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出血性脳梗塞発症に関わる脳血流状態のdynamic CTによる検討

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原 著

〔書女騨奮38第鞍元肇1言〕

出血性脳梗塞発症に関わる脳血流状態の

dynamic CTによる検討

東京女子医科大学 神経内科学教室(主任::丸山勝一教授) シバ ガキ ヤス ロウ

柴 垣 泰 郎

(受付 平成元年3月11日)

AStudy for the Correlation of Hemorrhagic Cerebral Infarction with

the Hemodynamics Measured by Dynamic CT

Yasuro SHIBAGAKI

Department of Neurology(Director:Prof. Shoichi MARUYAMA), Tokyo Women’s Medical College

In 15 cases of cerebral infarction(9 embolisms,6thrombosises), dynamic CT scans were repeatedly undertaken during 4 week period of stroke. The ratio of peak height to mean transit time (PH/MTT), which was calculated from density time curve,was used as an index of cerebral blood flow. Hemorrhagic infarction was defined as a high density area with CT value over 50 within low density

area.

The PH/MTT was significantly increased after the appearance of hemorrhagic infarction. Nine of 10 areas, in which hemorrhagic infarctions were not recognized after recovery of PH/MTT to over O.5, did not show hemorrhagic infarction during 4 week period of stroke.

The areas in which hemorrhagic infarctions were appeared during 4 week period of stroke, had more prolonged period of low PH/MTT values than the areas in which hemorrhagic infarctions were not rtecognized.

In conclusion dynamic CT is useful for predicting of hemorrhagic infarction.

はじめに

出血性脳梗塞(hemorrhagic cerebral infarc・

tion, HI)は中等度以上の大きさの脳梗塞,特に

脳塞栓の症例において臨床上しぼしば認められる

病態である1)耐.また,近年の脳梗塞に対する抗凝

固療法,血栓溶解療法の普及に伴い,合併症とし

てのHIが問題となってきている.しかし現在の

時点ではHI発症の正確な予測は困難であ

り1》鋤,また有効な予防法も解明されていない6).

さらにHI発症と脳血流の回復との間には密接な

関連があることは既に確立されているがD動,HI

の正確な成因に関してはなお不明確な点が多

い1ト5).またHI発症と脳血流回復との関係も,主

に脳血管撮影における閉塞血管の再開通,あるい

は側副血行の発達という定性的面から報告されて

いるものが多く2)∼4)7),HI発症の病態を脳血流状

態の定量的変化の観点から述べた臨床的報告は殆

んど見あたらない.

今回,著者は急性期脳梗塞症例に対しdynamic

CTを用いて, HI発症と関連する脳血流状態を定

量的に検:討し,HI発症の予測に関しdynamic CT

が臨床上有用であるとの結論を得たので報告す

る.

対 象

対象は昭和57年8月より63年9月までの期間に

当科に入院し,経時的にdynamic CTにて観察し

(2)

得た中大脳動脈皮質枝領域の脳梗塞患者15例(男

性8例,女性7例,平均年齢61.2±12.7歳)であ

る.

なおこれらの症例において,経過中著明な高血

圧あるいは著しい血圧の変動を認めたものは存在

しなかった.

方 法

Orbito・meatanineに平行に撮影されたCT画

像上の,側脳室体部レベルの中大脳動脈皮質枝分

枝(prefronta1, precentra1, central, parieta1,

angular arteries)領域毎に関心領域(region of

interest, ROI)を設定し(図1),各ROI毎にHI

の有無を検討した.CT(使用CT:TCT・60A・30,

X線管電圧120KVp)上各ROI内に明らかな高吸

収域(CT値≧50)を認めた場合にHIが出現した

ROI(以下HI出現(+)ROIとする)と判定し7),

脳梗塞発症後4週間に渡りCT上明らかな高吸収

Center of gravity

Mean transit ti刷e

(MTT)

図l Dynamic CTの方法

上図は左右のcentral arteryを関心領域としたden− sity time cuwe,下図はga㎜a一丘tting後のdensity time Curveと各parameter.

