理学療法学 第
17
巻第5
号477
一
483頁 (1990 年)報 告
脳
血 管
障
害 患者
に
お
け
る
CT
上
の
梗
塞
お よ
び
出
血
の
障
害
部
位
と
歩行能
力
に
つい て
*谷
口典 行
* *神
田
満
佐
野
憲 康
尾 松 健 太 斉 藤
公 明
廣 内 恒
要 旨 脳血 管障害 患者81
例 (平 均 年齢67.
3
歳,
男 性46
例,
女 性35
例,
脳梗塞6
ユ例,
脳出】fll
20
例,
右 片 麻 痺37例,
左 片 麻 痺 44例 )の発 症 後 5週 以 内の CT におい て,
内包 後 脚 (前 部・
巾 部・
後 部 ),
被 殻,
視 床,
半 卵 円 中心 (semioval−
center :SC 領 域 ) の前 後 径 を1〜W
に 四等 分 した各 領 域 を 規 定し,
そ の領 域での障 害の程 度と退 院 時の歩 行 能 力 か らみた重 症 度 との関 連につ いて,
ズ 検 定 と重 回 帰 分 析にて 検 討を行っ た。 そ の結 果t 視 床を除く規 定 領 域の程 度と歩 行 予 後に有 意な関係を認め,一
方、
CT 上の 規 定 領 域に年齢,
性 別 等を含め た 11のカテ ゴ リー
と退 院 時の歩 行 予 後を重 回 帰 分 析で検 討し た場 合,
内包後脚 巾部とSC
領域前部。
後部は他の因子を考慮して も な お有 意に歩行 予後と関連 して おり,
予後 推定の一
要因になりう る と考え ら れ る。 キー
ワー
ド 脳血管 障害,CT
, 歩 行能 力予後 1.
は じ め に Computed Tomography (以 ドCT と略 ) 上の病 巣 と脳血管 障害患者 (以 ドCVA と略)の歩行能 力に関し た報 告は多い1’
9)。
そのな かで運 動 機 能に関 して は内 包 後 脚の病 巣の有 無が重要と述べ て い るもの が多い。
勿 論 予後 をCT 所 見 か ら どの程 度推定 し得るか どうかは患 者 が有する合併 症や阻害因子が影響し, 単に内包後脚障害 の 有 無の みで その予 後を推 定す るの は困 難 と思わ れ るt°}11} 。 し か し な が ら,
発 症直後の確定診 断は勿 論の こ と,
病巣部 位によっ
て お お ま かで も 患者の歩 行予後 が 推 定 出来れば,
我々理学 療 法に携わ るものに とっ て も各 患 者に対する治 療方針の選択が合 理 的な もの と な り,
た と え 限 られ た期 間 内であっ てもよ り有 効 な治 療 を行いや す* Relationship between walking ability of the patients
with
cerebrQvascular
accident
and
the
lesion
sites
of
infarction and hemorrhage on computed tomography
* *公 立日高病 院
Noriyuki Taniguchi
,
RPT,
Mitsuru Kanda,
RPT、
Norly・
asu Sano,
RPT,
Takehiro Omatsu,
MD,
Komei Saito,
MD,
Hisashi Hirouchi,
MD :Hidaka Hospita1(受 付日1987年正2月19 日/受 理日1990年6月4日) い。 その意味におい ても医 師との連 携を得て
CT
上の障 害 病 巣を 認識する こと は重要である。 特に,
歩 行 能 力に っい て は患者を は じめ,
その周 囲の人々の期待も大きく,
理 学 療 法の 目標は 日常 生 活の自立と ともに,
