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聞き手を意識した「ていただく」の使用 : TVのト ーク番組における用例の分析

著者 米澤 昌子

雑誌名 同志社大学日本語・日本文化研究

号 11

ページ 23‑37

発行年 2013‑02

権利 同志社大学日本語・日本文化教育センター

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000012989

(2)

要 旨

物や行為の授受関係を表す受給動詞1の一つである「ていただく」の用法につい て使用実態を分析した。恩恵意識や上下関係に基づく敬意を示すといった本来の 用法とは異なる用法であると思われる「ていただく」が使用されるに至る要因を 探った。本稿では、予め頻用が予想されるTVのトーク番組において、主にゲスト・

司会者、併せて 53 人の発話を調査対象とした。その結果、「ていただく」の全受 給動詞の総用例数に占める割合の高さを確認できた。発話の場を、観客・視聴者 といった直接の発話の相手にならない聞き手を含む場、テレビ放送というある程 度あらたまりが必要とされる場に限定した中で、「ていただく」が頻用されるとい うことは、その使用の要因として聞き手の存在が大きいことが指摘できると思わ れる。話題の授受関係の明確な与え手に対する謙譲表現として使用される本来の 用法よりも、与え手を特定できない、させない用法が目立った。発話の場に存在 することになった全ての人々は、話し手の話題の行為に直接関係がなくとも、「て いただく」が使用されることにより、関係ある存在として表現されることになる。

つまり、話し手は「ていただく」を用いることにより、個人の話題をその場の共 有の話題として提示できるため、聞き手に対し配慮を示せることになるわけであ る。様々な立場の多数の聞き手が設定される発話の場では「ていただく」は共有 の場を作るという機能を色濃くすると考えられる。「ていただく」の使用は、話し 手が授受関係の当事者よりも発話の場を優先させ、聞き手を強く意識している表 れであることを指摘する。

キーワード

日本語 日本文化 受給動詞 聞き手 聴衆 発話の場 共通の話題

1  はじめに

金澤(2007)では、「ていただく」が誤用の形も含め、「てくださる」よりも好んで 使用されていることが指摘されている。確かに、日常生活で耳にする機会が多いが、「先

聞き手を意識した「ていただく」の使用

─ TV のトーク番組における用例の分析─

The Use of Benefactive Auxiliary Verbs Teitadaku

─ Based on the Analyzing of Japanese TV Show ─

米澤 昌子

(3)

生に教えていただいた」「失礼ですが、お名前をお聞かせいただけますか」のような授 受関係における受恩の明示といった本来の用法とは異なる用法が増えているように思 われる。「ていただく」が頻繁に使われていると思われる発話の場としてTVのトーク 番組があげられる。金澤(2007)にあげられている用例もテレビで採取したものが多い。

TVのトーク番組が日常の会話と違う主な点は、話し手の話題を聞くために用意された 場であること、話し手の相手である聞き手には、司会者だけではなく観客・視聴者といっ た直接は会話に参加しない人々が含まれるといった点である。不特定多数の聞き手達 は、話し手の提供する話題と無関係な存在であることが多く、話し手は自身に属する 話題について話すと、自分本位な発話に陥る危険性がある。また、聞き手として目に 見えない聴衆まで含まれるため、聞き手の年齢・立場なども話し手が測りかねる場で 話すことになる。物・行為の授受関係を表す受給動詞については、様々なアプローチ からの有益な研究が多いが、「ていただく」を論考の中心に扱ったものは多くない。本 稿では、「ていただく」の頻用の場、頻用の意味について、一つの私見を示したいと思う。

2  先行研究

先述した金澤(2007)は、「書店の皆さんが、ボクの本を特別に扱っていただいたお 蔭で…」のような「ていただく」の誤用が次第に増加しつつある現象の背景について 考察している。

その背景には、「てくださる」よりも「ていただく」が頻用される実態があるとし、

その頻用の理由を「ていただく」は、自身の側で感じる「ありがたさ」だけに焦点を当 てることができ、相手となるべく直接的な関わりを持たない形で人間関係を維持してゆ きたいという心理が、無意識のうちに関わっているためであると指摘している。また、

上原(2007)は、「ていただく」を相手に対する働きかけの有無によって二分類し、そ の二分類は尊敬語との互換性の有無と関係することを明らかにした上で、謙譲語ではあ るが相手の行為を上位に位置づけて表現する尊敬語との共通性を持ち得ることを指摘し ている。考察対象を接客場面とし、店における店員と客との会話、会社担当者と得意先 の会話、商業用ポスターやパンフレットなどの印刷物、テレビ・ラジオにおける視聴者 に対する発話場面などから用例を採取している。これらの場において、他の受給動詞の 使用状況と比較することで、さらに「ていただく」の性格が明確になったのではないだ ろうか。また、接客場面として、上述した場をあげているが、発話の場は少々種類を異 にすると思われる。店における店員の客への発話は、基本的に目の前にいる 1 人に行わ れるものであるが、テレビ・ラジオにおける視聴者に対する発話は、目前にいない不特 定多数の人々へのものとなる。また、ポスターやパンフレットは書かれたものであり、

