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ラット膵臓腺房細胞における刺激一放出連関 に 及ぼす 細胞外

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Academic year: 2021

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博 士 ( 獣 医 学 ) 浅 田 尚 登

学 位 論 文 題 名

ラット膵臓腺房細胞における刺激一放出連関 に 及ぼす 細胞外 pH 変化の影響

学位論文内容の要旨

  膵 腺房 細胞 に おけ る刺 激 ―放 出連 関 にお ける エ ネル ギ一 供給,細胞内Ca2゛イオン 動態にっい て の 理解 を深 めるた め,酵素分泌過程 および,細胞質内Caz゛濃度 ([Ca2゛]。)動態 ,ミトコン ド リ ア呼 吸に た いす る細 胞 外pH(pHオ )変 化の 影 響を 調ベ , 総合 的に 解 析す ること を目的に,

ラ ッ ト摘 出潅 流 膵標 本を 用 いて ,ミ トコンドリ ア内チトク口ム酵 素酸化還元位,酸素 消費量,及 び, 水および酵素放出 を,また,コラゲ ナーゼ処理によって 得たラット膵分離 腺房標本を用いて,

酵 素 放 出 , 細 胞 内pH(pHよ ) , 細 胞 質 内[Ca2゛ ] 動 態 , 細胞 内へ のCaz゛ 流入 を測 定 した 。   ラ ット 摘出 潅 流膵 標本 で ,血 管潅 流液のpHを7.3から6.8に下 降させるとミ卜コン ドリア内チ ト ク 口 ムa(a3) ,b,c十clの 酸 化 還 元 位 が す べ て 酸 化 方向 に 変化 した 。pHオ を6.Oにま で 下 降 させ ると チ トク 口ム 酵 素群 の酸 化変化はよ り大きくなった。pH,を8.Oへ上昇さ せるとチト ク 口 ム 酵 素 群 の 還 元 変 化 が 引 き 起 こ さ れ た 。BCECF(2,7−bis(2‑ carboxyethyl)−5 (6)―carboxyfluorescein)を 負 荷 し た 分 離 腺 房 標 本 を 用 い て 調 べ たpH,は , 標 準状 態(pHオ 7.4)においては7. 41土O.03(n二二8)であった。pHオ6.2〜8.Oの範囲では,pH,はpHオ上昇に 従 っ て ほ ぼ 直 線 的 に 上 昇 し , そ の 傾き は 約0.3で あ った 。以 上 の結 果か らpHオ 変化 に 伴っ て pH, が変 化し , その 結果 と して ミト コ ンド リア 内 膜で のH゛濃度 勾配が変化すること で,ミトコ ンド リア内での電子伝 達量が変化してい ることが示唆された 。

  摘 出 潅 流 膵 標 本 を 使 っ て 膵 液 , 酵素 放 出反 応を 調 べた とこ ろ ,刺 激開 始 前の 静止 時 放出 は pHオ6.8および6.0に おいてpHオ7.3で の放出に比べ有意に 低下した。最大放 出反応を引き起こす lOOpM CCK―8持 続刺 激に 応 じた 放出 反 応は ,pH,6.Oまた は8.Oにお い てpHオ7.3での放出反 応に 比べて有意に低下 した。一方,分離 腺房標本の表面潅流 実験では,pH。6.0への下降により,

lOOpM CCK ‑8刺 激 に 応 じ た ア ミ ラ ー ゼ 放 出 経 過 の 後 半 の プ ラ ト 一 部 分 で の み 抑制 が 認め ら れ , 静止 時放 出 に変 化は 認 めら れな かった。pHオ8.Oへの上昇に よっては,アミラー ゼ放出反応 がpH,7.4で の 放出 反応 よ りも わず か に増 大す る 傾向 が認 め られ た。 こ れら のpHオ 変化の放出

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反 応 にた いす る 効果 の違 い は,おそらく 実験に用いた標本系 および実験プ口ト コルの違いによる もの と思われる。

