地理学の概念と方法論からみた高校地理教育の体系化
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(2) 目 次 序………一一一…………・・…一・・…・一…・・………・………・一…・…・ i. 第一章 高校地理教育を規定する条件._____・.・・.__.1 第1節 高校地理教育の規定要因と教育行政の規定一・……・・…・1 1 高校地理教育の規定要因・・一一一……・…………・ 1 2 教育行政からの規定一…・・…一……一・一・・一一……… 3 3 社会科の一科目としての高校地理教育一 4 第2節 生徒の実態からの規定一一…・…・一・一・t一一…・一一一一・一…・・… 7. 1 高校進学率の上昇とその問題点………・・ 7 2 現代高校生の特徴…………・……・一………・…・……… 一・9 3 生徒のレディネスからの規定一・…・……・・…・……一一・…11 第3節 現代社会からの要請…・…………・……一・・…・一一・…・…・13. ■ 現代社会の特徴……・・…………一・・……・…一……・・ 13 2 現代社会が必要とする資質・………・一…・…・・…一・…… 14. 第二章 地理学概念と方法の地理学史的考察………………・ 17 第1節近代地理学の成立・………・……一一・・一・……一一 17 1 地理的知識の拡大・…・・…・・……・・一・・……・・…・ 17. 2 フンボルト以前の地理学思想・……・一一・………… 18 第2節 フンボルトの地理学思想……・・…一一・…・一丁……・一…19. 1 『コスモス』にみられるフンボルトの思想…・…・・……・19 2 フンボルトにおける植物地理学一・・…・…・……………・・21 3 フンボルト地理学からの継承視点・・………・・…一…・・一23 第3節 リッターの地理学思想一一.____._._._._._25 1 リッターの思想背景・…__………・・一・一・一・一・.一…・25. 2 リッターの地理学思想・一……一一………・…一一…… 25 3 リッター地理学の継承視点・…・一・一・… 一・一一一一一一・・ 30. 第4節 フリードリヅヒ・ラッツェルの地理学思想・……・・…・・33 1 ラッツェル地理学の思想背景・…一一一・…・………一…・33. 2 ラッツェルの地理学思想……・…・………一…一一……34 3 ラッツェル地理学の継承視点・…………一一・・・・・…一・・…・37.
(3) 第5節 ポール・ヴィダル・ドゥ・ラ・ブラーシュの地理学思想一・…39. 1 ヴィダル地理学の思想背景一… …………一一・・……… 39 2 ヴィダルの地理学思想一…一・一…・………一……一・…・・40 ・ 3 ヴィダル地理学の継承視点一…・…・・……・…・T………・43. 第6節 新しい地理学の登場一・………………・………………46 1 新しい地理学の背景とその特徴・…・…・…一……・・……46. 2 新しい地理学の概念と方法………・……一・・………・47 3 新しい地理学の継承視点一…一.一…………一一・… …一・一・・一一50. 第三章 わが国における現代地理学の傾向・一一一……一・一一…一・・53. 第1節 r地理学評論』における研究対象と研究目的…・一一…一一53 1 r地理学評論』の概要・一一一一・一・……・・…・一一…… 53 2 地理学概念の抽出i・…・・一……・・・…、………・・一一一・…’55 3 地理学概念の比較吟味…・一…一・一…・・…・...一….._._ 58 4 地理 概念の整理・………・………・一・……・…一一一・一一一一一・・62. 第2節 r地理学評論』にみられる地理学の方法……・一・・…・…一一66. 1 r地理学評論』における地理学方法の具体的分析・………66 2 :方法の記号的表現4一・…・……一…・一……・・一一……・…71 3 地理学方法の類型化………・・……・一・一・一t・…・…・一・一・一・78. 第四章 高校地理教育における体系モデル…・………一・…・・一一81 第1節 高校地理教育体系における先行事例…・…・・一…一.…・… 81. 1 学習指導要領にみられる高校地理教育の体系・…・・………81. 2 研究団体による高校地理教育の体系事例∵…・………一・・84. 3 HSGPの体系一・・…・…・……………・………一・・88 第2節 高校地理教育における体系化の視点….・・.一・一・・…・………・94 1 実用的体系化の原剣一…_一..一・.__.__・…...._.・94. 2 一元論的地理学習の原則……・……・…一………・一一 96 3 科学主義と人間主義との統合の原則一…・一・…・・…・…100 第3節 高校地理教育の体系モデル………・一一一・…・…・……103 1 体系化の方法一一一…一一一…… 一一一一一一一一一・一一……………・103. 2 高校地理教育における体系モデル・・一一一一・・一一・・一・…107. 結・・・… ……一一・・…一……一…………・………一…・・1i「.
(4) 序 高校地理教育が抱えている問題は、深刻である。昭和53年高等学校学 習指導要領改定により「地理」が選択制に変って以来、「地理」を履修す る生徒が激滅している。大学受験者数をみても、地理で受験する生徒はじ り貧状態にある。「世界史」、「日本史」などの歴史に比べ「地理」で受 験できる大学が少ないことも一つの原因であるが、高校地理教育自体にも 問題が多いようだ。一般的に地理と歴史は、網羅、羅列的で暗記科目と言 われている。しかし、「歴史はおもしろいが、地理はおもしろくない。」 という感想をもつ生徒は意外と多い。地理教育を専攻している筆老が、=. 「世界史」の授業を受け持ったことがあった。その時も大多数の生徒が上 記の感想を表明した。教える立場からも、歴史は時代区分が明確であり、 歴史的な事象と事象との間には、因果関係があり,、更にそれぞれの時代ご. とにロマン豊かな人物が登場し、実に教えやすい教科であった。このよう にみていくと、教える技術よりも、むしろ「.地理」という教科そのものに. 問題があるといえよう。「地理」には何故、歴史のように教える内容に系. 統性がないのであろうか。学習指導要領の変選をみると、「人文地理」か ら「地理」へ、系統地理から系統地理と地誌との選択へ、そしで今日の統 合型へと変ってきている。実践の場でも混乱しでいる。・自然地理が得意な. 教師になると、地形や、気候の地学的内容の授業が1学期の終にまで及ぶ ことがある。進学校での地理の授業となると、ケッペンめ気候区分と農業. 地域区分との関係よりも、気候表からケッペンの気候区分への変換作業が 重視される。. 地理教育とは本来、どうゆう教科であろうか。極めて包括的‘勢いえば、. 「地理学に依拠する教科」と表現されよう。それでは、その地理学とはど のような科学であるのか。しかし、この地理学については、「地理学者と 同じ数の地理学の定義がある」といわれる。教科が依拠している科学その もめが明確な哲学を持ちえず、空中分解をしかねない状態であるならば、 それに依拠する教科内容が混乱するのも無理はない。. 現在、高校地理教育では、教材研究は盛んに行われている。しか妖今 日、最も必要とされていることは、地理教育をきちんと体系づけることで.