移 動 手 段と し て の歩 行の自立であるとい っ て も過 言で はない。
過 去,
CT
上の病 巣と歩 行 能 力との関 係を述べ て いる報 告では,
前 述の ご とく内 包後脚が重要であるとい っ た点では多く の一
致 を みて いるが12)ls},
そ の 対 象は出 血 例が多 く]’
3),
梗塞例を対象に し た報告の病 巣部位の規定は, 前大脳動 脈や中大 脳 動 脈 領 域の梗 塞 とい っ た区 分 とな り,
出血例 に比べ CT 上の規 定区分は お お まか と い え る鵬 6) 。 また,CT
画 像の基 底 核レ ベ ルの内 包 後 脚に病 巣を認め ない症 例におい て も,
そ の 10mm〜
20 mm 上 位スラ イ ス レベ ルの側 角傍側部に病巣を認め た場合に予後不良な症例を 認め ることも珍 し くなく,
そうい っ た場 合で は基 底 核で の病巣の有無 言いか え れ ば内 包 後 脚に病巣が存在する か否かで歩行 予 後を説 明 する こ と が困 難な場合がある。 そこ で今 回, CT
上の基 底 核 レベ ル と側 角レベ ルの画 像、
ヒの部位を規 定し,
病巣の程度と歩行 能 力の関連につい て検 討したの で報 告す る。478 理学 療 法 学 第17巻 第5号 A1 FI 基 底 核の規 定 (左 側 )
Al
前 角 体 部 外 側 角Al
:A
か ら外 側に引い た線で頭 蓋 骨との接 点 B :A一
ト (A−
A1 × 0ユ) C :内包 後 脚 端 (A−
Cp × 0,
7の接 点 ) D ;B
か らA − Cp
と平行に引く線でC
と 垂直 Cp :脈 絡 叢A − Cp
:内 包 後 脚 内 側 基 準 線 A− C
:内包後脚内側線 (3
等 分し後 脚の前・
中・
後とする) B−
D :内 包 後 脚 外 側 線 P :被殻 (putamen ) T :視床 (thalamus
)P.
A
:後 脚 前 部,
P.
Ml
後 脚 中 部,
P.
P :後 脚 後 部 側 角レベ ル (主 幹 動 脈 領 域 )の規 定 (右 側)E
:前 角 端, E− G
:E− E1
× 0,
25 F :後 角端,
F− G1
:F− F1
×O.
4
G−
G1 :領域外 側基準線 1〜
IV:G−
G 1を4等 分し前 部よ り1〜
IVに区 分 E1 :E か らの外側線で頭蓋 骨との接点 F1 :F か らの外 側線で頭 蓋骨との接点 図 1 基 底 核, 側 角レ ベ ル での 障害領域の規定 且。
対象と 方法 昭 和60年 1月か ら61年 工2月まで の 2年問に当院に 入 院し たCVA
患 者の うち,
発症 後5週 以 内に 撮 影さ れ たCT
上の基 底 核と側 脳 室 側 角レベ ル の スラ イス に て, CVA に よ る病 巣 部 位の確認 可 能 な患 者81
例 (平 均 年 齢 67.
3歳,
男性 46例,
女 性35例,
脳梗ge
61
例 , 脳出 血 20例,
右片麻 痺37例,
左 片 麻 痺44 例)を対象と し た。
CT 上で は,
内包 後脚,
被殻,
視床,
主幹動脈 領 域 (放 射冠 あ るい は半 卵円中心 :semioval−
center :以 下SC
領域と略) をそれ ぞ れ規 定し (図 夏),
更に内 包 後 脚にっ い ては, 前 部,
中部,
後 部の 部 位に三分 割 した.
また,
各 部の病 巣 程 度 を,
日 :病巣を 認 め ない もの(D,
△ :規 定 範 囲の 1/2程 度に病巣を 認 め る もの(2},
鬮 : 規 定 範 囲の ほ ぼ全 域 病 巣を 認め る もの{3)に 分類 した.
