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いじめを規定する学級集団の特徴

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いじめを規定する学級集団の特徴

その他のタイトル The effect of group characteristics upon the

"IJIME" in the classroom.

著者 高木 修

雑誌名 関西大学社会学部紀要

18

1

ページ 1‑29

発行年 1986‑11‑04

URL http://hdl.handle.net/10112/00022712

(2)

いじめを規定する学級集団の特徴

高 木 修

The effect of group characteristics upon the''IJIME''  in the classroom. 

Osamu Takagi 

Abstract 

Most of  recent "IJIME" (e.g.  tease, bully, torment,  ill‑treat  etc.)  are occuring  in  the  classroom.  ・whether  "IJIME"  occures  or  not  depends  upon  the  group  characteristics, in  addition to pupil's personal attributes. The object of  present  research  is  to find out  the  relationships between "IJIME" and the group character‑

istics  such  as  teacher's  leadership,  the nature of  interpersonal  relations  in  the  class,  and the  norm about  "IJIME". 

As  the  result, the  significant  relations we re  found  between "IJ IME" and  those  characteristics  which  also  correlate significantly each  other. 

Key words: IJIME, aggressive behavior, class, leadership, group norm,  personal norm, group characteristic 

抄 録

現代の「いじめ」のほとんどは,学校, しかも学級という小さな単位の中で起こって いる。したがって,「いじめ」の生起は,生徒の特性のみならず,学級集団の特徴によっ ても規定されることが少なくないであろう。そこでこの研究では,代表的な集団特徴と して,教師のリーダーシップ行動,学級集団の主として対人関係の特性,そして「いじ め」に関する規範を取り上げ,それらが「いじめ」といかに関係するかを明らかにしよ

うとした。

その結果, 3つの特徴が有意に関係し,それらが「いじめ」の生起を規定することが 明らかとなった。すなわち.教師が目標達成と集団維持の機能を果していると生徒が感 じるクラスにおいてほど,生徒間に協力的・親和的関係や生徒相互の関心と配慮が存在 すると思われ,また,「いじめ」に関して,望ましい行動を高く,望ましくない行動を低 く評価する規範が共有されていると考えられていた。そして,そのような特徴を持つク ラスにおいてほど,「いじめ」の認知が少なかった。

キーワード:いじめ,攻撃行動,学級集団, リーダーシップ,集団規範,個人規範,

集団特性

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関西大学「社会学部紀要」第18巻第1

[ 問 題 ]

今日,「いじめ」の問題は益々深刻化し,もはや教育問題というよりはむしろ社会問題となり,

多方面からの解決に向けての緊急の努力が必要な事態に至っている。確かに「いじめ」は昔から あった。しかし,現代の「いじめ」は,それらとは明らかにその性質を異にしている。「いじめ」

による自殺や殺人といった事件の発生は,そのことを暗示する一つの事実である。

現代の「いじめ」の特質として,小林剛 (1985)は,①陰湿化:攻撃の仕方がカラットしてい ない。無視するとか,仲間はずれにするとか,物を隠すといった仕方で,これでもかこれでもか といじめ抜<'②長期化:いじめの期間が長く,しかも高学年になるほど長くなる,③いじめ行 為の正当化:多数のいじめっ子は,相手が悪いからいじめるのだと,いじめを正当化する論理を 持っている,④偽装:いじめっ子や傍観者だけでなく,いじめられっ子さえも,いじめの本質を 隠し,教師や親に偽装することがよくある,⑤巧妙化:見た目にはわからないようなところを攻 撃する,などを挙げている。小林はまた,いじめの進行について,まず第1段階として「遊び」

や「ふざけ」で始まり,第2段階で「いじわる」,「けんか」,「からかい」となり,そして第3 階で「いじめ」が起こるとしている。さらにこの「いじめ」,①心理的ふざけ:持物を隠す,叩 く,ける,つねるなど,②心理的いじめ:仲間はずし,無視,悪口など,③物理的ふざけ:脱が す,裸にするなどの身体への攻撃,④物理的いじめ:金品の強奪,威す,転倒させるなど,の順 番で進行すると考えている。

1 いじめの4層構造(森田洋司,1985 C) 

現代の「いじめ」のほとんどは,学校という場でなされ,しかも,その大部分は学級という小 さい単位の中で起こっている。そのような「いじめ」の構造,つまり,集団構造の特徴として,

いくつかのものが挙げられている。例えば,森田洋司 (1985c)は,まず,集団化した いじめっ子と孤立化したいじめられっ子という特徴を指摘している。つまり,現代の「いじめ」

