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小学校における読み深め読み広げに関する研究

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(1)2007年度 兵庫教育大学大学院学位論文. 小学校における読み深め読み広げに関する研究. 教科・領域教育専攻 言語系(国語)コース. MO6202E. 山下敦子.

(2) 目次. はじめに・. 1. 第1章 国語科における読み深め、読み広げ・. 3. 1 読み深め、読み広げに関する子どもの実態・ 2 読解指導と読書指導の接点・一・. 3 5. 第2章 読み深め、読み広げのための複数教材の活用・一一一・ 1 読み深め,読み広げの意義・目的・一一・・一・. 15 15. 1 1 国語科教育の立場からみた読み深め、読み広げ・ 1 2 心理学の立場からみた読み深め、読み広げ・一・ 1 3 比べ読み、多読の意義・目的・一一・. 15 19 22. 2 読み深め、読み広げるための指導計画の設計・一一一一. 2 1 比べ読み、多読を取り入れた指導計画の類型・ 2 2 比べ読み、多読の指導の観点・一一・ 2 3 昼間指導計画の位置づけ・一一一一・. 第3章 1 2 3 4 5. 比べ読み、多読を取り入れた授業実践・一一一 子どもの読みの実態把握・一一 単元指導計画の設計・一一・・. 単元指導計画・一一・一一一一 授業の実際・一・一. 比べ読み、多読を取り入れた授業による検証・. おわりに・ 〈資料〉. 引用・参考文献. 24 24 30 ・㌦37. ・43 ・43 ・45 ・47. 50 65. 71.

(3) はじめに. 子どもたちの周りには、図書や資料の情報をはじめ新聞やテレビ等の マスメディアからの情報など、多種多様な情報が取り巻いている。こう した情報化社会においては、複数の図書や資料から情報を読み取って理 解し、自分の意見を広げたり深めたりして、生活の中で活用していく力 が重要となってきている。. こうした力を育成するために、『小学校学習指導要領(国語)』(平成. 10年12月)に掲げられている「自分の考えを広げたり\深めたりする ために、必要な図書資料を選んで読むこと」や「必要な情報を得るため に、効果的な読み方を工夫すること」(第5学年及び第6学年)の指導 を積極的に推進する必要がある。. 近年実施された各種の調査(生徒の学習到達度調査、平成19年度全 国学力・学習状況調査等)では、子どもの情報活用の力や読む力の低下 が指摘され、問題視されている。そうした指摘をまつまでもなく、読む 力の育成を図る指導法の改善は、小学校の国語科教育において常に重要 な課題である。. 本論文では、小学校国語科の指導において、読解指導が果たしてきた ことと読書指導に求められてきたことをより連携させることで、子ども たちの「読むこと」への興味・関心が高まり、読む力(読み深める力、 読み広げる力)が高まることを検証する。検証は、読解指導と読書指導 の連携を求めて、一つの単元で複数の教材(図書や資料)を扱った事例 の考察を中心とする。. 研究を次の手順で進める。. まず、「平成15年度小学校教育課程実施状況調査(国語)」、「生徒の 学習到達度調査」(PISA2003)、「平成19年度全国学力・学習状況調査」 の結果によって、「読むこと」に関する子どもの実態を把握する。 次に、先行理論によって読解指導と読書指導の連携について考察し、 「比べ読み」や「多読」の意義、目的を明らかにする。. つついて先行実践を検討し、「比べ読み」や「多読」の指導方法の到 達点をおさえる。. 以上のことをふまえ、小学校国語科における読解指導と読書指導の連 1.

(4) 携をめざした指導計画を立て、一部、実践検証を行う。. なお、本論文において、「比べ読み」と「多読」は、読解指導と読書 指導の連携の二局面として取り立てたものである。 「比べ読み」は読み取りの観点を立て、複数の教材(図書や資料) を比べながら情報を吟味し、自らの意見を生成する読みであり、「多読」 は一つの教材に関連した他の複数の図書や資料に読み広げて、自らの意 見を生成する読みである。. 2.

(5) 第1章 国語科における読み深め、読み広げ 蓬 読み深め、読み広げに関する子どもの実態 「平成15年度小学校教育課程実施状況調査(国語)」Dによると、 第6学年児童の国語学習に対する意識は次の通りである(表1)。「国語 の勉強は大切だ」と思う児童は8&3%であるが、「国語の勉強は好きだ」 と思う児童は52.9%となる。国語の学習の必要性は認めているが教科 の学習としては好きではないという傾向がある。また、国語科のどのよ うな学習が好きかという質問に対しては、「読むこと」の領域に関する 学習が下位に位置している。とくに「いくつかの文章を比べて読むこと」 が26.1%、「読んだあとに関連した他の文章を読むこと」が35,9%と他 の項目に比べて低くなっている。次に国語科のどの学習がよく分かった かという質問では、「比べて読むこと」40.4%、「関連した文章を読むこ と」35.6%となっており、理解できないから好きではないという傾向が 見られ、複数の文章を読むことへの抵抗感が強いことが分かる。 一方で、「学校の図書館や地域の図書館の本や資料を利用すること」 表1 平成15年度小学校教育課程案施状況満盃結果. (平成15年度小学校教育課程実施状況町結果より筆者が作成). 3.

(6) については「好きだった」が50.1%、「よく分かった」が54.6%『となっ. ている♂読解の学習が中心と;なる「いくつがの文章を比べて読むこと」 や「関連した他の本を読むこと」に比べて、読書活動が中.心となる学習. に関しては、子どもめ受け止めが肯定的であるといえる。 また、OECDによる「生徒の学習到達度調査」(PISA2003)∬では、.「テ キストの解釈」、「熟考・評価」に課題があるとの結果がでた2)。この結. 果を受け、平成17年12月に文部科学省は「読解力」の育成を図るため に、三つの重点目標を提示した(「読解力向上プログラム」3))。一つ目 は「テキストを理解・評価しながら読む力を高める取組の充実」である。. これは、情報を取り出すだけではなく、「テキストの内容、筆者の意図 などを『解釈』すること」と「そのテキストについて、内容、形式や表 現、信獣性や客観性、引用や数値の正確性、論理的な思考の確かさなど をr理解・評価』したり、自分の知識や経験と関連付けて建設的に批判 したりするような読み(クリティカル・リーディング)を充実すること」 なつでいる。二つ目は「テキストに基づいて自分の考えを書く力を高め る取組の充実」である。これは読み取ったことを実生活や体験に関連付 けて、自分の意見を述べたり、書いたりしてさらに意見を深めたり広げ たりするものである。そして三つ昌は、「様々な文章や資料を読む機会 や、自分め意見を述べたり書いたりする機会の充実」である。幅広い読 書を行うことによって、「目的庵条件を明確にして自分なりの考えを述 べたり、論理的・説心的な文章に対する自分なりの意見を書いたりする」 ことが必要であると提言している。. 回章の学力の現状をみると、「平成19年度全国学力・学習状況調査」 4)では、「知識」に関する問題の平均正答率は、81.7%であり多くの児 童が理解しているが、「活用」に関する問題は平均正答率が63.0%と低 くなっている。とくに、「活用」に関する問題の中でも、資料から必要. な情報を取り出し書き換えることや、二つの文章を比べて読み、共通す る点を評価し、自分の考えとしてまとめるという問題の正答率が低いこ とが明らかになった。同調査で「国語の授業で、2つ以上の資料や文章 を比べて読んだり、調べたりしてい. ワすか」の質問には、「あてはまる」 9.9%、「どちらかといえばあてはまる.」33.3%に対して、「どちらかと. いえばあてはまらない」43=5%、「あてはまらない」13.0%と否定的な. 回答をした児童が合わせて56,5%であった。比べて読むことの経験が 4.

