Title
低リン酸耐性ニンジン培養細胞のクエン酸合成能力に関す
る研究( 内容の要旨 )
Author(s)
瀧田, 英司
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(農学) 甲第166号
Issue Date
1999-09-10
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/2507
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。氏 名(国籍) 学 位 の 種 類 学 位 記 番 号 学位授与年 月 日 学位授与 の 要件 研究 科及 び 専攻 研究指導を受けた大学 学 位 論 文 題 目 審 査 委 員 瀧 田 英 司 (愛知県) 博士(農学) 農博甲第166号 平成11年9月10日 学位規則第4条第1項該当 連合農学研究科 生物資源科学専攻 岐阜大学 低リン酸耐性ニンジン培養細胞のクエン酸合成 能力に関する研究 主査 岐 阜 大 学 副査 岐 阜 大 学 副査 静 岡 大 学 副査 信 州 大 学 授 授 授 授 教 教 教 教 夫一美 夫 徹 啓 博 久 合 田 田 原 河 横 柴 論 文 の 内 容 の 要 旨 多くの土壌では施肥されたリン酸はリン酸アルミニウムのような沈殿を形成し、それらの 再利用は難しい。また、リン酸資源は限られており、植物の難溶性リン酸利用能力の改良は、 このような土壌での作物生産を向上させうると考えられる。高等植物がもつリン酸欠乏に対 する適応戦略の一つに、有機酸の放出による難溶性リン酸の可給態化が挙げられる。この難 溶性リン酸ストレスを想定して選抜された低リン酸耐性00WPhoqhatetolerarrL・LPT)ニン ジン培養細胞は、リン酸アルミニウムを唯一のリン酸給源とする培地中にクエン酸を多量に 放出することにより、リン酸アルミニウムを可給態化し良好な生育を示す。この高いクエン 酸放出に関する機構はまだわかっていない。そこで、本研究ではm細胞のクエン酸合成能 力に着目し、LPT細胞のクエン酸代謝、特にクエン酸合成酵素(CS)に関する解析を行った。 LPT細胞から放出されるクエン酸を構成する炭素は、培地に添加された糖由来のものであ ると言える。そこでまず、リン酸アルミニウム培地でm細胞を培養し、培地中に放出され たクエン酸の量と、培地から消費された糖の量との関係を調べた。消費された炭素に対する 放出されたクエン酸として存在する炭素の割合は、野生型毎1d押、WT)細胞に比較して LPT細胞は常に高い値を示し、WT細胞が0.05-0.2%で、LPT細胞は0.3-0.8%の値であった。 この結果から、m細胞の炭素代謝はクエン酸合成への炭素の分配を増加させる方向に変化 したと考えられた。 さらに、ⅠガT細胞のWT細胞より高いクエン酸放出に関与している代謝変化を調べるため、 クエン酸合成の主要な役割を果たすと考えられるTCA回路の酵素活性を測定した。培養期 間を通して、LPT細胞はWT細胞に比較してCS活性が高く(1.3-2倍)、NADP特異的イソ
クエン酸脱水素酵素佃P-ICDH)活性が低い(0.4J).8倍)傾向を示した。これによりLPT 細胞の糖代謝はWr細胞と比べ、クエン酸合成に直接関与する段階(CS)と、クエン酸から アミノ酸合成に炭素が流出する段階佃P-ICDH)の両方で、クエン酸集積に有利な変化 をしていることが示唆された。 WT、LPT細胞から抽出した粗酵素液を用い、CSの熱安定性、温度依存性及び免疫滴定に よる活性変化を調べたところ、これらの特性には顕著な差は認められなかった。よって、WT, LPT細胞のCSには質的な差異がないと推測された。次に、LPT細胞の高いCS活性はミト コンドリア型CS(mtCS)とグリオキシソーム型CS(gCS)のどちらに基づくかを調査し た。抗mtCSポリクローナル抗体を使用した免疫滴定では、WT、LPT両細胞ともにCS活性 が完全に阻害された。また、ミトコンドリアの部分精製を行ったところ、殆どのCS活性が ミトコンドリアに含まれていた。これらの結果から、LPT細胞の高いCS活性はmtCSの量 的変化に基づくものであると考えられた。 WT、LPT両細胞からndCScDNAを単離し、m忙S遺伝子の転写産物を定量した。単離さ れたmtCS cDNAの塩基配列を調べたところ、両細胞の配列は一致し、そこから推定される アミノ酸配列は、各種種物のmtCS遺伝子との相同性が70L86%と高かったのに対し、gCS との相同性は17%であった。LPT細胞のmtCS遺伝子の転写産物の量は、WT細胞と比較し て2倍以上であった。また、この転写レベルの上昇が遺伝子増幅によるものなのかを調べる ため、mtCS遺伝子のサザンブロツティングを行ったところ、両細胞ともにndCS遺伝子は1 コピーであった。これらの結果から、LPT細胞の高いCS活性はmtCSの転写レベルの上昇 によるものと考えられた。