197 氏名(生年月日) 本 籍
学位の種類
学位授与の番号 学位授与の日付 学位授与の要件学位論文題目
論文審査委員
(70) シバ ガキ ヤス ロウ柴垣泰郎(昭和3
医学博士 乙第1069号平成2年1月19日
学位規則第5条第2項該当(博士の学位論文提出者) 出血性脳梗塞発症に関わる脳血流状態のdynam藍。 CTによる検討 (主査)教授 丸山 勝一 (副査)教授 重田 帝子,内田 幸男論 文 内 容 の 要 旨
目的 近年,脳梗塞に対する抗凝固療法,血栓溶解療法の 普及に伴い,出血性脳梗塞(hemorrhagic cerebral infarction, HI)が問題となってぎている.動物実験モ デルでは虚血の程度,その持続時間および血流の再開 とHI発症との関係は定量的に確認されているが,臨 床的にHI発症の病態を脳血流状態の定量的変化の観 点から述べた報告は見あたらない.今回著者は,①急 性期脳梗塞症例においてdynamic CTを用いて脳血 流状態を定量的に測定し,②HI発症の予測に関する dynamic CTの有用性を検討した. 対象および方法中大脳動脈皮質枝の各分枝領域毎に開心領域
(region of interest, ROI)を設定し,各ROIにおけ るHIを検討した.対象は脳塞栓9例において測定し た20ROI(HI(十)ROI:11, HI(一)ROI:9)と, 脳血栓9例において測定した11ROI(HI(+)ROI: 3,HI(一)ROI:8)である. Dynamic CTはヨー ド造影剤45mlを急速静脈注入し,2.0秒間隔で連続的
に計8回のscanを行った.その後山ROIにおける
density time curveより,peakでの平均吸収値(PH), 平均循環時間(MTT)を算出し, PH/MTTを脳血流 状態を評価する指標として用いた, 結果 1.脳塞栓症例では,①HI(+)ROI群は全てHI出 現時にPH/MTT≧0.3を示し, PH/MTTはHI出現 後0.24±0.23から0,74±0.28へと有意な上昇を示した (p<0.01).②脳梗塞発症後48時間以降72時間未満の PH/MTTは, HI(十)ROI群でHI(一)ROI群に比 し有意に低値を示した(p<0.05).③PH/MTT≧0.5
を示した時点でHIが認められなかった10ROI中9
ROIはその後もHIは出現しなかった。 2,脳血栓症例では,①脳塞栓症例とは異なり経過中 PH/MTTの上昇が認められなかったROIが存在し, このようなROIではHIは出現しなかった.②経過中 PH/MTTの上昇が認められたROIでは, HI出現と PH/MTTとの間には脳塞栓症例と同様の傾向が認め られた. 考察 以上の結果より,HI発症に脳血流のある一定レベル 以上への回復が必要であることが示唆された.また,脳梗塞発症後48時間以降72時間未満のPH/MTTが
HI(+)ROI群で有意に低値を示したことより, HI (十)ROI群においては脳血流回復時期がHI(一)ROI 群に比し遅れており,そのため血管内皮細胞が高度の 虚血に陥り,これがHI発症に関与している可能性が 示唆された.さらに,脳梗塞発症後48時間以降72時間未満の時点でPH/MTTが低値を示したROIはHI
を発症する確率が高く,またPH/MTT≧0.5のレベル に脳血流が回復した後はHIが発症し難いことが示唆 され,dynamic CTはHI発症の予測に有用であると 考えられた. 結語 脳梗塞急性期におけるdynamic CTは, HI発症の 予測に有用な手段となり得ると考えられた. 一799一198
論 文 審 査 の 要 旨
脳血栓急性期における有力な治療法の一つである血栓溶解療法は,禁忌とされている出血性脳梗塞を除外し て用いることが絶対的条件であり,梗塞巣からの出血を予測することは,臨床的に最も重要な課題であるが, 現在まで充分な検討が行われていない. 本研究は,dynamic CTを用いて急性期脳血流状態を検討し,測定した単位時間当たりの脳血流量の推移を 指標とすることにより,出血性脳梗塞の発症予測を可能としたもので,学術的に価値ある論文である. 主論文公表誌出血性脳梗塞発症に関わる脳血流状態の
dynamic CTによる検討 東京女子医科大学雑誌 第59巻 第6号 628-638頁(平成元年6月25日発行) 副論文公表誌 1)1231・IMP SPECTの臨床的有用性 東北脳血管障害懇話会雑誌 11:81-85, 19882)Pure motor hemiplegiaを呈した橋出血の
1例 神経内科 18(6):614-616,1983 3)Myastheniaを呈した,バセドウ病の一卵 性双生児例 厚生省特定疾患免疫性神経疾層調査研究 班.昭和58年度研究報告書:39-43,1984 4)脳幹脳炎の3症例一脳幹脳炎の概念,分類, 診断に関する考察一