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CFD を用いた船体と舵間の相互干渉影響の研究[福井]

ドキュメント内 ヒール時の痩せ型船型の操縦流体力微係数 (ページ 46-54)

3.流体力の数学モデルの検証

3.1 CFD を用いた船体と舵間の相互干渉影響の研究

本紙では MMG モデル内で用いられる係数について検討を行っており、流体力、及び回頭モ ーメントは以下のように表される。

( ) ( )

( ) ( )

(

ZZ ZZ

)

H R

R H x

y

P R H y

x

N N r J I

Y Y ur m m v m m

X X X vr m m u m m

+

= +

+

= +

+ +

+ +

= +

− +

&

&

&

(1)

ここで、m, mx, my:船の質量、付加質量、IZZ, JZZ:慣性モーメント、及び付加慣性モーメン ト、XH, YH, NH:船体単独の流体力、モーメント、XR, YR, NR:船体単独の流体力、モーメント、

XP:プロペラスラスト。

(1)式で表される船体の要素毎の流体力のうち、舵力について見ると、干渉影響を含んだ形で (2)式のように、また(2)式内のFN は(3)式のように表される。

( )

( )

( )

δ

δ δ

cos cos 1

sin 1

N H H R R

N H R

N R R

F x a x N

F a Y

F t X

+

= +

=

=

(2)

(

U u

) (

v l r U A f

F

R R R R

R R R N

′ + ′

− ′

=

=

γ δ

α

α ρ αsin 2 2

1

)

(3)

ここで、tR:前後方向の舵干渉力係数、aH:横方向の舵干渉力係数、xH:横方向の舵干渉力 作用位置、xR:舵前後位置、ρ:水の密度、fα:舵直圧力係数勾配、αR:舵流入迎角、AR:舵可 動部面積、uR:前後方向の舵流入流速、UR:舵流入合速度、v’:無次元横流れ速度(=v/U)、r’:

無次元回頭角速度(=rL/U)、γR:整流係数、l’ R:舵位置の修正係数。

上記の舵干渉係数の他にも MMG モデル内では様々な係数が扱われているが、それらの中に はその物理的意味が未解明のものがあり、例えば舵干渉係数は船体に働く干渉力と舵に働く干渉 力がまとめて舵力の一部として扱われている。本報ではこれらの係数のうち、舵の干渉係数につ いて着目し、次章以降で検討を行っていく。

3.1.3. 計算方法

本研究では肥大船型を対象とした操縦運動時の数値計算を実施した。運動は拘束旋回試験と同 様に斜航角 β、無次元回頭角速度 r’を一定とした定常計算とし、それぞれ-0.4<r’<0.4、 -20deg.<β<20deg.で変化させて行った。

CFDコ ー ド に は(独)海 上 技 術 安 全 研 究 所 開 発 の “SURF” (Solution algorithm for Unstructured RaNS with FVM)2)を、格子作成には商用ソフトである“Gridgen”を用いた。格 子トポロジーはH-O、最小格子間隔は境界層方向で2.0×10-6、格子セル数は両舷で400万セル とした。格子の概形図をFig.2に示す。

Fig. 2 Computational Grid

計算条件として、レイノルズ数Re=2.612×106 (U=0.85m/s)とし、乱流モデルにはk-ω SSTモ デルを用いた。また自由表面影響は考慮せず、二重模型流れの計算を行った。計算格子要目、及 び計算条件をTable 1に示す。

Table 1 Principals of Computational Grid and Numerical Conditions 格子トポロジー H-O

最小格子間隔 2.0×10-6 格子セル数 400万セル(両舷)

レイノルズ数 2.612×106 乱流モデル k-ω SST

3.1.4. 計算結果

はじめに裸殻状態の計算結果について、その計算精度の検討を行った。Fig.3に無次元の横力 Y’、及び回頭モーメントN’の結果とIHI試験水槽で実施した試験結果との比較を示す。

Fig.3 The Comparison of Lateral Force and Moment with EFD

CFDは横力を過小評価する傾向が見られ、特にr’=1.0やβ=20deg.のような運動の大きい範囲 ではその傾向が大きく見られるが、これはCFDでは考慮されていない造波抵抗の影響が含まれ ていることが原因と考えられる。ただし、全体として計算結果は試験結果の傾向をよく捉えてお り、誤差も10%程度とCFDは十分な精度で流体力を推定できていることが確認できた。

