• 検索結果がありません。

両生類プロラクチン受容体の 分子内分泌学的研究

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2022

シェア "両生類プロラクチン受容体の 分子内分泌学的研究"

Copied!
109
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

両生類プロラクチン受容体の 分子内分泌学的研究

Molecular endocrinological study of prolactin receptors in amphibians

20053

早稲田大学大学院理工学研究科 生命理工学専攻  内分泌学研究

蓮沼  至

(2)

目次

第一章  本研究の目的と意義

1-1    プロラクチンとその生理作用 1

1-2    両生類PRLとその生理作用 2

1-3    本研究の目的と意義 6

第二章  ウシガエルプロラクチン受容体のcDNAクローニングと 変態期幼生のPRL 受容体mRNA 発現の解析

2-1    序論 11

2-2    実験材料と方法 12

2-3    実験結果 20

2-4    考察 22

(3)

第三章  シリケンイモリ肛門部腹腺プロラクチン受容体の発現解析

3-1    序論 38

3-2    材料と方法 39

3-3    実験結果 40

3-4    考察 41

第四章  アカハライモリ脳内プロラクチン受容体の発現解析

4-1    序論 47

4-2    材料と方法 48

4-3    実験結果 52

4-4    考察 55

(4)

第五章  本研究の総括と現在進行している研究および今後の展望

5-1    本研究の総括 70

5-2    現在進行している実験および今後の展望 73

謝辞 83

参考文献 84

(5)

第一章

研究の目的と意義

1-1 プロラクチンとその生理作用

プロラクチン(PRL)は、脊椎動物下垂体前葉から分泌されるタンパク質ホ ルモンである。StrickerとGrueter(1928)により、ウサギ下垂体に乳汁分泌を 促進する因子として発見されて以来、広く脊椎動物に存在し、その生理作用は 下垂体ホルモンの中で群を抜いて多様であることが分かっている。Nicoll and Bern(1972)はPRLの生理作用について大きく5つのカテゴリーに分類した。

1: 生殖、2: 浸透圧調節、3: 成長、4: 皮膚構造変化、5:ステロイドホルモンと の協調。当時、下等脊椎動物では PRL 分子が同定されておらず、哺乳類 PRL の投与によって見られた生理現象から、PRL 類似物質の存在やそれらの生理作 用を推測するものであった。

PRLの生理作用を細胞レベル、分子レベルで解析するには、その受容体分子 の同定は必要不可欠な事項であった。Boutinら(1988)は、ラット肝臓 cDNA libraryからPRL受容体cDNAのクローニングし、PRLに関する研究が飛躍的な 進歩を遂げた。PRL 受容体は一回膜貫通型の受容体であり、class I cytokine receptor superfamilyに属することがわかった。近年、哺乳類ではPRL受容体に はいくつかのアイソフォームの存在が明らかになっている(図 1-1)。さらに Ormandy ら(1997)により PRL 受容体のノックアウトマウスが作製され、現 在では種々のPRLの生理作用がPRL受容体レベルでの解析が可能となっている。

Nicoll and BernによりPRLの生理作用の総説が発表されたのち、下等脊椎動物

(6)

でもPRL が単離され、より詳細な解析が行なわれるようになった。それらの成 果やPRL受容体同定以降に進んだPRLに関する研究を踏まえ、Bole-Feysotら

(1998)は、PRLの生理作用について新たな6つのカテゴリーを提唱している。

1: 水および電解質調節, 2: 成長、発達, 3: 物質代謝, 4: 中枢および行動, 5:生殖, 6:免疫、生体防御。

1-2 両生類PRLとその生理作用

両生類ではPRLが純化される以前から、哺乳類PRLを用いた実験で、PRL が様々な生理作用を示す可能性が示唆されてきた。両生類のPRLはYamamoto and Kikuyama(1981)によりウシガエル下垂体から初めて抽出され、哺乳類、

鳥類のPRLと生化学的性質が似通っていることが分かった。その後、ニホンヒ キガエル(Yamamoto et al. 1986)、アカハライモリ(Matsuda et al. 1990)、ア フリカツメガエル(Yamashita et al.1993)のPRLが我々の研究室で次々に単離 され(両生類PRLアミノ酸配列: 図1-2)、おのおののPRLに対する抗血清が作 製され、免疫組織化学的手法、放射免疫測定法(RIA)等で、両生類でのPRLの 性質、機能が明らかになってきた。特に、両生類ではPRLは変態と生殖に関し、

興味深い生理作用や新しい知見が得られている。ウシガエル幼生に抗ウシガエ ルPRL抗血清を投与すると、甲状腺ホルモンを含む飼育水で飼育した時と同じ ように、急激に尾が退縮することから、内因性PRLが変態に抑制的に働くこと が明らかになっている(Yamamoto and Kikuyama, 1982a: 図1-3)。PRLが幼生

(7)
(8)
(9)

図1-3 T4を含む飼育水で飼育した幼生に、ウサギ正常血清(NRS)を投与 した個体、抗ウシガエル抗血清(A/S)を投与した個体。コントロールは T4を含まない飼育水で飼育された幼生。

Yamamoto and Kikuyama. 1982a Endocrinol Jpn. 29: 81-85より転載。

(10)

最盛期にかけてそのレベルは低下し、変態が促進されると考えた。しかし、実 際に両生類PRL に特異的な抗血清を用いた RIAで変態期 PRLの血中レベルを 測定すると、変態前から変態始動期にかけてPRLレベルは比較的低く、変態最 盛期から徐々にレベルが高まり、変態最盛期中期に劇的にそのレベルが上昇し、

変態最盛期後期にピークに達することが判明した(Yamamoto et al. 1982b)。し たがって、PRL は変態最盛期から変態最盛期後期にかけても何らかの作用をし ていると考えられる。

PRLの生殖に関連した作用としては、雄イモリの肛門部側線で精包の構成物 であるムコ多糖の合成促進(Kikuyama et al. 1975)、雌イモリ卵管の構造発達お よびゼリー分泌促進など(Kikuyama et al. 1986)などが知られている。また、

PRL は雄性ホルモンと協調して雄イモリ肛門部腹腺(腹腺)の腺構造を発達さ せ(Kikuyama et al. 1975)、腹腺に存在する雌誘引フェロモン(Kikuyama et al.

1995)の前駆体タンパク質の合成を促すことが明らかになった(Iwata et al.

1999, 2000; Yamamoto et al. 1996: 図1-4)。また、雄のアカハライモリに抗ア カハライモリPRL抗血清を投与すると求愛行動が阻害されることから、内因性 の PRL が求愛行動を引き起すことが明らかになった(Toyoda et al. 1993: 図 1-5)。

1-3 本研究の目的と意義

本研究室では、両生類PRLをはじめて同定して以来、数々の両生類PRL特

(11)

異的な現象として、またイモリの求愛行動は、哺乳類での母性行動、鳥類の抱 卵行動のようにPRLで誘起される行動の両生類での代表的現象として、それら の作用機序が解明されれば、比較生理学的に大きな意味をなすはずである。そ こで本研究ではこれらの現象をPRL受容体の観点から研究を行ない、それらの 作用機序の解明を目的とした。具体的には以下の点を目標とした。1)PRLの両 生類の変態への作用をPRL受容体遺伝子レベルで行なうために、無尾両生類ウ シガエルPRL受容体cDNAのクローニングを行なう。2)クローニングしたPRL 受容体cDNA を使って変態期幼生の様々な組織での PRL 受容体 mRNA発現を 解析を行ない、変態期にPRLがどのような組織、器官で作用しているかを推定

する。3)PRL受容体が発現している幼生特異的器官、および幼生、成体ともに

機能する器官でPRL受容体の発現レベルが変態期を通してどのように変化する かを解析し、PRLがこれらの器官におよぼす生理的意義を推定する。4)イモリ の生殖関連器官でのPRL受容体mRNAの発現を解析する。5)PRLが有尾両生 類イモリの中枢に作用して求愛行動を誘起するかどうかを確認し、中枢に作用 して誘起する場合、脳内PRL受容体発現部位を特定し、中枢のどの部位がPRL が誘起する求愛行動にとって重要であるかを推定する。

以降の章では、これらの実験結果、考察を記している。本研究は、無尾両生 類ウシガエルのPRL受容体cDNAのクローニングを行ない、変態期幼生の様々 な器官や組織でのPRL受容体mRNA発現の解析を可能にしたこと、シリケンイ モリPRL受容体cDNAを用いてシリケンイモリ肛門部腹腺のPRL受容体mRNA の解析を行なったこと、PRL はアカハライモリで中枢に作用して求愛行動を誘 起することを示したこと、抗イモリPRL受容体抗体を作製し、その抗体を使っ た免疫組織化学的手法でアカハライモリ脳内PRL受容体発現部位を特定したこ と、大細胞性視索前核のアルギニンバソトシン(AVT)、メソトシン(MT)ニュ

