平成 30 年度海外農業・貿易投資環境調査分析委託事業
(諸外国の制度・投資環境等の専門的調査(ベトナム))
事業成果報告書
平成31年3月
目次
目次 ... I 図表目次 ... II 序章 調査の概要 ... 1 第1 章 ベトナムにおける農産物・食品・食産業に係る生産・流通・投資の概況 ... 5 1.1 農業と農産物 ... 5 1.2 食品と食産業 ... 6 1.3 投資概況と農林水産物貿易 ... 8 第2章 ベトナムにおける農産物・食品の規格・認証 ... 18 2.1 ベトナムにおける食品安全行政 ... 18 2.2 農業生産工程管理(GAP) ... 25 2.3 有機農産物に関する規格と認証 ... 32 2.4 食品安全マネジメントに関する規格・認証(HACCPなど) ... 36 第3章 日本における農産物・食品の規格・認証とベトナムへの導入可能性 ... 42 3.1 日本における農産物の規格・認証 ... 42 3.2 日本における食品安全の規格・認証 ... 56 第4章 ベトナムの農産物・食品における規格・認証の課題と協力の方向性 ... 62図表目次
図1 調査対象地域および訪問先 ... 4 図2 主要農産物の作付面積の推移 ... 5 図3 日本におけるベトナム産野菜の輸入量推移 ... 10 図4 ベトナム産野菜 類別輸入量(2018年) ... 11 図5 ベトナムにおける食品安全法の基本構造 ... 18 図6 農業農村開発省(MARD)の組織図 ... 21 図7 農業農村開発局(DARD)の組織図 ... 22 図8 ベトナムの食品安全に関係する適合性評価システム ... 23 図9 顧客(バイヤー)毎に異なる認証システムの組合せ ... 24 図10 認証手続きのフロー ... 27 図11 GLOBALG.A.P.の認証フロー ... 29 図12 生産者価格の比較:通常と認証済 ... 30 図13 サプライチェーンと認証:農業協同組合NとスーパーV(左)、農業生産法人P(右) ... 31 図14 PGS農業協同組合のサプライチェーンと価格... 34 図15 食品安全マネジメント認証手続 ... 38 図16 フードバリューチェーンの各関係者の食品安全マネジメント認証 ... 39 図17 サプライチェーンと認証 ... 40 図18 第三者認証GAPの認証プログラム別取得状況 ... 43 図19 JGAP/ASIAGAPの認証農場数の推移 ... 44 図20 JGAP/ASIAGAP認証の品目別取得状況比較 ... 44 図21 JGAP/ASIAGAPの仕組み... 46 図22 有機JAS圃場面積の推移 ... 49 図23 有機JAS認証の仕組み ... 51 図24 JFSMの仕組み ... 57 図25 JFS認証数/適合証明数 ... 58 表1 作業委員会の概要 ... 1 表2 現地調査日程... 3 表3 作業計画 ... 4 表4 主要農産物の生産状況(単位:千トン) ... 5 表5 工芸作物の生産状況(単位:千トン) ... 6 表6 ビジネス環境改善の見られた項目 ... 6 表7 ベトナム農産物貿易額 (2018年上半期) ... 9 表8 ベトナム産の生鮮・加工の野菜・果実の輸出先(上位10か国、2018年) ... 9 表9 日本におけるベトナム産野菜の輸入量の品目別推移(単位:トン) ... 10 表10 ベトナムから日本に輸入される主な加工農産物(野菜)の輸入量の変化(数量=トン) ... 12 表11 ベトナムからの主な加工農産物(果実・種子)の輸入量の変化(数量=トン) ... 13 表12 ベトナムから輸入される農産物・食品の食品衛生法違反件数 ... 14 表13 ベトナムへの食品輸出における留意事項 ... 14 表14 ベトナムに進出している主な日系農業企業の例 ... 15 表15 ベトナムに進出した日本の主要食品メーカー ... 15 表16 今後1~2年で事業拡大を検討している理由 ... 16 表17 ベトナム進出の日系企業の経営上の課題例 ... 16 表18 ベトナム進出の日系企業の投資環境上の課題例 ... 17 表19 食品安全行政に係る中央政府と地方政府の役割 ... 21 表20 MARDとDARDにおける食品安全行政の担当部局 ... 22 表21 ベトナムの主な野菜・果樹における認証システム ... 24 表22 ベトナムにおける農産物・食品の主な認証プログラム ... 25 表23 農産物のVIETGAP認証実績(2018年8月31日時点) ... 26 表24 ベトナムにおけるGLOBALG.A.P.認証取得数(2018年12月現在) ... 28 表25 ベトナムにおける有機農産物に関する規格・認証プログラム ... 33表26 有機JAS研修の概要 ... 36 表27 ベトナムにおける食品安全マネジメント認証プログラム... 36 表28 ベトナムにおける食品安全マネジメント認証スキーム ... 37 表29 EUの食品飼料における迅速警報システム(RASFF)によって発見された違反事例 ... 40 表30 日本の厚労省輸入食品食品衛生法違反事例(平成29年度) ... 41 表31 GAP普及大賞の受賞例 ... 47 表32 JASの種類 ... 48 表33 有機JAS認証事業者の内訳 ... 50 表34 平成28年度認証事業者にかかる格付け実績(単位:トン) ... 50 表35 有機農産物の生産行程管理者の認証コストの例 ... 51 表36 有機加工食品の生産行程管理者の認証コストの例 ... 52
表38 ASIAGAPとVIETGAPとの比較:しくみ ... 53
表39 ASIAGAPとVIETGAPとの比較:管理点と適合基準 ... 53
表40 ASIAGAPとVIETGAPとの比較:メリットデメリット ... 54
表41 ベトナムに有機JAS認証機関ができたときのコスト比較試算 ... 55
表42 GFSIに承認されている他の認証プログラム ... 59
表43 ベトナムの農産物・食品業者によって日本への輸出が検討されているベトナム農産物食品 の一例 ... 60
序章 調査の概要
1.調査の背景と目的
日本の食産業は、急速に拡大する世界の食市場を取り込み、海外展開を図ることが必要である。 農林水産省は、海外の成長市場を取り込んでいくことを目指し、日本の食産業の海外展開を促 進するための取組を進めている。同省はグローバル・フードバリューチェーン戦略に基づき、 生産から製造・加工、流通、消費に至るフードバリューチェーンの構築を各国と協力して進め ていくための指針として取りまとめた。 ベトナムでは、中間所得者層が拡大傾向にあり、今後の市場拡大が見込まれる中、農林水産省 はベトナムとの農業協力対話を開催し、フードバリューチェーン構築のための「日越農業協力 中長期ビジョン」を策定し、ベトナムにおける農業生産性向上、流通改善・コールドチェーン の整備等に取り組んでいる。 他方で、経済発展に伴い、農産物や食品の安全性や品質に対するベトナムの消費者の関心が高 まっているが、農産物・食品の安全性や品質に付加価値及び信頼性を与え、消費者ニーズに目 に見える形で応える規格・認証の整備・活用は進んでいない。このことが、現地の日系食関連 企業等にとっても、信頼できる品質の原料等の調達の支障となっている。 本調査は、第4回日越農業協力対話において「日越農業協力中長期ビジョン」を踏まえて締結 された「ベトナムにおける農産物・食品の規格・認証の活用に向けた協力覚書」に基づいて行 う。 目的は下記のとおりである。 1)ベトナムにおける農産物・食品に関する規格・認証の現状を把握し、課題を分析する。 2)日本発の規格・認証の導入及び認知度向上を図るための方策を検討する。2. 事業内容
