• 検索結果がありません。

幼児教育の現場で求められるピアノの役割について : 幼稚園実習後の学生アンケート調査の分析報告

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "幼児教育の現場で求められるピアノの役割について : 幼稚園実習後の学生アンケート調査の分析報告"

Copied!
6
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

1.はじめに 保育士不足が社会的問題として取り挙げられ 数年になる。政府、各自治体で保育士に対して 給与をはじめ勤務条件などに改善策が少しずつ ではあるが提示されるようになった。 この保育士に対する勤務条件改善策提示によ り、今度は幼稚園現場にて幼稚園教諭が保育園 勤務に異動し、人材不足の声も聞くようになった。 そのためなのだろうか、これまで幼稚園教諭 の採用試験でピアノ実技試験を行うとピアノに 対して経験が浅く自信がまだ持てない学生など は受験そのものを敬遠してしまうため、採用試 験の際に人材確保のためピアノ実技試験を行わ ない園もでてきている。 このような状況を聞き、はたしてそれで良い のかと疑問と不安を持つ。 情操教育の一番大切な時期でもあろう幼児期 の教育現場においてのピアノ ( =ピアノの演奏 及び “ 弾き歌い ” すべてのピアノを弾くことに よる表現を指す ) にはどのような役割があるの かを指導者も学生も正しく理解し再認識する必 要があるのではないかと考える。 そこで、現在の幼児教育現場で求められている ピアノとは何かを探り、現場で活かせる技術を習 得する意識づくりのために、幼稚園実習後に担当 学生にピアノに関するアンケート調査を行った。 本稿では、そのピアノに関するアンケート調 査の 2 年分の結果と記述回答からみえる現状 と学生の意識や気づきを分析し報告する。 2.調査方法 (1) 調査対象 2016 年度(平成 28 年度)担当学生 2 年生        回答学生数 23 名 2017 年度(平成 29 年度)担当学生 2 年生        回答学生数  6 名 (2) アンケート実施日  5 月末~ 6 月の教育実習後最初の授業にて  2016 年 6 月 13 日、2017 年 6 月 18 日、  アンケート用紙を配布し当日回収。 (3) アンケート設問内容 ①実習での曲の準備 a 実習前に園から渡された今日は何曲でした か。 b 実習が始まってから渡された曲や初見で の曲は何曲ありましたか。 ② a 実際に実習でピアノや弾き歌いを弾きまし たか。(2016 年度のみ)何曲ありました か。 b その時の様子や感じたことを記述してく ださい。 ③実習前に準備しておきたかったことはありま すか。 ④今後卒業までに身に付けたいことはあります か。 ⑤その他、感じたこと、思ったことがあれば自 由に書いてください。

幼児教育の現場で求められるピアノの役割について

幼稚園実習後の学生アンケート調査の分析報告 鎌田 千佳

About the Playing Role of the Piano Performance required on the early Childhood Educational Stage

Questionnaire Analysis Report after Kindergarten Practice by Students Chika KAMADA

(2)

3.設問項目別の結果と分析 それぞれ対象人数が同数ではないため数字か らみえる年度の比較はできないが、傾向を示す 試みとして、年度別で報告する。 ① a 実習前の準備曲数   2016 年度(23 名) なし      2 名 1 ~ 2 曲      3 名         3 ~ 4 曲      8 名 5 曲以上        10 名      (このうち 9 曲 1 名 10 曲 3 名) *曲の指定はなく「生活の歌を数曲」と言われ た学生を3~4曲に含む  2017 年度(6 名) なし      1 名 1 ~ 2 曲      1 名       3 ~ 4 曲      2 名 5 曲以上      2 名 b 実習が始まってから渡された曲及び初見の 曲数  2016 年度(23 名) なし        12 名 1 ~ 2 曲        10 名         3 ~ 4 曲      1 名 5 曲以上      0 名   2017 年度(6 名) なし      4 名 1 ~ 2 曲        0 名 3 ~ 4 曲      1 名 5 曲以上      1 名 ② a 実際に実習でピアノや弾き歌いを弾きまし たか。又、何曲弾きましたか。   2016 年度(23 名) 0 曲         2 名 1 ~ 2 曲      3 名 3 ~ 4 曲      9 名 5 曲以上      9 名         (この内 10 曲以上が 3 名)   2017 年度 (6 名 ) 実際にピアノを弾きました      6 名       (曲数回答はなし) 実習前に渡された準備曲と実習中に渡された 曲及び初見曲との関係を比較検討した。 表 1(2016 年度) 表 2(2017 年度) これら 2 年分の結果から、実習前に渡され た曲が少ない園では、実習中に渡される曲や初 見曲が多いとはいえず、これらの実習園のピ アノにおける比重があまり大きくないと推測 される。 また、実習前の準備曲の負担がそれほど大き くはないと考えられる3,4曲の準備曲を指定 された学生の1/ 3が、実習中に新たに曲を渡 されたり、初見を1,2曲経験している。(2016 年度学生のみ) この比較表から興味深い点として、準備曲が 5曲以上の比較的多めの準備曲を渡された回答 学生のうち、実習中の新曲や初見曲がなかった のは半数の学生で、残りの50%の学生が曲数 は多くはないが、実習中に新曲や初見曲を経験 したことが挙げられる。これらの園では子ども 達にとってピアノが身近にある環境であると考 えられる。実習中にその園が実習生の能力を試 したかったのか、あるいは園児たちの様子など から必要だと判断された曲が増えたか変更され たか、様々な理由が推測される。

