理 学 療 法 学 第 20巻 第 5号
307 〜311
頁 (1993 年)報 告
急 性 心 筋 梗 塞 症 患 者
に み
られ
る
歩 行 障 害
*山 崎 裕 司
D
山
田
純
生
1)渡 辺
敏
1)大 森
豊
1)深 井 和 良
1)三
好 邦
達
1)田 辺
一
彦
2)長 田 尚 彦
2) 要旨 急性心筋梗塞 症 患者に お け る歩行障害の出 現状況について調査 した。 対象は急性心筋梗塞症患者189
例で平 均年齢は63.
2
±12,
1
歳である。 歩行障 害は全 症 例の23
% に認 められ,
入院期リハ ビ リテー
シ ョ ンプロ グラ ム中の不 良心 血管反 応の 出現率 (19%) を上 回っ て いた。 歩行障 霽は70 歳以 上の高齢者,
運動器疾患や慢性 内科疾患を合併した症例, 安静 期間が 20日 を越え た症例な ど で多く出現して いた。 歩行障 害を呈し た症例で は その他の症例に比 較 し,
プ ロ グラムの完了 率は有意に低 かっ た。 し か し, プ ロ グラム を 完 了 した症 例について見た場 合,
歩 行 障 害のみを 有 した症 例で の プログラム の遅 延は軽度で あっ た。 急性心筋梗塞 症 患者にお け る歩行 障害の 出現はプ ロ グラム阻害 因子 とし て認識する必要が あ る と考え られ た。
キー
ワー
ド:急 性心筋 梗 塞 症,
入 院 期プロ グラム,
歩 行 障茜 は じ め に 心筋 梗 塞 症 (以下 MI )患者の 入院期 リハ ビ リテー
シ ョ ンプロ グラム (以下入 院期プロ グラ ム)を施行する 中で,
臥 床を契 機と して歩 行障害を 旱 し,
入 院 期プロ グ ラム の遅 延を余 儀無くさ れる ケー
スを経験するが,
これ ま で プロ グラム施 行 上の阻 害 因 子 と して注 目される こと は な かっ た 1)3)。
し か し,
患 者の高 齢 化と ともに,
今 後 この様なケー
ス が 増 加 することは十 分に予想 さ れ,
入 院 期プロ グラム の施行にあた っ て歩行 障害を 呈 する症 例 を 無視すること はで き ない もの と思 わ れる。 そこ で今 回は 入院期MI
患者の歩 行障害の出現状況と プロ グラ ム進行’
The Incidence of Gait Disorders in Patients with AcuteMyocardial Infarction
1)聖マ リア ン ナ医科大学病院リハ ビ1丿テ
ー
シ ョ ン部Hireshi Yamasaki
,
RPT,
Sumio Yamada,
RPT,
SatoshiWatanabe
,
RPT,
Yutaka Omori,
RPT,
Kazuyoshi Fukai,
RPT,
Kunisato Miyoshi,
MD :Dept.
of RehabilitationMedicine
,
St,
Marianna University School of MedicineHospital
2)同 第二 内科
Kazuhiko Tanabe
,
MD,
Naohiko Osada,
MD:The 2ndDept
,
of Internal Medicine,
St.
Marianna UniversitySchool of Medicine HospitaI
(受付口 1992年Zl月4 日/受 理日 1993年4月30日) 状 況を調 査し
,
そ の出 現 背 景と プロ グラムに対 する影響 につ い て検 討 を加 え た。 対象
と 方 法 対象は平成1
年1
月か ら4 年1
月までに リハ ビ リテー
シ ョ ン部に 人院 期プログラム の依頼の あっ たMI
患 者189
例で あ る。 対象の平均 年齢は63.
2
±12.
