通信制高校に通う生徒の学校適応過程と援助に関する基礎的研究 [ PDF
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(2) の弱さ>、<周囲との関われなさ>、<頑張り過ぎる傾. 16 項目についても同様に、<生徒を伸ばす関わり>、<. 向>の 9 つのカテゴリーに分類された。後期のものとし. 生徒にブレーキをかける関わり>、<ネットワークを活. て収集された 25 項目についても同様に、<自由な感情. 用した関わり>の 3 つのカテゴリーに分類された。後期. 表現>、<円滑なコミュニケーション>、<社会性の広. のものとして収集された 11 項目についても同様に、<. がり>、<不安定>の 4 つのカテゴリーに分類された。. 社会を意識した関わり>、<変化への気配り>の 2 つの. 以上の分類の詳細については Figure.1 に示す。. カテゴリーに分類された。分類の詳細については. 初期. 中期. 後期. ◆不安・緊張. ◆ 周 囲 に合 わせな. ◆自由な感情表現. ・漠然とした不安. がらの関わり. ・気持ちの表出. ・気を遣った関わり. ・自己コントロール. ・人との関われなさ ◆気持ちの表出. ・行動の制限. なさ. ◆コミュニケーション. ・頑張り過ぎる傾向. の広がり. ・柔軟性のなさ. ・生徒同士の関わり. ・融通のきかなさ. ・教師との関わり. ◆変化への弱さ. ◆生徒を伸ばす関わり. ・生徒同士の関係づくり ・教師からの声かけ. ・円滑な関係づくり. ・ポジティブなフィードバッ. ・ポジティブなフィード バック. ク. ・興味・関心を広げる関 ・生徒が関わりやすい態度 わり. ◆社会性の広がり ◆周囲との関われな. ・学校への意欲. ◆負担をかけない関わり. ・卒業後への意識. ・入り込み過ぎない配慮. ・しかる指導 ・進路選択のサポート. ・役割が取れる. ・無理させない関わり. 関わり ◆変化への気配り ◆ネットワークを活用した. ◆ネットワークを活用した関わり ◆頑張り過ぎる傾向. Figure.1. ・役割・責任の意識づけ. ◆生徒にブレーキをかける. ◆居場所感. ◆社会性の不足. ◆社会を意識した関わり ・生徒同士の関係の促し. ◆社会性の広がり. ◆無気力. ・無気力な行動. 後期. ・安心感を持たせる関わり. ション. ・関わりやすさ. ・関わりの中の遊び. ・無気力な印象. 中期. ・気持ちを引き出す工夫 ◆円滑なコミュニケー. ◆興味・関心の広がり. 初期 ◆不安を和らげる関わり. ・距離のある関わり. ◆コントロールのでき. Figure.2 に示す。. 関わり. ◆不安定. 不登校の生徒の状態像の変化のプロセス. Figure.2. 不登校の生徒に対する関わりの変化のプロセス. 不登校の生徒の初期の状態像には、多くのできなさが. 初期における不登校の生徒と関わる際の留意点の特. 目立ち、不安の強さが影響していることが示唆されてい. 徴として、不登校の生徒の不安を和らげ、安心感を持っ. る。またエネルギーのなさからの行動することの難しさ. てもらうことを特に意識して関わっているということが. や、自分自身のペースをコントロールすることの難しさ. 挙げられる。また、生徒の理解を深めるために、ネット. があり、すぐに疲れてしまうという特徴があると考えら. ワークを活用して関わっていることも示唆された。. れる。. 中期における不登校の生徒と関わる際の留意点の特. 不登校の生徒の中期の状態像の特徴として、中期から. 徴として、まず生徒を伸ばす関わりがあり、自分の気持. 