S H R
mini
No.12
滋賀大学保健管理センター〔 2006 . 5 〕伝染性単核症
伝染性単核症(infectious mononucleosis, 以下 IM)は思春期に好発し、ほとんどが Epstein-Barr ウイルス(EBV)の初感染によ っておこります。主な感染経路は EBV を含 む唾液を介した感染で、乳幼児期では不顕性 感染(無症状あるいは軽い感冒様症状)です が、思春期以降に感染した場合IM を発症す ることが多く、kissing disease とも呼ばれま す。EBV の既感染者の約 15-20%は唾液中に ウイルスを排泄しており感染源となります 。 我国においては2-3 歳までに 70%位が EBV の感染を受け、20 歳代で人口の 90%以上が抗 体を保有しているとされています。IM の発 症機序は EBV に対する細胞性免疫反応の過 剰反応であるとされ、乳幼児期よりも細胞性 免疫が発達した思春期以降の方が発症頻度が 高いのはこのためと考えられます。病原体
ほとんどが EBV の初感染によっておこり ますが、一部サイトメガロウイルス(CMV)、 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の初感染によ ります。EBV はヒトヘルペスウイルス科に属 する DNA ウイルスで、一度宿主に感染する と一生その宿主に潜伏感染し、免疫抑制状態 下で再活性化する可能性があります。EBV はまず咽頭上皮細胞に感染し、そこで増えた ウイルスが、主に EBV の標的細胞である B リンパ球(一部、T リンパ球や natural killer (NK)細胞)に感染する。臨床症状と検査所見
4-6 週間の長い潜伏期を経て発熱、咽頭扁 桃炎、リンパ節腫脹、発疹、末梢リンパ球増 加、異型リンパ球増加、肝機能異常、肝脾腫 などを示す急性感染症です(図1)。時に、中 枢神経症状を呈する症例もあります。発熱は 高頻度で、多くの場合38℃以上の高熱で 1-2 週間持続する場合が多いとされます。扁桃に 偽膜形成を認め、口蓋は発赤が著明で出血斑 を認めることもあり、咽頭痛を伴います。リ ンパ節の腫脹は 1-2 週頃をピークとして、頚 部を主として全身に認められます。発疹は主 に体幹、上肢に出現し、斑状、丘疹状の麻疹 様あるいは風疹様紅斑など多彩です。アンピ シリン(ABPC)を内服すると薬疹を生じて、 鮮明な浸出性紅斑様皮疹を呈します。 検査所見として、高ガンマグロブリン血症、 リウマチ因子、寒冷凝集素、抗核抗体の産生 などが認められことがあります。リンパ球増 加は診断基準にも含まれ、特徴的な所見です。 増加している異型リンパ球は、感染して増殖
したB リンパ球を排除するために活性化した 細胞障害性T 細胞とされています(図2)。 肝機能異常はほとんどの症例で認められ、 GOT/GPT の増加は第 2 週頃をピークとして 300-500IU/L 程度のことが多く、黄疸をきた すことはまれです。多くは肝/脾腫を伴います。 まれに、中枢神経症状や溶血性貧血、血小板 減少、再生不良性貧血、心筋炎、心膜炎など を合併します。 なお、サイトメガロウイルスによる IM で は、EBV による IM に比して、咽頭扁桃炎、 巨大脾腫の頻度が少ないとされています。