は,図1のように,「いじめっ子」(加害者)と「いじめられっ子」(被害者)とだけで成り立って

‑ 2 ‑

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いるのではなく,いじめを「周りではやしたてて面白がって見ている子」(観衆)と「見て見ぬふ りをする子」(傍観者)という 4層構造で成り立っている。いじめっ子の集団は, リーダー的な子 どもとフォロアー的な子どもに分れ,集団の人数は3人から10人位である。いじめっ子にとって 観衆の存在は,いじめ行為を積極的に是認してくれる体系として作用し,他方,傍観者の存在は,

いじめ行為を暗黙のうちに支持してくる体系として作用するというのである。第2の特徴は,標 的の転換である。いじめに対する注意や制止は,いじめの方向を転換させる。教師や大人が注意 した場合,いじめの標的が他の子どもに転換することがよく見られる。しかし,周囲の子どもが 注意した場合は,その子どもに鋒先が向けられ,彼らが今度はいじめられることになるというの である。第3の特徴は、強者への収飲である。いじめっ子は,周りの子どもにとって精神的にも 肉体的にも強者であり,怖い存在である。周囲の子どもは,自己防衛的に,あるいは保身の意識 から強者には逆らわない。彼らは強者の中に自己をいつも収飲させ,強者にとり入る。これは,

強者をさらに強者に仕立て上げることになり,学級内に隠然たる勢力をつくり上げることになる。

しかしながら,この構造も,一度アクシデントが起こると,今日の強者が明日のいけにえになる ことさえある。さらにもう一つの特徴は,無言と傍観の第三者が圧倒的に多いことである。だい たい学級の多数の子どもたちが,自分が攻撃されることへの恐怖から,無言と傍観を保ち,抑止 力を発揮しえないでいるというのである。

森田洋司 (1985b)は,以上に記した現代の「いじめ」の構造的特徴に加えて,重要なもう 1 つの特徴として,歯止め構造の消失を指摘している。森田によると,学級集団内における歯止め 構造は,内在化された規範と集団的反作用力に求めることができる。すなわち,人はその内なる 良心に照らして特定の行動の善悪を判断し,集団のなかで逸脱行動が現われると,集団成員の側 から逸脱への反作用があらわれ,集団は秩序化へ向かうことができるというのである。しかし,

現代の「いじめ」では,この歯止め構造が消失してしまっている。だから,例えば,従来望まし いこととして価値づけされていた児童の特性さえもが,「チクリ(密告)」とか「マジ(真面目)」

として非難されるようになっている。そのために,児童は内的良心から悪と判断していても,行 為では面白そうに見ていたり,見て見ぬふりをしてしまう。この背景には,自分が被害者(いじ められっ子)になることへの恐れがあり,それゆえに仲裁者が不在となり,「いじめ」への集団的 反作用力が失われている。つまり,「いじめ」という逸脱行動に対する規範的制裁がなくなってい るのである。もはや児童は,「いじめ」に対して採るべき行為を理解していても,その行為が級友 たちから必ずしも承認されるものでないことをよく認識しているというのである。

そもそも集団規範は,集団の全メンバーによって共有されている行動の様式,あるいは思考の 形式であって,それから逸脱することが,その集団からの除外,排斥を意味するほどに強い心理 的圧力をメンバーに与えるものであるとされている。これを集団レベルで定義すると,規範は,

反復的に生起する任意の一事態において,集団の全ての成員に共通に妥当すると(成員Miによ って)認知されている特定の行動型B i (認知・信念・態度を含む)に同調するよう成員Mi

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関西大学『社会学部紀要』第18巻第1

作用する社会的圧力piの合成されたもの(IP)である。したがって, (1)行動型Biは集団の 全ての成員に共通する,という認知が成員M iに欠けている場合, (2)行動型Biに関して成員 間に全く一致がない (consensusが極限的にゼロ)場合.(3)行動型B iに向かわせる社会的圧力 Pが全くない (piまたはIPがゼロ)場合.のいずれか1つ,または2つ以上に該当する事実が あれば,集団規範の存在は認められないことになる(佐々木薫, 1963,1971a)

学級集団のなかで起こる「いじめ」は,その学級を指導する教師によっても大いに影響される。

なぜならば,教師の指導力(リーダーシップ)は,児童と児童の関係を規定するものだからであ る。教師は,その指導力によって,対人関係において行って良いことと行ってはならないことと を児童に分らせる。さらに,児童間の関係を規定することによって,学級集団の質をも規定する。

