い じめの集 団的性質 と指導上の問題点
1
. は じめ にい じめは,依然 として,多 くの先進工業 国に おいて,深刻 な教育的 ・社会的問題 として認識 され てい る (01weus,1978;Whiteny&Smith, 1993)。
近年,い じめの研究では,直接 的な当事者以 外 の児童生徒 を含めた全 ての者がい じめの発生 や展 開に果たす役割や,加害者が児童集団全体 をい じめに導 く戟略 ・手法 な ど,い じめ を児童 生徒集団全体の問題 とし捉 えて,その形成要 因 を検討 し,指導上の対応策 な どを検討す ること な どが重要視 されつつある。そこで,本論文で は,上記 の ような,い じめの集団的メカニズム を論 じた研究 を概観 して,その集団的性質 によ り派生す る様 々な指導上の問題点 について論 じ ることにす る。
2.
い じめ発 生 時 の 児 童 生 徒 の役 割サル ミヴ ァリら (Salmivallieta1.,1996a)によ れば,人がい じめ られているの を無視す ること は,直接的にい じめに加担す ることではないが, 加害者 には暗黙の了解 と解釈 され,結果 として い じめ を促進す る可能性が高い ことが論 じられ ている。 この ようにい じめへの関わ りが少 ない と考 え られる傍観者の行動で さえ も,い じめの 形成や碓拝 に強い影響 を及 ぼす ことが述べ られ てお り,加害者,被害者 な どの直接的当事者で ない児童生徒がい じめの展 開に果たす役割 に焦 点 を当てた指導が求め られるといえよう。
原 英樹
さて,い じめ発生時 における様 々な児童生徒 が 果 た す 役 割 につ い て は , サ ル ミヴ ァ リ ら
(Salmi vallieta1.,1996a)に よる参 加 者役 割 (ParticipantRole)によれば,加害者 (い じめ を 主体 的 に リー ドす る者),強化者 (い じめ をは や したて扇動す るな ど間接 的な形 で加害行為 を 促進す る者),援助者 (加害者 の手伝 い をす る な ど直接 的 に加害行為 を補助 す る者),防御 者 (い じめ を止 め た り,被 害者 を慰 め るな どい じ め に対抗 す る行動 を示す者),傍観者 (い じめ があ って も知 らないふ りをす るな ど無 関心 な態 度 を示す者),被害者 (い じめ られ る者)の6 種類 の役割が示 されてい る。加害者 ,強化者 , 援助者の3つの役割 は,い じめに加担す る傾 向
を示 し,一方,防御者,傍観者 ,被害者 は,そ れぞれ性 質や立場 に異 なる点 はあ るが,加害行 為 に加担 していない とい う点では共通 した特徴 が見 られるのである。
加害者側 と非加害者側の力学関係
実際 に,学級集団 におけるい じめの発生や展 開 を捉 えるためには,各 々の児童生徒が どの よ
うな役割 を果 たすか な ど,それぞれの役割 につ いてその人数構成 を詳細 に把握す ることが必要 で あ る と考 え られ るので あ る。 オ ル ヴェ ウス (olweus,1978)によると,児童生徒 の集団では, い じめに対 して非難,反対す る者 たちの勢力 の 強 さの度合 いによって,い じめの発生や展 開が 抑制 された り,悪化 した りす ることか ら,い じ め に加 担 す る勢力 と加 担 しない勢力 に大別 し
神奈川大学心理 ・教育研究論集 第27号 (2008年3月31日)
て,両 カテ ゴリーの勢力関係 を観察 してい くこ とが重要 となるのである。前記サル ミヴァリの 役割 を鑑み ると,加害者,強化者,援助者 を加 害者 カテゴリーに,防御者,傍観者,被害者 を 非加害者 カテゴ リーに分類 し,両者の構成比や 両 カテ ゴリー内の対人関係 な どを把握す ること が必要 となろう。そ して,い じめ に加担す る者
