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Title 境界音場制御の原理に基づくアクティブノイズコントロールに関する研究 ( Dissertation_ 全文 ) Author(s) 仲島, 崇博 Citation Kyoto University ( 京都大学 ) Issue Date URL

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全文

(1)

Author(s) 仲島, 崇博

Citation Kyoto University (京都大学)

Issue Date 2010-03-23

URL https://doi.org/10.14989/doctor.k15358

Right

Type Thesis or Dissertation

Textversion author

(2)

境界音場制御の原理に基づく

アクティブノイズコントロールに関する研究

(3)
(4)

i

目 次

1 章 序論 1 1.1 はじめに . . . . 1 1.2 ANCシステムの構成 . . . . 1 1.3 ANCの適用例の分類 . . . . 4 1.4 境界音場制御の原理に基づく ANC . . . . 7 1.5 研究の目的と論文の構成 . . . . 8 第2 章 境界音場制御における境界の離散化と制御効果の関係 11 2.1 概要 . . . . 11 2.2 理論的検討 . . . . 11 2.2.1 Quiet Zoneの推定式の一般化 . . . . 11 2.2.2 既存の定式化との比較 . . . . 16 2.2.3 境界の離散化と領域内での騒音低減量の関係 . . . . 17 2.3 二次元拡散音場における数値計算 . . . . 19 2.3.1 既存の数値計算との比較 . . . . 19 2.3.2 円形領域を制御するために必要なエラーセンサ数 . . . . 20 2.4 結論 . . . . 24 第3 章 開口において騒音を反射する能動制御に関する実験的検討 25 3.1 概要 . . . . 25 3.2 実験 . . . . 26 3.2.1 実験条件 . . . . 26 3.2.2 ANCシステムの配置と騒音低減量の関係 . . . . 27 3.2.3 騒音源位置と騒音低減量の関係 . . . . 31 3.2.4 開口付近における音響インテンシティ分布 . . . . 32 3.2.5 ノイズセンサの配置 . . . . 36 3.2.6 二つの ANC ユニットを用いた制御 . . . . 37 3.3 結論 . . . . 40

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4 章 Active Noise Reflection Unit に関する検討 41 4.1 はじめに . . . . 41 4.2 数値計算 . . . . 41 4.2.1 計算条件 . . . . 41 4.2.2 騒音低減量の空間分布 . . . . 43 4.2.3 インテンシティの空間分布 . . . . 46 4.3 実験的検討 . . . . 48 4.3.1 ANRUの構成 . . . . 48 4.3.2 実験条件 . . . . 49 4.3.3 音圧分布 . . . . 50 4.3.4 インテンシティ分布 . . . . 50 4.3.5 放射・入射エネルギーの測定 . . . . 53 4.4 結論 . . . . 56 第5 章 遠距離場において騒音を低減するアクティブ防音塀 57 5.1 はじめに . . . . 57 5.2 提案手法 . . . . 57 5.3 制御後の音圧の計算手順 . . . . 59 5.4 数値計算による提案手法の検証 . . . . 61 5.4.1 計算条件 . . . . 61 5.4.2 一つのフィードバックシステムを用いた制御 . . . . 61 5.4.3 二次音源出力の増幅率と騒音低減量の関係 . . . . 62 5.4.4 制御音の平均音圧レベルと騒音低減量の関係 . . . . 66 5.4.5 騒音低減量の空間分布及び周波数特性 . . . . 68 5.4.6 複数の騒音源位置に対する騒音低減量 . . . . 69 5.5 二つのフィードバックシステムを用いた制御 . . . . 70 5.6 結論 . . . . 74 第6 章 結論 75 参考文献 77 謝辞 81 研究業績 83

(6)

1

1

章 序論

1.1

はじめに

日常生活において音は人と非常に密接なつながりがあり,情報伝達,危険察知,方向探索, 余暇等に不可欠な存在である。しかし,これらの音は全て騒音となり得る。総務省の公害等調 査委員会は典型 7 公害に対する苦情件数を公開しており,騒音に対する苦情は平成 11 年度の 12,089件まで減少傾向が続いたものの,それ以降増加傾向にあり,平成 20 年度の苦情件数は大 気汚染に次ぐ 15,211 件と典型 7 公害苦情全件数の 25.5 %である [1]。 騒音は自動車騒音,楽器音,話し声,航空機のソニックブーム等,音響特性や発生場所は非常 に多岐にわたり,また,様々な環境的制約があるため,それぞれの状況に応じた対策が必要で ある。近年注目されている騒音制御技術の一つにアクティブノイズコントロール (Active Noise Control : ANC,能動騒音制御) がある。従来のパッシブな騒音制御技術は,グラスウール等を 設置することによって吸音を行う,空気層を挟んだ二重構造にすることによって遮音性能を向 上させる等があげられるが,低周波数騒音を低減するためには容積が必要となるという欠点が ある [2]。ANC は騒音と同振幅,逆位相の音信号を二次音源を用いて付加することによって,騒 音を低減する技術であり,低周波数騒音の低減を得意としていることから,パッシブな騒音制 御技術の欠点を補うことが可能である。 本研究では,境界音場制御の原理を ANC に導入し,開口から放射される騒音を低減するこ と,騒音を反射する面を生成し防音塀として使用することを提案する。また,二次音源出力を 増幅したフィードバックシステムを用いて,防音塀を回折する騒音を遠距離場で低減すること を提案する。

1.2 ANC

システムの構成

ANCのアイデアは古く,1936 年に Paul Lueg によってアメリカにおいて特許が取得されて いる [3]。また,Olson と May は 1956 年に電子吸音器 (electric sound absorber) を提案している [4]。以来,物理的な側面からは多くの研究が成果をあげてきたが,技術的な意味での ANC の成 功は,近年のディジタル信号処理技術の発展を待たなければならなかった。ANC の物理的な原

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騒音信号 制御信号 時間 音圧 図 1.1: ANC の物理的原理 ノイズセンサ ディジタルフィルタ C LMS エラーセンサ 二次音源 騒音源 騒音信号 制御信号 図 1.2: filtered-x LMS アルゴリズムを用いたフィードフォワードシステム フィルタ エラーセンサ 二次音源 騒音源 騒音信号 制御信号 図 1.3: フィードバックシステム

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1.2. ANCシステムの構成 3 理は,騒音信号と同振幅,逆位相の信号 (制御信号) を二次音源を用いて付加することによって 騒音信号を打ち消すことであり,制御システムはフィードフォワードシステム,フィードバッ クシステム [5],及び,両者のハイブリッド [6] に分類される。 いずれのシステムもエラーセンサ地点において観測される信号が最小となるようフィルタを 決定する。フィードフォワードシステムは騒音源からエラーセンサまでの音響的な伝達経路に対 して正負が反転した特性を持つ経路をフィルタを用いて実現することによって,エラーセンサ 地点において騒音を打ち消す。ディジタルフィルタの利点は,その特性を自由に変更出来ること であり,温度や騒音源位置によって変化する音響伝達特性に追従することで高い制御効果が実 現可能である。フィルタを最適な状態に保つためのアルゴリズムは様々提案されているが,代表 的なものに filtered-x LMS アルゴリズム [7] があげられる。filtered-x LMS アルゴリズムは LMS アルゴリズム一つ,FIR フィルタ二つで実現でき,単純な構成とその汎用性の高さからフィード フォワードシステムの実用化の土台を築くこととなった。3 章の実験においても filtered-x LMS アルゴリズムを使用しているのだが,サンプリング周波数 2 kHz,タップ数 768 のシステムで は乗算と加算が 1 秒間にそれぞれ 4,608,000 回必要である。この演算量の多さが実用化の障害と なっていたが,1980 年代後半の DSP デバイスの飛躍的な発展が ANC を実用化へと導いた。 フィードフォワードシステムはノイズセンサとエラーセンサの二つのセンサを持つのだが, フィードバックシステムではセンサは一つのみであり,システムを簡略化できるという利点が ある。また,フィードバックシステムは騒音源からエラーセンサまでの経路に関係なく制御が可 能であることから,騒音源が移動するような条件でも使用可能である。フィードバックシステ ムで高い制御効果を得るためにはフィルタのゲインを高くする必要があるのだが,系が不安定 になりハウリングを引き起こすことを防ぐためにはゲインは小さい方が望ましいという相反す る要求がある。フィルタの設計手法は,古典制御理論,現代制御理論,ロバスト制御理論に分け られ,現在,ロバスト制御理論を使用することが標準的な設計手法となりつつある [8]。フィー ドフォワードシステムではノイズセンサによって二次音源よりも騒音源側において騒音源信号 を取得するため,騒音が伝搬する間に計算を実行できるのだが,フィードバックシステムでは センサが一つであり騒音信号をセンサが取得した時点で騒音はセンサ地点に到達している。そ のため,エラーセンサを二次音源の近傍に設置する,AD/DA 変換が不必要なアナログフィル タを使用する等,遅延を小さくする工夫が必要である。また,遅延が大きなシステムでは制御 対象となる騒音が周期性のあるものに限られてしまうといった欠点がある。 二次音源やエラーセンサが一つのシステムはシングルチャンネルシステムと呼ばれ,それら が複数個のシステムはマルチチャンネルシステムと呼ばれる。filtered-x LMS アルゴリズムをマ ルチチャンネルへと拡張したものが Mulitple Error LMS アルゴリズムである [9]。マルチチャン ネル制御を実現するためのアルゴリズムはあるのだが,それを実現するために必要な演算量の

