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第48回山梨医科大学CPC記録:難治性ウイルス感染症で発症した免疫不全症の乳児に非血縁者間臍帯血移植を行ったが拒絶された1例 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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症例提示 根本 篤大学院生(小児科学) 症例:男児(入院時,2 カ月) 主訴:多呼吸,肝腫大,貧血 現病歴: 2000 年 12 月 9 日ごろから咳嗽・鼻汁 を認め近医へ通院していたが,12 月 27 日ご ろから 38 度程度の発熱があり,哺乳力も次 第に低下した。2001 年 1 月 2 日夜の授乳後に 嘔吐があり活気もなくなったため 1 月 3 日に 近医小児科を受診した。このときチアノーゼ, 多呼吸,肝腫大を認め,胸部レントゲンで間 質性陰影を認めたため入院した。入院後は抗 生剤 CZOP 静注と CAM 内服,Dexametha-sone 0.5 mg/kg/day,酸素の投与によって症 状は改善した。このため Dexamethasone を 漸減中止したところ,再び多呼吸と発熱を認 めた。さらに急激な貧血と血小板減少,肝機 能障害の進行,下痢,臀部皮膚炎の増悪,高 血圧を認めたため,1 月 19 日に当科に転院 した。 既往歴・発達発育: 38w5d,正常分娩。出生時 体 重 は 2 9 5 8 g 。 1 カ 月 検 診 時 に は 体 重 は 4730g であり特に異常を指摘されなかった。 家族歴:母,分裂病,流産一回;母方祖父,分 裂病;母方祖母の同胞 11 人中 4 人が幼少時 に死亡(詳細不明);父方祖父,肝臓癌で死 亡。 入院時身体所見:身長,58 cm(− 0.8 SD);体 重,5,270 g(− 1.5 SD);体温: 36.9°C ;呼 吸数,70/min ;心拍数,158/min ;血圧: 61/32 mmHg ;意識,痛み刺激に対して啼 泣あり;大泉門,膨隆(−);眼瞼結膜,貧 血(−);眼球結膜,黄染(−);口腔内,扁 桃腺を認めず;肺,湿性ラ音を全肺野に聴 取;心,S Ⅰ,S Ⅱ:正常; 腹部,やや膨隆,軟;肝,右季肋下に 7cm 触 知,軟; 脾,触知せず;腱反射,亢進・減 弱を認めず;皮膚,肛門周囲に一部潰瘍を伴 うびらんあり。 検査所見: ・ 1 月 3 日 前医入院時 WBC 13,300/µl,Hb 11.5 g/dl,Plt 165 × 103 万/µl,GOT 199 IU/l,GPT 177 IU/l,LDH 803 IU/l,CRP < 0.3 mg/dl ・ 1 月 5 日 ステロイド開始後 vii 第 48 回山梨医科大学 CPC 記録 日時:平成 13 年 7 月 4 日(水)午後 5 時 15 分∼ 6 時 45 分 場所:臨床講堂大講義室 司会:中澤眞平教授(小児科学),大井章史教授(病理学 1)

難治性ウイルス感染症で発症した免疫不全症の乳児に

非血縁者間臍帯血移植を行ったが拒絶された 1 例

要 旨:本症例は重症複合型免疫不全症(severe combined immunodeficiency, SCID)の 5 ヶ月

男児である。2000 年 12 月末に発熱,汎血球減少を期に発見され,2001 年 2 月 14 日に臍帯血移植 を行ったが生着せず,全身性の cytomegalovirus 感染症を発症し,肺炎による呼吸不全で死亡し た(全経過約 3 ヶ月)。剖検では,全身のリンパ組織のリンパ球減少がみられた。胸腺は皮髄の 分化に乏しい上皮性細胞からなり,リンパ球(thymocyte)は著しく減少し,胸腺異形成の状態 であった。わずかにみられたリンパ球は T 細胞,B 細胞のいずれのマ−カ−も陰性であり NK 細 胞 と 推 定 さ れ た 。 全 身 臓 器 に ウ ィ ル ス 封 入 体 を 持 っ た 巨 細 胞 が み ら れ , 直 接 死 因 は cytomegalovirus 感染による間質性肺炎と考えられた。

