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ニューロン細胞種決定の分子メカニズム

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Academic year: 2021

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90 ト甲状腺における発現調節機構の検討を行い,Tgの 遺伝子発現機構とは異なることを明らかにした.また これらの研究を通して抗甲状腺剤であるメルカゾール がTgの遺伝子発現を促進することを発見した.  これらの3つの自己抗原の遺伝子を用いて甲状腺疾 患の遺伝子診断が可能かどうかをrestriction frag− ment length polylnorphisms(RFLP)を用いて検討 した.日本人におけるTPO遺伝子解析では米国人と は異なるRFLPsのパターンを示し,人種差が示唆さ れた.また,抗体陽性者,バセドウ病,橋本病におい てRFLPのパターンとの連鎖を検討したが特に有意 な関連性は認められなかった.次に自己免疫性甲状腺 疾患を多発する家系において検討を行ったが,特定の 傾向を示すものの,家系の構成員が少ないため統計学 的には有意とはならなかった.Tg遺伝子においても 疾患および抗体との直接の関連性は認められなかった が,家系により特異的なパターンを示す事が判明した. TSH受容体遺伝子においてはRFLPは認められず, TSH受容体遺伝子は変異を受けにくいことが示唆さ れた.  次にreverse transcription−polymerase chain reac− tion(RT−PCR)を用いて甲状腺以外の組織における TSH受容体の遺伝子発現を検討した.まず,リンパ球 におけるmRNAの存在が確認された.しかし,定量的 RT−PCRを用いた解析では患者および正常人の差は 認めなかったが,その遺伝子発現の調節機構は甲状腺 と異なることが判明した.  甲状腺疾患においても悪性腫瘍が少なからず認めら れることより,その進展における成長因子の関与につ いて検討を行った.甲状腺乳頭癌,およびその周辺の 正常部よりmRNAを抽出し, basidbroblast growth factor(bFGF)およびinsulin−like growth factor (IGF)一1のmRNAをノーザンブロットおよびRT−

PCRで測定したところ腫瘍部で正常部と比較して

bFGF mRNAが多いことが判明した.次に甲状腺乳頭

癌より得られた細胞株(TC)においてもbFGFの

mRNAが多量に発現し,外因性に添加したbFGFが

この細胞の増殖を促進することが判明した.これらの 結果よりbFGFがいわゆるautocrine factorとして この腫瘍細胞の増殖を促進していることが判明した. 次にこのような成長促進因子の遺伝子発現抑制による

治療法の可能性を検討するためbFGFのmRNAに対

するantisense oligonucleotide(AO)を作製した,10

μMの濃度AOはPNA合成を抑制し, AOによる甲

状腺腫瘍増殖の抑制の可能性が示唆された.  ニューロン細胞内決定の分子メカニズム        (第二生理学)三谷 昌平  脳は膨大な数のニューロンにより構成されている, どのようにして複雑な脳が形成されるかという問に対 して先ず,線虫(二6‘郷ηsという比較的単純な実験系 で基本原則を見出す試みを行ってきた.C.♂噌α郷の 全ニューロン(雌雄同体で302個)は形態学的に同定さ れており,受精から成虫に至るまでの全細胞分裂が記 載されている.一方,このような簡単な構造を持つ線 虫においても,幾つかの特徴的な行動をとることがで きることも知られている.弱い機械的刺激に対する感 覚受容もそのうちのひとつであり,6個の触覚受容 ニューロン(ALML/R, AVM, PVM, PLML/R)に より行われている.Chalfieらは触覚受容の異常な変異 体を分離することにより,この細胞の分化に必要とさ れる遺伝子を同定した.即ち,伽一32,%ηo−86,規εo−3 遺伝子が触覚受容ニューロンの分化決定に必要であ り,階層的に作用していることを明らかにした.しか しながら,これらの遺伝子は触覚受容ニューロン以外 でも発現しており,これらの遺伝子の作用のみでは触 覚受容ニューロンの分化決定は達成し得ないことも示 唆されていた.  そこで,触覚受容ニュ一八ツの分化決定に関与する 他の遺伝子を同定する目的で,分化になんらかの変化 を来す約50種類の遺伝子についての変異株での触覚受 容ニューロンの分化決定の変化の有無を検索した.先 ず,耀ひ7遺伝子(触覚受容ニューロンの機能に必要 とされるベータ・チューブリンをコードしている)産 物を,抗体と勿s吻ハイブリダイゼーション法を用い て,野生株動物で染色し,発現パターンを調べた。そ の結果,6個の触覚受容ニューロンが特異的に標識さ れることを明らかにした.さらに,伽一32蹴。−86お よび〃z66−3変異体動物においては,機能で推定されて いたような発現の消失が観察された.また,検索した うちの約5分目1の変異株において彫θ07遺伝子の 発現パターンに変化が認められた.  ヘテロクロニック遺伝子は線虫の発生段階によって 異なる細胞分化を差次的に制御する生体時計のような 役割をしている遺伝子である.これらの遺伝子のうち, 伽一4変異体と1勿一14変異体でAVM/PVM分化が変 化していた.  産卵異常を呈する変異体のうちの¢gμ4と¢g庭6 一1084一

(2)