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多さが問題となる。4 章の実験では 1 – 6 – 5 (ノイズセンサ数 – 二次音源数– エラーセンサ数) システムを使用しているのだが,シングルチャンネルシステムの 22 倍の演算量が必要である。 3章の実験では複数個の DSP(Analog Devices 社製 ADSP–2181) を組み合わせてマルチチャン ネル制御を実現しているが,4 章の実験では一つの DSP(TI 社製 TMS320C5507) で実現してい る。ADSP–2181 は 1995 年販売開始であり,TMS320C5507 は 2004 年販売開始で ADSP–2181 の約 10 倍の演算性能を有する。この DSP デバイスの飛躍的な性能向上がマルチチャンネル制 御の実現を後押ししている。本研究においてもマルチチャンネルの制御システムを扱っている のだが,こうした状況が背景にある。

1.3 ANC

の適用例の分類

以下に ANC の適用例を分類し,最後に本研究が対象とする条件について述べる。 ・ 放射音の制御 騒音源の近傍に二次音源を設置し騒音源と逆位相で駆動することによって騒音源の放射パワー を低減することが可能である [10]。西村,新井はディーゼルエンジンの排気ダクト出口放射音 の制御を 2 – 1 – 1 (ノイズセンサ数 – 二次音源数 – エラーセンサ数) フィードフォワードシス テムで実現している [11]。ダクトの径が騒音の波長と比べて十分小さな場合,ダクト出口を一 つの騒音源と見なすことができ,その近傍に二次音源を配置することで放射パワーを低減する ことが可能である。しかし,開口寸法が騒音の波長よりも長い場合には,騒音は三次元的な振 る舞いをするため,この手法では制御が困難となる。江波戸らは開口に対して波長の短い騒音 を制御するために,開口に仕切りを設け,仕切られた開口毎に二次音源を配置する制御手法を 提案している [12]。 ・ ダクトを伝搬する騒音の制御 ダクトを伝搬する騒音の制御は古くから検討,実用化されてきた [13]。ダクトを伝搬する騒音 は,その波長がダクト断面寸法よりも十分に長ければ,平面波として伝搬,すなわちダクトの 長手方向のみに音圧が変化する一次元音場を形成する。このような音場ではシングルチャンネ ルシステムを用いて二次音源地点において騒音のエネルギーを反射することが可能である [14]。 ガスエンジンの排気音の制御では,ANC を導入したサイレンサの体積はパッシブなサイレンサ の 1/16 であり,ANC がパッシブな制御と比較して設置スペースに関して有利であることを示 している [15]。 騒音の波長がダクトの断面寸法よりも短い場合,騒音は平面波に加えて高次モード成分を含 むことになり,シングルチャンネルシステムでは制御が難しくなる。松本らは口径の大きなダ

(10)

1.3. ANCの適用例の分類 5 クトを小さなダクトに分割し,それぞれのダクトをシングルチャンネルシステムで制御する手 法を検討している [16]。森下らは騒音をモード分解し,各モードをシングルチャンネルシステ ムで制御する手法を提案している [17]。 ・ 三次元音場を伝搬する騒音の制御 Guoらは,自由空間中に二次音源及びエラーセンサを平行な二つの平面上に配置し,その陰 となる領域において騒音低減を目指しており,騒音が低減する領域が広く,かつ,騒音源及び 二次音源からの放射パワーが小さくなる二次音源及びエラーセンサの配置について検討してい る [18]。 三次元空間領域内の音場を制御する手法の一つにホイヘンスの原理に基づく制御がある [19]。 ある閉空間を囲む境界面上にモノポール音源とダイポール音源を配置し,騒音とは逆位相の音 圧と粒子速度を生成することにより,閉空間内で騒音を低減することが可能である。しかし, 実際のスピーカでは理想的なモノポール音源やダイポール音源を実現できないこと,境界面上 にスピーカを配置すれば,それ自体が壁になってしまうなどの問題がある。 ・ 回折音の制御 道路交通騒音の低減を目的として防音塀が広く用いられているが,近年,ANC を用いた制 御手法が提案されており,低周波数での騒音低減効果の向上が期待されている。ANC 導入の最 初の試みとして伊勢らは防音塀先端に二次音源を設置し,騒音低減におけるエネルギーの振る 舞いを調べた [20]。尾本 [21],及び Guo[22] らは防音塀先端にエラーセンサを設置し,二次音 源を防音塀よりも騒音源側に設置する手法を提案している。これらの手法はいずれもフィード フォワード制御を用いることを想定している。大西らはフィードバック制御を用いて防音塀先 端に音響的にソフトな面を生成するアクティブソフトエッジ (ASE) 遮音壁を提案している [23]。 ASE遮音壁ではフィードバック制御を用いるため騒音源の位置によらずに騒音を低減すること が可能であるが,二次音源近傍のみで騒音を制御するため遠距離場では騒音低減効果が小さく なるという原理的な弱点が存在する。 ・ 壁面透過音の制御 音が壁面に入射すると壁面が振動し,その振動によって入射とは反対側に音が放射される。 これが透過のメカニズムであり,振動を低減することができれば透過を低減することが可能で ある。飛行機など重量や容積の問題から吸音材や剛性を高めることによる遮音性能の向上が図 れない条件において ANC の導入が検討されている。Palumbo らは飛行機のフレームに電磁式 アクチュエータを取り付け,振動を低減することによって,プロペラの低次共鳴音を低減する ことに成功している [24]。また,スペース及び重量のさらなる低減を目指し二次音源にピエゾ 素子 [25] や PVDF[26] などの新素材を使用することも検討されている。

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・ 閉空間のこもり音制御 室などの閉空間に騒音が伝搬する場合,室の残響を抑えることで静粛化が可能である。鮫島 らはフィードバック制御を用いて低次モード成分の残響を抑制している [27]。また,ワゴンタ イプの量産車において低周波ロードノイズのこもり音を低減する ANC システムが採用されて いる [28]。自動車で低周波数騒音を低減するためにはボディ剛性を上げる必要があるのだが, ANC を導入することでボディ剛性を上げる必要がなくなり,結果としてコストダウンを実現 している。 ・ 局所空間での減音 耳元において騒音を低減することはシングルチャンネルシステムを使って実現可能であり, 椅子のヘッドレストに二次音源などの制御に必要な機材を組み込んだシステムが提案されてい る [29]。 ・ 小さなキャビティの制御 ANCを組み込んだヘッドフォンやイヤフォンは広く商品化済みである。 ・ 本研究で対象とする条件 騒音低減において騒音源に近いところから対策を施すことが重要である。すなわち,まずは 放射音の低減を試み,それが不可能であれば伝搬経路で低減するなど,対策を施す場所を徐々 に下流へと移していく。上述の分類であれば,最初にあげた「放射音の制御」から対策を施す べきであるが,この部分はすでに広く検討がなされている。そこで,騒音源に近く,かつ,あ まり検討がなされてこなかった「三次元場を伝搬する騒音の制御」と「フィードバックシステ ムを用いた回折音の制御」を本研究の対象とする。上述のように両者ともに検討がなされてき たが,問題を含んだままである。まず,三次元音場を伝搬する騒音はその複雑さから対策が難 しいとされているのが現状である。三次元音場を制御する手法の一つに境界音場制御の原理が あり,本研究でもこの原理を導入している。次節は,境界音場制御の原理に基づく ANC につ いてまとめる。また,回折音の制御では,その使用例である道路交通騒音を低減する防音塀は 非常に長く,その長手方向に複数のシステムを配置する必要があることを考慮すると,システ ムは可能な限り単純なものが望ましい。システムの簡略化という点においてアナログ回路を使 用したフィードバック制御は理想的であるのだが,遠距離場では騒音低減効果が小さくなると いう欠点があるため,改良する手法を 5 章で提案する。

