博 士 ( 医 学 ) 野 村 英 司
学 位 論 文 題 名
子宮体部内膜型腺癌における
ステロイドスルファターゼ活性に関する研究 学位論文内容の要旨
緒言
子 宮体 癌に おい て ,天然 あるいは合成エスト口ゲン による発癌性やェス卜ロゲン が腫 瘍の増殖性を促進することはよく知られている.
この よう な全 身的 な かつ慢 性的な高エス卜ロゲン環境 の他に,子宮体癌の発癌・増 殖機 構のーつとして,`子宮内 膜局所において何らかのメカ ニズムにより高工スト口ゲン環境 が関与しているものと考えられている,
ステロイドスルファターゼ・(E.C.3.1.6.2.,以下STSと略す)は主に血中に多量に存在す る硫 酸化 ステ ロイ ド ホルモ ンを脱硫酸化し活性ステロ イドホルモンヘ変換する酵素 であ る . 本 酵 素STSは 広 く ヒ ト 組 織 に 分 布 し 特 に 胎 盤 に お い て は 豊 富に 存 在し てい る.
子宮 体癌 組織 にお い てSTS酵 素活 性が 高ま って いると の報告があるが,正常子宮内 膜組 織に おけ るSTS活 性の 有無 や 月経 周期 によ る変 動 ,子 宮体 癌に お ける 分化度によ るSTS 活性 の差 異や 正常 内 膜との 活性の差などについての詳 細な検討はなされていない. そこ で, 臨床 検体 を用 い たSTSの 解析 によ り子 宮体 癌の病 理組織学的予後因子と局所の エス ト ロ ゲ ン 環 境 の 形 成 と の 関 係 を 明 ら か に す る こ と を 本 研 究 の 目 的 と し た .
対 象と 方法 1. 対象 およ び 方法
用 い られ た検 体に 関し ては, 全てインフオームドコンセン トを得たものである.新鮮 凍結 検 体は 正常 子宮 内膜 組 織13例(35土1.5歳,mean土S.E),子宮体癌組織14例(56.3 土3.5歳),免疫組織学化学的検 討は正常子宮内膜組織39例(40.3士10歳),子宮体癌103 例(55.1土1.0歳 ) で1988FIGQ分 類 ,I期59例 ,H期11例 , 皿 期26例 ,W期7例 で あ る . 培 養 細 胞 株 は 子 宮 体 部 漿 液 性 腺 癌 培 養 株SPAC‑L, 低 分 化 型 腺 癌HOUA, 低 〜 高分 化 型腺 癌HEC‑1,高 分化 型腺 癌HHUAの4種類 であ る.
STS酵 素 活 性 は[7̲3H] DHEA硫 酸 を 基 質 と し て そ の 活 性 を 測 定 し た , Westem blot法 にてSTS夕 ン バク 質の 解析 を 行っ た. 免疫 組織 化 学的 染色 では,検鏡は 中 拡 大(200x)で10視野 以上 検鏡 し, 腺 組織 の腺 細胞 全体 の うち 陽性 細胞 の 割合 に応 じ て3つ の カ テゴ リ ーに 分類 した .腺 細 胞全 体の0〜25% が染 色さ れ た場 合をnegauve stainingとし,25〜75%をpositive staining,75〜100%をstrongly positlve stalmng とし て 検討 した .
さら に 子宮 体癌 組織 の免 疫組織 化学的染色ではFIG0(1988)の 進行期分類,および子宮体 癌の 病 理組 織学 的予 後因 子(組 織分化度,核異型度,頸管浸 潤,筋層浸潤,脈管侵襲,
リン バ 節転 移) との 比較 検 討を おこ なっ た .
研究結果
1.正 常子宮内膜組織のSTS酵素活 性は増殖期初期から増殖期中期(73.2土12.8pmol/mg/hr
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means土S.E,n=4)と 比 較 し て 増 殖 期 後 期 か ら 排 卵 期 (119.4土6.7 pmol/mg/hr,nニ4) が有 意 に 高 値 を 認 め た . 正 常 子 宮 内 膜 組 織 の 免 疫 組 織 化 学 的 染 色 所 見 と 月 経 周 期 と の 関 連 で は , 分 泌 期 初 期 か ら 分 泌 期 中 期 に か け て も っ と も 染 色 性 が 増 強 し て お り , 増 殖 期 初 期 か ら 中 期 お よ び 分 泌 期 後 期 か ら 月 経 期 と 有 意 (pく0,01,pく0.05)な 差 を み と め た . 2. 体 癌 培 養 細 胞 で はHOUA (6.1土5.8 pmol/mg/hr,means土S.E.) が最 も 活性 が低 く ,高 分 化 型 腺 癌 培 養 株HHUA(368.0土2.0 pmol/mg/hr)の 活 性 が よ り 分 化 度 の 低 いHOUA, HEC−1(88.9士27.1 pmol/mg/hr)に比 べて有意(pく0.01)に高かった,またHHUAは有意(pく0.01) にSPAC―LよりSTS活 性が高かった.