(7) 少ない児童が半数以上いることが分かる。. 次に同調査(第6学年)で児童の読書についての意識をみていくこ とにする。「読書はすきですか」の質問に対して、「あてはまる」「どち. らかといえばあてはまる」と肯. 読書はすきですか. 定的な回答をした児童が7L3% である(図1)。また、「家や図. 1 0.1. 0%. 20%. 40%. 60%. 80%. 書館で、普段(月ん金)、1日 にどれくらいの時間、読書をし. 100%. ますか」という質問に対しては、. 翻1あてはまる ロ2どちらかといえばあてはまる. 「10分より少ない」が14.8%、. 口3どとらかといえばあてはまらない. rまったくしない」が21.2%・. 面4あてはまらない 灘無回答. であり、読書習慣があまりつい ていない児童が約3割存在して. 図1 読書め好嫌度. いる。その一方で、30分以上. 表2 読書時間 (%). 読書を行うと回答した児童は、. 2 1時間以上,2時間より少ない. 11.3. 合わせて39エ%となつ.ている (表2)。多くの児童は読書が. 3 30分以上,1時間より少ない. 21.6. 好きだが、読書の時問となると、. 4 10分以上,30分より少ない. 24.7. 1 2時間以上. 6.3. 7 T 10分より少ない. .14.8. 6 まったくしない. 21.2. 無回答. 0.1. ばらつきがみられ個人差がある ことが分かる。本が好きという 意識と実際に読書する行為は一 致せず、読書は好きだけれども、. 読む時間がない(読まない)という児童がいる。. 以上の結果をふまえ、これからの国語科教育は、複数の教材を扱い、 いかに分かりやすく指導していくか、また教科書教材の読み取りに終始 するのではなく、読み取ったことを生活の中や読書にいかに活かしつな げていくのか、その方法を探る必要がある。. 2 読解指導と読書指導の接点 国語科において読解と読書の指導をどのように関連付けるかについて は従来、様々に提言されてきた。まず、「読むこと」が学習の中でどの ように位置づけられるのかをみていくことにする。 1970年代は読解と読書について対立的に論じられていた時期である 5.

(8) が、倉持(1971)は『これからの読解読書指導』5)の中で、三つの読 書指導を述べている。「①教科書を主教材にして、これにのりながら読 書指導をする。教科書教材を使っての読書指導です。教科書教材は本来 読解教材なのですが、それを使って、読書指導ができるというものです。 ②教科書以外の教材、副教材といわれているけれど、それは、教科書教 材というものを中心に考えたからで、実は堂々たる主教材です。を使っ て、提供する。③教科書とか、教科書でないとかをはなれ、子どもの読. 書生活を中心にすること」と提言している。70年代は倉澤が主導した 「新単元学習」や大村はまの「読書生活指導」によって、読書が国語の 単元に組み込まれた時代でもあった。 また指i導過程論では、野地(1974)が読書の指導過程を「読書生活過程」. と「読書学習過程」の二つに分けている6)。「読書生活過程は、読み手 が自己の読書生活を成立させ進化させ円熟させていく過程」とし、「読 書学習過程は、読み手(学習者)が自己の読書行為を確立させ充実させ ていく学習過程であって、それは当然のことながら、読むこと(読解) の学習を内包している」と述べている。つまり「読書学習過程」は、「読 書行為への興味・関心・意欲をよびさまし、高めつつ、読書行為の目標・. 方法を習得させ、読書行為による価値実現のよろこびを味わわせ、成果 を確かめ、さらにこれを発展させ、活用していくようにさせる。読書指 導過程は、読書行為を取得させることを主要対象として組織される。そ れは国語科における読書指導において、もっとも基本的な問題どなる」 として、学習の目標として読書生活過程と読書学習過程め関連・統合を 図るべきであると述べている。. 1980年代に入ると従来の精読を重視した読解指導のあり方の批判が 行われるようになる。井上(1981)は、一つの教材文をあまりに細かい点 まで読解しようとすればするほど、「内容から遊離しがち」になる、と 行き過ぎ・た精読を批判している7)。桑原(1988)は、「分析的な読みの学. 習が日常の読書力の育成につながっておらず、読むことの『必要性』を 実感させる指導が必要」『 ナあると述べている8)。. 安居(1996)は読解と読書の二元論を克服して一元的・に考えるべきで. あるとし、読解と読書を「包み込んで学習を組み立てること」が重要で あると述べている9)。学習者は興味・関心をもって読み、様々な情報に ついて意見を交流することによって、読書に親しんでいくと述べている。 6.

(9) そのために、「読書の意義を理解させること」「読む力を育てること」「読 書材の範囲を広くすること」・を提言している。. 小田(2005)は『読むことの指導体系一読みの方法の指導体系を求め て』10)の中で、読むことの指導体系を構築する中で課題となっているの は、i現行の『小学校学習指導要領・(平成− P0年版)』で、倉澤のいう「生. 活読み」と「学習読み」がつながっていないことであ’ると述べている11)。. 小田はその例として、第3・4学年の目標を挙げ、「『内容の回心』や『段. 落相互の関係』を読み取ることと、『幅広ぐ読書』することには、直接 の関係はない。『内容』においても、第三・四学年あ『C読むこと』の 『アーいろいろな読み物に興味をもち、読むこと』は読書に関する事項 で、イ以下は、簡略化していえば、〈イ7論理的理解、ウー想像的理解、. エー読み取り方の個人的忌違、オー目的に応じた読みとり方、カー音声 化読み〉を示す内容である。イ・ウはく文章形態に応じた読み〉、エ・ オはく読み手主体に即した読み〉、カはく文章と読み手の両立場からの 理解を総合化した音読〉というように事項が構造化されている。.すなわ ち、読書に関するアと読解に関する構造化されたイ以下とが並立してい るのである。それは他学年も同様である。『読むこと』の指導の体系化 の大きな課題は、このように学習指導要領で並立記述になっている日常 の『生活読み』につながる読書と個室の『学習読み』としての読聖旨 導とをどうかかわらせ、構造化すべきか、というこ・とである。」と述べ ている。その上で、「生活読み」と、「学習読み」をつなげる方策として、. 「通読」を挙げている。ここでいう「通読」とは西尾実が提唱した マ. マ. 「読み、解釈、批評」・のうち、「読み」の部分塗ふまえている。小田は 「「読み』すなわち『通読』がこのように『解釈』や㌧『批評』を萌芽的. に内在させたものであるとするなら、それは日常の読書生活の読みにお いても同様であろう。通読にとどまる日常生活においても、.『解釈』、『批 マ. マ. 評』を胎胚させた理解活動がおこなわれていると考えるのである。した がって、日常生活で無自覚のうちに培われた通読力は、『学習読み』の 読解の原動力’となる。また、『学習読み』の指導過程で『通読』を適切 に導くことは、読解学習を充実させるだけではなく、さらに『生活読み』 の通読力をも高める結果をもたらすであろう。その意味で、通読力は『生 7「.