だから,優れた教師は,学習内容である教科のエキスパートであるだけでなく,学級の雰囲気作 りのエキスパートでもなければならない。この学級の雰囲気といったものが.「いじめ」に大きな 影響を及ぼすのである。

リーダーシップ機能に関して三隅二不二(1964,1976)は,目標達成機能(performancefunction,  略してP機能と呼ぶ)と集団維持機能 (maintenancefunction, 略してM機能と呼ぶ)の二つの集 団機能概念にもとづいたPM理論を提案している。教師のリーダーシップにおけるP行動とは,

学級における児童たちの学習を促進したり,生活指導に関しては児童たちの課題解決を助けたり,

あるいは話合いなどの討議が有効に効率よく進展するように指導する,といった教師のリーダー シップ行動である。これに対して, M行動とは,児童に対して配慮をなし,公平に児童を処遇し,

不必要な人間関係の緊張を避け,児童間の相互依存性を増大させる,といった教師のリーダーシ ップ行動である。

教師の「いじめ」に対する役割について,森田洋司 (1985c)は.教師は正確な事態の認識に立 って,いじめにはこれを許さない毅然たる態度で臨み,同時に周りで見ている子供達にも,いじ めを許さない雰囲気を作りあげねばならない, としている。もし教師が「いじめ」の真相を確か める際,いじめられる側 (1人の場合が多い)の言い分よりも,いじめた側(多数の場合が多い)

の言い分を優先させるならば,あたかも教師の指導のもとで,事態を一層悪化させることになる。

そのような教師の言動は,「いじめ」を正当化し,いじめられた児童には,教師に対する不信感を 抱かせることになるというのである。ある調査(吹田市立教育研究所, 1985)によると,「あなた は,いじめられて,だれかに相談しましたか」という質問に対して,「だれにも相談しなかった」

と答えた児童が,いじめられた経験を持つ児童の42%を占め,「先生に相談した」と答えた児童は,

わずかに8 %にすぎなかった。また,相談しなかった理由として,「相談しても仕方がないと諦め たから」という回答が38%もあった。ここに,いじめられっ子が教師に対して不信感を抱いてい る事実の一端が示されている。

学級集団の種々の特性は,教師の指導性に依るところが大であるが,これは「いじめ」の抑制,

あるいは促進と深い関わりがあると思われる。学級集団に限らず一般に集団は,種々の側面にお

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いて独自の特性を持っている。例えば,日常的,あるいは非日常的な問題の解決に当り,集団成 員が十分に話合い,決定した方向で一致協力し,その解決に熱心に務め,高い成果に喜びと誇り さえ持つという側面,つまり集団のまとまりや成員間の協力性の側面において,各集団はその程 度を異にしている。また,各集団は,その成員が相互に魅力を感じ合い,友好的な人間関係を維 持しているという側面,つまり成員間の親和性の側面においても,その程度を異にしている。さ らに,各集団は,成員の行動を規定するという意味で重要視されるところの,成員個人,成員間 の関係,あるいは集団全体に対する他者からの評価に成員が懸念するという側面においても,そ の程度を異にしている。「いじめ」という問題に対する各成員の,また学級集団の行動は,これら の集団特性によって違ってくるだろう。たとえ「いじめ」が起こっても,集団が友好的・親和的 な対人関係から成立ち,成員が他の成員や自分の集団に対して強い関心を持ち,成員が積極的に,

一致協力してその問題の解決に当るならば,「いじめ」は速やかに解消されるだろう。いやむしろ,

そのような学級集団では,「いじめ」は抑制され,もともと起こりにくいとも考えられる。

以上のように「いじめ」は学級集団の諸特性と密接に関係していると考えられるのに,「いじめ」

の集団力学的な研究はほとんど行われていない。阿久根求(1984a)は,いじめに限らず,問題行 動の問題性のとらえ方や発生メカニズムの分析およびそれへの対応のあり方は,それぞれの立場 によって差異が認められるが,学級集団規範の成立と斉一性への圧力などに焦点を当てた集団カ 学的見地からの研究は少ない。ところが,最近の学校現場でみられる生徒の逸脱行動,たとえば,

教師の指導・助言に対する拒否,無視や応酬行動,弱い者に対する集団でのいじめ,規律の無視,

仲間の逸脱行動に対する生徒同士の相互規制の欠如などは集団力学が対象とするものを多く含ん でいるとしている。

そこで,この研究は,集団力学的視点から,「いじめ」と以上で論じてきた学級集団の特徴,っ まり「いじめ」に関する集団規範,教師のリーダーシップ,および成員ならびに成員間の関係に 関する集団特性との関連の実態を,調査を通じて究明することを目的とする。

