慢性腎不全病態時のアミノ酸輸液の影響
藤井祐二
目次
第1章緒言……….……….……….……….………1 参考文献………..………..……….、5 第2章新規腎不全アミノ酸輸液の開発の経緯.……….….……….……10
2-1E/N比の検討栄養効果を中心に………..…….………10 緒言………10 実験材料と方法……….………11 結果………..…………..……….……….………12 考察………..……….………13 2-2窒素負荷条件によるアミノ酸組成の影響….……….….……….15 緒言….……….……….………15 方法……….……….…….………15 結果……….………..…18 考察………..……….……….…….……….……….…..…20 参考文献……….……….………24 第3章慢性腎不全時の透析療法下におけるアミノ酸効果……….……51 3-1透析モデルの検討(無腎)……….…….………51 緒言……….……….……….………51 実験材料と方法……….….……….………52 結果……….……….………..………..…………54 考察………….………...……….……….………55 3-2透析モデルにおけるアミノ酸組成の影響….………58 実験材料と方法………..……….………….……..………58 結果…….………….…….……….………..………60 考察………..……….…………..……….………61 参考文献……….……….……….……….……….…63 第4章慢性腎不全時の補給アミノ酸による窒素代謝..………83 4-1慢性腎不全時のアミノ酸投与によるアミノ酸代謝………..…83 緒言…….……….……….………83 方法………..………….………..……….………83 結果及び考察………..……….…85 4-2慢性腎不全時の体内アンモニアの再利用…..………88 緒言……….……….……….………88 方法………….…….….………….………..………88 結果……….……….……….…90 考察……….………..………90
1
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略語
TPN BCAA
CRF
QOL
G1
EAA Ala
NBAA Val
mN Leu
PD I1e
CAPD Ser
Cal/N比 Thr
Cre
CysBUN Met
NH
AspTP Asn
Alb GIu
G1、
IP Ls
TG His
PL Phe
T-Cho TCA
UN Pro
lu
高カロリー輸液
TPN
分岐鎖アミノ酸BCAA
慢`性腎不全
CRF
芳香族アミノ酸AAA
Qualityoflife QOL グリシン
G1
y必須アミノ酸
EAA アラニン Ala
非必須アミノ酸
NBAA バリン VbLl
必須アミノ酸/非必須アミノ酸比
E/N ロイシン Leu
腹膜透析
PD イソロイシン I1e
連続携行式腹膜透析
CAPD セリン Ser
非蛋白性カロリー/窒素比
Cal/N比 トレオニン Thr
腹腔内投与 Lp.
チロシン
Tryクレアチニン Cre システイン C
ys血中(血漿中)尿素窒素
BUN メチオニン Met
アンモニア NH3
アスパラギン酸A
sp総蛋白質
TP
アスパラギンABTl
アルブミン
Alb
グルタミン酸Glu
トランスフェリン Tf
グルタミンG1、
カルシウム
Ca アルギニン
Argリン IP
リジン IFSトリグリセリド
TG ヒスチジン His
リン脂質
PL フェニルアラニン Phe
総コレステロール
TLCho チロシン Ir
yトリクロロ酢酸
TCA
トリプトファンTr
p尿素窒素
UN
プロリンPro
グルタミン酸オキサロ酢酸トラ ンスアミナーゼ
GOT
グルタミン酸ピルピン酸トランスアミナーゼ
GPT
第1章緒言
腎不全とは
慢性腎不全は、腎機能の不全に因って引き起こされるさまざまな症状を有する疾患であ り、その発症原因は多岐に渡り、また慢性糸球体腎炎、糖尿病性腎症、多発性嚢胞腎など さまざまな腎疾患から進行する。慢性腎不全に至ると原疾患の治療によって進行を阻止す ることが困難な場合が多い。慢性腎不全の根本的な治療薬は現在まで開発されていないも のの、その進展を抑制する療法として、食事療法などが開発、提唱され、患者の生存率や QOLが改善されている。
慢性腎不全状態に陥ると、水・電解質、酸.塩基平衡、蛋白.アミノ酸代謝、ホルモン 代謝を始めする種々の代謝異常が認められる。臨床的には、水分の貯留、高カリウム、代 謝性アシドーシス、尿毒素の蓄積、蛋白異化の冗進と蛋白合成の低下などの症状が認めら れる。腎不全時には、過量の窒素負荷により窒素代謝産物の蓄積を来し易いことから、こ れを防止するために蛋白制限が行われる。その結果、栄養状態を維持しえず、蛋白異化は 更に進行して栄養障害に陥る。
食事療法(低蛋白食)とその利点
この不可逆的に進行する腎不全病態の進展の原因すら確立されたものは未だにない。そ の中において、食事療法は、慢性腎不全病態の進展を抑制することが多くの報告で明らか にされている。
この慢性腎不全の食事療法は、低蛋白食療法と呼ばれ、蛋白制限が基本となっている。
本療法は複数のメタ分析の結果、その有効性が腎機能の悪化や死の危険率で示されている ')。腎不全進展の機序としては、機能する糸球体数の減少、高蛋白食等による糸球体のろ過 及び圧の増加に伴う糸球体硬化の進展により機能する糸球体数がさらに減少し、それによ り糸球体のろ過がますます過剰になり、糸球体ろ過の増加と糸球体血圧の上昇という悪循 環を呈することが中心に考えられてきた。近年、糸球体疾患による尿蛋白が尿細管萎縮と 間質の繊維化にかかわり、腎機能を低下させることを示す動物実験及び臨床研究が報告さ れ、尿中蛋白が糸球体硬化の悪循環をさらに助長するという機序がクローズアップされる ようになった2)。アンジオテンシン変換酵素阻害薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬及び低 蛋白食は尿中蛋白排泄量を低下されることが知られており、尿蛋白減少作用が腎不全進展 抑制の一因であると考えられている。
低蛋白食の問題点