(10) 活読み』の読書力と『学習読み』の読解力の接点になると考える」と述 べている。こうした考えから小田は、「読書→読解一・読書」の指導構造 を提唱している。. また、1990年代以降、教育施策の面でも読解と読書の連携が取り上 げられてきた。教育課程審議会答申(平成10年7月)では「目的や意 図に応じて、要点や要旨などを読み取る能力や読書に親しむ態度の育成 を重視する」とし、読み聞かせや読書紹介、学校図書館の利用などの言 語活動例を示している。また文化審議会答申「これからの時代に求めら れる国語力について」12)(平成16年2月)では、コミュニケーション 能力育成の必要性や、情報化社会の進展に伴って、様々な情報を速やか に処理・判断する能力、情報を取捨選択する能力、要点をまとめ発信す る能力が求められると述べている。こうした能力は生涯にわたって発達 していかねばならないという見地から、国語教育と読書活動を密接に連 携させ、「自ら本に手を伸ばす子供を育てる」ことが必要であると提言 している。. 現行の『小学校学習指導要領(平成正0年版)』では、各学年の目標に 読書に親しむ態度の育成を掲げている。(表3). 表3 『小学校学習指導要領(平成10年版)』の読書に関する目標 学 第1、2学年 第3、4学年 第5、6学年 年 目. 標. 楽しんで読書しよ うとする態度を育. てる。. 幅広く読書しよう とする態度を育て る。. 読書を通して考え を広げたり深めた りしようとする態. 度を育てる。 内. ア. 容. に興味をもち、読. 優しい読み物. むこと。. ア. いろいろな読. ア 自分の考えを. み物に興味をも 広げたり深めたり ち、読むこと。. するために、必要 な図書資料を選ん で読むこと。. 小学校第1学年及び第2学年では、書かれていることの順序や場面の 様子に気付きながら、内容の大体をおさえることを基本として、読書す ることの楽しさを味わうことに目標が置かれている。「読むこと」の基 礎・基本を学ぶ時期であると同時に、生涯読書への第一歩を踏み出す段 階である。 8.

(11) 第3学年及び第4学年では、段落相互の関係や叙述に即して読むこと などをふまえ、読書の内容を広げる段階である。. 第5学年・第6学年では、目的や意図に応じて、要旨をとらえたり、 読み取ったことをもとにして、自分の考えを構築し表現したりすること が求められている。読書に関しても、自らの考えを広め深めるために主 体的に読書する段階である。. 次に、表4は二社の教科書(平成18年度版)より筆者(山下)が 作成した「読書へ読み広げる単元」の一覧である。ここでは児童向けの 「学習の手引き」が教科書に掲載さ’れているものを挙げている。紅中の 「型」については、学習内容によって次の2種類に分類した。一つ目は、 本を選ぶ際の指針を特に設定せず、児童が自由に本を選び読む学習活動 を「A自由に読み広げる型」とした。二つ目は本のジャンル、内容に一. 定の指針や課題を決めている学習活動を「B課題をもって読み広げる 型」とした。また、熱中の「区分」とは、その学習活動(読書活動)に よってどのような経験をすることをねらっているのかを3種類に分類し たものである。「①読書の楽しさ」を主として経験するもの、「②ある課 題について図書や資料を用いて調べること」を主として経験するもの、 「③読み取ったことをもとにして、自分の意見を広げたり深めたりする こと」を主として経験するもの、の三つである。 「A自由に読み広げる型」の場合は、教科書教材を学習した後、「いろ. いろなおはなしをよみましょう」や「『おもしろそうだな』と思う本を さがして読みましょう」等の学習の手引きが掲載されている。これは、 「読むこと」の力と綿密に結びついているものではなく、単独の読書指 導の単元としても成り立つ。すなわち、教科書教材で学習した文章の内 容や、教科書教材の学習で身に付けた出来事や時間の順序性を読み取っ たり、段落相互の関係に気付いたりすることという読みのカをふまえな くても学習できるものである。. 「Bの課題をもって読み広げる型」の場合は、教科書教材で学習した 内容や扱った課題をきっかけにして、ジャンルや課題等を設定し、読み 広げるものである。「ゆうすげ村の小さな旅館」(3年前)を学習後、「ふ. しぎな世界を描いた物語を読みましょう。物語のあらすじやどんな『じ. かけ』がかくされているか考えながら読みましょう」という活動などが この型にあたる。これは、教科書教材で学習した文章の内容や、「読む 9.

(12) こと」の力と結びついている。一方で、「ヤ、ドカリとイソギンチャク」. を学習後、「生き物や自然について書かれたほかの本も読んでみましょ う」など・、指.針や課題を設定しているが、.読書へのきっかけ作りと.いう. 扱いの単元もあり∼教科書教材の内容や学習によって身に付・けた「読む こと」.の力を読書でも活かすとい.う面では弱い部分もある。. 表4. 教科書における読書を広げる単元 学年. 教科書教材 ,,..,....ρ. ψ. 冒. ■. 曹蟹 曹曹 曹 9曹 ■ ●. A .. 援@… 東京害籍. A. 「. 1下 1下. A. 辱響響●●■曹,.’. ,. ,謄,曹. ?. r. ,9冒■,曹膠.■. ■i物語文. .iほんがよみたいな. 唖i物語文. ●iいろいろなおはなしをよみましょう。. 孕. {雛禦鑑おうしろかった本卦だちにし. 巳. を. 光村図書:①=i {. .. i. 東京書籍i①i. 、i説明文. 曾曹曹曽曹曹9.ロ. 「ろいろなふね. で下. どうぶつの赤ちゃん. 1下. 8. ミ 1 @. 光村図書i②i;. ’. ’. ÷.i説明文. 轟轟のりものに?いて本をよんでしらべま. 融鱒舞踏葬やんのことをしらべてi ’. 響. =. Xイミ・一. 2上・. A. たんぽぽ. 2よ. B. i. c .東京書籍i②iし. 2. i説政. 2上. B. シ前を見てちょうだい. 2下. A.. スーホの白い馬. 2下. =... がさこじぞう. 2下 9匿曹匿9●●■●. 、3上 .冒冒■曹.曹曹.. 雪,’. c. 幽. 援@i 東京書籍 ‘3. 光村図書i①1’. B. ‘i嶽薙轟轟畿拙…融蟹ろ観. 1. ?i. B. 木かげにごろり. 3下. B. 1①i鯨目. }. 3下・. サーカスのライオ’ン. =. ? ?. 3下. すがたをかえる大豆. 三つのお願い. 4上. A. ・4上. A. = ;齢. −B. 4上. ヤドカリとイソギンチャク. 4上.. ‘. i物語文 …i物語文. = ■. iいろいろな読み物を読んで、そあ特色や心に. c ご. ,. 鴫i曇鍛実餐踏象鍔冠鶴回るの Pリ書いたりしましよう。「すがたをかえる大. ●. 遠?Z鍵齢鵬 F. u伝え合う止いうこと一手と心で読. ii説明文. :. 3 3 :,. B. 響膠.7...■国■. 窒「ぼうし. {i物語文 ■iいろいろな世界の民話を読みましょう. 1. i①i光村図書監. ゥ. c. B. G. ・.9■.曹9・.一. 鴛ィ語文 奄、。.物語のあらすじやどんな「しかけ」がか. …=轡 3上. 一曹■.一冒一一一匿.匿,■匿,冒,■,¶,7. くiふしぎな世界をえがいた物語を読みましょ. i・. = =. 援@i東京書籍. 膠.■冒曹..... 冒.F,響甲■. “態瀬棚画調その騨のひみ等つし}.. 二. i i. ; ?. 3上. @ 、 ゥ然のかくし絵. 膠層....冒冒.曹響冒冒響曹. “i物語文 竃iいろいろなむかし語を読みましょう。. 3. c②i東京害籍’. @. , ,. 艪、すげ村の小さな旅館 澗. B {= . 一 』. 「 響 曽 曹 匿 曹 ・ ・ .. 曹響響.,響■冒曹.P ,. }i物語文 iiすきなお誰をしょうかいしましょう。 o. }... 2下. O年とうげ ,ρ. B. ρ. rーバーの大工事.ご_ご_,_..,.,.’.膠. ,,. =. A …ξ.. 響響■,■■■.冒ロー一曹曹 響曹曹一■一. 覧. =. 援@i東京書籍=. i葺きも似こついて勲れた文章輝みましよ. …;撒 1生きものについ熔かれた本を読みましょ. 二. ; ? ;. サンゴの海の生きものたち. −. . ci物語文. =. 援@i光村図書=. l l. ,噛噂.一,o,r響,. . 、 ’. 1下. スぬきの糸車 甲,,曝●膠甲・■嘔.. iジ摺. =. 援@i光村図害.. ii. 曹}曹曹曹■曹膠. :. 援@i 東京書籍 } 雪 .. 響. クっと.ずっと、大すきだよ. ,. 可上 冒.膠冒. Tラダでげんき. i区分i教儲会社. 型 …. おおきなかぶ. ? F. ; = =. ? 二. }. B. {. {. G③i東京書籍3. .. 艶燒セ文. 言. 10. 1篶鍵薦チつ1’て勧れたほかの本も読.