次に舵付き状態の計算を実施し、舵単体の力と船体・舵間に働く干渉力について検討を行った。

計算で使用される格子形状は計算安定化などの目的で部分的に省略、簡略化される場合があるが、

本研究では舵の干渉影響、及びそれが船体のどの部分に起因しているのかなどを検討するため、

舵まわり形状の再現性を部分的に変えた複数の格子を用いて行った。Fig. 4に各格子の舵まわり 形状図を示す。

Fig. 4 The Shape Around the Rudder (upper left: based grid, upper right: grid with shaft, lower: grid with horn)

Fig. 4左側に示したbased gridはプロペラシャフトやラダーホーンを省略した格子であり、

真ん中の格子はbased gridにプロペラシャフトを付加した格子となっている。これら2つの格 子は実際の舵の可動部と非可動部を一体として作成しており、操舵状態の計算時は舵全体が回転 した形状となる。右側の格子はさらにラダーホーンを再現した格子となっており、舵前縁の上半 分がホーンとして模型船と同様に操舵時も動かないように作成している。

上記の格子を用いて直進操舵計算を実施した結果について、まずFig. 5に無次元舵力の水槽試 験結果との比較を示す。Fig. 5から舵直圧力FNはどの格子についても3%程度以内の誤差で水槽 試験結果と一致していることがわかる。接線力FTについては水槽試験では舵角が±20deg.より 大きい範囲では推力として働いており、ホーン付き格子ではこの傾向が捉えられている。しかし、

舵・ホーン一体型の格子では大舵角時も抵抗となっており、これは単純に操舵によって全体が動 くことで抵抗が増加していることが原因と考えられる。

Fig. 5 The Comparison of Rudder Force with EFD

次に船体・舵間の干渉係数tR、aH、xHについて検討を行う。これらの係数はMMGモデル内で (2)式のように記述され、プロペラなしの場合は(1)式、(2)式を用いて次式のように表される。た だし、ここでX、Y、Nは(1)式の左辺である。

( )

( )

( )

δ

δ δ

cos cos 1

sin 1

N H H R H

N H H

N R H

F x a x N N

F a Y

Y

F t X

X

+

=

+

=

=

(4)

舵角によらず船体単独の流体力は一定とすると、操舵時の舵直圧力の変化に対する全体流体力 の変化から舵干渉係数は求めることができる。舵干渉係数について、水槽試験結果、及び各格子 の計算結果から解析した値の比較をTable 2に示す。ただし、FNの値は実験、計算ともホーン部 を含めた値となっており、また舵に働く干渉力も含まれていることに注意されたい。

Table 2 The Interaction Coefficients

EFD based grid with shaft with horn tR 0.254 0.130 0.115 0.272 aH 0.433 0.278 0.031 0.338 xR+aHxH[m] -2.681 -2.220 -1.853 -2.310 xH /Lpp -0.537 -0.381 -0.028 -0.389

まずtRについて見ると、実験・計算ともに正の値となっているが、これは(3)式で表されるよ うに操舵によって舵力による抵抗が小さくなっていることを示している。定量的にはbased grid、

シャフト付き格子は同程度の値で、ともに試験結果より過小評価しており、シャフト部の再現に より与える影響は小さいことが確認できる。その一方でホーン付き格子の結果は試験結果とも近 い値となっており、ホーン部の再現がtRによって表される現象に影響を与えていることが推定で きる。

aHは、CFDではどの格子でも過小評価しているが、こちらでもホーン付き格子が最も試験結 果と近い値となっており、このことからホーン部の再現がaHにも影響を与えていることが推定 できる。シャフト付き格子の結果は他に比べて悪い結果となっているが、これについてはシャフ ト格子のシャフトを含む船尾の一部がFig. 4からもわかるように、非構造格子で作成されている 影響が考えられる。ただし、本検討ではこのことによる格子依存性の検討は十分に行えておらず、