  摘 出 潅 流 膵 標 本 で は ,20pM CCK ‑8刺 激 に 応 じた 持 続性 の放 出 反応 の大 部 分は 潅流 液 から Caz+を 除 く こ と で 抑 制 さ れ た 。 し か し , 細 胞 外 液にCa2゛(2. 5mM)を 戻す と 刺激 終了 後 でも 放 出 反応 が再 び 引き 起こ さ れた(Ca2゛ 再導 入反 応 )。 分離 腺 房標 本を 用 いた 実験 で は,lOOpM CCK−8刺 激終 了 後に ,pH,6.Oから 標 準pHオ(7,4) へ戻 す こと でア ミラー ゼ放出反応が再び 引 き 起こ され た 。こ の反 応 は細 胞外Caz゛ に 依存 して お り, 摘出 潅 流膵 標本で見られたCa2゛再 導入 による放出反応と 類似していた。一 方,pHオ8,Oにおい て分泌刺激終了後 も持続するアミラー ゼ 放 出は ,細 胞 外Caz゛を 除く こ とで 消失 し た。 これ ら の結 果は , 低pHオ条 件 下で は刺 激 に応 じ た 腺 房 細 胞 へ のCa2゛ 流 入が 抑制 さ れる こと , かっ ,高pHオ条 件下 で はCa2゛流 入が 促 進さ れて いることを示唆し た。

  Ca2+螢 光 指 示 薬 で あ るfura ‑2を 負 荷し た分 離 腺房 標本 を 用い て,[Ca2+] 画像 解析 装 置お よび ,[Caz゛]顕微測定により 腺房細胞の[Ca2゛]オ動態 を調べたところ,分離膵腺房標本を100 pM CCK−8で持 続刺 激 した とき ,ECa2゛] オ は最 初に急速に 最大値に達し(初 期相),続いて緩 や か に下 降し な がら 静止 時 の2〜3倍の値 を刺激中維持(二次 相)した。pHオを7.4から6.0へ下 降さ せると,ECa2゛] オ変化の初期相に 続く緩やかな下降が 加速され,刺激持 続中にもかかわらず

[Ca2゛]オは静止時レベルにまで低下した。しかし,pHオを6.0から7.4へ戻すことで,[Ca2゛]オ は 再 び上 昇し て 静止 時の2倍程 度 の値 に達 し た。 反対にpHオ を8.Oへ上昇させ ると,初期相に続 く[Caz゛]。の緩やか な下降が減速され ,[Ca2゛]。は刺激 持続中,高い値を 維持した。その後,

pH, を7.4に戻すこと で[Ca2゛ ]。は速やかに下 降した。これらの [Ca2゛] オ反応の時間経過は lOOpM CCK−8刺 激 に 応 じ た分 離 腺房 標本 か らの アミ ラ ―ゼ 放出 の 時間 経過 と 相似 して い た。

CCKの生 理 的濃 度で あ るlOpMのCCK・8持続 刺 激に 応じ た [Caz゛] 。振 動 性変 動( [Ca2゛ ]。

振 動 )におい ては,pHオの6.0へ の下降により[Ca2゛]オス パイクの頻度が有 意に滅少し,また ス パ イク の高 さ が次 第に 減 衰した。pHオ の8.Oへの上昇によ りいくっかの例で[Ca2゛]オスパイ ク 頻 度 が 増 大 し た がpH,7.4で の 反 応 に 比 べ 有 意 な 差 は 認 め ら れ な か っ た 。   分 泌刺激に 応じた[Ca2゛]。の 二次相上昇および ,ECaz゛]。振動 が細胞外からのCa2゛の流入 に よ り維 持さ れ るこ とか ら ,細 胞外 か らのCa2゛ 流入 に たい するpHオ変 化の 影 響を ,細 胞 外に 添 加 し たMn2゛ に よ る340nm光 で 励 起 し たfura―2の 螢 光 の 消 光 (Mn2゛ 消 光 法(Mn2十 ・ quenching)) を 目 安 に 調 べ た 。pHオ を6.Oへ 下 降 さ せ る と ,lOOpM CCK―8持 続 刺 激 中 の Mn2゛ 流 入 に よ る 消 光 はpHオ7.4で の 消 光 進 行 に 比 べ 抑 制 さ れ た 。 反 対 に ,pHオ8.0で は