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(14) 以上の観点に従って分類し、単元数を学年ごとに整理したものが表5 である。. 型では、TA自由に読み広げる型」は学年が進行するにしたがって減 少し、「B課題をもって読み広げる型」が増加することが分かる。区分 では、「①読書の楽しさ」を主として経験するものは低学年に多く、高 学年では、読書の楽しみから一歩進んだ自分の意見を広げ深める読みに つながっていることが分かる。また、「②ある課題について図書や資料 を用いて調べること」を主として経験するものは、どの学年でも配当さ れている。教科書教材から読書へ広げる単元は学年が進行することに増 えていることも分かる。 表5 教科:書教材の分類(単元数). 以上、先行理論、教育施策、教科書における扱いから読解と読書指導 の連携について概観した。. 倉澤の提嘱する「生活読み」と「学習読み」の接点には、教科書教材 で学習した内容や、学習によって身に付けた読解力を読書にも活かす単 元構成や指導方法を工夫する必要がある。教科書教材だけの「閉じられ た読み」から、教科書教材から「広がる読み」にしていかなくてはなら ない。国語科の最終的な目標が、「自ら本に手を伸ばす子供を育てる」 ことにあり、「読書力」の向上であるとするならば、今までなおざりに してきた読書指導をより充実するべきである。これまでの指導では、読 書活動は存在しても、読書への指導は少なかったと言える。つまり、読 書で何を身に付けるのか、読書の目的は何か、そして、どのような「読 解力」を活かして読み進めればよいのかという指針が明確ではなく、読 書は個入の「生活読み」の実態に依存していたのである。読解指導と読 12.

(15) 書指導の連携を密に行うことによって、読書の幅が広がり、与えられる 読み「受け身的要素のある読書活動」から、自ら読む読み「主体的要素 のある読書活動」へ変容する。以上の読書活動の流れを示したものが図 2である。. このように教科書から「広がる読み」をめざした主な指導方法が比べ 読みであり多読である。次章では、比べ読みや多読の意義、目的につい て先行理論・先行実践より考察する。. 〉. 議.. :叢.. 嚇≡. 驚猛士雛:購;纏羅鵬壕;灘:購書顧上掛 璽鞭鍵鈎二二紛嘉毒簾鷺難. 叢舞鹸裟紫《護}葵豪麟懲照照. 藩縫簗鞭五日鐡蒙難. 図2 読書活動の流れ. 13.

(16) 注). 1)国立教育施策研究所 教育課程研究センター「平成15年度教育課 程実施状況調査(小学校)質問上調査集計結果一国語一」2005年 2)’ カ部科学省 「読解力向上に関する指導資料PISA調査(読解力) の結果分析と改善の方向」2005年12月文部科学省 3)「読解力向上プログラム」2005年12月 4)文部科学省 国立教育政策研究所「平成19年度 全国学力・学習 状況調査【小学校1調査結果概要」2007年10月 5)倉主栄吉 『これからの読解読書指導』国土社 1971年 6)野地潤家「読書機能に即した読書指導過程」『教育科学国語教育』 No.186 明治図書 1974年 7)井上敏夫 「読解指導の史的推移、その問題点」『国語科教育学研. 究』7、.明治図書 1981年 8)桑原隆「特集 読解・読書」『月刊国語教育研究』No.199 日木国. 語教育学会 19S8年 9)安居総子「授業づくりに向けて」『教育科学国語教育』No.529明 治図書 10)小田入夫「読むことの指導体系一読みの方法の指導体系を求めて」 r朝倉国語教育講座2 諒むことの.卸育』 2005年 朝倉書店 11)倉澤栄吉は『読解指導』の中で、「いわゆる学習指導要領の新しい. 考え方は、教科書や教師中心の学習から解放されて、主体の原理に立 っ、生活の実際に近い読み一生辿読みの考えを導き入れようとしたの である。知識を得るために、(精読する、黙読する)娯楽のために(音 下する、味読する)と考えるのが生活である。」とし、「もっとr生活 している学習者』、すなわち、読み手の目的や欲求を中心に考えよう」 と主張している。また、「学習読み」を「学校における指導的計画的 な読み」であると定義している。 (倉澤栄吉『読解指導一読みの基礎能カー』朝倉書店1956年) 12)文化審議会答申「これからの時代に求められる国語力について」. 平成16年2月. 14.

(17) 第2章 読み深め、読み広げのための複数教材の活用 1 読み深め、読み広げの意義・目的 1.1 国語科教育の立場からみた読み深め、読み広げ. 第1章では読解指導と読書指導の連携の必要性について考察した。 従来の読解指導は、一つの文章を精読し内容を理解する読みが中心であ り、その文章の中で「読み」が完結しがちな「収束する読み」である。. それ以外の文章にいかに広げていくかが課題である。また、読書指導は さまざまな文章に出会うという意味で、「拡散する読み」である。「拡散 する読み」は、子どもの今もっている読みのカ、読むことへの意欲に任 せられている部分がある。「拡散する読み」の中で、読みの力の育成や 読むことへの意欲をいかに高めるかが課題である。この「収束する読み」 と「拡散する読み」がそれぞれもっている課題を解決し、それぞれの長. 所を連携させるのが、複数教材を活用する指導である。読解指導と読書 指導の接点に複数教材を配置七、効果的に指導する方法の一つが比べ読 みであり多読である。複数教材を比べて読んだり、多読を行ったりする ことによって、単一教材の学習よりも読みが深まり、読みが広がる「拡 充した読み」を行うことができる。以上のことを表したのが図3である。 「読み深め」「読み広げ」の指導. 読解指導. 読書指導. 「収束された 「拡充す 読み」. る読み」. 「拡散する読 み」. 複数教材の活用による「比 べ読み」「多読」. 図3 読み深めや読み広げの概念図 15.