(3)

b その時の様子や感じたこと(複数回答あり) 記述内容を大きく3つの視点からに分けた。 (表3) 「子どもに関すること」は演奏時の子どもの反 応や様子についての気づき、「自分に関するこ と」は演奏時の気持ちや自身の力不足、今後の 勉強への気づき、そして自身で試みた演奏の工 夫に関しての記述、「保育者に関すること」は 現場の教諭の様子からの気づきや学びの点の記 述である。 表 3 両年度とも自分自身に関する記述が子どもに 関する記述よりも多い。どうしてもピアノに不 安があるためか、演奏そのものに関して意識が 強くいってしまうため、自己反省や技術の必要 性などが振り返りの際にも意識深く残っている からだろう。 「子どもに関すること」は自分の演奏と一緒に 元気に歌ってくれたことの喜びの記述が一番多 かった。又、振付のある歌を楽しいそうに歌っ ていた様子やピアノを間違えても子ども達が歌 を歌い続けてくれた状況に関しての記述があっ た。 「自分に関すること」と「子どもに関すること」 や「保育者に関すること」、すなわち自分のこ とを振り返る傾向と相手の反応など意識を持つ 傾向との関係は全般的には大きな差はないとい えよう。 表 4 上の表は「自分に関すること」を更に細かい 観点からの項目に分けて分類したものである。 数字は複数項目に属する記述もあるため表3の 数字とは一致してはいない。 年度による数字の比較は回答数の違いからで きないが、各年度とも演奏や技術面での気づき が一番多い。 この気づきには、「子どもの表情や様子を見 ながら弾くのが難しかった」が複数記述され「子 どもの歌うテンポに合わせて弾くのが難しかっ た」「子どもの声とピアノとのバランスが大変 だった」など子どもと合わせることに意識を持 ちその大切さを実感できたとみられる。 又、「新しい曲を教える時の弾き歌いの大切 さを実感」「ややこしい歌詞の部分に先歌いが 必要」「コードを理解できて弾けたらよかった」 など、現場での表現方法の使い方や必要性、更 に「止まらないことが大切」と “ 歌 ” や “ 音楽 ” の根本に触れたことが記述されていた。 自己反省を記述した 2016 年度の学生には初 心者1が多く、実習前の準備期間の段階から力 不足による準備不足の結果がみられていた。そ れに加え学生自身の意識の低さや課題への取り 組み姿勢の甘さもあり十分な演奏レベルに到達 していないままの実習だったため当然の数字で ある。(表 5 参照) しかし、力不足を痛感し反省しながらも実 習中に学生自ら工夫してみた報告も全体数の 7 割にあたる 5 件2あったことは学生の意識の変 1 2017 年度回答学生 23 名中本校入学時にピアノ初心者は 13 名、2018 年度学生は 3 名 2自己反省記述者と同一学生とは限らない。

(4)