このように、低蛋白食の有効性は明らかにされてきているが、栄養状態の管理の難しさ が指摘されている。Giordano3)及びGiovanetti4)は、低蛋白食下にある腎不全患者にEAAを 補給することにより高窒素血症と尿毒症諸症状の改善が得られることを示した。その後の 研究から、低蛋白食下のEAAの補給(必須アミノ酸療法)が提唱されている。
1
高カロリー輸液と腎不全
高カロリー輸液(TotalParenteralNutrition,TPN)療法は、経口摂取ができないある いは+分でない患者への栄養補給法としてS・JDudricによって1968年に開発された。TPN は、従来の腕などの末梢静脈を用いた末梢静脈栄養に比較して、大静脈に留置されたカテ ーテルを通してヒトが必要とする栄養素を輸液のみで補給可能な画期的な栄養補給法であ る。この療法は、完全静脈栄養法とも呼ばれ、糖、電解質を含むTPN基本液、高純度のア ミノ酸輸液が上市されたことにより、外科領域を中心として米国、欧州、日本で急速に発 展し、現在では各科領域で不可欠の栄養管理法として普及している。TPN療法が、さまざま な疾患患者に使用されるようになり、疾患により要求される栄養素が異なることが明らか になりつつある。
慢性腎不全を併発し、経口摂取による栄養補給が十分でない患者への栄養補給として、
Dudrick5)及びAbel6)らは、Roseの処方に基づいた8種類のEAA組成と高張ブドウ糖液による TPNを導入した。その後、この処方が腎不全患者のTPNの基本処方として考えられるように
なった。
必須アミノ酸療法の問題点
必須アミノ酸療法の考え方を基に開発された腎不全用アミノ酸輸液であるEAA製剤は世 界中で開発、上市された。本製剤の使用法に関しては研究がなされ、ヒトの必要な非蛋白
`性エネルギーに対する投与窒素を制限した条件下での使用が推奨された。この非蛋白性エ ネルギーに対する投与窒素量をCal/N比と表現され、EAA製剤使用下では500以上(投与窒素 量19当たり500kcal以上の非蛋白性エネルギー投与)が推奨されている。人の1日当たり必 要とするエネルギー量はほぼ一定なためCal/N比を高く設定するためには投与する窒素量 を制限する必要があり、栄養状態の悪化が危'倶される。
一方、EAA製剤は健常人が1日に必要とするEAA量からその組成比に基づいて作成された ものであり、腎不全患者への至適組成として研究されたものではない。さらに、実臨床で は推奨条件とは異なる条件下でのTPNが実施され、高アンモニア血症、意識障害を引き起 こすとの症例報告7-10)が国内外で認められた。
以上の経験から、より積極的なアミノ酸補給が可能で安全な薬剤が望まれた。今回、新 たな腎不全用アミノ酸輸液を開発するに当たり、腎不全病態時の投与アミノ酸組成の影響 を検討したので論述する。
新規腎不全アミノ酸輸液の開発の経緯(第2章)
第2章では医療ニーズの変化に伴う既存の腎不全用アミノ酸輸液の問題の解明と新規腎不 全用アミノ酸輸液の開発の経緯について論述する。既存の腎不全用アミノ酸輸液は Giordanoによって提唱された必須アミノ酸療法を基にして開発された製剤で、本邦を含め
2
た世界中で開発、市販されている。一方、本邦ではTPN療法が広く普及し、慢`性腎不全を 併発し、経口摂取による栄養補給が十分でない患者に対してTPN療法が実施されるように なった。そのなかで、臨床現場から既存の腎不全用アミノ酸輸液の問題点が指摘された。
ここでは、その問題点と原因を動物モデルで検討し、新たな腎不全用アミノ酸輸液の効果 を検討したので論述する。
既存の腎不全用アミノ酸はEAAによる製剤である。TPN療法時、投与カロリーに対する窒 素負荷の割合が高まると高アンモニア血症の症状が発生することが明らかとなった。既存 の腎不全用アミノ酸製剤の問題点はアルギニン欠乏によるNH3代謝に加え、肝臓における脂 質代謝にも影響を及ぼしている点である。アルギニン単独の補給では解決し得なかった脂 質代謝異常がNEAAの補給により改善し、また蛋白質代謝の改善も確認できた。
慢性腎不全時の透析療法下におけるアミノ酸効果(第3章)
腎不全病態、特に慢性腎不全病態はその重症度、合併症により種々の療法が用いられる。
それらの療法の中で、患者の栄養状態に強く影響を及ぼす療法として、透析療法があり、
今回透析療法下でのアミノ酸補給効果を市販アミノ酸製剤と比較検討したので論述する。
透析は腎臓機能が消失あるいは極度に低下した患者において、生命維持に必要不可欠な治 療法である。一方、透析はその`性質上、体内の各種栄養素の漏出が報告されている。我々 はラットを用いた透析モデルを新たに開発し、本モデルを用いて行ったアミノ酸補給効果 を検討した。
これまで、小動物に対する継続的な透析の実施モデルは報告されておらず、栄養評価に耐 えうるモデルは報告されていない。今回、腎摘出ラットに無麻酔下で透析を継続的に実施 するモデルを確立し、腎不全病態と低栄養状態を示すことが確認できた。また、本透析モ デルを慢』性腎不全病態動物で実施し、透析による栄養状態の低下が確認され、さらに新規 の腎不全用アミノ酸輸液の投与により早期に血漿中タンパク質の回復が示唆された。
慢性腎不全時の補給アミノ酸による窒素代謝(第4章)
第4章では第2章、第3章によって示された投与アミノ組成による慢性腎不全時の栄養効 果について、投与アミノ酸の利用と窒素の再利用の観点から論述する。
栄養状態は、経口あるいは静脈投与された窒素源から体蛋白質への合成と体タンパク質の 異化抑制、さらに摂取タンパク制限条件下では異化代謝により産生されたNH3のアミノ酸、
タンパク質への再合成のバランスによってもたらされる。そこで、投与窒素源の体蛋白質 への利用率を15Nで標識したLeuを使って、NH3の再利用率を'5Nで標識した塩化アンモニウ ムを使って、アミノ酸組成による影響を比較検討した。
本試験において、Leuを用いた蛋白合成及び塩化アンモニウムを用いた窒素の再利用が投 与アミノ酸組成に影響を受けることを確認した。
動物種による慢性腎不全時のアミノ酸効果(第5章)
3
これまで、慢性腎不全時のアミノ酸投与効果をラットを用いて検討してきたが、動物種 による-部代謝の違いが報告されていることから、ウサギ及びビーグル犬を用いてアミノ 酸補給効果を検討したので論述する。
多くの試験で栄養効果を検討する試験系で、取り扱いが容易、安価、実験系が確立して いることからラットを最も用いている。しかし、種々の代謝経路及びその活性が動物種に よって異なることも報告されている。そこで、イヌ及びウサギを用いた慢性腎不全モデル を作成し、アミノ酸補給効果及び安全性をその効果が最も明らかに出来るTPN条件下で検 討したので、論述する。
