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動物種による慢性腎不全時のアミノ酸効果

ドキュメント内 召一一一辨》壜諦》・一一一 (ページ 110-132)

緒言

医薬品の開発において、臨床試験に先立ち、またヒトでは検証が難しい試験に対して動 物実験が実施され、安全性・有効性が確認される。しかし,ヒトと実験動物の体内動態、

代謝また、生体成分に関してはその必要栄養素には相違があり,動物実験の結果を単にヒ トに外挿できないことがある。そのため、数種類の動物種においてその安全性、有効性が 検証されるが、これまで腎不全病態時の投与アミノ酸組成による影響はラットでのみ実施

され、他の動物種による違いは十分に検証されてきていない。

これまで、ラットにおけるCRFモデルとして7/8腎切除モデルを用いてきた。このモデ ルは、外科的に腎の皮質を切除することで作成するが、止血のため止血剤とともに圧迫に より止血を実施した。ラットの腎臓は19前後で、血圧も低く、止血が可能であった。し かし、イヌ、ウサギでは腎臓の大きさも大きく、ラットと同様の腎皮質の切除の作成は困 難である。そこで中型動物のCRFモデルとして腎動脈の一部を結紮することでCRFモデル が報告されているが、本モデルの栄養評価モデルとしての有用,性は不明である。

そこで、今回イヌ及びウサギを用いた腎動脈一部結紮モデルによるCRFモデルを作製し、

アミノ酸投与による栄養評価モデルとしての妥当性を検証し、さらに投与アミノ酸組成の 影響を検討したので報告する。

1)イヌを用いた検討 実験材料及び方法

1.動物

雄性ビーグル犬(TOYOビーグル、OBC、4.5~6.0月齢)は3週間の検疫終了後3週間の 予備飼育を実施し、順調に体重増加が認められた個体を実験に供した。飼育室の環境は、

温度23±3℃、湿度55±15%、明暗周期12時間(明期は7:00~19:00)とし、動物はイヌ単 飼育用金属ケージに個別に収容した。餌はイヌ用固形試料(TC-1、マルハペットフード)を 1日1回与えた。また、水は自由摂取させた。

2.モデルの作成及び被験液投与方法

7/8腎動脈結紮犬を金井らの方法')に準じて作成した。すなわち、ネンブタール麻酔下 に右腎の摘出と左腎の3/4を支配している動脈を結紮し、CRF犬として実験に用いた。同 時に、シリコンラバーカテーテル(SILASTIC,DowCorning社)を右外頚静脈から挿入し、

上大静脈内に留置した。被験液の投与は留置したカテーテルを通して、輸液ポンプ(キヤ リカポンプCP-136、ニプロ)により行った。モデル作成後被験液投与まで、摂餌下に中心 静脈カテーテルから5%グルコースを50ml/kg/dayの速度で投与してカテーテルの確保を行 った。被験液は群分け時より1日目まで50,1/kg/day、l~2日目は75ml/kg/day、それ以

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降lOOml/kg/dayの速度で10日間投与した。なお、必須脂肪酸補給の目的で10%脂肪乳剤 (10%イントラリポス、ミドリ十字)2ml/kgを被験液投与開始時、4日目及び8日目に投与し た。被験液及び脂肪乳剤の投与量は被験液投与開始時の体重に基づいて設定した。

3.被験液と実験群

被験液はTPN基本液としてパレメンタールA、Bを用い、これにアミノ酸輸液は市販の EAA製剤、FAO/WHO製剤(E/NL2)及び先の試験で腎不全時の有用性が示唆されたアミノ酸 輸液(E/N3.2,自家調製品)、ビタミン剤として総合ビタミン剤であるソービタ、微量元素 製剤としてエレメンミックを配合し、各被験液は非蛋白性カロリー/窒素(Cal/N)比300

とした。被験液の組成を表5-1-1に示した。

実験群は、EAA群、E/N3.2群、E八1.2群の3群(各群5頭)とし、CRF犬に各被験液を投 与した。なお参考のため、CRF犬及び同時入荷の健常犬に固形飼料(TC-1)を摂取させた CRF対照群及びNormal群(各群5頭)を設けた。

