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博 士 ( 工 学 ) 松 崎 有 華

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Academic year: 2021

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博 士 ( 工 学 ) 松 崎 有 華

学 位 論 文 題 名

治 療 用 陽 子 線 の エ ネ ル ギ ー 付 与 に お け る      物 理 的 諸 過 程 の 研 究

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  放射 線の 生 物作 用は 、DNAに生じる損傷が主 たる要因であると考えられ ており、物理学的教吸 収 線量 は実 効 線量 やRBE教 どに変換して評価さ れる。しかし誼がら、90年 代から粒子線(陽子、

中 性子 誼ど ) の放 射線 荷重 係数の大き改変更 があり、最終的誼生体影響の 評価指標とをるRBEや 放射線荷重 係数教どの線量換算係数は 、あいまいを要素を多分に含んでいると考えられている。一 方、物理学 的段階では、放射線と生体 物質との間で様々を反応が起こり、多くのエネルギーを電子 に移行し、 電子はその後イオンや励起 種を多数発生する。物理学的段階および前化学的段階におけ るこれら生 成物がさらに反応を起こし 、生物学的影響へと至る。よって、生体影響の最終評価へ向 けて一次荷 電粒子による電離・励起種 の空間分布等を初期過程として評価することが非常に重要で ある。本研 究では、放射線治療におけ る陽子線に焦点をあてた。陽子線は、深部の腫瘍部に高い線 量 を与えるBragg peakを形成するため、周囲の 正常組織への被曝を低下さ せるのに有効である。

しかし、Bragg peak近傍は、入射した 陽子がェネルギーを失い停止すると同時に、核反応が多く発 生する領域 である為、物質中原子の( 核外電子)電離過程と核反応過程両方を考慮する必要がある が、これら を関連付けた定量評価が難 しいため、これまでの研究では、Bragg peak及びその周辺で のエネルギー付与過程は必ずしも明らかでは叔かった。本研究では,、モンテカルロシミュレーショ ン法を駆使 し、核反応生成物の挙動に 関する定量も含め、陽子線の減速過程において陽子が経験す るであろう 数MeV以下の低エネルギーに おける物理過程(電離・励 起、電荷交換)について、物質 深 さ方向での定量 化を行うことを目的とした。100keV以下の低エネルギー 領域における電荷交換 過程は、陽 子が周囲の水分子と電子損 失と電子捕獲を平衡状態で起こす過程であり、水素原子への 転換による 効果が無視でき誼いのでそ の影響を考慮して評価した。

シ ミュ レー シ ョン は、 汎用 モンテカルロコー ドPHn§を用い、水フんント ムモデルでの高エネル ギ ー陽 子の 挙 動を 調べ た。PHrrSに 組込 ま れて いる 電磁 相互 作 用の 計算 を担 うSPARコードでは ICRUの 阻止 能 を再 現で きを かっ た ため 、低 工ネ ルギ ー領域の陽子の挙動 を考慮したRuddモデル による半解 析的電離・励起衝突断面積 から求めた阻止能を組込むことで、より細密にエネルギー付 与過程を評 価できるようにした。

  解析 の結 果 、Braggpeak近傍 にお いて 、 多く の陽 子は、数十MeVオーダ ーの比較的高いエネル ギーを有し 、Braggpeak後の蝕l一o丘部 分においても、酸素原子と の核反応の閥エネルギー付近の 5MeV程 度の エ ネル ギー を保 有す る こと が分 かっ た。 そ のた め、Braggpeakで の核反応の発生は 顕 著で 、Braggpeak後で 急 激誼減少をしをがら も、二次粒子を発生し続け ることが明らかと叔っ た。核反応 によって発生する二次粒子 は陽子が最も多いが、その他に中性子、光子、重陽子、トリ

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トン 、ヘリ ウム核 、a粒子 、反跳 原子核 をどの発生も無視でき詮い。特に高工ネルギー陽子の核反 応か ら発生 した中性子独、数十センチ程度の水中ではほとんど滅衰せず、さらに核反応を起こし、