(12)

ーロンにPRL受容体様免疫陽性が見られ、これら後葉ホルモンの合成や分泌に PRLが関与する可能性があることを示したこと、抗PRL受容体抗体を脳室に投 与すると求愛行動が阻害されたことから、雄イモリ求愛行動発現には脳内の PRL受容体が重要であることを示したこと、に意義がある。

(13)

図1-4 下垂体除去したシリケンイモリ腹腺の腺構造および雌誘引フェ ロモンのシリフリン合成に対するホルモンの影響 抗シリフリン抗体 を用いた免疫組織染色

a: テストステロンプロピオネートとPRLを投与、b: 生理食塩水を投 与、c: 抗原吸収した抗体を使用。下段は明視野組織画像。

テストステロンプロピオネートとPRLを投与した個体では腺が発達 し、免疫陽性反応が強いが、生理食塩水を投与した個体では腺は萎縮 し、シグナルは弱い。

Iwata et al. 2000 Biol. Reprod. 63: 1867-1872より転載。

(14)

1 2

0 0

50 100

0 1 2 3

In c id e nce ( % )

4 5 6 7

Days

3

0 1 2 3

Fr e q u e nc y

4 5 6 7

A B

#

*

#

# #

* * *

* * * *

*

#

# #

#

*

Preimmune serum-treated

AntiPRL serum-treated

(15)

第二章

ウシガエルPRL受容体cDNAのクローニングと変態期幼生のPRL受容体 mRNA発現の解析

2-1 序論

PRLの作用は、PRLが細胞膜上に存在するPRL受容体に結合し、受容体の 二量体が形成され、細胞内へシグナルが伝達されることで生じると考えられて いる。Boutinら(1988)により、ラット肝臓cDNA libraryからPRL受容体cDNA のクローニングが行なわれ、PRL 受容体の分子生物学的研究は主に哺乳類でな されてきた。両生類では有尾両生類のシリケンイモリ(Matsukawa et al. 2004)、 アカハライモリ(Yamamoto et al. 1998)、アフリカツメガエル(Yamamoto et al.

2000, Huang et al. 2000)のPRL受容体 cDNAのクローニングが行なわれてい るが、シグナル伝達がどのような機構かは未だ解明されていない。変態に焦点 をあてた研究を行なう場合、尾が消失する無尾両生類が研究対象として優れて いると考えられるが、アフリカツメガエルでは、四倍体の動物ゆえ、リガンド の PRL も PRL-I,II(Yamashita et al. 1993)、PRL 受容体も PRL 受容体-A, B

(Huang et al. 2000)それぞれ2種類の分子があり、それぞれのPRLの受容体 への結合力の違い、それぞれの受容体の発現の解析、シグナル伝達の違いなど、

未解決な問題が多数残されており、なおかつその解析は非常に複雑になる可能 性が高い。一方、ウシガエルは、二倍体の動物ゆえ、アフリカツメガエルのよ うな前述の問題は生じない。くわえて、White and Nicoll(1979)によりウシガ エル幼生尾ひれ、腎臓、鰓の膜タンパク質に哺乳類PRLと結合するタンパク質 が存在することが確認されて以来、PRL receptor binding assayを中心に、過去

(16)

に多くの研究がなされており、ウシガエルPRL受容体に対する知見の蓄積があ る程度存在すること、また、本研究室で、ウシガエル PRL の精製が行なわれ、

哺乳類PRLではなく、ウシガエルPRLを用いたreceptor binding assayが可能 など、ウシガエル PRL 受容体の研究行なうにあたり、多くの利点が存在した。

本章ではウシガエル PRL 受容体 cDNA のクローニングを行ない、ウシガエル PRL受容体のアミノ酸配列を推定したこと、哺乳類細胞にウシガエルPRL受容 体を発現させ、そのタンパク質がウシガエルPRLに結合すること、さらに得ら れた cDNA をもとに、特異的プライマー、またはラジオアイソトープ標識した プローブを作製し、ウシガエル変態期幼生、および成体でのPRL受容体mRNA の発現解析したことについて述べている。

2-2 材料と方法

2-2-1 実験動物

Aquatic Animal Supply(埼玉県三郷市)より様々なステージ(Taylor and Kollros, 1946)のウシガエル幼生、および成体を購入した。室温22˚C、12L:12D の光条件下で飼育し、餌として幼生には茹でたほうれん草を、成体にはブタの 肝臓を与えた。

2-2-2ウシガエルPRL受容体 cDNA部分配列の取得(RT-PCR)

(17)

(Invitrogen)でcDNAを合成した。Xenopus laevis PRL受容体 A, B (Huang et al.

2000), Cynops pyrrhogaster PRL受容体 (Matsukawa et al. 2004)のcDNAを比較 し、細胞外領域と細胞内領域の保存性の高い部分でアンチセンス、センスプラ イマーを設計した(図2-1)。

antisense primer: 5'-TTCCTGCTGGTGGMAACCAGGYTCAGATGG-3' sense primer: 5'-AGTCTGAMGTTGGMGGAAAACRTTGACAGCC-3'

PCRはEx-Taq DNA polymerase(Takara)を使用し(以下断りが無ければPCR はEx-taq DNA polymeraseを使用)、94˚C 30 sec, 60˚C 30 sec, 72˚C 1 minを 40サイクルするプログラムで行なった。PCR反応後、反応液を1.5% アガロー スゲルで電気泳動した。PCR で増幅された DNA を Quantum prep freeze'N squeeze gel extraction spin column(Bio-Rad)でアガロースゲル中から抽出し、

pT7blue T-vector(Novagen)にTakara ligation kit version 1(Takara)でライゲ ーション後、JM109 にトランスフォーメーションした。JM109 は終夜培養後、

Mini prepによりcDNA断片を含むベクターを精製した。cDNAの塩基配列は、

ダ イ デ オ キ シ ヌ ク レ オ チ ド を 使 用 し た ダ イ デ オ キ シ 法 に 基 づ い た Thermosequenase cycle sequensing kit (USB corporation)で 反 応 後 、dNA sequencer model 4000L(LI-COR)で解析した。

2-2-3 5'-, 3'- rapid amplification of cDNA ends (5'-, 3'-RACE法)

ウシガエルPRL受容体 cDNAの5'末端側の未知配列は5' Full race core set

(Takara)を使用して解析した(図 2-1)。RT-PCR により得られたウシガエル PRL受容体cDNAの部分配列特異的な逆転写用プライマー、アンチセンス、セ ンスプライマーを設計した。

5'末端リン酸化RT-primer : 5'-GACTCTTCTCCTCCTTCAGT-3'

(18)

antisense primer 1: 5'-GGTGTATGGCCCTGACGAGTGATAGT-3' antisense primer 2: 5'-ACCGTGTAGTTTGTCGACAGTCCTCC-3' sense primer 1: 5'-CCTCTATGAAACGGAAAAGGCCAGC-3' sense primer 2: 5'-CGATGTGAAAATGGGCTGGATCACAC-3'

ウシガエル尾ひれ全 RNA から逆転写用プライマーを用いて cDNA を合成し、

RNase HでRNA鎖を分解後、RNA ligaseによりcDNAをコンカテマー化した。

これを鋳型にPCRを行なった。1st round PCR(antisense primer 1, sense primer 1を使用)は94˚C 30 sec, 60˚C 30 sec, 72˚C 1 minを25サイクルするプログラ ムで行なった。さらに1st round PCRの溶液を希釈し、2nd round PCR(antisense primer 2, sense primer 2を使用)を行なった。PCRのプログラムは温度設定は 1st round PCRと同一で、サイクル数を30サイクルとした。3'末端側の未知領 域は3'RACE 法で解析した(図2-1)。アダプター付きdT primerを用いてウシ ガエル幼生尾ひれ全RNAからcDNAを合成し、アダプタープライマーと既知領 域cDNA配列特異的プライマーでPCRを行なった。

adaptor dT primer:

5'-GGCCACGCGTCGACTAGTACTACTTTTTTTTTTTTTTTTT-3' adaptor primer: 5'-GGCCACGCGTCGACTAGTACTAC-3'

sense primer 1: 5'-ACTATCACTCGTCAGGGCCATACACC-3'

sense primer 2: 5'-GAGCGGGAAATCTGAAGAACTGTTGAGTGC-3'

1st(adaptor primer, sense primer 1を使用)と2nd round(adaptor primer, sense primer 2を使用)PCRは94˚C, 30 sec, 62˚C 30 sec, 72˚C 2 minを30サイクル

(19)