イヌの実験系では、ラットで認められたアミノ酸組成による栄養効果の違いが認められ、
また、ラットでは観察が難しかった嘔吐がイヌの試験系によって確認できた。また、ウサ ギの系では、アミノ酸投与量による反応性がラットとは異なることが明らかとなった。
使用した輸液
使用した輸液製剤は、GLP基準あるいはGMP基準に準拠した環境下で、
保障されたものを用いた。用いた輸液の組成は表1-1-1~4に示した。
厳密に作成、品質
4
参考文献
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黒川情:JAPAN-KD(JapanAppropriateProteinAndNutritioninKidneyDisease)
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4)GiovanettiS,Maggiore,Q:Lowproteindietinuremia,Lancetl,1000-3,1964 5)DudrickSH,SteigerE,LongJM:Renalfailureinsurgicalpatients.、eatmentwith
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10)多田穣治、八木田真光、三浦良史:必須アミノ酸輸液にて肝性脳症を誘発した持続性ア ミロイドーシスの一例。臨床と研究63:556-7,1986
5
表1-1-1本論文で使用したアミノ酸輸液の組成(MV%)
必須アミノ酸製剤腎不全用アミノ酸製剤、O/WHO製剤
イソロイシン ロイシン
酢酸・リジンメチオニン フェニルアラニン
トレオニン
トリプトファンバリン
0.72 1.125 1.155 1.125 1125 0.515 0.255 0.82
5000055570755227●●●●●□●●01000000
0.56 125 1.24 0.935 0.935 0.13 0.13 0.45 アラニン
アルギニン システイン
アスパラギン酸 グルタミン酸 ヒスチジン プロリンセリン チロジン
アミノ酢酸0.30 0.30
0.62 0.79 010 038 0.65 0.6 0.33 0.22 0.035
1.07 0.025
0.025 0.25 0.20 0.10 0.050
0.15 0.56
E/N比 32 1.2
6
表1-1-2高カロリー基本液組成
パレメンタールA
パレメンタールBNa(mEq)
K(mEq)
OL(mEq)
Ca(mEq)
Mg(mEq)
リン酸(mg)
酢酸(mEq)
硫酸(mEq)
グルコース(9)
62.50 37.50 40.00 20.00 7.5
62.50 37.50 17.50
7.5 620.0 62.5
7.5 31.25 62.5
7.5 31.25
7
表1-1-3高カロリー輸液1L中に添加するソーピタ組成と成分
含量 成分
塩酸チアミン
リン酸リボフラピンナトリウム 塩酸ピリドキシン
シアノコバラミン
ニコチン酸アミド 葉酸ピオチン
アスコルビン酸パンテノール
パルミチン酸レチノール
コレカルシフェロール
酢酸トコフェロール
メナテトレノン
ggg唾哩哩哩轆哩、m哩哩
、、m5
75550555227020751100500535030
22568
表1-1-4高カロリー輪液1L中に添加する微量元素組成と成分
成分 含量 塩化第二鉄 塩化マンガン 硫酸亜鉛 硫酸銅
ヨウ化カリウム g
ggggm
mmmm0
095436722879660●●■●●418009
第2章慢性腎不全時の投与アミノ酸組成の影響 2-1E/N比の検討栄養効果を中心に
緒言
慢性腎不全(CRF)患者では栄養摂取不良や代謝異常による栄養状態の悪化が認められ、
血漿中必須アミノ酸/非必須アミノ酸比(E/N比)の低下などの血漿中アミノグラムの異常 も多く報告されている'-3)。このように異化反応の兀進した腎不全患者の栄養管理は、十分 な熱量と蛋白補給による体蛋白異化冗進抑制と尿毒素物質の産生抑制による尿毒症諸症状 の改善にある。そのため必要最低限のアミノ酸投与が腎疾患に適していると考えられ、本 邦においてRoseらの提唱した必須アミノ酸処方にヒスチジ(His)を加えた腎不全用必須ア
ミノ酸製剤(EAA製剤)が開発され、種々の効果が報告されてきた'-4)。
EAA製剤のTPN施行時の使用にあたっては非蛋白性カロリー/窒素比(Cal/N比)600以 上の条件でBUN値の抑制が報告され5)、当初の目的である尿毒素物質の産生抑制を達して いることが示されている。しかし、異化反応の著しい腎不全患者に対して投与アミノ酸を 制限したこれらの条件では栄養状態の改善は難しく、積極的なアミノ酸投与による栄養維 持管理、すなわちCal/N比の低い条件下でのEAA製剤投与が-部の医療現場では行われる ようになってきた。しかし、窒素負荷量の多い条件下では、高アンモニア(NH3)血症、神 経障害及びアミノ酸インバランスなどの副作用の発現が報告されるようになり、腎不全病 態に適したアミノ酸製剤の開発が望まれるようになってきた。
Kikuchiら5)はCRFラットにおけるTPN施行時の栄養補給について、Cal/N比300の条 件下でEAA製剤の投与によって高NH3血症や脂肪肝が引き起こされることを報告している。
アルギニン(Arg)は尿素サイクルの重要な基質であり、NH3代謝に必要不可欠であり、窒素 高負荷条件下におけるEAA製剤による問題点がArgの相対的な欠乏単独によるものとの考 えもあった。その後、EAA製剤へのArg添加による検討が行われ、高NH3血症は消失するが 肝臓への脂肪蓄積は逆に冗進することが確認された6)。また、LaidlawとKoppleはEAA以 外にも必要性の高いアミノ酸があることを示している7)。これらのことは、腎不全病態時
にEAAのみならず、NEAAの必要性を示唆している。
新たな腎不全用アミノ酸輸液を開発するにあたり、腎不全病態時における投与アミノ酸 組成の影響を明らかにする必要がある。しかし、アミノ酸輸液には17種類のアミノ酸が配 合され、その組合せは無限にある。また、アミノ酸は1種類の投与や1種類のみの欠乏実 験と複合投与ではその効果が異なることも明らかである。
