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学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 野上彩子 論文審査担当者 主査神奈木真理 副査北川昌伸 東田修二 論文題目 FLT3-ITD confers resistance to the PI3K/Akt pathway inhibitors by protecting the mtor/4ebp1/m

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Academic year: 2021

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学位論文の内容の要旨

論 文 提 出 者 氏 名 野上 彩子

論 文 審 査 担 当 者 主 査 神奈木 真理

副 査 北川 昌伸、東田 修二

論 文 題 目

FLT3-ITD confers resistance to the PI3K/Akt pathway inhibitors by protecting the mTOR/4EBP1/Mcl-1 pathway through STAT5 activation in acute myeloid leukemia

(論文内容の要旨) <要旨> FLT3-ITD と FLT3-TKD は急性骨髄性白血病(AML)で最もよく認めるチロシンキナーゼ型受 容体の変異で、特にFLT3-ITD 変異を有する患者は治療抵抗性を示し予後不良因子として知られ て い る 。 近 年 、FLT3 阻害薬が開発され、単剤や TKI との併用による FLT3-ITD 陽性 AML(ITD+AML)に対する臨床治験結果が蓄積されつつあるが、未だ十分な長期的効果を認めて いない。本研究では、この治療抵抗性の機構を解明し、ITD+AML に対する新規治療法を早期に 開発することを目的とした。我々は、マウス造血前駆細胞株32D にこれらの変異遺伝子を導入し た検討や、ITD+AML 患者より得た初代培養細胞を用いた検討により以下の結論を導いた。即ち、

FLT3-ITD の強い STAT5 活性化が mTORC1/4EBP1 経路を通じて翻訳開始複合体形成に影響を 与え、PI3K/Akt 阻害薬に対しては、抗アポトーシス因子 Mcl-1 の cap 依存性の翻訳活性を維持 することが治療抵抗性の機序のひとつとして考えられる。 <緒言> FLT3 は哺乳類に広く存在する II 型受容体型チロシンキナーゼで、ヒトでは胎生期の正常造血 に関与する。本邦のAML 患者の腫瘍細胞では、約 70%の患者に FLT3 の発現があり、約 20%に FLT3-ITD 変異が、約 7%に FLT3-TKD 変異があるとの報告がある。特に前者は治療抵抗性を示 し、予後不良因子として知られ、後者の予後については十分には知られていない。FLT3 は FLT3 Ligand との結合で活性化するが、これらの変異体では下流シグナルが常時活性化しており、 FLT3-ITD では STAT5 経路が FLT3-TKD では MEK 経路がより強く活性化している。近年、 FLT3-ITD 陽性 AML (ITD+AML)を適応として新規の TKI や FLT3 阻害薬が開発され、その臨床

試験が施行されているが、単剤での効果に乏しく、長期的に予後を改善する治療方法の確立には 未だ至っていない。我々は、STAT5 の強い活性化が ITD+AML の薬剤抵抗性に深く関与している

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- 2 - と考え、FLT3-ITD および FLT3-TKD 陽性細胞を用い分子標的治療薬の FLT3 受容体シグナルに 与える影響を比較検討してその機構を解明し、ITD+AML の効果的な治療法を提示することを目 的とした。 <方法> マウス造血前駆細胞株 32DCl3 は 10%FCS 含有 RPMI1640 に WEHI(IL-3 含有培養上清)を添加し た培地で、PLAT-A は 10%FCS 含有 DMEM で培養した。

FLT3-ITD 陽性白血病患者の末梢血の単核球層を Ficoll 法にて分取し、cDNA を分離して RT-PCR により ITD 陽性を確認した。PCR 産物を TA-cloning して塩基配列を決定した。

細胞の生存率および増殖の検討では、Trypan blue で分染して細胞数を計測する方法と、XTT 法 を用いた。相乗効果は Compu Syn で解析した。細胞周期の解析は Krishan’s 試薬を用い、 FACS-Calibur で検出した。

細胞の作製では、PLAT-A にリポフェクタミン法にてレトロウィルスベクターを導入し、目的 の細胞に感染させた。

plasmid の作製では、レトロウィルスベクターの pRevTRE-FLT3-ITD は pRevTRE (Clontech 社) に pcDNA3-FLT3-ITD (Dr. F. Böhmer より供与) を、pRevTRE-FLT3-D835Y は FLT3-D835Y 陽性患 者検体から得た配列を pRevTRE-FLT3-ITD にサブクローニングした。

