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分裂病者のコミュニケーションに関する研究 −ロールシャッハ法における反応様式を通して− [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)分裂病者のコミュニケーションに関する研究 -ロールシャッハ法における反応様式を通してキーワード:分裂病・コミュニケーション・ロールシャッハ法 人間共生システム専攻 河本 緑 1.問題と目的. ールシャッハ法を通して病をかかえる方々と接するのは. 分裂病は、100 人から 120 人に 1 人がかかる、精神病. 、検査場面の 1 回きりではない。そこには、ラポール面. の中でも代表的な病気である。分裂病という点で普遍性. 接から始まり、ロールシャッハ法が行われ、フィードバ. があるにしても、その現れ方は個人によって様々である. ック面接までの過程が含まれる。そして、全過程におい. 。病によって引き起こされる問題も置かれている状況も. て、検査者と被検者とのかかわりが存在するのである。. それぞれ異なっているし、ひとりの中でも時とともに変. 筆者は、この全過程を「ロールシャッハ法場面」と定義. 化する。私たちが分裂病をかかえる方を目の前にして向. し、機械的なロールシャッハ・データの収集だけではな. き合おうとするとき、分裂病という現象だけではなく、. い、ロールシャッハ法を介してひとりの人とひとりの人. 個人の中で起こる現象、個人の経過を長期的に踏まえる. が向き合う中から相手を理解していく姿勢に着目したい. 必要が出てくる。分裂病という病気がその人にもたらす. 。. 、潜在能力の発揮や精神的自由度の制限による苦悩は、. 1. 研究 1. 非定形抗精神病薬の登場や生活技能訓練、デイケアや作. 分裂病という病を、ロールシャッハ法を通して全体的. 業所などの普及・改善を加味しても、決して軽いもので. に理解することを目的とする。発症年齢の様々な人を対. はない。脳の機能障害など様々な原因が考えられる中で. 象として、分裂病にはどのような障害があり、それがど. 、分裂病者にチーム医療として、臨床心理士がかかわる. のような問題となっているのかといった所見的な理解を. 機会も増えてきた。臨床心理士としてどのような貢献が. 行う。. できるのであろうか。. 2. 研究 2. 人が社会的な存在である以上、コミュニケーションに. 分裂病をかかえた方を、ロールシャッハ法を通して個. 重要なファクターである感情・思考障害を有する分裂病. 別的に理解することを目的とする。分裂病という病をか. をかかえる方にとって、対人関係は避けることのできな. かえ、その病とある程度つきあってきて、これからもそ. い課題であると言っても過言ではない。よって、分裂病. の病をかかえて生きていかねばならない、発症から 10. 者のコミュニケーションにどのような特徴があるのかを. 年前後の方を対象として、特にコミュニケーションのあ. 把握することは、心理療法的アプローチにおいて不可欠. り方を探索的に理解する。分裂病というと、病理的側面. と言える。分裂病においては、いったん退院しても、再. ばかりを取り上げられがちであるが、保持している健康. 入院を繰り返すケースが多いと言われている。それは、. 的な側面にも着目し、日常のかかわりの中では見落とさ. 「治癒」の代わりに「寛解」という言葉が用いられると. れがちなコミュニケーションのサインをひろっていく。. ころにも表れている。病状の再燃を繰り返すことは、大. そして、両側面からの理解を深めることを目指す。. きな悪影響をもたらし、本人自身もその不安を抱えて日 々を過ごしている。たとえ、こころの状態の均衡が揺ら. 2.方法. いだとしても、日常生活に破綻をもたらさない程度にお. 1. 対象. さえるためには、信頼できる人間関係の樹立が重要であ. 研究 1:精神分裂病者 12 名(男性 6 名、女性 6 名) 。. るとされている。 小笠原(1978)は、 「分裂病者にロールシャッハ法を行. 診断基準は DSM-Ⅳによる。 研究 2:精神分裂病者 6 名(男性 4 名、女性 2 名) 。. う最大の目的は、形式的に分裂病かノイローゼか、分裂. 好発年齢とされる青年期後期∼後青年期(17 才位∼30. 病か躁うつ病かを決めるためではなく、むしろ個々の病. 代前半)に発症し、発症後 10 年前後である。診断基. 者への治療的関与のために、その人格像をそこからより. 準は、同じく DSM-Ⅳによる。. 多く知ろうとしてである。 」と述べている。心理士が、ロ. 2. 施行時期. 2001 年 3 月∼11 月。.