2.1 作業委員会(ワーキンググループ)の設置及び開催 調査方針(調査等の事項、手法及び計画等)の検討・決定、調査結果等を確認するために、 日・ベトナム双方の関係者を委員とする作業委員会を設置、開催した。 表 1 作業委員会の概要 作業委員会 の委員 日本側:農林水産省、GAP, JFS, JAS,日系食品関連事業者、JICA、日本大使館(計15名) ベトナム側:農業農村開発省(国際協力局、作物局、品質管理局、作物保護局、畜産局、家畜衛生局、水産局)、農 業科学院、保健省(計10名) 開催場所 ベトナム(ハノイ) 第1回 日程:2018年9月27日 議題:ベトナムの農産物・食品の安全性・品質に関する規格・認証の紹介 日本の農産物・食品の安全性・品質に関する規格・認証の取組の紹介 ベトナムにおける農産物・食品に関する規格・認証の現状を把握し、課題を分析するための調査方針の確認 成果:日・ベトナム双方の規格認証の制度・仕組みについて理解を深めた。 調査方針と具体的な調査対象に合意した。 第2回 日程:2019年3月4日 議題: 調査結果及び有機JAS研修結果の報告 成果:。 上記結果を確認し、今後、双方の規格・認証の共通点に焦点を当てた協力などを検討し、日本側からアクションプ ランを提示することで合意。2.2 調査の実施 作業委員会で合意した調査方針に基づき、日・ベトナム共同の調査チームを組んで現地調査を 実施した。調査項目は次の通りである。 ① 農業生産工程管理(GAP) ベトナムのGAP(VietGAP 及びBasicGAP)及び類似の認証についての概要(法的根拠、運 営主体、対象品目、認証スキーム、現在の認証件数、認証件数の推移及び他のGAP と比 較した場合の特徴や考え方、認証機関における認証手続の現状と課題等) GLOBALG.A.P. 等ベトナム国外の組織が運営するGAP についての認証取得状況(現在の 認証件数、認証件数の推移及び対象品目等) ベトナムにおけるフードバリューチェーンの各関係者(生産者、流通事業者、加工業 者、小売事業者等)のGAP に対する認識(取組/活用の状況及び目的、認知度、取組/ 活用に当たっての課題等) ② 農産物・食品の品質、製法、管理方法等に関する規格(JAS) ベトナムにおける農産物や食品に関する生産、加工、流通、小売、消費の現状と課題 ベトナムにおける農産物や食品の品質、製法、管理方法等に関する規格・認証の現状と 課題(各規格・認証スキームの取組/活用の状況及び目的、認証件数、認知度、取組/ 活用に当たっての課題等) ③ 食品事業者による食品安全管理及び信頼性確保に関する規格・認証(HACCP、JFS) 食品安全管理規格・認証に関する国及び民間の制度の実施状況、執行・指導する主体、 認証機関における認証手続の現状と課題等 ベトナムにおけるフードバリューチェーンの各関係者(生産者、製造・加工業者、流通 事業者、小売事業者等)の既存の食品安全管理規格・認証に対する認識(取組/活用の 状況及び目的、認知度、取組/活用に当たっての課題等) 現地調査日程は下表のとおりである。
表 2 現地調査日程
日付 日程
10月15日 Department of Crop Production, MARD NAFIQAD, MARD
Department of Processing and Marketing Developent, MARD ICD, VAAS
STAMEQ, MOST
10月16日 PGS farmers group (D農協) and supporting NGO Vietnam Oorganic Agriculture Association (VOAA) Supermarket (V社)
10月17日 Hanoi – Son La Fruit farmer (N氏)
Fruit processing company (N社) 10月18日 Tea company (M社)
DARD Son La Son La – Hanoi 10月19日 Hanoi – Haiphong
NAFIQAD Branch 1 Haiphong – Quang Ninh
Vegetable producing company (S社) Quang Ninh – Hanoi
10月21日 Organic agricultural cooperative (T農協) Hanoi - Dalat
10月22日 Vegetable producing and processing company (P社) Coffee company (C社)
10月23日 DARD Lam Dong Dalat – HCM 10月24日 Supermarket (A社) JETRO Trading company (D社) 10月25日 Supermarket (S社) NAFIQAD Branch 4 10月26日 HCM-Hanoi Report to MARD
図 1 調査対象地域および訪問先 2.3 作業計画 表 3 作業計画 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 [1] 調査計画案作成 □ □□□ □□□ □□□ [2] 作業委員会1 ■ [3] 現地調査 ■■ [4] 現地調査報告の取纏め □□ □□ [5] 作業委員会2 ■ [6] 調査報告の取り纏め □□ □ 注:□:国内作業、■:現地調査、D/F:ドラフトファイナルレポート、FR:ファイナルレポート
第1 章 ベトナムにおける農産物・食品・食産業に係る生産・流通・
投資の概況
1.1
農業と農産物
1.1.1 農業生産概況 ベトナムにおける農林水産業は、国土面積の36.8%(2016年FAO)が農用地として利用され、農 村人口は総人口の65.1%(2017年FAO)を占めるほか、GDPの15.3%(2017年WB)を占め、2017年 の農業セクターの実質成長率は2.9%(2018年ADB)で主要産業のひとつである。ベトナムは南 北に細長く、国土の約4分の3が山地、丘陵、台地からなり、平地はメコンデルタと紅河デルタ に集中する。気候は、北部は四季のある温暖冬季小雨気候、中部は高原の冷涼気候、南部は熱 帯モンスーン気候と地域によって異なる。そのため農業の形態は地域によって多様である。 主要農産物の生産状況を下表にまとめる。 表 4 主要農産物の生産状況(単位:千トン) (出典:FAO STAT) (出典:ベトナム統計局より作成) 図 2 主要農産物の作付面積の推移 主要農産物の生産量および作付面積は増加傾向にある。中でもコメは作付面積全体の約5割を 占める。コメは国民の主食であるとともに重要な輸出産品でもある。農業農村開発省によれば、 2018年のコメの輸出量は615万トンで、2017年にくらべて5.7%増加した1。 1 ベトナム農業農村開発省 0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 1,000ha 全体 コメ その他1年生作物 多年生作物 年 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 コメ(籾) 40,005 42,398 43,737 44,039 44,974 45,090 43,112 42,764 さとうきび 16,162 17,540 19,015 20,129 19,823 18,337 16,313 18,356 その他生鮮野菜 6,918 5,681 11,375 12,189 13,010 13,250 13,815 14,236 キャッサバ 8,596 9,898 9,736 9,758 10,210 10,740 10,910 10,268 トウモロコシ 4,607 4,836 4,973 5,191 5,203 5,287 5,244 5,110 その他生鮮果物 2,800 2,809 2,800 2,800 2,853 2,921 2,943 2,967 バナナ 1,618 1,742 1,792 1,892 1,858 1,943 1,942 2,045またベトナムでは、茶、コーヒーなどの工芸作物の生産が輸出向けを中心に増えている。特に コーヒーはブラジルに次ぐ世界第2位の生産量である2。 表 5 工芸作物の生産状況(単位:千トン) (出典:ベトナム統計局) メコンデルタと紅河デルタは野菜の最大生産地として、両デルタを併せて全国の野菜栽培面積 の46%、総野菜生産量の55%を占める(2015年JETRO)。 1.1.2 安全な農産物へのニーズ ベトナム野菜果実研究所の調査結果(2013年)3によると、ハノイの消費者は約40種の野菜を 消費する。特によく消費する上位はトマト、空心菜、キャベツ、コールラビ、つるむらさき、 グリーンピース、ニンジン、カボチャである。ハノイの消費者が購入するときの選択基準は、 ①産地100%、②新鮮さ83%、③安全性(残留農薬がない66%、細菌汚染がない33%、安全と認証 されている33%等)であり、農産物の安全性を証明する認証制度への認知が進んでいることが 分かる。
1.2
食品と食産業
ベトナムは世界銀行発表のビジネス環境ランキング「Doing business 2018」において、前年 度の82位から68位と一気にその順位を上げており、その背景には主に以下の項目におけるビジ ネス環境の改善があると報告されている。 表 6 ビジネス環境改善の見られた項目 (出典:Doing Business 2018, 世界銀行) 1.2.1 食産業の動向と課題 上記のようなビジネス投資側への利点に加え、ベトナムでは今後も都市化による消費者ニーズ の変化などにより、急速な国内販売市場の拡大が見込まれている。ベトナムの1人あたり名目 GDPは、2015年に2,000US$を超え、2017年は2,389US$となった4。2018年上半期では、そのうち 14.15%を農林水産セクターが占めており5、全体としては2017年の同時期に比べ、7.08%の上 2 国際コーヒー機関統計(2019年2月)3 Report for the Project entitled “Humid Tropics, A CGIAR Research Program: Scoping stufy on commercial vegetable production in Son La and Dien Bien" (December 2013)