他と同様に純粋な発話として捉えてよいかといった問題も含んでいるように思われる が、「ていただく」の機能を論考の中心とし、尊敬語との互換性に注目したものは管見 では他に見当たらない。日本語会話データーベース(上村コーパス)を用いて2、授受

(4)

表現の使用実態を調査して詳しい考察を加えた論考に原田(2007)がある。「依頼」の 表現と「感謝・お礼」の表現として「ていただく」「くださる」の用例数を比較し、「て いただく」が両者において好まれる傾向があり、特に、依頼表現においては、「てくだ さる」を用いた依頼は、引用中の 2 例を除いて見られず、ほとんどが「ていただく」の 用例であるとしている。また、「(さ)せていただく」については、男性より女性の使用 例数が多いことを報告している。「相手に許可を求めるといった本来の用法以外に、相 手の許可なしに自らの意志で選択可能な状況の中で、使役の関係による許可によって、

聞き手からの受恵を促すという過剰な表現」として、以下の例を挙げている。

①  いっせいに(保育園の申請の)受付の期間がありまして、で、その、その状況 で常勤の方から先にお入れになって、パートをまあもうちょっとあとの方、も し空きがあったらということでみんな待たせていただいているんです。

② 土、日はちょっと、えー、あのご遠慮させていただきたいんですけれども。

③  また、日本へ、ほんのしばらくですけど、帰ってまいりまして、でその時に、

あちらの、ICUの方でも、ちょっと、日本語のクラスをお手伝いさせていただ きまして、それから今度は、あの、ロンドンの方に…。

「(さ)せていただく」は受恵による謝意や借りの気持ちから、相手に対する敬意が 生じ丁寧表現となる点で、極めて便利な表現形式であるとし、恩恵関係が従来の敬語 に代わるものとして使用されてきていると指摘している。非常に興味深い論考である。

ただ、発話が誰に対して何のためになされたものなのか、つまり、発話の場の設定の 目的、聞き手がどのような立場でその発話の場に参加しているかが明示されていない。

①〜③とも、話し手本位の行動ともとれるが、もし、③において、聞き手が日本語教 育関係者であるならば、話し手の「手伝う」という行為に全く関係がないとも言いき れなくなってくる。発話の場、発話に参加する聞き手の立場を明確にすることによって、

①〜③の用法が本来の用法とどの程度かけ離れているか、その性格がさらに明らかに なると思われる。

3  調査対象と用例数

本稿では、多数の聞き手が存在することで、話し手の受給動詞、特に「ていただく」

の使用にどのような影響がもたらされるか明らかにするため、調査対象として、TVの トーク番組を選定した。トーク番組では、ゲストが自身の出来事や考えを述べるため、

ある程度まとまった用例の採取が期待される。また、トーク番組の聞き手は、司会者 にとっては、ゲスト・観客・視聴者、ゲストにとっては、司会者・観客・視聴者とな り、複数存在するだけでなくその立場も関係も異なってくる。さらに、授受関係を表 現する上で、話題の当事者である授受関係の与え手・受け手の存在が絡んでくる。結果、

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話し手が直接話題に関与していない聞き手を自身に属する話題の授受関係においてど のような存在であると捉え、扱うかが浮き彫りになると思われる。そこで、10 月 24 日

〜 12 月 20 日までの約 2 か月間の 2 つのトーク番組(うち 1 つは番組のコーナーとし て放送されている)における司会者、ゲスト 50 人の発話を主に調査対象とした。話し 手の聞き手及び場に対する意識をさらに細かく見るために、番組Aと番組Bは、少々 性格を異にするものにした。番組Aは、民放番組で、番組自体もあらたまった雰囲気 はあまりない。また、司会者は芸歴が長いため、ゲストが知人・友人である場合の発 話も多い。司会者及びゲストと観客とのやりとりもたまに見られる。番組Bは、公共 放送としてのNHKの番組であり、司会者も男女のアナウンサーで、ややあらたまっ た雰囲気となっている。司会者とゲストは初対面である場合が多い。観客はガラス越 しの観覧となるが、視聴者は番組中にファックスなどによってゲストに質問し、ゲス トが答えるといった場面が用意されている。調査の結果、用例数は、以下の通りとなっ たが、トークされる時間も番組Aと番組Bでは異なる上に、受給動詞の使用はゲスト の話した話題などの内容にもよるため、本稿では、用例数自体よりも、受給動詞全用 例における各動詞の割合、また、番組A及び番組Bにおける割合の比較に注目したい。

(小数点第 2 以下は四捨五入とする。)(本稿では、「お〜いただく」は「〜ていただく」

と同様に扱う。)

【表 1】番組 A  ゲスト:男性 15 名・女性 16 名 計 31 名+司会者(男性)1 名 やる あげる さしあげる くれる くださる もらう いただく 0(0.0) 1(0.86) 0(0.0) 2( 1.74) 0(0.0) 1( 0.86) 6( 5.22)

てやる てあげる てさしあげる てくれる てくださる てもらう ていただく 0(0.0) 1(0.86) 0(0.0) 34(29.57) 27(23.48) 15(13.04) 28(24.35)

0(0.0) 2(1.74) 0(0.0) 36(31.31) 27(23.48) 16(13.91) 34(29.57)

