大学新入生の過去 の 「い じめ ・い じめ られ体験」
BehaviorRelatedto''Ijime":RemembererdbytheUniversity Students
弘前大学保健管理センター 田名場美雪 弘前大学教育学部 豊嶋 秋彦 岩手県立大学社会福祉学部 遠山 宜哉
Ⅰ. は じめに
Ⅱ.対象 と方法
Ⅲ.結果 と考察
1.過去のい じめ体験
2.過去のい じめ体験についての 自由記述 によるふ りかえ り
Ⅳ.まとめ
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Ⅰ.は じめに
学校 におけるい じめ というテーマは裾野が広 く. しかもデ リケー トな性質の ものであるO現象そ の ものを記述 ・説明 しようとしたときに,第三者か らは 「これはい じめだ」 と思えるような現象で あ って も,い じめの被害者 は被害を否定 し,加害者 は加害行為を否定する。あるいは逆 に,第三者 には単 なる じゃれ合い と思えるような行動でも,被害者 には 「これがい じめである」 と感 じられ る こともある。被害者.加害者 そ して第三者 には認識の相違 を仮定できる。 さらにこの第三者 は, 次の二通 りに分けて考えることがで きる。つまり,い じめを面 白がって見る 「観衆」 という層,そ してい じめの発生には気付 きなが らもなす術 もなくそれを眺めている 「傍観者」という層である。
い じめの数が増 えたとか残酷 さが増 した ということよりも,その構造の変化.すなわち森田 ・清水
(1986)l'の述べるような 『四層構造』 に目を向けることも大切である。学校 におけるい じめを考 えるとき,従来の ような加害者一被害者関係のみな らず.それを取 り囲む 「観衆」「傍観者」 とい った存在 も考慮 に入れ ながら重層的に捉える必要があろう。
本研究では,い じめを 「自分よりも弱いもの対 して一方的に,身体的 ・心理的な攻撃 を継続的 に 加 え.相手が深刻 な苦痛を感 じているもの」 と定義 した上で,大学新入生に対 して過去のい じめの 被害 ・加害の体験 について尋ね.加害体験 と本人が考えてい るものと.い じめの観衆 となり傍観者 にとどまった経験 とはどのような関係があるのかを調べ ることを目的 とす る。 これまで被害者 と加 害者 との関係で しか捉えて こなか ったが.そこに 「観衆」「傍観者」などの項 目を加 えることによ って,全体の布置がどのように変わ るのかを検討す る。 さらに,い くつかの 自由記述式 による質問 を加えることにより,い じめの構造 について探索的 に検討す るものである。
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Ⅱ.対象 と方法
全新入生に対 して郵送法 による質問紙調査を実施 した。詳細は以下のとお りである。
①対象 二弘前大学の人文学部 ・教育学部 ・医学部 ・理工学部 ・農学生命科学部の平成10年度新入 生1216名 (男子696各 女子520名)。 このうち.1214名 (男子695各 女子519名)か ら回答 を得た。
回収率は99.8%,有効回答率は100%であ りすべてを分析の対象 と した。
②調査方法 :郵送法 による記名式 の質問紙調査である (回収 も郵送で行 った)。入学手続 き書式 等 と共 に送 られる書類の中に保健管理 セ ンターか らの 『健康調査書』 が含 まれ るが, この一部 をア
ンケー トと して使用 した。
③調査時期 :平成10年3月末か ら4月初旬 にかけて実施。
なお,質問項 目は選択式の質問と自由記述式の質問か ら構成 され,選択式の回答 に関す る統計的 解析 についてはSPSSを使用 した。
Ⅲ.
結果 と考察1.過去のい じめ体験
①加害者あるいは被害者体験 をもつ者 は約3割
まず.い じめの体験率 をみてみる (図1.参照).平成 7‑ 9年度の資料 は遠山 ・豊嶋 (1998)2'
によるものであるO調査のテーマとなる 「い じめ」の定義 は調査年度 により一貫 していないため単 純比較 はできない (平成7年度調査ではい じめを定義せず,平成8 ・9年度調査ではい じめを 「複 数 の人が.一人 または少数者 に対 して,繰 り返 して行 ったもの」と定義 している)。 しか しながら.
