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雑誌名 同志社大学日本語・日本文化研究

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指導を重視した授業実践の効果

著者 大山 理惠

雑誌名 同志社大学日本語・日本文化研究

号 14

ページ 91‑103

発行年 2016‑03

権利 同志社大学日本語・日本文化教育センター

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000014443

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日本語学習者におけるアクセント句の習得

−音声指導を重視した授業実践の効果

Acquisition of Japanese accent phrase by Japanese language learners -Effects of the Japanese teaching method by focusing

on pronunciations-

大山 理惠

要 旨

 日本語教育における音声指導、特にプロソディー指導の効果をみるため、アク セント句に注目したプロソディー中心の音声指導を日本国内在住の留学生に行い、

前後のテストの結果から授業実践の効果を検証した。指導前後に ①アクセント(正 しいアクセントを解答)②イントネーション(文末が上昇か下降かを解答)③ ア クセント句の知識とリスニング ④アクセント核記入(複合語)の 4 種類の試験を 行った。指導は 8 回(各回約 20 分)に分けて行い、各回ではフレージングが図示 された会話文のあるテキストを使用し、アクセント句に着目した発音練習を行っ た。用いたダイアログのフレーズは単一のアクセント句で構成されていた。指導 前後のテスト結果の分散分析を行った結果、全ての課題において有意差があり、

指導効果があったことがわかった。たとえ短期間であっても一定の効果があるこ とも示された。「アクセント句」は音韻上の区切りであるが、統語上の文節におけ る区切りとはずれがあることが知られている。学習者がアクセント句を習得して いないことによりアクセント・イントネーションの誤りが増加している可能性が ある。プロソディー知識を与え、アクセント句にフォーカスするなどの、音声指 導を重視した授業の実践が効果的であることが示唆された。

キーワード

日本語 アクセント句 プロソディー 音声知識 音声分析

1 はじめに

 現在の日本語教育の音声指導では単音が中心で、プロソディーに関しては重要視さ れていないのが一般的な傾向である。時間的制約があることや、教師が音声指導に自 信がないことが理由に挙げられる。しかし、日本語学習者の多くが自然な日本語の習 得を望んでいる。また、プロソディーに問題がある発音だとコミュニケーションに支 障をきたすこともあり得る。さらに、表記上は同じ文であったとしても、発音した

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際、イントネーションやフォーカスによって意味が変わってしまうことすらある(窪 薗 2008)。そのために、プロソディー中心の音声教育を行う必要性がある。学習者は、

個々の単語アクセントはアクセント辞典から、複合語のアクセント規則は教師やアク セント辞典から、知識を得ることができる。しかし、それらの情報だけでは、動詞や 形容詞の活用形、名詞+助詞・助動詞がついた場合にどのように変化するかがわから ないため、自然な発話を生成することができない。また、その規則を全て明記してい る教科書やテキストは少ない。さらに、授業において、新出単語は、教師の発音をリ ピートする課題に留まる場合が多い。つまり、日本語教育の現場で、「アクセント句」

を基本とした教師の指導はあまりされていないのが現状といえる。この「アクセント 句」について郡(2010)は、統語上の文節における区切りと音声上の区切りには、ず れがあると述べている。この知識がないと、自然な日本語の発話が困難であると言え る。そこで、国内の日本語学校で日本語を学ぶ留学生を対象とし、短期間であるが、

授業の中で「アクセント句」に特化したプロソディー中心の音声指導を行った。音声 知識理解の必要性を述べ、授業実践の効果を検証する。また、本稿においては、複合語、

動詞や形容詞の活用形、名詞+助詞・助動詞を含めた単位を、「アクセント句」と呼ぶ ことにする。

1.1 日本語アクセントの音声指導に関する先行研究

 朱(1993)は、中国在住の中国人日本語学習者の日本語アクセントの実態調査を行っ た。対象は大学学部生で、文化庁日本語教育指導参考書Ⅰ「音声と音声教育」の練習 文の中から選んだ文を読ませた。その結果、日本語アクセントの統語機能に対する認 識が不十分であると、複合語をばらばらに読んでしまうことが明らかになった。また、