2-2-4 ウシガエルPRLを使用したPRL binding assay

得られたウシガエル PRL 受容体 cDNA の翻訳開始コドンと終止コドンを含 むプライマーを設計し、ウシガエルPRL受容体の全アミノ酸配列をコードする cDNA配列をRT-PCRで得た。

sense primer : 5'-GAATTCACCATGTGGCCAGCTCAGATCCTCTGCCTTGG-3' antisense primer: 5'-TCTAGATCAAGGCATAAAACTTGAGGGATCAA-3'

センスプライマーの下線部はEcoRIサイト、太字は翻訳開始コドンを示す。アン チセンスプライマーの下線部はXbaIサイト、太字は翻訳終止コドンを示す。尾 ひれ全RNAから前述の通りにcDNAを合成し、これを鋳型にPCRを行なった。

PCRは増幅産物のヌクレオチド配列の正確性を高めるために、pfu turbo DNA

polymerase(stratagene)を使用し、94˚C 30 sec, 60˚C 30 sec, 72˚C 2 minを 40サイクルするプログラムで行なった。増幅産物はpT7blue T-vector(Novagen)

に挿入し、シークエンス解析は前述の通りに行なった。5個の独立したクローン のヌクレオチド配列を比較し、配列に誤りや欠損がないことを確認後、インサ ートをEcoRIとXbaIで切り出し、改めてEcoRIとXbaIであらかじめ処理された哺 乳類細胞発現ベクターのpCS2+(Turner and Weintraub 1994)に挿入した。こ のコンストラクトをCOS-7 細胞にFugene 6 transfection reagent (Roche diagnostics)を使って導入し、ウシガエルPRL受容体を一過性発現させた。ネ ガティブコントロールとしてインサートの入っていないベクターをトランスフ ェクションした。トランスフェクション後、48時間後にDulbecco's PBSでディ ッシュ内の細胞を2回洗浄し、25 mM Tris-HCl pH 7.5, 10 mM MgCl2を加え、セ ルスクレイパーを使って細胞を回収した。回収した細胞は凍結融解を 2 回繰り 返し細胞膜を破砕した。4˚C, 10,000 x gで5分遠心後、上清を捨て沈殿を上記 Tris バッファーで懸濁した。タンパク質濃度はBCA protein assay kit(Pierce)

(20)

で測定した。COS-7抽出タンパク質50 µgと79,000 cpmの125I標識ウシガエル PRL、様々な濃度の未標識ウシガエルPRL、成長ホルモンをバインディングバッ ファー(25 mM Tri-HCl, 10 mM MgCl2, 0.1% BSA)中で室温で一晩インキュベ ートした。反応は氷冷したバインディングバッファーを 2.5 ml加えることで停 止し、4˚C, 3,000 x gで30分遠心した。上清を丁寧に除き、沈殿の放射活性を Aloka auto well gamma system 600(Aloka)で測定した。

2-2-5 Northern解析

2-2-2 のRT-PCRで得られたウシガエルPRL受容体cDNA断片を鋳型にランダ ムプライム法に基づいたBcaBEST labeling kit(Takara)を用いて32P標識し、

Northern解 析 用 プ ロ ー ブ と し た 。 標 識 反 応 後 、Nick column(Amersham biosciences)で取り込まれなかった[alpha-32P]-dCTPを取り除いた。ウシガエル 幼生尾ひれから前述の通りに全RNAを抽出し、Oligotex-dT 30 super(Takara) を用い、mRNAを濃縮した。10 µgのRNAを1%ホルムアルデヒド変成アガロー スゲルで泳動し、Hybond-N+(Amersham biosciences)に転写した。80˚Cで2 時間オーブンで乾燥し、50 mM NaOHで膜上のRNAを膜に固定した。この膜を ハイブリダイゼーションバッファー(5 x SSPE, 50%ホルムアミド, 0.5% SDS, 5 x デンハルト, 20 µg/ml サケ精巣DNA)中で42˚C、2時間プレハイブリダイ ゼーションした。32P標識したウシガエルPRLRプローブを加え、42˚Cで20時間 ハイブリダイゼーションした。2 x SSPE-0.1% SDS, 1 x SSPE-0.1% SDS, 0.1 x SSPE-0.1% SDSの順でそれぞれ膜を 65˚C 30 分洗浄した。X-OMAT film

(21)

解析(RT-PCR)

ウシガエル幼生(stage XVIII, XXII)および成体器官、組織から前述の方法で全 RNAを抽出した。1 µgの全RNAを逆転写し、cDNAを鋳型にウシガエルPRL 受容体cDNA特異的プライマーを使用してPCRを行なった。

sense primer 5'-ACTATCACTCGTCAGGGCCATACACC-3'

antisense 5'-TCTAGATCAAGGCATAAAACTTGAGGGAATCAA-3'

PCRは94˚C 30 sec, 63˚C 30 sec, 72˚C 30 secのプログラムで行なった。PCR 反応後、増幅産物を 1.5%アガロースゲルに泳動し解析した。使用した RNA の 性質が良好であることを確認するために、ウシガエル ribosomal protein L8

(rpL8)に特異的なプライマーを使ってPCRを行なった。

ウシガエルrpL8特異的プライマー

sense: 5'-GACATTATCCATGATCCAGG-3' antisense: 5'-GGACACGTGGCCAGCAGTTT-3'

2-2-7 変態期幼生での尾ひれ、腎臓PRL受容体mRNAレベルの測定

変態期幼生尾ひれ、腎臓のPRL受容体mRNAレベルを測定する手法として、

RNase protection assayを採用した。ウシガエルPRL受容体cDNAを、BamHI, HincIIで消化し、227 bpの断片を得た。これをプラスミドベクターpBluescript SKII-に組み込んだ。このコンストラクトをBamHIで消化することで直鎖化した。

T7 RNA polymeraseを使用したin vitro transcription32P標識したアンチセンス RNAプローブを合成した。鋳型に使用した直鎖化したベクターをDNase Iで完全 に消化した。さらに合成したアンチセンスRNAプローブをアクリルアミドゲル に泳動し、目的のサイズのRNAプローブが合成されていることを確認後、小さ な断片が混入しないようにゲルから切り出し、プローブを抽出、精製した。さ

(22)

らに内部標準としてウシガエルrpL8 の32P標識RNAプローブも同様の方法で合

成した。Xenopus laevisでは、rpL8 は甲状腺ホルモンによってその発現は影響

を受けず、内部標準として適していると報告されている(Shi and Liang, 1994)。

ウシガエルrpL8 cDNAからRsaIとHincIIで切り出された170 bpの断片をin vitro transcriptionの鋳型とした。10 µgの全RNAと2 x 105 cpmのウシガエルPRL受容 体アンチセンスRNAプローブ、と5 x 104 cpmのウシガエルrpL8アンチセンス RNAプローブをハイブリダイゼーションバッファー(終濃度80%ホルムアミド, 0.4 M NaCl, 1 mM EDTA, 40 mM Pipes pH 6.4)中で混合し、80˚Cで変成後、45˚C で終夜インキュベートした。ハイブリダイゼーション後、350 µlのRNaseバッフ ァー(10 mM Tris-HCl pH 7.5, 0.3 M NaCl, 5 mM EDTA)、1.1 Kuniz units RNase A, 3.5 U RNase T1を加え、30˚Cで30分インキュベートした。RNase消化は10 µlの20% SDS, 50 µgのproteinase Kを加え、37˚Cで15分インキュベートするこ とで停止した。フェノール/クロロホルムで抽出後、エタノール沈殿を行なっ た。沈殿を泳動バッファー(80%ホルムアミド, 0.1 M EDTA, 0.1%キシレンシア ノール, 0.2%ブロモフェノールブルー)で溶解し、100˚Cで90秒加温し変成し た。6%アクリルアミドー8M尿素ゲルに泳動し、ゲルドライヤーで乾燥後、

X-OMAT film(Eastman Kodak)に露光して、オートラジオグラムを得た。シグ ナルはNIH image 1.62 softwareで解析した。

2-2-8 In situ hybridiaztion

ウシガエル幼生をMS222(Sankyo)で麻酔後、心臓からヘパリンを含む

(23)

4%PFA液で4˚Cで一晩固定した。続いて10 mM PBS(10mM リン酸バッファ ー, 0.65% NaCl)に溶解した 20%ショ糖液に4˚Cで一晩浸した。これをO.C.T.

compound(Sakura Finetechnical)に凍結包埋した。12 µmの凍結切片をLeitz 1720 digital cryostat(Ernst Leitz)で作製し、3-aminopropyltriethoxylane(Sigma)

でコートしたスライドグラスにのせた。37˚Cで一晩乾燥させ、PBSで5分2回 洗浄し、0.1 Mトリエタノールアミン(TEA: pH 8.0)に5分浸し、0.1 M TEAに