域を認めない場合にHIが出現しなかったROI

(以下HI出現(一)ROIとする)と判定した.ま

た今回の検討では中大脳動脈皮質枝領域内のHI

のみを対象とし,穿通枝領域のHIは除外した.

内訳は表1,2のごとく,脳塞栓9例において

20ROI(HI出現(十)ROI:11, HI出現(一)ROI:

9)であり,脳血栓6例において11ROI(HI出現

(+)ROI:3, HI出現(一)ROI:8)である.

Dynamic CTは東芝TCT・60A−30を使用し,

ヨード造影剤45mlを自動注入機を用いて秒間8

m1の速度で右尺側肘静脈より注入し, orbito−

meatal lineに平行な側脳室体部レベルにて,2.0

秒の間隔をおいて4.5秒scanを連続的に計8回

行った.その出品画像を時間的に3分割した後図

1に示すごとくCT上にROIを設定し, gamma・

丘ttingを’行いdensity time curveを作成し

た8)噂14).さらに各ROIのdensity time curveセこお

ける注入前とpeakのdensityの差をpeak

height(PH),density t量me curve上その立ち上

がりより重心の位置までの時間をmean transit

time(MTT)とし, PHとMTTの比(PH/MTT)

を脳血流状態を評価する指標として用いた8}∼14).

なお,density time curveを作成できないほど血

流状態が不良な場合は,PH/MTTニ0.05と設定

した,その後,以上の各ROIにおけるHI出現の

有無とPH/MTTとの関係を見た.また, Student

のt・検定を用いて統計学的処理を行った.

結 果

脳塞栓,血栓症例の梗塞巣の部位,大きさ,各

ROI別のdynamic CT施行時期,およびPH/

MTTを表1,2に示す.

1.脳塞栓症例における,HI出現とPH/MTT

の関係

1)HI出現前後でのPH/MTTの変化

図2は脳塞栓症例中,HI出現(+)ROI群の

PH/MTTの経時的変化を示す.脳梗塞発症後時

間を経るにしたがってPH/MTTの上昇が認め

られ,PH/MTTの著しい上昇の後にHIが出現

して来る傾向が認められた.またHIが出現した

11ROIは全てHI出現時にPH/MTT≧0.3を示

した.

(3)

表1 脳塞栓症例:脳梗塞発症より見たdynamic CT施行時期とPH/MTT,および梗塞領域

No

P

Name, Ys

Ar

Dynamic CT施行時期 d 日, h:時間 1

E

Y.S.,36 .

PC

2d7h 6d 27d n.6 1.38 1,06 2

E

Y.Y.,72

PF

oC

6h 4d 8d 26d n.09 0.26 1.60 1.05 O.03 0.34 1.70 0.99 3

E

J.S。,78

PF

oC

bE

oA

3h ldlh 2dlh 4d lOd n.02 0.96 0.94 0.97 0,85 O,04 0.13 0.91 0,90 0.98 O.06 0.12 0.82 1.10 1.43 O,07 0.12 0.02 0.57 1.02 4

E

S.K.,61 17h 2d23h lld 25d

PF

oC

bE

0.29 0.09 O.08 0.03 O,97 1.32 瓢・/:’lI湿9㌔ くG.:50・ ≒G.99 F“ 々 2.11 1.69 5

E

S.T.,67

PF

oC

bE

6h 2d12h gd 26d n.05 0.15 0.55 0.98 @ 瓶h㍉℃ O.05 0.05 0,18 ^王.〔}7:、 @ 冗 、甘 毛℃卜 肌℃

O・05 怖ξ, 涙1・埠∵。、ユほ豊

6

E

N.N.,63

PC

5d lld 宴[瀦磯,26※・二、 、 ㌔ 7

E

N.A.,61

PC

1d12h lOd 20d 30d @ “ 、

O・10 0・77:勲ご鱗,

8

E

S.T.,47 1d8h 5d lld 28d

PC

bE

0.03 0,30 O.03 0.33 噸碧’

