシッ プ位置における流体力特性を使用して表示する。 2.2.3 主船体に働く流体力 主船体に作用する流体力は,次のように表示する。 XH = (1/2)ρLdU2XH (vm , r) YH = (1/2)ρLdU2YH(vm , r) NH = (1/2)ρL2dU2 NH (vm , r) ⎫ ⎪ ⎪ ⎪ ⎬ ⎪ ⎪ ⎪ ⎭ (10) 式中,ρ は水の密度,L は船長,d は喫水,U は船速である。rは無次元回頭角速度 (r ≡ rL/U) である。 XH , YH, NH は次のように表す。 XH (vm, r) = X0 + Xvv v2m+ Xvr vm r+ Xrr r2+ Xvvvv vm4 YH(vm , r) = Y0+ Yvvm + Yrr+ Yvvv vm3+ Yvvr vm2r+ Yvrr vm r2+ Yrrr r3 NH (vm , r) = N0+ Nvvm+ Nrr+ Nvvv vm3+ Nvvr v2mr+ Nvrr vmr2+ Nrrr r3 ⎫ ⎪ ⎪ ⎪ ⎬ ⎪ ⎪ ⎪ ⎭ (11) 式中,X0 は直進時の抵抗係数,Y0, N0 は定常的な横力と回頭モーメント係数,Xvv , Yv, Nv 等は操縦流 体力微係数である。 直進航行時の船体抵抗の表記については,3 次元外挿法を用いる。3 次元外挿法では,相当平板の摩擦 抵抗式Cfに,形状影響係数K,造波抵抗係数 rW を用いて,次式で計算する。 X0 = −(1/2)ρ∇2/3u2 {Cf(1 + K) + ΔCf}S/∇2/3+ CW Cf = 0.4635 (log10Re)−2.6 ⎫ ⎬ ⎭ (12) ここで,∇ は船の排水容積,S は船の浸水面積,Reはレイノルズ数である。CW∇2/3をベースに無次 元されており,通常水線長Lwlをベースとしたフルード数によって整理される。ΔCfは粗度修正係数で ある。上に示したCf の式は,シェンヘルの式の簡易版である。

(9)

2.2.4 プロペラによる流体力 プロペラによる流体力は次のように表す。 XP = (1− t)T (13) t は推力減少率である。そのとき,プロペラが発生する推力 T は次式で表される。 T = ρn2PDP4 KT(JP) (14) ここで,DP はプロペラ直径である。プロペラ推力の単独特性KT は次式で表す。 KT(JP) = k2JP2 + k1JP + k0 (15) ただし,k2, k1, k0はプロペラ推力の単独特性を表す係数である。プロペラに関する前進係数JP は次式で 表す。 JP = u(1 − wP) nPDP (16) 式中のwPは有効伴流率であり,プロペラ位置での操縦運動による幾何学的な流入角βP(≡ β − Pr) の関 数として (ただし,P は船長L で無次元化されたプロペラの前後位置座標),例えば,次のように表す [1]。 wP = wP 0exp C0βP2 (17) ここで,wP 0は直進時の有効伴流率,C0は特性を表す実験定数である。広島大学では,(17) 式を用いるこ とが多いが,種々の表示方法が提案されている。 2.2.5 舵による流体力 操舵によって発生する流体力XR, YR, NRは具体的に次のように表す。 XR = −(1 − tR)FNsin δ YR = −(1 + aH)FNcos δ NR = −(xR+ aHxH)FNcos δ ⎫ ⎪ ⎪ ⎪ ⎬ ⎪ ⎪ ⎪ ⎭ (18) ここで,tR, aH, xHは船体と舵の干渉を表す係数であり,船体・舵干渉係数と呼ぶ。FN は次のように表 される。 FN = (1/2)ρAR UR2 sin αR (19) 式中,ARは舵面積,は舵の舵直圧力勾配係数である。URは舵への流入速度,αRは舵への流入角であ る。そのとき,URαRは次式で表される。 UR= u2R+ vR2 (20) αR= δ − tan−1  vR uR   δ − vR uR (21) uRは舵に流入する速度成分,vRはプロペラ後流中での横方向速度成分である。vRは舵位置での船の操 縦運動による幾何学的な流入角βR(≡ β − Rr,ただしRは船長L で無次元化された舵の前後位置座標) に整流効果を表す係数γRを導入した式で表す。 vR= U γR βR (22)

(10)

γRは右舷側と左舷側で異なる値をとることが多く,その結果,左右での旋回運動に違いが生じることに なる。uRは次式を用いる。 uR= ε u(1 − wP)    η1 + κ1 +8KT πJP2 − 1 2 + (1− η) (23) ε は舵位置とプロペラ位置での伴流係数の比を意味する。κ は実験定数,η はプロペラ直径 (DP) と舵高さ (HR) の比 (= DP/HR) である。 2.2.6 船体固定系と空間固定系における速度成分の関係式 先に述べた運動方程式を解いてu, v, r が求まったとしても,船の位置や方位が得られたわけではない。 それらは空間固定系に対する値として求める必要がある。船体固定系重心位置における速度成分と空間固 定系における速度成分との関係は次のように表される。 dx0 dt = u cos ψ − v sin ψ (24) dy0 dt = u sin ψ + v cos ψ (25) これにdψ/dt = r という微分方程式を加えて,x0, y0, ψ に関する式がそろうことになる。 なお,ミドシップ位置における航跡を考えるときには,次のような関係となる。 dx0 dt = u cos ψ − vm sin ψ (26) dy0 dt = u sin ψ + vm cos ψ (27)