可能になることと、初期から引き続き課題となっている. ちを言えるようになること、他の生徒と関われるように. できないこととが混在している状態であることがまず挙. なることなどを教師が意図して関わっていることが挙げ. げられる。それは特にコミュニケーションにおいて見ら. られる。これらは田嶌(2001)の言う、 「一時的な手助. れ、<コミュニケーションの広がり>と<周囲との関わ. けで成長する関わり」と同様に、本人の自助努力を引き. れなさ>がある一方で、<周囲に合わせながらの関わり. 出す関わりであると思われる。またその一方で、ブレー. >のように、部分的にできることなど、できることとで. キをかける関わりも行われており、生徒が無理をしない. きないことが混在している状態像があることも特徴であ. ことにも配慮している。このように、中期では生徒を伸. ると思われる。. ばす関わりとブレーキをかける関わりが行われており、. 不登校の生徒の後期の状態像の特徴として、自分自身. これらをバランスよく行なう上でも、生徒の理解を的確. の気持ちに気づいて行動しながら、周りの生徒とも上手. に行う、 ネットワークを活用した関わりが必要であろう。. にコミュニケーションできるようになることが挙げられ. 後期における不登校の生徒と関わる際の留意点の特. る。また、卒業後の進路についても関心が向いていく時. 徴として、生徒が社会に出ることを意識し、そのための. 期でもある。 このように、 高校生活に適応していく中で、. 具体的に必要な関わりを行っていることがまず挙げられ. 不登校であった “過去”にとらわれるだけでなく、 “未. る。また生徒の状態を観察し、その時々に必要なアドバ. 来” である将来のことに関心が移っていくと考えられる。. イスをしている。. 2)生徒と関わる上での留意点について. 以上のことから、通信制高校における教師は、不登校. 生徒と関わる上での留意点の初期のものとして収集. の生徒の状態像について、最初は強い不安のためにでき. された 23 項目について KJ 法的手法を用いて分類を試み. ないことが多いが、少しずつ自分でできることが増え、. た結果、<不安を和らげる関わり>、<負担をかけない. 卒業後の進路に目が向くようになると捉えていることが. 関わり>、<ネットワークを活用した関わり>の 3 つの. 明らかとなった。また、教師の関わりも、最初は不安を. カテゴリーに分類された。中期のものとして収集された. 和らげ、少しずつ生徒のできることを拡げつつ、最終的.
(3) には社会に出るうえで必要なことに関する指導を行うこ. 第1期. とが明らかとなった。. 第2期. 第3期. 第4期. 困っている ところに介入 好きな話 題で話し. 研究 2 1.目的. <授業に少しずつ参加>. ⇒. <役割では入れる>. ⇒. <不安・緊張への対処>. ⇒. <周りに関わる余裕>. <思い切った行動>. ⇒. <居場所ができてくる>. かける 他の 生 徒と の 関わ り <緊張・人と関われない>. の調整. <自発的な関わりのできなさ>. 通信制高校における生徒の様子について参与観察を. ⇒. <気持ちの表出>. ⇒. <自発的な働きかけ>. <好きな話題への勧誘>. 行うことで、 生徒の状態像の変化と関わる視点を記述し、 研究 1 で得られたプロセスを具体的に検討することを目 的とする。 2.方法 1)本研究のフィールドに関して 本研究のフィールドとなった Y 通信制高校の様相 Y 通信制高校の Z コースは、通学型のコースの中の週 5 日コースであり、不登校や挫折体験があったり、人間 関係や学校生活に不安がある生徒が対象となっている。 フィールドへの入り方 X−4 年より、ボランティアで「大学の学生さん」と して Z コースに入ることになった。