[ 方 法 ]

調査対象者

対象者は,兵庫県川西市立M中学校の男女生徒 402名である。彼らの学年・クラス構成は, 年生の3クラス, 2年生の4クラス, 3年生の3クラスである。なお,回収された調査票の数は,

363 (回収率90.1%)であるが,その内の有効票は, 358(有効回収率89.1%)であった。

調査の実施

調査票は,各学級毎に,担任教師によって配布された。生徒は,調査票を持ち帰り,家庭にお いて回答し,数日後に教師へ提出した。なお,調査票を配布した期間は, 198512月18日から20

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関西大学「社会学部紀要』第18巻第1

日までの3日間である。

調査した事項

1)  「いじめ」の認知,タイプおよび「いじめ」との関わり方(役割)

「いじめ」の実態を明らかにするために,今のクラスになってから今日までに何らかの「いじ め」があったかどうかをまず質問し,あったと答えた生徒には,さらに,それ(ら)はどのよう なタイプの「いじめ」であったか,また, 「いじめ」があったとき一般にどのような関わり方を してきたかを質問した。なお,「いじめ」のタイプと「いじめ」の役割として,以下の選択肢を 用意した。

「いじめ」のタイプ

①  仲間はずれ・無視

②  無理やり嫌がることをする

③  持ち物を隠す

④  たたく・ける・つねるなどの暴力

⑤  着ているものを脱がす

⑥  お金や物をとりあげる

⑦  しつこく悪口を言う

⑧  プロレスごっこなどと言って一方的になぐったり,けったりする

⑨  脅す

「いじめ」の役割

①  中心になっていじめた。

②  いじめに加わった。

③  面白がって見ていた。

④  何もしなかった。

⑤  止めようとした。

⑥  いじめられた。

⑦  いじめられたが,いじめもした。

「いじめ」のタイプについては,あった「いじめ」に該当するタイプを全てあげるように求め,

「いじめ」の役割については,森田洋司 (1985c)を参考にして,①や②と回答した生徒を 加害 者", ③と答えた生徒を 観衆", ④と答えた生徒を 傍観者 ,⑤と答えた生徒を 仲裁者 ,⑥

と答えた生徒を 被害者 ,そして⑦と回答した生徒を 加害・被害者 とした。

2)  「いじめ」に関する規範

集団規範の測定に当っては, Jackson,J.  M. (1960,  1965)のリターン・ポテンシャル・モデ ルを用いて学級内のカンニングに関する規範形成などを調査した佐々木薫 (1971b,1982)や学級

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規範に関する阿久根求 (1984b)を参考にした。

リターン・ポテンシャル・モデルでは,図2に示されるように,横軸の行動の次元を,縦軸に 評価の次元をとって,行動次元上の各点に対応する行動型に当該集団が与えるであろう評価(是 認または否認の度合)を目盛っていけば,任意の行動次元上に可能的に存在する評価 (potential return)のいわば分布曲線が得られるとし,この曲線(リターン・ポテンシャル曲線)から集団 規範の構造特性が,以下のような種々の指標によって表わされる。

+ 

に成

無関心

‑1 

2 

3 

非常に

反対—4

2 リターン・ポテルシャル・モデル (Jackson,J.M. 1960) 

a : 行動次元 b : 評価次元 C  : リターン・ポテルシャル曲線

d: 許容範囲 e : 最大リターン点 (1)最大リターン点 (point of maximum return) 

これは, リターン・ポテンシャル曲線の最大値に対応する横軸上の点であり,当該集団が理想 とみなしている行動型を表わしている。

(2)許容範囲 (rangeof tolerable behavior) 

これは, リターン・ポテンシャル曲線が是認の領域(評価0の線上を含む)にある行動次元上

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関西大学『社会学部紀要』第18巻第1

の範囲を指し,この範囲内の行動をとっておれば集団からの否認を免れることができることを意 味する。

(3)規範の強度 (intensityof norm) 

これは,行動次元の範囲内で各測定から曲線までの高さ(その絶対値)を合計したものであり,

この値が大きいほど,規範への同調を是認し,非同調を否認する度合が大きいことを意味する。

したがって,値が大きいほど,規範の遵守へ向かわせる集団圧力が大きいことを表わしている。

(4)是認一否認比 (approval‑disapprovalratio) 

これは,所与のリターン・ポテンシャル曲線について,是認の平均と否認の平均を求め,それ らの比(是認の平均/否認の平均)によって,規範が支持的か威嚇的かを表わそうとするもので ある。この値が大きいほど規範が支持的であることを,逆に,小さいほど,威嚇的であることを 意味する。