いずれの年度 も,過半数の学生が加害者 にも被害者 にもなったことがない, とい うことは共通 した 傾向である。
平成10年度のみの結果 に着 目してみると.い じめを体験 していない群が約7割.い じめの体験 を もってい る群 が約3割 である。い じめ体験有群 の半数 が,加害者 ・被害者 ともに体験 している。
なお.男女間の分布 に有意な差 はみ とめ られなか った。
平成7年度
平成8・9年度
平成10年度
0 20 40 60 80 100% 図1 い じめの体験率
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匡∃体験な し 因 加害のみ 圏 被害のみ 圏 加害 ・被害
/l\二∃こ4′ヽ一
21い じめに
次に,い じめ関連行動に, どのような役割 (被害者,加害者 観衆.傍観者 仲裁者)で, どの 時期 に関わ ったのかをみてみ る (図2,参照)。いずれの立場 での体験 も,小学校4‑6年生お よ び中学生 という時期 に集中 している。
被害 加害 観衆 傍観 仲裁
田 ′ト学1‑ 3 因 小学4‑ 6 口 中学校 団 高校
0 100 200 300 400 500 600人 図2 い じめに関与 した時期
なお. 「傍観者」 に限 ってみれ ば.44%の学生がその役割 を演 じた体験 をもっていることは,注 目すべ きであろう。
13い じめの内容 には男皇墓地 を吐旦
図3は,加害 内容 を奥村 らの調査の結果 (19873㌧1988a4',1988b5') を参考 に して6つの カテ ゴ リ‑に分けて調べた結果である. カイ2乗検定の結果.男子と女子 との間にはその分布 に差がみ とめ られた (p<0.01)。男子の場合,「言葉の暴力」「いやが らせ」「仲間はずれ」,女子の場合 「仲 間はずれ」「無視」「言葉の暴力」が加害の手段 と して用い られている。 「身体的暴力」は全体的 に 実数 こそ少ないが.男子にみ られ る傾向である。 なお,被害を受けた際の内容 について も. これ と 全 く同 じ有意な傾向がみ られた。
い じめの 「加害者」「被害者」 とともに, い じめの現場 を構成す る別の層である 「観衆」「傍観 者」,そ してい じめをな くそ うと行動す る層である 「仲裁者」 をみてみる (図4,参照)。 ここで も.上述の 「加害」「被害」の内容 と同様 に. 「観衆」「傍観者」「仲裁者」の立場 と して,女子で は 「仲間はずれ」.男子では 「言葉の暴力」「いやがらせ」にかかわ っている。
つま り,女子が関わ ってきたい じめの内容は,その立場が 「加害者」「被害者」「観衆」「傍観者」
のいずれであれ,仲間はずれや無視 といった 「わざと, なにもしないことによって.相手 に被害 を 与える」 とい う,他者 との関係 を一方的に切断す るというスタイルをとる傾向 にある。 これ と比較 して男子の場合 は.立場 の如何 に関わ らず. 「言葉 の暴力」「いやが らせ」 といった 「わざと, な にかをすることによって,相手 に被害を与える」 というスタイルなのである。
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男子
身体的暴 力 無頼
いやがらせ
妻:仲間はずれ
ヽi■ヽ■ヽ一■一 ヽヽヽヽ一ヽヽ
・,,一一ヽ‑■ヽiヽざヽヽヽ●ヽヽヽ一ヽヽu 亨だ
ヽ
…ヽ ●一 ヽ ヽ ヽ ヽ ‑ ■ ヽ ヽ ヽ 一 ヽ ヽ ヽ ヽ . . . ヽ ヽ ヽ ヽ ● ● ■ ヽ ヽ ヽ ■ ■ i
ヽヽ ヽ ヽ ヽ ヽ 一 ■ 一 ヽ ヽ ヽ 一 一 ヽ l ヽ h ヽ ヽ 一 一 I 一 ヽ ヽ ヽ ■ せ i ヽ 一 ■ ヽ i
言葉の暴力
いやがらせ 女子
仲間はずれ
図3 加害者 ・被害者 と してのい じめの内容
図4 観衆 ・傍観者 ・仲裁者 と してのい じめの内容
2.過去 のい じめ体験 につ いて の 自由記 述 によるふ りかえ り
過去 のい じめ体験 についての, い じめ の被害 にあわ なか った理 由 ・い じめ被害 の消 え る要因 につ いて 自由記述形式 で 回答 を求 め た. 回答者数 は961各 回答件数 はのベ1138件 で あ った。 本人 の態 度 には 「タフ ・マイ ン ド」 が求 め られ, 「友人 の支 え」 が必要 で あ り,そ して行動面 で は 「対人関 係 に配慮」 し.仲 間 と比較 して 「普通 で あること」 が重要で あるとみ なされて いるC
い じめを仲裁 で きた理 由 ・で きなか った理 由について も同 じく自由記述 を求 めたが‑ 回答者数 は 970名, 回答件数 はのベ1020件 で あ った (自由記述式 の質 問に も関わ らず,先 の質 問 と共 に79%と い う回答率 を得 ることがで きた)。 い じめを仲裁す るか否 かには, 「自分 に被害」 が及ぶか どうか.
