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第 5 章 遠距離場において騒音を低減するアクティブ防音塀 57

5.5 二つのフィードバックシステムを用いた制御

二次音源1

二次音源2

図 5.13: ANCシステムの配置

5.5. 二つのフィードバックシステムを用いた制御 71

表 5.4: 騒音低減量,制御音及び騒音の平均音圧レベル β1β2

騒音源位置 1,1 3.8,1 5,0.5 5,0.1 (従来手法)

低減量 [dB] 6.3 13.0 4.2 -1.0

N1 制御音 [dB] 73.1 76.3 80.1 82.2

騒音[dB] 76.7 — — — 低減量 3.6 6.1 8.2 6.0

N2 制御音 71.9 74.8 78.3 80.1

騒音 79.2 — — — 低減量 2.0 2.9 3.9 4.3

N3 制御音 67.4 70.1 74.1 76.0

騒音 78.0 — — — 低減量 1.8 2.3 3.3 3.8

N4 制御音 65.2 67.7 72.6 74.7

騒音 76.5 — — —

図5.13に示すように,壁の先端に提案するフィードバックシステムを設置したときのANC による騒音低減量を,従来のフィードバック制御と比較する。騒音源は図5.4のN1,N2,N3, N4地点から一つを選択して設置する。エラーセンサはこれまでと同様に二次音源から25 mm 離して配置する。ANCシステムが単独で動作したときに,従来のフィードバック制御によって エラーセンサ地点において騒音が制御前の1/10に低減されるようにコントローラを設定する。

騒音低減量,制御音及び騒音の平均音圧レベルを表5.4にまとめる。表中の 印は,その騒音 源の配置において,騒音低減量が最も大きい防音塀を意味する。騒音低減量が最大となるβ1β2は,それらを0.1から10まで変化させて求めた。以下,二次音源1の出力の増幅率をβ1,二 次音源2 の出力の増幅率をβ2 とする。

騒音源をN1地点に配置した場合,従来のフィードバック制御(β1 =β2 = 1)を用いたときの 騒音低減量が6.3 dBであるのに対し,提案手法を用いた場合,(β1, β2) = (3.8,1.0)のとき騒音 低減量が最大値13.0 dBとなる。騒音源をN2地点に配置した場合,騒音低減量は従来のフィー ドバック制御を用いた場合3.6 dBであるのに対し,提案手法を用いた場合(β1, β2) = (5,0.5)の とき最大値8.2 dBとなる。騒音源をN3地点及びN4地点に配置した場合,騒音低減量は従来

のフィードバック制御を用いた場合,それぞれ2.0 dB,1.8 dBであるのに対し,提案手法を用 いた場合,(β1, β2) = (5.0,0.1)のとき,それぞれ最大値4.3 dB,3.8 dBとなる。β2が1より小 さくなる制御では,二次音源1から大きな制御音を出力し,二次音源1による制御を微調整す る役割を二次音源2が果たしていると考えられる。

5.4.2節の一つのフィードバックシステムを用いた制御と同様,騒音低減量が最大となるβ1

β2は騒音源の位置によって異なる。特に,(β1, β2) = (5.0,0.1)とすると,騒音源がN3地点もし くはN4 地点にあるときには騒音低減量が最大になるが,騒音源がN1地点にあるときには騒音 低減量は-1.0 dBの逆効果となる。また,制御音と騒音の平均音圧レベルが近いときに騒音低減 量が大きく,従来のフィードバック制御,提案手法共に騒音源が防音塀から遠くなるほど,騒 音低減量は小さくなる。

0 5 10 15㨇m㨉

2 4 6

8 0 3 6

0

-3

㒐㖸႖

9 dB 12

15 15 15 15

12

提案手法

0 5 10 15㨇m㨉

2 4 6 8

3 dB

0 0

0

㒐㖸႖ 0 0

6

従来手法

図 5.14: 騒音低減量(騒音源 : N1地点)

騒音源をN1地点に配置したときの騒音低減量(63 – 800 Hzオーバーオール値)の空間分布 を図5.14に示す。これは従来のフィードバック制御を用いたときと提案手法を用いたときの制

5.5. 二つのフィードバックシステムを用いた制御 73

63 80 100 125 160 200 250 315 400 500 630 800 0

2 4 6 8 10 12 14 16

1.3 4.9

6.2 4.4

6.6

3.0

2.3 7.6

8.1 8.4 6.8

4.4

提案手法 従来手法

周波数[Hz

騒音低減量[dB

図 5.15: 騒音低減量(騒音源 : N1地点)

63 80 100 125 160 200 250 315 400 500 630 800 0

2 4 6 8 10 12 14 16

−1.5 2.0

−0.4 1.8 1.6

2.8 2.1 0.2

1.1 4.0

5.0 5.1

提案手法 従来手法

周波数[Hz]

騒音低減量[dB

図 5.16: 騒音低減量(騒音源 : N2地点)

御領域内の騒音低減量の差が最も大きかった条件である。提案手法の二次音源出力の増幅率β1

β2は,それぞれ3.8,1であり,このとき提案手法の騒音低減量は最大になる。従来のフィー ドバック制御を用いた場合,防音塀付近では地面から高さが4 m以下の範囲で音圧レベルが6 dB以上低下しているが,提案手法ではほぼ同じ範囲で12 dB以上音圧レベルが低下している。

空間分布と同じ条件での,制御領域内でエネルギー平均した騒音低減量の周波数特性を図5.15 に示す。棒グラフに添えた数字は提案手法を用いた場合と従来のフィードバック制御を用いた 場合の騒音低減量の差である。計算を行った全ての周波数において,提案手法が従来のフィー ドバック制御よりも騒音低減量が大きい。この条件では,自動車走行騒音の主成分に近い周波 数でも騒音低減量が大きいため,オーバーオール値の騒音低減量も大きい。

騒音源をN2地点に配置したときの騒音低減量の周波数特性を図5.16に示す。騒音源をN1地 点に配置したときと比べて,提案手法による低周波数での騒音低減量は小さいものの,630,800 Hzでは8 dB以上騒音が低減した。また,図5.12に示す防音塀の先端にシステムを一つ設けた ときの結果と比べて,提案手法による騒音低減量は400 Hz以上では増加しているが,315 Hz 以下では減少している。

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