E地 ‘

} 、E:1のコ細く毛 γる一む醜い㌦七帰此’臨 9

E

H.N.,50 2d5h 3d22h 17d 30d `CA(+)

PF

oC

bE

0.05 0.43 O.05 0.06 O.05 0.13 殖14歓、o総・{¢.3α買0.0$ 、 、 {愈.3§こ:窟07

P:梗塞の様式,E:塞栓, Ys:年齢, Ar:梗塞の領域, PF:prefronta1, PC:precentra1, CE:central, PA=parietal, ACA(+):前大脳動脈領域の梗塞(+)

[=コ・出血腿梗塞

図3はHI出現前後でのPH/MTTの変化を示

す.PH/MTTはHI出現前0.24±0.23であった

ものが出現後0,74±0.28となり,有意な上昇を示

した(p<0.01).

2)PH/MTTの上昇時期とHI出現との関係

図4は脳塞栓症例中,HI出現(一)ROI群にお

ける,PH/MTTの経時的変化を示す. HI出現

(+)ROI群と同様に,脳梗塞発症後時間を経るに

したがってPH/MTTの上昇が認められ,しかも

PH/MTTの著しい上昇を示すROIも存在した.

脳塞栓症例中,経過中PH/MTTが0.3未満か

ら0.3以上への上昇(以下PH/MTT<0.3→≧0。3

とする)を示したROIは, HI出現(+)ROI群

で10ROI(5症例), HI出現(一)ROI群で7ROI

(3症例),計17ROI存在した(表1,2,図2,

4).

図5は経過中PH/MTT〈0.3→≧0.3を示した

ROIで,上昇前後のPH/MTT,すなわち経過中

(4)

表2 脳血栓症例:脳梗塞発症より見たdynamic CT施行時期とPH/MTT,

および梗塞領域

No

P

Name, Ys

Ar

Dynamic CT施行時期 d:日, h:時間 !0

T

K.Y.,81

PA

2d12h 10d 28d n.18 0.91 0.80 11

T

K.H.,53

PF

15d 30d n.22 0.20 12

T

F.T.,66

PC

bE

5d 13d n.90 0.29 O.46 1.16 13

T

Y.N.,75 `CA(+)

PF

oC

bE

oA

3h 22h 5d 28d n,05 0.05 0.05 0.05 O.05 0,05 0.05 0.05 O.05 0.05 0.05 0.05 O.05 0.05 0.05 0.05 14

T

D.M.,61

PA

2d12h 22d n.03 :φ譲ll: 15

T

Y.F.,47 4d 22d

PC

bE

一華’L二

撃瑚i鯵,、蒙、潔ピ

P:梗塞の様式,T:血栓, Ys:年齢, Ar:梗塞の領域, PF:prefrontal, PC l

precentra1, CE:central, PA:parietal, ACA(十):前大脳動脈領域の梗塞(十)

[董コ出魚脳薩

のPH/MTTの最小値,最大値をHI出現(+)

ROI群とHI出現(一)ROI群との問で比較した

ものである.両群間においてPH/MTTの最小値

に差は認められず,PH/MTTの最大値はm出

現(+)ROI群で有意に低値を示した(p<0.05).

図6は経過中PH/MTT〈0.3→≧0.3を示した

ROIで, PH/MTTの経時的変化をHI出現(+)

ROI群とHI出現(一)ROI群との問で比較した

ものである.脳梗塞発症48∼71時間後では,PH/

MTTはHI出現(+)ROI群で有意に低値を示し

た(p<0.05).

図7はPH/MTTく0.3→≧0.3を示す直前まで

の,各ROI毎のPH/MTTの推移を見たもので

ある.HI出現(+)ROI群ではHI出現(一)ROI

群に比し,PH/MTTの二値が脳梗塞発症後比較

的長期間持続した後にPH/MTT<0.3→≧0.3を

きたしている傾向が認められた.