と加担 しない者の力学関係 とい う観点か ら学級 集団 を把撞す ることで,い じめに対す る許容度 や,い じめの発生や展 開を予測 してい くことが 求め られるといえよう。
さて,い じめの対す る適切 な指導 を行 うため には,い じめに対す る加担 ・非加担 の力学 関係 をとらえるだけでは必ず しも十分ではな く,傍 観者や強化者 など,い じめへの直接 的な関与が 明 らかでないため,従来はあ ま り重要でない と 考 えられて きた者 たちの示す役割 な どに も着 日 し,各 々の役割がい じめの形成や展 開に与 える 様 々な影響 を詳細 に考察す ることが重要である と考 え られるのである。そ こで, この ような観 点か ら指導上の問題 とな りうることが らについ て以下 に論 じてい く。
傍観者に対する指導
まず,傍観者の問題性 は,既 に述べた ように, い じめ を軽視す ることは直接的にい じめに加担 す ることではないが,それが加害者 には暗黙の 了解 と解釈 され,結果的にい じめ を促進 して し まう可能性が高い論 じられていることであろう (Salmivallieta1.,1996a)。 これは,オルヴェウス (01weus,1978)が述べ ているように,学級 内に い じめ に反対 し,異 を唱 える者の勢力が少 なけ れば,加害者 は抵抗無 くい じめ を行 えることに よる もので,傍観者が多数存在す る学級 は,加 害行為 を抑制す ることが出来 ない状態 を現 して いる といえるのである。従 って,指導の対象が 直接 的な型で攻撃 を行 う者 たちに集 中 し,攻撃 行動 を伴 わない傍観者的行動 な どに焦点が当た らず,彼 らに対 して適切 な指導が行 われない場 令,い じめを許容 し悪化 させ て しまう可能性が
高い と推察 されるのである。 そ こで,傍観者た ちに指導上の焦点 を十分 に定め,彼 らが (自分 は,人 をい じめてないか ら,悪 い ことは してい ない し,特 に改 め る ところは無 い。)とい う意 識 を捨 て,(い じめ を目撃 した ら注意 した り, あるいは先生や親 に報告 した りしない こと事体 が,加害者 を助 ける こ とになる。) と意識 を改 めるよう,傍観者的な行動 の変容がい じめ を防 止す ることにつ なが ることを粘 り強 く指導 して い くことが求め られるのである。
強化者 に対 する指導
次 に,言葉 な どでい じめ をはや し立 てた りす るな ど間接 的な形 でい じめ を促進す る役割 を果 たす強化者の問題性 については,主体 的にい じ め を行 う加害者や,加害者 の補助的役割 を果 た す援助者の ように直接 的 な関わ り方 を しないた め (Salmivalliet.aL1996a),その間接性 ゆえに 加害行為 の発見が難 しく, また,それ に関 して 言 い逃 れ しやすい こ とな どが想定 され るため, それ らを念頭 において極 め細 かい指導が必要 と
されるのである。従 って,効果的な指導 を行 う ため には,(やれ,やれ )な どの言葉 を発 して い じめ を煽 り立 てた り,現場 に見物 人 を連 れて くるな ど,い じめ を格好 な見世物 として面 白が る彼 らの加害行為 の手法や, 自らの行動 につい て (自分 は,ただ人 を連 れて きただけ,人 を傷 つ け る ようなこ とは してい ない。)と主張す る な ど,加害行為の実害性 を否定す る正当化の手 演 (Sykes&Matza,1957)を熟知 し,彼 らの行 為 を知 らず知 らず に黙認 して しまうことを防 ぐ
ような指導法 を確 立す ることが不可欠である と 考 えられるのである。