三次 的に陽 子やa粒 子、反 跳原子 核を発 生する。深さ方向でほとんどェネルギー分布に変化のみら れ次 い二次 中性子 による 酸素原 子との 核反応 でできる 三次陽 子は、僅か教がらもBragg peakの減 少後 の裾部 分に至るまで一定量で発生し続ける。一方、中性子と水素原子核との弾性散乱で生み出 され る反跳 陽子の 影響は 、陽子 により 発生した二次陽子の約10%程度と教り、その後、Bragg peak の滅 少後の 裾部分においては支配的と教り、ここで存在する陽子はほとんどが中性子由来の三次陽 子と:をることが明らかと:をった。

  Bragg peakの周辺 では、 吸収線量 に対す る主教 寄与は 、水分子の電離や励起過程により減速さ れた一次陽子によるもの(80−90ワD)であり、ー方で、一次陽子が引き起こした核反応により発生し た二 次・三 次陽子 は20%か ら5ワDま で線量 に対し て影響 するこ とがわ かった 。Braggpeak周辺で 発 生 す るこ れ ら の 二次 ・ 三 次 陽子 は 、 数10MeV以 下の低 エネル ギーを 有する 。これ ら低エ ネル ギー 陽子に よる電 荷交換 過程は 、線量 に対する寄与は非常に小さい。しかし、Braggpeakの末端よ り深い部分では、吸収線量はH(n,p)反応により発生した陽子によるものが主と社り、この寄与は 約70%と教っ た。ま た中性 子由来 の核反応によって発生する二次荷電粒子(主にa線)と反跳原子 核 に よ る 寄 与 を 含 め る と 、 二次 中 性 子 によ る 影 響 が約80ワ。 と 大 き いこ と が 示 唆さ れ た 。   さ らに本シ ミュレーション計算により得られた陽子のエネルギー分布と既存の電子線トラックシ ミュ レーシ ョンを 併用し て、水 分子の 電離・励起量を算出したところ、6線による電離数は一次陽 子 の 電 離数 に 対 し て、Bragg曲線 の 平 坦 を部分で は約2倍 程度で あるが 、Braggpeakに 近づく に つ れ て 滅少 し 、Braggpe心を 超 え る と1に漸 近して いくこ とが分 かった。 一方、6線によ る励起 数 は 、 一次 陽 子に よる励 起数の 約8倍か ら10倍程 度まで 変化す るが、Braggpeakの直 前で最 大と 教っていた。

  以 上のよう に、高エネルギーでの入射から停止直前の低エネルギーにわたって陽子の挙動を追跡 し、 核反応 で発生する二次陽子の影響も含めた電離・励起発生数の定量化を行うことができ、陽子 線治 療にお ける物 理過程 におけ るエネ ルギー 付与につ いて総 合的に明らかにすることができた。

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学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主査   教授   鬼柳善明 副査   教授   住吉    孝 副査   教授   古坂道弘

副査   教授   伊達広行(保健科学研究院)

学 位 論 文 題 名

治 療 用 陽 子 線 の エ ネ ル ギ ー 付 与 に お け る      物 理 的 諸 過 程 の 研 究

  放射線によるがん治療では、量子ビーム照射直後の物理学的段階において放射線と生体物質との 間で様々叔反応が起こり、多くのエネルギーを電子に移行し、電子はその後イオンや励起種を多数 発生し、それらが前化学的段階を経てさらに化学反応を起こし、生物学的影響へと至る。従って、

生体影響の評価指標の高度化に向けて、一次荷電粒子による電離・励起種の空間分布等を初期過程 として評価することが非常に重要である。放射線治療に用いられるものとして、陽子線は深部の腫 瘍部に高い線量を与えるBragg peakを形成するため、周囲の正常組織への被曝を低下させること ができるという点で有効である。本論文はこの陽子線に焦点をあてたものである。Bragg peak近 傍は、入射した陽子がェネルギーを失い停止する領域であると同時に、核反応も多く発生する領域 である為、物質中原子の(核外電子)電離過程と核反応過程の両方を考慮する必要がある。これら を関連付けた定量評価が難しいため、これまでの研究ではェネルギー付与過程は必ずしも明らかで は誼かった。そのため、本論文では、核反応生成物の発生数教どに関する定量化を行うとともに、

数MeV以下の低エネルギーにおける物理過程(電離・励起、電荷交換)について、水を生体模擬物 質として水中深さ方向で@定量化を行い、それらをもとにBraggpeak周辺における吸収線量に対 する諸過程の影響を明らかにすることを目的としている。