(5) rt. ある。そのためには、まず地理学自体が哲学を持ち、体系づけられる必要 がある。元来、それは、教育に携わる者ではなく、地理学老の仕事の領分 である。しかし、現状のままでは、その成果を待つ前に、、高校地理教育は、. 歴史やその他の社会科科目に自然淘汰されてしまうであろう。 本研究では、以上のような高校地理教育のジレンマ状態を打開する糸ロ を求めて、地理教育の体系モデルを試案として提示するものである。 (1)研究の目的. 本研究は、地理学の概念と方法を明確にしながら、高校地理教育の体 系化を図ることを目的とする。. (2)研究仮説. 地理学の概念と方法に基づいて地理教育の体系を図れば、より科学 的思考力が身につく地理毅育が可能となる。 (3)研究:方法. 1 高校地理教育を規定する規定要因から高校地理教育の目的と位置 づけを明確にし、高校地理教育の体系化に必要な規定条件を導出 する。. 2 地理学の概念と方法を地理学史的考察と現代地理学の研究事例の 分析によって導出する。 3 地理学の概念と方法から単純→複雑、易→難の基準で類型、序列 化する。. 4 類型、序列化された地理学の概念と方法を基軸とし、高校地理教 育を規定する条件を充たすように、高校地理教育の体系モデルを 構成する。.
(6) s. 第一灘. 高校地理教育を規定する条件 高校地理教育の体系化をはか・るには、何が必要であろうか。それには、. 高校地理教育を規定している枠組が明確にされなければならない。本章で は、高校地理教育の体系化に必要な枠組としての規定要因を明示し、それ ぞれの枠組について、規定条件を考察する。. 第1節 高校地理教育の規定要因と教育行政の規定 1 高校地理教育の規定要因 (1)高校地理教育の位置づけ 昭和53年度版高等学校学習指導要領によれば、高校地理教育は、「現 代社会」の後に履修するように位置づけられている。この「現代社会」の 内容は(■)・「現代社会の基本的な周題」および(2)「現代社会と人間. の生き方」の2つの柱から構成されている。そのうち地理的内容は、(1) の「現代と人間」の内の「人類と環境」、「人口問題と資源・エネルギー」 および(2)の「人間生活における文化」にみられる。 「地理」の科目は、この「現代社会」を学習した後、・2∼3年時におい. で選択履修となっている。この点が従来1年時の選択必修であったのに比 べて大きく変った点である。このことは、地理を選択しない生徒が出るこ とを意味すると同時に、より高次で質の高い学習が期待されることを意味 する。. 次に高校地理教育をもっと長いスパンからその位置づけをながめてみよ. う。まず、小学校における地理学習では3∼4年の地:域学習と5年のわが. 国土についての系統的地理学習が行われる。中学校においては、1∼2年 時の地理的分野において世界および日本の地誌的学習が行なわれる。高校 を卒業すると、社会に出る者と大学に入る者とに分かれる。大学に入った 者の中には、地理学の専門家としての道を歩む老もいるであろう。すなわ ち、高校地理教育は社会教育への出ロであると同時に、地理学の専門家へ.
(7) 2 の入口としても位置づけられる。このことは図1の縦の系列として示され ている。. さて、小、中、高との関係については、従来から指導内容の関連を緊密. にするように指摘されてきた。昭和53年版高等学校学習指導要領解説で は、改訂の基本方針として「小学校、中学校及び高等学校の社会科を一貫 的にとらえ、そこにおける高等学校社会科の位置と役割を明確にした。」 [1〕と述べ、小、中、高一貫教育を一層重視していることを明らかにした。. この小、中、高一貫性の問題を星村平和は以下のように解説している。 今回の改訂では、小・中・高等学校の一貫性の問題を、単に理念的にと らえて検討するだけでなく、内容精選の作業を通して具体的にした点で 大きく前進させたと言ってよいのである。すなわち、従来は、小学校は 小学校として、中学校は中学校として、学校段階ごとの完成主義ないし は完結主義の立場が強かったが、今回の改訂ではそうした立場や考えに こだわらず、文字通りの一貫性に留意したものである。〔2〕 これは高校教育が量的に普及した今日、当然の配慮といえよう。またこ のような認識がなくては高校教育は成立しえなくなってきている。. 次にさらに長いスパンから高校地理教育をみてみよう。今日では、生涯 教育の視点から高校地理教育を見直していく必要に迫られている。それは 「生涯教育の理念がうちだされ、生涯地理教育の必要性が唱えられ、学校 地理教育が生涯地理教育の一環として位置づけられ」[3]てきたからである。 このような高校地理教育の縦の系列からの考察は、現代において‘瓜極め て重要な視点とい・えよう。従って、高校地理教育の体系化における規定条 件は、以下のようになる。. ③高校地理教育は、小、中、高の一貫性の視点と生涯教育の視点を重:視 して、体系化が図られなければならない。. (2)高校地理教育の規定要因 高校地理教育は綾の系列と同時に、以下の4条件によって規定されてい ると考えられる。. 1 教育行政からの規定 2 生徒の実態(興味・関心・レディネス)からの規定 3 現代社会からの要請.
(8) 3 4 地理学の成果の活用 それでは、この4っの条件は、それぞれどのような関係にあるのであろう か。それ等の関係を図で示すと、図1のように示されよう。 社会教育。大学 における「. 地理学. 教育行政. 現代社会. 高校地理教育. からの 規定. からの 要請. 高校r現代社会』 生徒の興味・関心 レディネスからの. 地理学の成果 中学校社会科. 規定’. からの ’ 」活用. 小学校社会科. 図1 高校地理教育の規定要因. 2 教育行政かうの粗定 学校教育は公教育である以上、教育行政によって必然蘭に規定されるρ その規定は法規によって定められる。その規定は強制力を持つものであり、 それからの逸脱は許されない。. わが国の教育における基本に関する法規としては、日本国憲法、教育基 本法があり、学校教育に関しては学校教育法がある。しかし、これ等は高 校地理教育の内容に直接的徐係わりをもたない。高校地理教育と直接的な 係わりがあり、最もその内容を規定するものとして、学習指導要領がある。. 高等学校学習指導要領は学校教育法施行規則第57条の2によって、教育 課程の基準として位置づけられている。. それでは学習指導要領は高校地理教育をどのように規定しているのであ.
(9) 4. ろうか。昭和53年版高等学校学習指導要領からみてみよう。. 昭和45年版高等学校学習指導要領では,「地理A」および「地理B」 であったが、昭和53年版では、新しく「地理」(4単位)の1科目とな った。この新設「地理」の背景について、高等学校学習指導要領解説では 以下のように述べている。. 現代世界に対する地理的な認識という「地理」の基本的なねらいを達成 するためには、地理の固:有の学習方法である系統地理的な方法と地誌的 な方法とは相互補完的な関係にあることから、両科目の履修が特に望ま れるわけである。しかし、教育課程全体及び社会科の中での調和という 「諸条件から多くの生徒が両科目を履修することができない実情にある。 このこととも関連して、高等学校の地理学習においては、これら二つの. 学習の方法に基づく地理的な認識の仕方の基本を身につけさせることが できるように両科目の内容及び学習の方法を総合して新しい観点に立つ て内容の再構成を図ったのである。(+]. 以上のように現行の高等学校学習指導要領に規定されている「地理」は 系統地理学および地誌学を合わせた内容構成であり、「現代社会」の後の 選択履修となっている。学習指導要領は、社会の変化に対応して、その位 置づけや内容構成が変えられて今日に至っている。このことは、高等学校 学習指導要領そのものが普遍的な完壁性をもつものではないことを意味す る。しかし一方では、高校地理教育が公教育の一環として行われる以上、 法的拘束性:を認めざるをえない。従って、高校地理教育の実践的課題とし. ては、ゼの程度までのレベルで学習指導要領の拘束性を認めるかという点. にある。ここでは、以下の2点と次項で述べる社会科および「地理」の目 標を高校地理教育を規定する条件として取り上げる。. ⑤高校地理教育は「現代社会」の履修の後2∼3年次に選択科目として 行う。. ⑥地理学習の内容と方法は、系統地理と地誌的内容を総合して構成する。. 3 社会科の一科目としての高校地理教育 高校地理教育は高等学校学習指導要領により、社会科の一科目として位 置づけられている。すなわち、社会科の目標達成のための一つの科目であ.