被害者 に対する指導
近年 のペ リーによる攻撃行動 の研 究 によれば (perryeta1.,1990),加害者 は,攻撃行動 を行 う 際,児童生徒集団の中か ら,やみ くもにターゲ ッ トを選定 しているわけで はな く,彼 らは集団 の成員一人一人 に対 して赦密 な社会的認知 を形
成 し,被害者 として適切 と考 える者 を選定 して いることが論 じられている。その研究 によると, 加害者 は,攻撃行動 を行 う際 に様 々な児童生徒 の反応 を基 に して,outcomeexpectation(どの よ うな結 果が生 じるか判 断す る認 知),outcome value(自分 にとってその結果が どれ くらい重要
であるか判断す る認知) を形成 し,最適 な被害 者 を選 び出す トライアウ ト(tryout)を行 うこ
とが明 らかにされている。
い じめの研究 において も,特定の行動的性 質 を示す者が,被害者 として選 ばれることが明か され てい るのであ る。 オル ヴェウス (01weus, 1978)に よる と,被害者 は総 じて不人気 で, 自 己主張 に欠け,体力的 に弱い者 な どの性質 を示 してお り,加害者 はい じめ を行 って も,周囲の 者か ら非難 を受 けた り,当人か ら反撃 を受 ける ような可能性が極 めて少 ない と判断 した者 を被 害者 とす ることが論 じられている。
また,サル ミヴァリの被害者 に関す る研 究で は (SalmivallietaL 1996b),被害者 を,反撃型 (couteraggression),無力型 (Helplessness),無 関心型 (Nonchalance)の3類型 に分類 し, どの タイプの者が,加害者の よ り強い ターゲ ッ トと な りやすいかが明 らかにされてお り,男子では, 加害者 に反撃 した り,挑戦的な態度 をとる傾 向 の強い "反撃型"の タイプが,一方,女子では,
"反撃型" と,何 も出来ず に逃 げ出 した り, 自 分で処理で きず に教師や親 にい じめ られたこと を報告す るような行動 を示す "無力型"の タイ プが,い じめの維持 や悪化 を促進す ることが明 らか になっている。反撃型の被害者の行 う仕返 しは,無力で効果的がないため,加害者 に容易 に制圧 されるだけでな く,周囲の者 たちに "こ っけい な見世物" とい う報酬 を もた らすので, 加害者の餌食 にな り易いのではないか と論 じら れているのである (Salmivallieta1.,1996b)。 さ らに,オルヴェウス (01weus,1978)によれば, 短気で挑発的 な被害者 は,多 くの児童生徒 をい
らだたせ るために,加害者 は周囲の反発 や抵抗 な くい じめ を行 うことが可能 になる と指摘 され
てい る。上記 の結果 をまとめ る と,男女共通の 特徴 として,無力 な反撃 を行 って "こっけいな 見世物" を提供す る者や,周 閲の者 を苛立 たせ るような "短気で挑発 的な"者が,加害者の タ ーゲ ッ トにな り易い といえるのである。
さ らに,上記 サ ル ミヴ ァ リの研 究 に よれ ば (Salmivallieta1.,1996b),い じめを減少,防止 さ せ る被害者の態度 については,男子では,無力 な反撃 を行 わず,あたか もい じめ を気 に してい ないかの ような冷静 な態度 を取 る "無 関心型"
の者が,女子 では,無力型 に見 られるような態 度 を示 さない者が,い じめ を助長 させ ない こと が明 らか になってお り,男女通 してい じめ を気
にかけない ような冷静 な態度が,い じめ を維持 あるいは悪化 させ ない とい うことが伺 えるので ある。