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WBC 11,090/µl(桿状核球 11 %,分葉核球 7 7 % , リ ン パ 球 4 % , 単 球 7 % ), H b 10.8 g/dl,Plt 505 × 103/µl,GOT 159 IU/l, GPT131 IU/l, LDH 765 IU/l, CRP < 0.3 mg/dl,クラミジアニューモニエ IgA(−), IgG(−),RS 抗体< 4 ・ 1 月 13 日

IgG 121 mg/dl,IgA < 6 mg/dl,IgM < 5 mg/dl,Ferritin 860 ng/ml,PT-T 11.2 sec, APTT 30.0 sec, FIB 121 mg/dl, FDP 13.2µg/ml ・ 1 月 18 日 サイトメガロウイルス(CMV)アンチゲネ ミア 238/スライド ・ 1 月 19 日 当院転院時 血液検査: WBC 9,900/µl(骨髄球 7 %,後骨髄球 11 %, 桿状核球 12 %,分葉核球 59 %,単球 6 %, リンパ球 5 %,赤芽球 23 /100WBC),RBC 2.99 × 106/µl,Hb 8.4 g/dl,Ht 24.9 %,Plt 6.4 × 104/µl,網状赤血球 6.4 %,TP 4.3 g/dl,Alb 2.3 g/dl,GOT 1,049 IU/l,GPT 384 IU/l,LDH 3,372 IU/l,ALP 492 IU/l, LAP 837 IU/l,γ-GTP 2,645 IU/l,T. Bil. 1.4 g/dl,D. Bil. 0.9 mg/dl,TG 621 mg/dl, T.Chol 379 mg/dl, BUN 9 mg/dl, Cr 0.27 mg/dl,Na 138 mEq/l,K 5.0 mEq/l, Cl 105 mEq/l,CRP 0.3 mg/dl,Ferritin 2,983 ng/ml(25-250),Haptoglobin <12 mg/dl(40-330),Adenosine deaminase 60.9 IU/l( 8.1-21.6), PT-T 11.2 sec, PT-% 107.7 %,APTT 71.4 sec,FIB 84 mg/dl,AT-Ⅲ 111 %,FDP-DD 1.2µg/ml,PHA 添加試 験(リンパ球幼若化試験)PHA+ 2,393 CPM control 4,343 CPM リンパ球表面マーカー: CD3 および CD19 陽性細胞分画は陰性で CD56 陽性分画のみ認 める。 NK 細胞活性 37 %(10-40 %) 髄液検査:細胞数 3/3(単核球:多核球= 2 : 1),TP 24 mg/dl,Glu 65 mg/dl,CMV 定量 6 × 104コピー/ml(2 × 102以下) 入院後経過:入院翌日には全身性痙攣が出現 し,頭部 CT 上で前頭葉の萎縮を認めた。 CMV アンチゲネミア異常高値であり,脳 炎・肺炎・肝炎を含む CMV 全身感染に続発 性にネフローゼ症候群と高血圧を併発したと 考えた。各種対症療法に加えて,ganciclovir (GCV)の投与と抗 CMV 抗体高力価γ-グロ ブリンの投与を開始した。しかし GCV の効 果は一時的であり GCV 耐性と考えて,2 月 1 日に抗ウイルス薬を GCV から foscarnet に変 更した。 一方,免疫不全症に対する根治目的で造血 幹細胞移植を計画した。家族内に HLA 一致 ド ナ ー が 得 ら れ ず , 臍 帯 血 バ ン ク か ら HLA5/6 座一致の女児由来臍帯血の供給を受 けることとした。 Foscarnet に変更後,CMV アンチゲネミア は陰性化したため,2 月 10 日から前処置と し て 抗 ヒ ト 胸 腺 細 胞 グ ロ ブ リ ン 1 5 mg/kg/day × 4 days に副反応予防のため mPSL 2 mg/kg/day を併用し,2 月 14 日に非 血縁者間臍帯血移植を行った。輸注細胞数は 24 × 107/kg であった。GVHD 予防として MTX 5 mg/m2を day2 および day4 に投与し たところ,皮膚びらんと粘膜障害をきたし, 2 月 22 日には喉頭浮腫による呼吸不全のた め人工呼吸管理を開始した。Day 5 からは 図 1. 前医に入院時の胸部単純レントゲン写真 (平成 13 年 1 月 3 日撮影)。両側肺に間質 性陰影を認め,心基部が狭く胸腺陰影が 欠落している。