(12)

1.4. 境界音場制御の原理に基づく ANC 7

1.4

境界音場制御の原理に基づく

ANC

二次音源 エラ−センサ V S 騒音源 p(s) r n 図 1.4: 境界音場制御の原理に基づく ANC 図 1.4 に示す領域 V 内において騒音を低減する ANC システムについて考える。音源を含まな い領域 V 内での音圧 p(s) はキルヒホッフ – ヘルムホルツ積分方程式より次式であらわされる。 p(s) =  S  ∂p(r) ∂n G(r|s) − p(r) ∂G(r|s) ∂n  dS (1.1) ただし,p(r),∂p(r)/∂n は境界 S 上の点 r における音圧と法線 n 方向の粒子速度,G(r|s) はグ リーン関数である。(1.1) 式より次の関係が成り立つ。 p(r) = ∂p(r) ∂n = 0 (∀r ∈ S) ⇒ p(s) = 0 (∀s ∈ V ) すなわち,境界 S 上において音圧と粒子速度がゼロになるよう逆システムを設計することがで きれば,領域 V 内の任意の点において音圧をゼロにすることができる [30]。ホイヘンスの原理 に基づく ANC では境界面上にモノポール音源とダイポール音源を配置する必要があったが,境 界音場制御の原理は音源の種類や設置位置によらない制御手法となっている。 これまでは,ある領域の外に騒音源があり領域内に到来する騒音をゼロにするシステムにつ いて述べてきたが,境界面上で音圧と粒子速度をゼロにすることによって,領域内に騒音源が あり領域外へと放射される騒音をゼロにすることも可能である。すなわち,「放射音の制御」を 前節の分類とは異なるアプローチで実現可能である。

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音源の問題を解決したものの,境界音場制御の原理には実用化する上での障害が 4 点上げら れる。 1. 音圧と粒子速度の観測 音圧を制御する際にはエラーセンサとしてマイクロホンを使用すればよいが,粒子速度を制 御するにはマイクロホン二つを境界をはさんで境界に対して垂直方向に設置する必要がある。 このためシステムの複雑化は避けられない。 2. 境界の離散化 境界面上の全ての位置で制御を行うことは不可能であり,離散的な点において制御せざるを 得ない。その際に領域内での制御効果は低くなるのだが,離散化と制御効果の関係については 検討されていない。 3. 境界面上に配置するエラーセンサ 音源を境界面上に配置することと比べれば現実的ではあるものの,境界面上にエラーセンサ を配置する必要があることは実用上問題となる。制御対象の系が時不変であれば逆システムを 設計したのちにエラーセンサを取り外して運用することが可能であるが,系が必ずしも時不変 であるとは限らない。 4. 膨大な演算量 制御対象となる領域が大きくなるにつれて,必要となる逆システムの規模が増大し,演算量 も膨大なものとなる。 次節ではこれらの問題点の解決方法を交えながら,本研究の目的,論文の構成についてまと める。

1.5

研究の目的と論文の構成

まず「音圧と粒子速度の観測」であるが,境界値問題における解の一意性より,固有周波数 以外では境界上の音圧を制御することによって同時に音圧勾配を制御することができ,その結 果,領域内の音圧が制御されることが知られている [31]。すなわち,音圧を観測するエラーセ ンサのみを境界面上に配置することで領域内で騒音を低減することが可能である。その場合, 固有周波数での制御効果の低下は避けられないのだが,次に述べる「境界の離散化」による制 御効果の低下の方が大きいため無視しても問題ないと思われる。本論文でも音圧のみを制御す る手法を採用する。

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1.5. 研究の目的と論文の構成 9 2章において「境界の離散化」について検討する。領域を取り囲む境界面上において音圧をゼ ロにすることが出来れば,領域内の音圧はゼロ,すなわち,騒音低減量は∞ dB となる。しか し,実際には音圧を観測するマイクロホンをエラーセンサとして配置し,それぞれの点のみに おいて音圧をゼロとする制御しか実現できず,騒音低減量は小さくなる。実際のシステムを構 築する際には,目的となる騒音低減量があり,それを満たす構成を設計することになる。その ため,システムの構成と騒音低減量の関係を定量化する必要がある。まず,任意の数のエラー センサをもつシステムによる任意の点での騒音低減量を定式化する。また,境界面上の騒音低 減量と領域内での騒音低減量の関係を定式化する。そして,両者を結合することによって,任 意の数のエラーセンサを境界面上に配置したときの領域内での騒音低減量を定式化する。次に, この定式を用いて領域内において 5 dB もしくは 15 dB 騒音を低減するために必要なエラーセ ンサ数を求める。 境界音場制御の原理に基づくと,境界面上にエラーセンサを配置することによって領域内で 騒音を低減可能であるが,例えば,頭部周辺で騒音を低減するためには頭部のまわりにエラー センサを配置することになり,実用的でない。また,部屋全体で騒音を低減するためには境界 が非常に大きくなり,エラーセンサ数及びそれを制御するために必要な演算量も膨大なものと なり,実用化は難しい。境界音場制御の原理に基づく領域制御は,騒音を反射する境界面を生 成しているとも解釈可能である。そこで制御対象を騒音のエネルギーが通過する面のみに絞り, その面で騒音を反射する制御に適用する。例えば,ドアや窓などの開口部から騒音が放射・入 射する場合,開口部にエラーセンサを配置することによって騒音のエネルギーを反射すること が可能であり,システムの規模も現実的なものとなる。 3章では,騒音のエネルギーを反射する制御の実現可能性を検討するために,無響室内に模 擬的な設備機械室を建造し,開口から放射される騒音を反射する ANC の実験を行った。設備 機械室には吸排気や排熱のために開口が必要なものがあり,境界音場制御の原理に基づく制御 であれば開口面にエラーセンサを設置するだけで制御可能であるため,空気の流れの抵抗とな ることなく騒音のみを低減可能であり,理想的な解決策といえる。3 章での検討項目は騒音源, 二次音源,エラーセンサの配置などの諸条件と騒音低減量の関係である。また,開口において 騒音が反射されていることを確認するために,制御前後における音響インテンシティを測定し, 騒音の物理的な振る舞いについても検討する。 4章では,境界音場制御の原理に基づいて騒音を反射する境界面を生成するシステムである Active Noise Reflection Unit(ANRU)を提案し,ANRU を防音塀として使用した場合の性能に ついて検討する。ANRU はその名が示すようにユニット化したシステムである。すなわち,制 御に必要な二次音源,エラーセンサ,コントローラなどをすべて組み込んでおり,システムを並 列に設置することによって,大きな面で騒音を反射する制御も実現可能なものである。ユニッ