免疫沈降では、細胞の Lysate に特異的抗体と Protein-A sepharose を混合、Cap 結合の検討は m7GTP-sepharose を混合した後に 4℃で一晩撹拌し、1XLaemmli’s buffer で溶出して Immunoblot に供した。

Bax と Caspase の活性化は、特異的抗体で細胞内を染色し、 FACS-Calibur で検出した。ミトコ ンドリア膜電位は、DiOc6 試薬で染色した後、FACS-Calibur で検出した。 <結論> マウス造血前駆細胞32D 細胞に変異遺伝子、FLT3-ITD と FLT3-TKD を導入して 32D/ITD お よび32D/TKD 細胞を作製し以下の検討を行った。即ち、PI3K 阻害薬の GDC-0941 (GDC)およ びAkt 阻害薬の MK-2206 (MK)は内因性経路によるアポトーシスを誘導し、その効果は 32D/ITD に比べ、32D/TKD で強かった。また、32D/TKD に STAT5 の活性化型変異体 STAT5A1*6 を導 入した細胞 (DY/STAT5*)では、阻害薬に抵抗性となり、32D/ITD に STAT5 阻害薬である pimozide (PZD)を処理すると抵抗性が解除された。同様の効果を FLT3-ITD 陽性ヒト白血病細胞 株MV4-11 で認めた。これらの薬剤は 4EBP-1 の脱リン酸化を 32D/ITD に比して 32D/TKD で 強く誘導し、その効果はSTAT5A1*6 導入で減弱し、PZD 処理で増大した。これに伴って、翻訳 開始複合体形成におけるeIF4E-eIF4G 会合や抗アポトーシス因子 Mcl-1 の発現の抑制を認めた。

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このMcl-1 の発現抑制は転写活性の抑制やタンパク質の不安定化とは独立した機構で生じ、外因 性にMcl-1 遺伝子を導入した 32D/TKD ではこれらの薬剤に抵抗性を示した。FLT3-ITD 陽性の AML 患者より得た初代培養細胞では、GDC による 4EBP-1 の脱リン酸化と Mcl-1 の発現抑制、 ひいては細胞死を、PZD 処理でより強力に誘導することを確認した。本研究結果は、FLT3-ITD の強いSTAT5 活性化が mTORC1/4EBP1 経路を通じて eIF4E 会合に影響を与え、PI3K/Akt 阻 害薬に対し、主にMcl-1 cap 依存性の翻訳活性を維持することでアポトーシスを回避することを 示している。

<考察>

Mcl-1 は半減期が短く、刺激に応じて転写、翻訳、翻訳後の各段階で速やかに調節されている。 32D/ITD や DY/STAT5*で GDC や MK による Akt のリン酸化が同等に抑制されたことから、 Mcl-1 の発現抑制の差を転写反応の抑制では説明できない。また、GDC による Mcl-1 抑制作用は 転写抑制薬Actinomycin D 処理した 32D/TKD でも認めた。以上より、Mcl-1 発現抑制は少なく とも一部には転写後の機構を介することが示唆された。 Mcl-1 は Caspase や、ユビキチン/プロテオソーム経路による分解を受ける。本研究で、GDC による Mcl-1 発現減少は、caspase 切断より早期に認め、翻訳阻害薬である CHX 処理をした細 胞でも明らかな影響を及ぼさなかった。また、32D/TKD に外因性に Mcl-1 を導入しても GDC や MK による影響を認めなかったことから、Mcl-1 発現減少では翻訳後の機構は有意な役割を果た さないことが示唆された。以上より、PI3K 阻害薬による Mcl-1 発現抑制の感受性の差異は、主 に翻訳レベルで生じることが示唆された。

Mcl-1 の mRNA には、長く GC 豊富な5‘UTR があり、cap 依存性翻訳を担う eIF4F 複合体 に制御され、mTOR 経路の抑制によって生じる 4EBP1 の低リン酸化状態と競合している。我々 はPI3K/Akt 阻害薬による 4EBP1 の脱リン酸化と Mcl-1 発現減少が関連し、eIF4F 複合体形成 抑制作用は、32D/ITD や DY/STAT5*では抵抗性であることを確認した。従ってこれら細胞では、 STAT5 活性化による 4EBP1 のリン酸化を通じ eIF4E/G 複合体を保持によって Mcl-1mRNA の cap 依存性の翻訳を維持する。