統語機能を重視した複合語のアクセント句の指導をさらに強化すべきであることが示 唆された。戸田(2003)は、日本在住の日本語学習者 22 人に、日本語の音韻構造や音 声特徴を導入しながら体系的な発音練習をし、指導前後のクイズとオーラルテストの 結果を比較したところ、効果があったことを示した。この論文の中で「複合語アクセ ント規則の導入と発音練習は、語構成とアクセントの関係を理解するために役に立つ であろう」と述べている。また、多くの研究者が、音韻、プロソディーなどの体系的 な発音指導を行い、それらの効果が報告されている(福井(2005)、中川(2004)、稲 葉(2004)、山下(2005)、松崎(2008)など)。また、テキストにおいては、日本語の アクセントを、①名詞(外来語・名前)、複合名詞、形容詞(活用形・複合形容詞)、

動詞(活用形・複合動詞)、助詞と句に分け練習するもの(窪薗 1999)ものや、②文 に区切りを入れ、区切りと区切りの間の句(フレーズ)の練習するもの(中川 2009、

2010)、③名詞・形容詞・動詞・複合名詞と分けて練習するものがある。しかし、①に は、複合名詞+助詞・助動詞、複合動詞・複合形容詞の活用形、動詞の意向形がない。

②には、名詞・複合名詞+助詞・助動詞、複合動詞・複合形容詞、複合動詞の活用形・

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複合形容詞の活用形、外来語のアクセントは記載されていない。③には、複合動詞・

形容詞とそれぞれの活用形、名詞・複合名詞+助詞・助動詞、外来語等の練習が含ま れていない。また、管見の限りでは、アクセントの音声指導は、単語(複合語を含む)

単位と文章に限った報告がほとんどで、動詞・形容詞の派生語や、複合名詞・名詞+

助詞・助動詞等の「アクセント句」をあつかった指導を行った先行研究は見当たらない。

そのため、複合語、動詞・形容詞の派生語を含むいわゆるアクセント句に着目した指 導を行い、効果の有効性を提示する。

1.2 音声面から見た句切れと統語上の句切れ

 日本語音声教育アクセント指導においては、単純語と複合語のカテゴリーで教えて いるのが一般的である。しかし、アクセント句(藤崎 1989、窪薗 1999、林 2012)を対 象とした方が効果的であると考える。その理由は以下の 3 点である。

 1、文章の中で、アクセントがわからない部分が少なくなる。

 2、名詞・複合名詞+助詞・助動詞、動詞・形容詞の活用形のアクセント等も知識と して提示することができ、従来の単純語と複合語のアクセントでは、カバーしきれな い部分のアクセントも知ることができる。

 3、文法面からみた区切りで捉えると、音声面では異なるため、問題が生じる。

では、学習者は、その他の単純語・複合語+助詞・助動詞がついた場合はいつ、どこ でどのように学ぶのであろう。教師がこれらを含む文を読んだ際、しっかりと聞いて いなければならない。教育現場において、ルールがあることを提示することは、めっ たにないと思われる。そこで、統語上の句切れで単語を見ていくよりも、音声上の構 成から単語を見ていく方が、ルールを的確に学べるメリットがある。なぜならば文節 の切れ目でなく、アクセント句の切れ目で判断すると、名詞+助詞・助動詞等の正し いアクセントが学べ、文をアクセント句の塊でとらえると、より多くのアクセント方 法を習得することができるからである。

 統語上と発音上の句切れについては、自然談話分析でも、意味と音調のずれが見つ かる(郡 2010)こともあり、統語上の句境界と韻律のずれがしばしば見られることが 研究上の課題として指摘されている(前川 1999)からである。つまり、統語上、文節 の区切れで発音すると異なった音の生成になるといえる。

 これらを確かめるため、統語上と音声上の文章の構成の違いを以下に示す。この切 れ目であるが、現代日本語書き言葉均衡コーパス(BCCWJ)、話し言葉コーパス(CSJ)

では、どのようなラベリングになっているのかをみることにする。

現代日本語書き言葉均衡コーパスによる、統語上の文節の認定規定は、以下の通りで ある。

 文節は、一般に付属語又は付属語連続の後ろに境界があります。BCCWJでは、日本語教

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育での活用を想定し、複合辞も付属語として認めました。文節を認定する上で問題とあるこ との一つに、固有名、動植物名、連語の扱いがあります。これらについては、内部にある助 詞・助動詞の後ろで文節を切らないこととしました。| は、分割位置を表します1  また、日本語話し言葉コーパスでの文節認定基準は以下に示す通りである。