1
歳 (27 〜
84
歳)で,
性 別は男 性138
例,
女 性51例である。 これ らの症 例にっい て年齢 性別,
入院前歩行 障 害の有 無,
入 院期プロ グラム中の歩 行 障 害の有 無,
他 疾 患の合併 状 況,
急 性 期 含 併 症,
安静期 間 (発 症か ら歩 行 開 始ま での 期 間),
入 院 期プロ グラム 中の不 良 心 血管反 応, 入院期 プ ロ グラム の進 行 状況 をカ ルテよ り後 方 視 的に 調査した。
歩行 障害は歩行に際し て杖, 黍すり な どの補助具を要 し た場 合や歩行が不安 定の ため に介助が必要な場合を歩 行障害 (+) と判断した。 他 疾 患の合併で は,
内 科 疾 患 として全身 状態に及ぼす 影 響の大 き さ か ら,
MI 発 症 以 前 か らの慢 性の心 不 全,
呼 吸 不 全,
腎不 全 な どの病 態にある疾 患にっ い て のみ調 査し,
高 血 圧,
糖尿病,
高 脂 血 症などの冠危険 因 子につ いて は除 外 した。 運 動 器 疾 患 と して は脳血管障害に よ るJapanese Physical Therapy Association
NII-Electronic Library Service Japanese Physioal Therapy Assooiation
308 理学 療 法 学 第
20
巻第5
号 片麻 痺,
変形 性関節症,
閉塞性動脈硬化 症r パー
キ ン ソ ン病な ど歩行 障害の原 因となり う る疾患につ い て調査し た。 急 性 期 合 併 症は 心不全,
シ ョ ッ ク,
心筋 梗塞後 狭心症 につ い て調 査し,
発 症 早 期にみ られ る一
過 性の不 整 脈な どにっい て は削 除した。
不 良 心 血 管 反 応は,
入 院 期プログラ ム進 行 中に不 整 脈,
心 電図異 常, 心拍血 圧 反 応異常など に よっ て プロ グラム の 遅 延 を余儀 な く さ れ た場 合と し た。 プロ グラム の 巾 止 基準は,
1) 収 縮期血圧30mmHg
以上の 上 昇ま た は 20mmHg 以上の低 下,
2)心拍 数正20拍 /分 以上,
3) ST 偏 位 (」点より80 msec の部 位で の O.
1 1V 以 上の 下降0.
2mV
以上の上昇 ), 重 症 不 整 脈,
4) 胸 痛,
動悸,
息 切 れ,
な どの 自覚 症状の出現であ る。
そ して, これ らに よっ て得ら れ た情報か ら以.
ドにっ い て検 討し た。 〔1} 歩 行 障 害の出 現 率 :入 院期プロ グラム中における 歩 行 障 害の 出現 率 を 調 査 し,
主な プロ グラム阻 害 因 子で ある不 良 心 血 管 反 応の 出現 率と比 較した。
〔2>歩行 障害の出 現背景 ;入院前にすで に歩行 障 害 を 有して いた17
例を除く172
例につ い て,
入 院期プロ グ ラム中の歩 行障害の出現と年 齢,
性 別,
他疾 患の合併 状 況,
安 静 期 間との関 連を検討 し た。 (3) 入院期プロ グラムへ の影響:対象を以 下の 4 群に 分 類 して調 査 した。 1群 :歩 行 障 害 および その他の遅 延 要因が な かっ た群,
H群 :歩 行 障 害 以 外の遅 延 要 因 を有 し た群,
皿群 :遅 延要因 とし て歩行 障 害のみを 有した群,
IV群 :歩行障害と その他の遅延要因の 両方を有し た群で あ る。 そ して,4
群 間で入院期プロ グラムの完 了率,
平 均 終 了日数を比較し,
歩行障害が プロ グラム に及ぼす 影 響にっ い て検討し た。
尚,
当院の入院期プロ グラム は通 常 4週 間 以 内に終 了で きるように設 定さ れて い る4>。統 計 的 手 法 として は x2検 定
,
t検 定を用い,
危 険 率5
% 未 満 を 有 意 と した。
結 果 症 10 例 (5%),
心拍血 圧 反 応異常 10 例 (5
%),
心 不 全4
例 (2
%)で あっ た。 歩行障害,
不 良 心 血管反 応の 出現率に は有意 差を認め な かっ た。 働 歩 行 障 害の出 現 背 景 入 院後 歩 行 障 害を 旱 し た症 例は172
例 中27
例 (16% ) で あ っ た。
歩 行 障 害を 畢 し た症 例と歩 行 障 害を 畢さな か っ た症 例の出 現 背 景 を 年 齢,
性 別,
他 疾 患の合 併 率 (運 動器 障害, 慢性内科疾 患 ), 安静 期間につ い て比較し た (表 1)。 歩行障害を 呈 し た症例の平均 年齢, 他 疾患 の合併率, 安静 期間は そ れ ぞ れ70.