(  )内は%

【表 2】番組 B  ゲスト:男性 13 名・女性 6 名 計 19 名+司会者(男女各 1 名)

やる あげる さしあげる くれる くださる もらう いただく 0(0.0) 0(0.0) 1(0.32) 2( 0.64) 2( 0.64) 5( 1.59) 24( 7.67)

てやる てあげる てさしあげる てくれる てくださる てもらう ていただく 0(0.0) 3(0.96) 0(0.0) 50(15.97) 71(22.68) 22( 7.03) 133(42.49)

0(0.0) 3(0.96) 1(0.32) 52(16.61) 73(23.32) 27( 8.62) 157(50.16)

(  )内は%

【表 3】番組 A + B ゲスト:男性 28 名・女性 22 名 計 50 名+司会者 3 名 やる あげる さしあげる くれる くださる もらう いただく 0(0.0) 1(0.23) 1(0.23) 4( 0.93) 2 ( 0.47) 6( 1.40) 30( 7.01)

てやる てあげる てさしあげる てくれる てくださる てもらう ていただく 0(0.0) 4(0.93) 0(0.0) 84(19.63) 98(22.90) 37( 8.64) 161(37.62)

0(0.0) 5(1.16) 1(0.23) 88(20.56) 100(23.37) 43(10.04) 191(44.63)

(  )内は%

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番組Aでは、「てくれる」「てくださる」「ていただく」といった順に総用例数に占め る割合が高く、番組Bでは、「ていただく」「てくださる」「てくれる」の順となり、「い ただく」「ていただく」で用例数の過半数を占めるに至った。このような「いただく」、

特に「ていただく」の頻用は、米澤(2001a・2012)などのシナリオにおける調査では 見られない結果である。番組Aよりも番組Bにおいて「いただく」「ていただく」の使 用比率の高さが分かる。これは、番組Aと番組Bの性格の違いからくるものかもしれ ない。番組Aは司会者がゲストと知人である場合が多く、発話の場はあらたまりの必要 性も番組Bよりはないといった要因が関係していると考えられる。つまり、番組Aの 話し手は、番組Bの話し手よりも聞き手への配慮を積極的に示す必要性は低いと判断 したことによる結果ではないだろうか3。なお、今回の調査では、米澤(2012)のシナ リオ調査では 4 番目に多い用例数で確認できた「やる」「てやる」の用例は見当たらなかっ た。「やる」の使用場面の制約がうかがえる。また、シナリオでの調査同様、「さしあげる」

の用例はほとんど見られなかった。現在、使用度の極端に低い語であると認識してよい であろう。以下、本調査により採取された「あげる」「もらう」「いただく」「くれる」「く ださる」の用法を概観し、本稿では、特に、「いただく」の頻用について考察を深めたい。

4  受給動詞の使用状況

「いただく」の用例について考察するためには、他の受給動詞の用法についてふれて おく必要があると思われる。先述したように、話し手の表現選択における聞き手の存 在が及ばす影響、話題中の与え手・受け手と聞き手との関連付けの判断等を中心に本 調査における各語の使用状況を概観し、大まかな性格付けを行っておく。[  ]には 発話者を明記する。

4.1 あげる

番組Aでは、本動詞「あげる」は発話者が友人Aに対して使用した 1 例のみで、補助 動詞は、以下の無生物に対する例であった。番組Bの用例は全て一人の男性のゲストに よるものである。自身の子供、或いは、視聴者である「母親たち」に彼女達自身への授 受行為を促す発話中の使用であった。与え手が受け手に対し、親しさをこめて使う「あ げる」は、受け手とならない聞き手が多数存在するような場では使用しにくいようである。

[司会者 14] 少しは休ませてあげないと、この人達(内臓のこと)大変なんですよ。

(番組A)

[ゲスト 1](わが子に)色々やってあげたいんですよ。 (番組B)

[ゲスト 1]自分をほめてあげてください。 (番組B)

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4.2 もらう

用例数は決して多くない。このことは、本調査において場面を設定したことと関係 があると思われる。「もらう」は授受行為の与え手への働きかけ、待遇の高さなどが指 摘される語であるがゆえ、話題の授受行為の与え手にならない多数の聞き手が存在す る場合、使用が好まれない傾向があるようである。用例は、与え手が司会者である場合・

与え手が複数名いる場合・与え手として聞き手を含む不特定多数を想定している場合 などである。

[ゲスト 2 →司会者 1]これ、毎回、しゃべってもらうんですけど、僕大好きなんです。

(番組A)

[ゲスト 3] スタッフにも泊まってもらって夜泣き対策に力を借りているんです。

(番組A)

[ゲスト 4]こいつは日本の俳優だよと言ってもらえるような俳優になりたいです。

(番組B)

また、「くれる」には置き換えられない次のような指示の場面でも見られた。

[ゲスト 5] なるべく(重心を)後ろにしてもらって、手はあんまりぶんぶん振んな

いほうが綺麗に歩けるんで。 (番組B)