 文節は、基本形と発音形の対応をとり易くすることを目的として導入されたものであるが、

係り受け構造情報における基本単位としても利用される。本節で定義する文節は、形態論的 単位(短単位・長単位)の上位に位置する単位として設計された。つまり、短単位・長単位 が複数の文節に跨がることはない。〜中略〜なお、短単位や長単位を定義する際にも文節と いう概念が出てくるが、本規則で定める文節とは必ずしも一致しない。前者は短単位・長単 位の認定のために導入された概念であり、実際の作業において文節単位に分割される訳では ない。CSJ として提供される文節情報は、本規則で定める文節のみである。〜中略〜 2 文 節以上からなる形式全体を受ける、もしくはそれに係る接辞および体言的な形式は、その前 または後で切り離す。

 文節の境界   …… 例:‖国立国語研究所の‖

 長単位の境界  …… 例:┃国立国語研究所┃の┃

 短単位の境界  …… | 例:|国立|国語|研究|||  最小単位の境界 …… 例:/国/立/国/語/研/究/所/の/

〜中略〜長単位は文節を基にした単位であり,認定に当たっては,文節の認定を行った上で, 各文節の内部を規則に従って自立語部分と付属語部分とに分割していくという手順を踏む。

そのため、長単位の認定基準は、文節認定基準と長単位認定基準の二つの基準から成る。

 また、文節に相当する音声上のアクセント句を以下のように定義している。

 アクセント句は、句頭第 1 モーラから第 2 モーラ付近にかけてのF0 の上昇と句末への緩 やかな下降を有し、かつアクセント核による下降を最大ひとつ持ちうる単位と定義される2

 以上のように、話し言葉コーパスと書き言葉コーパスによる、文の区切れは異なっ ている。よって、両コーパスを元にし、文を統語上と音声上での切れ目で区切り、違 いを示すことにする。統語上と音声上の表記において、句切れは異なっているため、

統語上の区切れを元に発話すると、異なった音声の生成となる。

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【統語上】

 |公害紛争処理法|における|公害紛争処理||手続||、

【音声上】

 |公害紛争処理法における|公害紛争処理の手続は|、

【統語上】

 |原則|として|紛争当事者|から||申請|によって|開始さ|れる|。

【音声上】

 |原則として|紛争当事者からの|申請によって|開始される|。|

(「|」分割位置を表す)

 次に、実際の音声ではどのような句切れで発話しているのだろうか。

 上記に示した文「原則として紛争当事者からの申請によって」を読み、音声分析を行っ た結果を以下の図 1 に示す。これは、文の中で、ピッチの切れ目がどこにあるのかを 示した音声分析図である。図 1 から、統語上の切れ目と音声上の切れ目は同じではな いことがわかる。

統語上の区切れ

|原則|として|紛争当事者|から|の|申請|によって| 音声上の区切れ

|原則として|紛争当事者からの|申請によって|

図 1 音声分析図

 また、以下に示す音声分析図(図 2)は、日本語母語話者が「あなたは友達との待ち 合わせで何分ぐらいまでなら待ちますか」の文を発話したものである。「何分ぐらいま でなら」の部分を見ると統語上は、何分/ぐらい/まで/なら/の 4 つの句切れにな るが、音韻上では、一つのアクセント句になっている。よって、統語上と音声上の切 れ目は異なっていることがわかる。

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図 2 音声分析図

 図 2 が示すように、アクセント句でひとまとまりのものとして(ピッチの下がり目 がひとつ)分けた方が実際の発話に近い。(真ん中に見られるピッチ曲線がへの字型に なっている)。アクセントの重要な機能の一つに、語の境界表示機能が挙げられるが、

「音声、文字を教える」と「音声文字を教える」では意味が異なる(山田 2007)。この、

アクセントの一体化は、複合名詞の意味にあった発音をする際にも重要である。学習 者がこの音声知識を得ることにより、実際に発話に役立てることが可能である。以上 の理由から、本稿においては、「名詞+助詞」「名詞+助動詞」、「動詞・形容詞の活用・

派生」、複合語、「複合名詞+助詞」「複合名詞+助動詞」も一つのアクセント句とする。

次に例を挙げて説明する。

 例えば、「音楽教育の科目をとらなければなりません。」の文は、統語上は①、音声 上は②のように分けられる。

①統語上 

 音楽 教育  の  科目 を とらなければ  なりません。

②音声上  

アクセント句 アクセント句 アクセント句

↓ ↓ ↓

音楽 教育 の 科目 を とら な ければなりません。

複合名詞+助詞 名詞+助詞 動詞+ない+〜ばならない(助動詞・活用形)

