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第 3 章 開口において騒音を反射する能動制御に関する実験的検討 25

3.2 実験

3.2.2 ANC システムの配置と騒音低減量の関係

騒音源スピーカは図3.3に示す位置に開口に向けて床面上に設置した。騒音源信号には89 –

710 Hzに帯域制限したホワイトノイズを使用し,参照信号としてコントローラに直接入力し

た。開口に設置した二次音源とエラーセンサの配置は図3.4の5種類である。いずれも二次音 源4つ,エラーセンサ4つで構成され,マルチチャンネルコントローラ1台で制御を行った。以 降,これらの機器をまとめてANCユニットと呼ぶ。

まず,二次音源の配置に注目し,配置1,2,3での実験について述べる。配置1と2は開口 の枠に二次音源を設置し,配置3では二次音源を開口中央よりに設置した。また,配置1,3で

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図 3.3: 実験装置の配置(平面図)

は二次音源をエラーセンサよりも騒音源側に設置し,配置2では二次音源をエラーセンサと同 一平面上に設置した。いずれの配置も二次音源は床から600 mm及び1,400 mmの高さに設置 した。配置1,2,3のいずれのエラーセンサも垂直方向の間隔は800 mm,水平方向の間隔は

400 mmである。エラーセンサの間隔は長い方で800 mmであることから,その倍の波長,す

なわち,約200 Hz が制御対象周波数の上限であると推測される。実用性を考慮すると,ユニッ トの奥行が小さくなること,二次音源を開口の縁に設置できることから,配置2がもっとも望 ましい。

配置1,2,3の騒音低減量を図3.5に示す。騒音低減量は図3.3に示す計測点において騒音計

で計測したANCユニット動作前と動作後の音圧レベルの差である。音圧レベルは10秒間の平 均値であり,騒音計は床から1,000 mmの高さに設置した。配置2の騒音低減量が最も大きく,

100 Hzでは音圧レベルが約24 dB 低下した。また,400 Hzでも音圧レベルが約8 dB低下し た。配置1 の騒音低減量がその次に大きく,100,125 Hzにおいて音圧レベルが15 dB以上低 下した。5 dB 以上音圧レベルが低下する上限の周波数は250 Hzであった。また,配置3の性 能が最も低かった。

実用性を考慮すると,エラーセンサを開口の中央付近に配置することは望ましくない。そこ で,エラーセンサを開口の縁に配置しても制御可能であるか検討する。二次音源とエラーセン サの配置は図3.4に示す配置4,5の2種類とし,配置2 と騒音低減量を比較する。いずれも,

二次音源とエラーセンサを同一平面上に配置した。配置4ではエラーセンサを二次音源の直前 に配置し,配置5ではエラーセンサを二次音源から離して配置した。二次音源は配置2 と同じ 位置に設置した。図3.3に示す計測点での騒音低減量を図3.6に示す。

騒音低減量は配置2,5,4の順に小さくなった。開口から放射される騒音を低減するために は開口面全体において音圧を低減する必要があるのだが,エラーセンサの配置によって開口面

3.2. 実験 29

300 400 300

600

600 800

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600

600 800

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300 400 300

600

600 800

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50 900

50

600

600 800

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50 900

50

600

600 800

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300 700

700 300

㈩⟎ න૏㧦OO 図 3.4: ANCユニットの配置

25 20 15 10 5 0 -5

80 100 125 160 200 250 315 400 500 630 800 -10

配置1 配置2 配置3

低減量(音圧)[dB

周波数[Hz]

図 3.5: 騒音低減量(配置1,2,3)

25 20 15 10 5 0 -5

80 100 125 160 200 250 315 400 500 630 800 -10

配置2 配置4 配置5

低減量(音圧)[dB

周波数[Hz

図 3.6: 騒音低減量(配置2,4,5)

3.2. 実験 31 全体での音圧の低減量が異なるため,3つの配置で騒音低減量に差が生じたと考えられる。ま ず,配置4では音圧がほとんど変化していない。これは,エラーセンサが二次音源の近傍にあ るため,開口面全体で騒音を低減するほど大きな二次音源出力が得られなかったことが原因と して考えられる。一方,配置5ではエラーセンサと二次音源の距離が,最短となる組み合わせ

で約300 mmであるため,開口面全体を制御するために十分な二次音源出力が得られ,開口か

ら放射される騒音が低減したと考えられる。しかし,配置5は配置2と比べて騒音低減量が小 さい。これは,エラーセンサから遠くなるほど騒音低減量は小さくなるため,配置5のように 開口の縁にエラーセンサを配置した場合,そこから離れた開口面上では騒音が低減されなかっ たためであると思われる。

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