(11)

2.3 操縦運動シミュレーション計算に必要なデータの整理

操縦運動シミュレーション計算に必要なデータを整理する。Table 5 に示した項目は拘束模型試験によっ て決定することができる。その具体的な方法を次節以降に述べて行く。 Table 1: 船の主要目と付加質量 項目 単位 備考 垂線間長L m 幅 B m 平均喫水d m 船の質量m kg 船の排水量から求めることができる。 浮心位置xG m ミドシップよりも前方を正 慣性モーメントIzG kg· m2 慣動半径を与えて決める。 長さ方向の付加質量mx kg 元良チャートもしくは理論計算で。 横方向の付加質量my kg 元良チャートもしくは理論計算で。 付加慣性モーメント Jz kg· m2 元良チャートもしくは理論計算で。 Table 2: 船の抵抗推進性能関連 項目 単位 備考 水線長Lwl m 浸水面積S m2 排水容積 m3 粗度修正係数 ΔCf – 造波抵抗係数 rW – 抵抗試験結果より 形状影響係数K – 抵抗試験結果より 推力減少率t – 自航試験結果より 直進時の有効伴流率wP 0 – 自航試験結果より Table 3: プロペラ関連 項目 単位 備考 プロペラ直径 DP m プロペラ推力のオープン特性k0, k1, k2 – プロペラの長さ方向位置P m

(12)

Table 4: 舵関連 項目 単位 備考 舵スパン長HR m 舵面積AR m2 マリナー舵の場合は可動部だけの値 [2] 舵アスペクト比 Λ – マリナー舵の場合はホーンを含めた全面積 [2] 舵直圧力勾配係数 – 藤井の式 [3](6.13Λ/(2.25 + Λ)) を使用 プロペラ直径・舵高さ比ηDP/HRで計算 Table 5: 流体力微係数 項目 単位 備考 船体・舵干渉係数tR, aH, xH – 微係数Xvv , Xvr , Xrr , Xvvvv – 微係数Yv, Yr, Yvvv , Yvvr , Yvrr , Yrrr – 微係数Nv, Nr, Nvvv , Nvvr , Nvrr , Nrrr – 運動時の有効伴流率の係数C0 – 舵への流入速度関連ε, κ – 整流係数関連 γR, R – Table 6: その他 項目 単位 備考 運動初期値 (u, v, r) m, m, rad/s 位置,方位初期値 (X0, Y0, ψ) m, m, rad 舵角 (δ) rad 舵角変化として入力 プロペラ回転数 (nP) rps

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2.4 実施すべき水槽試験と流体力係数の決定法:CMT をベースとする場合

数学モデルにおける流体力微係数を求めるために実施する拘束模型試験の概要を述べる。 2.4.1 試験の種類 模型船には,プロペラ,舵を装着する。プロペラは回転させた状態で試験を実施する。船の設定船速U0 を決め,船速U0のシップポイントもしくはモデルポイントにおけるプロペラ回転数nP を定める。この プロペラ回転数nP でプロペラを回転させた状態で試験を実施する。計測時,船のトリムとシンケージは フリーとすることを原則とする。 本船の抵抗,自航性能,ならびに使用するプロペラのオープン特性は既知とする。それを踏まえて,次 の試験を実施する。 (1) 荷重度変更直進時操舵試験

(2) 斜航試験,旋回運動試験 (Circular Motion Test; CMT) (3) 斜航・旋回運動時操舵試験 (整流係数試験) 荷重度変更直進時操舵試験は,操舵した状態で模型船を直進航行させ,そのときの流体力を計測するも のである。これにより,船体舵干渉係数 (tR, aH, xH) や舵位置での前後方向速度成分を計算するための κε を求めることができる。プロペラ荷重度を変更する方法として,具体的には, • プロペラ回転数一定のまま,船速を変更する • 船速を一定のまま,プロペラ回転数を変更する の 2 つが考えられるが,旋回運動を想定するとき前者の方が望ましいように思われる。なお,シップポイ ント,モデルポイントのどちらにもカバーできるように,幅広くプロペラ荷重度を設定しておくことが望 ましい。広島大学では,シップポイントをベースに試験を実施することとしており,そのとき船速 (U ) は

U0, 0.85U0, 0.7U0の 3 種類変更させる。そして,それぞれにおいて,舵角を−35deg∼35deg の間を 5deg

ピッチで変化させて計測を行っている。 斜航試験ならびに CMT は,船体斜航状態もしくは定常旋回状態において,模型船に作用する流体力を 計測するものである。舵角はゼロとする。これにより,操縦運動時の船に作用する流体力特性やプロペラ 位置伴流率を求めることができる。具体的には,斜航試験では,ミドシップ位置における船体斜航角β を −20deg∼20deg まで 5deg ピッチ程度で変化させる。CMT では,β を適宜付けながら,r−0.8∼0.8 ま で 0.2 ピッチ程度で変化させる。β や rの取りうる範囲や大きさについては,対象とする船の操縦運動を 予測して決定する。プロペラ位置伴流率は推力一致法にて求める。 斜航・旋回運動時操舵試験 (整流係数試験) は,斜航,旋回状態において舵角を種々変更させ,模型船に 作用する流体力を計測するものである。計測結果から,舵直圧力の総和がゼロとなる舵角 (δF N0) とその 舵角まわりの舵角に対する舵直圧力の傾斜を求め,それらの結果から舵位置での流入速度成分を求める。 2.4.2 計測項目 必要な計測項目は次の通りである。 • 船に作用する前後力,横力,ミドシップまわりの回頭モーメント (X, Y , Nm) • 舵直圧力 (FN) • プロペラ推力 (T )