(18) 本章では単一教材の学習よりも、複数教材を活用することで読みが深 まり、読みが広がることを、比べ読みや多読を取り入れた先行理論より 考察してい・く。. 森久保(1978)は、同一作者の作品を読み広げる実践を行い、比べ読 みを「比べることによって相違点を浮き彫りにする」読みであ.り、重ね 読みは「重ねることによって共通点をくっきりさせる」読みであると定 義している1)。その上で、「同一作者の作品をまとめて読む場合は、重 ね読みとしての面が強いが、やはり、個々の作品による違いを比べてみ ることによって、より深い読みができる」と述べている。また、読書に は「与える読み」と「求める読み」があり、複数教材を扱うことによっ て、自分から目的意識をもって読む「求める読み」を行うことができる と比べ読みの意義づけを行っている。森久保は、比べ読みをすることで 読書への興味・関心を高め、・主体的な読書へっなげることができると提 言している。. 森久保の言う目的意識をもって読む「求める読み」は、読書に抵抗 感をもつ子どもにありがちな、「指示されたから読む」、「漠然と読む」. 読みから「読みたいと思って読む」読みに変容させることができる。. 同じく、読書への興味・関心を高める視点から庭野(1997)は、多読 を授業改革の一つの手法として取り上げている2)。. 授業の中で読むご≧の楽しさを実感させることが重要であり、教科書 教材を主体とし、他の資料を読むように授業を計画するべきであると述 べているp「読解の授業で読書の機能を付加していく」ことが重要であ るとし、「複数教材論は、精読中心から多読に学習者を誘う。教科書を もっと楽しく読むために、或いは読書する楽しさを実感するために、複 数教材論がある。読書をしなくなった今の子どもたちに、読書の楽しさ を体感させる授業にもなる」と提言している。なお、庭野は多読を多く の文章を読み広げることと、一つの文章を何回も全文通読することの二 種類に定義している。ヤ. 庭野の実践では、精読中心の読みから読書への橋渡しとして、上に 挙げた二種類の多読を教材文の特性に応じて取り入れている。授業の中 で、読書を効果的に取り入れ、読書するために必要な通読力や速読の力 を多読によって培っている。. 庭野の実践は、二種類の多読を取り入れることで読むことの「楽し 16.

(19) さ」を実感させていることが特徴的である。複数教材を扱う実践は、読 解の苦手な子どもにとって負担が大きいと批判されることがある。庭野 の実践は複数の教材を扱っているが、教科書教材を中心においているた め、読解が苦手な子どもにとっても比較的取り組みやすい学習となって いることが利点である。. 大越(2000)は、複数教材の活用を情報化社会に必要なカの育成という 視点で取り上げた3)。現代の情報化社会では、子どもたちの情報に対処 する力をつけておかなければ、多種多様の情報に振り回されてしまうこ とになると危惧し、「情報の受け手としての立場に立った時は、無批判 に情報を受け入れるのではなく、情報の正否、新しさ古さ、送り手の意 図などの観点から、情報の価値を見抜くカをつける」ことが必要である と述べている。そのために「一つの学習材(教材)を長い時間をかけて 読解するだけでなく、多くの教材(資料)の中から必要な部分をすばや く読み取る力をつける」ことを提言している。大越はこのような指導を 「情報化に応じた読書指導」’と位置づけている。「情報化に応じた読書 指導」を行うために、「情報を得るために多くの文章を速く読むという 読書的な学習と、一つの文章を確かに読み取っていく読解的な学習の一 体化と同時に、両方とも必要な国語力であることを自覚して指導に臨ま なければならない」と述べている。このような読解指導と読書指導の連 携は、情報の取捨選択、活用の能力、自ら情報を発信する能力を培うこ とを目標とし、実践の結果、次の七つの力が身に付くとまとめている。 ・ 「読んだ本について感想や意見をもつことのできる力」 ・ 「豊かな想像力を働かせて読むことのできるカ」. ・ 「読書することによって、自分自身を見つめることのできるカ」 ・ 「知識や必要な情報を自ら得ることのできるカ」. ・ 「自己のものの見方や考え方も深めることのできるカ」 ・ 「選んだ本を最後まで読み通すことのできるカ」 ・ 「状況に応じて速読することのできるカ」. 大越はこの七つのカを育成することによって、「生涯読書人」を育て ることにもつながると述べている。 大越の理論は、『学習指導要領(平成10年版)』の「目的に応じて内容 17.

(20) を大きくまとめたり、必要なところは細かい点に注意したりしながら文 章を読むこと」(第3、4学年)、「必要な情報を得るために、効果的な 読み方を工夫すること。」(第5、6学年)の内容を具体化したものであ る。複数教材を活用することによって育つ読みの力を明確にしており、. 比べ読みや多読の指導を行うに当たって目標設定の基準になるものであ る。また、情報を判断する読みという点で、子どもに目的意識を設定で き、主体的な読書につながるものである。 府川(2007)は、文学作品の比べ読み・重ね読みについて取り上げ、 比べて読むことは目常の読書の中でも起こっていることだと述べている 4)。生活の中での比べ読みとは、読書をしながら自分のこれまでの生活 体験・感覚・知識と比べるとと、過去の読書の体験と比べること、また、 他人(批評家など)の読後感と比べることなどである。このように生活 の中で行っている比べ読みや重ね読みを学習の中で指導する目的は、そ うした個人の読書反応を活発にし、その位置:づけを明確なものにすると ころにある。言いかえれば、個人の〈読み〉をより豊かでより幅広いも のにするためにこそ、複数教材の『比べ読み・重ね読み』の指導が構想 されなければならない」ことにあるとしている。そして、最終的な目的 は、「一冊の本を読み終えたときに、それと読み比べるべき本が何であ るかを、自分自身で考えることができるようになるため」であると提言 している。. 「読み比べる本を自分自身で考えるカ」の育成が必要であるとの府川 の考え方は、複数教材を学習した内容や経験が授業の中だけにと・どまら ず、生活の中へ広がっていくことを目指したものである。授業では教師 が提示した複数の文章を読む。その学習を積み重ねる間に、子ども自身 が様々な図書や資料を選び、観点をも1って読むという活動ができる力の 育成を達成すれば、授業の読みが生活の読みにしっかりと根ざすことに なる。. 18.

(21) 1.2 心理学の立場からみた読み深め、読み広げ 心理学の分野では、発達に応じた読書の適応段階が提唱されている。 阪本(1960)は読みの発達的適応課題を「知的適応」「社会的適応」「情 緒的適応」の三つの分野からとらえ、次のように提示している5)。. 表6 読書に関する発達的適応課題 知的適応. 社会的適応. ・具体的な事物に即して思考. ・正義感をもつようになる。. 学年. 低学年. 情緒的適応 ・恐怖・怒り・ねたみ・喜び・. @愛情などが著しく現れる。. @をする。. E現実の身近なものに興味を @もつ。 E 自己中心的な想像力を発揮. @する。. E文字を覚え、本を読むのを @楽しむようになる。 中学年. ・ 思考力が発達し、客観的な. ・ 自分の行動が社会のきまり. @基準を重んじるようにな. @に合致しているか、どうか. @る。. @を気にするようになる。. ・一. ハりの情緒を備えるにい. @たる。. E現実と想像の区別がつくよ @うになる。 E 自分から学習しようとする @態度が境れる。 高学年. ・ 知的興味の範囲が広がり、. ・道徳意識が発達し、善悪の. @好奇心が盛んになる。・論理的な思考ができるよう. @判断が自主的にできる。. ・情緒生活が複雑になる。. E冒険やスリルを好む。. Eユーモアを理解し、鑑賞で @になり、物事の因果関係を. @きる。. @理解する。. E好きなことに没頭して、持. E概括力が発達する。. @読できる。. E具体的な事物を離れて、間 @接的に理解する、 中学生. ・批判的態度が強くなる。・自分の理想を高く掲げる。. E明確に推理し、思考する能. ・ 他人の意見を尊重し、寛容. ・ 美しいもの、貴いものにあ. @と誠実さが出る。. @こがれを抱く。. E感傷をもつ。. @力が発達する。. (阪本一郎『読書の心理と指導』をもとに筆者(山下)が作成). 阪本はこのような発達的適応課題をふまえ、低学年では具体的な事柄. 19.