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ト化は大規模なシステムの構築を簡便にするだけでなく,演算量の低減にも貢献する。ANRU では 1 – 6 – 5 (ノイズセンサ数 – 二次音源数 – エラーセンサ数) のマルチチャンネルフィード フォワード制御を導入しているが,10 ユニットを設置するとノイズセンサ数は 10,二次音源数 は 60,エラーセンサ数は 50 となる。これらを 10 – 60 – 50 マルチチャンネルフィードフォワー ド制御した場合,ユニット化したシステムと比べて演算量は 10 倍になる。システムの性能の検 証は数値計算及び実験によって行う。数値計算では,ANRU 近傍のインテンシティ及び音圧レ ベルを計算することにより,二次音源の物理的な振る舞いについて検討する。また,実験では 二つの ANRU を設置したときのユニット間の影響及び制御効果について検討し,さらに数値計 算の結果とも比較検討する。 5章では,フィードバック制御を使用した回折音の低減について検討を行う。4 章で述べる ANRUは騒音を反射する面を生成可能であるが回折音は制御出来ない。また,マルチチャンネ ルのフィードフォワードシステムを使用しているためシステムが複雑になるという欠点がある。 道路交通騒音を低減するためには,長大な防音塀が必要となるため,システムは可能な限り簡 単な構成であることが望ましく,アナログフィルタを使用したフィードバックシステムは,そ の条件に合致することから導入が試みられてきた。しかし,従来のフィードバック制御では遠 距離場において騒音低減効果が小さくなるという欠点がある。その原因として,フィードバッ ク制御では二次音源の近傍にエラーセンサを設置し,その点で騒音を制御するため二次音源の 出力は小さなものとなることが考えられる。解決策としてエラーセンサを二次音源の遠くに設 置することが考えられるが,その場合,周期的な騒音しか制御出来なくなり,道路交通騒音な どのランダムな騒音は低減できなくなる。伊勢らは境界音場制御の原理に基づいてエネルギー を反射することにより,アクティブ防音塀よりも下流の広い空間において騒音を低減する手法 を提案している [43]。この研究は塀の位置で二次音源が適切に波面を生成することができれば, 遠距離場で高い騒音低減効果が得られることを示唆している。そこで,実用性の高いフィード バック制御を採用しながら遠距離場での騒音低減効果を向上させるために,二次音源出力を高 めることを可能とするシステムを提案し,騒音低減量を数値計算によって確認する。4 章で述 べる ANRU はフィードフォワード制御を使用するためシステムが複雑になるものの,大きな開 口を確保するため,空気の流れの抵抗となることや光を遮断するといったことは無い。5 章の システムはフィードバック制御を使用するため,システムは単純な構成となるが,物理的な壁 が必要となる。それぞれ長所・短所があり,適用場所は異なる。 6章では本研究を総括する。

(16)

11

2

章 境界音場制御における境界の離散化

と制御効果の関係

2.1

概要

近年,マルチチャンネルの音響入出力装置及び演算器が比較的低価格で入手可能となってき ており,複数点における音圧と粒子速度の制御を可能としている。境界音場制御の原理 [30] に 基づく ANC システムでは複数のセンサと二次音源を用いるのだが,制御デバイスの低価格化 により実現可能性が高まっている。しかし,複数点において音圧と粒子速度が制御可能であっ ても,境界上の全ての点において制御を行うことは不可能である。そこで,何チャンネルのシ ステムを用いれば,どのくらいの精度で制御できるのかという目安が必要になってくる。

三好と金田が提案している Quiet Zone の推定式 [32] は,2 個のエラーセンサをもつ ANC シ ステムによる制御精度を定式化しており,本章では,LDU 分解を使用して任意の数のエラーセ ンサをもつ ANC システムへの一般化を行う [33]。さらに,領域とそれを囲む境界における制御 精度の関係について検討する [34]。最後に,任意の数のエラーセンサを持つ ANC システムの場 合へと一般化した Quiet Zone の推定式をその関係に代入することによって,境界の離散化と領 域内での制御精度の関係を求める。そして,5 dB もしくは 15 dB 騒音を低減するために必要な エラーセンサ数を求める。

ここで,Quiet Zone という表現は ANC を対象として記述されたものであるが,この理論は 音場再現にも適用可能である。騒音制御の場合には制御精度は騒音低減量になるが,音場再現 の場合には騒音低減量を再現精度誤差と読み替えればよい。以降,ANC を対象として騒音低減 量という尺度で記述する。

2.2

理論的検討

2.2.1 Quiet Zone

の推定式の一般化

三好と金田によって定式化された Quiet Zone の推定式 [32] によると,2 個のエラーセンサに おいて騒音が完全に打ち消されたときの任意の点における騒音低減量は,エラーセンサ地点を

(17)

2 2 2/ 2/ 3WKGV<QPG /୘ߩࠛ࡜࡯࠮ࡦࠨ /୘ߩੑᰴ㖸Ḯ ᷹ⷰ↪࠮ࡦࠨ 㛍㖸Ḯ 図 2.1: M-1 個のエラーセンサを持つ ANC システム 含む 3 点において観測される音圧信号間の相互相関係数が既知の場合,予測可能である。本節 では,LDU 分解を用いることにより任意の複数点を制御した場合へと拡張する。 拡散音場において図 2.1 に示すように M 個のセンサを点 Pi (i = 1, . . . , M)に配置する。MINT によると,M-1 点での音圧は M 個の二次音源と FIR フィルタによって完全に制御すことが可能 である [35]。したがって,図 2.1 に示す条件では,点 PMを除く全てのセンサ位置において制御 可能であると仮定できる。 点 Piにおける音圧信号を ni+ wiとする。ただし,niは騒音源によって励起される音圧信号 (騒音信号) であり,wiは二次音源によって励起される音圧信号 (制御信号) である。本節では, 信号は全て時間信号であるが,式中では時間表記を省略する。点 Pi (i = 1, . . . , M− 1) におい て音圧信号が完全に打ち消されるため,次式が成り立つ。 ni+ wi = 0 (i = 1, . . . , M− 1) (2.1) ni+ wi = 0 (i = M) (2.2) 点 PMにおける制御前と制御後の信号の平均エネルギーの比,即ち騒音低減量は次式で表さ れる。 eM = |nM + wM| 2 |nM|2 (2.3)

(18)

2.2. 理論的検討 13 ここで,—は時間平均を表す。信号 n は n と相関のある信号 ρnと nと無相関な信号 nを用い て次式のように表される。 n = ρn+ n (2.4) ここで,ρ は n と nの相互相関係数であり,nn = 0である。したがって,nMは n1と相関の ある ρ1,Mn1,ni (i = 1, . . . , k− 1) と無相関で nk と相関のある ρk,Mnk (k = 2, . . . , M− 1) 及び ni (i = 1, . . . , M− 1) と無相関な nMで次のように表される。 nM = ρ1,Mn1+ M−1 k=2 ρk,Mnk+ nM (2.5) nk = ⎧ ⎪ ⎪ ⎪ ⎨ ⎪ ⎪ ⎪ ⎩ nk− ρ1,kn1 (k = 2) nk− ρ1,kn1 k−1  i=2 ρi,kni (k > 2) (2.6) ただし, ρi,j : niと nj間の相互相関係数 ρi,j : niと nj間の相互相関係数 nink= 0 (i = 1, . . . , k− 1 ; k = 2, . . . , M − 1) ninM = 0 (i = 1, . . . , M− 1)

ここで,拡散音場では ρi,jは点 Piと点 Pj間の距離によって決定される [36]。また,ρi,jは ρi,j表される。したがって,ρi,jはセンサの配置によって決定される。wMは nMと同じく相互相関 係数を用いて次式のように表される。 wM = ρ1,Mw1+ M−1 k=2 ρk,Mwk+ wM (2.7) wk = ⎧ ⎪ ⎪ ⎪ ⎨ ⎪ ⎪ ⎪ ⎩ wk− ρ1,kw1 (k = 2) wk− ρ1,kw1 k−1 i=2 ρi,kwi (k > 2) (2.8) ただし, wiwk = 0 (i = 1, . . . , k− 1 ; k = 2, . . . , M − 1) wiwM = 0 (i = 1, . . . , M − 1)

(19)

(2.5),(2.7) 式より, nM+ wM は次式で表される。 nM + wM = ρ1,M(n1+ w1) + M−1 k=2 ρk,M(nk+ wk) + nM + wM (2.9) (2.1),(2.6),(2.8) 式より,(2.9) 式は次のように変形される。 nM + wM = nM + wM (2.10) したがって,(2.3) 式は次のようになる eM = |n  M + wM|2 |nM|2 (2.11) ここで,[ni] (∈ RM)は単位パワーの白色雑音 [Nj] (∈ RM)を用いて次のように表される。 [ni] = [Ai,j][Nj] (2.12) ただし,[Ai,j]は重み係数を要素にもつ行列である。相互相関行列 [Gi,j]は次式のように表される。