しかし、転写レベルの上昇は遺伝子増幅によるものではなく、転 写制御が関係していることが示唆された。 以上本研究では、m細胞の高いクエン酸放出能力の原因の1つが由紀S遺伝子の転写レ ベルの上昇にあることを明らかにした。今後、この形質を含めLPT細胞が持つクエン酸放出 に関係する形質の特定が進み、低リン酸耐性植物が作出されることが期待される。 審 査 結 果 の 要 旨 高等植物がもつl」ン酸欠乏に対する適応戦略の一つに、有機酸の放出による難溶性リン 酸の可給態化が挙げられる。この難溶性リン酸ストレスを想定して選抜された低リン酸耐 性(lowphospllatetOlerant、LPT)ニンジン培養細胞は、リン酸アルミニウムを唯一のリン 酸給源とする培地中にクエン酸を多量に放出することにより、リン酸アルミニウムを可給 態化し良好な生育を示す。この高いクエン酸放出に関する機構はまだわかっていない。本 研究では、LPT細胞のクエン酸代謝、特にクエン酸合成酵素(CS)に関する解析が行われ、 その結果が本論分の第1章∼3章にまとめられている。 第1章では、LPT細胞のクエン酸代謝の特徴を明らかにした。リン酸アルミニウム培地 でLPT一細胞を培養し、消費された炭素に対する放出されたクエン酸として存在する炭素の
割合は、野生型(wi)dtype、WT)細胞に比較してLPT細胞は常に高い値を示した。この 結果から、L.PT細胞の炭素代謝はクエン酸合成への炭素の分配を増加させる方向に変化し たと考えられた。LPT細胞はWT細胞に比較してCS活性が高く(1.3-2倍)、NADP特異 的イソクエン醍脱水素酵素餌ADP-ICDH)活性が低い(0.4-0.8倍)傾向を示した。これ によりLPT細胞の糖代謝はWT細胞と比べ、クエン酸合成に直接関与する段階(CS)と、 クエン酸からアミノ酸合成に炭素が流出する段階(NADP-ICDH)の両方で、クエン酸集 積に有利な変化をしていることが示唆された。 第2章では、LPT細胞CSの特性を調査するとともに、その細胞内の局在性を明かにし た。WT、LPT細胞から抽出した粗酵素液を用い、CSの熱安定性、温度依存性及び免疫滴 定による活性変化を調べたところ、これらの特性には顕著な差は認められなかった。よっ て、WT、LPT細胞のCSには質的な差異がないと推測された。次に、LPT細胞の高いCS 活性はミトコンドリア型CS(mtCS)とグリオキシソーム型CS(gCS)のどちらに基づ くものかを調査した。抗mtCSポリクローナル抗体を使用した免疫滴定では、WT、LPT 両細胞ともにCS活性が完全に阻害された。また、ミトコンドリアの部分精製を行ったと ころ、殆どのCS活性がミトコンドリアに含まれていた。これらの結果から、LPT細胞の 高いCS活性はmtCSの量的変化に基づくものであると考えられた。 第3章では、LPT細胞CSの構造と発現量について調査した。WT、LPT両細胞からmtCS cDNAを単離し、mtCS遺伝子の転写産物を定量した。単離されたmtCScDNAの塩基配列 を調べたところ、両細胞の配列は一致し、そこから推定されるアミノ酸配列は、各種植物 のmtCS遺伝子との相同性が70-86%と高かったのに対し、gCSとの相同性は17%であっ た。LPT細胞のmtCS遺伝子の転写産物の量は、WT細胞と比較して2倍以上であった。 また、この転写レベルの上昇が遺伝子増幅によるものなのかを調べるため、汀止CS遺伝子 のサザンブロツティングを行ったところ、両細胞ともにm忙S遺伝子は1コピーであった。 これらの結果から、LPT細胞の高いCS活性はmtCSの転写レベルの上昇によるものと考 えられた。 以上の論文構成や内容について慎重に審議した結果、得られた知見はm細胞の高いク エン酸放出能力の原因の1つがmfCS遺伝子の転写レベルの上昇にあることを示したもの で、学術的に価値があるものと判断された。その結果、審査委員全員「致で本論文が岐阜 大学大学院連合農学研究科の学位論文として十分価値があるものと認めた。 学位論文の基礎となる学術論文は以下のとおりである。 1)Tbkita,E.,Koyama,H.,S山鹿mo,Y,Shibata,D.aldHara,T:Sbuttmandexpre$ionofthe mi加hondrialci仕融e?ymthasegeneincamtce11su山izingAl十phosphate・SoilSci・PlantNuh 45:197-205,1卵9. 2)Thkita,E.,Koyama,H.andHara,T:Organicacidmetabolisminalumimm-Pho utuizingceusofcamt(β肌CWVtaL・)・PlantCeuPhysiol二40:489495,1999・
mitocbndrialci肋te画egerM:叫provesthegrowthofcmtce皿sinAl-phosphate