(22) や身近な題材の本と出合うことにより、情緒の発達や共感を得るように すること、中学年では客観的な読みを行うようにすること、高学年では 興味・関心を広げ、高度な情緒や抽象的な:事柄の理解を進めるようにす ることが読書指導においては必要であると提言している。 また幼児期から学童期にかけては、与えられた本を読む機会が増え、 文字を覚えるうちに「読書を楽しみたい」という欲求が高まってくる。 阪本はこの時期に、様々な読み物の読み聞かせや紹介を行うこと、つま り「読み物への招待」を行うことで「読書の基本的習慣を作ることが大 切である」と、述べている。. 秋田(1998)は、読書への動機づけについて、「短期的には、ある特 定の本への興味をひくよう、大人が働きかけることはできるかもしれま せんが、長期的に、子どもを読書へと動機づけるのは、子ども自らが能 動的に行う行動への意味づけだと考えられます。」と述べている6)。秋 田は小・中学生に「読書する意義」を問い、以下の三つの成分に分類し た。. 第1成分「空想・知識」. ・空想したり、夢を描いたりすることができるから ・感動できるから ・ものごとを深く考えるきっかけになるから ・いろいろな人の考え方にふれられるから ・新しい知識をふやすため 第2月分「暇・気分転換」 ・友だちと同じ話ができる ・ゲラゲラと笑えて楽しむことができる ・気分転換になるから ・暇つぶしになるから ・友だちと話があうから 第3成分「成績・賞賛」 ・先生や父母にほめられる ・国語の成績があがる 秋田喜代美『読書の発達心理学』より 20.

(23) 秋田によると、幼児期には本を読むことによって、大人からほめられ る体験が読書への意欲につながり、読書活動を獲得していく。つまり受 け身的な読書活動の比重が高い時期である。小学校高学年になると、 「空想・知識」のカテゴリを選択する子どもが増加し、反対に「成績・ 賞賛」のカテゴリを選択する子どもは減少する。また、中学生では読書 の意義を複数のカテゴリから選択する傾向があるという。「高学年にな るほど、読書の過程で生じる認知的な内省的意義をより重視するように なることを示して♪・ます。つまり、読書を何かの手段として捉えるめで はなく、読書の過程自体に意味を見いだしていくどいう変化です。」と 述べている。このような読書に対する意義と読書量との関係をみると、 「『空想・知識』という読書の過程で生じる思考活動を読書の機能とし て大事だと考える者は、読書を好き、おもしろいという感情を持ち、.本 を多く読むのに対し、『成績に役に立つから、1 ルめられるから』という 理由で本を読んでいる者は肯定的な印象を持っていない」と述べている。. このことは、読書を受動的な活動から主体的な活動へつなげていく際の 教師の働きかけの指針となりうる。また、秋田は「読む経験の連続性を 保証する授業へ」(2006)の中で、子どもを読書活動に誘う多読のあり 方を提言している7)。その中で、「年間指導計画に本の活用の単元表を 組み込む」こと、「長期的に取り組む」こと、「具体的に読みたいと思え. るレディネスが子どもの中に作られるための習慣を授業の中で形成す ’る」ことが重要であるとしている。. 複数教材の読解を扱った認知心理学の実験では、国語科の指導に有益 な示唆を与える実験も行われている。Hartman(ig95)は、高校生8人に 五つの文章を順に読ませ、どのような読みをしていくかを調べた8)。全 体的には、複数の文章を読み進めていくうちに、個別の文章の内容につ いての感想は減り、かわりに前に読んだ文章と比べた感想が増えた。例 えば、「前に読々だ○○という単語がまた書かれている」「前の文章と一 というところが違う(同じである)」という感想が出てくるのである。 Hartmanは読みの個人差も調べ、複数の文章の読み方に三つのタイプが あるζとを明らかにした。一つ目は、複数の文章を読んではいるが、そ れぞれ独立して解釈し、関連を意識しない読み方をする者。二つ目は、 関連を意識して読んではいないが、自分の経験や知識と関連させて読む 傾向のある者。三つ目は、他の文章の内容を利用して、今読んでいる文 21.

(24) 章を理解しようとしている者である。Hartmanは三つ目の読み方をする ことが学習をより有効に進めていくと述べている。. 1.3 比べ読み、多読の意義・目的 以上、読み深めや読み広げに関する、国語科教育や心理学の先行理論 を概観した。「比べ読み」「多読」の学習指導を行うことの意義は、以下 の六点であると考える。. ①国語の授業の中で、読書への興味・関心を高めることができる。. ②子どもにとって「なんのために読むのか」という目的意識が明 確となる。. ③目的意識が明確になることによって、主体的な読書活動へ子ど もを誘うことができる。. ④一つの単元において、読解の学習活動から読書活動へより円滑 に移行することができる。. ⑤複数の文章を読むことで、前に読んだ文章を利用して理解した り、内容の異同などを明確に読み取ったりすることができる。. ⑥情報化社会において、情報の価値を見分ける読み方を習得でき る。. 上に挙げた①、②、③は読書活動をより活発に、充実させることを主 眼においたものである。第1章で述べたように、読書習慣があまりっい ていない子どもが約3謡いる。また読書は好きだが、実際に読書する行 為とは一致していないという実態がある。このような実態の子どもたち に、「学校図書館でただ本を読ませる」ことが今まで多くの教師が行っ てきた主な読書指導であった。そこには「なんのために読むのか」とい う目的意識が希薄であった。当然、子どもたちは「読まされている」「な. んとなく読む」という受け止めで読書を行ってきた。読書習慣のあまり っいていない、読むことに抵抗感をもっている子どもにとって苦痛な活 動時間であった。複数の教材を比べて読むことや多読を行うことは、「何 について読み取るのか」を意識して読む読みである。辛どもたちにとっ て目的意識が明確になる学習活動である。目的意識が明確になることに 22.

(25) よって、森久保の言う「求める読み」が達成でき『る。. 本章第1節の2で述べたように、子どもは学年が進行するにつれて、 読書行為そのものよりも、読書することの意味をより重視する傾向があ る。また、読書の中で思考活動を読書の機能として大事だと考える子ど一. もの方が読書を好きと捉える傾向もある。目的をもって比べ読み、多読 を行う学習活動は、「考えるために読む」活動、「読むことで考える」活 動が主となってくる。子どもにとって読書の意義が体験できる学習であ り、ひいては、読書の幅が広がっていくものである。. ④は読解指導と読書指導の連携を視野に入れたものである。比べ読み や多読を取り入れることによって、安居が提唱しているように読解と読 書を「包みこんで学習を組み立てる」ことができる。すなわち、教科書 教材の読解で学習した内容や身につけた読解の技能を、教科書教材と関 連した文章を読む際に活かすことができる。学習した事柄を読書に活か すことができたとき、子どもは自分の読む力の向上を知り、達成感をも つと考えられる。さらには府川の言う自分で本を選び、比べて読んだり 多読をしたりするカの育成にもつながる。. ⑤、⑥は読み深めや読み広げに関するものである。教科書教材を核と してその他の文章に読みを広げることは、子どもの知的発達に即した読 み広げが可能である。やみくもに難しい本を与えたり、子どもにとって 興味・関心が低い内容の本を紹介したりすることが少なくなる。また、・.. 教科書教材の読み取りで得た知識を利用することで、未知の文章を読む 際の手がかりとなる。これは読むことに抵抗感をもっている子どもへめ、 支援となる。さらに他の文章や資料を読み取ることで教科書教材の読み 取りがより深まることもある。単一の教材文では、気付き難い文章の構 造や内容、表現などについて、複数の文章を読み比べることで、その異 同が明確になることもある。そして複数の教材を読むことによって、そ の情報の新旧、正否、書き手の意図などを判断できる力が育成できるの である。. 23.