4世界銀行統計:(参考)同年(2017年)日本:38,449 US$
5 ベトナム統計局(General Statistics Office of Vietnam, GSO)
年 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 カシューナッツ 240 312 309 292 311 309 313 ゴム 482 606 660 711 752 789 877 コーヒー 752 916 1,056 1,058 1,101 1,277 1,260 茶 570 706 746 771 835 879 910 コショウ 80 89 98 108 105 112 116 項目 具体的改善内容 貿易の事業実務の簡略化 輸出入の必須書類に関して、電子提出が可能になり、流通が後押された。 関税規定の運営強化や、情報の透明化が図られた。 インフラの改善 電力供給がより安定的なものへと改善された。 企業実務の簡略化 担保として利用可能な動産の範囲が拡大された。 納税に関する電子化が進んだ。 労働環境に関する改善 民事訴訟や法的処置に関する劇的な改善がみられた。 労働争議における任意調停が導入された。
昇を見せた(2018年7-9月6)。農林水産分野はこの上昇内訳のうち9.7%に貢献した7。ベトナ ムの総人口は現在約9,370万人と世界第14位4につけており、その国内販売市場に注目が集まっ ている。 特に、食産業は今後の国家発展においても重点分野と認識されている。2025年を達成目標とし たゼロハンガーの国家計画が策定され、2018年11月末にはベトナム農業農村開発省(MARD)と 国連食糧農業機関(FAO)との間で計画実行に向けた協力宣言がなされた。本計画では、持続 可能な農業と栄養改善のため、5つの目標が掲げられている8。 国家計画では、食料の持続的供給の実現のため、生産・流通の両段階での発展に向けた具体的 指針が示されている。生産段階では残留農薬、また流通段階では品質管理や廃棄食品の削減を 重点課題として取組むこととされているが、直近の調べ(2018年上半期)では、報告されたも ののみで、半年間に44件の食中毒問題があり、これにより1,207人が影響を受け、内7件は死亡 事故となったとされる5。 世界銀行の調査報告9では、これらベトナムにおける食中毒の主な要因は流通段階の細菌感染 であり、化学物質による食中毒とは異なり、フードバリューチェーンを通した徹底した食品衛 生の改善により防ぐことができるものとある。一方で、生産段階での小規模農家による農薬等 (除草剤・殺虫剤・殺菌剤、抗生物質、化学肥料他)の過剰使用に関しても同報告書は警鐘を ならしている。実態として、農家にとって農薬や抗生物質が不可欠な投入財であるとの認識さ れており、輸入品の不十分な管理体制による交差汚染やトレーサビリティの問題がある点を指 摘している。 こうした状況を踏まえ、近年では大規模小売業が生産から販売までの一連の流れを一手に担い、 管理する動きもみられる。自社農地の直接管理や農家との契約制度により、自社の基準を満た す安全な野菜を栽培、調製、流通し、各チェーン店舗にて販売する形態をとり、品質管理とし てこれら農産物に対する検査ラボを自ら運営している企業もある。(下記BOX参照、現地イン タビューより)。 BOX:ベトナムの中高所得者層向けの大規模スーパーマーケットV社による安全な野菜の調達 当該スーパーマーケットにて販売される野菜・果物・キノコ類は、自社農場や農家との直接契約にて生産 されたものであり、全てVietGAP認証を取得している。契約農家への研修や特定の種子や農薬の提供も当 該スーパーが行っている。品質保持のため、直営検査ラボ(ISO17025認定取得)にて徹底した管理が行 われている。 自社農場は全土に15存在し(計3,000ha野菜(施設での養液栽培面積含む)・果物・キノコ類・薬用植物 の合計)スーパーマーケットでの販売量全体のおよそ80%を供給している。残りの20%は契約農家の生 産物から供給されている。契約にあたり、農家の基礎知識や経験年数、栽培面積(60ha以上)等の選定 基準を設けている。契約農家への指導は、ベトナム農家の技術水準の向上を目的とした慈善事業も兼ねて いる。当該スーパーはこれらの野菜の自社調製施設も備えており、1)農場で梱包済の農産物の選別・ラ ベル貼付、2)農場で調製できなかった農産物の調製・梱包・ラベル貼付を行っている。また、ダラット など、遠方からの野菜/果実類は冷蔵輸送され、当調製施設にて一時冷蔵保管を行う。 6 (参考)2018年上半期日本:農林水産セクターは前年同時期よりも0.3%減少 7 上昇内訳は他、産業・建設(48.9%)とサービス業(41.4%) 8FAO,国家計画に定められた5つの目標: 1) 年間をとおして家庭に十分な栄養と食事が確保されること、2) 二 歳未満の栄養失調が削減されること。前述2点の実現に以下3つのターゲットの実現が不可欠になる。3)持続可 能な食料生産システムが開発されること、4) 小規模農家の生産性と収入が上昇すること、5)処分されたり、 浪費される食料品がないこと
各農場には責任者が配置され、生産段階、収穫から調製までの品質管理をしている。全国にある33の検査 ラボでは、 3ヶ月毎のモニタリングとして、簡易検査が実施される。ハノイとホーチミンの各店舗には大 型かつ、より精密な化学分析や微生物検査に対応したラボを設置しており、簡易検査で異常が農産物に対 し、検査が行われる。毎月およそ1万のサンプルを受け付けている。 (現地訪問調査より) 1.2.2 食品市場・流通規模 ベトナムにおける食品市場は大きく分けて以下の3つであり10、近年の人口分布や消費志向の 影響により、その規模が大きく変動している。 近代的小売市場(コンビニ、スーパーマーケット、ウェブサイト販売) 伝統的小売市場(生鮮市場、個人経営の雑貨店舗、食料品店) Horeca (ホテル(Hotel)、外食部門(Restaurant)、カフェ(Cafe)) 前述の総人口のうち65%が従来の農村地域に暮らすベトナムでは11、小売市場の全体(食品に限 らず)の大半(80%)は伝統的小売市場に占められている10。一方で、農村地域から都市部へ の人口推移は目まぐるしく、2000年に比較した2017年の人口増加率が、農村ではわずか1%で あるのに対し、都市部では68%であった12。これに伴い、近代的小売市場やHorecaが近年急速 に増加しており、ついに2016年に初めて、伝統的市場数に減少がみられた10。人口分布の変化に よって、今後もこの傾向が進むことが予測される。 ベトナム統計局(GSO)の発表によると、ベトナムの食品消費額は2010年から約5年あまりで 1.5倍にも上昇した(2015年520兆ドン13)。総人口の増加率は6%に満たない1が、最低賃金の 推移も1.5倍ほどに増加している14。
1.3
投資概況と農林水産物貿易
ベトナム計画投資省の2018年7月の発表によると、2018年上半期時点でベトナムは25,953件の 海外直接投資(FDI)プロジェクトをかかえ、登記資本金は3,312億US$に及ぶ。全128の投資国 のシェアで一番多いのは大韓民国(約617億US$、全体の18.6%)、それに日本が続く(約555 億US$、全体の16.7%)。日本からの直接投資内容は、主にスマートシティー建設のためのハ ノイ・ドンアン地区の総合インフラ整備事業である(41億US$)。 農林水産省発表の「2017年度農林水産物 食品の輸出実績」によると、日本からのベトナムへ の農林水産物の輸出総額は395億円に達し、そのうち半分以上を農産物が占めており(214億円、 54.3%)、それに水産物(173億円、43.8%)、林産物(8億円、1.9%)と続いている。 ベトナムにおける最新の2018年上半期の上位5つの輸出入農産物は下表のとおりである。 10 JETRO・ホーチミン事務所「ベトナムの食品市場(日本食市場)2017年10月」 11 (参考)日本8%(世界銀行 2017) 12 FAO統計 13 日本食品消費動向調査、JETROホーチミン2017 14 JETRO・ビジネス短信 https://www.jetro.go.jp/biznews/2014/11/546ee7c054f60.html表 7 ベトナム農産物貿易額 (2018 年上半期) (出典:GSO公表資料より作成) ベトナムでの農産物の関税および貿易に関する協定には近年動きが著しく、日本への経済的影 響も大きいと思われる。東南アジア諸国連合(ASEAN)は2015年末にアセアン経済共同体(AEC) を創設し、2018年1月に関税撤廃が完了した15。また、2018年11月にはベトナムは環太平洋パ ートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、又はTPP11)の7か国目の批准国 16となった。同協定は先行6カ国での国内手続が完了したため、12月30日の発効が決定した15 。 ベトナム向け農林水産品の関税のうち、水産物(生鮮魚・冷凍魚)については、即時撤廃が決 まっている。その他、日本からの輸出に関連するところでは米、牛肉、果物、醤油、日本 酒 等に係る関税の段階的撤廃が行われるため、日本食の海外展開に追い風となる見込みである。 また、以前から日本の小売業にとって経済需要テスト(出店審査制度)が課題となっていたが、 これもCPTTPの発効後、5年の猶予期間を経て撤廃されることが決定している。 下表に2018年のベトナム産の生鮮または加工された野菜・果物の輸出先上位10ヵ国をしめす。 中国は2位と20倍ほどの差をつけてベトナムにとり最大の取引先である。 表 8 ベトナム産の生鮮・加工の野菜・果実の輸出先(上位 10 か国、2018 年) (出典:GSO公表資料より作成)
