高校生のロールシャッハ反応に関する研究 [ PDF
5
0
0
全文
(2) ーニングのための質問紙(長尾(1989)の青年期の自我発 達上の危機状態尺度(B 水準) :ECS)を配布。その中で. 個)、創造的な体験の蓄積や空想力、内的な安定性の意味. 自我発達上の危機状態得点が、長尾(1989)の平均値±1. で未熟さがみられた。. SD 以内にある被験者のうち 25 名に、個別にロールシャ. ④反応数が少ないことや A%・N%が高いことから、全体的. ッハ法を実施。. に反応の産出や、自己の内面を豊かにブロットに投影す. 4)分析視点:①全体の傾向について検討:形式分析に. ることに対して抑制的である。. よる発達的な検討や平均値との比較、BP Score の出現の. ⑤B スコアの割合は、大学生の平均 25%前後(木場. 仕方、名大法感情カテゴリーにおける特徴、思考言語カ. ら,1981.)に比較して低い。 しかしポジティブサインと言. テゴリーにおける特徴、の視点から考察する。②事例検. われる B>P を示すものが多く、 刺激を受け入れる疎通性. 討:継列分析によるその人の防衛の在り方について検討。. を持ちつつ、ある程度の身体像境界による防壁を築いて. 事例は高校生の中から、形式分析における平均値、中央. いる。. 値に近いもの 2 名を選出。. ⑥ 思 考 ・ 言 語 カ テ ゴ リ ー に お い て 、 Communicative. 2.結果と考察. elaboration が多い。 その他の Defensive Attitude から、. 1)全体の傾向. 検査場面や反応産出に対する慎重である。さらに、. 高校生 25 名の形式分析の平均値のうち必要箇所を. symmetry remark が比較的多いことから、M:FM にみられ. Table1.、BP%の平均値を Table2.、感情カテゴリーの平. る、内的な不安定性・情動に対する、未熟な均衡の取り. 均値を Table.3 に示す。. 方が窺える。. Table1.高校生 25 名の形式分析の平均値(SD). 平均. 反応数 23.2 (10.3). F% 46.3 (14.6). ⅧⅨⅩ/R% 33.7 (10.9). ΣC 2.4 (1.3). 2)事例検討 A% 49.6 (19.8). H% 22.5 (11.9). 高校生 25 名の中から、平均に近い 2 名を選択し、事例 検討を行った。各事例の形式分析の必要箇所を Table4. に示す。尚、詳細については個人のプライバシー保護の. Table2. BP%の平均値. 平均. B Score 14.5 (12.0). ため、省略する。 P Score 10.2 (8.5). 高校生事例検討のまとめ 高校生は外界か刺激や自分の内側に起こる情動や感 情に対して、 非常に慎重にかかわっていた。 2事例とも、. 全体の傾向として、以下の点が挙げられる。 ①反応時間、F%、ⅧⅨⅩ/R%や ΣC にみられる色彩刺激に. 刺激に揺さぶられて形態質が落ちたあとや、不安や衝動. 対する反応性において、成人の指標にかなり近い値が得. 性などの自分の中で処理しにくい感情や動きが湧き起こ. られた。. ったあとには、淡々として無難な、ありふれた反応を出. ②H%において成人の平均に近い値が得られた一方で、H. すことでワンクッションをおき、そのまま自分の中身が. を産出できないものもいる。人への関心や感受性が発達. あらわれたままにしないように歯止めをかけ、中和して. にばらつきがある。. いる。特に運動に対する表出が慎重であった。また2事. ③FC:CF+C にみられる外的な統制は良好なものが多い. 例では、人間の全体反応が出現しなかった。高校生にみ. (FC>CF+C:17 名,FC=CF+C:3 名,FC<CF+C:5 名)。一方、M:. られる人間の全体像の結べなさが健常群にもみられるこ. FM における内的統制は未熟であるものがほとんどであ. とから、 発達的な未熟さが考えられる。 高校生の中には、. る(M>FM:4 名,M=FM:7 名,M<FM:14 名)。中学生に比べ M 反. 良質な M 反応を産出できるほどの、H 反応を出せる力が. 応を産出する割合が増えているが、成人に期待される基. 育っていないものもいるようである。. 準には達しておらず(25 名中で 22 名が 1∼8 個,平均 2.5 Table3. 感情カテゴリーの平均値(SD) Affect. Hostility. Anxiety. 全体. 12.0 (8.1). 12.6 (7.3). Bodily Pre. 3.0 (5.2). Total Unpleasant 25.1 (12.8). Dependency 10.0 (7.0). Positive feeling 10.4 (6.3). Miscellaneous. Neutral. 2.2 (3.1). 53.2 (15.0).