(10) ut 5 り、・,それ以外の目標を課せられるものではない。それでは、高等学校学習. 指導要領における社会科の目標はどのようになっているのであろうか。昭. 和53年版高等学校学習指導要領には、以下のように記されている。 広い視野に立って、社会と人間についての理解と認識を深め、民主的、 平和的な国家・社会の右為な形成者として必要な公民的資質を養う。 前段の「広い視野に立って‘社会と人間についての理解と認識を深め」 は知的側面を強調するものであり、教養主義的な面を表わしている。そし て後段の「… 社会の右為な形成者として必要な公民的資質を養う」は、. 実践的側面を強調する実用主義的な面を表わしている。つまり、教養主義 的なものと実用主義的なものとが結びついたものとなっている。この社会 科の目標構成は、過去数回の改訂があったけれども、大きな変化はなかっ た。. 知的部分である前段の「広い視野に立って」の意味については、文部省. は何も明示していない。しかし筆者は、次の2っの場合を考えている。1 っは、社会事象を地理的側面のみ、あるいは歴史的側面のみというように、. 視点を限定しないで、広い視点で見るという意味である。換言すれば、社. 会事象を総合的視点から見るということである。2っは、社会事象を一方 的で、独善的な立場で見ないという意味である。換言すれば、実証的、科 学的に社会事象を見るということである。 次に、中学校学習指導要領と比較してみよう。中学校学習指導要領では、 「我が国の国土と歴史に対する理解を深め、公民としての基礎的教養を培. い」と、地理的分野、歴史的分野、公民的分野の3分野について述べてい る。高校で、それに触れていないのは、科目が選択制になっているためと 考えられる。この3分野制に代り、高等学校学習指導要領では「社会と人 間についての理解と認識を深め」となっている。これは、社会科の何れの 科目を選択しても、つまり「地理」を選択しても、その目標は「社会と人 間についての理解と認識を深め」る為であることを意味している。 後段の実践的な目標の部分では、中学校学習指導要領では「・。・社会 の形成者として必要な公民的資質の基礎を養う」というのに対し、高等学 校学習指導要領では「ゼ・・社会の有為な形成者として必要な公民的資質 を養う」となっている。すなわち、高校では「三管な」という言葉を入れ て、より積極的に実用主義的側面を強調している。また、高校において.
(11) 6’. 「基礎」が消されているのは、高校教育が完成教育として位置づけられて いるからである。このように、両者とも教養主義的な面と実用主義的な面 を社会科の目標にしている。この点では、両者に差異はない。∵しかし、高. 校社会科においては、分野制に対して科目制、公民的資質の基礎に対して、 公民的資質の完成を目標にしている。. 次に「地理」の目標についてみてみよう。学習指導要領には、以下のよ うに記されている。. 世界の人々の生活の地域的特色とその動向を、自然環境及び社会環境と のかかわりにおいて理解させ、現代世界に対する地理的な認識を養うと ともに、国際社会における日本の立場と役割について考えさせる。. この目標は、3っの部分から構成されている。第1は、「世界の人々の 生活の地域的特色とその動向を、目今環境及び社会環境とのかかわりにお いて理解させ、」までの部分である。ここでは、地理学習の対象とその探 究視点が述べられている。この対象は、地理学用語では「地理的事象」に 該当する。学習指導要領では、この地理的事象を環境の視点から探究する ように指示している。これは、系統地理的アプローチを示したものといえ よう。第2は、「現代世界に対する地理的な認識を養う」の部分である。 「現代世界」は、「地域」と置き換えてもよいであろう。「地理的な認識 を養う」は知識を得ることと同時に能力目標を含めて示している。つまり、. ここでは地域認識力を養う、地誌的アプローチを示しているといえよう。. 第3は、最後の「国際社会における日本の立場と役割について考えさせる」 の部分である。ここでは、国際社会における日本の立場と役割について考 えることができる、国際社会人としての資質の育成を示している。以上の. ように「地理」は、第1の系統地理的アプローチによる、第2の地誌的ア プロ㌣チによる、それぞれの学習によって、国際社会に生きる日本人とし ての資質の育成を目標としている。なお,高校地理教育における系統地理 と地誌とに関する条件については、前項⑥で取り上げられている。. 以上のことから、社会科の一科目「地理」としての高校地理教育の規定 条件は、以下のようになる。. @高校地理教育は、総合的、科学的視野を伸ばすように、あるいは、そ のための一部を分担するように、その体系化がなされねばならない。 ◎高校地理教育は、社会科の目標を達成するための一科目であり、「社.
(12) 7 会と人間についての理解と認識を深め」る視点から、体系が構成され なければならない。 ’①高校地理教育は、公民的資質、とりわけ国際人としての資質の育成に 寄与するものでなければならない。 〈参考文献〉. (1)文部省・r高等学校学習指導要領解説』社会科編p.3 一橋出版. 1979 (2)星村平和r新しい歴史学習の構想』pp.14∼15 東京法令. 1980 (3)菊地利夫編著r高校地理教育の原理と方法』p.2 古今書院. 1976 (4)上掲(1)pp..116∼117 第2節生徒の実態からの規定 1 高校進学率の上昇とその問題点. 中学校卒業生の高校進学率は、年々上昇し、1974年以来90%以上 を記録す為ホうになった。db 高校への進学率は、とりわけ、196q年 代のわが国の高度経済成長とともに急速1こ上昇してきた。1980年代に なると、停滞もしくは、後退情況が現れるが、ほぼ94%前後で推移して いる。一方、学業の途中で退学する高校生も80年以降、増加するように なった。〔2〕中途退学者率をみると、普通科と専門学科(職業技術)では、. 後者が倍以上の退学率を示している。また私立(表中の数値は1982年 のデb一一Lタ)、と傘立≧を比較すると、前者が倍以上の高率となっている。な. お、定時制が異常に高率であるのは、働きながら学ぶという定時制の特殊 事情のためと考えられる。. 以上のように現在の高等学校教育においては、公立の普通高校より職業 高校に、公立の職業高校よりは私立高校に、さらに定時制高校にと問題の 深刻さが増している。さらに現在の高校には、退学予備軍といわれる原級. 留置者が0。6%∼0。7%いるといわれている。 それでは中途退学する理由は何であろうか。日本教育年鑑(1985年.