1.3.1
日本に輸入されるベトナムの農産物 日本におけるベトナム産野菜の輸入量は増加傾向で推移している。生鮮野菜が約3割、冷凍野 菜が4割を占める。 15 一般財団法人国際貿易投資研究所 http://www.iti.or.jp/report_68.pdf (2018年3月) 16 CPTPPは、メキシコ、日本、シンガポール、ニュージーランド、カナダ、オーストラリアの先行6カ国で手続き が完了 https://www.jetro.go.jp/biznews/2018/11/ba44572e5814b181.html 輸 出 規 模(1,000USD) 輸 入 規 模(1,000US$) 1 水産物 6,364,940 1 綿花 2,372,124 2 生鮮/加工された野菜・果物 2,976,401 2 カシューナッツ 1,958,174 3 コーヒー 2,750,419 3 メイズ 1,504,148 4 カシューナッツ 2,536,105 4 生鮮/加工された野菜・果物 1,297,680 5 コメ 2,460,271 5 水産物 1,260,478 輸出先(国名) 規模(1,000US$) 中国 2,783,769 米国 139,946 韓国 113,900 日本 105,136 オランダ 59,890 マレーシア 45,847 タイ 45,078 オーストラリア 42,079 台湾 41,520 UAE 39,412出典:(独)農畜産業振興機構野菜情報総合把握システム(原資料:財務省貿易統計)を基に作成 図 3 日本におけるベトナム産野菜の輸入量推移 表 9 日本におけるベトナム産野菜の輸入量の品目別推移(単位:トン) 出典:(独)農畜産業振興機構野菜情報総合把握システム(原資料:財務省貿易統計)を基に作成 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 35,000 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 ト ン 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 輸入野菜 合計 13,301 12,467 13,522 16,356 18,837 22,063 22,982 22,545 24,623 30,521 うち 生鮮野菜 小計 804 824 379 455 432 3,551 2,001 2,213 3,921 8,078 にんじん及びかぶ 55 75 162 239 11 3,213 1,672 1,840 2,785 4,024 キャベツ 0 0 0 0 0 0 0 47 905 3,712 ながいも 74 102 175 161 183 130 235 279 210 272 えんどう 639 627 33 16 16 0 0 0 0 0 ねぎ 6 0 0 24 217 194 43 36 16 23 シャロット 5 4 9 15 6 9 10 11 5 12 その他の生鮮野菜 26 17 0 0 0 5 40 0 0 35 冷凍野菜 小計 5,643 5,954 6,246 8,154 9,564 9,232 11,964 11,607 10,718 12,928 塩蔵等野菜 小計 3,076 1,925 1,659 2,276 1,975 2,409 2,782 2,568 2,703 3,010 乾燥野菜 小計 69 72 86 58 117 286 429 398 222 229 酢調製野菜 小計 473 732 411 442 323 471 337 384 407 427 その他調製野菜 小計 1,221 1,723 2,146 2,289 2,990 2,014 2,060 1,769 1,311 1,365 かんしょ 小計 2,003 1,235 1,593 2,679 3,420 4,095 3,404 3,604 5,338 4,483
出典:(独)農畜産業振興機構野菜情報総合把握システム(原資料:財務省貿易統計)を基に作成 図 4 ベトナム産野菜 類別輸入量(2018 年)
1.3.2
日本に輸入されるベトナムの加工農産物 ベトナム産の野菜・果物の加工品のうち、日本に輸入されている品目の傾向を検討するため、 直近5年の輸入量を比較した。 ① 野菜由来の加工食品17 野菜由来の加工品は、下表に示すとおり5年前に比較し2018年には規模が1.2倍に上昇している (2018年:22,443トン)。加工品で圧倒的に多いのは冷凍野菜である。以前は、ほうれん草や スウィートコーンが主流であったが、それに加えて、マメ類の冷凍野菜の輸出が伸びている。 「混合冷凍野菜」が過去5年の間に7倍にも増えていることから、冷凍野菜の品目も多様化がう かがえる。 17 (独)農畜産業振興機構 野菜情報総合把握システム「ベジ探」https://vegetan.alic.go.jp/list.html#3 生鮮野菜 26% 冷凍野菜 42% 塩蔵等野菜 10% 乾燥野菜 1% 酢調製野菜 1% その他調製野菜 5% かんしょ 15%表 10 ベトナムから日本に輸入される主な加工農産物(野菜)の輸入量の変化(数量=トン) *各種別の主な品目のみ掲載しているため、合計は必ずしも種別合計に満たない。 (出典:(独)農畜産業振興機構野菜情報総合把握システム(原資料:財務省貿易統計)を基に作成) ② 果実・種子由来の加工食品 次に2013年と2018年での果実または種子由来の加工農産物の輸入重量(トン)の推移を下表に 示す。まず輸入総量が、全体として5年の間に約2倍に上昇している(2018年:11,590トン)。 熱帯果実など日本では栽培可能な地域が限られている、または栽培できない産品を中心に、輸 入が拡大している。中でも、ナッツ類は日本での消費ニーズの上昇に伴って輸入量が2.4倍に 増加している。また、野菜同様に冷凍果実の輸入も多く、特にパパイヤ・アボカド等の輸入も 2.3倍に増加した。「その他冷凍果実、ナッツ」として括られた品目が、5年の間に約16倍に増 えており、果物品目の多様化が伺える。 品目* 2013年 2018 年 冷凍野菜 インゲン豆等 30 125 えだまめ 40 191 ほうれんそう 997 802 スイートコーン 405 289 混合冷凍野菜 107 736 さといも 0 12 その他冷凍野菜 7,941 9,958 冷凍野菜の合計 9,564 12,928 塩蔵野菜 れんこん 19 75 しょうが 13 449 その他塩蔵野菜 222 616 塩蔵野菜の合計 1,975 3,010 乾燥野菜 しいたけ、きくらげ 0 18 たけのこ 60 40 スウィートコーン(播種用除く) 0 88 乾燥野菜の合計 117 229 調製野菜 ヤングコーンコブ 858 281 きのこ 778 169 いちご 0 15 野菜ジュース 0 21 調整野菜の合計 2,990 1,365 加工野菜の合計 18,406 22,443