(5)規範の結晶度 (crystallizationof a norm) 

リターン・ポテンシャル曲線は成員ひとりひとりの認知にもとづいて描かれるから,集団の規 範として 1本の曲線に統合される以前には,個々の成員の認知する曲線が成員の数だけ存在する ことになる。そこで,この指標は,それらの曲線がどの程度一致しているかを表わす。この値が 大きいほど,集団の規範が1つに結晶してまとまっていることを意味する。なお,指標としては,

各測定点における平均のまわりの分散の和が用いられる。

この研究では,「いじめ」に関する規範を測定するために,まず,「いじめ」を目撃した場合に 生徒がとりうる行動の型として,以下のように,「いじめ」を積極的に制止する行動から「いじめ」

にむしろ荷担しようとする行動までの5種類が用いられた。

①  「やめろ」と言って注意し,いじめのことを先生に報告する。

②  「やめろ」と言って注意するが,先生には報告しない。

③  別に何もしない(注意もせず,先生に報告もしない)。

④  もっとやれと言って,はやしたてる。

⑤  一緒になっていじめる。

これらの行動を生徒がとる「いじめ」場面として,『昼休みの時間に,数人の生徒が1人の生徒 をいじめています。あなたは,その「いじめ」を見つけました。いじめている生徒達も,いじめ られている生徒もあなたと同じクラスの生徒です。』という場面を想定させた。そして,この場面 で以上の行動を誰かがとった時に,他者がそのことをどのように評価すると思うかを, 大変賛成 するだろう", "少し賛成するだろう", "なんとも思わないだろう", "少し反対するだろう",

大変反対するだろう", のいずれかで示すように求めた。なお,この研究では,行動と評価の担 い手の組み合わせを 3種類設けることによって,集団規範,知覚された教師の期待,そして個人 規範を測定した。すなわち,集団規範は,『あなたがもし次のような行動をしたら,あなたのクラ

スの人達はどのように思うでしょうか。』と質問することによって,また,知覚された教師の期

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待は,『あなたがもし次のような行動をしたら,あなたのクラスの担任の先生はどのように思うで しょうか。』と質問することによって,さらに,個人的規範は,『あなたのクラスの誰かがもし次 のような行動をしたら,あなた自身はどのように思いますか。』と質問することによって測定され

3)  教師のリーダーシップ

三隅二不二 (1978) 46項目からなる教師のリーダーシップ測定尺度を作成し,福岡市内の 市立小学校の83学級3,010名の児童を対象に調査し,得られたデータを因子分析して, 教師の児 童に対する配慮 に関する第1因子, 生活・学習における訓練・しつけ"に関する第2因子, 師の児童への親近性 に関する第3因子, 学習場面における緊張緩和 に関する第4因子, 会性・道徳性の訓練・しつけ に関する第5因子を抽出している。三隅は,前述のリーダーシッ プに関するP M理論にもとづき,第2'5因子が目標達成行動 (P行動)に,第1,3'

4因子が集団維持行動 (M行動)にそれぞれ対応していると判断し,さらに,グループ主軸法に よってPM行動の測定項目を検討して,以下の各10項目を選定している。

P行動項目 あなたの先生は,

①  勉強道具などの忘れ物をしたとき注意する。

②  名札・ハンカチなど細かいことに注意する。

③  きまりを守ることについてきびしく言う。

④  家庭学習(宿題)をきちんとするように言う。

⑤  物を大切に使うように言う。

⑥  机の中の整理やかばんの整頓,帽子の置き方などを注意する。

⑦  わからないことを人にたずねたり自分で調べたりするように言う。

⑧  学級のみんなが仲よくするように言う。

⑨  自分の考えをはっきり言うように言う。

⑩  忘れ物をしないように注意する。

M行動項目 あなたの先生は,

みんなと遊んでくれる。

 