さらに、ITD の下流で STAT5 を介して発現増強する Pim キナーゼ群は、mTORC1/4EBP1 経 路を活性化するとの報告があり、我々は、STAT5 による eIF4F 複合体保護の機構において、そ の関与を検討している。

PI3K/Akt 阻害薬は FLT3-ITD 陽性 AML (ITD+AML)の治験において作用が弱く、他の活性化

経路の存在が指摘されている。本研究では、4EBP1/eIF4E/Mcl1 の STAT5 を介した活性化維持 が ITD+AML の治療抵抗性の機構として示し、PI3K/Akt 阻害薬の細胞死誘導作用における相乗

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- 4 - いて示した。

ITD+AML の初代培養細胞で 4EBP1/Mcl-1 経路や細胞生存率に対する GDC と PZD の相乗的

併用効果を認めたことは重要な知見である。この症例は白血化、高いアリル比 と TKD1 への挿 入配列を認め、FLT3 が常時活性化していた。このタイプの挿入配列を有する症例は非常に予後 不良で同種骨髄幹細胞移植後も生存困難である。近い将来、臨床試験でこのPI3K/Akt 阻害薬と STAT5 阻害薬の併用という新規治療戦略を詳細に検証することが望まれる。

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論文審査の要旨および担当者

報 告 番 号 甲 第 号 野上 彩子 論文審査担当者 主 査 神奈木 真理 副 査 北川 昌伸、東田 修二 (論文審査の要旨) 1.論文内容

本論文は、チロシンキナーゼ型受容体 FLT3 の internal tandem duplication (ITD)変異を持つ 急性骨髄性白血病(AML)細胞が PI3K/Akt 阻害薬に対して抵抗性となる分子機序を明らかにし、従 来の PI3K/Akt 経路に加え STAT5 経路の阻害が治療効果を改善する可能性を示した論文である。 2.論文審査 1)研究目的の先駆性・独創性 AML で異常の認められるチロシンキナーゼ型受容体 FLT3 の変異のうち ITD 変異は最も頻度が 高く治療に抵抗性を示すことが知られている。FLT3-ITD 変異では、FLT3 下流の PI3K/Akt, MEK/ERK 経路が恒常的に活性化する他、STAT5 経路が強く活性化されている。申請者は、本研究 で FLT3-ITD を発現する細胞株を作成し、FLT3-ITD の薬剤抵抗性機序を検討した。 2)学術および社会的意義 本研究で得られた主な結果は以下の通りである。 1. FLT3-ITD変異を持つ細胞ではPI3K/Akt阻害薬によるアポトーシスに抵抗性となる。 2. PI3K/Akt阻害薬にSTAT5阻害薬pimozide(PZD)を加えると、FLT3-ITD変異細胞のアポトー シスが誘導された。 3. FLT3-ITD変異では、強いSTAT5活性によりmTORC1/4EBP1経路を通じてMcl-1蛋白の翻訳が 維持されアポトーシスに抵抗性となることが示唆された。 3)研究方法・倫理観 マウス造血前駆細胞32D細胞に変異型FLT3-ITDとFLT3-TKDを導入した細胞株を用いて、イムノ ブロット法、フローサイトメトリーにより下流シグナルの解析を行った。また、得られた知見 と阻害剤の効果をAMLの患者検体を用いin vitroで確認した。データは明瞭であり申請者の技術 と研究遂行能力が十分に高いことがうかがわれた。 4)考察・今後の発展性 本研究によりFLT3-ITDの治療抵抗性機序にSTAT5—mTORC1-4EBP1-Mcl-1経路が関与することが 明らかとなった。これは今後、FLT3-ITD を有するAMLへの治療にSTAT5阻害剤の併用の有効性を 示唆する重要な根拠となる。

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( 2 ) 3.審査結果

以上を踏まえ、本論文は博士(医学)の学位を申請するのに十分な価値があるものと認められ た。

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