い じめの責任 を考 える と,その第一義的責任 が,攻撃行動 を行 う加害者側 にあるのはい うま で もないが,被害者が攻撃の対象 となることを 最小 限に してい くため には,被害者の心理的外 傷 などのケアを行 うだけでな く,加害者 の ター ゲ ッ トにな りうる者 を未然 に発見 し,彼 らに自 己の対応 によってい じめの展 開が どの ように変 化す るか を理解 させ た上 で, 自身が加害者の餌 食 にな り易い行動 である無力 な反撃や周 囲 を苛 立 たせ る挑発 的な行動 を抑制 し,い じめ を受 け て も気 にかけない ような冷静 な態度 を習得す る な ど, 自らの行動 を変容 させ てい くことの意義 を納得 させ,被害 を減 らしてい くような指導が 必要であると考 え られるのである。
被害 ・加害者 に対する指導
上記の6つの役割 のほか に も,大阪市立大学 (1985)早,サ ッ トンとス ミス (Sutton
&
Smith, 1999)によ り,被害者,加害者双方の行動特性 を示す被害 ・加害者 とい う役割 を示す者の存在 が指摘 されているが,今 の ところ,彼 らの行動 をどう位置付 けるか定かで ないため,い じめの 発生や展 開に及ぼす影響 な どについて も不明 な 点が多い。サ ッ トンとス ミス (Sutton&
Smith,神奈川大学心理 ・教育研究論集 第27号 (2008年3月31日)
1999)によれば, この カテ ゴリーは加害者の亜 型 と被害者の亜型 に分類で きることが示唆 され ているが,実際 に,加害行為 に積極 的 に関わ り なが ら,時 に反撃 を喰 らってい じめ られる "加 害者 の亜型" と,加害者か らの更 なる攻撃 を恐 れて,仕方 な く彼 らの命令 に従 ってい じめに加 わる "被害者の亜型"では,両者の加害性 の性 質やその影響の度合 いは,大 きく異 なる といえ よう。従 って,被害 ・加害者 に対す る指導 を行 う際 には,彼 らの表面的 な行動特性 にとらわれ ることな く,その行動が どの ような原 因や心情 によって生み出 されているか を十分 に把握 した 上で,その加害的,被害的両側面 に焦点 を当て て指導 を行 うことが必要 となる と思 われるので ある。
3.
加 害 者 が集 団 をい じめ に導 く戦 略 ・手 法加害者の社会認知的技能 によるネ ッ トワーク 作 り
加害者 に関 しては,伝統的に,強権 的で,他 人の感情や態度 に鈍感 な人物である とす る社会 的技能欠陥モデル (socialskillsdeficitmodel; Crick&Dodge,1994参照) に沿 う論議が な され て きたので あ る (Suttoneta1.,1999a,1999b;
Sutton,2001;Aresenio&Lemerise,2001)。上記の 論 に従 えば,加害者 は誰 の 目に も明 白な加害行 為 を行 いなが ら,周囲の児童生徒が加害者 に対 して抱 く不満,怒 り,不信感 な どを気 に留 めな いために,不人気で,孤立 した存在 になること が推測 されるのである。 しか しなが ら,オルヴ ェウス (01weus,1978)が論 じる ところに よる と,加害者が集団内で孤立するような状況では, 彼 らがい じめ を行 うことは きわめて困難である
とされている。 また,他者 を仲 間はずれに した り,集団で重視 した りして対人関係 の妨害 をす る "間接 的い じめ"(Rivers&Smith,1994)を行 うためには,大勢の児童生徒 の協力が必要であ る。 この ようない じめの形成,発生用件 を考 え る と,加害者が,い じめ を行 うためには,協力
者,賛 同者 を集め,彼 らを集団 として組織化 し てい くことが不可欠である と考 え られるのであ る (Suttoneta1.,1999b)。