えこひいきしないで,みんなを同じようにあつかう。

勉強がよくわかるように説明する。

なにか困ったことがあるとき,相談にのってくれる。

話したいこと.を聞いてくれる。

学習中,机の間をまわって,ひとりひとりに教えてくれる。

間違ったことをしたときすぐしからないで,なぜしたかを聞いてくれる。

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関西大学『社会学部紀要』第18巻第1

⑧  勉強の仕方がよくわかるように教えてくれる。

⑨  児童の気持をわかってくれる。

⑩  みんなと同じ気持になって,なんでもいっしょに考えてくれる。

以上の各項目に対する評定は, 非常にある", "かなりある", "少しある", "あまりない,,, " ったくない の5段階で求め,各評定にはこの段階カテゴリーの順に5点から 1点までを配点し た。生徒毎に自分の先生のリーダーシップに関するP得点とM得点が算出され,ある学級の先生 のリーダーシップ得点は,生徒の評定得点の学級平均値で表わされる。なお,先生のリーダーシ ップのタイプ分けに当っては,三隅二不二 (1978)の基準点 (P得点: 37.70,  M得点: 34.08)  に従い, P,M両得点が共にその基準点以上であればP M型,共に以下であればpm P得点の みが基準点を越えればP型,逆に, M得点のみが越えればM型とした。

4)  学級集団の特性

学級集団の特性を測定するために, 3笠員目からなる尺度を構成した。それらの測定項目は以下 の通りである。

①  わたしのクラスでは,何か困ったことがあると,みんなで話しあって解決する。

②  クラスの中には仲のいい友達がたくさんいる。

③  そうじ当番はいつも守られている。

④  わたしのクラスは,授業中だいたい静かである。

⑤  わたしは,クラスの人達が好きだ。

⑥  球技大会や体育祭では,ほかのクラスに負けたくないとみんなが思っている。

⑦  そうじはみんなで協力して早く終らせる。

⑧  クラスで決めたことは,みんなで守る。

⑨  遅刻や無断欠席する人はあまりいない。

⑩  わたしは,家にいるときでも,クラスの人達のことを考えている。

⑪  わたしは,ほとんどのクラスメートとうまくやっている。

⑫  わたしのクラスでは,何かを決めるとき,みんなが話しあって決める。

⑬  自分のクラスがほめられると,みんな喜ぶ。

⑭  わたしのクラスでは,文化祭や体育祭の準備がはかどるほうである。

⑮  わたしは,クラスの人達といっしょにいると楽しい。

⑯  クラスで何かするときは,みんな熱心である。

⑰  わたしは,自分のクラスに誇りを持っている。

⑱  わたしのクラスは,何か行事があるとみんなで協力しあうほうだ。

⑲  わたしは,今のクラスに満足している。

⑳  わたしは,クラスのみんなが好きだし,クラスの人達もみんなわたしを好いてくれている と思う。

‑IO‑

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⑪  わたしは,クラスのために役立つことをしたいと思う。

⑫  わたしは,クラスのまとまりを乱すようなことをする人に腹がたつ。

⑬  わたしは,クラスの恥になるようなことはしたくない。

⑭  わたしは,クラスが変っても,今のクラスの人達とはつきあいたいと思う。

⑮  わたしは,クラスがえになって,今のクラスの人達と離れるのがさびしい。

⑯  クラスでやらねばならないことがあるとき、わたしは塾やクラプを休んでもやると思う。

⑰  わたしは,自分のクラスがほかのクラスの人達からどう思われているか気になる。

⑳  わたしは,クスラの中で誰が誰とつきあっているか気になる。

⑲  わたしは,クラスの人達からどうおもわれているか気になる。

⑳  わたしは,自分のクラスがほかのクラスからどう思われているか気になる。

⑪  わたしは,誰かが学校を休むと,なぜ休んだのか気になる。

⑫  わたしは,体育祭などで自分のクラスの成績が気になる。

⑬  わたしは,何をするにも,クラスの人達の目が気になる。

評定は,番号が①から⑲までの項目の場合, そうだ"(5点), ややそうだ"(4点), どちら でもない"(3点), あまりそうでない"(2点), そうでない"(1点)の5段階で,また,⑳か ら⑳番までの項目の場合, そう思う" (5点), ややそう思う" (4点), どちらでもない" (3  点), あまりそう思わない"(2点), そう思わない"(1点)の5段階で,そして,⑰から⑬番

までの項目の場合, 非常に気になる"(4 点),• 少し気になる" (3点), あまり気にならない (2点), まったく気にならない"(1点)の4段階で行わせ,各カテゴリーヘの評定には,括弧 内の得点を与えた。

5)  フェイス項目

この研究で取り扱っている問題の性質から,無記名回答とし,学年,クラス,性別のみを質問 するにとどめた。

[ 結 果 と 考 察 ]

1)  「いじめ」の認知,タイプおよび「いじめ」との関わり方(役割)