表 11 ベトナムからの主な加工農産物(果実・種子)の輸入量の変化(数量=トン) *各種別の主な品目のみ掲載しているため、合計は必ずしも種別合計に満たない。 (出典:(独)農畜産業振興機構野菜情報総合把握システム(原資料:財務省貿易統計)を基に作成) ③その他(畜産・水産) 畜産分野では、鶏肉製品の輸入拡大に向けた動きがあり、例えば、あるベトナムの養鶏会社が ベトナムの農業農村開発省の動物衛生局に対して新規製品(加工鶏肉とケーシング=ソーセー ジ表皮)の対日輸出の交渉を行うよう要請した。これを受けて、日本の農林水産省消費・安全 局動物衛生課は調査を実施し、「ベトナムから日本向けに輸出される塩蔵天然ケーシングの家 畜衛生条件」をまとめた(2018年8月以降適用18) 水産物は、表7のとおり、農林水産分野の輸出額2位である生鮮/加工の野菜・果物に2倍の差を つけている主要な輸出品である。対日貿易では、特に近年、養殖生産されているナマズ目パン ガシウスと呼ばれる白身魚(冷凍フィレー)の輸出が急増しており、過去5年間で総量が10倍 (2017年に6,072トン)となった19。輸入された白身魚は加工・調味され、加熱調理のみが必 要な商品として日本の大手小売業者の店頭にて販売され、消費が拡大している。
1.3.3
日本におけるベトナム産農産物・食品の輸入時の課題 ベトナムから日本に輸入される農産物・食品の食品衛生法違反事例を見ると、残留農薬による 18 http://www.maff.go.jp/aqs/hou/require/attach/pdf/sub5-12.pdf 19 みなと新聞:https://www.minato-yamaguchi.co.jp/minato/e-minato/articles/77192 品目* 2013年 2018 年 冷凍果実 パイナップル 39 17 パパイヤ、アボカド等 624 1,449 その他冷凍果実、ナッツ 17 266 合計 679 1,733 乾燥果実 バナナ 0 48 グァバ、マンゴー、マンゴスチン 0 2 その他乾燥果実 1 2 合計 1 53 調製果実 フルーツサラダ、フルーツカクテル 295 681 バナナ、アボカド、マンゴ、グァバ 73 386 合計 2,116 1,285 果汁 柑橘類ジュース 0 9 パイナップルジュース 0 20 その他果汁 100 342 合計 100 371 種子類 ココヤシの実(乾燥、内果付) 9 338 カシューナッツ 1,147 2,464 アーモンド(煎り、無糖) 0 154 ココヤシ、ブラジルナッツ(調製、無糖) 0 263 合計 1,535 3,717 全体 5,952 11,590違反、微生物・カビ毒による汚染が大半を占める。ベトナムで生産・製造される農産物・食品 の安全確保が課題である。 表 12 ベトナムから輸入される農産物・食品の食品衛生法違反件数 (出典:厚生労働省輸入食品監視統計をもとに作成)
1.3.4
日本からの食品の輸出時の留意点 ベトナムに展開する企業の中には日本から食品の輸出を手掛けるところも多い。ベトナムへの 食品輸出においては、以下に記した留意事項がある。 表 13 ベトナムへの食品輸出における留意事項 (出典:JETRO「加工食品の現地輸入規則および留意点:ベトナム向け輸出(2017.9)」より作成)1.3.5
日系企業の進出 2017年12月時点(JETRO ホーチミン調べ)で、ベトナム進出日系企業数(全分野の総数)は 1,753社20にのぼる。2017年度の日系企業実態調査(652企業回答)に参加した企業のうち7割 近くがベトナムでの今後の事業拡大を検討しており21、日系企業にとって今後の更なる消費拡 大が見込まれる市場となっている。(1) 農業企業 ベトナムの消費者は、安全安心な農産物への意識が高まりに加え、経済成長に伴い、高付加価 20 日系企業進出状況(JETRO):内訳はベトナム日本商工会(ハノイ、ハイフォン、北部ベトナム)684社、ホー チミン日本商工会 952社、・ダナン日本商工会 117社) https://www.jetro.go.jp/world/asia/vn/basic_01.html 21 「2017年度 アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」 https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/01/b817c68e8a26685b/20170085.pdf 残留農薬 微生物・カビ 添加物 シアン化合物 遺伝子組み換え 重金属 その他 計 2016年 34 23 7 2 5 1 72 2017年 27 35 2 1 1 66 2018年 15 24 2 1 42 項 目 内 容 輸入許可申請 外資系企業に限り(特別規制品目を除く)申請が必要とされ、活動許可書(投資ライセンス、計画投資局が 発行)と共に「輸入・流通業務」の追加が必要とされる。 輸入検疫 保健省により、輸入検疫が必要な13種の商品群が規定されている(商品群:①肉/魚の調製品、②動物性 /植物性の油脂、③ミルク、乳製品、④砂糖、砂糖菓子、⑤カカオ、カカオ調製品、⑥穀物、穀粉、でん粉、 ミルクからの調製品、ベーカリー製品、⑦コーヒー、茶、コショウ、⑧野菜/果物の調製品、⑨調味料、⑩飲 料、アルコール飲料、食酢、⑪食品包装材、⑫機能性食品、健康補助食品⑬食品添加物) 製造施設の登録と証 明書 水産物と畜産物(鶏、牛、豚肉)由来の食品をベトナム国内へ輸出するにあたり、輸出者は加工を行った施 設を対ベトナム輸出取扱施設として日本の都道府県知事等に登録申請する。その後、厚生労働省医薬食 品局経由で、ベトナム政府に通知・登録しなければならない。また、ベトナムでの輸入通関の際に日本で発 行された衛生証明書が必要とされる。登録完了、証明書受領の上で輸入検疫手続きに従う。 自由販売証明書 輸出国発行の自由販売証明書は以下の食品において提出の義務がある:保健省管轄の機能性食品、微 量栄養素補助食品、補助食品(supplementary food)、食品添加物、飲用水およびミネラルウォーター。 食品ラベル規制 食品ラベルは基本的にベトナム語による10項目(原産地、賞味期限等)の表記が義務付けられる。別途で 遺伝子組換食品や機能性食品に関する表示規則がある。 容器包装基準 容器素材から食品へ移行する重金属量の許容量(ML値)規定と、プラスチック容器基準へ批准しなければ ならない。 食品添加物規制/残 留農薬規制 保健省の通達に基づき、最大許容量の添加物、ワクチン、化学物質、動物用医薬品、重金属、微生物、残 留農薬を厳守しなければならない。
値の作物の需要が増えている。そのため、日本の品種や栽培方法を導入して生産される高品質 な農産物の商機が高まっている。 2014年に策定された日越農業協力中長期ビジョンにおける取組とも相俟って、農業における二 国間の投資が活発になってきている。ベトナム農業に対する日本の企業の関心は高まっており、 ベトナム農業ビジネスミッションが開催されるなどベトナムにおいて農業ビジネスを検討する 企業への支援が進んでいる。JETRO(2018年)によれば日系企業はホーチミン、南部への展開 が主流であるが、農業セクターでは野菜生産に適した北部や中部高原地域を中心に、イチゴ、 メロン、レタス等の生産が行われており、ホーチミンやハノイなど都市部のスーパーで日本ブ ランドの野菜として販売されている。 表 14 ベトナムに進出している主な日系農業企業の例 (出典:各社ウェブサイト等より調査団調べ) (2) 食品企業 これまでに現地・周辺国での販売を主たる目的として、ベトナムに進出した日本の主要食品メ ーカーには以下のような企業がある。 表 15 ベトナムに進出した日本の主要食品メーカー (出典:各社ウェブサイト等より調査団調べ)
なお、その他の大規模な外資食品メーカーには、Royal Friesland Campina(オランダ、乳製 品)、Mondelez International(米国、菓子)、PPB グループ(マレーシア、製粉)等がある 22。 前述のJETRO調査によると、2018年の景況感を示すDI値23はベトナムでは50ポイントを上回る 22 国際協力銀行:https://www.jbic.go.jp/wp-content/uploads/page/2017/11/58694/inv_VietNam201708.pdf 23 営業利益が前年比で「改善」した企業の割合から「悪化」した企業の割合を引いた数値 日本企業 地域 事業開始年 内容 A社 ラムドン省(ダラット) 2010年 花卉栽培、販売、輸出 B社 ダクラック省、ソンラー 省(モクチャウ)他 2011年 野菜栽培(無農薬・、無化学肥料)、販売 C社 フンイエン省 2012年 グリーンハウスの製造、販売 D社 ラムドン省(ダラット) 2014年 日本品種のイチゴ栽培、販売 E社 ラムドン省(ダラット) 2014年 レタス栽培、契約農家から買い取り、販売 F社 ソンラー省 2014年 日本品種の茶栽培、煎茶・抹茶製造、販売、輸出 (ASIAGAP認証) G社 ラムドン省(ダラット) 2015年 日本品種のメロン栽培、販売 H社 ハノイ 2015年 有機野菜栽培、販売、日本品種のコメ試験栽培 I社 カントー 2016年 有機バナナ栽培、輸出(有機JAS認証) J社 ハノイ 2016年 有機農業資材販売・普及、野菜栽培等 K社 ナムディン省 2017年 日本品種のコメ栽培、販売、コメ加工食品の製造、販売 年 代 社 名(主な製造品、進出年度) 1990s 味の素(調味料製造、1993)、エースコックベトナム(即席めん製造、1995), TANAKA (酒類製造、1995), 日本 水産出資のNigico (水産加工品・冷凍食品製造、1995)、ロッテベトナム(菓子製造、1996)、大正製薬出資の Taisho Vietnam (ドリンク剤製造、1999)