[Gi,j] = [ni][ni]T(∈ RM×M) (2.13) ただし,[Gi,j]は (i, j) 要素に ρi,j|nM|2 を持つ M× M 行列であり,ρi,jは niと nj の相互相関係数 である。(2.12) 式を (2.13) 式へ代入すると,[Gi,j]は次式で表される。

[Gi,j] = [Ai,j][Nj][Nj]T[Ai,j]T = [Ai,j][Ai,j]T (2.14)

ここで,[Gi,j]を次のように LDU 分解,すなわち,上三角行列,対角行列,下三角行列へと分 解する。

[Gi,j] = [Li,j][Ui,j]|nM|2 = [Li,j][Di,j][Li,j]T|nM|2 = [Li,j] [Di,j] |nM|2 [Li,j] [Di,j] |nM|2 T (2.15) ここで,[Ui,j]は上三角行列である。(2.15) 式と (2.14) 式を比較すると,[Ai,j]は次のように表さ れる。 [Ai,j] = [Li,j] [Di,j] |nM|2 (2.16)

ここで,[Di,j] = diag(d1,1, d2,2, . . . , dM,M)(∈ RM×M)である。[Li,j]は下三角行列,[Di,j]は対角行 列であるので,[Ai,j]は下三角行列である。したがって,niは次のように表される。

(20)

2.2. 理論的検討 15 ni = i  k=1 Ai,kNk (2.17) niは N1, . . . , Niと相関があるため,nMの ni(i = 1, . . . , M− 1) と無相関な成分は AM,MNMと なる。したがって,nMは次のように表される。 nM = AM,MNM (2.18) (2.16)式より [Ai,j]の (M,M) 要素は次のように表される。 AM,M = dM,M|nM|2 (2.19) (2.19)式を (2.18) 式に代入すると nMは次のようになる。 nM = dM,M|nM|2NM (2.20) 同様に,[wi]は Njと無相関な単位パワーの白色雑音 Njによって表すことができる。同じ手順 によって,wMは次のように表される。 wM = dM,M|wM|2NM (2.21) NMは NMと無相関であるので,nMは wMと無相関である。したがって,(2.11) 式は次のよう になる。 eM = |n  M|2+|wM|2 |nM|2 (2.22) ここで,(2.20),(2.21) 式を (2.22) 式へ代入すると,eMは次のようになる。 eM = |nM|2+|wM|2 |nM|2 dM,M (2.23) 騒音信号と制御信号はエラーセンサにおいて互いに打ち消すため,ni+ wi= 0 (i = 1, . . . , M−1) となる。さらに,拡散音場では音圧信号のレベルは一定であるため,|ni|2 =|wi|2 = constant (i = 1, . . . , M)となる。したがって,eMは最終的に次のようになる。

(21)

2.2.2

既存の定式化との比較

前節の定式化の妥当性を検討するために,2 個のエラーセンサを持つ ANC システムにおい て,前節の定式を用いて求めた騒音低減量と三好らが提案している Quiet Zone の推定式によっ て求めた騒音低減量を比較する。点 Pi (i = 1, 2, 3)において観測される音圧信号の相互相関行 列は次のように表される。 [Hi,j] = ⎡ ⎢ ⎢ ⎢ ⎢ ⎣ 1 ρ1,2 ρ1,3 ρ1,2 1 ρ2,3 ρ1,3 ρ2,3 1 ⎤ ⎥ ⎥ ⎥ ⎥ ⎦ (2.25) ただし,ρi,j は点 Piと点 Pjにおいて観測される音圧信号の相互相関係数である。ここで [Hi,j] を LDU 分解すると次のようになる。

[Hi,j] = [Li,j][Di,j][Li,j] (2.26) ただし, [Di,j] = ⎡ ⎢ ⎢ ⎢ ⎢ ⎣ 1 0 0 0 1− ρ1,22 0 0 0 1− ρ1,32 (ρ2,31−ρ−ρ1,2ρ1,3)2 1,22 ⎤ ⎥ ⎥ ⎥ ⎥ ⎦ (2.27) (2.24)式より,点 P3における騒音低減量は次式で表される。 eM = 2d3,3 = 2{1 − ρ1,32 (ρ2,3− ρ1,2ρ1,3) 2 1− ρ1,22 } (2.28) 一方,三好と金田が提案している定式を用いて計算した騒音低減量は次式で表される [32]。 eM ≤ 4{1 − ρ1,32 (ρ2,3− ρ1,2ρ1,3) 2 1− ρ1,22 } (2.29) 本研究では nMと wMが無相関であると仮定し,|nM+ wM|2 = 2|nM|2とした。一方,三好と金 田は nMと wMが相関を持ちうると仮定したため,|nM+ wM|2 ≤ 4|nM|2 となる。したがって, 両者の騒音低減量の関係は次式で表される。 eM ≤ 2eM (2.30) (2.28)–(2.30)式より,三好と金田が提案している定式は前節の定式と同じであるといえる。

(22)

2.2. 理論的検討 17

2.2.3

境界の離散化と領域内での騒音低減量の関係

ࠛ࡜࡯࠮ࡦࠨ

8

5

Z

K

[

K

(Z^[

K K 図 2.2: 想定する制御エリア 拡散音場において,図 2.2 のような境界 S によって囲まれた領域 V を想定し,領域 V 内での 騒音低減量の導出方法を定式化する。なお,騒音源と二次音源は領域の外側にあり,エラーセ ンサ地点において騒音が完全に打ち消されると仮定する。 領域 V 内における騒音信号,制御信号をそれぞれ n(y),w(y) とすると,騒音低減量は次のよ うに表される。 R = 10 log10 Won Woff (2.31) Woff =  V |n(y)| 2dV (2.32) Won=  V |n(y) + w(y)| 2dV (2.33) 領域 V 内における音圧は固有周波数以外では境界 S 上の音圧を用いて表すことが出来るため, n(y),w(y) はそれぞれ次のように表される。 n(y) N  i=1 n(xi)F (xi|y) (2.34) w(y) N  i=1 w(xi)F (xi|y) (2.35) ただし,n(xi),w(xi)は,それぞれ境界を離散化した点 xiにおける騒音信号と制御信号である。 F(xi|y) は点 xiにおける音圧が領域 V 内の点 y における音圧へ及ぼす影響を表す重み関数であ

(23)

る。ここで,微少領域 dVjにおいて|n(y)|2が一定であり,|n(yj)|2dVj=  Vj|n(y)| 2dVが成り立 つと仮定すると,(2.32) 式は次のように表される。 Woff  L  j=1 |n(yj)|2dVj (2.36) (2.34)式における位置 y を離散化すると,次式となる。 n(yj) N  i=1 n(xi)F (xi|yj) (2.37) ここで,境界が波長よりも十分長いと仮定すると,領域内の音場はランダムであると仮定で きる。したがって,F (xi|yj)は領域内で平均をとると 0 となる。 L  j=1 F (xi|yj)F∗(xk|yj) = ⎧ ⎪ ⎨ ⎪ ⎩ 0 (i= k) C (Constant) (i = k) (2.38) (2.37),(2.38) 式を (2.36) 式へ代入すると,(2.36) 式は次のようになる。 Woff  C N  i=1|n(xi )|2 (2.39) (2.33)式を変形すると次のようになる。 Won  C N  i=1 |n(xi) + w(xi)|2 (2.40) (2.39),(2.40) 式を (2.31) 式へ代入すると,騒音低減量 R は次のようになる。 R  10 log10 N  i=1|n(xi ) + w(xi)|2 N  i=1 |n(xi)|2 (2.41) 拡散音場を仮定しているので,|n(xi)|2 = C (constant)となり,R は次式で表される。 R  10 log10 N  i=1|n(xi ) + w(xi)|2 N C (2.42) (2.3)式より (2.42) 式は次のように変形される。 R  10 log10 1 N N  i=1 eM(xi) (2.43) したがって,領域 V 内の騒音低減量は境界 S 上の eM(xi)の平均で表される。また,(2.24) 式よ り eM(xi)は dM,Mで表される。最終的に,領域内での騒音低減量は次式で現される。