3)PH/MTTとその後のHI出現の有無との

関係

HI出現(十)ROI群とHI出現(一)ROI群を

併せて考えると,PH/MTT≧0.3を示した時点で

HIが認められなかった13ROI中,9ROIではその

後もHIは出現しなかった(図2,4).また, PH/

MTT≧0.5を示した時点でHIが認められなかっ

た10ROI中,9ROIではその後もHIは出現せず

(図2,4),残りの1ROIではPH/MTT≧0.5を

最初に示した時点ではHIは認められずその後

HIが出現したが, PH/MTT≧0.5を最初に示し

た時点でCT値は50以下であったが既にisoden・

sity areaが存在した.

2.脳血栓症例における,HI出現とPH/MTT

との関係

図8は脳血栓症例中,HI出現(+)ROI群にお

けるPH/MTTの経時的変化を示す. HI出現時

には全例PH/MTT≧0.3を示した.

図9は脳血栓症例中,HI出現(一)ROI群にお

けるPH/MTTの経時的変化を示す.脳塞栓症例

とは異なり,経過中常にPH/MTTが低値(<

0.03)を示すROIが存在した.

また脳血栓症例中,経過中PH/MTTく0.3→≧

(5)

⊃H/酢TT ,.5 ,,o o.5 o,3 O H工出現前 ● H王出現後 6 ρ ■ P日/岡Tτ 書.5 1,0 0.5

転謬蕪

O.3 6 星2h l 2 3 4 5 6 7d 2 3 4冒 脳梗塞発症後経過時問 hl時聞,d旧,w=週

図2 脳塞栓症例,出血性脳梗塞(HDが出現した群

におけるPH/MTTの経時的変化

O HI出現(一)RO工 φ ¢. 6触・・::::計② φ

諺窪岬

掾宦D ノ ρ、 Q f1O .『φ

b

OP

612ト1234567d 234w

脳梗塞発症後経過時間 hl時問,d:日,w:週 図4 脳塞栓症例,出血性脳梗塞(HI)が出現しなかっ

た群におけるPH/MTTの経時的変化

PH川TT 1.5 1,9 0.5 ● HI出現後 O HI出現前 0,24 ±0.23

「一一Pく。』1一一

● D.74 ±0.28 出現前 出現後

図3 脳塞栓症例,出血性脳梗塞(HD出現前後の

PH/MTTの変化

03の上昇を示したROIは, HI出現(十)群で1

ROI(症例No.14), HI出現(一)ROI群で1ROI

(症例No.10)存在し,脳梗塞発症2日12時間後の

PH/MTTはHI出現(+)ROIでは0.03であり,

HI出現(一)ROIでは0.18であった(表1,2,

図8,9).

考 察

HI発症の病態生理としては,内皮細胞が障害

を受けた毛細血管,もしくは血液脳関門の未熟な

新生血管への血流の再開が重要であることが定説

となりつつある1)5)15)∼18).HI発症に関わる因子と

しては血管内皮細胞の虚血,新生血管の関与の他,

脳浮腫に伴う脳組織内小血管の圧迫および偏位,

静脈系のうっ血,あるいは血流再開時の急激な動

脈内圧の上昇等が考えられているD5}15)∼22).また梗

塞巣の大ぎさ,神経症状の重症度とHI発症の頻

度とが相関することが報告されている5).HI発症

(6)

PH/団TT 1.5 1.0 0.5 ・ HI出現(+)RDI群 O H工出現(一)201群 N.s.