そこで、既に腎不全病態時にその有用性が報告されているEAAと、NEAAの配合比(E/N 比)を変化させたアミノ酸輸液を用いて栄養状態に及ぼす影響をCRFラットで検討した。
なお、窒素負荷条件として、高NH3血症などの問題が指摘されているCal/N比300の条件 下で検討することとした。
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実験材料と方法
1.動物
4週齢のSD系雄'性ラット(日本チヤールス・リバー)に固形資料(CRF-1,オリエンタ ル酵母工業)及び水を自由摂取させて7日間予備飼育した後、順調に成育したラットを実 験に供した。飼育条件は、室温23±2℃,湿度55±15%,明暗周期を12時間とした。
2.モデルの作成及び被験液投与方法
CRFモデルの作製はP1attらの方法8)に準じて行った。すなわち、最初に左腎の3/4に相当 する皮質部分を切除し、2週間後に右腎を摘出した。2週間後、血漿中クレアチニン(Cre)濃 度が1.5mg/d1以上の個体をCRFラットとして試験に用いた。輸液用のシリコンカテーテルは Steigerら9)の方法に従って、内頚静脈を経て、上大静脈に留置した。カテーテルはラット に設置したプロテクトコイルにより保護した。カテーテルとコイルはケージ中の動物の動 きを制約せずに輸液投与するためにシーベルに接続した。輸液投与の手技の模式図を図 2-1-1に示した。
被験液の投与は持続注入ポンプにより術後1日目まで1.0,1/rat/hr、2日目まで 2.0,1/rat/hr、以後3.0,1/rat/hr、の速度で投与した。
3.被験液と実験群
被験液の組成を表2-1-1に示した。TPN基本液としてパレメンタールA、B(森下ルセル)
及びその2倍濃度液を、総合ビタミン剤としてソービタ(扶桑薬品工業)を、アミノ酸輸 液は自家調製品を配合した。各被験液はグルコース、総窒素、電解質、ビタミン濃度を同 一とし、E/N比のみを変化させ、Cal/N比300の条件で調整した。
実験群はE/N比が0.8,1.6,32,6.4と必須アミノ酸(EAA)のみの5群(各群7例)を設 けた。CRFラットはCre値を指標に群間に差がないように群分けを行い、各群にそれぞれ の被験液を投与した。なお、参考として同週齢の無処置ラットをNormal群(8例)として設 けた。
4.実験プロトコール
実験方法を図2-1-2に示した。
ラットはTPN療法下で、7日間被験液を投与した。ラットの体重は被験液の投与開始時 と終了時に測定した。被験液投与終了時、麻酔下に腹部大動脈より採血を行い、肝臓、腓 腹筋及び精巣上体脂肪を採取し、湿重量を測定した。
5.測定項目及び測定方法 1)血液生化学
非験液投与前、2,4及び7日目に尾静脈より採血し、常法により血漿を分離し、アルブ ミン(Alb)、総蛋白質(TP)、Cre、尿素窒素(BUN)、GOT、GPT、NH3を日立自動分析装置7150-E
11
に用いて、表2-1-2に示した方法によって測定した。
2)肝臓及び腓腹筋中成分
肝臓中トリグリセリド(TG)、リン脂質(PL)、コレステロール(T-Cho)の抽出は Folchら'0)の方法に従い、TGはアセチルーセトン法、PLは湿式灰化法、T-ChoはOPA法に よって測定した。肝臓中核酸(DNA,RNA)量はEthidiumBromide法’')で、タンパク質量は Folin-Lowry法'2)によって測定した。
腓腹筋の核酸量はSchmidit-Thannhauser法13)により抽出し、RNA量はUV法で、DNA量 はDiphenylamine法で測定した。また、タンパク質量はFolin-Lowry法]2)によって測定し た。
6.統計処理
すべてのデータは平均±標準誤差で示した。有意差検定は、Bartlett検定により等分散 分析を実施し、等分散であれば、Tukey-Kramerの多重検定を、不等分散であれば順位変換 実施後Tukey-Kramerの順位和検定を実施した。
結果
1.体重及び臓器重量
解剖時の体重、肝臓、精巣上体脂肪及び腓腹筋重量を表2-1-3に示した。CRFラットの 体重、精巣上体脂肪及び腓腹筋重量はNormal群に比較して低値を示したが、被験液投与群 間では体重及び精巣上体脂肪に有意な差は認められなかった。肝臓重量はNEAAを添加した 各群間に対して、EAA群で高値を示し、有意な差が認められた。腓腹筋重量はE/N比の上 昇に伴って高値傾向を示したが、EAA群では減少し、E/N6.4群とEAA群間で有意差が認め
られた。
2.血液生化学
解剖時の血液生化学検査結果を表2-1-4に、血漿中のTP及びAlbの変化量を図2-1-3 に示した。被験液投与開始時の血漿中CreとBUN値の各群の平均はそれぞれ1.9~2.2mg/dl と95~105mg/dlで各群間に差は認められなかった。解剖時、被験液投与群間でのCreは 各群間に差は認められなかったものの、BUN値はEAA群及びE/No.8群でE/N6.4と3.2群 より有意に高値を示した。またEAA群のNH3値は他の群より高く、E/NL6と0.8群との間 に有意な差が認められた。さらに、E/N比3.2以下及びNormal群の全個体が25αg/d1以 下であるのに対して、高値を示す個体が認められた。CRFラットのGOT、GPT値はEAA群で 高値を示し、E/No.8群との間に有意差が認められた。Alb値はE/N6.4から0.8の各群で EAA群より高値を、TP値でもEAA群で低値を示し、E/N1.6群との間に有意差が認められた。
3.臓器中核酸及び蛋白質
12
肝臓及び腓腹筋中のDNA、RNA及び蛋白質含量を表2-1-5,2-1-6に示した。CRFラット の肝臓及び筋中のDNA、RNA、蛋白質含量はNormal群に比較して低値を示し、肝臓中DNA、
RNA含量及び筋中DNA含量は被験液投与群間で有意な差は認められなかった。しかし、肝 臓中の蛋白質含量はEAA群で高値を、また逆に筋中のRNA含量はEAA群で低値を示し、他 の群との間に有意な差が認められた。また、筋中蛋白質含量は筋中RNA含量と同様な結果 を示した。
4.肝臓中脂質