溶解した0.25%無水酢酸で20分切片をアセチル化し、プローブの非特異的吸着

を防いだ。2 x SSCで洗浄後、エタノール系列およびクロロホルムで脱水、脱脂 を行ない、乾燥させた。切片にハイブリダイゼーションバッファー(50% ホル ムアミド, 5 x SSC, 5 x デンハルト, 0.25 mg/ml イーストトランスファーRNA, 10 mg/ml サケ精巣DNA)を滴下し、パラフィルムで覆い65˚Cで2時間プレハ イブリダイゼーションを行なった。ハイブリダイゼーション液を除いたあと、

2.5 x 104 cpm/µlの35S標識アンチセンスRNAプローブ、もしくはセンスプローブ を含むハイブリダイゼーションバッファーを滴下し、65˚Cで一晩ハイブリダイ ゼーションさせた。ハイブリダイゼーション後、室温で15分で4 x SSCで切片 を4回、60˚Cで1時間2 x SSCで洗浄後、20 µg/mlのRNase Aを含むRNaseバ ッファー中で 37˚Cで 30 分インキュベートした。次いで、室温でRNaseバッフ ァー、2 x SSC, 1 x SSCで各15分洗浄し、最後に60˚Cで30分0.1 xSSCで洗 浄した。RNase反応液以外の洗浄液には終濃度10 mMになるようにß-メルカプ トエタノールを入れて、還元状態を保つことでプローブの切片への非特異的な 吸着を抑えた。エタノール系列で脱水し、風乾後、45˚CでNTB2 nuclear track emulsion(Eastman Kodak)に浸し、光の入らない箱の中で 4˚Cで 2週間露光 した。D-19 developer(Eastman Kodak)で現像後、1%酢酸で停止、Fixer

(Eastman Kodak)で定着し、銀粒子を形成させた。対比染色としてヘマトキ

(24)

シリン、エオシン染色を行なった。

2-3 実験結果

ウシガエル幼生尾ひれ全RNAを使用したRT-PCRで、他種PRL受容体cDNA との比較よりPRL受容体cDNAの断片と思われる789 bpのcDNAを得た。さ らにこの配列をもとに、特異的なプライマーを設計し、5'-, 3'-RACEを行ない、

2207 bpのウシガエルPRL受容体cDNAをクローニングした(図2-2)。ヌクレ オチド配列から、ウシガエルPRL受容体は617アミノ酸残基からなることがわ かった(図 2-2)。Signalpeptidaseの切断部位をXENETYX-MAC Version 11.2.0

(Xenetyx software development)で推定したところ、26番目のアラニンと27 番目のグルタミンの間であることが分かった。したがって、機能的なウシガエ ルPRL受容体は591アミノ酸残基からなることが推定された。ウシガエルPRL 受容体は他種 PRL 受容体で報告されているように、細胞外領域、膜貫通領域、

細胞内領域の 3つの領域からなり、細胞外領域には 3 カ所の推定されるアスパ ラギン結合型糖鎖付加部位、タンパク質の折りたたみに関与すると言われる 2 組のシステイン残基、リガンドとの結合に重要であると考えられている WS 配 列が見られた。これらの配列は多少個数等に変異はあるものの、class I cytokine receptor superfamilyに広く保存されている。細胞内領域に目を向けると、シグ ナル伝達に関与すると考えられるBox1, Box2配列や、6個のチロシン残基が見

(25)

の相同性があった(表1)。両生類以外のPRL受容体とは細胞外領域の相同性が 比較的高く、細胞内領域の相同性は低い傾向にあった。両生類内では細胞内領 域での相同性の方が高かった。また、全体の相同性では魚類よりも四足動物の 方が高い傾向にあった。

クローニングしたcDNAがコードするアミノ酸をCOS-7細胞に一過性発現さ せ、その抽出タンパク質と125I標識ウシガエルPRLと様々な濃度の未標識ウシガ エルPRLまたはウシガエル成長ホルモンをインキュベートすると、未標識ウシ ガエルPRLは125I標識ウシガエルPRLのCOS-7 タンパク質への結合と競合した。

成長ホルモンは高濃度であってもその結合と競合しなかった(図 2-4)。したが って今回COS-7 に発現させたタンパク質はウシガエルPRL受容体であると確認 された。ウシガエルPRLのウシガエルPRL受容体に対する会合定数(Ka)は1.27 nM-1であった。

幼生尾ひれRNAを用いたNorthern解析の結果、約3 kbの転写産物が確認さ れた(図2-5)。変態期幼生の組織および器官での PRL 受容体 mRNAの発現を

RT-PCR で解析すると、脳、腎臓、皮膚、尾で強い発現が見られた。定量性の

ある RT-PCR ではないが、未発達な肺、肝臓、腸、腓腹筋では薄いバンドが確

認された。stage XVIII では肝臓ではほとんどバンドが確認できなかった(図 2-6-A, B)。成体では脳、肺、肝臓、腎臓、精巣、皮膚で発現が見られた(図2-6-C)。

幼生特異的な器官として尾ひれを、成体でも機能する器官として腎臓を選び、

変態期PRL受容体mRNAレベルをRNase protection assayで測定した。尾ひ れでは前肢の出るstage XXでPRL受容体mRNAレベルが増加し、尾の退縮が 著しい、stage XXIIでもそのレベルは維持されていた(図 2-7-A)。腎臓では変 態最盛期後期に向けてPRL受容体mRNAレベルは増加した。幼若ガエルでも高 いレベルが維持されていた(図2-7-B)。

(26)

In situ hybridizationにより幼生特異的器官として尾ひれ、成体でも機能する 腎臓でのPRL受容体 mRNA発現部位を明らかにした。尾ひれではstage XVIII、 stage XXIIともに皮膚にPRL受容体mRNAの発現がみられた(図2-8-A)。stage XXII ではさらに結合組織内の繊維芽細胞に強いシグナルがみとめられた(図 2-8-B)。しかし、stage XVIII では繊維芽細胞では明瞭なシグナルは見られなか った(図2-8-B)。腎臓ではstage XVIII, XXIIともに尿細管上皮細胞にシグナル が見られたが、stage XXIIの方がシグナルの強度は強かった(図2-9)。

2-4 考察

ウシガエルPRL受容体は他種PRL受容体でも保存されている細胞外領域の 2組のシステイン残基、アスパラギン結合型糖鎖付加部位、WS配列、細胞内領

域のBox1, Box2配列が見られた。他種PRL受容体アミノ酸配列と相同性を比

較すると33-58%(Boutin et al. 1989; Edery et al. 1989; Tanaka et al. 1992;

Sandra et al. 1995; Yamamoto et al. 1998; Huang and Brown, 2000; Santos et al.

2001; Matsukawa et al. 2004)と、比較的相同性は低いことが明らかになった(表 1)。両生類のPRL受容体と比較しても53-57%であった。哺乳類内では約80%

の相同性があり、なぜ両生類内では低いかその理由は不明である。しかし魚類

内では34-50%程度であり、下等脊椎動物では低くなる傾向があるのかもしれな

い。またウシガエルPRL受容体は四足動物PRL受容体との相同性が魚類よ

(27)

bullfrog PRL receptor coding region

3'- RACE

1st PCR

2nd PCR

5'- RACE

reverse transcription with 5' phospholylated gene specific primer  p

p

1st PCR 2nd PCR

formation of concatemers by RNA ligase extracellular domain cytoplasmic domain

transmembrane domain

3' unknown sequence bullfrog PRL receptor cDNA fragment

5' unknown sequence

gene specific sense primer 1

gene specific sense primer 2 adaptpor primer

gene specific sense primer 3

gene specific sense primer 4

gene specific antisense primer 1

gene specific antisense primer 2 degenerate sense primer

degenerate antisense primer

図2-1 ウシガエルPRL受容体cDNAクローニングストラテジー 

(28)
(29)

図2-3 他種PRL受容体のアミノ酸配列の比較

全てのアミノ酸の一致する箇所は白抜き文字で、3つのアミノ酸が一致する箇所は、灰色背景 の文字で示してある。赤丸はシステイン残基、赤線はWS配列、青線はBox1配列、茶色線は Box2配列を示す。アミノ酸配列は上段からbullfrog, ovine, newt, tilapia。

(30)

表1 ウシガエルPRL受容体アミノ酸配列と他種PRL受容体アミノ酸配 列の比較

ニワトリPRL受容体は細胞外領域が通常の配列を2回繰り返したダブ ルアンテナ構造をしている。膜貫通領域に近位、遠位双方の配列に 対して相同性を算出した。Xenopus laevisは4倍体であり、PRL受容 体が2種類同定されており、それぞれに対して相同性を算出した。

human rabbit chicken

Xenopus laevis A Xenopus laevis B Cynops ensicauda Cynops pyrrhogaster tilapia

sea bream

45.0 48.7 44.5/50.5*

55.1 55.6 50.9 51.3 43.6 43.0

41.0 40.2 39.9*

55.4 56.5 52.6 53.2 28.4 24.1

43.3 44.2 44.1 56.2 57.1 53.3 53.8 34.5 33.3

extracellular domain(%) cytoplasmic domain(%) overall(%)