〇・05 ● ・…2

「王細筆:㌔2

● ● : ● ● ● ● ● ● く ロロう

〇 ○ § t:㌔8 1.24 ±0.33 PH/hTT

L5

1.0 0.5 HI出現(+) (一) (+) (一) 最小値 最大値

図5 脳塞栓症例,経過中PH/MTTの上昇.(PH/

MTT〈0.3→≧0.3)を認めたROIにおける, PH/

MTTの最小値,最大値と出血性脳梗塞(HI)出現

の有無

の機序は正確には解明されていないものの,血管

内皮細胞の虚血は重要な位置を占めると考えられ

ている1)∼5)15)心23).その機序はまず内皮細胞に虚血

性変化が生じ,その後酵素作用により血管壁が消

化され,その部位に血流の再開が起こった際に出

血が起こるとされている2)19)20).またHIに関連す

る血流再開の様式としては閉塞血管の再開通の

他,軟髄膜側副路による閉塞末梢域からの逆行性

の再潅流が重要視されている2)19)20).以上のごとく

HI発症と血管内皮細胞の虚血および脳血流の回

復との間には密接な関連があることはよく知られ

ており,動物実験モデルでは虚血の程度およびそ

の持続時間,血流の再開と,HI発症との問の関係

は定量的に確認されている15)24)∼29).しかし臨床的

にはHIに関連する脳血流状態の変化は脳血管撮

影による確認が殆んどであり2)∼鋤,脳血流状態の

定量的評価をHI発症前後で行ったとの報告はな

い. ○ HI出現(一娘0工群 ● H工出現(+)ROI群 P〈0.05 [ 一 Oh l 24h 48b 72}1 4d 8d 15d 22d I / I I l I I I I 23h 47h 71h 95h 7d 14d 21d 脳梗塞発症後経過時間(hl時間,d:日,w:週)

図6 脳塞栓症例,経過中PH/MTTの上昇.(PH/

MTT<0.3→≧0,3)を認めたROIにおける, PH/

MTTの経時的変化と出血性脳梗塞(HI)出現の有

無 Pほ/MT下 o.3 0.2 0、1 ○』一〇HI出現〔一〕ROI ←一●HI出現(+凍0工 ○∫ 臨三: ● . o ’○ .o 3 6 12 18 24 36 48 60h 3d 4 d 5d 6d 7 d 2冒 脳梗塞発症後経過時間 h:時間,d:日,w;週

図7 脳塞栓症例,経過中PH/MTTの上昇(PH/

MTT<0.3→≧0.3)を認めたROIにおける, PH/ MTT<0.3を示した期間と出血性脳梗塞(HI)出現 の有無

脳血流測定法は近年著しく向上したが,いずれ

の方法も侵襲性,普及性,簡便性に問題があり,

脳梗塞のルーチン検査として臨床的に広く利用さ

れるには至っていない.一方,dynamlc CTは通

一633一

(7)

PH/HTT 1,5 1.0 O,5 0.3

q

O HI出現前 ● HI出現後 歌, ● P目/M丁T 1.5 1.0 0.5 0,3 O HI出現(一)ROI d Q Q ∫P、、... 6 ノ ’1

O

’‘ 潤c ○.. ’10

6鳳2ト1234567d 234w

脳梗塞発症後経過時間 h:時間,d:日,w:週 e一一一一● :この期間にHIが出現したことを示す

図8 脳血栓症例,出血性脳梗塞(HDが出現した群

における,PH/MTTの経時的変化

612ト1234567d 234w

脳梗塞発症後経過時間 h:時間,d:日,w:田 図9 脳血栓症例,出血性脳梗塞(HI)が出現しなかっ

た群における,PH/MTTの経時的変化

常のCT機器を用いて脳血流状態を推定する方法

である.Dynamic CT上のdensity time curveよ

り得られるPHは組織血液量を, MTTは組織平

均循環時間を反映し,その比すなわちPH/MTT

は組織血流量と相関すると考えられている8)∼14).

しかし,dynamic CTより得られる各種のparam・

eterは造影剤の注入速度および量:,経路,被検者

の体格,心機能等に影響を受けると言われ,脳血

流の絶対的評価は困難とされてきた8)9)30)∼33).一

方,最:近では症例,parameterの選択に注意する

ことにより,かなりの程度まで正確に脳血流量測

定が可能との報告も見られるようになってき

た34)35).