2000s~ 共栄フード出資のVina foods Kyoei (パン粉製造、2004)、日東富士製粉と三菱商事出資のNitto-Fuji Intl(プ レミックス粉製造、2006)ヤクルト(乳酸菌飲料製造、2007)、双日出資のInterflour Vietnam (小麦粉製造、 2007)
など、景況感の改善が顕著であった(調査対象の計20ヵ国の平均は38.2)。この背景には、 「現地市場での売上増加」が最も多く、また「生産効率の改善」、「輸出拡大による売上増加」 にも起因しているとされている。このような状況は、企業の今後のベトナムへの高い事業拡大 意欲に顕著に表れている。具体的には、卸売・小売業で拡大を見込んでいる会社は全体の 83.1%に及んだ。現状維持が15.4%、わずか1.5%が縮小を検討している。すでに進出をして いる企業の大半が、ベトナム市場のさらなる発展を見込んでいる。拡大を見込む企業の検討理 由は以下のとおりである。 表 16 今後 1~2 年で事業拡大を検討している理由 (出典:JETRO「2017年度 アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」より作成) 一方で日系企業にとっては依然として初進出や進出後のビジネス展開にあたり、各種の制約に 戸惑っている。以下に、日系企業、特に食品関連企業の進出、ビジネス展開における課題につい て記す。
1.3.6
日系企業進出にあたっての課題・問題点 (1) ベトナム進出企業の一般的な経営上の問題点 市場の可能性の高さが魅力的である一方、経営の上では賃金上昇や原材料調達面での課題が存 在する。JETRO の海外進出日系企業調査によると、ベトナムの日系企業が直面する経営上の課 題として、下表の項目が挙げられている。前出の「DoingBusiness 2018」では改善がみられる とした通関などの諸手続きについても、日系企業の実情としては、半数近くの企業が問題を抱 えていることが判明した。従業員の賃金上昇は昨年度も課題点として挙げた企業が一番多く (2017年度調査では59.5%)昨年度よりも課題として認識する企業の割合がさらに増えた。加 工食品業界(製造業)は一般的に農業従事者に比べ月額賃金が低いことから、人材確保の難し さが指摘されている24「原材料・部品の調達の難しさ」に関しても昨年度と変わりなく、6割 強が問題視している。 表 17 ベトナム進出の日系企業の経営上の課題例 *括弧内は該当すると回答した企業の割合(%) (出典:JETRO「海外進出日系企業調査」) 24 ベトナムにおける戦略的加工食品の創出と本オプ食品関連ビジネスの進出促進のため情報収集・確認調査 (JICA, 2012) 項 目 割 合 売り上げの増加 87.8% 成長性、潜在力の高さ 46.2% 取引先との関係 27.3% 高付加価値製品への高い受容性 17.8% 生産販売ネットワークの見直し 13.8% 規制の緩和 2.7% 部 門 内 容* 人材・労働関連 従業員の賃金上昇(75.2%)、従業員の質(46.7%) サプライ体制関連 原材料、部品の現地調達の難しさ(65.2%)、品質管理の難しさ(57.2%)、通関等諸手続が煩雑(47.5%)、調 達コストの上昇(32.7%)、税務(法人税、移転価格課税)の負担(40.9%) マーケット関連 競合相手の台頭(46.1%)、新規顧客の開拓が進まない(40.0%)、主要取引先からの値下げ要請(34.6%)(2) ベトナムの投資環境上の課題25 同上の調査での日系企業の考える投資環境上のリスクには、下表の内容が挙げられていた。最 も多い回答は法制度の未整備・不透明な運用(63.3%)であった。具体例として、現地調査に て訪問した小売の大手企業では、外資企業として直面している以下の課題点を挙げていた。 各種通達/法令/規定が頻繁に公布される。かつ猶予が短期間であることから、社内 法務部から関連部局への連絡・対応(仕入、売場、品質管理、荷受担当者間)まで の十分な時間を確保することが難しい。一方で政府からの立入検査が早急であるた め、思わぬ罰則が科されることが多い。 仕入食品に関しては、全て品質証明書の入手・保管が義務付けられているが、小規 模工場では準備に時間を要すなど書類整理には大変な困難があり、この点でも立入 検査によって頻繁に罰則が科されている。 表 18 ベトナム進出の日系企業の投資環境上の課題例 (出典:JETRO「海外進出日系企業調査」) まとめ 上記の調査などから、ベトナムでは、総合的にビジネス環境が改善され、日系企業の更なる進 出が見込まれる。また、ベトナムや近隣諸国の経済成長に伴う食品需要の高まりに対応すべく、 今後も日系企業のアジア進出に向け、ベトナムが一拠点となり日本との農産物・食品の貿易等 が拡大する可能性がある。 一方で実際にビジネス展開をする企業には、表18に示されるような不明瞭な制度や生産・製 造・流通段階での衛生管理、また南北の経済圏の分断といった物理的課題が存在する。これら 課題を国際協働的に解決することにより、日本並びにASEAN諸国において、Win-Winの関係が築 かれることが望まれる。 25 「人件費の高騰」が最大の投資リスクに-進出日系企業実態調査からみた投資環境(有効回答者数 652 社、 内食料品。複数回答)(2017.4) 26 ベトナムホーチミン市近郊ビジネス情報2018(JETRO)に基づく記述。 領域 分野 項目 割合 備考26 全般 人材・労働 人件費の高騰 54.6% 最低賃金上昇率:平均6.5% 人材の確保、離職率の高さ ― 中間マネジメントの人材層が薄い。 制度 許認可制度 法制度の未整備・不透明な運用 63.3% 法令内容の事前検討の不足、実務とのかい離。省 庁、地方間、担当官での法律の解釈が異なる。 許認可手続き 行政手続きの煩雑さ 61.1% 非公式手数料の存在。審査機関の不明瞭さ。 基礎インフラ インフラ インフラ(電力、物流、通信)の未 整備 48.3% 南北に経済圏が分断しているため、非効率。
第2章 ベトナムにおける農産物・食品の規格・認証
2.1
ベトナムにおける食品安全行政
2.1.1 農産物の安全確保に関する規制 ベトナムにおける食品安全に関する法律の基本構造は、下図の通り。食品安全法は国会が発行 する基本の法律(Law)であり、政令(Decree)は政府が発行する詳細規程、通達(Circular)は関 係省庁が発行する実務指針、決定(Decision)は、首相又は大臣が発行する通達の更に詳細な規 程もしくは政令や法律に関する特別な取扱いである。 図 5 ベトナムにおける食品安全法の基本構造 ベトナム農業農村開発省から提供のあった資料に基づいて、ベトナムにおける農産物の安全性 に関する法規制、規格、技術基準を以下のように整理する。 (1) 農業生産工程管理(GAP) 1) 関係法令 食品安全法第4条第4項において、GAPの法律の枠組みを確立し、かつ適用されなければならな い道筋を立て実施できるように取りまとめを行う、と規定されている。 政令107号/2016/ND-CPは、規格・技術規則法(2006年)ならびに商品・製品品質法(2007年) に基づき、科学技術省によって発行された適合性評価に関する政令である。認証機関としての 資格要件や実施組織としての関係省庁や科学技術省の役割が明記されている。 決定01/2012/QD-TTgは、VietGAPの適用支援政策(調査分析費用や認証取得のための資金支援 や農家へのトレーニング、生物農薬やIPMなどの新技術支援など)が記されている。 通達48号/2012/TT-BNNPTNTは、食品安全法に準拠して、農畜水産物の生産と加工におけるGAP の適合性評価について定めている。2018年に通達6号として改訂された。 2) 規格(TCVN) TCVN11892-1:2017 VietGAP(作物) 国家基準TCVN 11892-1:2017は、作物生産におけるVietGAPについて規定したもので、VietGAP 食品安全法(Law) (国会が発行する基本の法律) 政令(Decree) (政府が発行する詳細規程) 通達(Circular) (各省庁が発行する実務指針) 決定(Decision) (首相又は大臣が発行するより詳細な 規程又は政令に関する特別な取扱)による農業の生産、加工(収穫、保存、輸送を含む)における要求事項が記載されている。 (2) 有機(Organic) 1) 関係法令 政令109/2018/ND-CP(有機農業)は、規格・技術規則法(2006年)、商品・製品品質法(2007 年)ならびに食品安全法(2010年)に準拠して、農業農村開発省によって発行された。農林畜 水産分野における有機農業製品の生産、認証、ラベル、ロゴ、トレーサビリティ、検査につい て規定している。 2) 規格(TCVN)