尚,
頭 頂 葉に主 な病 巣が あ り, その一
部がSC
領域におよ ん で い る症 例につい て は対象外と し た。一
方,
歩 行 能 力で は,
退 院 時の歩 行能力によ り、
軽症群 (補装具等を使 用 せず 独 立歩 行可能な もの…
1), 中等 症 群 (歩 行に際 し て は補 装 具の使 用が不 可 欠であ る もの の,
移動手 段と し て の歩行は自立し ている もの…
2),
重 症 群 (歩 行 不 能 なもの,
あるいは介助歩行に て数メー
トル の 移 動が可 能 なもの…
3)の 3群に分け,
各 規 定 領 域に お け る 病巣の 程度,
様式との関 連をM
検 定,
重回 帰 分析を 用い検 討 した。 重 回帰分析で は表1
のよ う に, 説明変数を無 齢 性 別,
診 断,
麻 痺 側,
内 包 後 脚 (前・
中・
後 ),
被殻,
視 床, SC
領 域 (前・
後 ) の 11の カテゴ 「}一
と し,
目 的 変 数 を 歩 行 能 力 (1〜
3) と した。
尚,
SC 領 域の重 回 帰 分 析では点 数化した1 〜IV
を前 部と後 部に分け,
SC I+ H (皿 ÷IV)の合計が 2では障害な し (1
), 3
〜
4では部 分 的 障 害 (2),
5 〜6
で は完 全 障害 (3
) として分 析を行っ た。 皿.
結 果 全 症 例81例を内 包 後 脚の障 害の程 度で分 類 すると,
表2
のように内 包 後 脚 障 害な し36
/81 (44.
4% ) 例,
内 包 後脚部 分 的障害21
/81
(25.
9
%) 例,
内 包 後 脚 完 全障害24
/81
(29、
6
%)例であっ た。
更に,
分 類 別の 重 症度では, 後脚障害な しの36
例中,
軽症 群19
例,
中 等症群9
例,
重 症群8
例。 同じく,
後 脚 部 分 的 障 害で は 21例中,
軽 症群か ら順に7
例一 7
例一 7
例。 後 脚 完 全 障害で は24 例中,
2 例一 5
例一
17例であっ た。 更に,
内包後 脚 障害別に被殻とSC
領域の障害で重 症 度 を みた 場合,
後脚 障 害な しで は,
被 殻とSC
領 域 障 害が合 併 し て い る17
例 中,
軽症か ら順に,
6
例一3
例一
8例。 被殻のみ障 害が あ る例で は3
例すべてが軽 症。SC
領 域 のみ障 害が あ る例で は14
例 中,
同じ く9
例一5
例一
〇 例。 被殻とSC 領域そ の いずれ にも障害を認めない場合脳【伍管 障 害 患 者にお け る
CTE
の梗 塞お よ び出血の障害部位と歩行能 力にっ いて 479 表 1 重 回帰分析に お け る説 明 変数 と目的 変 数 カテ ゴ リー
カテ ゴ リー
数 年 齢 50歳 未 満 50〜
60歳 60〜
70歳 7D歳以 卜 4 性 別 男 女2
診 断 脳 梗 塞 脳 出血 2 麻 痺 右 麻痺左 麻 輝2
説 明 変 数 前 部 病 巣 な し 夏/2
病巣 完全病巣 3 中 部 ↑ 3 後 部 ↑3
被 殻●
↑3
視 床 ↑ 3SC
前 部 ↑3
SC
後 部 ↑ 3一」
’
目 的 変 数 1.
歩 行 自立 2.
補装具使用 して歩行 自立 3.
歩行 不 能 は,
軽 症,
中 等 症 各 i例で,
いずれ も視 床の み に病 巣を 認めた。 後脚部 分的障害で は被殻とSC
領域の障 害が 合 併して い る9
例 中,
軽症 か ら順に 1例一 2
例一 6
例。 被殻だ けの障害は な く,SC
領域の み障 害の8
例 中,
同 じく3
例一
一4
例一 1
例。 その い ずれに も障害の ない 4例 では,
同じ く3
例 (2
例は視床に病巣有す)− 1
例一
〇 例であっ た。 後脚完全 障害で は,
被殻とSC 領域の障 害が合併して いる 16例中,
軽症か ら川頁に, 0
例一 3
例一
13例。
被 殻だけ の障 害 例はな く,
SC 領 域の み障 害 のある5
例 中, 同 じ く1例一 2
例一 2t
歹II。 その いず れに も障害の ない3
例で は同じ く1例一
〇例一
2例であっ た。
表3
は全 症例の各規定領域にお ける障害の程 度 と歩 行 能 力をズ検定し た もので, 視 床 (xt=
e.