肝臓中TqPL及びT-Cho含量を表2-1-7に示した。各被験液投与群の肝臓中PLとT-Cho 値はNormal群より低値を示した。特に、E/No.8群のPLは低値で、E/N3.2及び6.4群との 間に有意な差が認められた。肝臓中TGはTPN中のアミノ酸組成に大きな影響を受け、EAA 群は最も高値を、またE/N6.4群はもっとも低値を示し、E/N6.4群とEAA群及びE/No.8群 の間で有意な差が認められた。
考察
腎不全患者で、食事へのEAA添加によって窒素の利用効率は改善し、尿毒症諸症状を軽 減することが報告されている'4)。また、Dudrickら'5)及びAbelら]6)はEAAとHis含有輸 液が腎不全患者への非経口的な窒素源として有用であることを報告している。しかし、こ れらのEAA製剤をTPNで使用する際には高カロリー・低蛋白条件下で投与するなどの配慮 が必要であると考えられ、さらに腎または肝臓機能が低下した患者への窒素の過剰投与は 高窒素血症を引き起こすことが報告されている'7)。これに対し、L-Argが高NH3血症の発現 を防御する'7)ことや、EAAへのNEAAの添加により蛋白代謝が改善する'8)との報告もなさ れてきている。すなわち腎不全用アミノ酸輸液には、EAAのみならずNEAAの配合にも配慮 する必要があることを示唆している。しかし、これまでの腎不全時におけるE/N比による アミノ酸の代謝に及ぼす影響を詳細に検討した研究はみられない。そこで、これまで窒素 負荷量が多く使用が禁忌であるCal/N比300におけるE/N比による蛋白・アミノ酸及び脂 質代謝及びに対する影響を検討した。
TPN施行下の腎機能に及ぼすアミノ酸組成の影響について、Pelosiらは急性腎不全患者 で]8)、またFreundらは急性腎不全ラットで'9)、アミノ酸組成による影響はみられなかっ たと報告している。今回の結果でも、アミノ酸組成による悪影響は認められず、これらの 報告に一致しているものと考えられた。
今回の試験で認められたEAA群の血漿中NH3値、肝臓重量及び肝臓中TG含量の高値は、
これまでの市販EAA製剤での報告5)と一致している。Motilら20)はArg不含アミノ酸輸液 の投与は高NH3血症を引き起こし、Argの添加によって改善することを示した。また、
Kawamotoら21)はラットの肝ミトコンドリア中の尿素サイクルの律速酵素であるアセチル グルタミン酸合成酵素が餌中のArgの存在により活性化されることを示し、Arg添加の意 義を明らかにしている。本実験において血漿中NH3値の上昇が認められたものはArgの添
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加のないか少ないEAA群とE/N6.4群であり、今回の試験においてもArgの必要性が示唆さ れた。
しかし、肝臓中TGの蓄積は血漿中NH3の場合と異なり、Argの添加によって抑制できな いことが示されている6)。本結果において、EAA製剤へのNEAAの添加は、肝臓中TG含量を 減少させ、肝臓の肥大を抑制した。EAAにArgのみを添加した場合には抑制できなかった 肝臓へのTG蓄積は、NEAAの13.5%添加(E/N比6.4)により改善できた。脂肪肝の発生の 原因の一つとして、Argの欠乏による尿素サイクルの回転低下に起因してオロチン酸産生 が高まり22)や肝臓からのTG輸送の障害が考えられる。今回の結果では血漿中NH3値の高 いE/N6.4群で肝臓の肥大やTGの蓄積は認められず、Arg欠乏のみがEAA群の肝肥大の原 因とは考えにくい。
またNEAAの割合の高いE/NL6及び0.8群でもTGの上昇が認められている。さらに、各 群間の腎機能に差はなく、投与窒素量は各群で同一であるにもかかわらず、BUN値はEAA 群とE/No.8群で高値を示した。このことは、EAAあるいはNEAAの割合が高い条件では脱 アミノ化反応の冗進が起こり、結果としてBUNの上昇をもたらしていると考えられる。こ のことは、窒素負荷の高いTPN療法下時、腎不全患者へのアミノ酸輸液組成としてのNEAA 添加の必要性を示しているばかりでなく、至適なE/N比の存在をも示唆している。
Pelosiらは、急性腎不全患者へのTPN施行時にTPとAlb値はEAA単独投与よりNEAA 添加で高値となることを報告しており’8)、今回の結果と一致した。本試験において、腓腹 筋重量を始め、タンパク合成の指標である筋中RNA含量もNEAAの添加により高値を示し、
EAA単独投与時のタンパク代謝に対してNEAAの添加で改善されることが示された。
以上の結果より、Cal/N比300の条件では腎不全時に投与されるアミノ酸製剤としてEAA にArgだけでなくNEAAの併用の有用性が示されると共に、E/N比が3.2から1.6の製剤の 投与で、高NH3血症及び肝臓中TGの蓄積が抑えられると共に、アミノ酸の利用も高くなる
と考えられた。
 ̄
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2-2窒素負荷条件によるアミノ酸組成の影響
緒言
慢性腎不全は進行性の病態であり、患者によりその病態は異なる。腎機能は窒素老廃物 を主とする排泄に関り、腎不全病態の進行に伴い排泄可能な老廃物の量は低下し、排泄能 を超える窒素の負荷により尿毒症を引き起こす。そのため腎不全病態の進行度により、尿 毒症を引き起こすことなく投与できる窒素負荷量が異なる。しかし、臨床的には市販のEAA 製剤の使用条件としてCal/N比500以上の制約があり、病態が軽度であり高い窒素負荷投 与が可能で栄養状態の改善が優先される患者には使用が難しかった。
これまで、EAA製剤に対する研究において、窒素負荷による影響が検討6)されてきている が、先に示した新たに慢,性腎不全時に有用と考えられるE/N比3.2製剤やFAO/WHOの基準 に基づいて処方された総合型アミノ酸製剤(FAO/WHO製剤、E/N比1.2)の窒素負荷量による 影響を見た試験はこれまでなかった。そこで、先に示したCal/N比300の条件下で最も腎 不全病態時に有効と考えられたE/N比3.2の製剤とFAO/WHO製剤を用いて、窒素負荷量を 変えた条件下で、窒素負荷量とアミノ酸代謝の関係を検討することとした。
本試験は、Cal/N比600及び900の各窒素負荷条件下でE/N比3.2とFAO/WHO製剤 (E/N1.2)、さらにCal/N比300の条件下ではさらにEAA製剤を加えた3群で比較検討を行 った。
方法 L動物