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船速 (U ),プロペラ回転数 (nP),舵角 (δ),ミドシップ位置の船体斜航角 (β),回頭角速度 (r) は,水槽試 験時にそれら諸量を計測して取り扱うことが望ましい。必要があれば,プロペラトルク,舵抵抗,舵トル ク等の計測を追加する。 2.4.3 無次元化 計測された諸量については,力は (1/2)ρLdU2で,モーメントは (1/2)ρL2dU2で割って無次元化する。 L は垂線間長,d は平均喫水である。また,速度成分は U で,長さ成分は L で割って無次元化する。の 付いた記号は,無次元化された値であることを意味する。 次に,実施された拘束模型試験結果を用いて,数学モデルにおける流体力係数を決定する方法を具体的 に述べる。 2.4.4 船体・舵干渉係数の決定法 荷重度変更直進時操舵試験結果を用いて,tR, aH, xHを決定する。直進航行状態での試験であるので, β = r= 0 であり,船体横力 (YH) や回頭モーメント (NH) はゼロのはずである。従って,次の関係式が 成り立つ。 X = X0 + (1− t)T− (1 − tR)FN sin δ Y = −(1 + aH)FN cos δ Nm = −(xR+ aHxH)FN cos δ ⎫ ⎪ ⎪ ⎪ ⎬ ⎪ ⎪ ⎪ ⎭ (28) X, Y, Nm , T, FN は計測値であり,既知となる。上の式から,次のことが分かる。 • X 0は舵角とは無関係であり (X0 は主船体部の抵抗係数,舵抵抗は含まない),また (1− t)Tも舵角 には無関係と仮定する。すると,−FN sin δ に対する Xの傾きが 1− tRとなる。実際には,舵角が 付くとTは増加する傾向があるが,その影響はtRが代表することになる。tRは操舵による舵抵抗 減少ならびにプロペラ推力の増加を表す係数という意味となる。 • −F Ncos δ に対する Yの傾きが 1 +aHである。aHは舵直圧力成分による横力に対する船に作用す る横力の増加率を意味する。 • −F Ncos δ に対する Nm の傾きがxR+ aHxHである。なお,xR=−0.5 とする。xHは横力増加成 分の着力点を意味する。 多くの計測例によると,それぞれの傾きは線形式として近似できることが分かっている。すなわち,ある プロペラ荷重度に対して,tR, aH, xHはほぼ定数とみなすことができる。なお,一般に,荷重度が増加す ると,aHは小さくなり,xHの絶対値も小さくなる。実際には,tR, aH, xHは操縦運動 (β, r) とともに変 化する可能性があるが,その影響はあまり大きくないようである。 2.4.5 操縦流体力微係数の決定法 斜航試験,CMT 試験結果を用いて,操縦流体力微係数を決定する。CMT 試験を実施すると,前後力, 横力,ミドシップ位置での回頭モーメントの計測値に,旋回運動に伴う慣性力成分が混入することに注意

(15)

り,次のような成分からなる。 Xmea = XH + XR + XP + (m+ my)vmr+ xGmr2 Ymea = YH + YR − (m+ mx)ur Nmea = NH + NR − xGmur ⎫ ⎪ ⎪ ⎪ ⎬ ⎪ ⎪ ⎪ ⎭ (29)

計測された前後力 (Xmea ) と横力 (Ymea ) には旋回運動に伴う遠心力成分が混入することが分かる。Xmea

における (m+ my)vmrYmea における−(m+ mx)urが付加質量成分を含めた広義の遠心力成分で ある。 船体に作用する操縦流体力微係数を決定するためには,遠心力成分を除去したXH , YH , NH だけを取 り出す必要がある。u  1 と近似して,CMT は δ = 0 での計測結果であることを鑑みると,上の式は次 のように変形できる。 XH + (m+ my)vmr+ xGmr2 = Xmea − (1 − t)T YH − (m+ mx)r = Ymea + (1 + aH)FN NH − xGmr = Nmea + (xR+ aHxH)FN ⎫ ⎪ ⎪ ⎪ ⎬ ⎪ ⎪ ⎪ ⎭ (30) ここで, XH∗ = XH + (m+ my)vm r+ xGmr2 YH∗ = YH − (m+ mx)r NH∗ = NH − xGmr ⎫ ⎪ ⎪ ⎪ ⎬ ⎪ ⎪ ⎪ ⎭ (31) とおくと, XH∗ = Xmea − (1 − t)T YH∗ = Ymea + (1 + aH)FN NH∗ = Nmea + (xR+ aHxH)FN ⎫ ⎪ ⎪ ⎪ ⎬ ⎪ ⎪ ⎪ ⎭ (32) が得られる。上の式中,t, tR, aH, xH は前節で決定した値を用いることとすれば,FNT は,Xmea , Ymea , Nmea とともに計測しているので,X∗  H, Y∗  H, N∗  H は求めることができる。 XH∗, YH∗, NH は,(11) 式を参照すると,次のようにvmrの関数で表される。 XH∗(vm, r) = X0 + Xvv vm2+ (Xvr + m+ my)vm r+ (Xrr + xGm)r2+ Xvvvv vm4 YH∗(vm , r) = Y0+ Yvvm + (Yr− m− mx)r+ Yvv3m+ Yvvr vm2r+ Yvrr vm r2+ Yrrr r3 NH∗(vm, r) = N0 + Nvvm+ (Nr− xGm)r+ Nvvv v3m+ Nvvr v2mr+ Nvrr vmr2+ Nrrr r3 ⎫ ⎪ ⎪ ⎪ ⎬ ⎪ ⎪ ⎪ ⎭ (33) これらに対して,最小自乗法を用いて,フィッティング精度が最も高くなるように各項の係数を決め,操 縦流体力微係数を求める。なお,(Xvr + m+ my), (Xrr + xGm), (Yr− m− mx), (Nr− xGm) の項に は,質量や付加質量の項が混入している。質量は模型船の重量が分かれば既知であるから,除去すること が可能であるが,mxmyの項は,別途理論や実験によって求める必要があり,CMT を実施しただけで はこれらの影響を除去することはできない。 2.4.6 操縦運動時の有効伴流率の決定法 操縦運動時の有効伴流率を決定する。CMT で計測されたプロペラ推力のデータを用いて,推力一致法 で有効伴流率を求める。(14) 式にプロペラ推力の単独特性KT を表す (15) 式を代入して,無次元化する