(31)

QuickTimeý Dz

TIFFÅiLZWÅj êLí£ÉvÉçÉOÉâÉÄ

ǙDZÇÃÉsÉNÉ`ÉÉǾå©ÇÈǞǽDžÇÕïKóvÇ-Ç ÅB

(32)

図 2-5 32P 標識ウシガエルPRL受容体cDNAプローブを用いたノーザン解析 ウシガエル幼生尾ひれpoly (A)+ RNAを濃縮したRNAを15 µg使用した。レーン 左側の棒線はそれぞれ28S, 18S ribosomal RNAのサイズを示す。

(33)

QuickTimeý Dz

TIFFÅiLZWÅj êLí£ÉvÉçÉOÉâÉÄ

ǙDZÇÃÉsÉNÉ`ÉÉǾå©ÇÈǞǽDžÇÕïKóvÇ-Ç Å

(34)

QuickTimeý Dz

TIFFÅiLZWÅj êLí£ÉvÉçÉOÉâÉÄ

ǙDZÇÃÉsÉNÉ`ÉÉǾå©ÇÈǞǽDžÇÕïKóvÇ-Ç ÅB

(35)

図2-8 ウシガエル変態期幼生尾ひれPRL受容体mRNAの局在

35S標識したアンチセンスRNAプローブを使用したin situ hybridizationで 解析した。ネガティブコントロールとして35S標識したセンスプローブを使 用した。A 尾ひれ表皮、B 尾ひれ結合組織内繊維芽細胞 a,b stage XVIII  c,d stage XXII, a,c アンチセンスプローブ, b,d センスプロ−ブ

スケールバーは25 µm

(36)

図2-9 ウシガエル変態期幼生腎臓PRL受容体mRNAの局在

35S標識したアンチセンスRNAプローブを使用したin situ  hybridization で解析した。ネガティブコントロールとして 35S標識したセンスプローブ を使用した。a, b: stage XVIII, c, d: stage XXII, a, c:アンチセンス プローブ, b, d: センスプローブ

スケールバーは25 µm

(37)

りも高い傾向にあることがわかったが、リガンドであるPRLでも同様の傾向が 見られた(Takahashi et al. 1990)。同じファミリーの属する(human, rabbit,

Xenopus laevis)成長ホルモン受容体とは 30.4-32.4%の相同性しかなかった

(Leung et al. 1987; Godowski et al. 1989; Burnside et al. 1991; Huang and Brown et al. 2000)。他種PRL受容体のアミノ酸配列のアライメントを見ると、

細胞外領域のタンパク質の折りたたみに関与すると言われる 2 組のシステイン 残基、リガンドとの結合に重要と考えられているWS配列(Rozakis-Adcock and Kelly, 1991, 1992)が保存されている様子がわかる(図2-3)。細胞内領域では、

シグナル伝達に関与すると考えられるBox1, Box2配列が比較的よく保存されて いる。したがって、全体のアミノ酸配列の相同性は低いが、PRL 受容体の機能 を司る部位については、保存性が高いと言える。過去または現在でも両生類に 哺乳類PRLを投与するとPRL様生理活性を示すが、このような受容体の保存性 によるものと推測できる。哺乳類PRL受容体では細胞内領域が約300アミノ酸 残基ある長型、数十アミノ酸残基しかない短型、細胞内領域と膜貫通領域が欠 如した遊離型等、いくつかのアイソフォームが報告されているが(Kelly et al.

1991; Goffin et al. 1996; Postel-Vinay, 1996: 図1-1)、ウシガエルPRL受容体は 細胞内領域のアミノ酸数から判断して哺乳類PRL受容体の長型に相当する分子 であると考えられる。鳥類以下の脊椎動物PRL受容体でアイソフォームは未だ 同定されておらず、両生類でのアイソフォームの探索は今後の課題であるが、

第五章にてウシガエルPRL受容体アイソフォームについて言及している。

ウシガエルPRL受容体をCOS-7細胞に発現させ、その膜タンパク質を回収し、

125I標識したウシガエルPRLを用いたbinding assayを行なったところ特異的な結 合が見られたことから、今回クローニングしたcDNAはPRL受容体として機能す るタンパク質をコードしていることが確認された。スキャッチャードプロット

(38)

から、会合定数は1.27 nM-1と計算された。過去にtipalia PRL受容体(Sandra et al. 1995)、pigeon PRL受容体(Chen and Horseman, 1994)、rat PRL受容体

(Boutin et al. 1988)をCOS-7細胞に発現させ、binding assayを行ない、会合 定数を算出し、報告しているが、それぞれ1.7 nM-1, 0.45 nM-1, 3.5 nM-1であり、

比較的近い値を示している。

ウシガエル幼生尾ひれRNA(mRNAを濃縮したもの)を用いたNorthern解 析で、約3 kbの特異的なバンドを検出した。したがってウシガエルPRL受容体 転写産物は約3 kbと考えられるが、今回クローニングしたウシガエルPRL受容 体cDNAは2.2 kbであり、やや短い。5'末端側の非翻訳領域がすべてクローニ ングできていない可能性が考えられる。同じ両生類では Cynops pyrrhogaster で脳、腎臓で10 kb(Yamamoto et al. 1998), Cynops ensicaudaでは脳、肝臓、

腎臓、腹部肛門腺、輸卵管、皮膚で3 kbおよび10 kb(Matsukawa et al. 2004)、 Xenopus laevisでは脳、腎臓、皮膚、幼生尾ひれ、皮膚等で 3 kbおよび8 kb

(Yamamoto et al. 2000)のバンドが確認されている。

RT-PCRを用いた変態期幼生のPRL受容体mRNAの発現解析では様々な組

織や器官でその発現が見られた。代表的なものとして、脳、肺(幼生時の未発 達なものも含む)、腎臓、皮膚、尾があげられる。脳で PRL 受容体の発現が見 られたのは非常に興味深い。PRL が両生類幼生脳にいかなる作用を示すかは明 らかになっていない。ただし、Hunt and Jacobson(1971)はRana pipiens幼 生で、PRLがDNA合成を促進し、神経細胞死を抑制するとの報告をしている。

幼生から成体にかけて脳内の神経細胞等も盛んに分裂やアポトーシスを行ない、

(39)

乳類の母性行動、鳥類の抱卵行動、両生類有尾目イモリの雄求愛行動など、行 動にも関与することが分かっている。したがって、両生類幼生時の何らかの行 動や成体の生殖行動などに関わりをもつ可能性も考えられる。Oguchiら(1994)

は、ウシガエル変態期幼生にウシガエルPRL抗血清を投与すると、肺の主たる サーファクタントとして知られるphosphatidylcholine(PC)の合成が抑制され ることを見いだした。このことからPRLがPCの合成を促進していることが示 唆されている。今回 PRL 受容体 mRNA 発現が未発達な肺に見られたことは、

PRL が直接幼生の肺に作用し上記作用を示す裏付けとなると考えられる。哺乳 類でもPRLは新生児肺でPC合成を促進することが知られており(Hamosh and

Hamosh, 1977)、PRLの肺機能の発達に関与する作用は両生類以上の脊椎動物

で保存されたものであるかもしれない。

その他、肝臓では、変態最盛期および成体でのみPRL受容体mRNAを検出 された。哺乳類ではPRLは肝細胞の増殖を促すことが報告されている(Vergani et al. 1994)。変態最盛期以降、肝臓の何らかの機能にPRLが関与すると考えら れるが、どのような作用かは不明である。変態期幼生腓腹筋でも発現が見られ たが、Wrightら(1979)は、PRLは甲状腺ホルモンによる後肢の発達を抑制す る結果を報告している。したがって、今回の結果は、PRL が変態期に後肢の発 達を抑制している可能性を示唆する。

幼生特異的器官として尾ひれ、成体でも機能する器官として腎臓に焦点をあ てPRL受容体の発現解析を行ない、RNase protection assayにより尾ひれでは前 肢のでるstage XXでPRL受容体mRNAレベルが高まり、尾の退縮が著しいstage XXIIでも高いレベルが維持されていることが分かった。また、このmRNAレベル の上昇はin situ hybridizationの結果から、尾ひれ間充織の繊維芽細胞でのmRNA レベルが上昇したことによると推測される。尾ひれではPRLがコラーゲン合成

(40)

を促進することで、その成長を促すことが知られている(Yoshizato et al., 1972)