化を心強く感じた。子どもと一緒の環境で自ら を反省したことで、実習以降のピアノの授業に 対する意識と態度が前向きに変化したことは事 実であった。 表 5 初心者の記述のみ分類 ( ) 内は全体分 類数 ③ 実習前にしておきたかったこと 次のように大きく4つの項目に分類した。 (表 6) 「メンタル面に関して」は心構えや度胸など内 面的な観点からの記述、「演奏技術・知識に関 して」は正確な演奏やコード伴奏や先歌いなど、 「表現に関して」子どもの様子・環境に適した 演奏方法について、「曲目に関して」は選曲や レパートリーに関する記述である。 表 6 「曲目に関して」の記述が 2 年とも多かった。 季節の曲の準備不足や、子どもの様子や環境に 合わせた選曲の必要性を感じたようだ。そのた めにも様々なスタイルの曲のレパートリーを増 やさなければならないことを学んできたことが みえる。 中でも「立つ音、歩く音など動きのある曲」 や「友達との関りのある曲」という記述があっ たことに注目したい。どの曲をいつ、どのよう な時にどのように表現するか。よい気づきであ る。 緊張しても弾ける、あるいは余裕をもって選 曲できるように、など心がまえを絡めた記述も みられた。又、シュミレーションをしておけば よかった。という記述も 2 件あり(その他の 項目内)、実習での自分自身が想像できずにい た学生の不安と緊張を感じられた。 ④卒業までに身に付けたいこと       この回答は前設問③の「実習前にしておきた かったこと」と関係のある記述も多かった。力 不足、勉強不足の反省からだろう。 興味深い数字は表現に関しての記述が 8 あっ たことである。(表 7)選曲に絡んだ記述が多 かったのだが、それらは実習で現場を経験した からこそ気づいたことと分析する。中でも「歩 く、雨の音などをピアノで表現すること」や「子 ども達の存在を意識して想像して弾く」という 記述に大きな成長を感じた。 表7 「演奏技術・知識に関して」の項目内では「リ ズムの正しい理解と演奏」と「コード伴奏」の 記述が 3 件ずつあり、その他は移調や即興、 アレンジなどが記述されていた。正しいリズム の習得は正しい演奏につながり、それは自信を 持って演奏できることにもなる。余裕も持てる ことから、表現への豊かさや子ども達の様子を 見たり感じたりすることもできる演奏の基礎技

(5)

術である。又、コードが理解できれば、楽譜が なくても、あるいは楽譜通りの伴奏でなくても 子ども達と楽しく歌える。ということに気づい たのではないだろうか。 ⑤その他の自由記述 数名の学生から実習直後の新鮮な感覚のまま の記述があり、その中からいくつか原文のまま 報告する。 *ピアノを誉められました。 *初め、自分から「やらせてください」と言 えず待っていたが、勇気を出して言ったことで 積極性も出てよい経験になりました。 *残り少ない授業を大切にし、ピアノを上達さ せて立派な保育者になれるよう努力します。 *ピアノが弾けるのと弾けないとでは子ども達 の反応が全然違った。両手で弾ける曲は元気よ く歌っていたが、片手の時は両手の時ほど元気 の良さを感じることはできなかった。 *ジブリやディズニーなどの有名な曲を弾いて いる先生がいて、自然に子どもが集まってきて、 そのまま帰りの会に「集まって」と言わなくて も始めることができていたのですごいなと思っ た。 *どの曲でも先生が「声出して!」と言うので、 子どもたちも怒鳴ってほとんど音程も無くて、 それはうたなのかな?と疑問に思いました。 *七夕のうたでも、歌詞の意味も分からずにう たっているので間違えている子も多く、きちん と教えてもらえていればまた違うのではないか と思いました。(以上 2016 年度学生) *現場では先歌いや、その場に応じた左手の伴 奏を自分で考えてすぐに弾いたりしていたの で、コード伴奏の大切さを知りました。 *指示された曲以外も弾くことが多かった。 (2017 年度) 4.まとめ (1) ある幼児教育現場からの声がきっかけ 近年、幼児教育現場の指導者から養成校での ピアノ指導と現場で求めるピアノとのずれが感 じられる。との声を聞く。 ショパンなどの細かいパッセージをいかにう まく弾けるのかをアピールするかのごとく、童 謡の前奏を長々と弾く保育者はいらない。と はっきり発言する園長もいる。ピアノが苦手な ら苦手で、伴奏は和音だけでも構わない。その 園長は続ける。実際にピアノが苦手なのでトラ イアングルを鳴らしながら子どもと一緒に歌う 先生がいる園である。 このトライアングル伴奏は極端な事例だが、 この園長の言葉からも、現場で求められている ピアノについて保育者を目指す学生はもちろん 我々指導者も再認識すべきと感じ、昨年より実 習後のアンケートを行い始めた結果が本稿であ る。 (2) 結果分析からみる現状と試み 本校では 1 年次後期から弾き歌い課題があ り、2 年次は弾き歌い課題中心に先歌い、コー ド伴奏の課題もある。 今回アンケート調査は 2 年次の 5 月末~ 6 月にかけての幼稚園実習後であるため、まだ習 得曲が少ないことや、コード伴奏の理解や演奏 力が未熟なところはやむを得ないと判断する。 しかし、卒業まで半年以上残す時期に、学生自 身が自らの力不足や勉強不足を自覚し、明確な 目標を定めることや、現場のピアノで何ができ なくてはならないのかを実感してきたことによ り、以前とは課題に取り組む姿勢や意識が変化 した学生が多くみられた。それは様々な理解を 助け、成果(筆者の考える演奏表現)につながっ ている。 また、昨年度(2016 年度)の調査結果をもと に、今年度(2017 年度)は 1 年次の弾き歌い課 題の指導時に、学生への意識づけの試みとして、 移調奏やコード伴奏にも触れている。これは弾 き歌い課題の練習に慣れることで精いっぱいの 学生に、追加課題を課しているつもりはなく、 次年度の課題への予告の意図と、その先の、現 場で応用できる表現方法のヒントとしての早め の意識付けの試みである。実際、筆者が模範演 奏を示すことでほとんどの学生の表情がパッと 何かを発見したように変わることは、何らかの 意識付けができているのではないかと考えられ るため、この時期のこの指導は継続して更に経