 学習者が、もし、アクセント句の音声知識を得ていない場合、前述の文を文節から 理解し、複合名詞、「音楽+教育」を一体化せずに読み、必然的に誤った音声生成になる。

「お ¬ んがく、きょういく」とそれぞれの独立した 2 語の名詞と理解し、それらのアク セントで読むことが多くなる。すると、本来の「音楽教育の科目をとらなければなり

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ません」の意味にはならず、「音楽と教育のそれぞれの科目を」と解釈されてしまう可 能性もある。よって、文をアクセント句で捉えて発話する練習を行うこととする。次に、

韻律面での問題について述べる。

1.3 韻律面の問題点

 朱(1993)は、「中国語母語話者は、日本語の複合語をばらばらに読むので、複合語 アクセント規則の指導は有効である」 と述べている。この「ばらばらに読む」であるが、

実際授業の中で中国語話者の学生は、単語のアクセントの影響を受けているかもしれ ない。一つの語ではなく、複数の語を発していると感じることが多い。この例を示す ため、「経済を発展させて、先進国並みの生活水準を達成したいと思っているのに、そ れを阻止することはできないよ。」の文を使用する。中級前半の中国語母語話者の学習 者にこの文を読んでもらい録音したものを音声分析し、ピッチパターンを示す(図 3)。

学習者の場合、中央に見られるピッチ曲線の図から、上がったり下がったりし、確か に「ばらばらに読む」(朱)ことがわかる。

 正しい日本語の場合、への字型を描くが、学習者にはそれは見られない。

図 3 学習者の音声分析図

 もし、学習者が日本語母語話者と異なった発話をした場合、教師は、経験から何を 言いたいのかある程度の予測を立てることができるが、実生活の上で聞き手にそれを 求めることはできない。そのため、学生はアクセント知識を得、自然な発話生成が必 要となる。知識を得たなら、自己モニター化が促され、自分自身で自然発話できるよ うになる。確かに、複合語のアクセントは比較的規則的であるが、規則の数が多いので、

日本語学習者が全てを覚えるには負担が大きすぎる。そこで、上述したように本稿で はアクセント句を文法面から見た文節の区切りとしてではなく、音声面から見た区切 りを採用し、動詞・形容詞の活用形、派生語、名詞+助詞など、従来個別に提示され ていたものを、一つのアクセント句として捉えるものとする。

 以上の理由から、本稿では、留学生を対象とした授業の中でアクセント句に特化し

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た音声指導を行い、その前後に実施したテスト結果から考察を述べる。

2 方法

 日本語教育における音声指導、特にプロソディー指導の効果を実証するため、2015 年 2 月から 1 か月間、日本語学校の留学生を対象として、アクセント句に注目したプ ロソディー中心の音声指導を実践し、前後に行った 4 種類のテストの結果を比較する ことにより効果を検証した。

2.1 手続き

① アクセントテスト:音声を再生し、アクセント位置によって対立している二語、ま たは二文(例:「今だ」「居間だ」)の正しい方を選択する課題 15 問

②イントネーションテスト:文音声を再生し、文末が上昇か下降かを解答する課題 8 問

③ アクセント句の知識とリスニングテスト:初めに、音声を聞かずに提示された単語 が起伏型か平板型かを解答した後、同じ単語を教師が発話し、同様に選択する課題。

最初は、音声なしで単語の綴りだけを見て、次に教師の発音を聞きながら解答した。

つまり、音声のあるなしでアクセント核の位置を問うものである。提示した単語は、

動詞・形容詞の活用形の辞書形・ナイ形・バ形、複合名詞は各 4 問、複合形容詞・

複合動詞は各 3 問提示した。また、プレテストとポストテストの使用単語は同じも のは使用しなかった。

④ 複合語にアクセント核を記入させるテスト 5 つの複合語を提示しそれにアクセント 核を記入させる課題(実施前に、アクセント核とは何か、また記入方法の知識は与 えた。)

 指導は 8 回(各回約 20 分)に分けて行った。主な指導内容は、リズムと拍、日本語 のアクセントの特徴(アクセント型・アクセント核・複合語・単純語等)、イントネーショ ンの知識を与えるというものであった。また各回ではフレージングが図示された会話 文(ダイアローグ)のあるテキストを使用し、アクセント句に着目した発音練習を行っ た。用いたダイアログのフレーズは単一のアクセント句で構成されていた。