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GVHD 予防として FK506 を開始した。 2 月 22 日(day 8)に急激な末梢血白血球 数の減少を認めたため,翌 23 日から G-CSF の投与を開始した。3 月 3 日(day17)には 顆粒球が 500/µl 以上になった。 3 月 5 日(day19)に行った骨髄細胞の異 性間 FISH 解析ではドナー由来である XX 細 胞を確認できず,また 12 日の末梢血でも NK 細胞のみで T 細胞分画を確認できなかっ たため,拒絶の可能性を考えて免疫抑制剤を 中止した。さらに臍帯血の一部を in vitro で 増幅した CD4 陽性活性化 T リンパ球を 3 月 1 3 日 に 輸 注 し た 。 輸 注 細 胞 数 は 2 . 2 5 × 106/kg であった。しかし,これらの治療に は反応せず,結果的に移植の生着は得られな かった。 3 月 19 日には foscarnet の投与にも関わら ず CMV アンチゲネミアが再び陽性となり, 脳炎・肺炎が次第に増悪した。その後,胸水 の貯留を認めたが内容は漿液性で細菌培養は 陰性あった。人工呼吸器の条件をあげても低 酸素血症および二酸化炭素の貯留が進行し, 4 月 3 日(生後 5 ヶ月)に呼吸不全のため死 亡した。 病理解剖所見と診断 柏原賢治助教授(病理部) 1.胸腺(前縦隔の脂肪組織重量 3 g):前縦 隔にはあきらかな胸腺の構造は確認され なかった。 2.肺(65/81 g):両側とも肺は硬く,充実 ix 図 2. 末梢血リンパ球の flow cytometry 解析結果。健常人(左)および本症例(右)の末梢血 で,リンパ球分画に gate をかけ(左上パネル),CD3 / CD4(右上パネル)及び CD8 / CD19(左下パネル)による double staining と,CD56(右下パネル)の single staining を行った。本症例では,CD3 陽性の T リンパ球と CD19 陽性の B リンパ球は存 在せず,CD56 陽性の NK 細胞のみを認めた。わずかに認める CD3 陰性/ CD8 弱陽性の 分画は NK 細胞由来と考えられた。 図 3. 胸部 CT 写真(平成 13 年 3 月 22 日撮影)。 両側肺野に air bronchogram 陽性の浸潤 像を認める。