(16)

と,次式が得られる。 T=  nPDP U 2 DP2 Ld k2JP2+ k1JP+ k0 (34) これは,JPに対する 2 次式になっており,解析的に解くことができる。その解をJP 0とすれば,JP 0JP 0= U cos β(1 − wP) nPDP (35) と定義されるので,wP は次式で計算できる。 wP = 1−JP 0nPDP U cos β (36) wPβ と rの関数であり,プロペラ位置での操縦運動による幾何学的な流入角βP(≡ β − Pr) の関 数として整理できる。 2.4.7 整流係数の決定法 整流係数試験の計測結果を用いて,整流係数γR,長さ方向位置の無次元値Rを求める。 (19) 式を無次元化して,(20) 式と (21) 式より FN = ALdR(u2R+ vR2)fα sin (δ − vR/uR) (37) が得られる。この式を舵角δ で微分する。 ∂FN ∂δ = AR Ld(u 2 R+ v2R)fα cos (δ − vR/uR) (38) 今,種々の操縦運動時 (種々のβ や rのとき) に,FN = 0 となるような舵角 δF N0を求める。そのとき, δF N0= vR /uRであるので,その関係式から (38) 式は ∂FN ∂δ   δ=δF N0 = AR Ldu 2 R(1 + δ2F N0)fα (39) となり, uR=  ∂FN ∂δ   δ=δF N0 Ld AR 1 fα(1 + δ2F N0) (40) が得られる。整流係数試験では,設定された斜航角 (β) や回頭角速度 (r) において,δF N0とその舵角での ∂FN /∂δ が計測されるので,uRは既知となる。 そのとき,vRvR = uRδF N0の式を用いて計算できる。一方,vRvR= γR(β − Rr) (41) と表されるので,この関係式から,γRRを求めることができる。 2.4.8 κ と ε の決定法 荷重度変更直進時操舵試験結果を用いて,舵位置とプロペラ位置での伴流係数の比ε,実験定数 κ を求 める方法について考える。 荷重度変更直進時操舵試験においては,β = r= 0 であるから,vR = 0 である。従って,(38) 式から ∂FN ∂δ   δ=0 = AR Ld u 2 R (42)

(17)

が得られる。この式より, u2R= ∂F  N ∂δ   δ=0 Ld AR 1 (43) が得られる。一方,u2Rは,(23) 式より次のように表すことができる。 u2R= ε2 (1− wP)2η  1 + κ  1 +8KT πJP2 − 1 2 + (1− η) (44) 上の式において,ε と κ を種々変更して,荷重度変更直進時操舵試験によって得られる u2Rに最も一致す るようなε と κ の組み合わせを求める。解を得るには,一般に,繰り返し計算を必要とする。

参考文献

[1] 平野雅祥:初期設計段階における船の操縦運動計算法について,日本造船学会論文集 第 147 号 (1980), pp.144-153.

[2] Hirano, M., Takashina, J., Moriya, S. and Fukushima, M.: Open Water Performance of Semi-Balanced Rudder, 西部造船会々報第 64 号 (1982), pp.93-101.

(18)

2.5 実施すべき水槽試験と流体力係数の決定法:PMM をベースとする場合 2.5.1 PMM を用いた場合の実施すべき水槽試験 本節ではPMM を用いた操縦性能調査で実施すべき水槽試験について述べる。 1) PMM 装置について PMM 装置には速度一定の電車上に固定された Y 電車で横移動を制御する小振幅 PMM や簡 易式大振幅 PMM と主電車の速度を同期させて制御することで船体の速度を一定に保てる大振 幅PMM がある。両者では船体に与えられる運動に差がある[1]ため、解析式は異なる。回流水 槽において PMM 試験を行う場合は前者と同様に横運動の分だけ船速が変化するが更に模型船 の質点の運動と対水運動の差にも配慮した解析が必要となる[2]。 PMM の駆動方式には 1 軸のモータで Y 電車の往復運動と Yawing 運動を同時に制御するメカ ニカルタイプと 2 軸のモータでそれぞれを制御する独立タイプがある。メカニカルタイプでは モータの回転数を一定に保持することと、運動伝達のギアのバックラッシュを抑えることが重要 である。独立タイプにはAC サーボモータが用いられることが多いが、運動への振動影響が出な いようにサーボゲインを調整する必要がある。 2) PMM 試験での計測項目 PMM 試験では以下の項目について計測がなされる。 主船体 前後方向の力X,横方向の力 Y,鉛直軸まわりのモーメント N 推進器 回転数n,推力 T,(トルク Q) 舵 舵角δ、直圧力FN,(軸力FT,舵トルクQR)