8
歳41
%, 正6.
7
日 で,
歩 行 障 害を 呈 さ な か っ た症 例に比べ明ら かに高い値 で あっ た (pくO.
01
)。
また,
有 意ではないが歩 行 障 害 を 呈 した症 例で女 性の 占め る割 合が高い傾向にあっ た。 表 1 歩行障害の出現 背 景 歩 行 障 害 (+) 歩行障害 (一
) N=
27 N=
145 年 齢 (歳 ) 性 別 (女 /男 ) 他疾 患の合併 安静 期間 (日)70.
8
±7.
5*
H
/16
11
(41
%)x16.
7
ニヒ⊥2,
4
*60.
6
±11.
9
35
/110
16
(11
%)9,
0
±6 .
1
(1> 歩行 障害の出現状況 歩 行「攀害は189例 中44例 (23%) に認め た。
入 院 前 か ら歩行障 害を有した癪例は 17 例 (9
% ),
入 院 前に歩 行障 害を有さ ず 入院 期プログラム 中に歩 行 障 害を 呈 し た 症例は27 例 (14
%)であっ た。 入院期プログラム中の 不 良心血 管 反応は189 例[.
1
コ35
例 (エ9
%)に出現し , そ の 内 訳は 不整脈 正3
例 (7%),
虚 血」
畦心 電 図 異 常・
狭 心 (%)30
出 現 率 15 (%) 60 出 現 率 30*
:P<0.
01
31% ⊥7%8
%o
% κ2=
P< κ2一
ユ4.
636
p<O.
0/〜
49 50−
59 60〜
69 70−
(歳 )N =28
N =
39 N=
63 N=
42 年 齢 図 1 年 齢と歩行障害の 出 現 率60
% 32% 7 % κ2=
30P 〈0,
〜
10 11− 20
21〜
(日)N ;
120 N=37
N=
10 安 静 期 間 図 2 安静期間 と歩 行 障 害の 出 現 率 N工 工一
Eleotronio Library急 瞠心 筋 梗 塞症患者にみ られる歩 行 障 害 309 表
2
プロ グラム完 了率及 び終了日数 1群 (N諞
IG2)n群 (N
・
=
44)邂群 (
N
=
24)lv群 (N
=
19) 完 了 者 数 (人) 完 了 率 (%) 平 均 終 了日数 (日) 102 10025.
6士5.
6 42 9542.
6± 16.
0*
11 46* 30,
4± 8.
79
47串 48.
6± 21.
0累
* p<0.
Ol
(1
群との群間比較) 1群 ;歩 行 障 霽 およびその他の遅 延 要 因が な かっ た群,
1群:歩 行 障害 以 外の遅 延要 因 を 有 した群,
皿群 :遅 延要 因 とし て歩行 障 害のみを 有し た群,
IV群:歩 行 障 害 とその他の遅 延 要 因の両 方 を 有した群 年 齢別に歩 行障 害の出現率を み た場合,49
歳以下で は全例 歩 行 障 害はな く,
50〜
59歳で は8
%,60
〜69
歳で は17
%,70
歳 以 上で は31
% に歩行障害を認め,
高 齢になるにした がっ て有 意に歩 行 「璋害の出現 は 多 かっ た (p< 0.
01) (図1)。 安 静 期 間別に歩 行 障 害の 出現 率 を みた場 合,
安 静 期 間 が 10 日以内の症 例で は 7%,
11〜
20 日で は 32%,
21 日以F
.
の症例で は60% が 歩 行障害 を 呈 し,
安静期間 が 長い症 例ほ ど有 意に歩行 障 害の発生は多か っ た (pく0.
01
) (図2
)。 鋤 入院期プロ グラムへ の影響 表 2に 4群のプロ グラム完 了率と プロ グラム完了者の 平均 終 了日数を示し た。 歩 行 障 害 およ び その他の遅 延 要 因が な かっ た 1群は全 例が プロ グラムを完 了し,
発 症か らプロ グラム 終 了 まで の平 均Er
数は25.
