版 1979
第3節 高校地理教育の体系モデル 1 体系化の方法
(1)体系構成要素の統合化
これまでに高校地理教育の体系化に必要な条件、内容の骨組とな る地理学の概念と方法および体系化の視点を考察してきた。従って、
残された問題は、それらを体系化のために如何に結びつけ、集約し ていくかということである。そのためには、それぞれの章で得られ た結論の部分を、体系化の全体的視野から比較吟味し、分類してい く必要がある。分類基準は、最も大きな枠組である第一章の高校地 理教育の規定条件とする。その規定条件から導出された枠組は以下 の通りであった。
1 高校地理教育の位置づけ
1 高校地理教育は高校2〜3年次に履修する選択科目として位 置づけられる。
II 高校地理教育の内容構成
2 高校地理教育の内容と方法は、系統地理(人文地理)と地誌 的内容を総合して構成する。
皿 高校地理教育の目標
3 科学的見方、科学的思考力が形成されるこど。とりわけ、分 析と総合の能力が調和的に形成されること。
4 読図、図化、情報処理等、地理的事象や地域の表現、分析技 術が習得されること。
5 地域(小地域から地球全体までを含む。以下同じ)に関わる ・質の高い、基本的な知識が習得されること。
6 地域(自然を含む)に対して、.興味・関心を抱き、地域問題 に積極的に取り組むような態度が形成されること。 また、
国際社会で活躍できる基礎が形成されること。
四 高校地理教育体系化の留意点
7 高校地理教育の体系化には、小、中、高の一貫性および生涯 教育の視点が配慮されること。
8 高校地理教育の体系化は、生徒の能力・興味・関心の多様性
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に対応できるように配慮されること。
以上の枠組に第二章から得られた内容を統合すれば、地理学の概
念はIIの内容構成に、地理学の方法の1〜5は皿の目標3に、地理
学的アプロv一一チの5〜7は四の体系化の留意点に、それぞれより具 体的内容として付加される。次に第三章の結論の内容をみてみよう。10の地理学概念は、高校地理教育における教授内容の中心となる ものであるからIIIの目標5に具体的内容として付加される。同様に して、7類型の地理学の方法は、皿の目標3に具体的内容として付 加される。第四章の体系化の視点は、カリキュラム構成の基本的視 点であるのでNの体系化の留意点に付加される。
以上の統合化によって修正される点は次の通りである。①IIの内 容構成2は、「高校地理教育の内容と:方法は、地理学の概念と方法 に依拠し、系統地理(人文地理)と地誌的内容を総合して構成する」
に改められる。②第二章の地理学の方法と第三章の地理学の方法の 関係は、前老が命題文で概略的表現となっているのに対し、後者が より詳細に類型化されて表現されており、内容的に前門が後者に包 含されている。従って、皿の3は文章の最後に、「具体的には、地 理学の7類型の方法が駆使できるようになること。」を付け加える。
③皿の5の文章の後に「具体的には、10の地理学概念が十分に習
得されること。」を付け加える。なお、留意点は新たに付加されて 計8点になる。これについては、体系化の具体的作業において十分 に配慮されていかなければならない。(2)目標分類と達成目標の明示化
目標を分類する視点は、①小学校指導要録「観点別学習状況」欄 から導出する方法、②ブルーム等の学習目標分類に従う方法、〔1]
③坂元昆・溝上泰の行動目標に依拠する方法〔2)等さまざまである。
それらを比較してみると学習観によって、また文言等によって表現 がまちまちである。しかし大きな枠組で分類すれば、(1)思考目
標、(2)技術目標、(3)知識目標、(4)態度目標の4つに包
含されてしまう。上記の皿の3、4、 5、6の目標は、それぞれ(1)、(2)、(3)、(4)の目標に該当する。まず、(1)
思考目標についてみてみよう。この思考目標は、①分析能力、②分 類・類型化能力、③比較、総合能力、④価値判断能力、⑤検証能力 の5っの能力内容に細分されよう。そして、④価値判断能力を除け ば、7類型の地理学の方法を学習のプロセスとすることによって達 成が可能となろう。次に(2)技術目標についてみてみよう。地理 学習によって達成される最も理想的な技術は、地理学者が身に付け ていると同じ技術を修得することにあろう。現在、一流の地理学者 の技術は何であろうか。それは、フィールド技術、データ処理技術、
論文作成技術の3点に概括されよう。3番目の論文作成技術は、高 校地理教育は地理学者の養成を目的としていないこと、また地理教 育のみでは荷が重すぎ、目標からは除外されよう。従って、高校地 理教育における技術は、⑥フィールド技術、⑦データ処理技術の2 点が中心となる。高校地理教育においては、特に⑥での読図技術、
⑦での図化技術塗ど地図の技術の修得が必須である。続いて(3)
知識目標についてみてみよう。知識には、記述的知識、分析的知識、
説明的知識および概念的知識があり、後者ほど知識の質が良いとい われる。G)従って、高校地理教育での達成目標は、⑧地理学の概 念的知識の習得が中心となる。これは、,10の地理学の概念を教材 化するこどによって達成されるであろう。次に(4)態度目標につ いてみてみよう。この目標は、⑨地理的事象に関する興味・関心、