生徒の認知をもとに「いじめ」の実態を明らかにするために,『あなたのクラスでは,今までに

「いじめ」がありましたか。』と質問した。この質問に対する回答によると,「いじめ」を認知し た生徒は,表1のように,全対象者358名のうち241名であり,認知率は, 67.3%であった。この 率は学年によって異なり, 1年では, 115名中92名の80.0%, 2年では, 148名中94名の63.5%, そして, 3年では, 95名中55名の57.9%であり,認知率が1年において特に高いこと,そして,

学年が進むにつれてその率が低下する傾向にあることが認められた。さらにこれをクラス別に見 ると,クラス間で認知率がかなり相違していた。認知率の最高は, 12組の92.7%,最低は,

(13)

関西大学『社会学部紀要』第18巻第1

1 学年別にみたいじめの認知率

\ 

あり 92  94  55  80.0  63.5  57.9 

なし 23  54  40  20.0  36.5  42.1 

115  148  95  32.1  41.3  26.5  X2=13.215  df=Z  p<.001  上段は人数を、下段は%を示す。

22組の43.6%であった。

全 体 241  67.3 

117  32.7 

358  100.0 

「いじめ」を認知した生徒に対して,その「いじめ」がどのようなタイプであったかを質問した。

その回答によると,表2のように, 仲間はずれ・無視"(62.2%)が最も多く,次いで, しつこ く悪口を言う"(56.0%)が多かった。 無理やり嫌がることをする"(37.3 %)や 持ち物を隠 す"(36.5%)といったタイプのいじめもかなりあるようだが, お金や物をとりあげる"(5.4%) 

とか, 着ているものを脱がす"(8. 7%)といったいじめ行動はさすがに少なかった。これを学年 別に見ると, 1年では他の学年に較べて, 仲間はずれ・無視 といった心理的ないじめが多いの に対して, 2 3年では, 1年に較べて,逆に, 無理やり嫌がることをする", "たた<・ける・

つねるなどの暴力", "プロレスご?こと言って一方的になぐったり,けったりする といった身 体的ないじめやふざけが多かった。なお,クラスによるタイプの差異はいくらか認められたが,

それは学年差に較べて小さいものであった。

ところで,いじめが多発するクラスとあまり生起しないクラスとで起こるいじめのタイプが異 なるかもしれない。そこで,「いじめ」の認知率の全体平均 (67.3%)を基準にして,それ以上の 認知率のクラスを[高いじめ群](12, 3 21, 3 N=150 平均認知率82.0%), それ以下のクラスを[低いじめ群] (11 22, 4 31, 2,  3 N=208  均認知率56.7%)として,両群間で生起するいじめのタイプが相違するかどうかを検定した。そ の結果,表3のように,いくつかのタイプのいじめ行動において有意な差異が両群間に認められ た。すなわち,「高いじめ群」においては, 仲間はずれ・無視 といったタイプの心理的ないじ めが,「低いじめ群」においてよりも多発し,逆に, プロレスごっこなどと言って一方的になぐ ったり,けったりする", "無理やり嫌がることをする", "たた<,ける,つねるなどの暴力 と いうタイプの身体的ないじめやふざけは,「低いじめ群」においてむしろ一層多発していた。

いじめの多様性を生起したいじめのタイプ数から見ると,表3のように,全体の平均が2.54

‑12‑

(14)

2 学年別にみたいじめのタイプと平均タイブ数

(M =92)  2  (N =94)  3  (N =55)  (N  =241)  仲間はずれ・無視 68 (73.9)  52 (55.3)  30 (54.5)  150  (62.2)  2. 無理やり嫌がることをする 26 (28.3)  38 (40.4)  26 (47.3)  90 (37.3)  3. 持物を隠す 34 (37.0)  38 (40.4)  16  (29.1)  88,  (36.5)  4. たた<・ける・つねるなどの暴力 7 (7.6)  25 (26.6)  16  (29.1)  48 (19.9)  5. 着ているものを脱がす 3 (3.3)  11  (11. 7)  7 (12. 7)  21  (8.7)  6. お金や物をとりあげる 2 (2.2)  8 (8.5)  3 (5.5)  13  (5.4)  7. しつこく悪口をいう 52 (56.5)  52 (55.3)  31  (56.4)  135  (56.0)  8. プロレスごっこなどと言って一方的に 4 (4.3)  12  (12.8)  24 (43.6)  40 (16.6) 

なぐったり、けったりする

9. 脅す 7 (7.6)  8 (8.5)  11  (20.0)  26 (10.8)  203  244  164  611  平 均 夕 プ 数 2.21  2.60  2.98  2.54 