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性で含気に乏しく,割面で巣状に出血を 認めた。 3.肝(340 g):腫大しているが,肉眼的に 著変なし。 4.腎(37.5/35.5 g):小児の分葉構造を保 っていた。肉眼的には著変なし。 5.心(36 g):明らかな異常ない。 6.副腎(3/2 g):肉眼的には異常ない。 7.消化管:回腸の Peyer 板の発達不良があ る他は,肉眼的には異常なし。 8.脾(22 g):赤脾髄がめだち,白脾髄は 不明瞭である。 9.リンパ組織:腸間膜などにリンパ節と考 えられる小結節を散見した。 10.骨髄:赤色髄である。 11.胸水(32/50 ml):腹水(15 ml) (脳の解剖は認められなかった。) 組織学的所見 1.胸腺:前縦隔の脂肪組織内に胸腺上皮細胞 の分葉状増殖からなる胸腺の構造を認め た。上皮細胞は oval な核をもち,皮髄質 の分化が乏しく,Hassall 小体もみられな かった。リンパ球(thymocyte)は著しく 減少しているが,CR45RO 陰性,CD20 陰 性の小型のリンパ球を散見した(図 4)。 2.リンパ組織,脾:前縦隔,腸間膜,消化管 などに被膜,リンパ洞を有するリンパ節を みとめるが,細網細胞,組織球由来の細胞 からなり,リンパ球は著しく減少している (免疫組織学的所見は胸腺と同様)(図 5)。 リンパ洞には赤血球を貪食した組織球がみ られた。脾では,赤脾髄は認められるが, 白脾髄形成はない。 3.肺:びまん性に肺胞上皮細胞が腫大,気腔 内組織球浸潤,fibroblast 増生による肺胞 壁の肥厚がみられ,間質性肺炎のパターン を呈していた。肺胞上皮,組織球の核には 多数の好酸性の巨細胞封入体を認めた(図 6)。これらの封入体は cytomegalovirus (CMV)に対する抗体で免疫染色すると, immunoreactive であった。炎症細胞浸潤 はほとんどみられない。 4.心:散在性多数の巨細胞封入体を心筋細胞 の核に認め,心筋細胞の脱落をともなって いる。 5.副腎:副腎髄質細胞に多数の巨細胞封入体 や多核の変性細胞を認める。 6.消化管:胃,小腸,結腸の粘膜は保たれて 図 4. 胸腺の組織像。脂肪組織内に胸腺上皮細胞の 胞巣がみられる。Hassall 小体は見られず,リ ンパ球は著しく減少している(A)。抗サイト ケラチン染色を施すと,胸腺上皮細胞のみで リンパ球の消失が明らかである(B)。 図 5. リンパ節の組織像。瀘胞はみられず,リ ンパ球の減少が著しい。 A B