(13) 8’. 版)〔3〕によれば、退学の事由別割合は次の通りである。. ①学校生活・学業不適応(19.2%) ②学業不振(19.1%) ③進路変更(17.8%) ④問題行動(12.4%) ⑤家庭の事情(9.1%) その他の理由は、病:気、けが、死亡あるいは経済的理由等となっている。. 以上のように学業不振と問題行動だけで31.5%、それに学校生活・. 学業不適応を合わせると、40;7%にもなる。学業についていけず、学 習に興味を失い、問題行動に走る。問題行動に走るから、学習についてい けなくなるという具合に、3者はそれぞれ関連しあっていると考えられる。. 高校生の量的拡大による非行問題について、柴野昌山は以下のように述べ ている。. 青少年非行は、基本的に満たされぬ不満を代償的に満足させようとする 逸脱行為であり、自己疎外行為であるという意味で、教育の場における 非行の増加は、教育への疎外的関与の徴候であるといわざるをえない。 (十]. 以上のように進学率が90%を越え、準義窮化してきている今日の高等 学校では、多くの生徒にとっては疎外的関与でしかありえず、従来の選抜 されてきたエリートのみを対象とする教育では、もはや対応できなくなっ てきていることを示している。高校地理教育においても、従来多くみられ た教科書を中心とした講義式の授業ばかりでは、対応しきれないことを意 味している。. 一方、高等学校を卒業した生徒はどのような進蕗をとるのであろうか。. 教育統計⑥によると、現在では高校生の約3割強が進学している。進学率. は高校入学率と同じく、60年代後半および70年代に上昇している。し かし上昇率は、高等学校進学率ほど高くはない。残りの6割弱が一般社会 に出ていくことになる。従って、高校地理教育には、次のような要請がな されるであろう。先ず進学老にとっては、高等教育機関において、より高. 度な科学的研究ができる能力の養成が求められる。後老にとっては、実社 会で実際に役立っ応用的知識と能力が求められる。また社会や、地域の周 題に積極的に参加していく公民的資質の養成も求められる。.
(14) 以上、高校進学率が上昇し、準義務教育化した今日の高等学校教育の情 況および彼等の進路の情況から、高校地理教育の体系に要請される条件は、. 以下の2点である。 ⑧高校地理教育は、選抜されたエリートとレての高校生という、従来の 固定観念にとらわれることなく、どのような低いレベルの生徒にも、 理解できる内容が含まれている、体系でなくてはならない。 ⑤高校地理教育は、高等学校卒業後にも、より一層、科学的研究ができ るような、基礎的能力および知識が養えるものでなくてはならない。 なお、高等学校を、学校教育の最後として、社会に出ていく者にとって は、前項であげた①が高校地理教育の重要な規定条件となる。. 2 現代高校生の特徴 高校生は青年期の前期にあたる。ランディス(Lapdis,P.H.)の分類に. よれば高校生は、Adolescenceの後半からYouthの前半に位置づけられる。 〔6〕次にハヴィガースト(Havighurst, R. J.)による発達課題をみて. みると、青年期に達成すべき課題として、以下の課題をあげている。 ①同年輩の男女両性との新たな、より成熟した関係をつくりあげること ②男性または女性としての、それぞれの社会的役割を遂行すること ③自分の身体的特徴を受け入れ、身体を効果的に使用すること ④両親や他の成人からの情緒的な独立を達成すること ⑤経済的な独立の自信を確立すること ⑥職業を選択し、それの準備をすること ⑦結婚と家庭生活の準備をすること ⑧市民としての資質に必要な知的技能と概念を発達させること ⑨社会的責任のある行動を望み、それを達成すること ⑩行動の指針としての一連の価値や倫理体系を獲得すること〔7〕. 以上のような10の課題は、モラトリアム人間化の進んでいる現代の高 校生にとっては、やや厳しい課題ではあるが、いずれも青年期に達成が期 待されて:おり、また可能とされている課題といえよう。従って、一人ひと りにとっては大人となるために青年期は極めて大切な時期といえよう。. この青年期は身体的に著しく成長し、形態的発展は頂点に達する。また、.
(15) 10 心理的にも、スタンレー・ホール(Hall,G.S.)が「疾風怒濤」、(storm and stress)〔8)の時代と称したごとく、激しくゆれ動く。. エリクソン(Erikson,E』.,によれば、青年期は「自我同一性の危機」. と称している。〔9〕現代は情報化社会である、様々な価値観に基づく情報 にさらされる。社会そのものが高度技術革新とあいまって、ますます巨大 化し、複雑化してくる。青年期の流動的な自我構造は、それへの対応に困 惑し、目己の統一性を失う危険性にさらされる。また福井康之は青年期の 目潰のあり方について以下のように述べている。. 青年期の変化は急激な生理学的変化であり、性衝動の発動である。そし て知的な発達は、これら目立の変化を自我に鋭敏に意識させるというこ とである。. これらの諸変化と社会参加による新しい世界とを調和的に統合するこ とは、複雑な現代の社会や時代精神のなかで容易ではない。この統合す る課題を達成しているという自我の程度によって、青年期の自我のあり 方は、自我同一性の獲得とその混乱を両極とするパーソナリティを備え ることになる。〔lm. しかし、一方では、自己実現をめざして挑戦していくのも青年期の特徴 である。オルポート(Allport,G. W.)によれば、自我の発達過程から、 青年期は「固右的希求(propriate striving)」Oi)を備えている時期で あるという。固右的希求とは、単に、環境の要請に応じて、自己を調整す るだけでは満足できず、新しい自己を確立するために、冒険し、試してみ たいという欲求をいう。つまり、青年期は喪亡的希求による「目己実現に 向う時代」aasであるといえよう。. 現在の高校生を以上のようにみるとき、高校生一人ひとりが身体的にも 精神的にも、極めて変化の激しい時期にあり、時には、強く自己を確立し ているようにみえながら、同時にそれに耐えきれず挫折に向う、その両端 を合わせもつ人格形成期にあるといえよう。従って、現在の高校生は極め て多様な個性をもつ集団となる。. 以上の高校生の心理学的特徴から、高校地理教育に要請される条件は以 下のようになる。. ①高校地理教育の体系は、生徒のそれぞれの個性に対応ができるように、 様々な授業内容、授業方法の展開可能性のあるものでなければならな VN o.