「(さ)せてもらう」については、5 で「(さ)せていただく」5と併せて考察することにする。

4.3 くれる

話し手の主観性の強さが指摘される語ではあるが、番組Aでは、総用例数に占める 割合が一番高い語であった。しかし、米澤(2012)のシナリオ調査に比べ、その割合 は低い。一方、番組Bでは、用例数が占める割合は第 3 位にとどまった。話し手の主 観性の強さに加え、視点制約を有し、与え手が主語となり、受け手に話し手自身、も しくは、話し手に近い人物を置く「くれる」は授受行為を話題の人物間だけの事柄と して表現してしまう。そのため、聞き手が与え手とならない場面での「くれる」の使 用は、話題に関連づけられない聞き手はもっぱら第三者にしかなり得ず、丁寧さに欠 けてしまう。そのため、聴衆者への配慮、場面のあらたまりを話し手がより強く意識 すると思われる番組Bにおいて、その使用は番組Aでの使用より避けられたと考えら れよう。「くれる」が使用される際は、授受関係の与え手は知人である司会者、家族間、

仲間などである場合が多い。

[ゲスト 6] おやじが朝飯作ってくれるんですよ。 (番組A)

(8)

[ゲスト 7] ○○さん(司会者の名前)、見てくれましたか? (番組A)

[司会 1 →ゲスト](旦那さんは育児を)やってくれるの? (番組A)

[ゲスト 8]涙を流してくれる、復帰を喜んでくれる仲間がいるってことと…

(番組B)

[ゲスト 9](妻が)病室に毎日のように来てくれたんで… (番組B)

また、不特定多数の「客」・視聴者を与え手とする発話や無生物を与え手とする発話 も多くはないが、数例見られた。

[ゲスト 5]出ると皆さん名前を言ってくれたりとかするので。 (番組B)

[ゲスト 10] お客様がちゃんと大事なお金を持って映画館に足を運んでくれるのに。

(番組B)

[ゲスト 11]せっかく子供が応援してくれるっていう状況があるから。 (番組B)

[司会者 2]松岡という役柄が私達に本当に色々な印象を与えてくれましたもんね。

(番組B)

[ゲスト 12] 自分にきづかせてくれるできごとがあったので…。 (番組B)

個人差もあるだろうが、上記のうち大人の「客」を与え手とする用例は丁寧さを欠 いた発話として受け止められ、やや違和感があるように思われる。

4.4 くださる

今回の調査において、用例・用法は、米澤(2012)のシナリオ調査とそれほど性格 を異にしない語であった。本動詞よりも補助動詞での使用が多く、その補助動詞は「て ください」の形での使用がほとんどである。若干の違いを言えば、シナリオ調査より も「てくださる」という形での使用の割合が多かったことである。特に、番組Bでは、「て くださる」の形が「てください」の過半数に達した。「てくださる」の使用は、番組A では、授受の受け手が話し手であり、与え手は眼前にはいないお世話になった人を与 え手としたものである。番組Bでは、番組A同様の場面に加え、眼前にいる観客・視 聴者を含む「客」を与え手にした使用が見られる。

[ゲスト 13] そしたら、(〇〇さんが)それを覚えてくださっていて… (番組A)

[ゲスト 11]ブログの方にも皆さんコメントを下さるんですが。 (番組B)

[ゲスト 14]卒寿とかもそういうのもお客さんが教えてくださって… (番組B)

「てください」は、一種の指示表現でもあるため、与え手は話し手の目の前にいる聞 き手であることがほとんどである。つまり、与え手は特定できる存在である。「てくだ

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さい」は依頼表現としては敬意を欠く表現であるため、あらたまりの度合いが少ない 番組Aでも、その使用が認められる。番組Aの司会者はゲストや聴衆に対して、「て いただく」は使用しないが「てください」は、「(景品)ねらっていってください」など、

使用例が認められる。

「司会者 1 →ゲスト」 まあ、おかけください。

[ゲスト 15 →司会者]守ってください。

[ゲスト 16 →観客]ぜひ、見てください。

番組Bでもゲストから観客・視聴者へ、司会者から視聴者・ゲストへ、視聴者から ゲストへの質問など、相手が特定できる場面での使用が多い。

[視聴者 1 →ゲスト]美容法を教えてください。

[視聴者 2 →ゲスト]ご活躍を期待しています。これからもがんばってください。

[ゲスト 17 →観客・視聴者]ぜひ、皆さん、見て下さい。

[司会者 2 →視聴者] ○○さん(視聴者の名前)、ぜひ、参考になさってください。

[司会者 2 →ゲスト]今日はありがとうございました。また、お越しください。

本調査とシナリオ調査との用例、また、番組Aと番組Bとの用例など、使用場面に 大きな差異が見られない。したがって、「てください」は聞き手に影響されない、場に 左右されない語であると言えそうである。

4.5 いただく

シナリオ調査に比べその総使用数における割合が際立って高い結果となった。繰り 返し述べるが、本調査では、シナリオに見られる様々な場面設定とは異なり、第三者 ともいえる聴衆が存在し、立場が異なる多数の聞き手が存在する限定された発話の場 を選定している。このような場において、「いただく」の用例数が多いということは、