(24)

2.3. 二次元拡散音場における数値計算 19 R 10 log10 1 N N  i=1 2dM,M(xi) (2.44) dM,Mは M 個のセンサ地点で観測される音圧信号間の相互相関行列を LDU 分解して得られる対 角行列の (M,M) 要素であり,境界 S 上において dM,Mを平均することによって領域内での騒音 低減量が計算可能である。

2.3

二次元拡散音場における数値計算

本節では,(2.44) 式を用いて計算した領域内の騒音低減量と,既存の研究 [30] においてシミュ レーションによって求めた騒音低減量を比較する。また,円形領域内において騒音を 5 dB 及 び 15 dB 低減量するために必要なエラーセンサ数を求める。

2.3.1

既存の数値計算との比較

ࠛ࡜࡯࠮ࡦࠨZ OO OO OO 図 2.3: 24 個のエラーセンサを持つ ANC システム 図 2.3 に示すような一辺が 500 mm の正方形の境界 S によって囲まれた領域 V を想定し,境 界 S 上に 24 個のエラーセンサを 83 mm おきに配置する。計算では境界を 200 個に分解する。 二次元拡散音場を仮定すると,相互相関係数 ρi,jは次式で与えられる。 ρi,j = J0(2πsi,j λ ) (2.45) ただし,J0は 0 次のベッセル関数,λ は騒音の波長であり,si,jは点 Piと点 Pj間の距離である。 400 Hzから 2 kHz までの領域内の騒音低減量を図 2.4 に示す。破線が参考文献 [30] において行っ

(25)

30 60 90 120 150 500 1000 1500 2000 0 180 騒音低減量 [dB] 周波数 [Hz] Eq.(2.44) シミュレーション 図 2.4: 領域内での騒音低減量 たシミュレーションの結果であり,実線が (2.44) 式を用いて計算した結果である。1.5 kHz 以上 の周波数においてシミュレーションによって求めた騒音低減量は小さくなっているものの,両 者は概ね一致している。この違いは固有周波数によるものでる。固有周波数では領域内の音場 は一意に決定しない,即ち,境界上で騒音が打ち消されても領域内では騒音が低減しなくなる。 一方,(2.44) 式の導出時には,全ての周波数で領域内の音場が一意に決定されると仮定してお り,シミュレーションと誤差が生じたと考えられる。総合的に判断して,前節の定式化は妥当 であると結論付けられる。

2.3.2

円形領域を制御するために必要なエラーセンサ数

ANCシステムを設計する際に,目標とする騒音低減量を設定し,エラーセンサの数と配置を 決定することは重要である。本節では,二次元拡散音場において領域内で目標とする騒音低減 量を得るために必要なエラーセンサの配置を求める。図 2.5 に示すように,エラーセンサを等 間隔で配置した円形の境界 S によって囲まれた領域 V を想定する。(2.44) 式の xiを次のように 表す。 xi = [r cos θi, r sin θi] (2.46) θi = Ni (i = 1,· · · , N) ただし,N は境界の分割数であり,r は円の半径である。(2.45) 式に示すように,相互相関係数 は si,jの関数である。si,jは r の関数であるので,(2.44) 式の dM,Mはエラーセンサの数 M と

(26)

2.3. 二次元拡散音場における数値計算 21 ࠛ࡜࡯࠮ࡦࠨ 㗔ၞ 8 Ⴚ⇇ 5 㑆㓒 図 2.5: 想定する制御エリア r/λの関数となる。したがって,(2.44) 式は次のように記述できる。 R = f (M, r/λ) (2.47) ただし R は領域内での騒音低減量である。 所望の騒音低減量を実現するエラーセンサ数を導き出すために,(2.47) 式を用いてさまざま な条件で R を計算した。境界の分割数 N は 360 に固定し,波長 λ は 0.1 m から 4.0 m まで 0.1 mごとに変化させ,エラーセンサ数 M は 5 から 50 まで変化させた。計算結果より半径 0.5 m の円形領域内において騒音を 5 dB 低減するために必要なエラーセンサ数を求めた。結果を図 2.6に実線で示す。騒音の波長が長くなるにつれて騒音を 5 dB 低減するために必要なエラーセ ンサ数は減少する。 騒音の半波長ごとに配置したときのエラーセンサ数を図 2.6 に破線で示す。いくつかの周波 数では実線と破線が重なっているものの破線は実線よりもエラーセンサ数が多い側,すなわち, より騒音が低減する側にある。これより,騒音を 5 dB 低減したいときには,エラーセンサを騒 音の半波長ごとに配置する必要があることが示された。図 2.7 に半径 1 m の円形領域内におい て騒音を 5 dB 低減するために必要なエラーセンサ数を示す。半径 0.5 m の場合と同様の手順に よって,半径 1 m の円形領域でも騒音の半波長ごとに配置することによって騒音が 5 dB 低減 することが示された。 さらに,同様の手順によって騒音を 15 dB 低減するために必要なエラーセンサの配置を求め る。図 2.8,2.9 に半径 0.5 m と 1 m の円形領域内において騒音を 15 dB 低減するために必要な エラーセンサ数を示す。領域内において騒音を 15 dB 低減するために必要なエラーセンサ数を 実線で表し,騒音の 1/3 波長もしくは半波長ごとに配置したときのエラーセンサ数をそれぞれ 破線 (1),(2) で表す。破線 (1) は実線よりも上側にあり,破線 (2) は実線の下側にある。した

(27)

20 17 14 11 8 5 0.3 0.5 0.7 0.9 1.1 1.3 エラーセンサの間隔 = 騒音の半波長 5 dB 騒音が低減する条件 エラーセンサ数 波長 [m] 図 2.6: 半径 0.5 m の円形領域内で騒音を 5 dB 低減するために必要なエラーセンサ数 40 34 28 22 16 10 0.3 0.5 0.7 0.9 1.1 1.3 間隔 = 半波長 5 dB 騒音が低減する条件 エラーセンサ数 波長 [m] 図 2.7: 半径 1 m の円形領域内で騒音を 5 dB 低減するために必要なエラーセンサ数

(28)

2.3. 二次元拡散音場における数値計算 23 30 25 20 15 10 5 1.5 0.5 1.0 2.0 (1) 間隔 = 1/3波長 15 dB 騒音が低減する条件 エラーセンサ数 波長 [m] (2) 間隔 = 半波長 図 2.8: 半径 0.5 m の円形領域内で騒音を 15 dB 低減するために必要なエラーセンサ数 50 40 30 20 10 1.5 0.5 1.0 2.0 エラーセンサ数 波長 [m] (1) 間隔 = 1/3波長 15 dB 騒音が低減する条件 (2) 間隔 = 半波長 図 2.9: 半径 1 m の円形領域内で騒音を 15 dB 低減するために必要なエラーセンサ数

(29)

がって,騒音を 15 dB 低減するためには,エラーセンサを半波長ごとに配置するだけでは不十 分であり,1/3 波長ごとに配置する必要があるといえる。本節では,円形の領域についてのみ 検討を行った。不整形な領域を制御するために必要なエラーセンサ数は別途検討が必要である。

2.4

結論

三好と金田によって提案された Quiet Zone の推定式を,2 個のエラーセンサを持つ ANC シ ステムから任意の数のエラーセンサを持つ ANC システムへと一般化した。次に,境界音場制御 の原理に基づいた ANC システムを構築したときに,領域内における騒音低減量とエラーセンサ 数の関係を定式化した。さらに,妥当性を検討するために,本章で求めた推定式と数値シミュ レーションによって求めた騒音低減量を比較したところ,ほぼ一致していた。最後に,円形領 域内において騒音を 5 dB 低減するためにはエラーセンサを騒音の半波長ごとに境界上に配置 する必要があり,15 dB 低減するためには 1/3 波長ごとに配置する必要があることが分かった。

(30)