しかし血管の拡張,血流のうっ滞等の脳循環動

態の異常が起こっている脳梗塞急性期に,特に今

回の検討の対象となったHI発症時という血液脳

関門の破綻が起こっている時期に,dynamic CT

でどの程度まで正確な脳血流状態の評価が可能で

あるかに関しては明確な答えは出ていない.HI

発症時にdynamic CTを施行した場合,当然のこ

とながら血液脳関門の破綻に起因する造影剤の血

管外漏出が発生すると考えられる.しかし今回の

dynamic CTによるdensity time curveの作成

は,Thompsonらの方法に準じてPHの40%の高

さを曲線の終了としてgamma一三ttingを行っ

た8)22}.したがって,造影剤の漏出の影響が最も大

きいcurveの下降部の裾野部分は無視しており,

漏出の影響は最小限に抑えられていると考えられ

る.また,PHのCT値と造影剤の増強効果による

CT値との差から考えても, HI発症時の造影剤の

漏出はPH/MTTの算出にそれほど大きな影響

を与えないと思われる.実際,今回の検討の対象

となった症例においても,HIが出現したにもか

かわらずPH/MTTが殆んど変化しなかった症

例も存在しており,上記の推論の妥当性を支持す

るものと考える.

(8)

HI発症時のdynamic CTによる脳血流の定量

的評価がどの程度まで正確であるかに関しては今

後とも検討が必要であるが,脳血流状態のおおよ

その評価であるにしろ脳梗塞急性期に施行可能で

あり,またHI発症の予測が可能であるならぽ臨

床上極めて価値を有すると考える.また今回の検.

討の対象となったHIは, dynamic CTで比較的

脳血流状態を評価しやすい中大脳動脈皮質枝領域

のHIに限定した.

次に,今回の検討ではCT画像上でのHIの定

義は,戸村らの方法にしたがいCT値50以上の明

らかな高吸収域部を含む脳梗塞巣とした7).しか

し中等度以上の大きさの脳梗塞巣では病理学的に

は大多数の症例において出血巣が確認され,また

CT上isodensityを呈し髄液検査あるいは病理学

的にHIが確認されたとの報告も多数見られ

る1國.したがって今回の検討で用いたHIの定義

では明瞭な血管機能変化に基づくHIのみが含ま

れ,軽度のHIは見逃されていると考えられる.し

かし,軽度のHIはCT上血流の回復あるいは血

管の充血と区別しがたいこと,臨床上問題となる

のは明瞭なHIの場合のみであることを考慮し,

今回の検討では上記のごとくHIを定義した11).

脳塞栓症例において,HI出現とPH/MTTの

変化との関連を検討すると,HI発症後にPH/

MTTの有意な上昇が認められ(p<0.01),また

HIが出現した11ROI全てが, HI出現時にCT上

PH/MTT≧0.3を示した.これらの結果は従来報

告されてきたように,HI発症に脳血流状態の回

復,特にある一定レベル以上への回復が必要であ

ることを示唆しているものと思われる.従来の報

告では脳血管撮影の結果より脳血流状態を推測

し,HI発症との関連を論議してきた.しかし脳血

管撮影では,脳1血流状態のどの程度の回復がHI

発症に関係するかといった定量的検討は不可能で

あり,また軟髄膜側副路等の側副血行による脳血

流状態の回復について検討することは困難であ

る.本検討の結果より,dynamic CTによってHI

発症に関連する脳血流状態の変化を定量的に評価

し得る可能性が示唆されたものと考える.