90:NS )を除 くすべ て の規 定 領 域にっ い て そ の障 害の程 渡は歩 行 予 後 と有意な関係を示した。 次に,
表4
は年齢 をは じめ とし たカ テ ゴ リー
(説 明 変 表 2 全 症例 81例の 内包 後 脚 障 害 別の被 殻〜SC
病 巣 様 式と重症 度 被 殻SC
領域 軽 症 群 巾等症群 重 症 群 計 團 また は ▲ 圏ま た は ▲6
3
8
17
内 包 後 脚 病 巣な し 圏 または▲ な し 3 0 03
(N蹠
36) な し 囮ま たは▲ 9 5Q
14 な し な し (1視 ) (1視 ) 0 (2視 ) 團 ま た は ▲ 鬮 ま た は ▲ 1 2 6 9 内 包 後 脚 部 分 病 巣 ■また は ▲ な し 0 0 0 0 (N − 21
) な し 圏ま た は ▲3
4
1
8
な し な し3
(2視) 1 0 4(2視 ) 鬮ま たは▲ 團ま たは▲ 03
13 16 内 包 後 脚 完 全病 巣 圏ま た は ▲ な しo
o
0 0 (N−
24} な し 圜ま た は ▲ 1 2 2 5 な し な し 1 0 2 3 十二
一
.
口28
21
3281
480
理学療法学 第 17巻 第5.
号 表3 各 規 定 領 域の障 害 程 度と歩 行能力との関 係 げ 検 定 ) 障 害部位 障害程 度 歩 行 能 カ 軽症群 中 等 症 群 重 症 群 / 検 定 (F 値) 後脚前 部 なし 部 分的 完 全2520
1434 重9311
12,
15
* * 後 脚 中部 な し 部 分 的 完 全2151
885
11814
17.
50キ 後 脚 後 部 な し 部分 的 完 全 261G1551
13812
26,
11*
被 殻 な し 部 分 的 完 全 17100 1254 6 護 23 35.
47*
視 床 な し 部 分 的 完 全 2133 1731 2733 0.
90 N.
S SCI
な し 部分的 完全 2232 1416 572130.
61
* SCH
な し 部分的 完 全 1782 1245 4623 29.
19卞SC
皿 な し 部 分 的 完 全2062
9758177
工3。
82
*SC
IV な し 部 分的 完 全2610
2010 175H23.
68
* * P<O.
01 * * p<0、
G2
表4 重 回 帰 分 析 偏 相 関 係 数 t値 p値 内包 後脚巾部CCSS
年 性 被 部 部 齢 別 殻 前 後0.
2210
,
2950.
2980.
1800
,
2110.
1762 .
0102
.
3362
.
7561.
6841
.
8171.
415
pく0 ,
05p
<0,
05P <0 ,
01p
く0 .
1P
<0.
1P <O .
22
% ユ74512
.
匚 り 10
即 ( 数 率 値 係 帰 与 回 重 寄F
数 )と, 歩行能 力 (目 的 変数 )との関 連を 重回 帰 分 析で 表 したもので ある。
そ れによ る と,
内 包 後 脚 中 部, SC
領 域の前 部と後部,
年 齢,
性別, 被殻の 6っ の要素が重 回 帰係数 (R
)O.
742,
寄与tt・O.