25

3

章 開口において騒音を反射する能動制

御に関する実験的検討

3.1

概要

建築物において遮音性能の向上のために多重窓や高気密性サッシを用いることがあるが,設 備機械室の多くは排熱や吸排気のために開口を塞ぐことができない。開口部は遮音性能を低減 させる一因となるが,その対策として吸音材を使用した防音型フードや吸音ルーバー [37] があ げられる。しかし,これらパッシブな手法では低周波数において性能を向上させるためには装 置が占有する容積が大きくなるため,実用上問題がある。 一方,ANC は原理的に低周波数騒音の低減に有利であり,空気の流れを妨げないことから, 設備機械のダクトを伝搬する騒音の低減へと適用が試みられ,実用化も進んできた。しかし, ダクトなどで騒音の伝搬経路を限定できない条件では,開口部において対策を施す必要がある。 西村,新井は開口端の近傍に二次音源を配置して制御を行う手法を提案している [11]。この手 法は,開口端を騒音源とみなし,その近傍に二次音源を配置することによって放射パワーを低 減していると解釈できる。しかし,開口から放射される騒音の周波数が高い場合には,三次元 的な振る舞いをするため,この手法では制御が困難となる。江波戸らは開口に対して波長の短 い騒音を制御するために,開口に仕切りを設け,仕切られた開口毎に二次音源を配置する制御 手法を提案している [12]。 ところで,三次元音場を制御する手法として境界音場制御の原理があげられる [30]。この原 理を ANC の手法として解釈すると騒音源を含む閉空間の境界面上において音圧と粒子速度を ゼロにすることによって,その境界面上で騒音のエネルギーを反射することができる。西村, 江波戸らの手法がシングルチャンネル制御を採用しているのに対し,この手法はマルチチャン ネル制御を採用しており,複数のセンサを設置することによって,制御を行う境界面を自由に 設定可能である。しかし,騒音源を取り囲むすべての境界面上の音圧と粒子速度を制御するた めには,非常に大規模なシステムが必要となり現実的ではない。そこで,上記の設備機械室の 開口のような限られた範囲であれば,通過する騒音のエネルギーを反射することが比較的小規 模なシステムによって実現可能であると考えられる。これまでに,このような制御が実現可能

(31)

であることが数値計算 [38] によって確認されている。 これまでの検討から開口で騒音を反射する ANC は原理的には可能であることがわかったが, 次の研究段階として必要なことは実験による実用可能性の検討である。そこで無響室内に模擬 的な設備機械室を建造し,開口から放射される騒音を反射する実験を行った。本章では騒音源, 二次音源,エラーセンサの配置などの諸条件と ANC の制御効果の関係について検討する。ま た,開口において騒音が反射されていることを確認するために,制御前後における音響インテ ンシティを測定し,騒音の物理的な振る舞いについて検討する。

3.2

実験

3.2.1

実験条件

    ੑᰴ㖸Ḯ 㛍㖸Ḯࠬࡇ㧙ࠞ න૏OO 図 3.1: 実験室平面図 無響室内に高さ 2 m,幅 1 m(3.2.6 節の実験では幅 2 m) の開口をもつ模擬的な設備機械室 (4.5 m× 3.6 m, 高さ 2.4 m) を建造した。平面図および実験の様子をそれぞれ図 3.1,3.2 に示 す。実験では開口を通して室内から室外に放射される騒音の低減を想定しており,騒音源とし て使用するスピーカを室内に設置した。室内には残響を抑えるために吸音材を床面及び壁面に はりつけた。残響時間を表 3.1 にまとめる。開口の両脇には二次音源を収納するフレームを設 けた。二次音源として口径 100 mm のスピーカ(Fostex FE103)を 150× 150 × 150 mm のエ ンクロージャに収めたものを使用した。マルチチャンネル制御は filtered-x LMS アルゴリズム (標本化周波数 2 kHz,フィルタタップ数 768)を実装したシングルチャンネルのコントローラ をマルチカスケード型に接続して実現した [40]。以下の実験では,コントローラの適応動作を

(32)

3.2. 実験 27 図 3.2: 実験の様子 開始し,適応が収束したところで適応動作を停止し,その時点でのフィルタ係数を用いて制御 を行った。 周波数 [Hz] 63 125 250 500 残響時間 [秒] 0.8 0.29 0.41 0.42 表 3.1: 残響時間

3.2.2 ANC

システムの配置と騒音低減量の関係

騒音源スピーカは図 3.3 に示す位置に開口に向けて床面上に設置した。騒音源信号には 89 – 710 Hzに帯域制限したホワイトノイズを使用し,参照信号としてコントローラに直接入力し た。開口に設置した二次音源とエラーセンサの配置は図 3.4 の 5 種類である。いずれも二次音 源 4 つ,エラーセンサ 4 つで構成され,マルチチャンネルコントローラ 1 台で制御を行った。以 降,これらの機器をまとめて ANC ユニットと呼ぶ。 まず,二次音源の配置に注目し,配置 1,2,3 での実験について述べる。配置 1 と 2 は開口 の枠に二次音源を設置し,配置 3 では二次音源を開口中央よりに設置した。また,配置 1,3 で

(33)

⸘᷹ὐ න૏OO  㛍㖸Ḯࠬࡇ㧙ࠞ   図 3.3: 実験装置の配置 (平面図) は二次音源をエラーセンサよりも騒音源側に設置し,配置 2 では二次音源をエラーセンサと同 一平面上に設置した。いずれの配置も二次音源は床から 600 mm 及び 1,400 mm の高さに設置 した。配置 1,2,3 のいずれのエラーセンサも垂直方向の間隔は 800 mm,水平方向の間隔は 400 mmである。エラーセンサの間隔は長い方で 800 mm であることから,その倍の波長,す なわち,約 200 Hz が制御対象周波数の上限であると推測される。実用性を考慮すると,ユニッ トの奥行が小さくなること,二次音源を開口の縁に設置できることから,配置 2 がもっとも望 ましい。 配置 1,2,3 の騒音低減量を図 3.5 に示す。騒音低減量は図 3.3 に示す計測点において騒音計 で計測した ANC ユニット動作前と動作後の音圧レベルの差である。音圧レベルは 10 秒間の平 均値であり,騒音計は床から 1,000 mm の高さに設置した。配置 2 の騒音低減量が最も大きく, 100 Hzでは音圧レベルが約 24 dB 低下した。また,400 Hz でも音圧レベルが約 8 dB 低下し た。配置 1 の騒音低減量がその次に大きく,100,125 Hz において音圧レベルが 15 dB 以上低 下した。5 dB 以上音圧レベルが低下する上限の周波数は 250 Hz であった。また,配置 3 の性 能が最も低かった。 実用性を考慮すると,エラーセンサを開口の中央付近に配置することは望ましくない。そこ で,エラーセンサを開口の縁に配置しても制御可能であるか検討する。二次音源とエラーセン サの配置は図 3.4 に示す配置 4,5 の 2 種類とし,配置 2 と騒音低減量を比較する。いずれも, 二次音源とエラーセンサを同一平面上に配置した。配置 4 ではエラーセンサを二次音源の直前 に配置し,配置 5 ではエラーセンサを二次音源から離して配置した。二次音源は配置 2 と同じ 位置に設置した。図 3.3 に示す計測点での騒音低減量を図 3.6 に示す。 騒音低減量は配置 2,5,4 の順に小さくなった。開口から放射される騒音を低減するために は開口面全体において音圧を低減する必要があるのだが,エラーセンサの配置によって開口面

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3.2. 実験 29 300 400 300 600 600 800 ᐔ㕙࿑ ┙㕙࿑ ┙㕙࿑ ੑᰴ㖸Ḯ ࠛ࡜㧙࠮ࡦࠨ ੑᰴ㖸Ḯ ࠛ࡜㧙࠮ࡦࠨ ቶౝ ቶᄖ 300 400 300 600 600 800 ᐔ㕙࿑ ┙㕙࿑ ㈩⟎ ㈩⟎ 300 400 300 600 600 800 ᐔ㕙࿑ ┙㕙࿑ ㈩⟎ 50 900 50 600 600 800 ᐔ㕙࿑ ┙㕙࿑ ㈩⟎ 50 900 50 600 600 800 ᐔ㕙࿑ ┙㕙࿑ 300 700 700 300 ㈩⟎ න૏㧦OO 図 3.4: ANC ユニットの配置