受給動詞の中で最も聞き手を意識する語であることが指摘できるであろう。また、そ の使用は番組Aよりも番組Bの方が高い数値を示しており、聞き手が疎の関係にあり、

あらたまりが必要だと思われる場面での使用が好まれるようである。これは、「いただ く」の謙譲語としての性格のためであるとも考えられるが、逆に、あらたまりがあま り感じられない番組Aでも、用例の総数に占める割合が第 2 位となっており、1 位の「く れる」と僅差であることを考えると、上下意識を基本とした本来の謙譲語とは性格を 異にする語であると言えよう。本調査が示す「いただく」「ていただく」の性格とは一 体どのようなものなのか。次の章で、「(さ)せていただく」の用例・用法と合わせて、

考察を試みたい。

(10)

5  聞き手の存在を意識する「場」−「ていただく」の使用 −

まず、本動詞「いただく」であるが、いただくものは具体的な物から抽象的な物まで、

様々である。与え手は話し手にとって、知人、仕事関係者に当たる人物が多い。特に、

話し手による与え手への高い敬意は見られないものがほとんどであり、その使用も男 性よりは女性に多い。また、番組Bの用例のほとんどが司会のアナウンサーによるも のであり、視聴者からのファックスなどを紹介する場面での使用が最も多く、受け手は、

発話者のアナウンサー、或いは、アナウンサーとゲストとの両者とも思われ、特定し にくい。授受関係の当事者を意識した発話というより場や聞き手・聴衆への配慮を示 した丁寧語的な印象が強い。

[ゲスト 18](送られてきた花を見て)いっぱいいただきましたね。 (番組A)

[ゲスト 19 →ゲスト(電話)]娘さんからメールをいただいたことがあります。(番組A)

[ゲスト 20]私の場合、(オリジナル曲から)その元だけいただくんで。 (番組A)

[司会者 3]愛知県の〇〇さんから(ファックスを)いただきました。 (番組B)

[司会者 2」こんな似顔絵までいただきました。 (番組B)

次に、補助動詞「ていただく」についてであるが、2 で述べたように原田(2007)では「依 頼」表現と「感謝・お礼」の表現として「くださる」よりも「ていただく」が圧倒的に 頻用されることが指摘されている。本調査では、結果は異なり、依頼時における「てい ただく」と「てくださる」の使用状況を比較すると逆に「てくださる」の方が圧倒的に 多かった。依頼以外の場では本稿の調査においても「てくださる」よりも「ていただく」

の方が頻用されている。番組Aの「ていただく」の用法は、聴衆を含む不特定多数を 与え手とするものと、発話の直接の相手である聞き手に対するものなどである。

[ゲスト 21]ぜひ、ご覧になっていただきたいと思います。

[ゲスト 22] まじっすか。聞いていただいてるんですか。

番組Bでも上記と同じ用法での使用が見られたが、その他に「ていただく」を用い ることで司会者の立場がはっきり分かるような用例があった。

[司会者 2]「ちょこっとサイエンス」という番組にもご出演いただきますので、よろ しくお願いいたします。

[司会者 2] 番組で、そういう道筋(イクメンブーム)を作っていただいたような気 がするんですが…。

司会者は、公共放送であるNHK所属のアナウンサーであり、2 例に見られる「番組」

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は、司会者にとって自社の番組であるための使用かと思われる。しかし、用例は意外 にもこの 2 例のみであり、通常は、ゲストが司会者にとって自社の番組に出演してい ることについての話題の際も「ていただく」の使用は見られない。中立的な立場をと ろうとしている姿勢の表れとも見受けられる。

[司会者 2] NHKの番組、クリスマスイブの日、ご出演されますよね。

[司会者 2 →ゲスト]この(NHKの)番組、幅広い世代の方がご覧になっていましてね。

番組B中で、目立った用法は、以下の司会者によるものである。

①[司会者 2] 今日は、○○さん(ゲスト)にお越しいただきました。

②[司会者 2]今日はご家族のお写真をお持ちいただきました。

③[司会者 3]では、一部をご覧いただきましょう。

④[司会者 2] 番組の様子をちょっとご覧いただきますが、せっかくなので、(ゲス トが司会を)始められた 2008 年の模様もご覧いただきます。

⑤[司会者 3] 同日密着いたしましたので、ご覧いただきましょう。

これらの用例において、発話の場を確認しておくと、話し手はもちろん司会者であ り、聞き手は、直接の話の相手のゲストと聴衆である観客と視聴者である。次に与え手・

受け手であるが、①・②の与え手はゲストであるが、受け手は、司会者単独か、司会 者を含む聴衆全てであるか特定できない。また、③・④・⑤は、ゲストが出演してい る番組等を見ることを促す際の発話であるが、与え手は司会者のみとするのか、VTR に出演しているゲストも含まれるのか、また、受け手は、聴衆のみとするのか、ゲス トも含まれるのか判断が難しい。司会者は毎回番組冒頭で、与え手を視聴者のみに特 定した場合は、次のように「てください」を用いて、視聴者の行動を促している。