(26) 2 読み深め、読み広げるための指導計画の設計. 2。1 比べ読み、多読を取り入れた指導計画の類型 第1章では、教科書における読書を広げる単元(p9、10.表3)を整 理し、「A 自由に読み広げる型」と「B 課題をもって読み広げる型」 の2種類に分類した。教科書の単元では、教科書教材を読解した後に、 読書活動へと展開する指導計画がほとんどである。以下に教師用指導書 の単元計画より、低学年の「本と友だちになろう」、高学年の「文章の 構成を考えながら読もう」の単元を例としてあげる。. 第2学年 教材文「スイミー」(全14時間) 次 時数 学習内容. 第1次 第2次 第3次 第4次. 1時間. 学習のめあてをもつ。. 7時間 2時間. 場面の様子や登場人物の気持ちを読み取る。. 4時間. おもしろい本を読んで友だちに紹介する。. 音読発表会をする。. 第4次で読書活動へ広がっているが、紹介カードの作成や紹介の時間 を含めての4時間であり、読書の時間がしっかりと確保されているとは いえない。. 第6学年 次. 第1次 第2次. 教材文「イースター島にはなぜ森林がないのか」 時数. (全7時間) 学習内容. 1時間. 学習の見通しを知る。. 5時間. 構成や筆者の伝えたいことを読み取りまとめ 驕B. 第3次. 1時間. 興味をもった、自然や環境に関する本や文章を ヌむ。. 第3次で読書活動へ広がっているが、活動の内容は「自然や環境に関 する本」を読むことであり、教材文を読み取った内容や読みの技術(こ 24.

(27) の単元では文章の構成に着目して読むこと)を読書にどのように活かし て読んでいくのかが明確ではない。. どちらの単元計画も読解→読書の展開になっているが、「なんのため に読むのか」という目的があいまいである。読書習慣が身に付いていな い子どもにとって、読書意欲があまり高まらないのではないかという懸 念がある。. 以上に述べたように、読解と読書を連携した指導計画はともすれば「読. 解→読書」という単一の形式に流れがちである。子どもに「読み深め」 「読み広げ」を体験させようとするならば、もっと教材文の特性を考慮 したり、単元の展開を工夫したりする必要がある。 次に、先行実践を分析し比べ読みや多読を取り入れた指導計画の類型 を考察する。なお、例1,4は指導実践集(小森茂編著『新しい国語科 授業の実際』)から取り上げた。(例2、3は筆者の実践である) まず指導の中で複数の教材を単元のどの部分で活用するのかという面 からみていくことにする。先行実践より指導計画を分類すると、大きく ①導入提示型、②並行提示型、③順次提示型、④発展読書型に分けられ る。なお、「教科書教材」とは、教科書に掲載されている文章を、「関連 教材」とは、教科書の教材文に関連した文章や資料を指す。関連教材は 教師があらかじめ選び提示した文章、もしくは子どもが選んだ文章であ る。. ①導入提示型:単元の導入時に教科書教材に関連する図書や資料を複 数提示する指導計画である。 関連教材の提示にはブソクトーク9)、読み聞か i…幽玄…涯二一_.._._.._.___..、._曽_.._. ,F持F−3. せ、アニマシオンLωなどの方法がよく用いられ る。どの学年にも適用されるが、本を自分で選ぶ ことに慣れていない低学年に読書案内から多読へ 結びつける実践には適した型である。. 」ユ. 教科書教材 この型の場合、関連教材を詳しく読み取ること はせず、その内容を簡単に紹介し、教科書教材の 内容につなげていく。従って、読み取りは教科書教材に比重がかけられ る。. 25.

(28) 利点としては、関連教材を単元の導入時に提示することによって、 教科書教材への興味づけを図ることができる。また、導入時に関連教材 を提示することによって、「よく似た本がある」「あんな本も読んでみた. い」之子どもが意識する。そのため、単元を通して学校図書館や学級文 庫にある図書を意識化し、随時、本を手に取るような活動に発展するこ とができる。. 例1 第3学年 単元名’「小さな命の大切さを語り合おう下」11)(全9時問). 教科書教材「ちいちゃんのかげおくり」. 注)網掛け羅部分が主に関連教材を扱い比べ読みや多読を行 っている時間である。(以下の表でも同様). この単元計画では、第1次と第3次に関連教材を扱っている。第1次 では比べ読みの方法を、第3次には主として多読の方法を取り入れてい る。第1次に戦争がテーマの関連教材を提示することによって、「ちい ちゃんのかげおくり」の背景が戦争の時代であること、主郭公ちいちゃ んの幼さがより子どもたちに意識されたと実践者は述べている。. また、教科書教材と関連教材の比べ読みだけではなく、教科書教材の 二つの場面の比べ読みを行っている。作品どうしの比べ読みよりも、同 じ作品の場面ごとの比べ読みは、読むことに抵抗のある子どもに比べそ 読むことを意識させ、比べて読む方法に慣れさせる方法である。. ②並行提示i型:単元全体を通じて比べ読みを取り入れ、複数の教材を 読み比べることが申心となる指導計画である。 26.

(29) 教科書教材と関連教材を同時に提示する。複数 教材を比べて読むことにより、それぞれの内容が より明確になったり、構成や表現の効果・工夫に ついて気付いたりすることができる。また複数の 情報を得ることの大切さや面白さが実感できる面 もある。比べ読みする際には丸「何について読み 取るのか」「どのような事柄について比べて読む. 教科書教材. ili. のか」を明確にする必要がある。. 例2 第6学年 単元名「命について考えよう」(全12時問) 教科書教材「海のいのち」. 第2次で教科書教材「海のいのち」と関連教材「山のいのち」を「作 者の『命』に対する考え方はどのようなところに表現されているか」と いう観点で比べ読みを行った実践である。「何について比べるのか」と いう点を明確に、かっ、絞り込まないと、読解に課題のある子どもには 難しい。この実践では、主人公の生き方の違い、主人公の変容、主人公 にかかわる人物の考え方の共通点について比べて読んだ。. 平行して作品を読むことは、作品の主題が同じもの、あるいは、正反 対のものに対して、その共通点や相違点が読み取りやすくなる利点があ る。. ③順次提示型:教科書教材を学習した後、関 連教材を提示し、学習した教科書教材と関 連教材を比べ読みする指導計画である。 ②の並行提示型が子どもの実態に照らして難 しい場合や、比べ読みに慣れていない段階での 27. 教科書教材 ”1達関連教材.

(30) 実践に適している。この指導計画は教科書教材の読み取りで学習した内 容や、学習した読みの技術を活用して、子ども自らが関連教材を主体的 に読み取っていくことができるという利点がある。. 例3 第6学年 単元名「地球環境について考えよう」(全13時間) 教科書教材「一秒が一年をこわす」「ホタルのすむ水辺」 次. 時数. 第1次 第2次. 1時間 5時間. 下灘鰻・. 籔鑛織鑛 蕪一生鰻,.. 学習内容. 学習計画を立てる. 「一秒が一年をこわす」を読み、様々な環境問題 があることを知り、筆者の主張を読み取る。 灘灘離含糊灘 籔1羅i i顯纐. 雛{、. 雛. _ .. ・ .撚….. ?T..伍.灘鐡、弼_. 第4次. 3時間. 「一秒が一年をこわす」を説明するチームと、「ホ. タルのすむ水辺」を説明するチームに分かれ、パ ネルディスカッションを行う。. 第2次では「∼秒が∼年をこわす」を筆者の意見とそれを支える具体 例に着目しながら一斉授業の中で読み取った。第3次では第2次で読み 取った内容、意見と具体例に着目したり接続語などを手がかりにしたり して読むという読みの技術を活かしながら、子どもが一人で読み取って いった。第3次の読み取りでは「一秒が一年をこわす」と比べて、「ホ タルのすむ水辺」は「具体例が少ない」、「『一秒が一年をこわす』は環 境間題全体を書いているが、『ホタルのすむ水辺』ではホタルの減少と いう例から環境問題を取り上げている」など、論 の進め方の違いに気付くこともできた。. ④発展読書型:教科書教材を学習した後、子ど もが教科書教材と関連した本を選び、多読の 活動に入る単元指導計画である。. 教科書教材. 関. 関. 連. 連 教. 教 教科書教材を学習した後、設定された課題に従 28. 材. 材.