(2) 3. 分析方法 ロールシャッハ法(名古屋大学式技法) 。. 事例 A・C・E には、概して対人的な意識がある程度もし. 研究 1:形式分析を中心として、反応内容やロールシャ. くは強く認められ、人との共通理解も保持している様子. ッハ法場面における態度等も考慮に入れた。. がうかがわれた。個別にみると相違点が認められる。事. 研究 2:形式分析を踏まえた上で、継列分析を中心とし. 例 A では、アンビバレントな感情が生じやすいものの情. て考察した。特に、名古屋大学式技法における「思考. 緒的で非常に前向きでありコミュニケーション意欲が認. -言語カテゴリー」によって、個別性を重視しながら. められる。事例 C では、かかわり方が希薄で過剰に防衛. 反応にまつわる全心理的過程に着目して、従来の標. し病的部分を抑圧している。事例 E では、一貫して脅威. 準的な形式分析では十分すくいきれなかった反応態. を感じやすいが言語力やコミュニケーション・スキルを. 度や思考、論理の様式、コミュニケーションや表現. 保持している。これらを踏まえることで、かかわりの中. の仕方等を考慮に入れた。さらに、コミュニケーシ. で積極的に取りあげる点や、逆に取りあげることを避け. ョン機能の視点から、病理的なサインのみならず健. るべき点が異なることが推察される。また、事例 D・F. 康さを反映するサインも拾うために、. は、共に人当たりがよく社会的スキルを保持しているが. Communicative Elaboration(2001,森田ら)を取. 、その外面と内面とにはギャップがある。事例 D では、. り入れ、検討を加えた。. 対人的な感心もあり内閉的でもなく、ネガティブなもの. 尚、ロールシャッハ法のスコアリングや解釈は、研究会. へのおさまりがつきにくいものの何とかしようと取り扱. やスーパーヴィジョンにて検討を加えた。. う面がある。一方で事例 F は、対人的感受性が低く内へ ひきこもる傾向があり、ネガティブな感情が否認・排除. 3.結果及び考察. されやすいという面で異なっている。かかわり手のおさ. 1. 研究 1. えるべき留意点には、相手へのより深い理解が求められ. 分裂病者の知的・情緒的・対人的側面の 3 側面におい. 、これら外面の良さに比して内面ではどのようなことが. て、それぞれの障害に共通点が見受けられた。現実検討. 起きているのか、そのギャップを踏まえることが望まれ. 力の低さといったいわゆる認知・思考障害、情緒的な統. ると考えられた。事例 B の病的世界が表に出ている様子. 制の悪さや自我境界の脆さ、他人との共通理解や共感性. と、事例 C の病的世界を過剰に抑圧している様子とでは. が乏しく、現実の対人関係の難しさなどがあり、分裂病. 、そのあり方が異なるものの、事例 B・C ともに本人の自. というものの理解につながった。また、ロールシャッハ. 閉性や防衛を尊重し、侵入的にならないかかわりが求め. 法場面の中でのやりとりでは社会的で健康的な部分も垣. られ、この個に即した理解はやはり必要不可欠であると. 間見られ、ひとりの中に病的な部分と健康的な部分とが. 考えられる。コミュニケーションのあり方から以下の 3. 共存している様子が再確認された。. 点が考察された。. 2. 研究 2. ① 対人的意識や人と共通理解をする力はあっても、. 1)コミュニケーション. 個別にみると相違が認められた。かかわりの中で取りあ. 対人的側面はその人の認知的・情緒的側面も関与して. げる点、避けるべき点が異なる。. いるため、それらを考慮に入れることが不可欠である。 Table 1: 6 事例の特徴の抜粋. と、内面にはギャップがあった。それを踏まえた慎重な. 事 例. かかわりにおける 共通点 相違点 留意点・望まれる点 アンビバレントな感情. 頑張りを認め、支持し A コミュニケーション意欲-有 付き添っていく かかわり方希薄. 些細なことが脅威、防 C 対人的意識-有 過剰防衛. 病的世界の抑圧 衛を尊重、わずかなサ 共通理解-保持 インを糸口に 脅威-強. 言語力+コミュニ 知的対処力を支持、言 E ケーションスキル-有 語で説明し理解を促す 対人的感心-有. D 内閉的でない. 人当たり良好 ネガティブな感情を取扱う 外面と内面のギャップ 社会的スキル を踏まえた慎重さ 対人的感受性-低. -保持 F 内閉傾向. B C. ネガティブな感情を否認 病的世界-表 病的世界-抑圧. ② 人当たりがよく社会的スキルを保持している外面 かかわりが求められる。 ③ 病的世界が表に出ているか抑圧されているか、そ のあり方は異なれど、本人の自閉性や防衛を尊重し、侵 入的にならないかかわりが求められる。 2)ロールシャッハ法 継列分析の中で「思考-言語カテゴリー」を用いること で、見落とされがちなコミュニケーション・サインを拾 うことが可能であった。特に、病理的なサインのみなら ず健康さを反映するサインである Communicative. 自閉性・防衛を尊重、 侵入的にならない. Elaboration に注目する。.

