ふ り が な
氏 名
すぎたつ なおき
杉立 尚城
学 位 の 種 類 博士(歯学)
学 位 記 番 号 甲 第 840 号 学 位 授 与 の 日 付 平成 31 年 3 月 8 日
学 位 授 与 の 要 件 学位規則第 4 条第 1 項に該当
学 位 論 文 題 目 Reproducibility of occlusal contacts on dental casts with the bite impression for full arch using a prototype tray
-Comparison between conventional and bite impression methods-
(試作した全顎咬合印象用トレーで製作した歯列模型の咬合 接触の再現性-通法と咬合印象法の比較-)
学 位 論 文 掲 載 誌 Journal of Osaka Dental University 第 53 巻 第 1 号 平成 31 年 4 月
論 文 調 査 委 員 主 査 田中 昌博 教授 副 査 岡崎 定司 教授 副 査 高橋 一也 教授
論文内容要旨
咬合印象法によるロングスパンブリッジや部分床義歯等の広範囲な補綴修復装置の咬合印象採得を 可能にするため,全顎咬合印象用トレーを試作した.
本研究では,全顎咬合印象用トレーを用いた咬合印象法(以下,全顎咬合印象法)と上下顎を別々に印 象採得する印象法(以下,通法)で製作した歯列模型上での咬合接触部位と被験者の咬合接触部位を比較 し,各印象法における咬合接触の再現性を検討した.
被験者は,顎口腔機能に自覚的,他覚的に異常を認めず,咬頭を被覆した補綴処置および矯正治療 の既往がない健常有歯顎者
9
名(平均年齢
25.3±1.7
歳)とした.被験歯は上顎左右側第一小臼歯から第 二大臼歯までの計
8
本とした.
印象採得には,二種類の通法(通法
A,通法B)と全顎咬合印象法の計3
種類の印象法を行った.通法
A
では全顎用既製金属トレー(網トレープレミアム,
YDM
社製)とアルジネート印象材(アローマファイ ンプラスノーマルセット,ジーシー社製
)
にて行い,通法
B
では個人トレーとシリコーンゴム印象材
(FuisonⅡ モノフェイズタイプ,ジーシー社製)にて印象採得を行った.全顎咬合印象法では,全顎咬
合印象用トレーとシリコーン印象材(FuisonⅡ モノフェイズタイプ,ジーシー社製)にて印象採得を行 った.
咬合器には,平均値咬合器
(
ハンディー咬合器Ⅱ
A
,松風社製
)
を使用した.
咬合接触の記録には,咬合接触検査材( ブルーシリコーン,ジーシー社製)と歯接触分析装置
(BITEEYE BE-1,ジーシー社製)を使用した.
座位にて被験者の咬頭嵌合位における弱噛み時の咬合接触を,咬合接触検査材にて記録した.その 後,通法および全顎咬合印象法にて印象採得し,歯列模型を製作した.歯列模型を咬合器に装着し,
咬合接触検査材にて各歯列模型上の咬合記録を行った後,歯接触分析装置にて咬合接触像に起こした.
実際の被験者の咬合接触像と比較し,各歯列模型上での約
30
㎛の咬合接触点の再現部位数と非再現部
位数を比較検討した.統計学的解析には,SPSS Ver.19(日本
IBM
社製)を使用し,
3
群間を一元配置分
散分析にて比較し,咬合接触の再現性の高さを検証した.
再現部位数は,通法
A
では
7.9±3.5,通法B
では
9.7±3.1,全顎咬合印象法では20.6±5.6
部位で あった.一元配置分散分析の結果,3 群間に有意差が認められた.Bonferroni の多重比較検定では,
全顎咬合印象法と通法
A,B
に統計学的有意差が認められた.
非再現部位数は,通法
A
では
22.6±5.8,通法B
では
21.1±4.5,全顎咬合印象法では11±3.4
部位 であった.一元配置分散分析の結果,
3
群間に有意差が認められた.
Bonferroni
の多重比較検定では,
全顎咬合印象法と通法
A,B
に統計学的有意差が認められた.
結果から,全顎咬合印象法は通法と比較し,再現部位数が多く,非再現部位数が少なかった.これ は,通法の場合,開口時に下顎歯列弓が開口筋の作用により歪むことや印象圧による歯の変位といっ た生体側の因子が考えられる.また,全顎咬合印象法は咬合採得と印象採得を同時に行えることから,
咬合器装着の際,口腔外で人の手により歯列模型を嵌合させる操作が省略できるため人的誤差が少な いことも要因の一つと考えられる.
以上のことより,試作したトレーによる全顎咬合印象法で製作した歯列模型の咬合接触の再現性は通 法と比較し高いことが示唆された.
論文審査結果要旨
本論文は、歯列模型製作法の更なる発展と全顎咬合印象用トレーの臨床応用を目的とし研究を行っ たものである。
歯科臨床において、印象採得は欠かすことのできない手技である。歯科補綴装置が十分に機能を発 揮するためには、顎口腔系と補綴装置との調和が必要である。そのため、印象採得とそれにより製作 された石膏模型の寸法精度が生体の適合精度に大きく関与し、咬合接触状態の再現性の高い歯列模型 を製作することは重要である。
片顎咬合印象用トレーを用いた咬合印象法の研究にて、咬合接触部の再現性は通法と比べ咬合印象 法が優位であること、咬合印象法で製作されたクラウンの咬合調整時間が通法と比べ短時間で行える こと、また、患者アンケート調査において、咬合印象法は通法と比較し短時間に印象採得ができ、負 担の少ない印象法として患者からの評価が良好であることを報告してきた。そこで片顎咬合印象法で は印象採得が困難な可撤性床義歯やロングスパンブリッジ等の歯科補綴装置の咬合印象採得を可能に するため、全顎咬合印象用トレーを試作した。全顎咬合印象法により製作された歯列模型上での咬合 接触部位の再現性に関しては明らかにされていない。
そこで、被験者として、顎口腔機能に自覚的、他覚的に異常を認めず、咬頭を被覆した補綴処置お よび矯正治療の既往がない健常有歯顎者
9
名(平均年齢
25.3
歳)を選択し、被験歯は上顎左右側第一小 臼歯から第二大臼歯までの計
8
本とした。印象採得には、二種類の通法(以下、通法
A、通法B)と全顎
咬合印象法の計
3
種類の印象法を行った。通法
A
では全顎用既製金属トレーとアルジネート印象材に て行い、通法
B
では個人トレーとシリコーンゴム印象材にて印象採得を行った。全顎咬合印象法では、
全顎咬合印象用トレーとシリコーン印象材にて印象採得を行い、全顎咬合印象法と通法で製作した歯 列模型上の咬合接触部位と口腔内の咬合接触部位を比較し、各印象法における咬合接触の再現部位数 および非再現部位数を比較検討した。
その結果、全顎咬合印象法は通法と比較し、再現部位数が多く、非再現部位数が少なかった。これ は、通法の場合、開口時に下顎歯列弓が開口筋の作用により歪むことや印象圧による歯の変位といっ た生体側の因子が考えられる。また、全顎咬合印象法は咬合採得と印象採得を同時に行えることから、
咬合器装着の際、口腔外で人の手により歯列模型を嵌合させる操作が省略できるため人的誤差が少な いことも要因の一つと考えられる。
以上のことより、試作したトレーによる全顎咬合印象法で製作した歯列模型の咬合接触の再現性は
通法と比較し高いことが示唆された点において、本論文は博士(歯学)の顎位を授与するに値すると判定
した。