⑩地域問題に取り組む態度の2つに分類される。地理的事象の中に は、環境など自然的要素も含まれる。また、地域問題には、国際問 題も含まれる。
以上①〜⑩の目標分類は達成目標として以下のように明示される。
(1)思考目標
①地理的事象を地理学的に分析できる。
②地理的事象を分類し、ある基準を設げて類型化することができる。
③データを比較、総合することができる。
④価値基準の対立する地域問題に対し、より誤りの少ない判断がで きる。
⑤地理的事象に関する仮説や価値判断に対して、検証することがで きる。
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(2)技術目標
⑥フィールドに出て、調査、研究ができる。
⑦フィールドから持ち帰ったデータや、他のデータを地図に表現し たり、統計的処理ができる。
(3)知識目標
⑧地理的事象を地理学の概念を使って説明ができる。
(4)態度目標
⑨新聞、テレビ等マスコミに出る地理的情報を積極的に収集する。
⑩地域問題に関係する研究に積極的に取り組む。
(3)目標の体系化
①〜⑩の目標はそれぞれ達成目標として明示したが、それらは、
同質のもではない。特に態度目標は上記のように達成目標として限 定的に明示される部分と、向上目標として明示できない部分とに分 けられる。⑨地理的事象に関する興味・関心、⑩地域問題に取り組 む態度の内容を明示しないまま向上目標とした場合には、地理学習 の全ての授業時間に目標として成り立つ。その場合の態度目標の位 置づけは、地理学習の最終目標となると同時にその授業時間の目標 としては、副次的となる。技術目標の場合もそれだけで単独の目標 として授業が成立する場合もあるが、多くの場合は、方法目標のな かに包含されて副次的となる。また、思考目標と知識目標とは、そ れぞれ別々に明示されるが、実際には両者を機能的に結びつけて実 践される場合が多い。
以上のことから、それぞれの目標の関係は次のように示される。
知識目標 :方法目標 態度目標
技術目標
従って、高校地理教育の体系化は、達成目標として明示される部
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分を除けば、知識目標をベースとして構成されることになる。
2 高校地理教育における体系モデル
高校地理教育の体系モデルの概要は、次の一覧表によって示される。
単元 達成目標 地理学の概念 地理学の方法 その他
1 ⑦⑧ ①
⑤
II
①②⑧ ③ ⑧〜①
皿 ⑧ ④ @⑤、⑧〜①
w
⑤⑧ ⑧ @〜@、⑭V ⑧ ② ⑰〜@
皿 ⑧ ⑦ ⑪〜⑪
田 ④⑧ ⑧ ⑭〜⑨ シミュレーション
皿 ⑧ ⑨ @〜①
医 ⑥⑦⑧ ⑥ ⑥〜⑥ 野外調査
X ⑧
⑥ 一
⑥〜⑥廻 ③⑧ ⑥ @〜⑨
班 ⑧ ⑩ ③〜⑭ シミュレーション
囮 ⑨ ①〜⑩ 発表学習
}四 ⑩ ①〜⑩ 問題解決学習
各単元の配当時間は、1〜IIIIIがそれぞれ10時間程度、 IX〜)皿がそれぞ れ15時間程度が適当であろう。学習の順序は、1〜粗が単純〜複雑な内 容構成になっているので、単元1から学習を進める。ただし、Ptはフィー ルドワークとなっているので学校行事、気候条件等によって最も実行しや すい時期を選ぶ必要がある。なお地理学の:方法は、前の方に記されている
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ものほど単純な方法となっている。実際に学習方法として選択する場合は、
生徒の能力差に応じて選択される必要がある。以下の単元は、島根県松江 市に在住する生徒を想定して作成されている。
1「君のスイート・ホームはどこに建てるか」
単元目的
ここでの達成目標は、⑦と⑧の「位置」である。位置の概念には、絶対 的位置、相対的位置、距離、ネットワーク、メンタルマップ等が含まれ る。位置の概念は、それを表現している地図の技術とともに学習される 必要がある。
教材
通学と通勤、出雲・東京直行便と出雲・津和野間の汽車旅行、山地と平 野、スポーツランドへの道、アンカレッジ等
方法 ◎
II「こちらヒL一ストン」
単元目的
ここでの達成目標は、①、②および⑧の「分布」である。アメリカ合衆 国のサンベルト地帯はかっては農業地帯であったが現在は、石油、宇宙 産業を中心に、東北部の工業地帯に立地していた工業がこの地に移動し つつある。このような地理的事象を分析するには、業種ごとの工場分布 図を10年間隔で作成し、その分布図をもとに類型化(地域区分)を行 えばよい。ここでは、地理学の方法のうちで最も基本的な方法である、
分布・類型化の方法の習得を目的とする。また地理学の概念としての 「分布」には、均等・ランダム・擬集の3っのパターン、現象形態とし ての拡散等の概念が含まれる。
教材
オーストラリアの家畜の分布、ケッペンの気候区分、ホイットルセイー の農業地域区分、出雲平野の家屋の分布、東京六本木のファッションの 拡散、出雲弁と石見弁解
方法 ⑧、⑪、①、①