4週齢のSD系雄,性ラット(日本チヤールス・リバー)に固形資料(CRF-1,オリエンタル 酵母工業)及び水を自由摂取させて7日間予備飼育した後、順調に成育したラットを実験
に供した。飼育条件は、室温23±2℃,湿度55±15%,明暗周期を12時間とした。
2.モデルの作成及び被験液投与方法
CRFモデルの作製はPlattらの方法8)に準じて行った。すなわち、最初に左腎の3/4に相 当する皮質部分を切除し、2週間後に右腎を摘出した。2週間後、血漿中Cre濃度が1.5mg /d1以上の個体をCRFラットとして試験に用いた。輸液投与の手技の模式図を図2-1-1に示 した。群分けを行ったCRFラットを、Steigerらの方法9)に従って、中心静脈カテーテルを 内頚静脈を経て、上大静脈に留置した。カテーテルはラットに設置したプロテクトコイル により保護した。カテーテルとコイルはケージ中の動物の動きを制約せずに輸液投与する ためにシーベルに接続した。初日、翌日と段階的に投与速度を上げ、2日目以降3.0,1/hr の投与速度で7日間のTPN管理を実施した。なお、3日目以降のTPNの維持投与カロリー量 を非蛋白性投与カロリーで230Cal/kg/dayと設定した。
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3.被験液と実験群
被験液の組成を表2-2-1に示した。TPN基本液としてパレメンタールA、B(森下ルセル)
を、総合ビタミン剤としてソービタ(扶桑薬品工業)を、アミノ酸輸液は市販のEAA製剤、
FAO/WHO製剤(E/NL2)及びE/Na2のアミノ酸輸液(自家調製品)を配合した。各被験液は グルコース、総窒素、電解質、ビタミン濃度を同一とし、窒素含有量を変え、Cal/N比300, 600,900の各条件下で調製した。
Cal/N比300の条件下ではEAA、E/N3.2及びE/NL2のアミノ酸輸液を配合したTPNで管 理した3群で、Cal/N比600と900の条件下ではE/N3.2と1.2のアミノ酸輸液を配合した TPNで管理した2群、さらにCRFラット及び健常ラットに固形資料を自由摂餌させたCRF群
とNormal群の2群を設けた。
TPN投与の各群は試験開始日に、一夜絶食したCRFラットの体重及び血漿中Cre値を指標 に偏りの無いように群分けを行った。
4.実験プロトコール
実験方法を図2-2-1に示した。
TPN管理期間中、ラットの状況確認を毎日実施すると共に、TPN開始0,3,5,7日目に 体重測定及び尾静脈より採血を行った。なお、血液はヘパリン処理下遠心分離(3000rpm、4℃、
10min)し、得られた血漿を血液生化学検査に供した。また、試験期間中毎日、尿量の測定 と採取を行った。なお、摂餌群は摂餌量及び糞採取も行った。
試験終了日にペントバルビタール麻酔下(35mg/k9,i、p、)、腹大動脈より採血後安楽死 させた。その後、左腎、肝臓、精巣上体脂肪及び腓腹筋を採取し、湿重量を測定した。血 液は、一部、血液学測定用に供し、残りはヘパリン処理後常法に従って血漿を得た。得ら れた血漿は血液生化学検査及び血漿中遊離アミノ酸分析のサンプルに供した。肝臓及び腓 腹筋は分析まで-80℃で冷凍保存した。
5測定項目及び測定方法 l)体重及び窒素出納
体重はTPN開始0,3,5及び7日目に測定した。輸液投与期間中は、プロテクテイブ コイル及びハーネスを装着した状態で重量を測定し、装置機材の重量を差し引くことによ り実体重を求めた。
窒素出納は投与総窒素量から尿中及び糞中排泄総窒素量を差し引いて算出した。なお、
尿中及び糞中総窒素排泄量はNコーダー(MT-1600、柳本製作所)を用いて測定した。
2)血液生化学検査
試験期間中に尾静脈より採取されたヘパリン加血漿は、NH3、Cre、BUN、Tf及びAlbを、
解剖時のヘパリン加血漿は、GOT、GPT、Glu、TG、T-cho、及びPLを日立自動分析装置7150-E を用いて測定した。測定法は表2-1-2に示した。血液学検査は全自動血球計数装置M-2000
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(東亜医用電子)を用いて測定した。
3)血漿中遊離アミノ酸濃度
血漿中遊離アミノ酸濃度は、血漿をスルホサルチル酸で除蛋白し、その上情を凍結乾燥 後、クエン酸リチウム緩衝液(PH22)に溶解した後、アミノ酸自動分析装置JLC-300(リチウ ム法、日本電子)を用いて測定した。なお、各TPN群の血漿中遊離アミノ酸パターンのNormal 群に対する類似性をpatternsimilarity(PS)法23)を用いて算出した。以下にその計算式
を示す。
n
S(A,B)==cosO==Zai
i=I
、 、
.bi/,rZai2・r2bi2
i=1i=I
比較する2つの血漿中遊離アミノ酸濃度A(a1,a2,a3.…・an)とB(b,,b2,b3..…bi,)との類似 性を平面座標に各アミノ酸ごとに(ai,bi)をプロットして得られる一時回帰直線(原点を通 る)の相関係数によって得た。cosOはO~1で、cosO=lは各実験群の血漿中アミノ酸濃度 パターンとNormal群のアミノ酸濃度パターンが完全に一致したことを、cosO=0は全く類 似していないことを示している。
4)尿中成分
TPN開始3,5及び7日目の尿について、NH3及び尿素窒素(UN)を日立自動分析装置7150-E を用いて、オロチン酸はStajnerらの方法24)を用いて測定した。
5)肝臓中成分
Cal/N比300の条件下での試験において、肝臓中成分を測定した。肝臓を phosphate-buffersaline(pH7.5)でホモジナイス後、核酸(DNA,RNA:EBr法)及びタンパ ク質量(Lowry法)を測定した。TGはFolchらの方法'0)で抽出後、アセチルアセトン法(ト
リグリセライドーテストワコー:和光純薬工業)で測定した。
6)筋肉中遊離アミノ酸濃度
Cal/N比300の条件下での試験で筋肉中遊離アミノ酸濃度を測定した。腓腹筋に4%過塩 素酸を加えて、ホモジナイズによって得られた除蛋白液を凍結乾燥し、一定量のクエン酸 リチウム緩衝液に溶解した後、アミノ酸自動分析装置JLC-300(リチウム法、日本電子)を用 いて測定した。なお、抽出時にノルロイシンを内部標準として添加し、その抽出率で補正
した。