551
で歩行能力の程度 を 説 明し うる因 子であ ること が明ら か と なっ た。 こ の う ち,
sc
領域前部,
後部,
お よび,
内 包 後脚中 部の 3項 目の 偏 相 関 係 数は統 計 学 的に有意であっ た。 表 5は各カ テゴ リー
相 互の 関連 を 単 相 関 行 列で表 した もの で あ る。 その な か で,O,
5
以 上の相関を示 す もの と して内包後 脚の 各 規 定領 域間 と,
被 殻とSC 領 域 前 部 間 が あっ た。
脳血管 障害 患者に おける
CT .
.
E
の梗塞お よ び出血の障害部位と歩行能 力にっ いて 481 表5
単相関行列 年 齢 性 別 診 断 麻痺側 前 部 中 部 後 部 被 殻 視 床 前 部 後 部 歩行能力0.
21
年 齢 LOO 性 別 診 断 麻 痺 後 脚 前 部 後脚 中部 後脚後 部 被 殻 視 床SC
前 部SC
後 部0.
21
− 0,
01
0 ,
02
0.
亙1−
0.
21 0.
031.
00
0.
02
0 ,
04
1.
00
− 0 ,16
1,
00O.
39
0.
150,
25
G.
03
−
0.
03 1.
00
0.
42
− 0.
060、
11
0.
17
− 0.
090,
61LOO
0,
53
0.
57
0.
16− 0,
00
0,
22
0.
15
0,
04
− 0.00
−
0.
150.
00
0.
64
0,
34
0.
69
0.
27
1、
00
0.
43 1.
00一
〇.
03
−
0.
050.
04
0 .
43…
0.
06− 0 .
09
0 .
16
− 0,03
− 0.
29 1,
000.
55
0.
480.
11
0,
14
0.
03
− 0.
08
− 0.
Ol O.
05− 0.
00
−−O.
OO
O.
37
0,
26
0.
23
0,
25
0.
44 0.
41 0.
71 0.
40−
0,
31 0.
00 1.
000.
28
LOO 表 6は対象例の 阻害因 子を表し た もの で,
軽症 群は 運 動性失 語 症,
中等症群は痙性によ る運動へ の影響が主で あ る が, 重 症 群で は感 覚性失語 症, 病態認 知 障害, 意欲 低下,
記銘力低 下,
失見当識,
失禁な ど が多く み ら れ た。 な かで も,
重症群の左片麻痺は右 片麻 痺に比べ失語症以 外の阻害因 子が著 し く多 様であっ
た。IV
.
考察
CT
と片麻輝の運 動 機 能 予 後に関 する報 告の な かで,
亀 山は内 包 後 脚の後 1/3
の障 害で 重 症 例が多い と しL2)La〕,
荒木は後脚に加え,
主幹動脈閉塞の方が基底 核 小梗塞より も重 症である と述べ て い る% ま た,
綱 島ら は側 脳室体 部 放 線 冠 梗 塞で は,
そ の前 部および後 部の限 局牲梗 塞が最 も予 後が良 好だ と し6),
更に荒 木は半 卵 円 中心の巾 央 部の梗 塞が最も予 後が不 良であると述べて い る9 >。
本 研 究におい て は表2のように内包 後 脚の病 巣が 完 全 な 形で認 められる場合は,
17/24 (70.
3
%)例が重 症で,
反 対に 内包 後 脚に な ん ら病 巣を 認 め ない場 合の重 症 例は8
/36 (22.