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いるが,粘膜固有層内の血管内皮細胞,組 織球,腸管の神経細胞に巨細胞封入体をみ とめた。 7.肝:肝の構造は保たれている。小数の肝細 胞,Kupffer 細胞に CMV の封入体を有す る細胞をみる。類洞の Kupffer 細胞に赤血 球貪食像(erythrophagocytosis)がみられ る。 8.腎:光顕的には,糸球体に著変なかった。 尿細管上皮細胞の核に pyknosis などの変 性所見をみとめるものが巣状にみとめられ た。巨細胞封入体様の構造を持つ変性した 上皮細胞もあり,CMV 感染が疑われたが, 免疫組織学的には陰性であった。 9.骨髄:細胞性の骨髄で,赤芽球,顆粒球, 巨核球の 3 系統細胞とも認められる。 病理解剖学的診断 1.[重症複合型免疫不全症の臍帯血移植後] 胸腺異形成(前縦隔の脂肪組織重量 3 g [12 g])+リンパ組織でのリンパ球低形成 (脾臓 22 g[18g]) 2.全身性巨細胞封体ウイルス感染症 肺(65/81 g[combined 82 g]), 心(36 g[35 g]),消化管 副腎(3/2 g[combined 5.3 g], 肝(340 g[228 g] 3.腎 尿 細 管 上 皮 細 胞 の 変 性 ( 37.5/37.5 g [combined 54 g]) 4.Hemophagocytosis(virus associated ?) 5.高細胞性骨髄 []内は 5 ヶ月男児の標準臓器重量 質問 大井章史教授(病理学 1) 骨髄移植のために抗ヒト胸腺細胞グロブリン が投与されていますが,胸腺の萎縮がこのため に起こっている可能性はありませんか。 回答 田坂捷雄助教授(免疫学) 治療による修飾を否定はできませんが,投与 前から X-p で胸腺陰影のないこと,組織像で Hassall 小体のみられないことより,胸腺の萎 縮は疾患固有のものと考えられます。 討論 杉田完爾講師(小児科学) 重 症 複 合 免 疫 不 全 症 ( severe combined immunodeficiency, SCID)について原発性免疫 不全症は,先天性の免疫系の遺伝的欠陥を有す る疾患群である。種々の免疫系の異常により, 生後早期から種々の程度に易感染性を示すと同 時に悪性腫瘍・自己免疫疾患を高頻度に発症す るなどの臨床的特徴がある。最新の分類である International Union of Immunological Societies (IUIS)report(1999 年)では,細胞性免疫系, 液性免疫系,補体系,食細胞系の量的・質的異 常を示す様々な疾患が VIII 群に分類されてい る。複合免疫不全症は原発性免疫不全症の中で 最も重症型である I 群に分類されているが, SCID はその最重症型である。細胞性免疫系と 液性免疫系の両者が高度に障害されるため,造 血幹細胞移植や遺伝子治療などの根治的治療が 成功しなければ,重篤な感染症のために乳児期 に死亡する場合が多い。 SCID は,T 細胞と B 細胞の有無によって, 表のごとく 3 型に分類される(表 1)。T 細胞陰 性 B 細胞陽性 SCID は,IL-2,IL-4,IL-7,IL-15 の受容体を構成する common γ鎖に異常が 認められるタイプ(X-linked)と common γ鎖 に結合しシグナル伝達に関与するチロシンキナ ーゼ JAK3 に異常が認められるタイプ(autoso-xi 図 6. サイトメガロウィルス肺炎。肺胞壁は浮 腫状で線維芽細胞の増殖,組織球の浸潤 がみられる。肺胞上皮および組織球の核 内に好酸性の封入体を認める。肺胞内に も組織球の浸潤が見られる。

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mal recessive)が存在する。T 細胞陰性 B 細胞 陰性 SCID は,免疫グロブリン遺伝子や T 細胞 受容体遺伝子の VDJ 再構成の初期段階に必要 な RAG(recombination activating gene)−1 あ るいは RAG-2 に異常が認められるタイプと ADA(adenosine deaminase)欠損症が知られ ていたが,最近は VDJ 再構成の最終段階に必 須で DNA2 本鎖切断(double strand break, dsb)修復に関与する遺伝子の異常が想定され ている放射線感受性(radiosensitive,RS) SCID が注目されている。dsb 修復遺伝子群と しては Ku70,Ku80,DNA-dependent protein kinases,DNA ligase IV などが知られており, ヒトの RS-SCID 症例でこれらの遺伝子群に異 常を発見するための努力が精力的に行われてき たが,未だに発見されていなかった。本年 4 月 の Cell 誌に,dsb 修復に関与する新たな蛋白 (Artemis)をコードする遺伝子(metallo-β -lac-tamase superfamily に属する)が疾患連鎖部位 の 10 番染色体短腕からクローニングされ,11 家系内の RS-SCID13 症例の全てで Artemis 遺伝 子の homozygous あるいは heterozygous muta-tions が発見されたとの論文が掲載された。T 細胞陽性 B 細胞陽性 SCID は,IUIS report (1999 年)に初めて記載された型で,部分的 RAG-1/RAG-2 異常症である Omenn 症候群と IL-2 受容体α鎖欠損症に分けられる。T 細胞は 存在するが,前者は oligoclonality のために, 後者は活性化障害のために SCID の病態をとる と考えられている。 本症例で認められた免疫不全症の診断について 本症例の末梢血には T 細胞と B 細胞が存在 せず,NK 細胞だけが存在したため,T 細胞陰 性 B 細胞陰性 SCID が疑われた。富山医科薬科 大学医学部の宮脇利男先生に骨髄に少数存在す る B 細胞系リンパ球の分化段階の検索を依頼 したが,pro-B 細胞の早期で分化が停止してい ることが明らかとなった。ADA 活性は正常で あった。RAG-1/RAG-2 に関しては,金沢大学 医学部の谷内江昭宏先生に遺伝子検索を依頼し たが,正常であった。Ku70/Ku80 などに関し ては,東京医科歯科大学医学部の寺岡弘文先生 に蛋白発現の検索を依頼したが,正常であった。 当科で骨髄由来 fibroblast line を樹立できたた め,千葉大学医学部の杉田克生先生に放射線感 受性の検索を依頼したが,感受性が異常に高い ことが判明した。したがって,本症例を RS-SCID と診断した。その原因として Artemis 遺 伝子の異常が強く疑われたため,東京医科歯科 大学医学部の野々山恵章先生に遺伝子検索を依 頼中である。最終結果は得られていないが, Artemis 遺伝子が truncation form である可能性 が高いとの tentative report を頂いている。 討論 照沼裕講師(微生物学) 現在,Cytomegalovirus(CMV)の治療薬と しては,ガンシクロビル(ganciclovir:GCV), ホスカルネット(foscarnet: PFA),シドホビル (cidofovir),ホミビルセン(fomivirsen)が使 用されているが,日本で使用が認可されている のは GCV と PFA だけである。 抗 CMV 治療の第一選択薬となっている GCV に耐性の CMV ではウイルスのリン酸基転移酵 素をコードする UL97 遺伝子と DNA ポリメラ ーゼをコードする UL54 遺伝子に変異が報告さ れている。一方,PFA 耐性 CMV は UL54 遺伝 表 1.SCID の分類 Ⅰ.T-cell negative/B-cell positive