  シミュレーション計算には、汎用モンテカルロコードPHITSを用い、水ファントムモデルでの 高工ネルギー陽子の挙動を調べている。PHITSに組込まれている電磁相互作の計算を担うSPAR コードでは特に低エネルギー領域でICRUの阻止能を再現できをかったため、100keV以下の低エ ネルギー領域における電荷交換過程を考慮したRuddモデルによる半解析的電離・励起衝突断面積 から求めた阻止能を組込むことで、陽子と水素によるエネルギー付与過程を別々に評価できるよう にしている。

  解析の結果、Braggpeak近傍において、多くの陽子独、数10MeVオーダーの比較的高いエネ ルギーを有し、Braggpeak後のfa11‐oロ部分においても、酸素原子との核反応の閲エネルギー(約 6MeV)以上のエネルギーを持つ陽子が存在することが分かった。そのため、Braggpeakでの核反 応の発生は無視でき教いことが分かった。Braggpeak後で急激教減少をし顔がらも、二次粒子を

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発 生し続 けるこ とが明らかと教った。核反応によって発生する二次粒子は陽子が最も多いが、その 他 に中性 子、光 子、重 陽子、 トリト ン、ペリウム核、a粒子く反跳原子核顔どの発生も無視できを い 。特に 高エネ ルギー陽子の核反応から発生した中性子は、数センチ程度の水中ではほとんど減衰 せ ず、さ らに核 反応を 起こし 、三次 的に陽子やa粒子、反跳原子核を発生する。このため、深さ方 向にあまり依存し顔いエネルギー分布を持つ二次中´陸子による酸素原子との核反応でできる三次陽 子 は、僅 かをが らもBragg peakの減少 後の裾 部分に 至るま で一定量で発生し続ける。一方、中性 子 と水素 原子核 との弾 性散乱 で生み 出きれる反跳陽子の影響は、その後、Braggpeakの滅少後の裾 部 分にお いては 支配的と橡り、ここで存在する陽子はほとんどが中性子由来の三次陽子であること を 明 ら か とし て い る。Braggpeak周辺で 発生する これら の二次 ・三次 陽子は 、数10MeV以 下のエ ネ ルギー であり 、これらによる電荷交換過程の吸収線量に対する寄与は阻止能は大きいけれども結 果的に非常に小さいものであることを定量的に示している。

  さ らに陽 子のエ ネルギー分布と既存の電子線トラックシミュレーションを併用して、水分子の電 離 ・励起 量を算 出して おり、6線によ る電離 数は一次 陽子の 電離数に対して、Bragg曲線の平坦改 部 分では1.6倍程 度であ るが、Braggpeak付近で滅少し、裾部分に至ると1.2に近づくことを示し て い る 。 一方 、6線 による 励起数 は、一次 陽子に よる励 起数の 約10倍程 度で推 移する が、Bragg peak以降で9倍程度 まで減少 し一定 とをる 。さら に、こ れらを 総合的 に考慮 して吸収 線量を評価 し 、Braggpeakの 周辺に おける 吸収線 量に対する主教寄与独、水分子の電離や励起過程により減速 された一次陽子によるもの(80‐90ワD)であり、一方で、一次陽子が引き起こした核反応により発生 し た二次 ・三次 陽子は20%から5ワ。程 度の寄 与であ ること を示している。しかし、Braggpeakの 末 端より 深い部 分では、水素と中性子の弾性散乱で発生した陽子によるものが吸収線量の主たるも のをり、この寄与は約70ワ。とをった。また中性子由来の核反応によって発生する二次荷電粒子(主 にa線1と反 跳原子 核による寄与を含めると、二次中性子による影響が約80ワ。と大きいことを明ら か にした 。さら に、こ の領域 では、 反跳核やa粒子のようを重イオンが生物学的効果比の増大に寄 与していることを示している。

  以 上要す るに、 本論文は陽子線治療における陽子線の挙動について、高エネルギーから停止直前 の 低エネ ルギー に至るまでの広いエネルギー範囲で陽子線の挙動を核反応を含めて解析し、物理過 程 におけ るエネ ルギー付与過程を詳細に明らかにしたもので、放射線医療工学に対する貢献大であ り、北海道大学博士(工学)を授与するに値すると認める。

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参照

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