X−1 年より「クラ スサポーター(以後 CS) 」という役割で授業時間や休み 時間に教師とは異なる立場で生徒に勉強を教えたり、雑 談をしたりして関わっている。 2)調査手法と分析手法 客観的データでは捉えられない生徒の様子の変化の プロセスを詳細に捉えるために、データ収集の方法とし てフィールドワークの手法を用い、分析方法として、エ スノグラフィックな手法を採用することにした。 調査対象 Y 通信制高校 Z コースに通う 3 年生女子 2 名(以下 A さん、B さん) 調査手続き ①X 年 10∼11 月の約 2 ヶ月間、週に1∼2 回の頻度で Y 通信制高校 Z コースの2・3年生の教室において、フ ィールドワークを行った。 ②参与観察によって得られたエピソードから、生徒の状 態像と生徒に対する CS の関わり方についてそれぞれ 記述する。 (エピソードについては省略した。 ) 2.結果と考察 1)生徒A 入学の経緯(入学時の調査資料より) 中学の時から登校渋りはあったそうである。高校受験 に失敗し、自分の希望してない高校に入学することにな ったが、それが傷つきとなって引きずっていたそうで、 高校生活が楽しくなくなり、不登校となる。高 2 になる 時に Y 高校への転入学に至った。 生徒の変化と関わり方について(Figure.3 参照). 好きな話 題で話し. 困っている. かける. ところに介入. 気持ちを聞く. figure.3 生徒 A の状態像と関わりの変化. 観察開始当初、A さんは人と関わることにかなり緊張し ている様子が見られていた。一方で、好きな話題なら緊 張しているなりに話しかけられる様子も見られた。そこ で CS としては、A さんと好きな話題を共有することを 意識して関わり、A さんの教室での緊張を和らげるよう に努めていた。A さんは次第に少しずつ活動に参加した り、自分なりに不安に折り合いをつけようとしたり、周 りを見れるようになるなど、少しずつ余裕が出てきてい るようであった。ここでは CS としては、A さんの困っ ているところを察して関わったり、気持ちを聞く関わり をすることで CS との関わりの中で安心感を持ってもら うことを意識して関わった。また、他の生徒と関わる際 には CS が橋渡しを行うことで他生徒とも安心して過ご せるようになるような関わりも行った。 そして A さんは、 当初に比べてそこまで強く緊張せずに教室にいられるよ うになり、自発的な動きが少しずつ出てくるようになっ た。A さんに寄り添い、A さんが少しずつ居心地よくな るような関与ができるよう関わるようにしていた。 以上のことから、A さんは CS との関わりを土台にし て、少しずつ教室でも緊張せずに過ごすことができるよ うになり、教室での過ごし方も少しずつできることが増 えていったものと思われる。またこの状態像の変化は、 第 1 研究における初期から中期にかけての変化であると 考えられた。その際に有効であった関わりは、A さんが 好きなゲームの話を共有することであり、CS が A さん のチャンネルに合わせることであったと考えられる。田 嶌(2001)は、不登校の子どもと関わる際に、チャンネ ル探しからつながりと活動を広げるために必要な注文・ 工夫について話題にすることを方針の1つとして挙げて いる。A さんにとって楽しい時間を共有して不安を和ら げつつ、気持ちを素直言えるようになるなどの、教室で の過ごし方に対する主体性を引き出すことにつながった ものと考えられる。また、自分自身が教室でよりよく過 ごすために関与できるように寄り添ったことが、A さん の教室での不安の緩和につながったものと思われる。 2)生徒 B.