1)common γ鎖の異常(X-linked SCID): Nk cell negatibe

2)JAK3 の異常: NK cell negative Ⅱ.T-cell negative/B-cell negative

1)VDJ 再構成の異常: NK cell positive RAG1/RAG2 の異常

2)DNA double strand repair の異常(RS-SCID): Nk cell positive

Ku70, Ku80, DNA-PKs, DNA ligase IV など Artemis

3)Adenosine deaminase(ADA)欠損症 Ⅲ.T-cell positive/B-cell positive

1)Omenn 症候群 2)IL-2 受容体α鎖欠損症

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子に変異が見つかるが,GCV やシドホビルと は 変 異 部 位 が 異 な り 交 差 耐 性 を 示 さ な い 。 UL54 遺伝子に変異を持つ GCV 耐性 CMV はシ ドホビルに交差耐性を認めるが,GCV 耐性 CMV の約 80 %は UL97 遺伝子の変異であるの で多くの GCV 耐性 CMV 臨床例ではシドホビ ルが有効である。ホミビルセンは CMV の前初 期抗原 2(IE2)の mRNA に対するアンチセン ス薬で,米国で AIDS 患者の CMV 網膜炎に対 して硝子体内注入が認可されている。 GCV 耐性 CMV の出現は AIDS 患者では通常 3 ヶ 月 以 上 か か り , そ の 検 出 率 も 3 ヶ 月 で 7.6 %,9 ヶ月で 27.5 %と報告されているが, 原発性複合免疫不全症患者では 10 日から 3 週 間 の 投 与 で 速 や か に し か も ほ ぼ 全 例 で 耐 性 CMV が出現することが報告されている(Wolf DG et al., 1998)。本症例でも GCV の効果は一 時的であった。その速やかな耐性 CMV の出現 は薬物治療前から存在していた耐性株が薬物治 療により選択されてきた結果であると考えられ る。さらに,DNA 修復能に異常がある原発性 複合免疫不全症患者ではその宿主の異常がウイ ルス DNA 遺伝子の変異の起こりやすさに影響 している可能性も今後の検討課題であろう。 xiii

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