6.統計処理
各種の測定値は平均値±標準誤差で示した。
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Cal/N比600と900のTPN群間、及びCRF群とNormal群間の有意差検定は、まずF-test による等分散分析を行い、等分散であれば、Student‘sTestを行った。不等分散の場合、
自由度が同じならばAspin-welchの方法、自由度が異なる場合はCochran-Coxの方法で行 った。
Cal/N比300のTPN施行3群間の統計処理は、Bartlett検定により等分散分析を実施し、
等分散であれば、Tukey-Kramerの多重検定を、不等分散であれば順位変換実施後 Tukey-Kramerの順位和検定を実施した。
自由摂餌群間の統計処理は、F-testにより分散分析を実施し、等分散であればStudent
‘st-testを、不等分散であればCochran-Cox検定を実施した。
結果
1.TPN管理状況
Cal/N比600及び900条件下
実験期間中、CRF群の1例が6日目に病態悪化と考えられる死亡、Cal/N比600条件下の E/N3.2群のl例でextravasationによる死亡が確認された。両データとも前日までのデー
タは問題ないものと考え、採用した。その他の個体には特に異常を認めなかった。
Cal/N比300条件下
実験期間中、6日目にE/N1.2群でl例ハーネスが首に絡み窒息死した個体があり、全日 までのデータについては採用とした。その他の個体には特に異常を認めなかった。
2.体重変化量及び窒素出納
TPN開始から解剖時までの体重変化量を図2-2-2に、累積窒素出納を図2-2-3に示した。
両試験ともCRFの各群の体重変化量、累積窒素出納は、Normal群に比べて低値を示した。
Cal/N比600及び900ともE/N3.2群及びE/NL2群の体重変化量は摂餌条件のCRF群と同様 の増加を示し、E/N3.2群とE/N1.2群間に差は認められなかった。
TPN群間では、0-3日目には窒素出納に差は認められなかったが、3-7日目の窒素出納で はCal/N比600,900の各条件ともE/Na2群がE/N12群に比較して高値を示した。
Cal/N比300の条件下ではE/N3.2群及びE/N1.2群の体重変化量は摂餌条件のCRF群と同 様の増加を示したが、EAA群はその増加量は小さく、5日目及び7日目にE/N3.2群及びE/NL2 群に対して有意差が認められた。
CRF群の累積窒素出納はNormal群に比べ優位に低い値を示した。TPN群間では、E/N32 群が最も高値を示し、EAA群との間に有意な差が認められた。
3.血液生化学検査
試験期間中の血漿中Cre、BUN、NH3、Alb及びTf値の経時的変化を図2-2-4,2-2-5,2-2-6 に、解剖時の血液生化学検査値を表2-2-2に示した。
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CRFの各群の血漿中Cre値は、Cal/N比の違いやアミノ酸組成による影響を受けず、Normal 群に比較し、試験期間中を通じて高値を示した。それに対して、試験開始時のBUN値はCre 値と同様にCRFモデルラットでNormal群に対して高い値を示したものの、TPN開始後はTPN 各群で低下した。その程度は窒素負荷量により差が認められ、窒素負荷量のもっとも少な いCal/N比900が最も低く、窒素負荷量の高まりにしたがって高まる傾向が確認された。ま た、アミノ酸組成による影響としていずれの窒素負荷量でも、E/N3.2投与群がE/N1.2群に 比較して低値を示した。また、Cal/N比300の条件下のEAA群は、E/N3.2群に比較して高 値を示した。
Normal群、CRF群、また窒素負荷量の低い条件下でのTPNの各群間とも血漿中NH3値に差 は認められなかった。しかし、Cal/N比300の条件下ではEAA群では3日目以降著明な高値 を示し、E/N3.2群及びE/N1.2群との間に有意な差が認められた。
CRF群のAlb,Tf値は、常にNormal群に比べて低値を示した。一方、TPNを実施した各 群の蛋白関連の検査値はTPN開始後低下し、3日目をピークに回復傾向が認められた。いず れのCal/N比の条件でも、E/N3.2群がE/N1.2群に比較して高値を示した。
肝機能指標であるGOT、GPTは、CRFモデル作成による変動は認められなかった。しかし、
Cal/N比300の条件下ではEAA群で高値を示した。
CRF群は、血漿中TG値の低下とT-Cho、PL値の上昇と相反した反応が確認された。TPN 群間ではE/N3.2群、1.2群ともアミノ酸投与量を上げる(Cal/N比は低下)につれTG、T-Cho、
PLがともに高まっていった。また。アミノ酸組成による差としては、CRFモデル作製で上 昇したT-ChoとPLがTPN施行により低下し、その割合がE/N1.2群で高かった。TGに関し てはEAAを除いてTPN群はCRF群と同様の傾向を示した。それに対して、EAA群はTqT-Cho、
PLともに低下が確認された。
4.尿中成分
7日目の尿中NH3、オロチン酸及びUN排泄量を図2-2-7に示した。
CRF群の尿中オロチン酸及びUN排泄量はNormal群に比べ低値を示した。TPN群間では、
Cal/N比300の条件下でEAA群がいずれの項目においてもE/Na2及びE/N1.2群に比べ高値 を示した。また、いずれのCal/N比とも、E/N3.2群の尿中NH3及びUN排泄量はE/N1.2群に 比べて低値であった。尿中オロチン酸排泄量は、E/N3.2群がE/N1.2群に比して高値を示し たが、Normal群、CRF群より低値であった。
5.臓器重量
解剖時の各臓器重量を表2-2-3に示した。
CRFラットはNormal群と比較して肝臓、腓腹筋及び精巣上体脂肪共に低値を示した。TPN 群間の比較では、いずれのCal/N比の条件下でも腎臓、腓腹筋、精巣上体脂肪重量に差は 認められなかった。肝臓重量はCal/N比600,900の条件下では、E/N3.2群はE/N1.2群に 比べて高値を示したが、Cal/N比300では差は認められなかった。Cal/N比300のEAA群の
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肝臓重量は、E/N3.2群及びE/N1.2群より高値を示した。