[司会者 3]ファックス、携帯サイト、番組のホームページからお送りください。

①〜⑤の用例から、授受行為において、受け手・与え手を特定することが難しい。

これは、わざと特定させない表現を選んでいるのではないだろうか。話し手は、与え手・

受け手の存在よりも、聞き手の存在を重視していると思われる。「ご覧ください」では、

受け手は発話者本人のみとなり、相手への直接の指示となり、やや丁寧さにかける。「ご 覧になってくれますか」「ご覧になってもらえますか」では、恩恵性が表に強く出て、

だれが受け手か与え手かを意識せざるを得なくなる。「ご覧になります」では、敬意は 示せるものの相手の「見る」という行為が話し手とは無関係なものになってしまう。

そこで、授受行為が話し手及び全ての聞き手と関連がある行為であることを示せ、かつ、

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聞き手への丁寧さを示せる表現として「ていただく」が選択され、頻用されているの ではないだろうか。この話し手の意識は、「(さ)せていただく」の使用において、さ らに明確なものとして説明でき得る。

次に、「ていただく」に「さす」「させる」といった使役形を伴った「(さ)せていただく」

が頻用される意味について考えていく。番組Aで見られた「ていただく」の用例の約 7 割は「(さ)せていただく」である。シナリオ調査などでは見られない使用実態である。

本来は、「明日休ませていただけますか」などのように、相手の使役行為が明確である 場合に用いられる表現であるが、本調査では、そのような相手の明確な使役が存在す る本来の用法は以下の 1 例以外見当たらなかった。

[司会者 3] 今回(動画の撮影を)お願いさせていただいていたんですね。 (番組B)

その他は全ていわゆる話し手の自分本位な行為遂行を話題とする場面での使用例と なる。つまり、必ずしも「(さ)せていただく」の表現が必要ではない場面での使用であり、

むしろ「(さ)せていただく」の本来の用法を考えると、使用されるにふさわしい場面 とは言えない。

[ゲスト 23](ツアーを)やめたいんだよね。やめさせていただきます。 (番組A)

[司会者 2]この本の中から 3 つ、例としてご紹介させていただきます。 (番組B)

以上のような話し手による自分本位な行為遂行宣言を意味する場面での使用が数例 確認できる。用例のほとんどは、話し手がある行為を遂行させている、或いは、遂行 させたことを意味している。これらは、文法面では、「(さ)せていただく」を必ずし も伴う必要がないと思われるが、あえての使用となるとそこに話し手の心的態度が強 く表れていると思われる。

①[ゲスト 21]映画のお仕事で今回ご一緒させていただいて。 (番組A)

②[ゲスト 24] そのあと、すぐ「風と虹と」のお話がありまして、出させていただ

いて…。 (番組B)

③[ゲスト 1]この世界でがんばらさしていただいています。 (番組B)

④[ゲスト 9] 芝居させていただける、舞台やらしていただけるという気持ちになり

ましたね。 (番組B)

⑤[ゲスト 6](〇〇さんのtwitterの)フォロワーさしていただいているんですが。

(番組A)

⑥[ゲスト 25]番組では(親子)仲良くやらせていただいているんです。 (番組A)

⑦[ゲスト 26] 演技もすごく勉強になり、勉強させていただいています。 (番組B)

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⑧[ゲスト 27] 横浜の道場の方へ行ってトレーニングさせていただいたりしており

ます。6 (番組A)

⑨[ゲスト 28]ちょっとだけ、お茶を習わせていただいております。 (番組B)

まず、話題の行為者、つまり、「(さ)せていただく」で示された「与え手・受け手」

という枠組みの中で使用の意味を考えていく。①・②は、番組或いは作品製作関係者 もしくは出演者の許可があって、「ご一緒できた」「出演できた」とも捉えられなくは ないので、彼らを与え手と考えることもできる。「(さ)せていただく」と似た用法を 持つ「(さ)せてもらう」も本調査では、この①・②の例同様、授受の与え手・受け手 を「(さ)せていただく」よりは意識しているように受け取れた。

[司会者 2]お二人のコンビに笑わせてもらいました。 (番組B)

[ゲスト 1]番組で本当に勉強さしてもらってますね。 (番組B)

[ゲスト 12]子供たちも遊んでいる中、(撮影を)やらしてもらったんで。(番組B)

[ゲスト 29]〇〇さん(司会者の名前)とは、番宣でご一緒さしてもらって…

(番組A)

[ゲスト 30]私プロレス大好きで試合よく見に行かせてもらっていて (番組A)

ただ、最後の例は、次に述べる「(さ)せていただく」の⑤〜⑨と同様の用法だと思 われるが、このような場合に、話し手が、「(さ)せていただく」ではなく、「(さ)せ てもらう」を選択した要因は特定しづらいが、番組Aのあらたまり度の低さであろうか。

課題として残るところである。「(さ)せていただく」に戻るが、③・④は、関係者に加え、

ゲストを応援するファン・客、つまり、発話の「場」にいる聴衆を与え手に含んだよ うな発言であると見受けられる。米澤(2001b)では、このような用法は「おかげさま」

的発想に起因するものであることを示唆した。確かに、④のゲストは、大病をしてか ら周りの人々に感謝する気持ちが強くなったと番組の中で述べている。そのような心 的態度の表れが使用を導いていると思われる。実際、彼の番組中の発話においてこの ような「(さ)せていただく」を 6 例見出すことができる。さらに、⑤〜⑨では①〜④ に比べ、より自分本位で行える行為に対する「(さ)せていただく」の使用が見られる。

