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は じ め に

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Academic year: 2021

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iv

は じ め に

 地球上にはさまざまな動物が暮らしている.どのような形態,生態の動物 が暮らしており,どれくらいの数の動物種が生息しているのか.それを明ら かにしてこようとしたのが,動物「分類学」という学問分野である.多種多 様な動物がいるため正確な数字を出すのは難しいが,地球上には現在までに 知られている種だけでも,130 万種を超える動物が存在しており,まだまだ 知られていない種も合わせると,実際には何倍もの数の種がいる.

 近年,環境保護の必要性の認識も高まり,「生物多様性」という言葉を耳 にする機会がとても増えた.この生物の多様性を明らかにし,理解しようと するのが分類学であり,その歴史は古く,古代にはじまる.解剖学から分子 生物学に至るさまざまな生物学分野は,この分類学を 礎

いしずえ

として派生してき たと言っても良いであろう.器官から生物体を構成する分子まで,レベルは 異なるものの,これらの分野も生物のことを記載し理解しようとする点では 同様であり,その研究成果は逆に分類学にも反映されてきた.ただし,スタ ンスはやや異なり,分類学では多様な生物の実態そのものを理解しようとし てきたのに対し,ほかの生物学分野の多くは,その中に見られる共通性に目 を向けてきた.

 動物を対象とする近代的な分類学は,18 世紀,「分類学の父」と呼ばれる リンネの時代に始まったと考えられる.19 世紀半ばには,ダーウィンの進 化論によって,現在では 1 千万種を超えると考えられている動物を含むすべ ての生物は,1 つの生命体から進化によって生じたものであることが示唆さ れた.動物の多様性を生みだした力は進化であることが示されたのである.

現在,地球上で見られる動物の基本的な体のつくり,すなわちボディープラ

ンの多くは,約 5 億年前のカンブリア紀に生じた多細胞動物の大規模な適応

放散の際にでき上がったと考えられている.その後,新しい種の形成や種の

消滅がくり返され,現在の多様な動物の姿に至った.

(2)

v

 進化によってつくられた種の系譜を「系統」と呼ぶ.進化が理解されるよ うになってからは,動物分類学はこの「系統」を取り入れ,生命の歴史を含 めて研究を進めてきた.その結果,進化によってでき上がった現在の地球上 の動物の姿を正しくとらえられるようになってきた.

 20 世紀の半ばには, DNA が遺伝子の本体であることが明らかになり,ワト ソンとクリックによって DNA の二重らせん構造が発見され, DNA の塩基配列 に遺伝情報が含まれていることがわかってきた.その後の技術の進歩によって,

DNA の塩基配列が容易に読み取れるようになってからは,塩基配列の情報を 用いてかなり正確に系統を追跡することができるようになり,進化によって作ら れた多様な動物の姿がよりはっきりとわかるようになった.生物学の中では最も 古くから行われ伝統がある分類学は,ともすれば古ぼけた学問と思われがちで あるが,ほかの生物学と同様,進化論や DNA の発見などの大きな生物学の革 新とともにその内容を発展させてきたのである.

 本書『動物の系統分類と進化』で扱う動物系統分類学は,分類,系統,進 化といった観点から,現在の地球上の多様な動物の姿を明らかにし,その姿 が 5 億年の間にどのようにして生じてきたのかを明らかにすることを目指し ている.本書は 2 つの部分から構成されている.最初の 1 ~ 4 章では,動物 系統分類学の考え方や研究方法をこれまでの歴史を交えて解説する.次の 5

~ 6 章は,それによって,これまでにどのようなことがわかってきたのかに ついての解説となっている.

 まず, 1 章では事物を認識,理解する上での分類という考え方について, 2 章 では分類と系統との関わりについて, 3 章では分類学の方法や規則について, 4 章では動物系統分類学で扱っている種について,さらには種がたどった歴史で ある系統を推定する方法について順に触れていくこととする.そして, 5 章では,

実際の動物の進化,系統と,それに基づく分類体系の全体像を把握する.最 後の 6 章では,結果として生じた現在の地球上の動物の姿について動物群ごと に解説し,地球上の動物の多様性への理解を深めることとしたい.

  2010 年 3 月

藤 田 敏 彦 

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