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肝細胞における脂肪酸酸化とケトン体産生に対するホルモン作用とprotein kinaseの役割

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Academic year: 2021

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肝細胞における脂肪酸酸化とケトン体産生に対する

ホルモン作用とprotein kinaseの役割

著者

小島 秀人

発行年

1987-03-24

(2)

氏名・(本籍) 学位 の種類 学位 記番号 学位授与の要件 学位授与年月日 学位論文題目 こ  じま ひで と 小 島 秀 人  (香川県) 医学博士 医博第32号 学位規則第5条第1項該当 昭和62年3月24日 肝細胞における脂肪酸酸化とケトン体産生に対するホルモン作用と protein kinaseの役割 潔 男 洋 幸 光 田 田 崎 上 繁 野 授 授 授 教 教 教 査 査 査 主 副 副 論 文  内  容  の  要 旨 〔目 的〕 肝ケトン体産生はホルモンによ・り調節されており、グルカゴンおよびカテコラミンはケトン 体産生を上昇させ、臨床上認められる糖尿病性ケトアシドーシス時には重要な役割を持つと考 えられる。しかしケトアシドーシス同様に高度インスリン欠乏状態にありながら高ケトン血症 を示さない非ケトン性高浸透圧性昏睡の病態は明らかでない。またケトン体産生調節は従来よ り細胞内malonyl−CoAの増減で説明されているが、種々のprotein kinaseを介する直 接的なホルモンによるケトン体産生の律速酵素であるcarnitine palmitoy】transferase (以下CPT)活性調節機構の解明も重要である。本研究は 1)肝ケトン体産生調節に関与す るホルモンの役割、2)それらホルモンとCPT活性の関連、3)現在想定されているprotein kinaseのケトン体代謝における機序解明を目的とした。 〔方 法〕 自由摂食下のSD系雄性ラットより0.025%コラゲナーゼ含有緩衝液で肝潅流後に肝細胞を 単離した。脂肪酸酸化は0.3mmol/lアルブミン結合〔UJ4C〕palmitate(比1:1)を 用いてホルモンおよび薬物を加え肝細胞を1時間反応脾置した。反応終了疲ケトン仕はPCA上 清中の14Cを、14C02はscintilamine−OH吸着分画の放射能を測定した。CPT活性は放 射性palmitateを含まない条件で20分間反応脾置後cellを0.5%Triton X−100にて可 溶化後、遠心土樽を用いてpalmityl−CoAからのカルニチン依存性CoA放出率を測定し た。 〔結 果〕 グルカゴンおよびカテコテミン(エビネフリンおよびノルエビネフリン)は脂肪酸酸化を用 量依存的に促進し、それぞれ最大60%、30%増加した。グルカゴンによる促進はadenylate ー41−

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cyclaseを直接活性化するホルスコリンおよびsecond messenger であるdibutyryl cyclic AMP(以下db−CAMP)にても再現された。またカテコラミンによる増加はal −blockerであるプラゾシンおよびカルモジュリンの特異的捨抗剤であるW−7で抑制され a2−blockerであるヨヒンビンでは抑制されなかった。C−Kinaseの活性化を介すると言 われるワゾプレシン、Crkinaseを直接活性化するphorbol12−tetradecanoate13 −aCetate(以下TPA)、さらにsecond messengerであるdiacylglycerolは単独で は作用を持たず、グルカゴンおよびエビネフリンの同時添加にて両ホルモンのケトン体増加作 用を抑制した。 一方CPTはグルカゴンおよびエビネフリンにより活性化され、この作用はVmaxよりもKm を変化させることより酵素の基質に対する親和性の増加によるものであった。エビネフリンに よるCPT活性化はプラゾシン、W−7で抑制されヨヒンビンでは抑制されなかった。またTPA はグルカゴンおよびエビネフリンによるCPT活性化ともに抑制し、〔U−14C〕palmitateを 用いたケトン体産生での結果と平行していた。 またGH、インスリン、T3およびデキサメサゾンは1時間反応にて肝ケトン生産生に有意 の早期作用を認めなかった。 〔考 察〕 グルカゴンによる肝ケトン体産生増加はホルスコリン、db−CAMPにても再現できたこと より、CAMPをsecond messengerとするcAMP−dependent protein kinase (以下A−kinase)によるCPTの燐酸化(Haranoet al)を介すると考えられた。またカ テコラミンによるケトン体産生促進はα1−レセプターを介し、グルカゴン作用同様CPTの基 質に対する親和性の増加であり、Ca十十−Calmodulin−dependent protein kinase