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Mn2゛ に よ る 消 光1ま 促 進され た。 これら の結果 はpHオ の下降 ,上昇 により 分泌 刺激に 応じた 腺 房 細 胞 内 へ のCa2゛ 流 入が 抑 制 , ま たは 促 進 さ れ るこ と を 示 し てい る 。lOpM CCK―8刺 激 時 のRIr12゛ 流 入 に よ るfura―2螢 光 の 消 光 に っ い て も , 同 様 の 結 果 が 得 ら れ た 。   以 上の結 果に基 づいて 以下 のよう に推論 した。1)pHオを 変化さ せるこ とで細 胞膜で ,Na゛ . H゛交換 の変化 を介 して細 胞内H゛濃 度の変 化がも たらさ れる 。細胞 内H゛濃度 変化は ミトコ ンド リア 内膜 に作用 を及ぼ し,ミ トコン ドリ アでの 電子伝 達(チ トク 口ム酵 素酸化還元状態),酸素 消 費 量 の変 化 が 引 き 起こ さ れ る 。2) 分 泌 刺 激 に 応じ た 細 胞 内 へのCa2゛流入 は低pHオ条件 下 で は 抑 制さ れ る 。 反 対に , 高pHオ条 件 下 で はCa2゛ 流 入 は促 進 さ れ る。3) pH,を 下降さ せた 時 の 膵 腺房 細 胞 か ら の酵 素 , 電 解 質 放出 反 応 の 抑 制は ,Ca2゛ 流 入 が 抑 制 され た こ と に よる ECa2+]。 上昇の 抑制に よる。

学位論文審査の要旨 主 査    教 授    菅 野 富 夫 副 査    教 授    中 里 幸 和 副 査    教 授    斉 藤 昌 之 副査    助教授    原田悦守

  膵 腺房細 胞にお ける刺 激― 放出連 関にお けるエ ネルギ ―供 給,細 胞内Ca2゛イ オン動 態に っい ての 理解 を深めるために,酵素分泌過程および,細胞質内Ca2゛濃度(ECa2゛]。)動態,ミト‐コ ンド リア 呼吸に たいす る細胞 外pH (pHオ )変 化の影 響を調 べた。

  ラ ット摘 出潅流 膵標本 で, 血管潅 流液のpHを7.3から6.8に下 降させ るとミトコンドリア内チ ト ク 口 ムa(a3) ,b,c十clの 酸 化 還 元位 が す べ て 酸化 方 向 に 変 化 した 。pHオを6.Oに まで 下降 させ るとチ トク口 ム酵素 群の酸化変化はより大きくなった。 pHオを8.Oへ上昇させるとチト ク ロ ム 酵素 群 の 還 元 変化が 引き起 こさ れた。 分離腺 房標本 を用い て細 胞内pH(pH,) を測定 す ると ,標 準状態(pHオ7.4)に おいては7.41土O.03(n二二8)であった。pHオ6.2〜8.0の範囲で は ,pH, はpHオ上 昇 に 従って ほぼ直 線的に 上昇し ,そ の傾き は約O.3であ った。 以上の 結果か らpHオ変 化 に 伴 っ てpH, が 変 化し , そ の 結 果とし てミト コンド リア 内膜で のH゛濃度 勾配が 変 化 す る こ と で , ミ ト コ ン ド リ ア 内 で の 電 子 伝 達 量 が 変 化 し て い る こ と が 示 唆 さ れ た 。