(16) 11 3 生徒のレディネスからの規定 高校生は身体的成長が頂点を究めるが、知的側面も急速に発達する。 ピアジェ(IP.iaget,J.)の認識の発達段階では、高校生は最後の時期とし. て1「形式的操作期」の後期に該当する。㈹ この形式的操作期では、実 在しないものでも、論理的に思考が可能となり、仮説・演繹による推理が できるようになる。つまり、より科学的な論理的思考が可能となるのであ. る。ピアジェによれば、11∼15才、つまり小学校高学年から中学校の 時期にこの形式的操作が完成するといっているが、15才までは、形式的 操作をおこなうことができても、まだ回り道をして明快ではないという。. それに対して、15才以後の高校生の時期になると「洗練され、体系化さ れた法則を用いるようになり、推論もより抽象的になる。そして、ほとん どの青年は、自発的に、科学的・哲学的理論に興味を示し、社会的・政治 的イデオロギーに心を奪われるが、観念的である。また、自分自身の思考 についても分析的に内省する」0舶ことができるようになるといわれる。 ・以上のような高校生の知的側面をみれば、高校地理教育においては、知. 識の単なる記憶学習では無意味であり、より形式的操作能力を発達させて いくような学習が必要である。 しかし・一方において・最近の高校生め量的拡大‘・伴う勢増大が知的. 学習面において深刻な問題となってきている。現在のように、高校教育が、 トロウ(Trow,M.)がいう、マス化からユニバーサル化に進んでくると、. 「進学意欲や進学目的が不明確になり、ある場合には、本人の意志とは無 関係に進学が決められるという不本意進学」aE]が増加する。そして、「「青. 少年の高校教育への関与を疎外的なものにする。青少年にとって高校生活 は、よそよそしいものとなり、それ自体に本来的意味を見出すことができ ず、学歴取得や就職のための手段としているにすぎないという状況が生ま れる」aoのである。従って、進学意欲の低下とともに生徒間の学力格差が 拡大し、学習指導要領に準拠した一律の授業は、もはや成立しえなくなっ てきている。星村平和は生徒の学習実態について以下のような諸点をあげ ている。a7〕. ①基礎的知識の欠如… 教科書読解力及びまとめる力なし。 ②物事を即物的に把握する傾向が強い。 ③学習に対して無関心、無感動。.
(17) S2 ④クイズ的、断片的な知識受容にならされている。. ⑤情報社会の影響をもろに受け、授業も1つの情報としか受とらない。 これらの高校生に対して、如何にして、学習に興味・関心をもたせ、高 校地理教育を成立させるかが、現場の実践レベルにおいて最も大きな課題 となっている。以上のような高校生の知的発達の特徴、および知的興味・ 関心のレベルから、高校地理教育に要請される条件は、以下の通りである。 ⑦高校地理教育は、形式的操作ができる生徒、それができない生徒それ ぞれの知的興味・関心を呼び起こす授業メニューが用意されていなけ ればならない。 〈参考文献〉. (1)日本教育年鑑刊行委員会編r日本教育年鑑』1985年版p。81 ぎょうせい 1984 (2)上掲(1)p。86. (3)上掲(1)p.160 (4)柴野昌山r現代の青年』p.160 第一法規 1981 (5)上掲(1)p.89 (6)上掲(4)p.10 (7)津留宏r高校生の心理』pp.171∼172 大日本図書1981 (8)上掲(4)p.21 (9)福井康之r青年期の不安と成長』p.155 右心閣 1980. (10)上掲(9)p.159 (11)上掲(9)p.107 (12)上掲(9)p.107 (13)リチャード・エヴァンズ著、宇津木保訳『ピアジェとの対話』. (誠信ピアジェ選書3)pp.144∼147 誠信書房 1975. (14)上掲(9)pp.46∼47 (15)上掲(4)p.159 (16)上i渇(4)p.159「 (17)星村平和r新しい歴史学習の構想』p.24 東京法令 1980.
(18) 13 第3節現代社会からの要請 1’. サ代社会の特徴. 現代社会の特徴は、様々な人々によって、それぞれの立場から論議され、 今や論議されっくされた感がある。その中から高校地理教育を規定する視 点から選べば、以下の3名の指摘が示唆に富むものである。 (1)星村平和による現代社会の特徴d〕. ①情報過多の社会 ②高密度社会 ③巨大化社会 ④国際化社会 ⑤人間の尊重性喪失の社会 (2)菊地利夫による現代社会の特徴ω ①情報化社会 ②変化の社会 (3)朝倉隆太郎による現代社会の特徴。3〕. ①生産組織の巨大化 ②政治機構の巨大化と政治権力の集中 ③都市化の進展 ④消費革命と大衆文化の成立 上記の3名の指摘は、それぞれの分析視点が異なるので文言こそ違うが、 何れも現代あるいは近未来社会の特徴を的確に表現しているといえよう。 以上のような現代社会の特徴は歴史的にみれば、人類の社会が原始狩猟社 会から農業化社会へ、農業化社会から工業化社会へ、そして三業化社会か ら脱主業化社会入と「第三の波」に覆われた社会の特徴とみることができ る。つまり、現代社会は人類の歴史上、三番目の大きな転換期を迎え、そ の波が急速に拡大しつつある時期にあるといえよう。このような社会に生 き、あるいは、このような社会を担おうとしている生徒に対する教育は、. もはや従来の工業化社会の教育では、通用しなくなくなってきている。新 しい皮袋には新しい酒が注ぎ込まれねばならない。. それでは、この現代社会から未来に生きようとする生徒には、どのよう な能力が求められるであろうか。.
(19) 14 2 現代社会が必要とする資質 現代社会が情報化社会という人類の第三の大転換期にあるとすれば、ま ず、その社会の形成老に対し、社会の変化に適応することを求める。次に、. その社会が破綻を来たさないように、転換期を乗り越え、調和的に発展す るように、よき社会の担い手になることを要請するであろう。つまり、時. 代の変化に適応できる能力と社会を調和的に発展させる担い手となる資質 が要求されることになる。. それでは、時代の変化に適応できる能力とは、どのようなものであろう か。. これは、生徒一人ひとりが転換期の社会で生き抜く能力と換言されよう。 第1に、情報過多の社会であるから、その情報処理能力が求められる。 おびただしい情報の内、質の高い、本当に必要な情報をどのようにして自. 分のものにするか、そのような技術がまず必要とされる。(A1) 第2に、入手した情報の真偽、価値の有無の判断能力が求められる。情 報の真偽は、分析的能力であり、価値の右筆の判断能力は、総合的思考能. 力である。(A2) 第3に、以上のような技術、能力を保持あるいは更に伸ばしていくため には一人ひとりが常に学習を継続しておく必要がある。すなわち、生涯学. 習あるいは自己教育力の意欲と能力が求められる。(A3) 第4に、情報化やハイテク化の進展は、単純、画一一化を促し、人間性お よび個性を喪失せしめる。一人ひとりが自己のアイデンティテーを堅持し、. 人間尊重の視点に立った哲学が求められる。(A4) 次に現代社会を調和的に発展させる担い手としての能力とはどのような ものであろうか。. 第1に、社会に対し、興味・関心をいだき、積極的に社会に参加する態. 度と能力が必要とされる。(B1) 第2に、情報化社会である以上、質の高い情報の提供者としての能力が. 必要とされる。(B2) 第3に、函際化社会で活躍できる能力が必要とされる。それには、異文 化に対する、科学的かっ共感的理解が求められる。(B3) 第4に、環境、資源、人ロ問題が、地球的視野からみた今日の世界にと って最大の課題となっている。現代社会が、グローバル的に調和的発展を.
