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開口亀裂のある硬岩地山でのアンカー体設置方法の開発

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Academic year: 2022

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開口亀裂のある硬岩地山でのアンカー体設置方法の開発

大成建設 正会員 ○青木智幸 正会員 岡本修一 正会員 玉村 良 舘 克彦 成和機工 浦川信行

1.はじめに

グラウンドアンカー工法において、アンカー体設置地盤に開口亀裂が多くグラウトが逸失してしまう場合な どに、布パッカーを使用したアンカー体の設置方法が採用されている1)。国土交通省白岩砂防堰堤右岸部岩盤 補強対策工事2)では、崖面近傍のゆるんだ領域(A領域)の崩壊を防ぐため、岩盤の内部に設けたトンネル からグラウンドアンカーで補強する施工法が採用された。アンカー体設置部の岩盤は、ほとんど変質のない硬 質の花崗岩であるが、開口亀裂が発達している。また、削孔振動による岩塊崩落の発生を防止するために、ア ンカー体を設置するA領域はロータリー削孔とする条件であった。この条件では、孔壁が非常に滑らかに仕上 がるために、アンカー体との付着強度(極限摩擦抵抗)が充分に得られない事が懸念された。

この問題を解決するために、布パッカーと導水線を用いたアンカー体の注入方式を開発したので、その原理 と耐力確認実験の結果について報告する。

2.グラウト注入実験

浸透性の無い岩盤内の孔内に布パッカーを使用して アンカー体を打設する際のグラウトの注入状況を確認 する目的で、透明塩ビ管を使用したグラウト注入実験 を実施した。計画されている削孔径はφ86 であるが、

市販のサイズで最も近い内径 78 の管を用いた。

これに先立ち、グラウトの配合試験を実施し、表1 の配合に決定した。主な設定条件は、Pロートフロー 値 15 秒以下を一時間以上保持、ブリージング率 3%以 下、7 日材齢圧縮強度 40N/mm2以上、50m ホース圧送試 験で詰らないことなどである。

表2に、使用した布パッカーの仕様を示す。これはフ リクションパッカーとして商品化されているもので、

グラウト注入時に始めはセメントミルクが滲出するが、

徐々に目詰まりを生じてろ過液のみが滲出して、布パ ッカー内には加圧脱水された高強度のセメント固化体 が形成されるものである。

写真1の上段は、FP100 を用いてグラウトを注入し たアンカー体の状況である。拡大部分を見ると布目が

見えており、布パッカーと孔壁(管の内壁)との間に残留したセメント粒子が少ないことが分かる。グラウト 注入時の変化を見ていると、始めは濃厚なセメントミルクが滲出するものの、後にろ過された低濃度液が孔壁 のセメント粒子を洗い流してしまうことが分かった。

そこで、図1に示すような、導水線方式を考案した。これは、グラウト注入により低濃度のろ過液が滲出す るようになった時にそれを導水線近傍にできる空隙を通じて選択的にアンカー体外に排水することにより、グ キーワード グラウンドアンカー、布パッカー、極限摩擦抵抗、開口亀裂、硬岩

連絡先 〒245-0051 横浜市戸塚区名瀬町 大成建設(株)技術センター土木技術研究所 TEL045-814-7237 表1 グラウトの配合

セメント W/C 減水材 膨張材

普通ポルトランド 46% FT1000 C×7% CSA C×2%

表2 布パッカーの種類

種類 標準使用孔径 直径 最大拡張径

FP100 101mm 89mm 135mm FP85 相当 86mm 76mm 112mm

写真1 グラウト注入試験結果 土木学会第58回年次学術講演会(平成15年9月)

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VI‑241

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グラウト注入初期に滲出した高濃度のグラウトのセ メント粒子を孔壁部に残留させるものである。導水線 にはφ2.4 の線材を使用した。写真1の中段を見ると、

導水線の効果により、明らかにセメントの付着が濃く なっていることが分かる。

布パッカーの FP100 はφ101 孔用に製作された既成 サイズであり、φ86 孔用には孔荒れ拡大部での追従 性は良いものの寸法どおりの孔では若干しわが寄る。

そこで、使用前の直径と最大拡張径の割合が同等とな るように FP100 を裏返して縫い、FP85 相当品を実験 用に製作した。寸法は表2に示したとおりである。写 真1の下段に FP85 相当を使用した場合のグラウト注 入試験結果を示した。この場合、縫い目も軸方向に連 続した通水部となるので導水線1本分とみなしてい る。中段と比較してさらにセメントの付着が濃くなっ ていることが分かる。これは、布パッカーの拡張によ り布目がより開き、グラウトの滲出特性が改善された ことによるものと考えられる。

3.室内引抜き耐力実験

アンカー体の極限引抜き力を調べる目的で、室内引 抜き試験を行った。試験体は長さ 1.2m の花崗岩ブロ ックで、中心部にダイヤモンドビットを用いたロータリ-式 で削孔し、布パッカーを使用して 1.0m のアンカー体 を打設した。使用した引張材は、φ12.7 の PC 鋼より 線6本である。試験のレイアウトを図2に示す。

試験条件と試験結果を表3に示す。極限周面摩擦抵 抗を見ると、導水線の無い場合(ケース1)はばらつ きが大きく値が小さいのに対し、導水線を適用した場 合(ケース2)では改善されている。また、削孔径に 対して適切なサイズの FP85 相当の布パッカーを使用

したケース3では、最も大きな極限週面摩擦抵抗が得られ、アンカー体の付着強度が大幅に改善されたことが 分かる。さらに、φ101 孔の試験体を使用した試験(ケース4)も実施した。この場合ではアンカー体の周面 積が大きいにもかかわらずφ86 孔のケース 3 と同程度の荷重で最大荷重に達したが、グラウト周面-孔壁境 界でなく、グラウト-引張材境界で滑り破壊が生じたので、極限引抜き力としてはより大きい可能性がある。

4.まとめ

開口亀裂のある硬岩部にロータリー削孔した孔にアンカー体をグラウト打設する場合の問題点を指摘し、対 策として開発した導水線を使用するアンカー体設置方法について述べた。室内引抜き実験により、極限引抜き 力が大幅に改善することを実証した。

末筆ながら、本開発にご協力いただきました国土交通省立山砂防工事事務所の方々に感謝申し上げます。

参考文献

1)斎藤、伊藤、津野:日本の名瀑「日光華厳の滝」の景観を守る トンネルと地下、2002 年 2 月、pp.41-51 2)渡辺、白石:背面に掘削したトンネルからの岩盤斜面の補強 トンネルと地下、2002 年 3 月 pp.43-51

図1 導水線付布パッカー式アンカー体

図2 室内引抜き試験のレイアウト 表3 引抜試験結果

ケース 孔径

[mm]

パッカー 導水

極限引抜力 Tug [kN]

極限周面摩擦抵抗 τug [N/mm2] 1-① 86 FP100 無し 165 0.61

1-② 無し 286 1.06

2-① FP100 2本 318 1.18

2-② 2本 310 1.15

3-① FP85 3本 540 2.00

3-② 3本 550 2.04

4-① 101 FP100 3本 (550) -

4-② 3本 (467) -

()内:極限拘束力(グラウト-引張材境界で破壊した場合)

土木学会第58回年次学術講演会(平成15年9月)

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参照

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