船体運動 Y電車の位相ysig,方位角ψsig

PMMをはじめとする拘束模型試験には、主船体の検力は船体中央で行う方法と重心で行う方 法がある。検力システムのセッティングをどちらで行ったかによって解析式が異なることに注意 が必要である[3]。一般的な自航動力計は回転数,推力,トルクを出力するがPMM試験において プロペラ流入速度の同定に推力一致法を用いるのであればトルクの計測は不要である。舵角試験 における船体と舵の干渉係数aH,xHの解析では舵に作用する 2 方向の力のうち、FNのみを用い るのが一般的であるため、比較的小さな値であるFTの計測は行わない場合もある。PMM試験で はフーリエ積分等によって位相解析を行うため、船体に与えられる強制運動は精度良く計測され る必要がある。Yawing試験の解析にはysigとψsigの何れを用いても良い。

Fig.1 に制御、計測システムの一例を示す。

3) 模型船の拘束形式

模型船は検力計とパンタグラフを介して PMM から拘束される。パンタグラフによる模型船 の拘束状態は次のように設定される。

(19)

Pitch : 自由 Roll, Heave : 固定か自由かを実験ごとに選択 PC A/D FN Fx Fy Mz T ysig ψsig 1ch 2ch 3ch 4ch 5ch Manual Operation Servo Driver Servo Motor (ψ)

Motion Control Board

SG

AMP

LC Servo Motor (y)

T M Motor

Driver System Pulse Counter

n

AMP

Fig.1 Measurement System

4) 試験項目と内容 PMM を用いた試験項目には次のようなものがある。 A) 抵抗試験 B) 自航試験 C) 舵角試験 D) 斜航試験 E) 操舵付き斜航試験 F) Pure Swaying 試験 G) Pure Surging 試験 H) Pure Yawing 試験 I) 斜航角付き Yawing 試験 A)~E)の所謂Static試験についてはCMTと差は無いのでここでの記述は割愛する。Pure Swaying試験では斜航する船体に作用する流体力の他、船体横方向の負荷質量myとそのモーメ ント成分の微係数 を得ることが出来る。加速度に比例した流体力の調査が可能であることが PMMによるDynamic試験の特徴の 1 つである。Pure Surging試験は停止させた曳航電車上で模 型船の方位を水槽に直交させ、Y電車に往復運動させることで設定される。その場合、模型船は

.

v

N

(20)

その場でSurging運動を与えられるため前方への加速度と後方への加速度による負荷質量の平 均値を得ることとなる。水路幅が模型船寸法に対して十分でない場合等は元良チャート[4]や計 算で負荷質量を同定する方法も一般的である。Yawing試験では回頭角加速度位相成分の解析か ら鉛直軸周りの付加慣性モーメントJzzが得られる。ただし、事前に気中での模型船の振動周期 計測等の方法により、模型船自体の慣性モーメントIzzを調査しておく必要がある。

Pure Yawing 試験からは針路安定性に大きな影響を持つ回頭角速度位相の微係数 Yr,Nr,と非 線形成分が得られる。斜航角付きYawing 試験からは回頭角速度と横流れ速度の連成で作用する 流体力の微係数を求めることが出来る。 5) PMM 試験計画例 参考のためにPMM による Dynamic 試験計画の一例を示す。 F) Pure Swaying 試験 船速 : 対象船舶の調査が必要な速力と同じFroude 数の速度 Sway振幅 : 正弦関数状の往復運動において振幅y0の値を5 通り程度変更する。 運動周期 : 船体自身が撹乱した流場によるMemory 影響を受けないように長くと り、検力値が十分な精度で計測されるように短く設定する[5]。 Lpp が 2.0m では 10sec 前後、4.0m では 15sec 前後に設定される場合 が多い。 G) Pure Surging 試験 船速 : 曳航電車は停止、回流水槽の場合は流速0。 Surge振幅 : 正弦関数状の往復運動において振幅x0の値を5 通り程度変更する。 運動周期 : その場での往復運動であるためMemory 影響は避けがたいが Pure Sway 試験と同じ周期を設定することが多い。 H) Pure Yawing 試験 船速 : Pure Sway 試験に同じ。 横移動振幅 : 正弦関数状の往復運動においてy0の値を5 通り程度変更する。 運動周期 : Pure Sway 試験と同じ周期に設定される場合が多い。 Yaw 振幅 : 船速、横移動振幅、運動周期を決定すると自動的に Yaw 振幅は決定さ れる。最も大きな回頭角速度振幅の無次元値ro’の値が実船の最大舵角で の定常旋回運動に相当する1.0 前後であることが理想的であるが多くの 場合、PMM装置の能力の制限から 0.5 程度までの範囲で行われる。 I) 斜航角付き Yawing 試験 船速 : Pure Yawing 試験に同じ。