(35)

25 20 15 10 5 0 -5 80 100 125 160 200 250 315 400 500 630 800 -10 配置1 配置2 配置3 低減量(音圧)[ dB ] 周波数[Hz] 図 3.5: 騒音低減量 (配置 1,2,3) 25 20 15 10 5 0 -5 80 100 125 160 200 250 315 400 500 630 800 -10 配置2 配置4 配置5 低減量(音圧)[ dB ] 周波数[Hz] 図 3.6: 騒音低減量 (配置 2,4,5)

(36)

3.2. 実験 31 全体での音圧の低減量が異なるため,3 つの配置で騒音低減量に差が生じたと考えられる。ま ず,配置 4 では音圧がほとんど変化していない。これは,エラーセンサが二次音源の近傍にあ るため,開口面全体で騒音を低減するほど大きな二次音源出力が得られなかったことが原因と して考えられる。一方,配置 5 ではエラーセンサと二次音源の距離が,最短となる組み合わせ で約 300 mm であるため,開口面全体を制御するために十分な二次音源出力が得られ,開口か ら放射される騒音が低減したと考えられる。しかし,配置 5 は配置 2 と比べて騒音低減量が小 さい。これは,エラーセンサから遠くなるほど騒音低減量は小さくなるため,配置 5 のように 開口の縁にエラーセンサを配置した場合,そこから離れた開口面上では騒音が低減されなかっ たためであると思われる。

3.2.3

騒音源位置と騒音低減量の関係

#       $ % &  ⸘᷹㕙 න૏OO 図 3.7: 騒音源スピーカの配置 (平面図) 本節では騒音源位置と騒音低減量の関係について検討する。騒音源スピーカの位置は図 3.7 に示す A から D の 4 種類から一つを選択した。A,B,C 地点には部屋の角に向けて,D 地点 には開口に向けて騒音源スピーカを床面上に設置した。騒音源信号には 40 – 500 Hz に帯域制 限したホワイトノイズを使用し,参照信号としてコントローラに入力した。開口に設置する二 次音源とエラーセンサの配置を図 3.8 に示す。制御前と制御後の音響放射パワーレベルを計測 した。放射パワーレベルは開口から 200 mm 外側の計測面で音響インテンシティプローブを移 動させて計測した。なお,計測面は開口と同じ大きさである。騒音低減量,すなわち,制御前 と制御後の放射パワーレベルの差を図 3.9 に示す。 騒音源位置によって騒音低減量は異なるが,いずれの配置でも 100 もしくは 125 Hz で騒音低 減量が最大となったのち,周波数が高くなるにつれて小さくなり,250 Hz で騒音低減量は負へ

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と転じた。騒音源スピーカを D 地点に配置したときには,100 Hz で 16 dB,125 Hz で 18 dB 放射パワーレベルが低下した。 250 500 250 600 600 800 立面図 単位:mm 平面図 立面図 二次音源 エラ−センサ 二次音源 エラ−センサ 室内 室外 図 3.8: ANC ユニット 50 63 80 100 125 160 200 250 315 400 500 630 20 15 10 5 0 -5 周波数[Hz] 低減量(放射パワー)[ dB ] 騒音源A 騒音源B 騒音源C 騒音源D 図 3.9: 騒音低減量

3.2.4

開口付近における音響インテンシティ分布

制御前後の音響インテンシティを開口付近において計測した。開口に設置する二次音源とエ ラーセンサの配置を図 3.8 に示す。騒音源スピーカは図 3.7 の D 地点に開口を向けて床面上に

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3.2. 実験 33 計測面A 計測面B 計測面B 計測面A 200 200 1,800 800 600 200 1,400 2,200 計測点 x z y x 単位:mm 200 200 計測点 立面図 平面図 図 3.10: 音響インテンシティ計測点 設置した。騒音源信号には 40 – 500 Hz に帯域制限したホワイトノイズを使用し,参照信号と してコントローラに直接入力した。 図 3.10 に示す計測面 A,B において制御前と制御後の音響インテンシティを計測した。計測 面 A 上には 96 点の計測点を 200 mm 間隔で x 軸方向に 8 点,y 軸方向に 12 点配置し,計測面 B上には 50 点の計測点を 200 mm 間隔で x 軸方向に 5 点,z 軸方向に 10 点配置した。計測面 A 上では音響インテンシティの x,y 軸成分を,計測面 B 上では音響インテンシティの y 軸成分 のみを計測した。計測面 A の音響インテンシティの空間分布を図 3.11 に,計測面 B の音響イ ンテンシティレベルの空間分布を図 3.12 に示す。いずれも 1/3 オクターブバンド分析した中心 周波数 125 Hz と 315 Hz 成分である。まず,計測面 A での音響インテンシティ分布に注目する と,125 Hz では制御前の音響インテンシティが開口から外向きとなっているのに対し,制御後 には開口の騒音源側において左右にその向きを変えている。このことから,125 Hz では開口に おいて騒音が反射されていることがわかる。一方,315 Hz では制御後には二次音源と同一平面 において音響インテンシティが小さくなるなど,制御前後で音場が変化しているものの,部屋 の外側での音響インテンシティは制御前後でほとんど大きさが変わっておらず,所望の制御は 行われなかった。ここで,計測面 B での音響インテンシティレベルに注目すると,制御前の音 響インテンシティレベルは 125 Hz では場所による変化が小さく,315 Hz では場所による変化 が大きい。本節の実験ではエラーセンサを 4 つ配置したのだが,315 Hz のような複雑な音響イ ンテンシティの空間分布を示す周波数成分を制御するにはエラーセンサの数が不十分であった と推測される。

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125 Hz ೙ᓮ೨ ೙ᓮᓟ ቶౝ ቶᄖ 315 Hz ೙ᓮ೨ ೙ᓮᓟ ቶౝ ቶᄖ 図 3.11: 音響インテンシティ(計測面 A)

(40)

3.2. 実験 35 125 Hz ೙ᓮ೨ ೙ᓮᓟ 68 66 dB 64 52 dB 50 48 46 44 42 40 38 38 4446 46 315 Hz ೙ᓮ೨ ೙ᓮᓟ 62 dB 64 66 62 64 66 68 66 64 62 dB 64 64 62 64 66 62 60 60 図 3.12: 音響インテンシティレベル (計測面 B)

(41)

3.2.5

ノイズセンサの配置

 ⸘᷹㕙 # $  㛍㖸Ḯࠬࡇ࡯ࠞ න૏OO 図 3.13: ノイズセンサの配置 50 63 80 100 125 160 200 250 315 400 15 10 5 0 周波数[Hz] 低減量 ( 放射パワー ) [ dB ] ノイズセンサ:A ノイズセンサ:B 40 図 3.14: 騒音低減量 前節までの実験では騒音源信号を参照信号として直接コントローラに入力していたが,本節 では実環境での使用を想定してノイズセンサを設置した実験について述べる。開口に設置する 二次音源とエラーセンサの配置を図 3.8 に示す。騒音源スピーカは部屋の中央に開口を向けて 床面上に設置した。ノイズセンサは図 3.13 に示す A 地点,B 地点のいずれか一方に配置した。 ノイズセンサを A 地点に配置したときには,騒音源スピーカからノイズセンサまでの距離は約 50 mmであった。B 地点に配置するノイズセンサの床からの高さは 1,000 mm であった。騒音

図 4.13: 騒音低減量 (ANRU1 ON,ANRU2 OFF)
図 4.16: インテンシティ分布 (ANRU1 ON,ANRU2 OFF)
表 5.3: 複数の騒音源に対する β と低減量 騒音源位置 防音塀 1 防音塀 2 防音塀 3 β 2.7 1.6 2.6 N 1 ,N 2 低減量 [dB] 	 5.2 3.6 3.8 β 4.0 2.0 2.9 N 2 ,N 3 低減量 	 5.3 2.9 2.5 β 4.7 2.7 3.3 N 3 ,N 4 低減量 	 4.1 2.8 1.9 β 3.0 1.8 2.7 N 1 ,N 2 ,N 3 低減量 	 4.4 3.1 3.1 β 4.1 2.2 3.0 N 2 ,N 3 ,N 4 低減量

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