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  摘 出 潅 流 膵 標 本 を 使 っ て膵 液 ,酵 素放 出 反応 を調 べ たと ころ ,CCK−8に よ る刺 激開 始 前の 静止時 放出は,pHオ6.8お よびG.0においてpHオ7.3での放出 に比べ有意に低下し た。最大放出反 応 を 引 き 起 こ す100pMCCK―8持 続 刺 激 に 応 じ た 放 出 反 応 は ,pHオ6.Oま た は8.Oに お い て pHオ7.3での放出反応に比 べて有意に低下した。一方,分離腺房標本の表面潅流実験では,pHオ6.O へ の下 降 によ り,100pIx4 CCK―8刺 激に 応 じた アミ ラ ーゼ 放出 経 過の 後半の プラトー部分での み 抑制 が 認め られ , 静止 時放 出に変化は 認められなかった 。pHオ8.0への上昇 によっては,アミ ラ ー ゼ 放 出 反 応 がpHオ7.4で の 放 出 反 応 よ り も わ ず か に 増 大 す る 傾 向 が 認 め ら れ た 。   Ca2+螢 光指 示 薬で あるfura・2を負 荷し た 分離 腺房 標 本を 用い て ,ECaz゛ ] 画像 解析 装 置お よび,[Caz+]顕 微測定により腺房 細胞の[C,a2゛]。 動態を調べたとこ ろ,分離腺膵房標本を100 pM CCK・8で 持 続刺 激し た とき ,[Ca2゛ ]。は最初に急速 に最大値に達し(初 期相),続いて緩 や かに 下 降し なが ら 静止 時の2〜3倍 の値 を 刺激 中維 持 (二 次栢 ) した 。pHオ を7.4から6.Oヘ 下 降さ せると ,[Ca2゛ ]オ変化の初期相 に続く緩やかな下 降が加速され刺激持 続中にもかかわら ず [Caz゛ ]オ は静 止 時レ ペル に まで 低下 し た。 しか し ,pHオを6.Oか ら7.4へ戻 すこ と で,

[Ca2゛ ]。は 再び上昇して静止 時の2倍程 度の値に達した。 反対にpHオを8.Oヘ .ヒ肄させると,

初期相に続く[Ca2゛]。の緩やかな下降が減速され,[Ca2゛]。は刺激持続中,高い値を維持した。

その後 ,pHオを7.4に戻す ことで[Caz゛]オは速やかに下降した。これらの[Ca2゛]″反応の時間 経 過 はlOOpM CCK・8刺 激 に応 じ た分 離腺 房 標本 から の アミ ラー ゼ 放出 の時 間 経過 と相 似 して い た 。CCKの 生 理 的 濃 度 で あ るlOpMのCCK―8持 続 刺 激 に 応 じ た [Ca2゛] 。 振動 性変 動 につ い ては ,pHオ の6.Oへの下降に より[Ca2゛]。スパイクの 頻度が有意に減少し ,またスパイクの 高 さが 次第に 減衰した。pHオの8.Oへの上昇により いくっかの例で[Caz゛]。 スパイク頻度が増 大した がpHオ7.4での反応 に比べ有意な差は 認められなかった 。

  以 上の 結果 に 基づ いて , 申請 者は 次 のよ うに 推 論し てい る 。1)pHオ を変 化 させ るこ と で,

細 胞膜 でNa゛ ―H゛ 交換 の 変化 を介 し て細 胞内H゛濃 度の変化がもた らされる。細胞内H゛濃度変 化 はミ ト コン ドリ ア 内膜 に作 用を及ぼし ミトコンドリアで の電子伝達(チトク 口ム酵素酸化還元 状 態 ), 酸素 消 費量 の変 化 が引 き起 こ され る。2)分泌 刺激 に 応じ た細 胞 内へ のCa2゛流 入 は低 pHオ 条 件 下 で は 抑 制 さ れ る。 反 対に ,高pHオ条 件下 で はCa2゛流 入は 促 進さ れる 。3)pHオを 下 降さ せ た時 の膵 腺 房細 胞か ら の酵 素, 電 解質 放出 反応の抑制は,Caz゛流入 が抑制されたこと に よる[Caz+] オ上 昇の 抑 制に よる 。 これ らは , 膵臓腺房 細胞の刺激―放出連 関にっいての新し い 見解 を 含む もの で あり ,審 査員一同は 浅田尚登氏が博士 (獣医学)の学位を 受けるに十分な資 格を有 するものと認めた。

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