6
日 であっ た。 歩行 障 害 以 外の遅 延 要 因 を有 した H群は 95% がプ ロ グ ラム を完 了 し,
平均 日数は42.
6日 であっ た。
完 了でき な かっ た2
例は心臓外 科手術, お よび死 亡へ の転機をた どっ た。 遅 延要 因と し て歩行障害の みを 有し た 皿群で は46
% が プロ グラムを 完 了し, 平均日数は30.
4
日であっ た。
完了で き な かっ た13
例は杖,
歩行器 な どの介 助具 を使用して も下肢支持 性の低 下のた め歩行の継続が困難 で,
理学 療 法 室 内での平 行 棒 内 歩 行 訓 練や筋 力 増 強 訓 練 の併 用が必 要で あっ た。 歩 行 障 害と その他の遅 延 要 因の 両 方を有し たIV群は 47% が プロ グラム を完 了 し,
平 均 日数は 48.
6日で あっ た。
完 了で きな かっ た 10例 中9例 は皿群 と岡 様に歩 行の継 続 が 困 難 なた め プログラムを 変 更し,
1例は死 亡の転 機をた どっ て い た。 次にプロ グ ラムの完 了 率 および 平均 終 了日数 を各 群 間 で比 較 検 討し た。 まず,
プロ グラム の完 了 率は,
何 ら遅延
要因を も た ない1
群に比較し歩行 障害を有し た皿,
IV 群で有 意に低かっ た (pく0.
01
)。 皿,
W 群で プロ グラ ム が完 了で き な かっ た症例 22例 中 (死亡例を除く),
13 例は病前か ら歩行障 害を有し た症例で,
その内2
例は家 屋内っ たい歩きレベ ルであっ た。 病 前に歩 行 障 害を有さ ず,
かつ プロ グラム が完 了で きな かっ た症 例9
例 中,
6 例 は急 性 期 合 併 症のため,
臥 床日数が2
週間を越 え (平 均33日),
1例は他の疾 患に て入 院加 療 中の症 例であっ た。
残り2例に は歩行 障害の誘 因 として特筆すべ き出現 背 景を有さな か っ た。
平 均 終了Er
数は 1,
皿群 間に有意 差 を 認めない もめの,ll,
IV
群で有 意に長く (p<O.
01
),
歩行 障害以外
の 遅延要 因を有する症 例で プロ グ ラム は遅 れて いた。考
察
入 院 期プロ グラム 中の歩 行 障 害にっ い て丸 岡 らは, 離 床 後の阻 害 因 子として 21% に脳血管 障害,
四肢障害を 認めたことを報 告 し,
斎 藤 ら も運 動 器 障 害 を 阻害 因子の一
っ とし て 挙げてい るD2)。 これ らの こと は,
急 性期MI
患者に おい て運動器障害,
歩行障害を 呈する症例が以 前 か ら存在し た こ と を示して い る が,
現 在まで これ らの状 況 を詳 細に報告 し た文 献は み あ た ら ない。 今 回の調 査で は189
例 中44
例 (23
%) に歩行 障 害が み ら れ,
プロ グ ラム中の不 良心 血管 反 応の出 現 率 (19% )を わずかに ヒ 回っ て いた。
こ の こと か ら,
急 性 期MI 患 者に見 られる 歩 行 障 害 はプロ グラム進 行一
ヒの璽要な阻害因子の一
っで あること が示 唆された。
歩 行 障 害の出 現 背 景につ い て検討を加え た結 果,27
例 16% に歩 行 障 害 を認 め,
高 齢 者,
運動器障害や慢 性 内科 疾患 を合併 し た症例,
安静期間の長い症例で歩 行 障 害の出現は有意に多か っ た。 また, 有 意で は ないが女 性 で歩 行 障 害の出 現は多い傾 向にあっ た。 加齢によ る筋 萎 縮の程 度は 70歳 を 越える高 齢 者に おい て顕著で あ り,
男 性に比べ女 性で そ の程 度が強い ことが知 られてい る5)。 加え て,
運 勤 器 障 害や慢性 内科疾患を有し た症例で は 日 常 生 活 活 動 量 も低 く制限 さ れて いた と考え ら れ,
加齢とJapanese Physical Therapy Association
NII-Electronic Library Service Japanese Physioal Therapy Assooiation
310 理学療法学 第
20
巻第5
号 廃用性の筋力低 下が相まっ て病 前の下 肢 筋 力は か なり低 い レベ ル にあっ
た と推察さ れ る 。 また, 臥床に よ る筋 力 へ の影響は 1日当り1 〜 1.