実際には使役行為が伴わないにもかかわらず恰も使役行為が存在するかのような表現 を選択した話し手の心的態度には、「場」というものが強く意識されているのではない だろうか。井出(2006)は、「言うという行為」という単位を示しているが、それは、

言葉を誰が誰に話すか、その人間関係、場のあらたまりなどといった要素を含めた話 すという行為をトータルに捉えた単位とするためだとしている。話し手の「言うとい う行為」を支配するコンテクストとして「具体的には、伝達情報が話し手に属するか、

聞き手に属するか、などの区別のような小さいものから、話し手、聞き手、登場人物

(14)

の関係、場のあらたまり程度、話のジャンルなどに関するもの」などをその一例とし てあげているところに注目したい。TVのトーク番組では、話し手の伝達情報のほと んどが話し手に属するものである。話し手が提供する授受行為の当事者と聞き手は疎 の関係である場合が多い。そのような中での話し手の発話は、ともすると話し手の独 りよがりなものとなり、聞き手である聴衆は自分とは無関係なものと認識してしまう であろう。それでは、井出(2006)のいう「わきまえている発話」にならず、話し手 も聞き手から良い評価をされなくなる。金田一(1964)は、聞き手に不快感を与えな い話をするには、相手に関係ない、相手が興味のないことをむやみに話題にしてはい けないとしている。つまり、話し手が発話の「場」に居合わせる全ての人を話し手の 発話に関係している、話し手の提供した話題に関係していると思わせることで、聞き 手への丁寧さにつながることになる。そこで、話し手は、話し手自身に属する話題を、

見せかけの使役表現を用いて恰も聴衆を含み、聞き手全てをその使役行為者、「ていた だく」の与え手に見立てることで、話し手・司会者・聴衆者との共有の話題に仕立て ているのではないだろうか。全ての聞き手を話題の行為の関係者として扱うことで、

丁寧さを作りだしていると思われる。このように見ると、「(さ)せていただく」を含 む「ていただく」の用法は、恩恵性・謙譲語といった従来の用法からの用法拡大が見 られる。聞き手への配慮を重視するという意味では丁寧語的要素を持つとも言えるが、

話し手に属する話題を複数の全ての聞き手との共有の話題にできるといった機能を持 つ新しい待遇表現として捉えられるのではないだろうか。2 であげた「多くの方が来て いただき…」の誤用は、「ていただく」の使用において、聞き手が強く意識され、与え手・

受け手といった概念が弱まっているとも考えられそうである7

6  まとめ

以上、本稿では、話し手と発話のやりとりはしないが聞き手と見なされるいわゆる 聴衆がいるTVのトーク番組を調査対象として分析し、聞き手の存在が話し手の表現 の選択にどのような影響を与えるかについて考察を試みた。話し手は、聴衆者が聞き 手として含まれる場では、その場特有の心的態度を示すようである。その心的態度が「い ただく」「ていただく」の頻用を招くが、授受関係にある受け手を低めることで与え手 を高めるといった本来の謙譲語の機能を果たしているというよりは、聞き手を意識し た聞き手への配慮を表す丁寧語的な要素が強い語となっていることが分かった。使役 形を伴った「(さ)せていただく」にさらにその傾向は顕著に見られた。繰り返し述べ るが、TVのトーク番組では、話し手は専ら自身に属する話題を提供し続ける上に、発 話や話題の授受関係に直接関与しない聴衆が存在するといった特殊な発話の「場」が 設定される。そこで、話し手は自分本位の失礼な発話とならないように、その「場」

に居合わせる全ての人々を「ていただく」の使用により話題に参加させようとする。

その話者の心的態度は「(さ)せていただく」の使用において顕著なものとして説明で

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きる。明確な使役関係が存在せずとも見せかけの使役表現を用いて、本来無関係な聴 衆を使役遂行者に見立てることで、発話の場に存在する人々を共通の認識を持つ人々 とすることに成功するのである。様々な立場をとる聞き手を設定された際に、全員参 加型の場を作り上げ、多少のあらたまりを演出することが自身の配慮を示すことにな ると考えた話し手の心的態度の表れではないだろうか。そのため、この発話を、従来 の「ていただく」の用法に基づく与え手・受け手といった概念でとらえると矛盾が生じ、

誤用とさえ感じてしまうのではないだろうか。聞き手の存在を強く意識した際の、話 し手の聞き手への配慮を示す新しいマーカーとして捉えることを提案したい。今回は TVのトーク番組といった特殊な「場」を考察の場に選定したが、「(さ)せていただく」

に関しては、さらに、異なった「場」での使用例をも考察対象とし、その用法につい て分析していく必要があると思われる。また、「ていただく」が、実際どのように聞き 手に受け止められているかを探る必要があり、その有益なアプローチ法と併せて今後 の課題としたい。

注 

1  授受動詞と呼ぶこともあるが、拙稿ではこのテーマに取り組み始めた 1996 年より、宮地(1965)

による受給動詞と呼ぶことにする。

2  インタビュー形式による日本語会話データベース(上村コーパス)(1998)を指す。OPIテ スターが日本語母語話者と非母語話者に行った 15 分程度の日本語OPIの文字化テキストを 収録したもののうち、原田(2007)では、日本語母語話者(54 人)を資料として使用している。