この結果がシャフトの有無によるものか、格子の差によるものかなどの検討は今後の課題である。

最後にxHについて見ると、他の係数同様ホーン付き格子が最も試験に近い値となっている。

上記の結果を検討するため、操舵時の船体まわり流場の現象について確認を行う。まずFig. 6 にホーン付き格子について操舵時の船体表面圧力分布を示す。この結果から舵角が大きくなると ともにオーバーハング部の圧力回復が小さくなり、船体抵抗が増加しているであろう様子がわか る。

Fig.6 The Contour of Pressure on The Ship-Hull in The Grid with Horn

Fig. 7には各格子について舵角20deg.、35deg.の結果から5deg.の圧力分布を差し引いて解析 した、操舵による船体表面圧力の変化量を示す。ただし、計算収束上の問題からホーン付き格子 については20deg.の代わりに25deg.の結果を用いている。Fig. 8には同様のコンターを船底方 向から見た図を示す。

Fig. 7から船尾右舷側に圧力上昇が見られ、舵角が大きくなるのに伴い、圧力上昇も大きくな っている様子がわかる。この船体右舷側の圧力は-Y方向の力として船体に働いており、式(2)か らもaHで表される現象を表していることがわかる。ホーンがない格子ではこの圧力上昇が船尾 左舷側にも強く表れており、これは一体舵では本来ホーンにあたる部分が操舵によって左舷側を 向くことで発生していると思われ、この左舷の圧力上昇はaHを小さくする方向に働いており、

Table 2の係数の値の傾向と一致している。

Fig. 8からはFig. 6で見られた操舵によるオーバーハング部の圧力低下が確認できるが、各格 子の分布を比較するとホーン付き格子では圧力低下量が小さくなっていることがわかる。これは 単純にホーン部が非可動であるため、舵の陰になる部分が減っているためと考えられるが、これ によってホーン付き格子でtRの推定値が試験結果に近くなる傾向が説明できる。この格子による 差はtRの現象そのものを表しているわけではないが、CFDで検討する際にはホーンの有無が推定 結果に影響を与えることを示している。

The based grid

The grid with shaft

The grid with horn

Fig.7 The Variation of the Pressure from Condition of 5deg Rudder Angle (backward view)

The based grid The grid with shaft

The grid with horn

Fig.8 The Variation of the Pressure from Condition of 5deg Rudder Angle (bottom view)

Port

Stb.

Port

Stb.

Port

Stb.

以上の結果から、船体・舵間の干渉力は MMG モデル内では舵力の一部として扱われている が、これには船体に働く力も含まれており、操縦性能を正確に評価するためには数学モデルの表 現方法の見直しも必要となる可能性が示唆された。またラダーホーンの有無は舵干渉影響に関係 しており、CFDを用いた評価を行う際にはホーン部を含めた検討を行うべきである。

3.1.5. まとめ

本報では肥大船型を対象に裸殻状態、及び舵付き状態で数値計算を実施し、以下のことが明ら かになった。

(1) 操縦運動時の裸殻流体力はCFDにより水槽試験に近い値が推定可能であり、舵直圧力につ いても高い精度で推定できた。また舵接線力についてはラダーホーンを考慮することで試験 の傾向を捉えられた。

(2) 船体・舵間の干渉係数tR 、aH は操舵による船尾部、及びオーバーハング部の圧力変化とし て表れる。

(3) さらにホーンがない場合、実際の干渉力と反対方向の力も発生することを確認し、正確な推 定を行うためにはホーンを考慮する必要があることがわかった。

参考文献

[1] 小瀬邦治, 湯室彰規, 芳村康男:操縦運動の数学モデルの具体化 -船体・プロペラ・舵の相 互干渉とその表現, 第3回操縦性シンポジウム, 1981, pp.27-80.

[2] Hino, T., “Navier-Stokes Computations of Ship Flows on Unstructured Grids,” Proc. of the 22nd Symp. on Naval Hydro., (1998)

[2] 野中晃二, 原口富博, 上野道雄, et al. :船舶の操縦性能評価技術に関する研究, 海上技術安 全研究所報告, 2003, pp.97-114

ドキュメント内 ヒール時の痩せ型船型の操縦流体力微係数 (ページ 46-54)