(31) って関連図書や資料を選び、読み広げていくものである。これは自分で 課題や鼠的をもって図書を選び、読書につなげていくものである。この 場合、教科書教材で学習したことを、発展読書でどのように活かすのか を明確にする必要がある。教科書で最も一般的に扱われている単元計画 である。. 例.4 第2学年 単元名「むかしばなしだいすき」12)(全16時間) 教科書教材「力太郎」 学習内容. 時数. 次. 第1次. 10時間. 「力太郎」を場面の様子を中心に読み取る。. ヌみ取ったこど;を人形劇や動作化にして表現す 驕B. @’願撒職 蜩?蜩. 第3次. 蜴O野 ・雛鑛雛・難難.『羅灘難解顯難. ’獺臼携. 冊. 舛 鵬. 2時問. おもしろかった昔話を紹介する。. この実践は、「むかしばなしをたくさん読もう」という課題をもって、. 多読の実践を行ったものである。多読を行う際たは、子どもが本を選ぶ だけでは.なく、.ブックリストを作成し紹介『したり、アニマシオンを取「り. 入れたりして、読書を楽しむ計画を立てている。このような本を選ぶと. きの手だてを教師がもっことによって、子どもの興味に沿った本の紹介 を行うことができ、読書習慣の付いていない子どもへの支援になってい る。. 以上、四つの類型を提示した。実際の指導計画の設計に当たっては、 導入提示型と発展読書型を連携させる(例1)、順次提示型から平行提 示型への移行など、子どもの実態や教材文の特性に応じて指導計画の型 を組み合わせることも視野に入れておくべきである。 また、教科書教材と関連教材の扱いについても読み取りの軽重を考え ておく必要がある。教科書教材と対等に読み取っていくのか、参考資料・ 参考文献的に扱って読み取っていくのかによっても指導計画が異なって くるからである。 29.

(32) 2.2 比べ読み、多読の指導の観点 比べ読みや多読を行う場合、単に複数教材を提示するだけでは従来の 「自由読書」と変わりがない。先述の例1−4の実践事例でも触れたよ うに指導の観点が必要である。指導に当たっての観点は(1)教材文選 択の観点、(2)読み取りの観点、(3)育成する力の観点が考えられる。 (1)教材文選択の観点. 教科書教材のどの教材を使って、比べ読みや多読を取り入れた授業を 行うのかをまず決定する必要がある。「精読か多読か」という二者択一 ではなく、どの教材で精読をし、一どの教材で比べ読みや多読を取り入れ るかということを考えるべきである。内聞指導計画の中で、精読の単元、 比べ読みや多読を取り入れた単元をそれぞれ効果的}と配置していく必要 がある。藩邸指導計画については後に述べる。. どの教材文でも比べ読み、多読を取り入れることができる。しかし、 子どもが「比べて読みたい」「もっと他の本が読みたい」という意欲を もつような教材文が適している。 次に関連教材の選定・であるが、あくまでも教科書教材を核として、比 べ諦む文章や、多読していく文章を選んでいく。教科書教材を扱わない 場合、その単元を年間指導計画に余分に差し込むことになり、年間指導 計画の時数に無理が生じ、他の教科書教材を扱う時数が減る等の影響が でる。また、教科書教材を核におくことで読解に課題がある子どもの抵 抗感が減ることが挙げられる。 、関連教材は既習の文章、未習の文章の2種類が考えられる。 既習の文章はそれまでに学習した単元の中から関連する文章を選ぶ。 同一学年の文章でも、前学年の文章でも可能である。既習の文章を関連 教材に選ぶことは以下の利点がある。. ・学習した内容や読解の技術を利用しながら教科書教材を読み取 ることができる。. ・既習の内容であるためぐ読むことが苦手で抵抗感をもっている 子どもでも取り組みやすい。. ・既習の文章をもう一度扱うことによって、以前、読み取ること 30.

(33) が難しかった内容や、言語事項を確実にすることができる。. ・前学年の文章の揚合ミ文章量も比較的少なく内容も理解しやす いので、比べ読みの初期には取り上げやすい。. 教科書教材と既習の文章の比べ読みには次のような組み合わせが考え られる。. 例A 教科書教材. 関連教材. 「イースター島にはなぜ森林が ないのか」・(第6学年). 「森林のおくりもの」 (第5学年). 共に森林資源をテーマにした環境や文化に関する説明的文章であ る。「森林のおくりもの」では森林の大切さが説明され、今の日本 の生活を支えているのは、先祖が代々森林を守り伝えたおかげであ ると述べられている。「イころター島にはなぜ森林がないのか」で は祖先が森林を伐採しすぎたために土地が荒廃し、人が住めなくな つ左という事実を書いたものである。「森林のおくりもの」では「も し森林がなくなったら…」という仮定の話であらたがぐそれが現実 に起ぎた話として「イースター島ではなぜ森林がないのかしを読む ことができる。前学年で読み取った内容を参考にしながら、新しい 教材を読むことカミできる。. 例B 教科書教材. 関連教材 「づり橋わたれ」(第3学年). 「注文の多い料理店」 (第5学年). 作者の異なる物語である。どちらも現実から非現実の世界のはざ まに「風」が吹く。作品の構成や作者の意図を読み取るときに比べ て読むことができる。また登場人物の変容を読み取る場合にも比べ ることができる。「つり門わたれ」のトッコは心理的に成長するが、 「注文の多い料理店」の二人の紳士は心理的に変化がない。その対 比も可能である。 31.

(34) 一方、未習の文章には次の利点がある。. ・薪しい文章と出合うことができ、読むことへの期待感がある。. ・既習の文章から選ぶ揚合よりも制約が少なく、多くの候補から 選ぶため、子どもの実態や教材の特性を考慮することができる。. ・学校図書館や地域の図書館と連携をとって多読に結びつけるこ とができ、読書活動が活発になる。. ・子どもが選んだ本をもとにした学習が展開できる。. 例C 教科書教材. 関連教材. 新美南吉のその他の作晶. 「ごんぎつね」(:第4学年). 「ごんぎつね」の学習から、同じ作者の他の作品の多読に結びつ けることができる。例えば、「ごんぎつね」と「手ぶくろを買いに」 ・では、同じキツネが登場する物語であるが、話の展開や読後感はま ったく違う.。子ども自らが「どの部分がよく似ていて、どの部分が 違うのか」と比べて読むこともできる。また複数の作品を読む中で、 作者の特徴にも気付くことができる。 攣科書跡替と関連教材のジャンルについては、どのような組み合診せ、 読み広げも可能である。小学校段階で扱いやすいジャンルは、物語、説. 明的文章、詩歌、伝記、評論、解説文、随筆、古文、漢文、薪闘記事、 新聞等の投書、コラム、図鑑、辞書、辞典、原作、リライトした文、マ ンガ等が考えられる。. 32.

(35) 図4は第6学年で筆者(山下〉が行った、宮沢賢治の作晶を扱った時 の授業の構想図である。. 図4 授業の構想図. ○騰科書翻である・「やまなし順治の伝記」の2翻を核と して授業を構想した。. ○は関連翻である・比べ読みや多読を取り入れる際に提示可能姻 書・資料を挙げた。. このように教科書教材は物語と伝記のジャンルであるが、比べ読み、 多読を取り入れる活動を行うことによって、詩や解説文など他のジャン ルに読みが広げることができる。. また、比べ読みや多読を取り入れることにより、教科書から読みが広 33.

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