(4) 入学の経緯(入学時の調査資料より). 総合考察. 中1の後半から友人関係のもつれをきっかけに不登. 研究2において観察を行った A さんと B さんの教室で. 校になった。中2∼3 は保健室登校で時々学校には行け. の様子の変化は、他の生徒と関われないという意味にお. ていた。高校進学の希望が強く、全く新しい環境で自分. いてはどちらの生徒も研究 1 における状態像のプロセス. の力を試してみたいと考えていたことから、Y 高校の入. の初期にあるものと考えられた。また研究1における関. 学に至る。. わる上での留意点としては、不安を和らげる関わりが行 気持ちにふ. 第1期. 関わりのきっかけとして. 第2期. れる. の声かけ. 他の生徒を. 第3期. ごせるようになることを意識して関わるなど同様の関わ. つなぐ. <自発的な関われなさ> <他生徒への関心>. <主体的な関わり>. <他生徒への間接的な関わり> <役割をこなすことができる>. 例えば「好きな話題で話しかける」など、生徒のチャン ネルに合わせた関わりなど、生徒に近い話題での関わり. 気持ちにふ れる. りが有用であることが示された。 しかしその方法として、. <距離が近くても平気>. <自然なあいさつ>. 関わりのきっかけとして. われていたが、CS として行った関わりも、安心して過. <CS への質問行動>. の声かけ. は CS ならではの関わりであったかもしれない。またど. 関わりのきっかけとして. <受身的には関われる> の声かけ. figure.4. 生徒 B の状態像と関わりの変化. 生徒の変化と関わり方について(Figure.4 参照) 観察開始当初の B さんの様子として、話しかけられる と関われるが、自分からは関わることができない様子が. ちらの生徒への関わりにおいても、次第に他生徒への関 係を拡げる関わりが出てくるようになったことも教師の 認知する関わる際の留意点において見られた。しかし、 どちらの生徒にとっても無理をさせないように配慮した ことが重要な視点であったと考えられる。. 見られた。CS としては声をかけ、安心して他者と関わ. また、研究 2 の観察より、どちらの生徒も、CS との. る機会が増えるように努めつつ、なるべく B さんの気持. 関わりを土台にして、話したいことを話せるようになる. ちを引き出すような関わりを行った。B さんは、次第に. ような、やりたいことをやれる力が次第に出てきた。田. CS へ自発的に質問できるようになり、他の生徒の様子. 嶌(2003)は、 「人の発達にとって、他者と交流し共に. に関心を向ける様子も見られ、CS を通して他の生徒と. 過ごす楽しい時間や自分が尊重される時間、大事にされ. 間接的に関わる行動も見られるようになった。CS とし. る体験こそがなによりも必要であり、それこそが結果と. て、これまでの関わりと同様に、B さんへの声かけや気. して発達促進・発達援助となる」と指摘している。この. 持ちに寄り添う関わりに加え、他の生徒への関わりを促. ような体験を、他者に働きかけ、自身で作り出せるとい. す働きかけも行うようにした。そして B さんは、教師や. うことは、適応を考える上で重要であると思われる。こ. CS の促しによって他の生徒と一緒に過ごすことになっ. れらのことから、通信制高校における適応とは「主体的. ても、気にしたり緊張したりすることなく他の生徒と一. に自分の教室での過ごし方をよりよくしていく力をつけ. 緒に過ごせるようになったり、自分からも他の生徒に関. ていく」ことであり、援助もその力を引き出すための関. わることができるようになったりする様子が見られるよ. わりがより効果的になるものと考えられる。. うになった。 以上のことから、B さんは、最初は周囲に対して受身. 今後の課題. 的だったが、CS との関わりやすさが出てくる中で、他. 本研究は、第1研究おいて教師の視点から捉えられた. 生徒への関心を CS に伝えるなど、少しずつ他生徒への. 生徒の適応のプロセスを、第2研究で行った CS の視点. 関心が大きくなったものと思われる。そこに教師や CS. からの参与観察を行って適応を具体的に検討することを. が他生徒と関わるきっかけを作ることで実際に他生徒と. 試みたが、状態の捉え方や関わり方に多少違いが見られ. 関わることができるようなり、自分からも関わりたいと. た。今後は教師と CS の立場それぞれからの適応の捉え. きに関われるようになってきた。このように、B さんの. 方を整理するとともに、通信制高校に通う生徒の視点か. 状態像の変化は、第1研究における初期から中期にかけ. らの適応を明らかにすることも必要であると考えられる。. ての変化であると思われる。そこでの変化は、CS との 関係ができる中で、B さんの本来の周囲への関心が少し. 引用文献. ずつ出せるようになり、B さんが無理せずできる程度の. 田嶌誠一(2003) 心理援助と心理アセスメントの基本. 関わりができるようになっていった変化であったと思わ れる。. 的視点 臨床心理学3(4) 、506-517.
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