91 変異体の動物では高率に咽頭部に2個口窺θ6−7の mRNAを発現する細胞が見つかり,これらの細胞は FLPの形質転換により出現したものと考えられた. 昭μ4と8446の遺伝子産物は規60−3を発現してい る細胞が触覚受容ニューロンになるかFLPニューロ ンになるかを規定する遺伝子である可能性が高い.  産卵筋の分化に関与するs醐一4変異体動物におい

て高率に尾部にPLM細胞以外の2個の〃¢66−7の

mRNAを発現する細胞が見つかった.これは本来

PHCニューロンができるはずの細胞である.∫6〃z−4遺 伝特産物はPHCニューロンが規86−3遺伝子を発現 して,触覚受容ニューロンになるのを抑制していると 思われる.  さらに,触覚受容ニューロンの形質を構成する他の 遺伝子4個についても解析を行い,同様の形質転換が 確認された.従って,同定された遺伝子群は触覚受容 ニューロンの細胞種決定因子であると思われる.新た に同定された遺伝子は多くの細胞で発現しているもの であり,上述のような組合せ作用により最終分化の制 御を行っていると考えられる.このような分化決定メ カニズムを使えば,比較的少数の遺伝子のネットワー クにより多数の細胞種を有する神経系を形成すること が可能である.触覚受容ニューロンの分化決定因子の 幾つかは既に遺伝子構造が知られており,哺乳類大脳 でも類似遺伝子の発現が見つかりつつある.線虫での 知見を生かしつつ,哺乳類脳の構築機序の解明を分子 レベルでアプローチして行きたい.  ヒトアデノウイルス12型誘発マウス腫瘍における E1領域遺伝子の組み込みと発現,および樹立細胞株の 特徴        (第一病理学)森川 智子  アデノウイルスは約35,000塩基対の2本鎖直線状の DNAをゲノムとするウイルスである.ヒトアデノウ イルス12型(Ad12)は強発癌性のグループに属し,げっ 歯類において高率に腫瘍を誘発する,発癌遺伝子の局 在部位はウイルス左端部1.3∼11.2マップ単位に位置 するE1領域と言われている.  今回,C3Hf/OKマウス新生仔の脳内および皮下に Ad12を接種して誘発した腫瘍を同系マウスの皮下に 継代維持しているICおよびD腫瘍について,まず,ウ イルス遺伝子の組み込みと発現について検討した. Ad12ゲノム全体およびE1領域部分をprobeとしたサ ザンハイブリダイゼーションにおいて,ウイルスゲノ ムのほぼ全体がIC腫瘍では二倍体細胞あたり約9コ ピー,D腫瘍では約23コピー組み込まれ, IC腫瘍では 少なくとも1箇所,D腫瘍では3箇所の組み込み部位 が推定された.推定される組み込み部位に比べ,組み 込まれているウイルスi数が多いことから,ウイルス

DNAおよびそれに続く細胞DNAが反復している可

能性も考えられた.E1領域をprobeとしたノーザンハ イブリダイゼーションでは,IC, D腫瘍ともにウイル スDNAの転写が認められ,組み込まれたウイルス数 の多いD腫瘍の方が1.4倍の発現量を示した.  さらにIC, D腫瘍の特徴を検討するため,勿〃伽。 での細胞株の樹立を行った.組織学的に両腫瘍は未分 化で,IC腫瘍はD腫瘍に比べ細胞間の結合がやや弱 いという特徴を持つが,樹立細胞株でもこの特徴が維 持されていると考えられた.フローサイトメトリーで は,IC, D腫瘍ともにDNA aneuploidyが認められ, DNA indexはそれぞれ1.31,1.24であった.染色体分 析では,IC, D腫瘍ともに染色体異常が認められた. マウス染色体数は正常では40本であるが,IC腫瘍では 54本,D腫瘍では48本を中心とした分布を示した. G− bandingによるkaryotypeの検索では, D腫瘍におい て高頻度に3,7,12番染色体のtrisomyが認められ

た.1∼3本のminichromosomeも認められた.正常

マウス染色体は全てtelocentricであるが,約70%の細 胞においては,主に7番染色体と分類不能の染色体と の間にmeもacentricな染色体が形成されていた. IC腫 瘍ではバンドの形成状態が悪く,karyotypeの分析は 不可能であったが,minichromosomeや,少数の野守 にmetacentricな染色体が認められた.ドットプロッ ト法による物20群遺伝子の検索では,IC腫瘍では。一 脚6が21.1倍,N一鰐6が8.7倍, D腫瘍ではN一州6の みが3.3倍の増幅を示していた.マウスではN一物・6遺 伝子は12番染色体に位置しており,D腫瘍における N一門6遺伝子の増幅と,高頻度にみられる12番染色体 のtrisomyとの間には何らかの関連があるのかもし れない.卿。群遺伝子は,一般にはそのうちどれかひ とつが増幅ないし発現されることが多く,IC腫瘍で。・ およびN一卿。双方の増幅がみられたことは,IC腫瘍 においてDNAの調節機構がより破綻された状態であ ることを示していると考えられる.IC腫瘍の方が DNA indexが高いこと,染色体数が多く,bandingの 状態が不良であることなどもDNAがより不安定であ ることを示唆している.しかし,IC腫瘍の方がDNA が不安定にも関わらず,組み込まれているウイルス数 一1085一

参照

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