2%)例で あ り,
後脚 障害例で は予後 不良で あ る とい う 見解と ほぼ同様の結 果とい え る。 し か しこ の場 合,
重 症例の 84% (27/32 例)が被 殻とSC 領 域に病 巣が及ん で おり,
内 包 後 脚に病巣を認め ない症 例におい て も重 症 例の 8例 すべ て に被 殻 とSC
領 域 両 者 の病 巣を認めた。
これは,
今 村らが脳 梗 塞 群の CT 上の 病 巣分 類で示 して い る ように,
基底核 梗 塞 例な どのCT
所 見で は内 包のみに限 局 した病 巣は少なく,
実 際は被 殻 とSC 領域を含めた病 巣の多い ことも示してお り7 ),
CT 上での予後判定に おいて は内 包 後 脚 とは別に, 被殻か ら SC 領 域に かけての病 巣の把 握が ひとっ の要 因に なる と 考え ら れ る。 表3
は各基 底領域の障害 程度と歩行能力の関連 を 示 し た もの であ る が, 視床以外のすべ ての領域にっいて有意 な関 連が 認 め ら れ,
そ れ ら規定領域の検討が歩 行予後 を 推測する う えで重要であ る こ と が示唆さ れ た。 更に, 内 包後 脚,
被 殻,SC
領 域な ど は相互に密接な 関係を有し て い る た め,
そ れ ら が そ れ ぞ れ独 立してどの程 度歩行能 力 予 後に関 与 して い るか を知る ための重 回帰 分 析におい て今 回 11の カテ ゴ 1丿一
に て分 析し た結 果で は,
表4
に 示 す6項 目で歩行 能力の程度を約55% 説 明しうる と考 え ら れ た が,
その うちの 内包後脚 中部,SC
前・
後部の3
項目の偏相関係数が有意であっ た。 ま た,
表5
の単相 関 係 数で は歩 行に対して内包後 脚全体と被 殻が高い相関 を示して いた ものの,
偏相関係数で は後脚は中部のみ が 有意 と な り,
被殻は相 関の傾向を示すにと ど まっ
た。 こ の こと は内包 後脚も中 部のみ が単 独に病 巣を有して い る の ではな く,
前 部・
後 部の病 巣 も同 時に伴っ て いること 表6 症例の阻害因 子 軽 症 群 中 等 症 群 重 症群 右 左 右 左 右 左 計 感 覚 性 失 語 症0
01
07
08
運 動 性 失 語 症 7 03 04 014 構 音 障 害5
42
21
721
病 態認知障害 O l0 01 79 意 欲 低 ド 122
00
1116 記銘力・
見当識障害O
l001
57
失 禁 ll0
03
813
痙 性 亢 進 O l5 61 619 言十 14 1013
8
18
44
482 理学 療 法学 第 17 巻第5号 が多 く
,
その な かで も後 脚 中部は他病巣との関 連を考慮 して も な お,
独立 して歩 行 能 力に関連して いるこ と を示 唆して い る。
更に,
SC 領域で は前部,
後部ともに歩 行 予 後との関 連が高く,
そ れ らの障害の程 度で予 後を推 定 し得ること が可 能と考え ら れ る。 内 包 後 脚とSC 領 域での錐体路の局 在 部 位にっ い て は 既に多くの報 告が な さ れて いる もの の,
いま だ統t一
さ れ た見解に至っ て い る と はいえ ない11−
1「
°
) 。 緒 方は報告の中 で錐体路につ いてRoss
の研 究 を 紹介して いる。 そ れに よ ると,
運勳線維は大 脳 皮 質 運 動 野よ り下 行す るにっ れ 内包後脚の後半 部に集 中 す る とい う もので あ る16 )。 っ ま り,
神 経 線 維は運 動野よ りSC
領域の Hない し皿を通 過 し, 更に斜め後 方に下 行しっ っ内 包 後 脚に至る経路を と る もの と 解釈で き る。 こ の ことは亀 山らの報告と同じで 現 在で は通説と なっ ており,
本 研 究で も内 包 後脚 中部を 中心 と し た病巣が歩 行 予 後に関係していること が再確認 さ れ た。 ま た,SC
領 域にっ い ても病 巣が単 独に存 在し てい る場 合であっ て も歩行 予後推定の一
要因に なり得 る と考えられ る。
冒 頭に述べ た よ うに歩 行 能 力の予後 推 定 には患 者 個 人の合 併 症,
阻害因子, 運動 麻痺の左 右 差,
年齢な ど様々な影 響 を 十 分 把握す るこ と が不 可 欠で あ り1°)Ll),
今 回 行っ たCT 所 見か らの予後推定は その一
手 段にす ぎ ない。 対象者の阻害 因子 (表6
)を み た場 合,
重 症 群で は他 群に比べ左片麻痺 例に病態 認知,
記 銘 力,
意 欲な どの著しい低 下が共通 して認め ら れ る。 それ ら症 例CT
で は今 回の規 定領域以外に も広範な病巣が認め ら れること もあり, その ような場 合,CT
所 見のみ に よ る 予 後の推定に限 界が あ ること は否 定で きない。 し た がっ て,
理学 療法遂 行におい て,
多 面 的 な評価の も とに障害 の 内容と程 度に応じ た治 療 計 画 をたて る と き,
医 師との 連携を保ち脳自体の損 傷がも た らす症状をより正確に把 握し,
更に は,
運 動 機 能 面は勿 論の こと,
今 後は高 次 脳 機 能障 害とCT
上の病巣との関連につい て も解 明して ゆ く必要が あ る と考えられる。V .
