iii 生物や生命現象を利用 ・ 応用する技術,それが生命工学である.病院での診断や処方される薬,
食肉 ・ 養殖魚 ・ 野菜などの食料品,製造業における酵素の利用や生物素材を真似た製品,そして 水浄化やバイオ燃料など,身の周りには生命工学に関連したものが数えきれないほど溢れており,
生命工学なくしての生活は考えられないと言っても過言ではない.生命工学が生活の一部となっ ているこのような状況を踏まえ,この度,生命工学を基礎から学ぶための参考書として,本書『し くみからわかる 生命工学』を刊行する事となった.
生命工学がカバーする領域はとても広く,学術的な観点では一般生物学から専門的な基礎生物 学や微生物学などが,応用的な観点では農学や畜産学,医学や薬学,そして生物とかかわりのあ る化学や工学のすべてが含まれる.本書を作成するにあたっては,まず最初の部分に生命工学の ベースとなる基礎生物学,つまり分子生物学や細胞生物学,発生学や生化学などの説明に関する ページをとった.次に遺伝子工学や細胞工学,発生工学や微生物工学など,生物や生命現象に手 を加え,さらにそれを利用する工学的意味合いの強い領域について解説した.以上の事柄を踏ま え,続いて医薬生産,診断や治療といった人間の健康に直接かかわること,さらには人間生活に とって基本的な要素である食にかかわるさまざまな事柄を扱い,最後には製造業や環境 ・ エネル ギー問題など,社会の維持や改善に直結する技術についても触れた.
上述のように本書では生命工学を多面的な観点から説明しているのが特徴である.しかも利用 技術を単に列挙するのではなく,そのしくみもわかるような配慮がなされており,それが書籍タ イトルにも反映されている.編集面でも,厳選した
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個のキーワードが効率よく,しかも無理 なく理解できるように,各項目が見開き2
ページというスタイルで,図もふんだんに使って説明 されている.本書のような幅広い領域をカバーした生命工学の書籍は他にほとんどなく,生命工学を学ぼう とする読者の期待に,これまで以上に応えられるものになったのではないだろうか.生物学を専 門とする読者のみならず,医歯薬領域や農学領域さらには工学領域や化学領域と,あらゆる領域 の読者にとって利用できる一冊に仕上がったと自負している.本書が生命工学を学ぶ多くの方々 の一助となれば,作り手としてこれ以上の喜びはない.最後に,著者のとりとめのない原稿をこ のような素晴らしい書籍として世に送り出して頂いた裳華房編集部の筒井清美,野田昌宏の両氏 に,この場を借りて改めて感謝申しあげます.
平成
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年9
月 東京五輪が決まった年のある日,田村 隆明
はじめに