(3) とであるが、その程度に差があると思われ、さらに衝動 性の高さや外的な統制の弱さ、刺激への耐性に於いて弱. Table4. 事例の形式分析 ID. 事例A. 事例B. 事例C. 事例E. さがあらわれている。そのため、喚起された不安や情動. T/ach T/c ⅧⅨⅩ/R F% F+% R+% M: FM M:ΣC FC: CF+C P H% A%. 8.6 6.8 35.3 58.8 60 58.8 1: 1 1: 2 2: 1 4 5.9 64.7. 4.2 6 35.7 46.4 23.1 64.3 0: 3 0: 4 8: 0 1 10.7 46.4. 18.2" 23.0" 18.8 25.0 50.0 56.3 0: 3 0: 2.5 1: 3 2 12.5 43.8. 7.6" 6.2" 23.1 13.4 0 13.4 0: 1 0: 3.5 1: 3 0 15.4 46.2. を抑制するという方法があまりうまくいっていないよう. Hostility Anxiety T.Unpleasant. 0 5.9 0. 16.1 9.7 25.8. 16.7 22.2 44.4. 0 30.8 30.8. Depndency Pos. feeling Neutral. 5.9 5.9 88.2. 3.2 9.7 67.9. 38.9 16.7 18.8. 7.7 7.7 53.8. B%. 11.8. 14.3. 31.3. 15.4. P%. 11.8. 7.1. 31.3. 0. <Affect>. であった。また、健常群比較すると、臨床群の事例では 思考・言語カテゴリーが多くスコアされて、この点でも 違いがあるといえる。 Ⅳ.総合考察 健常な高校生において、 中学生に比較して発達的な変化 がみられた。その中でも、ほぼ成人の平均値に近い値を 示す指標もあれば、未熟なところもある。特に M 反応と 内的統制に関しては、高校生のほとんどに於いてコント ロールが弱く、 良質の人間運動反応が少なかった。 また、. <BP Score>. 人間の全体反応が産出できないという意味で対象表象が 未熟なものもいた。 臨床場面でのアセスメントに於いて、 M 反応とは非常に大切な指標であり、知能や想像力など の他に、 自己概念や内的な安定性、 共感性などといった、 ひとの適応を助ける重要な能力のサインである。通常 M 反応が1つしかみられなかったり全くなかったりする場 合は問題であるとされる。また、心理療法を受けた前後 ではほかの因子に比べ M 反応はもっとも変化しにくいと いわれている。しかしながら、発達の過渡期にある高校. Ⅲ.第二研究 1.方法 1)実施時期:2003 年 7 月∼12 月 2)対象:精神科の病院に通院中または入院中の、高校 生の年代にある方3名 3)ロールシャッハの実施手続き:精神科の病院にて、 今後の治療方針を含めたそのひとのこころの理解を目的 に、主治医からの心理検査の依頼があった方にのみロー ルシャッハ法を実施した。 4) 分析視点:スコアリングは名古屋大学式技法に従い、 形式分析の後、継列分析。継列分析に際して、Barrier ス コァ、Penetration スコアにも注目。 2.結果と考察 それぞれの事例について、形式分析と継列分析を行っ た。事例の詳細な内容については、事例のプライバシー 保護のため省略する。 まとめ 臨床群に於いても、統制しにくい刺激を避けたり、距 離を取ったり、知的に処理することで対処しようとする 様がみられた。内的な統制の弱さは健常群と共通するこ. 生の年代では、健常群に於いても臨床群に於いても十分 な変化の可能性が見込まれることがいえる。 