(20) 15 するためには、上記の課題についての豊かな知識と的確な判断能力が必要. とされる。(B4) 昭和51年12月の教育課程審議会の答申は、社会科の改善に対して、 次の3つの事項を強調した。 ①人魂尊重の立場を基本とすること ②環境や資源の重要性についての正しい認識を育てること ③国際理解を深めること. 以上の3点は上述した時代の変化に適応するための能力A4と、担い手 としての能力のB3、 B 4に該当している。それでは、このような現代社 会が要請する能力の、どの側面を高校地理教育は分担するのであろうか。. 適応するための能力では、A1およびA 2、担い手としての能力では、. B1∼B4の諸点が、多少の軽重はあっても高校地理教育にとって、特に 重要な視点といえよう。この6点を比較吟味すると、A1とB2は、情報 処理の技術と能力とにまとめることができる。A2、 B 3、 B 4は、国際. 問題、環境、資源等の情報に対し、科学的に分析し、総合的に判断できる 能力にまとめられる。. 以上のことから、現代社会の要請からの高校地理教育における規定条件 は、以下のように要約して示される。. ⑪高校地理教育は、社会に対し、興味・関心を抱き、積極的に社会に参 加する態度と能力が養成されるものでなければならない。 ①高校地理教育は、情報処理の技術と能力が養成されるものでなければ ならない。. @高校地理教育は、情報に対し、科学的に分析し、総合的に判断できる 能力が養成されるものでなければならない。. なお、適応するための能力のA3、 A 4は、社会科あるいは教育全体の 範疇に属するものである。従って、高校地理教育も当然それ等を視界の中 に留めて置くべきであろう。. 以上、高校地理教育を規定する三つの要因から、その条件を導出してき た。第4の要因「地理学の成果の活用」については、章を改めて考察する。 ◎∼㊤までをまとめると以下のようになる。. ◎高校地理教育の位置づけ.
(21) 16 1 高校地理教育は高校2∼3年次に履修する選択科目として位置づけ られる。⑤ ◎高校地理教育の内容構成 2 高校地理教育の内容と:方法は、系統地理(人文地理)と地誌的内容 を総合して構成する。⑥、⑥ ◎高校地理教育の目標. 3 科学的見方、科学的思考力が形成されること。とりわけ、分析と総 合の能力が調和的に形成されること。@、⑪、@. 4 読図、図化、情報処理等、地理的事象や地域の表現、分析技術が習 得されること。①. 5 地域(小地域から地球全体までを含む。以下同じ)に関わる質の高 い、基本的な知識が習得されること。⑪ 6 地域(自然を含む)に対して、興ee e関心を抱き、地域問題に積極 的に取り組むような態度が形成されること。 また、国際社会で活 躍できる基礎が形成されること。①、⑱ ◎高校地理教育体系化の留意点. 7 高校地理教育の体系化には、小、中、高の一貫性および生涯教育の 視点が配慮されること。⑤ 8 高校地理教育の体系は、生徒の能力・興味・関心の多様性に対応で きるものであること。⑧、⑪、① 〈参考文献〉. (1)星村平和『新しい歴史学習の構想』pp。80∼81 東京法令. 1980 (2)菊地利夫編著『高校地理教育の原理と方法』p.27 古今書院. 1976 (3)朝倉隆太郎「現代と:地理教育」町田貞・篠原昭雄編『地理教育の理. 論』(社会科地理教育講座1)pp.7∼9 明治図書 1984.
(22) 17. 第二章. 地理学概念と方法の地理学史的考察 高校地理教育の体系化には、「地理学の成果の活用」が大きな規定条件 であった。本章では、高校地理教育の体系に必要な地理学の概念と方法を 中心に地理学史的に考察する。考察対象は、高校地理教育の体系化の視点. から、近代地理学成立以後、地理学思想史上、最も影響力のあった4名の 地理学者の思想と現代の地理学に影響を与えた「新しい地理学」の思想で ある。. 第1節近代地理学の成立 1 地理的知識の拡大 近代地理学においては、アレキサンダー・フォン・フンボルト(以下フ ンボルトと略記する)とカール・リッター(以下リッターと略記する)の 二人が近代地理学の「創始者」(ルネ・クロジェ)〔bとも、「先駆者」 (ドゥ・マルト.ンヌ)〔2)ともいわれている。. ところで、かれら二名が出現する以前の地理学はどのような状況にあっ たであろうか。また二人によってなぜ近代地理学の成立が可能となったで あろうか。近代地理学の意義を明確にする意味から、まずこの周題から考 察を進めていく。. フンボJvlbs’生まれたのは1769年で、彼の代表的著書rコスモス』が. 発表されたのが1845∼58年であった。つまり、フンボルトは18世 紀末から19世紀前半にかけて活躍したのであり、従って、近代地理学も その頃に樹立したことになる。それでは、この19世紀以前におけるヨー ロッパの地理学はどのような内容であったであろうか。. 「ヨーロッパにおいては、19世紀にいたるまで、地理学は通常地球の 記述、すなわちすべての地的現象の記述であると考えられていた」〔3〕とい. われる。とりわけ18世紀以前においては、ヨーロッパ人にとって地理上 の発見の時代であり、遠く離れた地域への探検が盛んであった。すなわち.
(23) 18 地理的知識の外延的伸張の時代であったのである。地誌でいえば、キリス ト教的世界観に基づく宇宙および世界の記載を目的としたコスモグラフィ. ーが主流をなしていた。しかし、『中世以来宇宙誌Cosmgraphiaの名で 行われていた地理学は、およそ17世紀に入るにつれGeographiaとよば れるものと交替をはじめる』c+)ことになる。さらに18世紀に入ると、探 検も峠を越し、外から内に目が向けられるようになった。『知識の外延的 伸張への努力は今やその内包的充実への転換を迫られる時期にあったとい い得る』〔5〕のである。. 以上のように、フンボルトが出現する時代には、外的にも内的にも地理 的知識が大いに拡大してきていた。この地理的知識の拡大がやがて近代地 理学の成立を促すことになる。(6]すなわち、推論し、説明する近代地理 学にとっては、まず、地球の全表面にかかわる情報の量的拡大が必要条件 であったのである。しかし、地理的知識の拡大は、近代地理学の成立にと っては、必要条件であっても十分条件ではない。地理思想の科学化も必要 であったのである。. 2 フンボルト以前の地理学思想. 18世紀頃のヨーロッパにおける地理学は「右用主義」とよばれ「君主 ・政治家・将軍・旅行家・神学者・歴史家・系譜学者・考古家・商人・航 海老・農夫などによって右用であるというのがその存在理由であり、且つ 目標であった。」Φ従ってその内容は∫政治的区分を基として、その各 部の詳細な記述」〔8〕となり、断片的であり、羅列的とならざるを得なかっ た。. しかし、18世紀後半になるとこの試用主義からの脱却が芽生えはじめ てきた。これがいわゆる「純粋地理学」の運動である。地理学は他のため にあるのでなく、地理学それ目体に、その目的を見出そうとするものであ った。この「純粋地理学」運動が近代地理学成立を促進する基盤となった のである。それでは、この「純粋地理学」化の試みはどのようなものであ ったであろうか。. これらの運動は、当時学術面で最も進んでいたといわれるゲッチンゲン.