が、甲状腺ホルモンによる尾の退縮をPRLがどのようなメカニズムで抑制して いるかは不明である。最近、Xenopus laevisで、PRLが尾ひれではT4およびT3を 不活性化するtype III iodothyronine 5-deiodinaseの発現レベルを高めるという報 告 が な さ れ た (Shintani et al. 2002)。 ウ シ ガ エ ル で は 変 態 期 尾 ひ れ で の 5-deiodination活性が高い(Becker et al. 1997)ことから、少なくとも部分的に はPRLはtype III iodothyronine 5-deiodinaseの発現レベルを高めることで甲状腺 ホルモンによる尾の退縮を阻害している可能性がある。

変態期の幼生は、消化管の大きな構造変化などの理由により食物を摂取しな くなる。したがって、この時期から変態が完了するまでに変態に伴う成体器官 の新生や構造変化に必要な物質やエネルギーは尾から供給されると考えられる。

仮に変態最盛期にPRLが作用しなかった場合、この時期血中甲状腺ホルモンレベ ルは非常に高く(Mondou and Kaltenbach, 1979; Regard et al. 1978; Suzuki and

Suzuki, 1981)、尾は組織や器官の構造変化が不十分な状態で急激に退縮し、変

態完了まで十分にエネルギーや物質を体全体に供給することができなくなると 考えられる。事実、変態始動期の幼生を高濃度の甲状腺ホルモン存在下で飼育 すると急激に尾は消失し、極めて短い四肢を持つカエルとなることが報告され ている(Etkin, 1968)。今回の結果は、PRLは変態最盛期以降、その血中レベル や尾ひれPRL受容体発現レベルをあげることで、変態期に徐々に尾を退縮させ、

エネルギーや物質を変態完了まで供給することを可能にする作用があることを 示唆する。

(41)

ことがわかった。これらの結果より、PRL は腎臓の尿細管に作用し水中生活か ら陸上生活に適応した腎臓の構造や機能の発達に関与することが示唆された。

最近、Huang and Brown(2000)は、Xenopus laevisでPRLを過剰に発現 するトランスジェニックXenopusを作製して変態の解析を行ない、ほとんど正 常に変態し、部分的に尾の残った個体が生じるという結果を報告した。彼らは この結果から、PRLはかつて言われていたいわゆる”幼若ホルモン”ではなく、

変態には影響を与えていないと結論づけている。幼若ホルモンでないことは、

Yamamoto and Kikuyama(1982b)が報告した変態最盛期以降に血中PRLレベ ルが上昇するデータから想定されてきた。また、実際のところはPRL受容体が 機能しなくなるような実験系でなければ、変態に何も影響ないとは言い切れな いだろう。本研究で様々な器官、組織でPRL受容体の発現が確認されたことか ら、実際には変態期に各器官、組織で多様な作用をしていることが想像できる。

今後PRLの変態への関与より深く解明していく上で、PRL受容体の機能を潰し 総括的にPRLの変態への影響を見る前に各器官、組織でのPRLの影響をみるこ とが必要であろう。

第三章

シリケンイモリ肛門部腹腺プロラクチン受容体の発現解析

(42)

3-1 序論

イモリでは繁殖期に求愛行動が行なわれることが知られている。種類により 求愛行動の様式は異なるが、雄の総排出口から精包が放出され、雌の総排出口 より精包が取り込まれる。その一連の行動の中で、雄の総排出口からは、腹腺 で合成される雌誘引フェロモンが放出される(Kikuyama et al. 1995; Yamamoto et al. 2000)。腹腺は雄性ホルモンとPRLが協調して作用すると、その腺構造が 発達する(Kikuyama et al. 1975)。また、雌誘引フェロモンの合成も雄性ホルモ ンとPRLにより促進される(Iwata et al. 1999, 2000; Yamamoto et al. 2000)。 我々は、PRL の腹腺への作用機序を明らかにする目的で、沖縄産シリケンイモ リ(Cynops ensicauda)腹腺cDNA libraryからシリケンイモリPRL受容体cDNA をクローニングした(Matsukawa et al. 2004: 図3-1シリケンイモリPRL受容 体ヌクレオチド配列と推定されるアミノ酸配列)。本章ではクローニングした PRL 受容体 cDNA を用いて、性的に発達した個体と未発達な個体の腹腺での PRL受容体 mRNAレベルを比較し、さらに in situ hybridization により、PRL 受容体mRNAの局在も比較している。

(43)

3-2-1 実験動物

沖縄産シリケンイモリはイソップ(東京)から購入した。室温22˚C、12L:12D の光条件下で飼育し、餌として隔日で冷凍アカムシを与えた。

3-2-2 半定量的RT-PCR/Southern解析

シリケンイモリ肛門部腹腺内 PRL 受容体 mRNA レベル測定には判定量的 RT-PCR/Southern解析を採用した。PCR で使用したシリケンイモリ PRL 受容 体、シリケンイモリß-アクチン特異的なプライマーは以下の配列である。

Cynops ensicauda PRL受容体

sense primer: 5'-CTGGAGCATGTTGACTTGC-3'

antisense primer: 5'-CCGAGAGTGCCGAAGGACTG-3' Cynops ensicauda ß-アクチン

sense primer: 5'-AATGGATCCGGTATGTGCAAGG-3' antisense primer: 5'-CACATCTGCTGGAAGGTGGACA-3'

RT-PCRを行なうにあたり、100 ngの全RNAを出発材料とした。またPCRはPRL 受容体については94˚C 30 sec, 62˚C 30 sec, 72˚C 30 secを30サイクルするプ ログラムで、ß-アクチンについては94˚C 30 sec, 60˚C 30 sec, 72˚C 1 minを25 サイクルするプログラムで行なった。PCR増副産物を1.5%アガロースゲルで泳 動し、Hybond-N+(Amersham Biosciences)にブロットした。プローブとして PRL受容体は32P標識したシリケンイモリPRL受容体cDNA(ApaI-XhoI fragment, nucleotide positions: 1237-1360)を、シリケンイモリß-アクチン(full length)

を使用した。PCR産物が転写されたHybond-N+をハイブリダイゼーションバッ ファー(50%ホルムアミド, 5 x SSPE, 0.5% SDS, 5 x デンハルト, 20 ug/ml サ ケ精巣DNA)中で42˚C、2時間プレハイブリダイゼーションし、プローブを加

(44)

え 42˚Cで一晩ハイブリダイゼーションした。ハイブリダイゼーション後、2 x SSPE-0.1% SDS, 1 x SSPE-0.1% SDS, 0.1 x SSPE-0.1% SDSでそれぞれ65˚C で30分洗浄し、X-OMAT film(Eastman Kodak)に露光し、オートラジオグラ ムを作製した。シグナル強度はNIH image 1.62 softwareで解析した。

3-2-3 In situ hybridization

2-1-6 で述べられている方法に従った。ただし、ハイブリダイゼーションバ

ッファーの組成は10 mM Tris-HCl (pH 7.5), 65%ホルムアミド, 0.6 M NaCl, 1 x デンハルト, 1 mM EDTA, 0.5 mg/ml イーストトランスファーRNAである。また、

ハイブリダイゼーションは 58˚C で行なった。NTB2 nuclear track emulsion

(Eastman Kodak)を貼付後、4˚Cで3週間露光した。

3-3 実験結果

RT-PCR/Southern解析で、定量的な解析をするにあたり、逆転写する腹部肛

門腺全RNAとPCRのサイクル数について検討した。PRL受容体特異的なプラ イマーを用いたRT-PCRでは100 ngの全RNAを逆転写に使用した場合、PCR のサイクル数が 28-35 サイクルの時、サイクル数とシグナル強度との関係に直 線性が見られた。ß-アクチンでは20-30サイクルで直線性が見られた(図3-2A)。 また、PCRのサイクル数を PRL 受容体では30 サイクル、ß-アクチンで 25サ

(45)

RNAを逆転写し、PRL受容体プライマーを使用したPCRでは30サイクル、ß- アクチンプライマーを使用したPCRでは25サイクル行なうこととした。

性的に未発達の個体、発達した個体の腹部肛門腺の PRL 受容体レベルを測 定すると、有意に性的に発達した個体の腹部肛門腺でのPRL受容体mRNAレベ ルが高まっていることがわかった(図3-3)。さらにin situ hybridizationにより PRL受容体mRNAの局在を調べると、性的に発達した個体の腹部肛門腺では上 皮細胞に強いシグナルがみられた(図3-4A)。一方、性的に未発達な個体の腹部 肛門腺では上皮細胞が著しく萎縮しており、特異的なシグナルは検出できなか った(図3-4B)。アンチセンスプローブに未標識アンチセンスRNAを100倍量 加えてハイブリダイゼーションさせたものでは双方とも特異的なシグナルは見 られなかった(図3-4C,D)。

3-4 考察

RT-PCR/Southern解析、in situ hybridizationの結果より性的に発達した個体 では腹腺でのPRL受容体mRNAレベルが高まっていること、またPRL受容体 mRNA は腹腺上皮細胞に発現していること、性的に未発達な個体では腹腺上皮 細胞は著しく萎縮し、PRL受容体mRNAのシグナルもほとんど見られな

(46)

Fig. 2.  