(21)

運動周期 : Pure Yawing 試験に同じ。

横移動振幅 : Pure Yawing試験において設定された 5 通りのy0のうち、中間の値に 固定しながら斜航角を 5,10,15,20,25,30degと設定する斜航角シリーズ と、斜航角を15degとしてPure Yawing試験と同じ 5 通りのr0を設定す るrシリーズの両方を実施する。 Yaw 振幅 : 船速、横移動振幅、運動周期を決定すると自動的に Yaw 振幅は決定さ れる。 6) PMM 試験で留意すべき点 PMM の準備、試験実施の際に留意すべき点をまとめる。以下の指摘の中には PMM のみでは なく、拘束模型試験全般に必要な点も含まれている。 ・PMM 装置の駆動モータの回転を強制運動に伝達する機械系のバックラッシュを無くし、運動 の位相遅れや振動の影響を避ける。PMM 試験では横運動と Yaw 運動の位相の同期が特に重 要であるがメカニカルタイプの場合、機械調整でそれを確保することになる。 ・検力計は模型船側に固定される方法とPMM 側に固定される方法があるが、前者の場合、模 型船のHeel によって検力計やパンタグラフの重力成分が出力に加算される。それを避けるた めにはHell 固定で試験を行うか、パンタグラフにカウンターウエイトを設定して重力成分を キャンセルさせる必要がある。 ・舵検力計の場合、Hell 影響をキャンセルさせることは比較的難しいため、模型舵の水中重量 と検力計の下半分の重量の和が極力0 になるように設定されることが望ましい。種々の制限 でそれが出来ない場合にはHell 固定での試験を行うべきである。 ・PMM 試験では検力計の下半分から模型船全ての質量に比例した慣性力が計測される。この質 量は模型船の排水量分の質量より大きいため、解析に用いる質量の算定には注意が必要である。 ・PMM 試験ではフーリエ積分等で位相解析を行うため、複数のデータがそれぞれに異なる位相 ズレを持って計測されることは避けなければならない。検力計出力のアンプの持つアナログ フィルターは基本的にかけずに計測する方が良い。 2.5.2 PMM を用いた水槽試験による流体力係数の決定法 1) 曳航水槽での PMM 試験による場合 PMMを用いる試験の解析でCMTと異なるのはPMMのアクチエータを駆動させて行う Dynamic試験についてである。そこで本節ではPure Swaying試験からの船体横方向の付加質量 my、Pure Yawing試験からの線形微係数Yr,Nrを例にとってDynamic試験での流体力微係数の決 定方法について述べる。 ・Pure Swaying 試験の解析 曳航水槽での PMM を用いた Pure Sway 試験で模型船は次の運動を与えられる。

(22)

0

=

u&

u

=

U

c

y

=

y

O

sin

ω

t

t

y

y

v

= &

=

O

ω

cos

ω

t

y

y

v

&

= &&

=

O

ω

2

sin

ω

0

=

= r

r

&

c

U

:曳航電車の走行速度,

y

O:Sway 運動の振幅

ω

:Swaying 運動の周波数,

t

:時間 計測された流体力の 1 周期間

(

0~

2

π

/

ω

)

のフーリエ解析により、 1)

dt

t

Y

Ys

=

ω

/

π

(

E

)

sin

ω

を求め、 2)

dt

t

v

m

m

Ys

=

(

+

y

)

ω

/

π

&

sin

ω

を解析する。具体的にはフーリエ積分で得られた 1)式の値を に基づいて最 小二乗法にかけ、得られた傾斜が

dt

t

v

ω

π

ω

/

&

sin

y

m

m

+

となるのでそれから。

m

を差し引いて を得る。そ れを次式で無次元化する。 y

m

)

5

.

0

/(

L

2

d

m

'

m

y

=

y

ρ

3) 計測された物理量を試験流速で無次元化し、付加質量の無次元値を求める方法もあるが、横運 動の分だけ変動する船体速度を用いる無次元化が煩雑なため、模型寸法の有次元値で解析する方 法を示した。 PMM 試験で検力計で計測される力

Y

Eには舵に作用する力も含まれている。従って解析さ れた付加質量

m

y

'

は船体及び舵に作用する付加質量である。 ・Pure Yawing 試験の解析 Pure Yawing 試験で PMM 装置の作る運動は次の通りである。

y

c

=

y

O

sin

ω

t

v

c

= &

y

c

=

y

O

ω

cos

ω

t

=

kU

c

cos

ω

t

(

k

=

y

O

ω

/

U

c

)

v

&

c

= &&

y

c

=

y

O

ω

2

sin

ω

t

=

k

ω

U

c

sin

ω

t

ϕ

=

tan

−1

(

k

cos

ω

t

)

y

c

,

v

c

,

v

&

c : PMM の Y 電車の位相,速度,加速度

ϕ

: 回流水槽の上流に対する模型船の方位

(23)

曳航水槽における Pure Yaw での模型船の速度、加速度 は次のように なる。

,

,

,

,

v

u

v

u

&

&

r &

,

r

β

ω

)

cos

cos

1

(

k

2 2

t

1/2

U

u

=

c

+

4) 5) 6)

β

ω

)

sin

cos

1

(

k

2 2

t

1/2

U

v

=

c

+

β

ω

ω

ω

ω

(

1

2

cos

2

)

1/2

sin

cos

cos

2

k

t

t

t

k

U

u

&

=

c

+

− 8) 9) 10)