今回の検討において,同じく脳塞栓症例であり

しかも同程度のPH/MTTの上昇を示したにも

かかわらず,HI出現(+)ROI群とHI出現(一)

ROI群の両者がみられた.脳塞栓症例で経過中

PH/MTT<0。3→≧0.3を呈した17ROI中10ROI

でHIが出現し,残りの7ROIでは最:後までHIは

出現しなかった.HI発症に影響する因子として

は,従来より梗塞巣の大きさ1)5),あるいは血流再

開時の高血圧が言われている4)∼6).しかし今回検

討を行ったHI出現(+)ROI群とHI出現(一)

ROI群の間に,表1,2に示すごとく梗塞巣の大

きさに差は認められず,またHI出現(+)ROI群

において特に著明な高血圧あるいは.血圧の変動を

認めなかった.歯群間で差が認められたのは,上

昇後PH/MTTの最大値がHI出現(一)ROI群

に比しHI出現(+)ROI群で有意に低かったこと

(p<0.05),および脳梗塞発症48∼71時間後の

PH/MTTがHI出現(+)ROI群で有意に低廉を

示したこと(p〈0.05)のみであった,

HI出現(十)ROI群で上昇後のPH/MTTの最

大値が有意に低かった理由は,次のように考えら

れる.動物実験モデルにおいては,HI発症例は血

流再開後のhyperperfusion stateは短時間しか持

続せず,急速に脳血流が低下することが報告され

ている15)22)36)∼38).また臨床的にも,HI発症例の亜

急性期の脳血流量が低値であったことが報告され

ている7).この機序として,血管内皮細胞の機能が

不可逆的状態になるほど虚血の程度が著しい場

合,血流の再開の際血管内皮細胞の膨化15)36>37}や

静脈圧の上昇が起こり15)38>末梢血管抵抗が増大す

ることが推測されている.本検討においてHI出

現(÷)ROI群で上昇後のPH/MTTの最大値が

有意に低かったことの理由として,同様の機序が

働いたことが考えられる.

次に,脳梗塞発症48∼71時間後のPH/MTTが

HI出現(+)ROI群で有意に低値を示した理由に

関し検討する.図7に示すごとく,HI出現(+)

ROI群ではHI出現(一)ROI群に比し, PH/

MTTの低値が脳梗塞発症後比較的長期間持続し

た後にPH/MTT<0.3→≧0.3を来している傾向

が存在した.脳梗塞発症48∼71時間後のPH/

MTTがHI出現(十)ROI群で有意に卸値を示し

(9)

た理由も同様に,HI出現(+)ROI群ではPH/

MTTの低値が比較的長期間持続していることを

表していると考えられる.動物実験モデルによる

検討では脳血流低下の程度が強いほど,その持続

時間が長いほど田を発症しやすいことが報告さ

れている6)15)22)24}31).その正確な機i序は完全には解

明されていないものの,血管内皮細胞の虚血によ

る障害が主因として考えられている6)15)22).また,

血流低下が著しければ持続時間は短くともHIを

発症してくることより,HI発症に関わる血管内

皮細胞の虚血は血流低下の程度およびその持続時

間の2つの因子の関係によって決まると考えられ

ている15)30)31).ただしこれらの報告は全て虚血持

続時間が24時間以内の例のみであり,24時間以降

の場合にも同様のことが言えるか否かは不明であ

る6}15)22)24)心31).また臨床的にHI発症と脳血流低下

の程度あるいはその持続時間との関連を検討した

報告は未だ存在しない.しかし,血流低下が軽度

であれぽ血管内皮細胞の不可逆性変化が起こる時

間は延長すると考えられておりエ5),血管内皮細胞

の不可逆性変化が起こる時期が脳梗塞発症後24時

間以降になることも有り得ると考える.したがっ

て本検討において,脳梗塞発症48∼71時間後の

PH/MTTがHI出現(+)ROI群で有意に低値を

示したことは,HI出現(+)ROI群においては脳

血流状態回復時期がHI出現(一)ROI群に比し遅

れていることを示している可能性がある.今後と

もさらに症例を増し検討を加える必要があるが,

本検討によって,HI発症に結びつく血管内皮細

胞の障害を引き起こす脳梗塞発症早期の脳血流状

態の低下およびその持続時間を,dynamic CTに

より検出し得る可能性が示唆されたと考える.ま

た本検討の結果より,脳梗塞発症48∼71時間後の

時点でPH/MTTが重心を示したROIはHIを

発症する確率が高いと判定でき,HI発症の予測

に関しdynamic CTは有用と考える.