(24) 19 の地において、ブッシング(Busching 1724∼93)、ガッテレール(Gat terer 1’727一・L97)、ツォイネ(Zeune 1778』∼1853)等によって展開され. た。この「純粋地理学」運動では、「地理学にとって不純不要なもの、他 科学の要素をなすものなどを、すべて取り去ろう」〔9〕というものであった。. そして、地理学の対象は永続的なものでなくてはならないとして「統計学 を切り捨てることによって純化への第一歩」㈹とした。このような純化の 道は必然的に「自然的」地理学を:求めていくこととなる。ツォイネの方法. 論では、地表の現象を関連あるものとして把握し、地表を自然区分し、次 に諸現:象の間に因果的に作用している自然法則性に於てこれを捉えようと するものであった。. 以上のように、フンボルトに影響を与えたとされる当時の地理学の思想 は、’有用主義的知識の目録の地理学からの脱皮が展開されっっあったので ある。 』〈参考文献〉. (1)ルネ・クロゼェ著、野田早苗訳r地理学史』p.110、白水社. 1970 (2)飯塚浩二r人文地理学』p.52 右斐閣 1950 (3)飯本信之「地理学史」辻村太郎編r地理学本質論』(新地理学講座. 第2巻)p.80 朝倉書店 1955 (4)野間三郎r近代地理学の潮流』p.2 大明堂 1963 (5)上掲(4)p.2 (6)飯塚浩二「社会科地理の基本」’(1961)『飯塚浩二著作集8』. pp.19∼20 平凡社 1975 (7)上掲(4)p.3. (8)上掲く3)p.80 (9)上掲(4)p。5. (10)上掲(4)p.5 第2節 フンボルトの地理学思想 1 『コスモス』にみられるフンボルトの思想.
(25) 2e 近代地理学の先駆者フンボルトの代表的著書は『コスモス』であるとい われている。従ってそのrコスモス』が地理学書と誤解される場合がしば しばある。例えば、田田ツホーンはKosmos= Geographieの前提の基に rコスモス』を解説しており、誤解を拡大したといわれる。地理学につい て記述されている箇所でも、野間三郎は「実際は、そこには自然とかWelt− ansichtとかNaturforschungについて説かれてあっても、地理学について 説かれてあるのではない」〔Dと指摘している』『コスモス』は文字通り. 「宇宙」の意味であって決して地理学の分野に罎小化されない。このrコ スモス』は、彼の自然哲学を分かりやすく解説したもので、決して地理学 について述べたものではなかった。rコスモス』では、以下のような内容 が述べられている。. 第1巻及び第2巻では、科学は難解だという一般人に対し、興味・関心 を抱かせ、1自然観察の世界に誘う導入部分である。とりわけ第2巻は、. rl・遠洋航海の発足点としての地中海」から「8・近時における科学的 研究の多様性とその内的関係」のように自然的世界観が歴史的に記述され ており、「自然科学史の最初の作品」のともいわれている。そして具体的 な科学的観察の成果としての内容は、第3巻と第4巻にまとめられている。 地理的分野は第4巻のわずか1巻に記述されているにすぎない。しかも第 4巻の内容は、地球の大きさ、地球内部の熱とその分布.地球体の磁気作 用、地震、温泉、火山等のように現在の地理的事象よりは、むしろ地質学 的内容が多くなっている。. このようにrKosmsの構成は人々が誤解するように決して自然地理学、 人文地理学全体についての体系的考察でないことは一見明瞭である」C3)し、. フンボルトの目的は別のところにあったのである。バンスも「Hu皿boldt は宇宙の全体的把握のために地理学自体についてはあまり注意を払わなか った。彼自身としては普遍的世界像の中心に地理学を据えることも出来た ろうに。自然諸科学の中にとらえられて、彼はこの高い課題の傍を通りす ぎてしまった」C+)と述べている。それでは、この『コスモス』におけるフ ンボルトの自然哲学思想はどのようなものであったであろうか。 彼はフォルシュ本甲(J ohann Georg Forster 1729∼94)から大きな. 影響を受けた。従ってフンボルトの思想は「多彩極まりない素材を一つの 自然的世界誌というべきものにvpl’Saげて」いくForster的自然観ともいわ.
(26) 21 れている。すなわち唖然を力学的、機械論的にみるのではなく、右機的に 統一性をもった、生きている全体としての自然をみようとするものである。 そしてそれは全体としての自然(宇宙)を支配するイデーの究明に他なら なかった。それでは、このイデーとはどのような概念であろうか。 そこには、いくらか神秘的なものの存在が是認されているようである。 鴨沢巌は「自然界における神の与えたもうた調和への信仰」とか「神的絶 対者のあらわれとしての、自然界における調和の確信というイデオロギー 的根拠から出発したもの」と指摘し、フンボルトの思想は「近代科学のそ れとは大いに類を異にしていた」− c5〕と述べている。. 一方、ペシェルは、リッターの目的論的思想を厳しく批判したのに対し、. フンボルトの思想に対しては批判の目を向けていない。一般にもフンボル トは実証的科学者としての認識が強い。しかし鴨二二の指摘の通り、フン ボルトにおいても、リッターと同様、神秘性を許容する当時のロマン主義 哲学思想からは抜け切ることができなかったのである。. しかし、それでいてもフンボルトは近代地理学の先駆者であり、偉大な 自然科学者であるという評価に変りはない。それは何故であろうか。それ は、諸現象の因果関係の追求において実証的な科学的方法を確立したから だといえよう。それでは、フンボルトにみられる科学的方法とはどのよう なものであったであろうか。具体的に植物地理学を例に、検討してみよう。. 2 フンボルトにおける植物地理学 「群落学」の父といわれるヴィルディノウ(Willdenow)から植物学を 学んだフンボルトは植物を固体としてみるのではなく相観的にみる。そし てこの植物相観の因果関係の説明原理としては生態学的方法を使う。すな わち植物全体が互いに結び合わされている結合関係を追求し、それが成育 している場所の気候、土壌、地形等から説明しようとするものである。さ らに彼は、アメリカ旅行やシベリア旅行にみられるごとく、個々の事象を つねに比較分類し、一般に通ずる規則的なものに帰納させ、法則性を導出 する。. このようなフンボルトの植物地理学にみられる方法は、次の3っの側面 に分類されよう。.
(27) 22 a,相観的把握にみられる形態学的:方法の側面. b,諸現象間の因果的結合関係を究明しようとする関係科学あるいは生 態学的側面. c,普遍的法則性を追求しようとする通論的地理学の側面 第1の側面では、フンボルトは植物を群落として視覚的に観察する。彼 は絵画を学び、そのセンスにたけていたため、事象をみる場合に極めて視 覚的であったといわれる。この視覚的把握は、対象を分析的にみるのでは なく全体像としてみることと形態学的にみることとに関係する。前者の場 合では、地形、:気候、土壌、動植物等を個々に独立事象として取り上げる. のでなく、自然全体としての自然相観、つまり景観として把握することに なる。この意味において、フンボルトによる自然像の相観的把握は景観地 理学の基礎を築いたものといえよう。野間三郎は「人々はあまり指摘しな いが実に彼は『景観』概念の創始者であったというべきである」㈲と述べ ている。後者の形態学的把握は、ペシェル、リヒトホーーフェン達によって 地形学へと発展的に継承されていくことになる。 −次に第2の因果関係的把握の側面をみてみよう。フンボルトは.以下のよ うに述べている。. たとえそれが新しいものであるにしても、孤立的な事実に博識ならんよ. りは、すでに観察ずみの事実の間に掛わり合いを明らかにすることの方 を好む。〔7). このように彼は諸事象の結合関係や相互的作用関係に大きな関心を示し た。例えば彼は、植生の分布を高度との関係で説明している。すなわち寒. 帯、温帯、熱帯を更に細分し、それぞれの高度の各段階における植物の配 列を観察することによって、植生分布と高度との関係を明らかにした。こ の例は2つ要素間の関係であったが、植物相観のような有機的統一体を説 明するのは、地形、気候、土壌など複数の因果的結合関係の究明が必要と なる。このような地理的事象を自然環境から説明しようとする方法は生態 学あるいは関係科学としての地理学の萌芽であったといえよう。「生態学」 の提唱者はフンボルトより少し後で活躍するヘッケル(Haeckel.F.H)で あるが、生態学的思想や方法の基礎はフンボルトによって既に確立されて いたとみてよい。この生態学的方法は、植物と自然環境との関係、さらに.