また、防衛という視点から高校生をみると、内外の刺 激や自分に親和的でないものに対して、抑制的にかかわ ることが適応の手段の中核になっているように思われた。 このことは、内的な統制の弱さに象徴されるような、青 年期の「自分のコントロールの難しさ」に対しての精一 杯の対処であるのかもしれない。それに加えて、高校生 という時期が社会的に多くの規制の中にあり、また学業 などにおいて「評価される」ことの多い状況にあること から、高校生にとっては自分らしさを自由にのびのびと 発揮することには、困難や抵抗があるのかもしれない。 しかしながら、その中でも安定した状態にあるときは、 控えめではあるもののそのひとらしい情緒の表出がみら れることもあり,抑制しながら安定を図るというやり方 は有効であると思われる。 また、臨床群においても、刺激に対して避けたり慎重 にかかわったり、自分と安全な距離をとろうとしたりと いうやり方で対処しようとしている様相がみられた。し かし、各事例における、不適応につながるそうした防衛 の失敗が、衝動や外界からの刺激に対する統制の弱さに 加え、強い刺激に対する耐性の低さが大きく関係してい.
(4) るように思われる。長尾(1999)は青年期の危機状態にも. 池田豊應 編 1995 臨床投映法入門 ナ カニ シ ヤ 出版. っとも影響を及ぼしているのは、さまざまな要因の中で. 片口安史 1987 改訂 新・ 心理診断法 金子書房. も自我の強さであるということを述べている。本研究で. 木場清子 木場深志 1980 ロールシャッハ身体像境界得点. も、不適応にある青年に自我の脆弱さがみられることが. についての基礎的研究(第一報) ロールシャッハ法研. 確認された。その一方で、彼らが晒された刺激からなん. 究ⅩⅩⅡ 33- 51. とかして身を守り、安定を図ろうとするやり方も同時に あらわれている。そうした方法は、見当違いでも破綻し. 小出れい子 1979 青年期後期正常者における身体像境界 の浸透生について 心身医 19 巻 3 号 195- 198. たものでもなく、彼らがそれまでの人生で培ってきた力. 小出れい子 馬場健一 今井明子 1981 身体境界に関す. であり、困難の中でもその生活に役立てている、適応に. る発達的研究 ロールシャッハ法研究ⅩⅩⅢ 103- 111. 向かう力である。. 松本真理子著 2003 子どものロールシャッハ法に関する研. 青年期中期という時代は発達の過渡期であり、十分な. 究 風間書房. 可塑性、成長の可能性を有している。本研究の臨床群の. 森田美弥子 長野郁也 中村睦美 杉村和美 高橋昇 高. 事例に於いても、パーソナリティの構築の途中にあるこ. 橋靖恵 星野和実 2001 ロールシャッハ反応における. とが考慮され、診断が確定されていない。それぞれのロ. 限定づけ・修飾の系列化 名大式「思考・言語カテゴリ. ールシャッハ反応の中にも病理の兆候がみられる一方で、. ー」 による検討 心理臨床学研究 第 19 巻 第 3 号. そのひとの力となる部分、それまでの人生で培ってきた と思われる健康さの側面もあらわれていると思われる。 そのひとの弱い部分、未熟な部分を正しく理解すると同 時に、そのひとがそれまでに構築してきた守りを支え、 適応を助けている部分やこれからの成長する可能性のあ る部分を見逃さないようにすることが重要である。. 