2017年に新たな国家有機規格TCVN11041:2017が、CODEX, IFOAM, EU, ASEAN基準と の調和 によ って策定され、有機製品の生産、加工、レベル、マーケティングについて規定している。 TCVN11041-1:2017(有機生産の一般要求事項) TCVN11041-2:2017(有機農業) TCVN11041-3:2017(有機畜産) (3) 食品安全システム(加工食品) 1) 関係法令 上述のGAPと同様に、食品安全法第4条「食品安全の国家施策」では、法的枠組みの構築と食品 安全管理システムの強制適用に向けたロードマップの体系化について定められており、GMP, GHP, HACCP及びその他の食品安全管理システムがその中に位置づけられている。 政令15/2018/ND-CPは、製品の自己宣言手順、遺伝子組み換え食品の安全性保証、食品製造施 設の認証、輸出入食品の検査、食品表示、健康補助食品の安全性、食品添加物の安全性、食品 トレーサビリティ、食品安全の国家管理などについて規定されている。 政令107号/2016/ND-CPは、規格・技術規則法(2006年)ならびに商品・製品品質法(2007年) に基づき、科学技術省によって発行された適合性評価に関する政令として、認証機関としての 資格要件や実施組織としての関係省庁や科学技術省の役割が明記されている。 国家技術規則 02-02:2009/BNNPTNTは、水産物の生産と流通について、HACCP原則に基づく食品 の品質と安全管理プログラムについて規定している。 2) 規格(TCVN) 国家技術規格 TCVN5603:2008は、食品衛生の一般原則を示したもので、Codex CAC/RCP1-1969,2003/4改訂版と同等のベトナム語版である。 TCVN5603/2008 HACCP TCVNISO22000:2007 (4) 製品毎の技術基準(QCVN) QCVN 01-06:2009/BNNPTNT: コーヒー加工(食品安全と衛生) QCVN 01-07:2009/BNNPTNT: 茶加工(食品安全と衛生)
QCVN 01-08:2009/BNNPTNT:カシューナッツ加工(食品安全と衛生) QCVN 01-09:2009/BNNPTNT:野菜果物加工(食品安全と衛生) QCVN 01-132:2013/BNNPTNT:生鮮野菜果実茶(生産と梱包における食品安全確保) QCVN 02-30:2018/BNNPTNT:農水産物卸売市場(食品安全保障要求) QCVN 8-1:2011/BYT: 食品中のマイコトキシン基準 QCVN 8-2:2011/BYT: 食品中の重金属基準 QCVN 8-3:2011/BYT: 食品中の微生物基準 通達 27/2012/TT-BYT: 食品添加物基準 通達 45/2014/BNNPTNT: 農業資材及び農水産製造施設の検査と認証 通達 50/2016/TT-BYT: 食品中の残留農薬基準 通達 51/2014/TT-BNNPTNT: 小規模製造施設の食品安全と管理 TCVN11856/2017:食品市場 TCVN9703:2013 (CAC/RCP 69-2009):コーヒーにおけるオクラトキシンAの予防と削減対策 (出典:農業農村開発省 NAFIQADからの資料) ベトナムにおける技術規則(Technical Regulations)は、QCVNと呼ばれ強制的に適用されるも ので、関連する各省が規則を策定し、科学技術省標準・計量・品質総局(Directorate for Standards, Metrology and Quality: STAMEQ)の検証後に実務指針としての通達を発行する。 また、規格(Standards)は、TCVNと呼ばれ任意に適用されるもので、政府の各省が規格を策定 し、科学技術省のSTAMEQが規格を検証・発行する。 加工や包装業者は規則の適用が要求され、製造・流通業者は規則に適合していることの宣言が 要求される。また、規則では、製品や製造プロセスが安全で、環境にも良いことが要求される。 2.1.2 食品安全法における中央政府と地方政府の役割 食品安全法には、食品安全の国家管理における関係省庁の役割が明記されており、以下のよう に整理できる。
表 19 食品安全行政に係る中央政府と地方政府の役割 農業農村開発省(MARD)は、食品の認証に関連して下に示す組織図のように栽培局、畜産局、品 質管理局がそれぞれ省庁レベルでの政策策定を行っているが、地方レベルにおいては、農業農 村開発局(DARD)が対応する形で同等な組織を持っており、それぞれの部局が現地における管理 監督を行っている。なお、地方の農業普及センターでは、GAPの普及や指導などのコンサルテ ィングを行っている。 図 6 農業農村開発省(MARD)の組織図 大臣 計画局 経理局 科学技術環境局 事務局 副大臣 専門局 品質管理局 (NAFIQAD) 栽培局 植物保護局 畜産局 動物衛生局 建設管理局 協同組合・ 農村開発局 農業農村開発専門学校 農村開発政策戦略研究所 IT統計センター 国際協力局 法務局 農業企業局 監査室 農産物加工 市場開発局
中央政府 保健省(MOH) 農業農村開発省(MARD) 商工省(MOIT)
関係省庁の 責務 食品安全の国家戦略や開発計 画の策定や統轄 食品や包装材料の規格基準の 技術規則の公布 食品の製造・流通施設の安全 性確保の要件策定 食品安全の啓蒙や教育の統括 蒙や教育の統轄 食品の加工、輸入、流通におけ る検査の実施 管轄するセクターにおける戦略、 政策、開発計画、法律文書などの 策定と公布 管轄セクターにおける生産、加 工、保管、輸送、輸出入、流通に おける安全管理 管轄セクターの包装及び包装材 料における安全管理 管轄セクターの生産、輸出入、流 通における試験、検査 管轄するセクターにおける戦略、 政策、開発計画、法律文書などの 策定と公布 管轄セクターにおける生産、加 工、保管、輸送、輸出入、流通に おける安全管理 管轄セクターの包装及び包装材 料における安全管理 市場やスーパーマーケットにおけ る規定についての政策や開発計 画策定 管轄対象セ クター 食品添加物、加工助剤、ミネラルウォ ーター、機能性食品など加工食品 穀物、肉及び肉製品、水産物及び加工 品、野菜・果物、卵及び加工品、生乳、 蜂蜜及び加工品、遺伝子組替え食品、 塩など アルコール、ビール、加工乳、植物油、 小麦粉など 地方政府 地方政府の 責務 法律文書や地方の技術規則の関係機関への提出 食品のサプライチェーン全体で安全性を確保するための施設に関する地域開発計画の開発 小規模生産や露天商、ケータリングサービスなどにおける食品安全管理 地方における食品の定期管理報告 地方における食品安全のための人材育成のための研修コースの組織化 食品の安全意識改善のための啓蒙、教育やコミュニケーションの組織化 管轄する地域の食品安全に関する試験、検査や法令違反への対処
図 7 農業農村開発局(DARD)の組織図 2.1.3 農業農村開発省における中央と地方レベルの食品安全行政 ベトナムにおける農畜水産物や食品の管理は、前述したように中央レベルで政策策定を行い、 地方レベルでその実施を行う仕組みがある。以下にMARDとDARDにおける食品安全行政の担当部 局を示す。 表 20 MARD と DARD における食品安全行政の担当部局 2.1.4 ベトナムの食品安全に係る認証 適合性評価(Conformity assessment)は、規格や規則に適合していることを評価するための活 動である。適合性評価の対象は、製品(製品やサービスなど)、プロセス(特定の加工や処理 など)、システム(組織の管理システムなど)、要員(審査員や検査員など)及び機関(認証 機関や試験所などの適合性評価機関)などである。 認証(Certification)とは、製品、プロセス、サービスが特定の要求事項(基準・標準・規定) に適合していること、つまり“適合性”を第三者が文書で保証する手続きである。 そのため、第三者が認証を行う際に、その第三者(認証機関)が行った適合性評価が不適合な ものとならないように、中立な立場で認証機関の能力を審査する必要がある。このように認証 局長 総務 人事 企画財務 監査 局長 局長 局長 技術局 品質管理 (NAFIQAD) 作物 水利 畜産獣医 水産 農村開発 森林管理 農業普及センター 農村環境浄水センター 研修センター 分野 中央レベル(MARD) 地方レベル(DARD) 植物由来の 食品 農作物(農家の前処理を含む) 作物局、作物保護局 作物局、作物保護局、 独立した一次加工及び加工処理 農産物加工市場開発局 品質管理局 流通・消費 品質管理局 品質管理局 輸出入 作物保護局、品質管理局 品質管理局 動物由来の 食品 (水産物を 除く) 畜産物 畜産生産局 畜産獣医局 と殺、一次加工 動物衛生局 畜産獣医局 加工(焼き、ハム、缶詰肉など) 品質管理局 品質管理局 流通・消費 動物衛生局、品質管理局 畜産獣医局、品質管理局 輸出入 動物衛生局、品質管理局 畜産獣医局 混合食品 一次加工、加工食品、冷蔵、包装材料 品質管理局 品質管理局