い くつかの調査結果 を見 る と,加害者の集団 内の人気やステー タスは,その明 白な加害行為 に も関わ らず極端 に低 い とは言 えないだけで な く (01weus,1978,Andreou,2001),加害者 は,強 化者,援助者 な ど加害行為 に携 わる者 たち とグ ループを形成 してお り,その規模 は加害行為 に 加担 しない者 たちが形成す るグループよ りも大 きい ものであることなどが明 らかにされている のである。いわば,彼 らが加害行為 に加担す る 者 たちを結 びつけてネ ッ トワークを組織 してい ることが伺 えるのであ り, (Salmivallieta1.,1997) 加害者 たちが どの ように同志 を集めてい じめ に 加担す る集団 を作 り上 げるか など,その メカニ ズムやプロセスに留意 し, ネ ッ トワークの形成 や学級 内の影響力 を抑制す るような指導 を行 う ことが必要であると思 われるのである。
い じめの正当化 とその指導
前述の ような加害的 ネ ッ トワークを形成す る ため には,他者 の感情 や態度 を敏 感 に察知 し, 彼 らの支持や承認 を得 るような社会認知的技能
を駆使 す る こ とが不 可 欠 で あ る と考 え られ る が,サ ッ トンらによって (Suttoneta1.,1999a), 加害者 は,他の役割 を果 たす児童生徒 に比 して, 最 も適切 に他者 の行動 を認知 し,感情 を理解す る とい う調査結果が示 されている。 これは,加 害者が,児童生徒集団内でその成員の動 向 を的 確 に把握す るな どの社会認知的技能 を行使 す る ことによって,児童生徒集団 をい じめ に導 くこ とを強 く示唆 している もの といえよう。
さて,中井 (1996)によれば,加害者 は,被 害 者 とな る者 の些細 な欠 点 や失敗 をあ げつ ら い,い じめの原 因が被害者側 にあることを喧伝
し,加害行為 を正当化す る とされてお り,社会 的学習理論 では,攻撃行動 を行 う者 は,正当化 の認知 を用 いて, 自己の罪悪感 を和 らげると共 に,周囲の者 にい じめは正 しい,許 され ると納
得 させ ることで,加害行動 を維持す ると論 じら れているのである (Bandura,1973)0
実際,い じめの調査結果 を見 る と,65%以上 の加害者 は被害者 に悪 い ところがあるのでい じ めた (森 田 ・活永,1994),約半数 の児童 はい じ めは理 由によっては悪 い とは言い切 れない (京 都市教育研 究所,1983)な どの反応 が示 されて お り,加害者が,い じめ を正当化す ることによ って,その加害行為 を維持 していることが伺 え るのである。
そ こで,い じめに発生時の役割 と正当化の頻 皮,そのス トラテジー との関連 を調査 した研 究 によれば (Hara,2002),加害者 を始め,強化者, 援助者 な どの加害行為 に加担す る者 たちは,高 い割合でい じめ を正当化す る認知 を示 してい る のである。
さらに,上記研究の正当化 のス トラテジーに 関す る分析 による と (Hara,2002),加害者,強 化者,援助者は,それぞれ 自らの加害手法 を効 果 的 に正 当化 す る特 有 な反応傾 向 を示 してい る。
加害者 は,100%が (仕事 が遅 く,班 に迷惑 をか けるので,罰 を与 えただけ。)な ど,い じ めの責任 を被害者 に押 しつけて,誰 の 目に も明 白な自らの加害行為の責任 を否定す るのに有用 な "被害者の否定"(Sykes&Matza,1957)とい うス トラテ ジー を用 い る こ とが示 されてい る (Hara,2002)
.