β

ω

ω

ω

ω

(

1

2

cos

2

)

1/2

sin

cos

sin

2

k

t

t

t

k

U

v

&

=

c

+

t

t

k

k

r

=

ω

(

1

+

2

cos

2

ω

)

−1

sin

ω

t

t

k

t

k

k

k

r

&

=

ω

2

(

1

+

2

+

2

sin

2

ω

)(

1

+

2

cos

2

ω

)

−2

cos

ω

ここで、無次元化に用いる代表流速として平均船速 を求める。 は式 37)で得られ るものであり、1 周期間に変動する対水速を級数展開し高次の項を無視したものである。 m

U

U

m

U

m

=

U

cwc

(

1

+

k

2

/

4

3

/

64

k

4

)

Yaw試験で計測された力-YE、モーメント-NE、舵直圧力FNは次式で無次元化される。 11)

)

5

.

0

/(

'

E m2 E

Y

LdU

Y

=

ρ

12)

)

5

.

0

/(

'

2 2 m E E

N

L

dU

N

=

ρ

13)

)

5

.

0

/(

'

N m2 N

F

LdU

F

=

ρ

フーリエ解析の中で線形微係数Yr’,Nr’を得るため、次の処理を行なう。ただし、積分区間 は

0~

2

π

/

ω

である。 14)

dt

t

Y

Y

s

'

=

ω

/

π

(

E

'

)

sin

ω

15)

dt

t

N

N

s

'

=

ω

/

π

(

E

'

)

sin

ω

16)

dt

t

F

F

Ns

'

=

ω

/

π

(

N

'

)

sin

ω

'

については、

'

の成分を差し引くことでHull のみの値 を得、解析に 用いる。その際、舵角試験で得られた干渉影響係数を用いる。

,

'

S S

N

Y

F

NS

Y

HS

'

,

N

HS

'

Pure Yaw 試験での解析式は次のように導かれる。

dt

t

r

Y

dt

t

r

Y

dt

t

r

u

m

m

Y

HS

'

=

(

'

+

x

'

)

ω

/

π

'

'

sin

ω

+

r

'

ω

/

π

'

sin

ω

+

rrr

'

ω

/

π

'

3

sin

ω

dt

t

r

Y

dt

t

r

Y

r

'

ω

/

π

'

sin

ω

+

rrr

'

ω

/

π

'

3

sin

ω

+

17) 18)

dt

t

r

N

dt

t

r

N

dt

t

u'r'

π

m'x

'

N

HS

=

G

/

sin

ω

+

r

'

ω

/

π

'

sin

ω

+

rrr

'

ω

/

π

'

3

sin

ω

(24)

2) 回流水槽での PMM 試験の場合 回流水槽でPMM 試験を行う場合は曳航水槽での試験との違いに留意が必要である。 ・運動の定義 水流が設定された回流水槽に浮かぶ物体の持つ対地運動と対水運動には差がある。物体の対 地運動が無い所謂 Static 試験の場合は対水運動のみを考慮すればよく、比較的単純である。模 型船を用いた抵抗・自航試験、斜航試験、舵角試験等がそれに当たる。他方、PMM 試験等で模 型船をDynamic に動かした場合、対地運動と対水運動を区別して解析する必要がある。ここで は対地運動と区別するため、対水運動の項目には添え字 を用いることにする。両者を次に比 較する。

f

運動項目 対地運動 対水運動 前後方向速度・加速度

u &

,

u

u

f

,

u

&

f 横方向速度・加速度

v &

,

v

v &

f

,

v

f 回頭角速度・角加速度

r &

,

r

r &

,

r

回頭に関しては対地運動と対水運動が一致するため区別しない。 ・無次元化 解析で用いる物理量の無次元化は次のとおりとする。 , ,

)

5

.

0

/(

'

m

L

2

d

m

=

ρ

Izz

'

=

Izz

/(

0

.

5

ρ

L

4

d

)

,

)

5

.

0

/(

,

'

,

'

Y

X

Y

LdU

f2

X

=

ρ

N

'

=

N

/(

0

.

5

ρ

L

2

dU

f 2

)

, f

U

u,v

u',v'

=

/

r'

=

r/(U

f

/ L

)

, ,

)

/

2

L

/(U

v

,

u

'

v

',

u

&

&

=

&

&

f

/(

/

)

2 2

L

U

r

'

r

& =

&

f

ρ

: 水の密度,

m

: 船体の質量 : 船体の慣性モーメント, ZZ

I

L

: 垂線間長 : 船体中央の喫水, : 対水速度

d

U

f

u

f

,

v

f

,

u &

& ,

f

v

fに関しても同様の無次元化を行う。

U

f

u

f

,

v

f

,

の合速度である。

(25)

・運動方程式 船体重心周りの運動方程式は次式のようになる。

)

(

G G G G

m

u

v

r

X

=

&

)

(

G G G G

m

v

u

r

Y

=

&

+

G ZZG G

I

r

N

=

&

I

ZZG : X-Y 平面内重心周りの慣性モーメント 船体重心周りの速度成分uG,vG,rGと船体中心まわりの速度成分u,v,rの関係は次の通りである。

u

u

G

=

r

x

v

v

G

=

+

G

r

G

=

r

ただし、

x

G: 船体前後方向の重心位置 また、船体中央周りに作用する力とモーメントX,Y,N で重心周りの力とモーメントを表すと、 28) 29) 30) 19) 20) 21) 22) 23) 24) 25) 26) 27)