)内は%を示す。

3 いじめ群別にみたいじめのタイプと平均タイプ数

‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑

高(N=い じ め 群123)  (N=118) (N=241) 全 体 仲間はずれ・無視 89 (72.4)  61  (51. 7)  150  (62.2)  2. 無理やり嫌がることをする 35 (28.5)  55 (46.6)  90 (37.3)  3. 持物を隠す 47 (38.2)  41  (34. 7)  88 (36.5)  4. たた<・ける・つねるなどの暴力 17  (13.8)  31  (26.3)  48 (19.9)  5. 着ているものを脱がす 7 (5.7)  14  (11.9)  21  (8.7)  6. お金や物をとりあげる 5 (4.1)  8 (6.8)  13  (5.4)  7. しつこく悪口をいう 66 (53.7)  69  (58.5)  135 (56.0)  8. プロレスごっこなどと言って一方的に 7 (5.7)  33 (28.0)  40 (16.6) 

なぐったり、けったりする

9. 脅す 10 (8.1)  16  (13.6)  26 (10.8)  283  328  611  平 均 夕 プ 数 2.30  2.78  2.54 

)内は%を示す。

イプであり,対象校のクラスでは,一般に, 2つ か3つ の タ イ プ の い じ め 行 動 が 生 起 し て い る こ と が 分 っ た 。 ま た , こ の 多 様 性 を 学 年 で 比 較 し た と こ ろ , 有 意 で は な い が , 学 年 が 進 む に つ れ て 多 様 性 の 増 す 傾 向 が 暗 示 さ れ た (12.21, 22.60, 32.98)。 さ ら に , 多 様 性 を 「 高 い じ め

(15)

関西大学『社会学部紀要』第18巻第1

群」と「低いじめ群」の間で比較したところ,前者の平均いじめタイプ数は2.30,後者のそれが 2.78であり,有意ではないが,むしろ「低いじめ群」において一層多様ないじめが起こっている

ようであった。

「いじめ」を認知した生徒に対して,一般に「いじめ」とどのような関わり方をしたかを質問し た。その回答によると,表4のように,何もしないでいじめをただ見ている 傍観者"(70.5%) 

といういじめ役割を果す生徒が多数を占めていた。いじめを止めようとする 仲裁者"(11.2%)  がこれに次いで多いが,その割合は,中心になっていじめる 加害者"(8. 7%)のそれと大差な

く,かなり小さかった。また,このいじめ役割を学年別に見ると,多数を占める傍観者の割合は,

1 (80.4%)3 (76.4%)において多く, 2 (57.5%)において少なかった。その代り,

仲裁者 (20.2%)が他の学年に較べて2年において比較的多かった。さらに,このいじめ役割を

「高いじめ群」と「低いじめ群」との間で比較したところ,表5のように,有意な差異は両群間 に認められなかったが,「高いじめ群」において加害者,被害者,および観衆が比較的多く,「低 いじめ群」においては仲裁者が比較的多いという傾向が暗示された。

4 学年別にみたいじめ役割

\ 

全 体

1. 加害者 9 (9.8)  9 (9.6)  3 (5.5)  21  (8.7)  2. 観衆 3 (3.3)  6 (6.4)  3 (5.5)  12  (5.0)  3. 傍観者 74 (80.4)  54 (57.5)  42 (76.4)  170 (70.5)  4. 仲裁者 3 (3.3)  19  (20.2)  5 (9.1)  27 (11.2)  5. 被害者 2 (2.2)  6 (6.4)  0 (0.0)  8 (3.3)  6. 加害・被害者 (1.1)  0 (0.0)  2 (3.6)  3 (1.2) 

92  94  55  241 

)内は%を示す。

5 いじめ群別にみたいじめ役割

\ 

I,¥  じ め 群 全 体

加害者 12  (9.8)  9 (7.6)  21  (8.7)  2. 観衆 7 (5.7)  5 (4.2)  12  (5.0)  3. 傍観者 86 (69.9)  84 (71.2)  170 (70.5)  4. 仲裁者 12  (9.8)  15  (12.7)  27  (11.2)  5. 被害者 5 (4.1)  3 (2.5)  8 (3.3)  6. 加害・被害者 1 (0.8)  2 (1.7)  3 (1. 2) 

123  118  241 

)内は%を示す。

‑14‑

表 2 学年別にみたいじめのタイプと平均タイブ数 ‑ 1  (M  =92)  2 学 (N =94)  3 年 (N =55)  (N 全 =241) 体1 . 仲間はずれ・無視68 (73.9)  52 (55.3)  30 (54.5)  150  (62.2 )  2. 無理やり嫌がることをする 2 6  ( 2 8

参照

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