他 に も,強化者,援助者 な ど加害行為 に加担 す る者 たちは,以下の ようにそれぞれ特有 のス トラテジーを用いた正当化の認知 を示 している (Hara,2002)。言葉 な どの間接的な方法で,い じ め を扇動す る強化者 は,既 に述べ た ように (自 分 は人 を呼んで きただけで,誰 に も危害 を与 え て い ない。)な ど と 自 らの加 害行 為 に関 して
"実害性 の否定"(Sykes&Matza,1957)とい う ス トラテジー を選択 し, また,加害者 に従 って 補助 的加害行為 を行 う援助者 は,(他者 に従 っ てや っただ け なので, 自分 には責任 が無 い。) とい う責任 の否定 (Sykes&Matza,1957)辛,
(仲 間の名誉 のためにや った。)と してグループ の意志 に従 った とす る高 度 な忠 誠心へ の訴 え (Sykes&Matza,1957)とい うス トラテジーなど, 加害行為の主体性 を否定 し,部分的,従属的な 立場 を強調す る傾 向が強い ことが明 らか にされ ている。
さて,教育現場では,様 々な方法で,い じめ の不 当性や残虐性 な どを強調 し,い じめは恥ず べ き絶対 にや ってはいけない恥ずべ き行為であ ることを教 え込 もうと努力 を続 けている といえ よう。
しか しなが ら,児童生徒 が ,(クラスの和 を 乱す者 を罰 しただけなので,悪 くない,あるい は,仕方 ない。)な どと付 帯 的条件 を付 け加 え て, 自己の加害性 を正当化 しようとす るケース に関 しては,い じめが悪 い ことであることを総 論 としては認めなが らも,上記の ような付帯条 件 を付加 して, 自分の加害行為 を例外 と して否 定 し,許容 させ るよう試みているのであ り,不 当性 や残虐性 な ど教 え込 む ような指 導 だ けで は,その加害行為 を防止す ることは困難であ り, 例外 を作 り出す正当化 の認知 に焦点 を当てる指 導が重要である と考 え られるのである。
い じめ を正 当化す る児童生徒 の指導 について は,加害者,強化者,援助者 な どの役割 を持つ 児童生徒 に特有 な正当化 の手法 を熟知 し,その 論理的な矛盾点 を的確 に指摘 し,その ような正 当化 によるい じめの碓拝 を防 ぐような指導 を行 うことが求め られる と考 え られるのである。具 体的 には,加害者が (クラスの和 を乱す者 を罰 しただけなので,悪 くない,あるいは,仕方 な い。)とす る認知 については, クラスの和 を乱 す者 を正 そ うす るな らば,や さ しく諭 し,励 ま す ようなや り方 も可能 な中で,罰 を与 えること に結 びつ くような明確 な
根
拠 はな く, さ らに, 誰が何 の権限 を以 って罰 を与 えるのか とい う彼らが取 った行動が抱 える根本 的な問題点 を指摘 す るな ど して,彼 らが 自らの加害行為 を維持す るための論理的口実 を封 じてい くような指導が 必要であるといえるのではないだろ うか。
神 奈川大学心理 ・教育研究論集 第27号 (2008年3月31[])
そ の他 に も注 目に値 す る事 柄 と して,本 来 は い じめ に否 定 的 で あ る はず の被 害 者 にお い て, そ の60%以 上 が ,彼 ら自身 にい じめ の責任 が あ る とい じめ を許 容 す る反応 が 示 され て い る こ と が 挙 げ られ よ う. この現 象 は ラ ー ナ‑ (Le rner, 1980)が提 起 して い る "JustWorldTheory"(多 大 しい 人 間 は報 わ れ ,悪 い 人 間 は罰 され る) と す る論 を想 起 させ る もので あ り,も し被 害 者 が , 加 害 者 の 高 い 社 会 認 知 的 技 能 (Suttoneta1., 1999a)を用 い た工 作 の結 果 , 自 ら を悪 い 人 間 で あ るか らい じめ られ て も当然 と考 え る よ うな 強 い影 響 を受 け た とす れ ば,加 害 者 に よる正 当 化 な どの認 知 的工 作 が もた らす 実 害 性 を抑 制 す る効 果 的 な介 入法 の 開発 が 急 が れ る とい え るの で は ない だ ろ うか。
4.
結 び近 年 の 注 目す べ き研 究 に よ っ て , い じめ に 様 々 な児童 生徒 が 果 たす役 割 や ,加 害 者 な どが 児 童 生 徒 集 団 をい じめ導 くた め の手 法 や 戦 略 な どが 明 らか に され つ つ あ る とい え る の で あ る。
今 後 , い じめ に対 して効 果 的 な指 導 や 介 入 を行 うた め に は,上 記 の よ うな調 査 ,研 究 の成 果 を 鑑 み て , い じめ の集 団性 か ら生 じる様 々 な問題 点 を十 分 に把 握 し,対 策 を講 じて い くこ とが 求 め られ るの で あ る。
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