       

-415 TCGACCGCAGAGCATCCGGCTGCGGGTCTCCCAGGCTTTCCCAGCTCTTGTTCTC -361 -360 CCCGAGCAGCCCCTTCCCAGCCCGGCCCAGGAGAGCCCCGGTACCCCGCGGTTCGCGGTCTTGTCAGGGTCT -289 -288 CACAGACCGGGAATCCAGCCCCCAAACGGCAAGGAGGAGCCTGTGAACCGGCATGGATCTCGGCAGCCCTGC -217 -216 GCCCGTAGCCAGGGACACACTTTGACATTGTGACAAGACTTCACCAAGGGGCCTGAAAAGGGAAATGACAGC -145 -144 ATCTATTGGTGGAAAAGAACGGCACGTGATCACCAGGTCTTCTGCTCGTGTTAAGACAAGGTTTGGACCAAC -73 -72 CTCGGCACAGATGACTATCACAGTGAGCAAGTGATCCTGCGTTTCCCCTCGGAGCAGAAATAAGCCATCAAC -1

1 ATGCGTCAAAACCTGAAAATATCTGCCTCAGCCGTCACATTTATTTTATTGCTTTTACTAAACACAGATGTG 72 1 M R Q N L K I S A S A V T F I L L L L L N T D V 24 73 ATGGACGGAGAATCACTTCCTGGAAAGCCTGTTAACATCATGTGCCGCTCTCCAGAGAAAGAAACATTTTCC 144 25 M D G E S L P G K P V N I M C R S P E K E T F S 48 145 TGCTGGTGGCAACCAGGTTCAGATGGGGAACTTCCAACTAACTACAGCCTGTTATACAAAACAGAGGGAAAA 216 49 C W W Q P G S D G E L P T N Y S L L Y K T E G K 72 217 AACACTTACTCTGAATGTCCAGACTACAAAACCTCTGGTCCCAACTCATGTTTTTTTGATAAAAAGCACACG 288 73 N T Y S E C P D Y K T S G P N S C F F D K K H T 96 289 TCAATCTGGACGATGTATAATATCATTGTGAATGCAACCAACGAGCTGGGGAGCACTACGTCTGATCCCAAA 360 97 S I W T M Y N I I V N A T N E L G S T T S D P K 120 361 TTTGTGGATGTAGCGTATATAGTTCAGCTTCGTCCCCCGTTGAATGTGACTCTTTCTATAATCTATGAGCCT 432 121 F V D V A Y I V Q L R P P L N V T L S I I Y E P 144 433 CCACATCTTCTGGTGAAATGGTCACCACCGTCAGAGGCCGATGTCAAGTCTGGTTGGGTAACCATTGAATAC 504 145 P H L L V K W S P P S E A D V K S G W V T I E Y 168 505 GAGGTACAATTCAAATCTAAGAAAGCAAAGGAATGGGAGACACTCACTGCTGGTAAACAACGACAGCTCAAG 576 169 E V Q F K S K K A K E W E T L T A G K Q R Q L K 192 577 GTGTTTAGTTTAAATCCCAGTGAGAACTACATTGTACAAGTGCGCTGTAAATCTGACCATGGGTTTTGGAGC 648 193 V F S L N P S E N Y I V Q V R C K S D H G F W S 216 649 ATGTGGAGTCCAGAAAGCTACATCCAGATTCCAGACAACTTCCCAAGAAAAGACATGACATTATGGATATCG 720 217 M W S P E S Y I Q I P D N F P R K D M T L W I S 240 721 ATCGCAGTGTTATCATTTGTCATTTGTTTAACAATCATTTGGACAATGGCTCTTAAACGCTGGAGCATGTTG 792 241 I A V L S F V I C L T I I W T M A L K R W S M L 264 793 ACTTGCATCCTGCCGCCTGTTCCAGGGCCCAAAATAATGGGCTTTGATAAGCAGTTACTTAAGACAGGAAAA 864 265 T C I L P P V P G P K I M G F D K Q L L K T G K 288 865 TCGGAAGAGCTGTTAAGTGCCTTGGGCTGTCAAGGTTTTCCACCAACATCAGACTGTGCAGATCTTCTGGTG 936 289 S E E L L S A L G C Q G F P P T S D C A D L L V 312 937 GAATTTCTCGAGGTAGATGACAGTAAAGAGCAGCTGATCTCTAGCCATGACAAAGGGCACCCCAACCAACCC 1008 313 E F L E V D D S K E Q L I S S H D K G H P N Q P 336 1009 ACGAAGTTACCCCATGCTGAAACAGACAATGATTCAGGGAGAGGGAGCTGTGACAGTCCTTCGGCACTCTCG 1080 337 T K L P H A E T D N D S G R G S C D S P S A L S 360 1081 GAGAGATGCAAAGACTCCAGAATCTCTTCGGCAGCTCTTGAAACCGATGATGTTGGTGAAATGAAAGAAAAT 1152 361 E R C K D S R I S S A A L E T D D V G E M K E N 384 1153 GCTGCACAACAAAGTACCATAAATTGGGCAATTCAAAGTCCAATGTCTGACAAACAGTTGCCTAACCCAAGT 1224 385 A A Q Q S T I N W A I Q S P M S D K Q L P N P S 408 1225 GATGGAAAACCAAACCCTTGGCCTGAAGGAGGAACAGTCAGTAATCAGACTCCTACATCCTCCTACCACAAC 1296 409 D G K P N P W P E G G T V S N Q T P T S S Y H N 432 1297 ATTACTGAAGTTTGTAAATTGGCCCTTGGTGCCATGAATGCAAATATGTCATCACTTTTAATGGCCAATGAG 1368 433 I T E V C K L A L G A M N A N M S S L L M A N E 456 1369 GACAAGAAGCAGCCAAAATACTTTAAAACCATTGAGACGATTAGCAAGGAGAGTGCAGGGAAGCAGAACGAG 1440 457 D K K Q P K Y F K T I E T I S K E S A G K Q N E 480 1441 TTGGAGTACATGCACTCCAGAGCTTTTGACCAGGACACAATGTGGCTTTTGCCCAACCTGAAGGCATCTTTC 1512 481 L E Y M H S R A F D Q D T M W L L P N L K A S F 504 1513 ATGTCTCCAAAGACAATGGATTATGTGGAGGTTCAGAAAGTTAACCAAAACAATGCACTTGCGCTGATACCA 1584 505 M S P K T M D Y V E V Q K V N Q N N A L A L I P 528 1585 AAACAGAAGGAAAGCCATGGGAGAAGGGAACAGTATCCTTCTACGGGTCCGAGCAGGGAATATACCAAGGTG 1656 529 K Q K E S H G R R E Q Y P S T G P S R E Y T K V 552 1657 GCACGAGTGGAGGATAATAATGTCCTAGTACTAATGCAGGACTCAGGATCTCAGAGCACCCCAGTGCTCCGA 1728 553 A R V E D N N V L V L M Q D S G S Q S T P V L R 576 1729 GAGCCATTTAAAGAGTATTCGCAGATCCTCCAACCACAACAGGCTGAGAATAATTTGAGTAAATTTAAGGCA 1800 577 E P F K E Y S Q I L Q P Q Q A E N N L S K F K A 600 1801 GGGAGTCAAAATGAGAGCAAGAGCCAGGTGAGCACACTGGGTTACATGGATCCAAGTGCCCTGGCTCCCATG 1872 601 G S Q N E S K S Q V S T L G Y M D P S A L A P M 624 1873 TTTAGTTAA ATGAAAGTTTAATCATTATGAGTACTTGTTCGGGTAAAGCCACAGACTAAATAACTTGTGA 1942

(47)

100 200 300 400 100

200 300 400 500 600

500

Amount of total RNA (ng) B

A

20 25 28 30 32 35

400

300

200

100 350

250

150

50

PCR cycles

図3-2 RT-PCR/Southern blot解析のPRL受容体mRNA, ß-actin mRNAの定量性 の確認

A: 100 ngの腹腺全RNAを用いてRT-PCR/Southern blot解析を行ない、PCRの サイクル数とシグナル強度その相関関係を示した。 PRL受容体、 ß-actin B: 様々な腹腺全RNA量を用いたRT-PCR/Southern blot解析のシグナル強度の 相関関係を示した。 PRL受容体、 ß-actin

PRL受容体特異的プライマーを使用時は30サイクル、ß-actin特異的プライ マー使用時は25サイクルのPCRを行なった。

(48)

