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高血圧ラットの動脈系化学受容器 Arterial chemoreceptors in spontaneously hypertensive rats

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Academic year: 2022

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高血圧ラットの動脈系化学受容器

Arterial chemoreceptors in spontaneously hypertensive rats

日下部 辰 三*、松 田 秀 樹**、林 田 嘉 朗***

Tatsumi KUSAKABE*, Hideki MATSUDA** and Yoshiaki HAYASHIDA***

近年、各種スポーツ領域では高地トレーニング が盛んに行なわれるようになって来ているが、そ の基礎的研究の多くは、心拍数、心拍出量、血圧、

換気量などの測定や血液性状の分析等が主流で、

諸変化のメカニズム解明に関した報告は少ない。

これらの循環・呼吸器系パラメーターの調節は、

主として動脈系化学受容器である頚動脈小体を介 して行なわれている。頚動脈小体は、総頚動脈が 内頚動脈と外頚動脈に分岐する部位に位置し、動 脈血中の酸素および炭酸ガス分圧ならびに水素イ オン濃度を感受し、呼吸器および循環器系の調節 に関与している。頚動脈小体は、外因性環境変化 と考えられる低酸素環境下で肥大するとともに、

内因性環境変化と考えられる高血症状のもとでも 肥大する。低酸素環境下における頸動脈小体の動 態については数多くの報告があるが、高血圧環境 下の小体の動態については散見するのみである。

正確に組織計測された所見は報告されていない。

本研究課題では、高血圧自然発症ラット(SHR)

の頸動脈小体を、特に、小体内の血管の動態に着 目して詳細に組織計測するとともに、ペプチド性 神経線維の分布を免疫組織化学的に調べ、これま でに数多く報告されている低酸素暴露で肥大した 頸動脈正体の形態的特徴との比較検討を行った。

高血圧自然発症ラット(SHR:Spontaneously Hypertensive Rat)をネンブタール麻酔下で4%

パラホルムアルデヒドおよび2%ピクリン酸を含 む 0.1M リン酸緩衝液で灌流固定し、頚動脈小体 を採取し、常法に従い10μmの凍結連続切片を作 成し、Hematoxylin Eosin(HE)染色を施した。

500 倍に拡大したモニター上で頚動脈小体の長径 と短径、および小体内血管の短径を組織計測した

(ARGUS 100)。免疫染色はPAP法を用いて行い、

一次抗体としては、抗 SP、抗 CGRP、抗 VIP お よび抗 NPY 血清を使用した。単位面積あたりの varicosity数を測定し(ARGUS 100)比較検討し た。対照として、Wistar Kyoto系ラット(WKY)

と正常圧Wistar系ラット(NWR)を用いた。

得られた結果は次の3項目に要約される。1)

SHR の頚動脈小体は WKY および NWR に比べ、

長径で約1.3倍(P<0.05)大きかった(図1,2)。

2)SHR の頚動脈小体は肥大しているが、 小体 内の拡張した血管の割合は低く、その率は WKY とNWRに比べ差は認められなかった(図3)。3)

SHRの頚動脈小体内のSP、CGRPおよびNPY免 疫陽性神経線維は、血管周囲とglomus cells間に 認められ、その分布様式と密度は WKY と NWR と同様であったが、VIP免疫陽性線維の分布密度

* 国士舘大学体育学部スポーツ医科学科(Department of Sport and Medical Science, Kokushikan University)

** 横浜市立大学医学部耳鼻咽喉科(Department of Otolaryngology, Yokohama City University School of Medicine)

*** 四天王寺大学教育学部教育学科(Shitennnouji University)

THE ANNUAL REPORTS OF HEALTH, PHYSICAL EDUCATION AND SPORT SCIENCE

VOL.29, 69-71, 2010

報告書(体育研究所プロジェクト研究)

(2)

日下部・松田・林田

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図3 SHR、WKY および NWR の頚動脈小体内の血管径の比較(Histol. Histopathol., 2011 in press を改変).

図2 SHR、WKY および NWR の頚動脈小体の長径と短径の比較(Histol. Histopathol., 2011 in press を改変).

図1 SHR、WKY および NWR の頚動脈小体の HE 染色像(Histol. Histopathol., 2011 in press を改変).

(3)

高血圧ラットの動脈系化学受容器

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は低かった。

我々が先に報告した低酸素暴露(10% O2、8週 間)ラットの頚動脈小体は、著しい血管拡張を伴 い長径で約2倍に肥大したが、同週齢の SHR の 頚動脈小体は、長径で約 1.3 倍に肥大したが、血 管の著しい拡張は認められず、むしろ頚動脈小体 内の結合組織性基質の増大が著名であった。ペプ チド性神経線維の分布に着目すると、先に報告し た様に、低酸素暴露ラットの頚動脈小体では、血 管拡張性の VIP 陽性線維の分布密度は 1.8 倍に増 加したが、SHR の頚動脈小体では減少傾向を示 した。その他のペプチド性神経線維の分布密度に は大きな変化は認められなかった。

これらの結果をもとに頚動脈小体の肥大機序を 考察すると、低酸素暴露ラットの頚動脈小体肥大 には、VIP神経による血管拡張がその一因と推察 されるが、高血圧ラットの頚動脈小体肥大には、

VIP による血管拡張は無関係であると思われる。

高血圧ラットにおけるVIP線維密度の減少に関し ては、高血圧ラットに対するVIPの低濃度投与が 化学受容に対する神経活動を低下させるという報 告を勘案すると、VIP線維密度の減少は神経活動 低下を抑制するすることを意味し、頚動脈小体の 化学受容に対する感受性を高めることになると考 えられる。

高血圧動物を低酸素暴露した際の頚動脈小体の 動態については、さらなる課題として残るが、高 地トレーニングと高血圧の問題を考える上で大切 な問題となる。今後さらなる検討を要する。

本研究は文部科学省科学研究費・平成 21 − 22 年度助成ならびに国士舘大学体育学部体育研究 所・平成22年度研究助成により行なわれた。なお、

本研究成果の概要は、 第 88 回日本生理学会総会

(平成23年)で報告された。

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