(28) 23 人間と自然環境との関係の考察へと進んでいく。そしてこの方向は必然的 に諸現象間の相関関係や結合関係の考察へと発展するのである。. 次に第3の法則科学とそての地理学の側面をみてみよう。 フンボルト の方法が科学的であるといわれる最大の理由は、観察の計測化および結果 の計量化であったといえよう。例えば、バロメーターによる高度測定、地 形断面図や等温線分布図の作図法は彼によって開発された。また彼は「植 物算術」というフロラ統計により植物分布を数量的に処理した。この手法 が植物分布に関する、多くの法則を発見する大きな鍵となったといわれて いる。例えば、単子葉植物が全顕花植物に対し、熱帯1/5∼1/6、温帯1/. 4、寒帯1/3と極に向って次第に減少するという、植物分布の法則性は統 計的数量処理によって導出されたものであった。このような実証的で計量 的な方法は、他地域との比較を容易にし、普遍的法則性の究明に道を開い た。そしてこの方法は法則科学としての地理学の実質的な確立であった。 以上のように、フンボルトにおける(植物)地理学は、彼の後に発展す. るあらゆる面での地理学の方向性と基礎を確立するものであった6換言す れば、フンボルトの地理学の内容はあまりにも大きく、後世の地理学者は、 フンボルト地理学の一部分ずつを継承し、発展させていったともいえよう。. 従って当然そこには継承されなかった側面もある。何れにしてもフンボル トの部分的継承は、必然的に分化、専門化への道を歩むことになる。. 3 フンボルト地理学からの継承視点 フンボルトは当時の哲学思想の主流をなすロマン主義を背景に、自然を =有機的統一体として把握しようとした。その統一体として神的絶対者が持 ち出されるζとがあっても、しかし彼の研究方法は極めて科学的で、かっ 実証的であったρつまり彼は実証的に観察し・科学的に分析することによ って統一体を支配するイデーを追求しようとしたのであった。我々が彼か ら学ぶべき継承視点は正にここにあるといえよう。. フンボルトは大学人でなかったことや直接の弟子を持たなかったことも あって、リッター一に比べて後世の地理学思想に対する影響が極めて少なか. った。継承されたものは、その哲学思想や体系ではなく、彼が実証した膨 大な科学的知識や手法であった。従ってその後の地理学史的な発展は、そ.
(29) 24 の科学的知識の領域分野ごとに分化、専門化する形で進行したのであった。. 、9世紀の科学史の軽みると地理学の分野。こ限らず、分化専門化の. 方向が主流であった。それは科学が進化、発展を遂げるための必然でもあ った。フンボルト自身、地磁気学や火山学など新しい科学の分野の創始者 とされている。. しかし、フンボルトにとっては、科学の究極の目的は、あくまでも宇宙 を支配し、一切を貫く普遍的なイデーの究明であり、個々の分析的専門研 究はそのための手段であったはずである。つまり専門分野での研究が探ま れば深まるほど、それと他との関係、それと全体との関係、そして全体を 貫く原理と有機的結合の原理が求められねばならなかったのである。現代. の科学は今なお、19世紀から加速されていった専門化の延長線上にある といえよう。この専門科学の独り歩きは科学の著しい発展をもたらすと同 時に様々な行き詰まりを露呈しはじめている。その意味からフンボルトの 『Kosms』的思想は極めて今日的な意義を持っているといえよう。 我々は既に神的絶対者に関わる問題は克服している。従って今日的課題 として我々に必要な継承視点は、それぞれの専門科学として分化していっ た地域に関わる科学の成果をもとに、いかに総合化の論理を究明していく かという点にあるといえよう。. フンボルトから継承すべき地理学の方法論としては、科学的実証的方法 であろう。以上、フンボルトの継承視点をまとめれば、以下の通りである。 ①統合的視点の導入 ②科学的・実証的方法の導入 〈参考文献〉. (1)野間三郎r近代地理学の潮流』p.15 大明堂 1963 (2)上掲(1)p.17. (3)上掲(1)pp.17∼18 .(4)上掲(1)p.20. (5)鴨沢巌r経済地理学ノート』p.23 法政大学出版 1960 (6)上掲(1)p.31 (7)飯塚浩二「地理学発達史」194gr飯塚浩二著作集6』p.33 平凡社 1975.
(30) 25 第3節.リッターの地理学思想 1 リッターの思想背景 近代地理学の先駆者であるフンボルトとリッターはほぼ同時代に活躍し ている。ところで2人の生存年を比較してみると、フンボルトが1769∼18 59年で、リッター一が1779∼1859年であり、リッターはフンボルトより10才 若く、期せずして同年に2人は死亡している。つまりリッターにとってフ ンボルトは先輩であり、論文を通じて、またフランクフルト時代には直接 会って、フンボルトから大きな影響を受けた。そしてフンボルトもリッタ. ーを高く評価し、リッターのrエルトクンデ』の見解に対して賛意を寄せ ている。. 2人がほぼ同時代に生きていたということは、前節で既述したフンボル トの思想背景とほぼ同じであったと考えてよい。つまり、フンボルトのよ うに自然科学分野で活躍していても抜け出せなかった、ドイツロマン主義 の影響である。このドイツロマン主義は当時の思想界の思潮であり、人問 と自然との画壇的結合すなわち右心血目然観を根底とする思想であった。. フンボルトの場合は、有機的結合の原理を科学的、実証的に究明しようと したので、彼の思想背景にあったこのドイツロマン主義的色彩はあまり前 面に出ることはなかった。. しかし、リッターの場合は、この人間と自然との出機的結合を直接に地 理学の課題として取り組んだため、それが目的論として、前面に出ること になる。. 2 リッターの地理学思想 リッターの地理学思想の本質を究めることは極めて困難である。彼の地 理学思想を捉えるには彼の代表作であるrエルトクンデ』の詳細な分析が. 必要となろう。しかしこの『エルトクンデ』は第1版が2巻、第2版が19 巻からなる「膨大な倉庫」に例えられる程で、「殆どこの業績に対して 適当な距離からパースペクティブをっけ得る人はない。観察者は各様に判 断を下すほかない巨象の如きものである」〔nといわれている。 さらにそ れは量的に膨大であるばかりではなく、表現が極めて難解で、しかも記述.
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