2 4 6 8 10 12

*

図3-3 性的に未発達(A), 発達(B)シリケンイモリ腹腺内PRL受容体mRNAレ ベル

半定量的RT-PCR/Southern blot解析で測定。PRL受容体mRNAシグナル強度 はß-actinのシグナル強度で補正した。値は5例の平均値(±標準誤差)で 表した。  は統計的有意差があることを示している。統計処理はWelch's  testで行なった。

*

(49)

図3-4 性的に発達(A, B)、未発達(C, D)シリケンイモリ腹腺PRL受容体mRNA の局在

35S標識したアンチセンスRNAプローブをしようしたin situ hybridization で解析した(A, C)。ネガティブコントロールとして標識アンチセンスRNAプ ローブに100倍量のアンチセンスRNAを加え、ハイブリダイゼーションを競 合させた(B, D)。スケールバーは50 µm

(50)

いことが明らかになった。繁殖期になると、雄イモリでは血中の雄性ホルモン レベル、PRLレベルが増加することが報告されている(Tanaka and Takikawa, 1983; Mosconi et al. 1994)。したがって、繁殖期には血中のPRLレベルが増加 するだけでなく腹腺でのPRL受容体の発現レベルが増加し、PRLに対する反応 性が増している可能性が考えられる。PRL受容体mRNAレベルがどのような因 子に影響を受けるかは興味深いところであるが、去勢、下垂体除去したイモリ にテストステロンプロピオネートや、PRLを投与しても PRL 受容体 mRNAレ ベルはほとんど変化しないという結果を得ている(未発表データ)。しかし今回 の結果が示すように、繁殖期では腹腺でのPRL受容体mRNAレベルが高まって いるので、何らかの因子がPRL受容体mRNA発現に関与していると思われる。

また、Matsumotoら(1996)は、ラットアンドロゲン受容体N末端の21残 基を認識するポリクローナル抗体を用いた免疫染色で、アカハライモリ腹腺内 にアンドロゲン受容体免疫陽性細胞を検出し、さらに、去勢した雄にテストス テロンプロピオネートを処理すると、腹腺上皮細胞の核が染色される割合が高 まる結果を報告している。また、我々はアカハライモリアンドロゲン受容体 cDNAの部分断片をクローニングし、腹腺でアンドロゲン受容体mRNAが発現 していることを確認している(Ito et al. 未発表データ)。腹腺の腺構造や、雌誘 引フェロモンの合成は雄性ホルモンとPRLと協調して作用することから、今後 PRL 受容体のみならずアンドロゲン受容体の解析も行ない、雄性ホルモンと PRL がどのような機構で協調して作用するか解明することが必要であると考え られる

(51)

アカハライモリ脳内PRL受容体の発現解析

4-1 序論

アカハライモリの雄は繁殖期に求愛行動を行ない、精包を雌の総排泄口内に 取り込ませる。正常な雄に生殖腺刺激ホルモン(ヒト絨毛性ゴナドトロピン、

hCG)と PRL, 去勢した雄に雄性ホルモン(テストステロンプロピオネート)

とPRL, 下垂体除去した雄にhCGまたはテストステロンプロピオネートとPRL

を投与すると、求愛行動が誘起される(Toyoda et al. 1993)。これらの事実から、

雄性ホルモンとPRLとが求愛行動を誘起することが分かった。また、繁殖期に 求愛行動を行なっている個体に抗アカハライモリPRL抗血清を投与すると、求 愛行動の発現が抑制されることから、内因性PRLが求愛行動発現に必要である

(Toyoda et al. 1996)。

現在までにCynops pyrrhogasterおよびCynops ensicaudaの2種類の日本産 イモリのPRL受容体cDNAがクローニングされている(Yamamoto et al. 1998;

Matsukawa et al. 2004)。また、RT-PCR, Northern解析より、イモリ脳でPRL受 容体mRNAが発現していることが報告されている(Yamamoto et al. 1998;

Matsukawa et al. 2004)。しかし、PRLが脳に直接作用して求愛行動を誘起する のか、仮に中枢に作用するとすれば、中枢のどの部位に作用し、どのようなメ カニズムで求愛行動を誘起するか明らかでない。本章では、PRLが雄イモリ中 枢に直接作用して求愛行動を誘起するかどうかを検証している。また、イモリ PRL受容体に対する特異的な抗体を作製し、免疫組織化学的手法を用いて、ア カハライモリ脳内のPRL受容体の局在を明らかにし、中枢でのPRLの作用部位の 特定を試みている。またアカハライモリPRL受容体cDNAを鋳型に35S標識した

(52)

アンチセンスRNAプローブを作製し、in situ hybridizationを行ない脳内のPRL受 容体mRNAの局在も検証している。大細胞性視索前核では、PRL受容体免疫陽性 細胞と、後葉ホルモン(AVT、メソトシン: MT)免疫陽性細胞の比較を行なって いる。さらに脳室内にPRL受容体抗体を投与し、求愛行動が阻害されるかどう かを検証し、求愛行動がPRL受容体を介しているかどうかを確認している。

4-2 実験材料と方法

4-2-1 実験動物

雄アカハライモリ(Cynops pyrrhogaster)をAquatic Animal Supply(埼玉 県三郷市)から購入した。室温22˚C、12L:12Dの光条件下で飼育し、餌として 隔日で冷凍アカムシを与えた。

4-2-2 PRL、抗血清、抗体のイモリ脳室および腹腔投与実験

脳室投与実験はToyodaら(2003)の方法にしたがった。PRL溶液(生理食 塩水に溶解)、抗血清、抗体溶液それぞれ0.5 µlをガラスマイクロピペットでと り、イモリ脳内の第三脳室に挿入されたマイクロシリンジに接続した。マイク ロピペット接続 10秒後に抗体溶液を 5秒以上かけて注入し、20 秒後にマイク ロピペットを取り外した。腹腔には20 µlの抗体溶液を注入した。コントロール として正常ウサギ血清、またはウサギ IgG を使用した。脳室、腹腔注入後、す

(53)

Toyodaら(1993)にしたがった。1 IUのovine PRLと25 IUのhCGを7-10 日連続腹腔投与し、性的に発達させた雌 1 匹と PRL, 抗血清または抗体を注入 した雄 1 匹を同一の水槽に入れ、雄が雌の鼻先に向け尾を振る行動の発現率と 頻度を1時間測定した。

4-2-4 抗イモリPRL受容体抗体作製

アカハライモリおよびシリケンイモリの PRL 受容体は、非常にアミノ酸配 列が似通っており、7 カ所のアミノ酸が異なるだけである(図 4-3)。細胞外領 域のアカハライモリ、シリケンイモリで共通な64番目から78番目の15残基か らなるペプチド(SLLYKTEGKNTYSEC)を合成し(SAWADY Technology;

Tokyo)、カルボキシ末端のシステイン残基にテンガイヘモシアニンを付加した。

これをウサギに100 µgづつ2週間の間隔を置き5回免疫し、全採血して抗血清 を得た。抗原としたペプチド1.5 mgをAffi-Gel 10(Bio-Rad)1 mlにカップリ ングし、抗原ペプチドカラムを作製した。得られた抗血清10 mlと10 mM PB pH 7.4 10 mlを混合し、抗原ペプチドカラムに通した。100 mlの10 mM PBでカラ ムを洗浄し、クエン酸バッファー pH 3.0でカラムに吸着していたタンパク質を 溶出させた。溶出液はいくつかのエッペンドルフチューブに取り、すぐさま1 M Tris-HCl pH 9.1で中和した。各チューブ内の溶出液の280 nmの吸光度を測定 し、タンパク質が含まれていると思われるチューブの溶出液を回収し、20%グ リセロールを含む10 mM PBを外液に、一晩4˚Cで透析した。これをイモリPRL 受容体抗体溶液とした。抗体濃度はBCA protein assay kit(Pierce)で測定した。

4-2-5 イモリPRL受容体抗体の特異性の確認

全長シリケンイモリ PRL 受容体 cDNA を哺乳類細胞発現ベクターpcDNAI

参照

関連したドキュメント

自分ではおかしいと思って も、「自分の体は汚れてい るのではないか」「ひどい ことを周りの人にしたので

全ての個体から POPs が検出。地球規模での汚染が確認された北半球は、南半球より 汚染レベルが高い。 HCHs は、 PCBs ・ DDTs と異なる傾向、極域で相対的に高い汚染

た意味内容を与えられている概念」とし,また,「他の法分野では用いられ

SDGs を学ぶ入り口としてカードゲームでの体験学習を取り入れた。スマ

これらの事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的

積を示す.図の赤い領域が引っ張りを与える部分である.具体的には,給水ポ ンプを,内圧を受ける薄肉円筒 ( 肉厚 28mm)

内 容 受講対象者 受講者数 研修月日 アンケートに基づく成果の検証

内 容 受講対象者 受講者数 研修月日 アンケートに基づく成果の検証.