(以下Ca ̄什−kinase)によるCPTの燐酸化の介在が示唆された。 グルカゴンに対するC−kinase系の抑制作用はcAMP産生を抑制することが報告されてお り、adenylate cyclaseでの直接の阻害作用の可能性がある。またカテコラミンに対する 抑制作用はカテコラミンによる細胞内Ca ̄什増加をC−kinaseが抑制的に作用することが考え られる。しかし上記3つの異なるprotein kinaseがCPTの別の部位での燐酸化を介して 活性を調節していることも十分考えられる。 その他のホルモンではGH、インスリン、T3、デキサメサゾンは短期のケトン体産性には 有意の作用は示さなかったが、長期(24時間培養)ではインスリン、高濃度ステロイドはケトン 体産生に抑制的に働き、グルカゴンはCPT合成を誘導する示唆を得たが、今後の検討課題と 考えられる。 高度のインスリン欠乏下で認められる、糖尿病性ケトアシドーシス時には、グルカゴン、カテ コラミンが重要な役割を持ち、一方高ケトン血痕を認めない非ケトン性高浸透圧性昏睡時には 著明な高浸透圧下に上昇を示すワゾプレシンがケトン体産生抑制に重要な役割を持つことが示 唆される。 〔結 論〕 肝ケトン体産生に対しグルカゴンはA−kinaseの活性化を介して、カテコラミンはCa十L −42−

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kinaseの活性化を介してCPTの活性化を行ないケトン体産生を増加させると考えられた。 またワゾプレシンはC−kinaseの活性化を介してA−kinase系、Ca♯−kin・aSe系に抑制 作用を持ち、肝ケトン体産生を調節していることが明らかとなった。

学位論文審査の結果の要旨

インスリン欠乏下においてケトン性昏睡および非ケトン性高浸透圧昏睡の二つの病態が起こ るが、この差異を生ずる機構は未だ明らかではない。本論文はこのような臨床上の問題点を解 明するために、ラット単離肝細胞を用いてケトン体産生におよぽす種々のホルモン作用を検討 し、同時に律速酵素であるcarnitine palmitoyl transferase(CPT)の活性を測定 したものである。

得られた結果は次の通りであった。

1)グルカゴンによるケトン体産生の促進作用はcyclic AMP依存性protein kinase を介するもので、CPTのリン酸化を引き起こす。 2)エビネフリンによるケトン体産生促進作用は、al−レセプターを介するCa2+−Calmo− dulin依存性protein kinaseが関与する。 3)バソプレシンはC,kinaseの活性化を介してグルカゴン、エビネフリンのケトン体産生 促進作用に対し鱈抗阻害すると考えられる。 4)CPT活性もそれぞれケトン体産生と同様の変動を示し、グルカゴン、エビネフリ ンによ るpalmitoyl CoAに対する親和性の増大、バソプレシンによる抑制が観察された。 臨床症例をみると非ケトン性高浸透圧昏睡では高度の脱水により血中バソプレシンが著しい 高値を示し、これがケトーシスの発症に抑制的に作用すると考えられる。 以上、本論文は肝のケトン体産生に対するホルモン作用を明らかにしたもので、従来不詳で あった糖尿病性昏睡の2病型の病態生理の解明に寄与するところ大であり、医学博士の学位論 文として価値あるものと認める。 一43一

参照

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