2.2 被験者

 日本国内で、日本語を学習する留学生 13 名(10 代〜 20 代)国籍は、中国(1 名)、

韓国(1 名)、タイ(2 名)、ベトナム(2 名)、スウエーデン(1 名)、マーシャル諸島(1 名)、

ミクロネシア(1 名)、インドネシア(1 名)、マレーシア(1 名)、ウズベキスタン(1 名)、

アルゼンチン(1 名)であった。日本語のレベルは中・上級、自国での日本語学習歴は 約 1 〜 2 年と差はあったが、日本での学習歴は 10 か月で、今までに、音声だけの授業 を受けた経験はなかった。そのため、日本語の音声の特徴、アクセント核についての 知識はなかった。

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2.3 期間

 約 1 か月間で、通常授業の後半部分をこの音声指導の時間に当てた。 1 週間に 2 回、

各回約 20 分× 8 回行った。

3 結果と考察

①アクセントテスト

 テスト時期(プレテスト・ポストテスト)、フォーム(文中・単独)、アクセント型(平 板型・起伏型)を被験者内要因とし、各被験者間の正答率を従属変数として、三要因 の分散分析を行った。テスト時期の主効果[F(1,12)=6.128, p<0.05]および、テスト 時期とフォームの交互作用[F(1,12)=5.826, p<0.05] のみ有意であった。テスト時期 については、プレテスト 0.69 からポストテスト 0.77 に正答率が上昇していた。フォー ムについては、正答率が文中では 0.641 → 0.814 と上昇したが、単独では 0.723 → 0.731 と上昇率はわずかであった(図 4)。

②イントネーションテスト

 テスト時期(プレテスト・ポストテスト)、イントネーションパターン(上昇・下降)

を被験者内要因とし、各被験者間の正答率を従属変数として、二要因の分散分析を行っ た。テスト時期の主効果[F(1,12)=7.893, p<0.5]および、テスト時期とイントネーショ ンパターンの交互作用[F(1,12)=6.508, p<0.5]は有意であった。テスト時期については、

プレテスト 0.836 からポストテスト 0.971 に正答率が上昇した。下位検定の結果、プレ テストでは下降は上昇に比べて有意に低く、下降のみ正答率がプレテストからポスト テストに上昇した(図 5)。

図 4 アクセントテスト結果 図 5 イントネーションテスト結果

③アクセント句テスト

 テスト時期(プレテスト・ポストテスト)、語種(単純語・複合語)、音声(あり・なし)

を被験者内要因とし、各被験者間の正答率を従属変数として、三要因の分散分析を行っ た。テスト時期の主効果[F(1,12)=19.06, p<0.01] のみ有意であった。語種(単純語・

複合語)、音声(あり・なし)の主効果およびすべての交互作用はなかった。プレテス

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ト 0.491 からポストテスト 0.691 に正答率が上昇した(図 6)。

④アクセント核記入テスト

 以下の 5 つの複合名詞にアクセント核を記入させるテストでは、正しい位置に 1 か 所のみ印を記入した場合のみを正解とし、異なる位置につけた場合、2 か所以上にアク セント核の印を記入したものは不正解とした。その結果、プレテストの正答率は 0、ポ ストテストの正答率は 0.8 となった(図 7)。

・シドニーオリンピック

・イソップものがたり

・インフォメーションセンター

・エグジスタンシャリズム

・ディインダストリアライゼーション

図 6 アクセント句テスト結果 図 7 アクセント核記入テスト結果

 プレテストにおいて、一番多くみられた間違いは、複合語の前部要素の元のアクセ ント核に印をつけるものであった。また、未回答や、2 カ所にアクセント核を記入する 間違いも多かった。

 ポストテストにおいては、複合語の前部要素の最後の部分、後部要素の直前、つま り単語の切れ目に当たる位置にアクセント核を記入する間違いが一番多かった。

4 考察

 指導前後に行った、①アクセントテスト、②イントネーションテスト、③アクセン ト句テスト、④アクセント核記入テストの 4 種の結果、プレテストからポストテスト に有意に上がった。この結果から、指導効果があったことが示された。