3  調査期間中に番組Aにも番組Bにも出演したゲスト(女性)が一人いた。番組Aの司会者 とは長年の友人であることが発話から分かった。トーク時間が異なるので、単純に比較でき ないが、番組Aでは「いただく」1 例、「ていただく」2 例の用例のみであったが、番組Bでは、

「ていただく」は 8 例(「(さ)せていただく」が 5 例)見られた。

4  発話者の延べ人数、異なり人数を示すために、数字をつけた。同じ発話者は同じ番号で記した。

用例は、異なり人数ゲスト 30 人、司会者 3 人、視聴者 2 人の発話によるものとなった。

5  今回の調査では、「(さ)していただく」の語形での使用例が目立った。特に番組Aでは、「(さ)

していただく」の用例が「(さ)せていただく」を上回った。本稿では、その使用場面を考慮し、

「(さ)していただく」も「(さ)せていただく」に含めて考察対象として扱った。

  使役形を伴う「て もらう」も同様の傾向があり、「(さ)してもらう」の用例が目立った。

6  同じ番組内で、司会者から「滋賀県の観光大使もやっているんでしょ?」と聞かれた際は、「は い、やってます。やってます。もう、4 年ぐらいやらせてもらってるんですけど」と答えている。

「てもらう」を使うことで、聞き手を意識するよりも観光大使に任命した人への恩恵を重視 しているともとれるが、今回は「(さ)せてもらう」については詳しく分析していないため、

このような表現の差異につながる要因を特定できなかった。

7  山田(2011)では、日本語の「やりもらい」の対立が汎言語的に見ても特異であることを示 した上で、補助動詞用法を「ベネファクティブ」の諸形式と呼び、その機能として、恩恵表 示機能、非恩恵表示機能、談話における方向性明示機能をあげている。

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参考文献

井出祥子(2006)『わきまえの語用論』大修館書店

上 原 由 美 子(2007)「『 て い た だ く 』 の 機 能 − 尊 敬 語 と の 互 換 性 に 着 目 し て − 」『Scientific approaches to language』6 号 pp.185-207.

金澤裕之(2007)「『〜てくださる』と『〜ていただく』について」『日本語の研究』3 巻 2 号 pp.34-40.

金田一春彦(1964)「話コトバの敬語的表現」『言語生活』149 号 久野 暲(1978)『談話の文法』大修館書店

佐久間鼎(1966)『現代日本語の表現と語法≪増補版≫』恒星社厚生閣

泉子・K・メイナード(2001)「日本語文法と感情の接点−テレビドラマに会話分析を応用して−」

『日本語文法』1 巻 1 号 pp.90-110.

橋元良明(2001)「授受表現の語用論」『言語』30 巻 5 号 大修館書店,pp.46-51.

原田登美(2007)「『−日本語会話データーベース(上村コーパス)』に見る−日本語会話における〈授 受表現〉の使用実態とポライトネス・ストラテジー」『言語と文化』11 号 pp.117-138.

益岡隆志(2001)「日本語における授受動詞と恩恵性」『言語』30 巻 5 号 大修館書店,pp.26-32.

宮地 裕(1965)「『やる・くれる・もらう』を述語にする文の構造について」『国語学』63 集 森田良行(1977)『基礎日本語』角川書店

山田敏弘(2002)「『もらう』と『くれる』はどうちがう?」『日本語学』21 巻 14 号 明治書院,p.49.

―(2011)「授受表現の語用論」『日本語学』30 巻 11 号 明治書院,pp.4-14.

米澤昌子(1996)「受給動詞の史的変遷」『同志社国文学』第 45 号 pp.73-87.

―(2001a)「待遇表現としての受給動詞−受給動詞の使用状況と話し手の心的態度の考察−」

『同志社国文学』54 号 pp.20-29.

―(2001b)「待遇表現としての使役形を伴う受給動詞−「〜(さ)せていただく」の用法 の考察を中心に−」『同志社大学留学生別科紀要』創刊号 pp.105-117.

―(2012)「受給動詞の用法の一考察−シナリオにおける用例の分析−」『同志社日本語・

日本文化研究』第 10 号 pp.1-20.

調査資料

以下の 2 番組を録画し、ゲスト(電話での出演を含む)50 人(番組A31 人・番組B19 人)・

司会者 3 人の発話及び視聴者からのメッセージを調査対象とした。

番組A  『笑っていいとも』(月曜日〜金曜日PM12:00 〜PM13:00 フジテレビ)の「テレフォ ンショッキング」というコ−ナ−。観客を前に、司会をタモリが勤め、15 分程度、毎回 ゲストを迎え、トークをする。最後に、翌日のゲストに電話をし、司会者・ゲストがそ のゲストと話し、出演を確認する。

番組B  『スタジオパークからこんにちは』(月曜日〜金曜日PM13:27 〜PM14:00 NHK)。ガ ラス越しに観覧する観客がいる。司会をNHKの男女のアナウンサー(30 代・40 代)が 勤め、毎回ゲストを迎え、トークする。番組中に視聴者から寄せられたメッセージなど を紹介する。

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参照

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