X

X

G

=

Y

Y

G

=

N

G

=

N

x

G

Y

22)~27)式を 19)~21)式に代入し、次式を得る。

)

(

u

vr

x

r

2

m

X

=

&

G

)

(

v

ur

x

r

m

Y

=

&

+

+

G

&

)

(

v

ur

mx

r

I

N

=

ZZ

&

+

G

&

+

・操縦運動を表現する数学モデル PMM 試験において 28)~30)式の左辺で示される流体力の表現には次の数学モデルを用いる。 T rr f f uu f vvvv vv f y vr f x

u

X

m

v

r

X

v

X

v

X

u

u

X

r

X

m

X

=

+

+

+

2

+

4

+

+

2

+

|

|

)

(

&

E N R

F

t

T

X

t

+

+

(

1

)

sin

δ

(

1

)

31) 2 2 3 3

)

(

Y

m

u

r

Y

r

Y

v

r

Y

v

r

v

Y

v

Y

r

Y

v

m

Y

=

y

&

f

+

r

&

+

v f

+

vvv f

+

r

x f

+

rrr

+

vvr f

+

vrr f E N H

F

Y

a

+

+

(

1

)

cos

δ

32) 2 2 3 3

r

v

N

r

v

N

r

N

r

N

v

N

v

N

r

J

v

N

N

=

v&

&

f

zz

&

+

v f

+

vvv f

+

r

+

rrr

+

vvr f

+

vrr f

E N H H R

a

x

F

N

x

+

+

(

)

cos

δ

33)

(26)

X

E

,

Y

E

,

N

E: PMM による船体中心に作用する強制力、モ-メント 28)~30)式、31)~33)式からX,Y,N を消去し計測される力、モーメントを表現する。 4 2 2

)

(

)

(

G X f vr y f vv f vvvv f E

m

u

vr

x

r

m

u

X

m

v

r

X

v

X

v

X

=

+

+

+

&

&

T

t

F

t

r

X

u

u

X

uu f

|

f

|

+

rr 2

(

1

R

)

N

sin

+

(

1

)

+

δ

34)

r

u

m

Y

v

Y

v

Y

r

Y

v

m

r

x

ur

v

m

Y

E

=

(

+

+

G

)

y f

+

r

+

v f

+

vvv f3

+

(

r

x f

)

&

&

&

&

&

δ

cos

)

1

(

2 2 3 N H f vrr f vvr rrr

r

Y

v

r

Y

v

r

a

F

Y

+

+

+

+

35) 3 3

)

(

)

(

I

J

r

mx

v

ur

N

v

N

v

N

v

N

r

N

r

N

E

=

zz

+

zz

G

+

+

v f

+

v f

+

vvv f

+

r

+

rrr

&

&

&

&

δ

cos

)

(

2 2 N H H R f vrr f vvr

v

r

N

v

r

x

a

x

F

N

+

+

+

36) ・Yawing 試験の解析 Static 試験の解析式は CMT のそれらに同じであるため、ここでは回流水槽における PMM を 用いたDynamic 試験の Yawing 試験の解析式を示す。 Yawing 試験での運動は次のように与えられる。

y

c

=

y

O

sin

ω

t

v

c

= &

y

c

=

y

O

ω

cos

ω

t

=

kU

cwc

cos

ω

t

(

k

=

y

O

ω

/

U

cwc

)

v

&

c

= &&

y

c

=

y

O

ω

2

sin

ω

t

=

k

ω

U

cwc

sin

ω

t

ϕ

=

tan

−1

(

k

cos

ω

t

)

y

c

,

v

c

,

v

&

c : PMM の Y 電車の位相,速度,加速度

ϕ

: 回流水槽の上流に対する模型船の方位 Pure Yawing 試験での模型船の対地運動の速度、加速度を は次のように なる。

,

,

,

,

S S S S

v

u

v

u

&

&

r &

S

,

r

S

ϕ

sin

C S

v

u

=

37) 38)

ϕ

cos

C S

v

v

=

39)

{

2 2 1

}

)

cos

1

(

sin

cos

cos

sin

*

sin

cos

+

=

=

t

k

k

t

t

U

k

r

v

v

v

CWC C C S

ω

ϕ

ω

ϕ

ω

ω

ϕ

ϕ

&

&

Table 4: 舵関連 項目 単位 備考 舵スパン長 H R m 舵面積 A R m 2 マリナー舵の場合は可動部だけの値 [2] 舵アスペクト比 Λ – マリナー舵の場合はホーンを含めた全面積 [2] 舵直圧力勾配係数 f α – 藤井の式 [3](6 .13Λ/(2.25 + Λ)) を使用 プロペラ直径・舵高さ比 η – D P /H R で計算 Table 5: 流体力微係数 項目 単位 備考 船体・舵干渉係数 t R , a H , x  H – 微係数 X vv , X vr , X r
Table 1 Principals of Computational Grid and Numerical Conditions  格子トポロジー  H-O  最小格子間隔  2.0×10 -6 格子セル数 400 万セル(両舷)  レイノルズ数  2.612×10 6 乱流モデル  k-ω SST  3.1.4
Fig. 4 The Shape Around the Rudder (upper left: based grid, upper right: grid with shaft,  lower: grid with horn)
Table 2 The Interaction Coefficients
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参照

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