 ①アクセントテストにおいて、単語単独提示よりも、文中提示でのアクセント型の 点が上昇したという結果がでた。従来、単語一つ一つのアクセント型を覚えるよりも、

文中の中で単語のアクセント型を学習する方が効果的であることを示唆する。

 ②イントネーションテストにおいて正解率が高かったため、学習者にとって、最後

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の部分の上昇下降はさほど難しいものではなかったと思われる。「下降」のみプレテス トからポストテストへの点数の上昇率が高かった。「上昇」はもともと高得点であった ため、上昇する余地がなかったと考えられる。「下降」パターンでも、今回の授業実践 により、聞き取れるようになることが分かった。

 ③アクセント句テストにおいて、単純語と複合語でテスト結果に差があるものと推 察していたが、そうではなかった。これは、テストに提示した単純語は、学習者が間 違いやすい、用言の動詞・形容詞の活用形「ナイ形」「バ形」であったことに起因する 可能性がある。(学習者において用言のこれらの活用形と複合語の難易度が変わらな かったため、あまり間違わない「マス形」等をいれると、異なった結果になったと思 われるが、これは今後の課題の一つとして行う予定である。)次に、音あり・音なしに 関しては、音声の手がかりを追加したにも拘わらず、差がなかった。これは、音声の 手がかりを知識として活用しなかった可能性があり、それが示されたことになる。こ の点については、さらに検証し明らかにしていく。

 ④アクセント核記入テストにおいて、一つの単語にアクセント核が 2 つ以上あり、ピッ チが上がったり下がったりすると考えてしまう間違いが多く見受けられた。また、複 合語の前部要素と後部要素の結合部分にアクセント核記号を記入したり、元の単語の アクセント核の部分に印をつけたりする間違いも多かった。複合語になると元の単純 語のアクセント核が移動するという知識がないことにより、これらの間違いをしたの である。このような間違いは複合語の発音誤りを引き起こしている一要因と考えられ る。よって、ある程度規則的なルールがある複合語、アクセント句の知識を得ること により、これらの間違いは回避することができる可能性がある。

5 まとめと今後の課題

 本研究では、「アクセント句」に特化したプロソディー中心の音声の授業を行い音声 知識理解の必要性を検討した。短期間であったが、アクセント句を対象とした音声知 識を与え、プロソディー指導を行うことにより一定の効果があることが示された。ほ とんどの学習者は、このような音声指導は受けたことがない。一般的に、初級の段階 で正しいプロソディ―知識を得て習得するのが良く、中上級者の正しい音声習得は難 しいと言われている。しかし、学習者が音声に対して意識を持つことができると、モ ニター化が図れ効果があると考えられる。実際、授業内でも、どのような練習をすれ ば良いのかなどの質問があり、大変興味を持ち取り組んでいた。

 今後の課題としては、アクセント句テストに、動詞・形容詞のマス形等すべての形 を含めることにする。それぞれの形による習得の差を見極め、指導に役立てることが 必須であろう。また、今回はできなかった、名詞・複合名詞+助詞・助動詞、複合形 容詞・複合動詞の派生語等を指導・テスト項目に含め、実験を行う予定である。さら に、指導前後に収録した、学習者の読み上げ文の音声分析を行い、生成面からのその

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効果の検証を試みる。この読み上げ文は、アクセント型による違いを明らかにするため、

一定の基準を設けたものである。よって、この結果から、学習者の特徴が分かり、母 語話者と比較することにより指導に役立てることができると考えられる。

1 現代日本語書き言葉均衡コーパス(文節認定)2009 年、国立国語研究所

<http://pj.ninjal.ac.jp/corpus_center/bccwj/morphology.html> 2015 年 9 月 20 日 2 日本語話し言葉コーパス(形態論情報)2010 年、国立国語研究所

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 <http://pj.ninjal.ac.jp/corpus_center/csj/k-report-f/03.pdf> 2015 年 9 月 20 日

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図 2 音声分析図  図 2 が示すように、アクセント句でひとまとまりのものとして(ピッチの下がり目 がひとつ)分けた方が実際の発話に近い。(真ん中に見られるピッチ曲線がへの字型に なっている)。アクセントの重要な機能の一つに、語の境界表示機能が挙げられるが、 「音声、文字を教える」と「音声文字を教える」では意味が異なる(山田 2007)。この、 アクセントの一体化は、複合名詞の意味にあった発音をする際にも重要である。学習 者がこの音声知識を得ることにより、実際に発話に役立てることが可能である。以上 の理由

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