(3) Table 2: 6 事例の Communicative Elaboration 事 認知-思考機能 感情統合機能 例 definiteness affective elaboration. A B C D E F. 1 2 2 4 5 1. コミュニケーション機能 utilization for illusutration. 2 1 0 3 1 0. 0 0 0 0 0 2. し侵入的にならない慎重なかかわりの必要性などが明ら かとなり、よりスムーズで豊かなかかわりへと展開して いくと考えられる。ロールシャッハ法から得られた理解 、特に健康なサインを日常と結びつけて考えることで、 家族や医療スタッフなど、その人とかかわりのある周囲 の人々にも、より円滑で豊かなコミュニケーションを築 くひとつの契機として役立つと考えられる。 4.結論. ブロットの特徴を考慮し連想との整合性を高め、適切に. 分裂病者には病的・健康的部分が共存しており、その. 概念を形成する<認知・思考機能>である. バランスやあらわれ方には個人的要素が大きく関与して. definiteness は 6 名全てに認められた。しかし、病的な. いることがわかった。それらはコミュニケーションのあ. サインを表すカテゴリーと同時にスコアされることもあ. り方へ影響を及ぼすため、両面をおさえることが必要で. った。感情を内容に取り入れ反応を合理化し、場面に適. あり、個に即した慎重な理解がより有意義なかかわりへ. 応した感情表出をする<感情統合機能>である. と展開する可能性が示唆された。. affective elaboration は、事例 A・B・D・E においてみ られた。これがスコアされなかった、事例 C は攻撃性や. 5.今後の展望. 衝動性が抑圧されており、同じく事例 F もネガティブな. 本研究は、筆者が心理臨床の初学者であるため、まず. 感情表出が過剰に抑圧されていることを踏まえると、う. 分裂病というもの、そして分裂病をかかえる方について. まく感情統合機能が働いていない様子がうかがわれる。. 、少しでも理解しようというところから始まった。そし. また、検査者の存在を意識し、反応を共有する、程良い. て、かかわりの中での留意点や望まれる点を提起した。. 対他意識性の<コミュニケーション機能>である. 実際に、これらの提起を治療的かかわりや治療方針へ. utilization for illusutration は、事例 F のみであっ. 結びつけ、直接的にでも間接的にでも、この病をかかえ. た。特に、事例 F においては、外面の人当たりの良さに. る方々にどのようにいかされるものなのか、またチーム. 比して、ロールシャッハ反応様式からは、非常に様々な. 医療のスタッフにどのように役に立つものなのか、それ. 面が抑えられ低下している様子がうかがわれていた。そ. が確認されて初めて臨床的有用性といえるであろう。今. のギャップをつなげたのが、このコミュニケーション機. 回は理解にとどまったが、今後、現場の中で臨床的にい. 能にみられる能力であった。さらに、これら 3 機能が揃. かしていくために実践的に検討していきたい。. うと、ブロットと自己の連想を摺り合わせ「より似てい るもの」として反応を産出したり(認知・思考) 、ブロッ. また、分裂病以外へも対象の枠を広げ、さらなる検討 を行いたい。. トや検査状況から触発された感情を取り入れて反応を「 より豊かなもの」にしていくこと(感情統合)によって. 文献. 、反応を「よりわかりやすいもの」として相手に伝える. 森田美弥子・長野郁也・中原睦美・杉村和美・高橋昇・. こと(コミュニケーション)が可能となる。3 機能のう. 高橋靖恵・星野和実 2001 ロールシャッハ反応に. ち、スコアされなかった機能について補い支えるという. おける限定づけ・修飾の系列化 名大式「思考・言. かかわりが、より豊かなかかわりへと展開していくと考. 語カテゴリー」による検討 心理臨床学研究,19.3.. えられ、一つの指針を与えると思われる。. 311-317. 以上より、①分裂病者には、健康的な機能のどの部分. 小笠原俊夫 1978 ロールシャッハ・テストを通して. が困難をきたしているのかを把握し、顕在化あるいは潜. の精神分裂病の人間学的理解の試み 名古屋医学,. 在化しているのが病的な部分なのか健康的な部分なのか. 100(3・4).91-111. を踏まえること、②個に即したより深い理解をすること が必要不可欠であること、が明らかとなった。この 2. ※今回、被検者のプライバシー保護を考慮して、詳細な. 点をおさえることによって、積極的に取りあげることが. ロールシャッハ・プロトコルについては全て割愛した。. 望まれる点や逆に取りあげることを避けるべき留意点を おさえたかかわり、あるいは本人の自閉性や防衛を尊重.

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