次に,PH/MTT≧0.3を示した時点でHIが認

められなかった13ROI中9ROIでは,その後もHI

は出現しなかった.さらにPH/MTT≧0.5を示し

た時点でHIが認められなかった10ROI中9ROI

ではその後もHIは出現せず,また残りの1ROIで

はPH/MTT≧0.5を最初に示した時点で既に

isodensity areaが認められており,病理学的には

既にHIを呈していた可能性がある.以上の事実

は,HIは脳血流状態の回復時に一致して発症し

やすく,脳血流状態が一定レベルまで回復した際

にHIが出現しなけれぽその後はHIが出現し難

いことを示唆していると考えられる.PH/

MTT≧0.5を示した時点でHIが認められなかっ

たROIはその後にHIを発症する確率は低いと

推測でぎ,dynamic CTはやはりHI発症の予測

に有用であると考える.

脳血栓症例に関しては,症例数が少ないため脳

塞栓症例におけるほど明瞭な関係は導き出せな

かった.しかし,HI出現時には全例PH/MTT≧

0.3を示し,経過中庭にPH/MTTく0.3であった

ROIはすべてHIが出現せず, PH/MTTの上昇

とHI発症との密接な関連が示唆された.また脳

塞栓症例と同様に,HI出現(+)ROIはHI出現

(一)ROIに比し,表2に示すごとく梗塞巣の大き

さに差はなく,PH/MTTの低値が脳梗塞発症後

比較的長期間持続した後にPH/MTT<0,3→≧

0.3を来していた.今後症例数を増すことにより,

脳塞栓症例と同様の結果が得られるのではないか

と考える.

脳梗塞急性期の治療の理想が,早期脳血流の回

復にあることは当然のことである.近年の血栓溶

解剤の開発,および脳梗塞急性期の脳血流状態の

解明に伴い,脳梗塞急性期の血栓溶解療法は次第

に普及して来ると考えられる.その際,最も問題

となるのはHIの発症である1)5)39)∼41).また脳塞栓

症例の再発予防の目的で抗凝固療法を実施する場

合,しぼしぼその開始時間が問題となる.再発予

防の目的には早期抗凝固療法の開始が望ましいの

は当然であるが,あまり早く実施するとHIの危

険性が増大する.現時点では,この問題に関し有

用な検査法は確立されていない.

本検討の結果,dynamic CTにより算出した

PH/MTTを利用して,HI発症の予測がある程度

まで可能であるとの結論が得られた.Dynamic

CTはHI発症の予測に関し,今後臨床上有用な

手段となり得ると考える.

(10)

結 語

1)脳塞栓症例では,HI出現後PH/MTTは有

意(p<0.01)な上昇を示した.

2)脳塞栓症例では;HIが出現したROIは脳梗

塞発症48∼71時間後のPH/MTTが有意(p<

0。05)に低値を示した.

3)脳塞栓症例では,PH/MTT≧0,5を示した

時点でHIが出現しなかったROIは,その後も

HIが出現し難い傾向があった.

4)脳血栓症例においても脳塞栓症例とほぼ同

様な傾向があった.

5)脳梗塞急性期におけるdynamic CTは, HI

出現の予測に有用な手段となり得ると考えられ

た. 稿を終えるに当り御校閲頂いた:丸山勝一教授,御助

言を頂いた竹宮敏子教授,御指導頂いた小林逸郎助教

授に対し深甚なる謝意を表します.また,終始御教示

頂いた内山真一郎講師に深謝いたします.また種々の

御示唆および御助言を頂いた神経放射線科柿木良夫

先生,小野由子講師,小林直紀教授に対し心からの謝

意を表します.

文 献

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