5
% の 低 下 と報 告されてお り6),
歩 行 障 害 を有し た症 例の平 均安 静期間 (16.
7
日) を考慮 す れば,
少なくと も20
% 程 度の筋 力 低 下が生 じ て いたもの と考 え られ る。 以 上の こ と か ら,
歩 行障害は 病前の下 肢筋力がすで に低い レベ ルにあ っ た症 例に,
さ らに安静によ る下肢筋力 低 下 が加 わ り,
出 現 したの では ないか と推察さ れ た。 した が っ て, これ らの症例にっ い て は病 前の 目常 生 活 活 動 レベ ル にっ い て情報を集め ると と もに,
歩 行障害の出現が予 測さ れ る場 合に は可 及的早 期に離 床を進める必 要が あ る と考え ら れ た。 し か し,
今 回は対 象 者の筋 力 や歩 行 障 害の原 因と な る その他の要因 にっ いて調査 したわ けで はな く,
歩 行 障 害の出現 要 因を 下 肢 筋力 低 下に特 定す ること は できない。
また少 数例で は あ る が,ICU
症候 群な ど一
過 性の精 神 障 害 を 旱 す る 症 例や,
重 篤な ポンプ失調を合併し急 性 期に意 識 障 害 を 呈 する症 例な ど も経験さ れ,
この様な症例で は プロ グラ ム早期に何らかの 中枢 神 経 系の要 因に よっ て一
過性に筋 力 が発 揮で きな い状 況,
ある い はバ ラン ス が障害さ れ た 状況に お かれた可 能 性 も否 定できない。 よっ て,
歩 行障 害の出現要因 につ い て は今 後の検 討が必 要であろう。
歩行障害が入院期プロ グラムへ 及 ぼ す 影 響 をプロ グラ ム完 了 率と平 均 終 了 日数か ら み た。 遅 延要因として歩行 障害を有し た m,
IV群で の プロ グラム の 完了率は それぞ れ46%,
47% で,
L
H群に比べ 明らか に低く, 歩行 障害が重 大なプロ グラム阻害因 子と なっ てい ること が示 唆さ れ た。 完 了 し得な か っ た症 例の多 くは発症前 すでに 歩 行障害を有し活動性の低かっ た症 例,
ある いは長 期 臥 床を強い ら れ た症例で,
前述の歩 行 障 害の要 因と して のF
肢 筋 力 低 下が顕著に現れたもの と考え られた。 当 然の こと な が ら入院期プロ グラムは MI の病 態 を基 本 と して 設 定 さ れたもの であ り,
歩 行障害を有する症例に対する プロ グラム に関 して は未だ十 分に は検 討さ れて いない。
今回の調 査で はこれ らの症 例に対して理学療 法室で の訓 練に移行する ことで対 応して いた が,
入院前の歩行 能 力 に到 達 する た めに は長 期 間の訓 練を要す る症例が多かっ た。 今 後は患 者の高 齢 化に伴い歩 行 障 害を 呈 す る症例も 増 加 すること が予 想さ れ,
可 及的早期か ら 理学療 法 室で の厳 重な監 視 下の訓練に移行で き る よ う なシス テ ムを作 成 する必 要が あると考え ら れ た。 また,
プロ グラム を完 了した症例の平均終了日数は,
遅 延要 因のな かっ た 1群に比べ歩 行 障 害 以 外の遅 延 要 因 を有し た9,
IV群で有 意に長 く,
以 前に行っ た我々 の調 査と岡じ傾向であっ た 7) 。 逆に歩行 障 害のみを有 した皿 群で は1
群と差 を 認 めな かっ た。
し た がっ て,
プ ロ グラ ム を完了で き る よ う な軽い歩行障害のみを呈 する症 例で は,
安 静 期 間 を可 及 的に短 縮 する と ともに,
杖, 歩行器 な ど適 切な歩 行 補 助 具を用いることによっ て通常のプロ グラム が 施 行でき る もの と考 え られた。 以上,
MI 患 者におけ る歩 行 障 害の 出現 状 況,
出現 背 景,
プロ グラムへ の影響にっ いて検 討 を 加え た結 果,
歩 行障害を プログラム の阻害因子として認識する必要があ る もの と考え られ た。 今後は その出現背景に留意 すると ともに,
歩行障害を呈する症例に対 応し たプ ログラム作 成が必 要と思わ れ た。 最後に本 稿の御 校 閲 をいた だいた当 院 リハ ビ リ テー
シ ョ ン部 部 長,
三 好 邦 達 教 授に深 謝 致 しま す。 本 研究の要 旨はeg
27回日本理学療 法 士学会におい て 発表した。 引 用 文 献D
丸岡隆芳,
藤田良 範・
他 ;心 筋 梗 塞の リハ ビ 「丿テー
ショ ンー
入 院 中の リハ ビリテー
シ ョ ンプロ グラム の検討一.