6.血漿中遊離アミノ酸パターン
解剖時の各群の血漿中遊離アミノ酸パターンをNormal群のそれと比較し、類似,性(cosO)
を検討した結果を表2-2-4に、また血漿中の遊離アミノ酸濃度を図2-2-8に示した。
いずれの群も窒素負荷量を高めるにつれて、Normal群に対する類似性は高まることが示さ れた。また、いずれのCal/N比においてもE/N3.2群の類似性が最も高値を示した。
CRF群はNormal群に比較してEAAではVal、Ile、Leu、Thr及びTrpの低値、Metの高値 を示した。NEAAでは、Arg、Ser、Tyr、Asnの低値、Glyの高値が認められた。一方、いず れのCal/N比の条件下でも程度の差はあるもののE/N3.2群は、Ala、Lys、Gly及びMetが Normal群より高値を、E/N1.2群ではAla、Lys、Gly、Ser、Thrが高値を、Val、Ile及び Leuが低値を示した。また、Cal/N比300の条件でのみ観察したEAA群ではG1、、Lys、Thr、
His及びMetが高値を示した。
また、腎不全時のアミノ酸代謝異常を示す指標として臨床で用いられているVal/Gly比 は、Cal/N比300の条件下のNormal群で0.769±0.035、CRF群で0.316±0030と著しい低 下を示し、E/N3.2群は0.526±0.070、EAA群では1.652±0.289,E/NL2群は0.031±0.004 を示した。
7.肝臓中成分
Cal/N比300の条件下の肝臓中TP、グリコーゲン、TG及び核酸含量を表2-2-5に示した。
CRF群はNormal群に比べてDNA量で高値を、グリコーゲン、TG及びRNA/DNA比並びに TP/DNA比で低値を示した。TPNを実施した群問では、EAA群のTG、RNA/DNA比及びTP/DNA 比がE/N3.2及びE/N1.2群に比べ高値を、グリコーゲン、DNA及びRNA含量で低値を示した。
8.筋肉中遊離BCAA濃度
Cal/N比300の条件下の筋肉中のBCAAの含量を表2-2-6に示した。
CRF群はNormal群に比較してI1e、Leu及びVal含量のいずれも低値を示した。TPN施行 群では、EAA群及びE/N1.2群のBCAA含量はE/N3.2群より低値を示し、E/N3.2群が最も Nromal群に近い値を示した。
考察
今回用いたCRFモデルラットは、外科的にネフロンの数を減らし、慢性的に腎機能を低 下させたモデルであり、腎不全モデルとして基礎検討で使用されている。本実験において、
本モデルの残存腎臓の病理組織を確認したところ、ほとんどの変化がび慢`性のものであり、
腎障害が局所でなく全体的に惹起され、安定して高いCre値とBUN値を示しCRFモデルと
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して妥当であることが確認された。また、本試験期間ではアミノ酸組成による腎機能への 影響は認められないことが確認された。
更に本CRFモデルラットは、体重の減少、各臓器重量及び窒素出納の低値、血液生化学 検査におけるTP、Alb、Tfの栄養評価指標が低値を認めた。また、血漿中遊離アミノ酸分 析ではNEAAの高値、Val/Gly比の低下が確認された。これらの結果は、臨床的な慢性腎不 全時の栄養状態をよく反映し、栄養状態の評価に適したモデルと言える。
腎不全患者に投与される窒素量は、患者の病態により異なり、種々の窒素負荷条件でア ミノ酸製剤が使用される。そこで、窒素負荷量をCal/N比900,600,300の3条件とした 場合のアミノ酸組成による栄養学的効果、特に窒素代謝改善効果に対する影響を検討した。
体重や臓器重量の結果はE/N32と1.2群との間に差は認められなかったが、累積窒素出 納は、全てのCal/N比の条件下でE/N3.2群がE/N1.2群に比較して体内への投与窒素の保 持効果が高いことを示し、蛋白合成の鋭敏な指標として用いられるTfも同様の結果を示し た。Tfは肝臓で合成され、Albなどと同様にネフローゼ症候群時に、体外へのタンパク質 漏出による血漿中濃度の低下が報告され25)、栄養指標として用いる場合には注意が必要で あるが、本モデルでは血漿中Cre濃度推移に各輸液群間に差は無く、腎不全悪化による尿 へのタンパク質漏出とそれに伴う血漿中Tfの変動は否定されるため、アミノ酸組成による 栄養状態の改善効果の差を示していると考えられる。同じ肝中蛋白であるAlb値がTfの結 果ほど明確でなかったのは、その半減期がTfに比較して長期であるとためと考えられる。
一般的には、BUN値は血漿中Cre値とともに腎不全病態の指標として用いられる。しかし、
今試験の血漿中Cre値から群問の腎機能に差がないことが示唆されることより、同一Cal/N 比群間のBUNの差は脱アミノ化反応による影響としてみる事ができるであろう。つまり、
投与されるアミノ酸に由来する窒素量が一定で、窒素排泄能が一定ならば、窒素異化の最 終産物である尿素窒素の値は、アミノ酸異化の量を反映していると考えられる。その仮定 にたつと、投与アミノ酸組成によるBUN値の差は、アミノ酸組成が脱アミノ化に影響を与 えていることを意味する。
このことから、アミノ酸組成による窒素出納の差は、蛋白合成とアミノ酸の脱アミノ化 のバランスによるもので、お互いに相関し、今回用いたいずれのCal/N比の条件下でも E/N3.2のアミノ酸組成がE/N1.2のアミノ酸組成に比較して蛋白合成の高まりと脱アミノ化 の抑制による窒素バランスの高値を示し、投与窒素量による差は認められなかった。
先の2章1項で示したようにEAA製剤投与による高NH3血症が本試験でもCal/N300の条 件下で確認された。これまでのEAA製剤による研究において、Cal/N比500以上の窒素負荷 の少ない条件下では、血漿中NH3の高まりは確認されなかったことより、EAA療法における 高窒素負荷条件下でのみ高NH3血症の発現が認められることが明らかである。さらに、本試 験で、高窒素負荷条件下のEAA製剤投与時に、NH3、オロチン酸及びUNの尿中排泄が多く、
累積窒素量が他のNEAAを含む輸液に比較して最も低値、また解剖時の血漿中Arg濃度が低 値であることが確認された。これらの結果はEAA製剤中にArgが配合されていないための