Westem blot法 で もHHUAで 最 も バ ン ド が 強 く , 以 下 HEC‑1,SPAC‑L,HOUAの 順 に 弱くなり,STS酵素活性の測 定結果との関連を認 めた,
3. 正 常 子 宮 内 膜 組 織 お よ び 子 宮 体 癌 のSTS酵 素 活 性 を 比 較 す る と , 子 宮 体 癌 組 織 の 酵 素 活 性(190.2土41.8pmol/mg′hr, range:71. 知54418pmo|/mg′ り は正 常内 膜 (92.6土 9.2pmol/mg/hr,41.釟136.2pmol/mg/hr)に比べて有意(pく0.09に高値を示した.またWestem blot法の結果でも酵 素活性の測定結果 と一致していた.
4. 子 宮 体 癌 組 織 の 免 疫 組 織 化 学 的 染 色 に よ る 解 析 で は , ゛STS夕 ン パ ク は 腫瘍 細胞 に 局在 し , 病 理 組 織 学 的 予 後 因 子 と の 関 連 で は 組 織 分 化 度 と 核 異 型 度 と に 有 意 (pく0.05) な 相 関 が あ っ た , ま た 生 存 率 の 解 析で はstronglypo毎tive群 の生 存 率が 他の 群 と比 べて 高 く,
poSitive群との間に 有意(pく0.05) な差を認めた 考 察
STS酵 素 活 性 の 解 析 お よ び 免 疫 組 織 学 的 検 討 に よ り , 正 常 子 宮 内 膜 組 織 に お け るSTS の 発 現 は , 増 殖 期 後 期 , 排 卵 期 に か け て 増 加 し , 増 殖 期 後 期 以 降 は 再 び 活 性 が 低 下 し て い る こ と が 明 ら と な り , ま たSTS酵 素 夕 ン バ ク が 内 膜 腺 細 胞 細 胞 質 に 集 積 し て い る こ と が 明 ら か と な っ た .
以 上 の 様 に 正 常 子 宮 内 膜 組 織 中 のSTSの 発 現 は , 月 経 周 期 に お い て 変 動 を 示 し , 下 垂 体 ← 卵 巣 の 恊 調 作 用 と 一 元 的 に と ら え ら れ や す い エ ス ト ロ ゲ ン の 月 経 周 期 に よ る 変 動 が , 少 な く と も 標 的 臓 器 で あ る 子 宮 内 膜 に お い て は 腺 細 胞 自 身 のSTSに よ っ て ポ ジ テ ィ ブ に 修 飾 さ れ る こ と を 示 し , 非 常 に 興 味 深 い と 思 わ れ た . 培 養 細 胞 の 検 討 で は , 培 養 細 胞 株 の 分 化 度 が 高 く な る とSTSの 発 現 も 高 ま り , ま た エ ス ト 口 ゲ ン と そ の 発 癌 と の 関 係 が 報 告 さ れ て い な い 漿 液 性 腺 癌 培 養 細 胞 株SPAC―Lに 比 べ て , 高 分 化 型 腺 癌 培 養 株HHUAのSTS の 発 現 が 有 意 に 高 く , 高 分 化 型 腺 癌 のSTSを 介 す る エ ス ト ロ ゲ ン の 関 与 が 強 く 示 唆 さ れ た も の と 考 え た .
I
Western blot法 に て 培 養 細 胞 中 の 酵 素 夕 ン パ ク 量 を 解 析 す る と ,STS酵 素 活 性 と 相 関 し て お り , 活 性 の 差 が 主 と し て 酵 素 夕 ン バ ク 量 に 依 存 し ,STS酵 素 活 性 , 酵 素 夕 ン パ ク 質 量 が 遺 伝 子 レ ベ ル で の 調 整 に 依 存 す る こ と が 示 唆 さ れ る .
正 常 子 宮 内 膜 組 織 と 比 較 す る と 子 宮 体 癌 のSTS酵 素 活 性 が 高 く な っ て お り . さ ら に Westem blot法 に よ る 検 討 で も , 子 宮 体 癌 の 場 合 , 正 常 子 宮 内 膜 組 織 に く ら べ てSTS酵 素 夕 シ パ ク の 発 現 量 が 増 加 し て い た . し た が っ て 正 常 子 宮 内 膜 組 織 と 比 較 し て ,STS酵 素 活 性 の 上 昇 は , そ の 酵 素 発 現 量 の 増 加 に よ る も の と 考 え た .
子 宮 体 癌 の 病 理 組 織 学 的 予 後 因 子 の 中 で 組 織 学 的 分 化 度 , 核 異 型 度 の2つ に ,STS夕 ン バ ク の 発 現 と の 関 連 が み と め ら れ た が ,STSの 発 現 が 病 理 学 的 な 分 化 度 に 相 関 す る 事 が 明 ら か に な っ た .
ま た 免 疫 組 織 化 学 的 染 色 の 程 度 に よ り 分 類 し た3群 の 間 に は 臨 床 進 行 期 に 差 は な い も の の , 予 後 に 差 が あ る こ と が 明 ら か と な り , 子 宮 体 癌 に お け るSTSの 発 現 が 新 た に 子 宮 体 癌 の 予 後 因 子 の ー っ と な る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た .
結 語
STSの 免 疫 組 織 化 学 的 染 色 お よ び タ ン バ ク レ ベ ル で の 検 討 な ど に よ り , 正 常 子 宮 内 膜 組 織 のSTSの 局 在 や 月 経 周 期 に よ る 変 動 子 宮 体 癌 の 病 理 組 織 学 的 予 後 因 子 お よ び 予 後 と の 関 連 に お い て 若 干 の 新 し い 知 見 を 今 回 得 る こ と が 出 来 た ,
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