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レーザー光によるイオン化の過去・現在・未来

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Academic year: 2021

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529(1) レーザーイオン化法による質量分析技術の進展

巻頭言

レーザー光によるイオン化の

過去・現在・未来

田 中 耕 一

(島津製作所)  1960∼70 年代に小・中学生だった日本人にとって,「レーザー」で思い浮かぶのは, 例えば核融合エネルギー源であったり,マンガの影響からは「殺人光線」であろう.中 国語では「激光」と表記されることからも,レーザーは激烈な印象が強い.その流れ からすると,レーザーの化学への応用は劇的・選択的な光化学反応等が順当であり, 創造や合成よりも破壊や分解をイメージしやすい.そのような時代背景で育った研究 者の中でさえも,ソフトレーザ脱離法(soft laser desorption: SLD)やマトリックス支 援レーザ脱離イオン化法(matrix assisted laser desorption/ionization: MALDI)は生ま れ育った.たんぱく質をソフトに無傷でイオン化できる,という発明は,理論や仮説 が先にあったのではなく,そういった現象が見えてしまったから,結果オーライ,“A-ha” 体験からの進展が多分にあった,といえる.  SLD,MALDI で用いるレーザーは,半値幅:∼ 1 ns のパルス光を 5 ∼数 100 mm に絞って照射する場合が主であり,matrix という媒質を介して分析対象物にエネル ギーが間接的に伝えられる.さらに cation や anion 供給体である不純物が混入する状 態では,イオン化が大幅に促進・抑制される場合が多い.直接照射されない部分を含 め,一瞬の間に物理・化学現象が複雑に絡みあいながら発生するため,発明から四半 世紀以上経った現在でも,そのメカニズムはまだ一部しか解明されていない.  逆からいえば,試行錯誤による特に若手の粘り強い探求心・観察眼が功を奏する場 面が多々あり,それらにより現在に至るまで,感度は 100 万倍以上,応用範囲もペプ チド・たんぱく質のみならずさまざまな生体関連物質,ポリマー等化学合成品等々へ 現在も日進月歩で進展している.応用範囲が広がることで,さまざまな分野からの期 待がますます高まり,それが研究者・技術者のやりがいを呼び起こすという,好循環 が続いてきた.  特に感度に関しては,electrospray ionization(ESI)と並び,SLD,MALDI は生体関 連物質高感度・高効率イオン化法として評価が高いが,最高でも sub atto mol 程度で あり,1 分子検出までにはまだ先が長い.高感度化が求められる近年最大の領域のひ とつは,がん等疾患の超早期発見である.小さいうちに見つければ,健康維持にかけ る経費も少なく,生きがい豊富な長寿生活が営める.今後も“必要は発明の母”に習 い,若手の活躍による大いなる進展が期待できる分野である.

参照

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