(6)

過を観察していきたい。 又、弾ける曲がそれほど多くない場合は弾け る曲を応用すればよく、テンポを変える、高さ を変えるなどで子ども達の状況・環境に合わせ たピアノの可能性も提案している。実際今年度 の実習で、お昼寝前に「きらきら星」を高音域 でゆっくりめのテンポで演奏してきた。との報 告を受け、筆者は指導の方向性がずれていない ことが確信できた。 (3) 今後の課題として 今回の調査結果報告の中で、今後の指導にお いて筆者が特に注目したのは、 「雨の音や歩く音などをピアノで表現」 「子ども達が音程のないまま怒鳴っているの は歌なのか」 「歌詞の意味も分からずうたっている」 という3つの記述である。 これらを記述した学生に、保育者として必要 な「豊さ」将来性を感じた。これらの記述にこ そ現場が求めているピアノ、歌、音楽、そして 更に突き詰めていけばその先の “ 表現 ” の域の 役割と意味が隠されているのではないかと思わ れる。そしてそこには我々指導者へのヒントも 隠されている。 現場では単に弾ける曲が多い、間違えないで ピアノが弾ける。ということだけが求められて いるわけではないことは明らかで、その先を見 据えての指導が必要であろう。課題の指導の際 にそれぞれの学生に応じた応用力へのヒントを 示す試みを続けるとともに、また新な工夫を加 えながらその指導の効果・成果を判断し、学生 の素直な気づきを受けとめた指導をすすめてい きたい。 そのためにも、保育所保育指針、および幼稚 園教育要領で示されている保育内容 5 領域の なかの「表現」のねらい・内容の理解と、子ど もの発達と音楽的表現活動との関係を関連づけ ながらのピアノ指導が必要ではないかと考える。 参考文献 ・楽しい音楽表現−幼稚園教諭・保育士をめ ざす 圭文社 2009 ・柳澤邦子 編者 領域「表現」子どもと楽 しむための音楽表現−のびのびと心と身体 を育む フルーベル社 2014 

参照

関連したドキュメント

これはつまり十進法ではなく、一進法を用いて自然数を表記するということである。とは いえ数が大きくなると見にくくなるので、.. 0, 1,

児童について一緒に考えることが解決への糸口 になるのではないか。④保護者への対応も難し

目標を、子どもと教師のオリエンテーションでいくつかの文節に分け」、学習課題としている。例

自閉症の人達は、「~かもしれ ない 」という予測を立てて行動 することが難しく、これから起 こる事も予測出来ず 不安で混乱

本論文での分析は、叙述関係の Subject であれば、 Predicate に対して分配される ことが可能というものである。そして o

「欲求とはけっしてある特定のモノへの欲求で はなくて、差異への欲求(社会的な意味への 欲望)であることを認めるなら、完全な満足な どというものは存在しない

   遠くに住んでいる、家に入られることに抵抗感があるなどの 療養中の子どもへの直接支援の難しさを、 IT という手段を使えば

子どもたちが自由に遊ぶことのでき るエリア。UNOICHIを通して、大人 だけでなく子どもにも宇野港の魅力