長尾博 1989 青年期の自我発達上の危機尺度作成の試み 教育心理学研究 37 巻 71−77 長尾博 1999 青年期の自我発達上の危機状態に影響を及 ぼす要因 教育心理学研究 第47巻 141−149 名古屋ロールシャッハ研究会 1999 ロールシャッハ法解説 −名古屋大学式技法−1999 年改訂版 小此木啓吾 馬場禮子 1989 精神力動論 ロールシャッハ. Ⅴ.今後の展望 研究Ⅰでは、発達的な視点から高校生という段階の特 徴について検討したが、被検者が 25 名と限られており、. 解釈と自我心理学の統合 金子書房 小沢牧子 1970 子どものロールシャッハ反応 ポール・M・ラーナー著 溝口純二・ 菊池道子監訳 2002 ロ. もっと大きなサイズの母集団が必要と思われる。また、. ールシャッハ法と精神分析的視点(上) 臨床基礎編. 小・中学生のロールシャッハ反応には発達の変化に性差. 金剛出版. がみられていることから、高校生に於いても性差がみら. ポール・M・ラーナー著 溝口純二・ 菊池道子監訳 2003 ロ. れる可能性があり、性差の検討も行っていきたい。さら. ールシャッハ法と精神分析的視点(下) 臨床研究編. に、本研究では、国内の異なる地域における被検者を対. 金剛出版. 象としたため、その地域差が生じている可能性が考えら れる。もっと広範にわたる地域の被検者による特徴の検 討が必要かと思われる。. 高瀬由嗣 1999 ロールシャッハ人間反応と精神病理 ロー ルシャッハ法研究 第3巻 24- 36 高橋昇 高橋靖恵 森田美弥子ほか 2001 名大式思考・ 言 語カテゴリーの臨床的適用 ある境界性人格障害患者. Ⅵ.主要な引用・参考文献 馬場禮子 1983 改訂境界例 ロールシャッハテストと心理 療法 岩崎学術出版. の事例を通して 心理臨床学研究 第 19 巻 4 号 365- 374 寺崎文香 高橋靖恵 2002 青年期の自己信頼感と防衛に. 馬場禮子 1997 心理療法と心理検査 日本評論者. 関する研究 - ロールシャッハ法による接近- ロールシ. Freud, A. 1936 Das Ich und Abwehrmechanismen.. ャッハ法研究 第 7 巻. Internationaler Psychoanalytischer Verlag. (外林大作訳 1958 自我と防衛 誠心書房) 星野和実 長野郁也 高橋昇 森田美弥子 高橋靖恵 杉. 辻悟著 1997 ロールシャッハ検査法—形式・ 構造解釈に基 づく解釈と理論の実際 金子書房 植元行男 1974 ロールシャッハ・ テストを媒介として、思考、. 村和美 1995 名大式ロールシャッハ法における思考・. 言語表現、反応態度をとらえる分析枠の考案とその精. 言語カテゴリーの検討(Ⅲ)—大学生を対象として— 心. 神病理研究上の意義 ロールシャッハ研究ⅩⅤ・ ⅩⅥ、. 理臨床学会大会発表論文集 374- 375. 281−343.
(5)
(6)
関連したドキュメント
表11.「食物アレルギーの基礎知識に関する内容はどのようなことを行いましたか。」の問いに対する回答
が自己抑制に影響を及ぼすモデル(Figure)が最適で
五員環を形成しているメチレンジオキシ基の lone pair は隣接するフェニル基のπ電 子と overlap することが困難であるが、メトキシ基の lone
家族、③趣味、④社会活動、⑤スキル、⑥友達、の6領域からなり、各
一方保健婦 を希望す る者は,性格 に合 うとイメー ジす るものが低 く,親 は賛成 しているが,看護職 に対す るイメー ジは他 の群 に比べ,必ず しも良 く はない。 これは
安心して社会に出て行くことができる。この ことが他人や組織との新たな関係性を築いて
<安定型>
は攻撃行動得点で,抑うつ気 ,不安,怒りの