日本 内科学 会雑誌 71 :941.
949, 1982.
2) 斎 藤 宗 靖,
土 師一
夫・
他 :急性心筋 梗塞 症 患者の リハ ビリ テー
シ ョ ン プロ グラム.
治 療 62 :978−
982,
1980.
3) 亀 谷 学,
榊 原 雅 義・
他 :急性心筋 梗塞 症 1」ハ ビ リテー
ショ ンプロ グラムに お ける至 適 運 動 耐 容 能 目標 とリハ ビリ テー
シ ョ ン進 行 阻 害 因 子の検 討.
日本 臨 床生 理学雑誌 17:509−
518, 1987.
4)i」」田純 生 :心 臓 リハ ビ リテー
ショ ン.
理学療法学15:201.
−
207,
1988.
5)Essen
−
Gustavasson B,
Borges O :Histochemical andmetabolic characteristics ef human skeletal muscle in
relatiQn to age
、
Acta Physiol Scand 126:107−
ll4,
1986.
6)MUIIer EA l Influence of training and inactivjty on muscle strength.
Arch Phys Med Rehabil 51:449−
462,
1970
.
7) 山 崎 裕 司
,
山 田 純 生 :急性 期心筋梗塞の 1丿ハ ビ リ テー
ション
,
理 学 療 法 学 15 (学 会特 別 号 ) :67,
1988.
ft..t!kJLiff
twgeme,vaglc
is
6
a
6
ijt'ileeZ
311<Abstract>
The Incidence of
Gait
Disorders inPatients with Acute Myocardial InfaretionHiroshi
YAMASAKI,
RPT,
Sumio
YAMADA,
RPT,
Satoshi
WATANABE,
RPT,
Yutaka
OMORI,
RPT,
Kazuyoshi
FUKAI,
RPT,Kunisato
MIYOSHI,
MD
Dopa
ofRehabilitation
,n4bdicine
Sth
1darianna
LhiiversiCy
School
of
Mbdicine
HbsPital
Kazuhiko
TANABE,
MD,
Naohiko
OSADA,
MD
71he2nd Dept
of
Internal
Atledicine,St.
Mdrfanna
UitiversitySehool
of
Mbdicine HbspitatThe incidence of gaitdisorderswas investigatedinpatientswith acute myocardial
infarc-tion
(AMI).
The subjects were 189 AMI patients(age
:63.2± 12.1).The results were a$ follows:Gait
disorder
wasfound
in23% of cases(441189),
and itsincidence
washigher
than therate of abnormaE cardiovascular responses(19%)
during
inpatient
program afterAMI,
Gait
disorders
occurred
frequently
in
elderly patients(age)70),
patientswith cerebrovascular accident,mus-culoskeletal
disease,
chronic phase of medicaldisorders,
and thosewhohad
more than 20 daysof
immobilization
period.
Completion
rate of theinpatient
program
was significantly lower inpatients exhibiting gait
disorders
thanin
the other patients,However,
in
patientswhocom-pleted
the
program, theprograrn
progression was slightlydelayed
inthose
with gaitdisorders
alone