機関の能力を審査することを認定(Accreditation)と言う27。 適合性評価は、その社会的役割を果たすために次の3つが必要である。 ① 適合性評価の力量をもつ実施者が、公開された客観的な方法で評価を行い、その結果を証 明として関係者に提供する。 ② 証明の責任の所在を明確にして、その根拠を追跡できるようにしておくこと。第三者が適 合性評価を行う場合、その力量の実証を別の第三者が行う仕組み(認定システム)が構築 されていること。 ③ 適合性評価を国際的に、また分野間で調査した仕組みと手順で行い、有効な証明を相互に 利用すること。 適合性評価の主な活動には、適合の事実確定を重点とする活動(試料のサンプリングと分析、 プロセス審査、マネジメントシステムに関する監査など)と信頼性の保証を重点とする活動 (製品やマネジメント認証、要員や適合性評価機関の力量認定など)がある。 政令107によれば、ベトナムで認証業務を行う全ての認証機関は、その認証する規格がTCVNの 場合、営業許可を取得後、その認証する規格を管轄する省庁に、規格毎に登録される必要があ る。認証する規格がTCVNになっていない場合、その認証する規格を管轄する省庁から登録だけ でなく指定される必要がある。認証機関による管轄省庁または科学技術省への登録/指定は必 須であり、登録した管轄省庁などに対して認証の実施結果を年一回又は必要に応じて報告する。 また、認証機関は、審査員のトレーニングを科学技術省から受けることになっている。 ベトナム国内の認定機関は科学技術省(MOST)に登録が義務付けられるが、海外の認定機関がベ トナムで営業する場合は、操業1ヶ月前にMOSTに届出をする必要があり、毎年モニタリングさ れ、3年で更新される。 ベトナムの食品安全に関係する適合性評価システムとして、図8の左側は政府による認証機関 に対する行政指導・監督のために登録/指定を強制していることを示す一方、同図の右側は国 際認定機関フォーラム(IAF)により承認された認定機関(国内外を問わない)が認証機関を認 定し、その認証機関が農家や企業を認証する通常の認証システムも存在することを示している。 図 8 ベトナムの食品安全に関係する適合性評価システム 27 引用:JAB HPより
適合性評価システムにおける課題 BOA(ベトナム認定局:科学技術省傘下の認定機関で国際認定フォーラムのメンバー)によると、 認証機関が行政機関に登録する際にISO17065やISO17021が資格要件になってはいるものの、実 際の審査は認定機関が行うものほど厳密ではない。行政機関に登録された認証機関及び認定機 関に認定された認証機関ともに事業者に認証証明書を発行するが、認定機関に認定された認証 機関が発行する認証証明書については、認定機関のマークが付けられる。認定された認証機関 の割合は90%くらいを占めるとの説明があった。 適合性評価システムにおいて認証機関が登録と認定の枠組みを持つことが、農家や企業などの 事業者に対して、認証システムを分かりにくいものにしていると思われる。
2.2 ベトナムにおける農産物認証の種類
ベトナムの野菜・果樹農家が取り組んでいる主な認証と要求事項は以下の通りである。 表 21 ベトナムの主な野菜・果樹における認証システム 安全野菜とは、DARD品質管理局(地方レベル)により、QCVN 01-132、通達45号および通達50 号の基準を満たしていることが検査され「食品安全基準満足証明書」の発行を受け、人民委員 会により「安全野菜商標」の認可を受けた野菜のことである(現地インタビューより)。 農業生産者は顧客が要求する認証を取得しており、複数の顧客が要求する異なる認証を複数取 得している場合もある。 図 9 顧客(バイヤー)毎に異なる認証システムの組合せ 認証システム 要求事項 認証機関 備考 安全野菜 栽培環境(立地条件、土壌と水源の検査) 人民委員会 安全野菜専門店での販売あり PGS 栽培環境、使用農薬指導 メンバーによるクロ スチェック VOAA, NGOなどの支援。特定市 場への販売。 VietGAP 土壌、水質、プロセス評価、農薬使用と残留農薬分析 認証機関(政府系と 民間) 大手スーパーの調達条件DARD (普及センターなど)からの指導 GLOBALG.A.P. 農家の理解度や記録、水質・土壌・環境、肥料や農 薬使用管理と残留農薬分析、持続的農業、トレーサ ビリティなど 認証機関(民間) EUなどへの輸出に必要 有機農産物 生産方法(圃場、肥培管理、栽培管理、防除、育苗管 理、収穫後処理)使用農薬など 認証機関(民間) 有機専門店での販売あり2.2
農業生産工程管理(GAP)
2.2.1 ベトナムのGAPについての概要 (1) VietGAP策定の歴史 2018年8月6日以前は、農業農村開発省がVietGAPについて以下の決定を発行していた。 • 決定 379/QD-BNN-KHCN 安全野菜及び果物の農業生産工程管理(VietGAP)2008/1/28 • 決定 1121/QD-BNN-KHCN 安全生鮮茶農業生産工程管理(VietGAP) 2008/4/14 • 決定 2998/QD-BNN-TT 米の農業生産工程管理(VietGAP) 2010/11/9 • 決定 2999/QD-BNN-TT コーヒーの農業生産工程管理(VietGAP) 2010/11/9 • 規格、規則以外のVietGAP手引書 • 通達 48/2012/TT-BNNPTNT 農業生産(生鮮野菜、茶、米、コーヒー)のVietGAP認証 2018年8月6日、規格と技術規則法により、科学技術省の下で国家規格としてTCVN VietGAPが発 行された。VietGAPの認証プログラムオーナーは農業農村開発省である。併せて、過去に発行 された省庁規格のVietGAP(上記4決定)およびその手順書を廃止する通達06/2018/TT-BNNPTNT も発行された。したがって2018年8月6日以降に有効なVietGAPの規格は下記に一元化された。 • TCVN 11892-1:2017 VietGAP-Part1: 栽培(決定 2802/QD-BKHCN) (2) ベトナムにおける農畜水産物の製品認証プログラムベトナム認定協会(Bureau of Accreditation: BOA)のベトナム認証認定スキーム(Vietnam Certification Accreditation Scheme:VICAS)において、VietGAP及びそれに類似する製品認 証(Product Certification) プログラムは以下の通りである。
表 22 ベトナムにおける農産物・食品の主な認証プログラム
(出典:Search certification body of BOA website)
(3) 現在のVietGAP認証実績 本調査の第1回作業委員会(2018年9月27日)で農業農村開発省作物局からの配布資料を基にベ トナムにおける現在のVietGAP認証取得実績を以下に示す。VietGAPの対象作物と面積は、米 (3,690.4ha)、野菜(4,340ha)、果樹(20,992.6ha)、茶(4,044.5ha)、コーヒー(200ha)で、合計 33,267.5haである。 認証プログラム オーナー 対象品目 主な認証機関
VietGAP Part1 MARD 農産物(米、野菜・果樹, コーヒー、茶など)
NAFIQAD1, NAFIQAD6, Center for Analysis and Quality Certification of Lam Dong, FCC Control and Fumigation Joint Stock Company VietGAHP MARD 畜産物(牛、豚、鳥、蜜蜂など) VietGAP MARD 水産物(エビ、魚など) UTZ Code of conduct Chain of Custody UTZ(オランダ) コーヒー栽培と加工、カカオ栽培と加工、 茶の栽培と加工
Cafecontrol, VSCB Vietnam Limited Company, VCC&C
GlobalG.A.P. フードプラス(ド イツ)
野菜・果樹、畜産、水産、飼料など Bureau Veritas Certification,IQC Certification and Inspection Joint Stock Company, SGS Vietnam Limited