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仲裁す るための 「有効性」 をもっているとみなすかどうかが影響 を与 える。 また.被害者 ・加害者 と知 り合いかどうか. あるいは一緒 に仲裁す る仲間がいるか とい った,い じめの現場の登場人物が 自分 と (プラスの) 関わ りをもっているかどうか とい うことが重要 になって くる。
表1 い じめの被害 にあわなかった理 由,い じめ被害の悪影響 が消 える要 因
タフ ・マイ ン ド (積極的,前 向き, 明るい) 友人 の支え
い じめがない
め ぐまれた (まわ りがいい人ばか り,みんな仲 良 し) 普通 であること (目立たなか った,普通だ った) 対人関係への配慮
4491912030∩ロ7EiianiZf:=り
表2 い じめの仲裁 ができるか否かを左右す る要 因
自分への被害 (次 に 自分がい じめ られ るか ら) 134 有効性 (無理だ と思 った, 自信があ った)
無関心 (自分には関係 ない) 当事者 が友人 ・知人
い じめは悪
仲裁す る仲間の存在 (一緒 に仲裁す る仲間がいた)
※ 「い じめの場面 にあ ったことがない」が338件あ った 71 49 49 37 22
Ⅳ.まとめ
大学生の過去 のい じめ体験の概要 は,以下の ようになる。 い じめを体験 している者 は約3割であ り,その体験型 には 「加害 ・被害 ともに」 という体験型が多いOい じめを体験す る時期 は.小学4
‑6年生 と中学生 という時期, いわ ゆる思春期 に集 中 している。対人 関係 を強 く意識 し始める時期 と重 なっている。い じめの内容 に関 して男女 を比較す ると.女子では仲間はずれや無視 といった関 係切断型の内容 となってお り.男子の場合 は言葉 による暴力やいやが らせ とい った接触型 の内容 と な っている。 また.身体的暴力 とい う手段 は全体的 にとられ に くい傾 向にあるが,その とられ に く さは女子 に顕著であ った。
い じめが発生 した とき,児童 ・生徒 は 「加害者」 「被害者」.い じめ をお も しろが って見ている
「観衆」.い じめを見て見ぬふ りを している 「傍観者」 に分かれ る。 自分への被害 を回避 した り, 自分の もっている資源 (有効性.仲間)不足が理 由で,あるいは 自分 とは無関係 を位置 づけること によってい じめを止め る 「仲裁者」 が少 な く,傍観者層が多数で きると予乱 され るC
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文 献
1)森 田洋司 ・清水賢二 :い じめ一教室の病い,p25,金子書房,東泉 1986
2)遠山宜哉 ・豊嶋秋彦 :大新入生がふ りかえってみた ■一い じめ"の体験.弘前大学 保健管理研 センター概要,19,13‑3乙 1998
3)奥村武久 ・河原 啓 ・長井 勇 ・楠 田康子 ・木村純子 ・野田恵子 ・鈴木英子 ・林 光代 :大学 生の過去の 「い じめ られ体験」 に関す る調査, 第25回全国大学保健管理研究集会 報告書,229
‑233,1987
4)奥村武久 ・河原 啓 ・長井 勇 ・林 光代 ・鈴木英子 ・野田恵子 ・木村純子 ・楠 田康子 ・橋本 雅治 :大学生の過去の 「い じめ られ体験」 に関す る調査 一第2報 ‑.神戸大学保 健管理研セ ン ター紀要,1,5‑13,1988a
5)奥村武久 ・川 口 侃 ・河原 啓 ・長井 勇 :大学生の過去の 「い じめ られ体験」 に関す る調査 一神戸商船大学の場合 ‑.神戸大学保健管理研センター紀要,1.15‑22,1988b
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