ま と めCT 上の病 巣と歩 行 予 後にっ い て次の こと がい え る。
1.
内包後脚の各部に完 全,
ない しは部 分 的 な 病巣が 存在す る場合で は軽 症 例は少な く,
一
一
方,
た と え内 包 後 脚に病 巣を認め ない場 合で あっ て も,
被 殻と SC 領 域の 病 巣が存 在 する場合で は 重 症例に至る傾 向を認め たe 2.
歩 行 能 力 予後 と各規定領域 (内 包後 脚〜SC
領 域 )との / 検 定で は視床以外の 規定領 域との問に有 意 な関 係 を認め た、 3,
CT 上の規定 領域に年 齢な どを 含めた 11の カ テ ゴ リー
と歩行予 後との重 回帰 分析の結 果,
内 包 後 脚 中 部 とSC
領域 (前 部・
後 部 )に有 意な関 係 を 認め,
その部 位で の予後推定も有用と考え られ る。
最.
後に稿を終える にあた り,
御校 閲を賜り ま し た金 沢 大学医療技 術 短 期 大 学 部,
奈 良 勲 教 授に深 謝いた し ま す。尚
,
本論文の要旨は第24
回日本 理 学 療 法 士 学会で発 表し た。 引 用・
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483<Abstract>
Relationship between Walking Abilityof the Patientswith Cerebrovascular
Aceident
and theLesion Sitesof Infarction and Hemorrhage on Computed TomegraphyNoriyuki TANIGUCHL RPT, Mitsuru KANDA,
RPT,
Noriyasu
SANO,
RPT,Takehiro
OMATSU,
MD,
Komei
SAITO,
MD,
Hisashi
HIROUCHL
MD
Hidaka
Hbspital
Correlation
between
walking ability of the patients with cerebrovascular accident(CVA)
and the
lesion
sites ofinfarction
andhemorrhage
was evaluatedin
81
patients,(mean
age167.3
years,
46
males and35
females).
The
infarction
andhemorrhage
sites weredivided
into
4
areas according tothe computed tomography(CT>
findings;1)
posteriorcrus ofinternal
cap$ule, 2)putamen,
3)
thalamus and4)
area of semioval center(SC),The
patients whohad
lesiens
in
theposteriorcrus of internal¢apsule showed impaired walking ability. Even ifthere isne lesion
in
the
posteriorcrus,the
watking prognosis wasbad
when thelesions
in
putamen andSC
area exist. x2analysis showed that thedegree
of theCVA
lesion
relates with the severity of the patienVs walking abilityin
allsltes exceptfor
thalamus.Mukiple
regression analysis revealedthat the posterior crus of
internal
capsule and the anterior and posterior portion ofSC
areawere independently and significantly related to thevariation
in
walking ability of the patients.From thesefindings,we concluded