モデル作製術6~8日後に、血漿中Cre値を指標として群間に偏りがないように群分けを行 った。

4.実験プロトコール

試験スケジュールを図5-1-1に示した。

試験期間中、イヌの状況確認を毎日実施すると共に、被験液投与開始日、2,4,6,8,

10日目に前腕正中皮静脈より採血し、血液生化学分析、血液学及びアミノ酸濃度測定に供 した。また、試験期間中毎日、尿量の測定と採取を行った。なお、摂餌群は摂餌量及び糞 採取も行った。

試験終了日にネンブタール麻酔下、頚動脈より放血致死させた後、肝臓、腎臓、腓腹筋 を摘出し、湿重量を測定した。血液は、一部、血液学測定用に供し、残りはヘパリン処理 後常法に従って血漿を得た。得られた血漿は血液生化学検査及び血漿中遊離アミノ酸分析 のサンプルに供した。肝臓及び腓腹筋は分析まで-80℃で冷凍保存した。

5.測定項目 1)血液生化学検査

血液生化学検査及びアミノ酸分析用サンプルはヘパリン処理下にただちに血漿分離し、

Cre、BUN、NH3、TP、Albを日立7150-E型自動分析機(日立製作所)を用いて、また血漿中

アミノ酸濃度は、常法に従って除蛋白した後、アミノ酸分析装置(JCL300、日本電子)に より分析した。

2)尿中成分及び糞中含有窒素

被験液投与期間中、24時間蓄尿を総窒素、NH3、UN及びオロチン酸分析に供した。なお、

CRF対照群及びNormal群は、糞中の窒素量も分析した。

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総窒素量はNコーダー(MTl600型、柳本製作所)で分析した。窒素出納の算出は各被験 液投与群では投与総窒素量と尿中排泄総窒素量の差として、またCRF対象群及びNormal 群では、摂餌窒素量から尿中排泄総窒素排泄量及び糞中総排泄窒素量を差し引いて求めた。

尿中NH3は酵素法、尿中窒素量はUrease-GLK法により日立7150-E型自動分析機(日立製

作所)を用いて分析した。また、オロチン酸はStajnerらの方法2)によって測定した。

腓腹筋中のアミノ酸含量は常法に従って除蛋白した後、アミノ酸分析装置(JCL300)によ り分析した。

3)組織学的検査

本試験のCRFモデルを評価するためにCRF対照群とNormal群の腎臓の組織学的検査を 実施した。腎臓は10%中性緩衝ホルマリン液で固定し、固定終了後常法に従ってパラフィ ン包埋し、薄切組織切片を作製した。切片はhematoxylin・eosin染色、アザン染色、PAS 染色及びアリザリンレッドS染色を施し、組織学的検査を実施した。

4)アミノ酸パターン類似性

各TPN群の血漿中遊離アミノ酸パターンのNormal群に対する類似性をpattern similarity(PS)法3)を用いて算出した。以下にその計算式を示す。

II

S(A,B)==cosO==Zai

i=1

.bi/、r2ai2・r2bi2

i=1i=1

比較する2つの血漿中遊離アミノ酸濃度A(a,,a2,a3.・…an)とB(b1,b2,b3..…b、)との類

似性を平面座標に各アミノ酸ごとに(ai,bi)をプロットして得られる一時回帰直線(原点を

通る)の相関係数によって得た。cosOはO~1で、cosO=1は各実験群の血漿中アミノ酸 濃度パターンとNormal群のアミノ酸濃度パターンが完全に一致したことを、cosO=0は 全く類似していないことを示している。

6.統計解析

各群の数値は平均±標準誤差(S、E、)で示した。有意差検定にあたり、EAA群は被験液 の投与に伴う脱落例が多く、有意差検定の実施が不可能であったため、検定から除外し、

E/N3.2群とE/N1.2群の2群問で有意差検定を行った。

有意差検定は、まずF-testによる等分散分析の検定を行い、等分散ならStudent’s t-test、不等分散で自由度が同じならばAspin-welchの方法、自由度が異なる場合は Cochran-Coxの方法で行った。また、参考のためCRF対照群とNormal群の2群間比較も同 様の検定を用いて行った。

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結果

試験期間の管理結果

10日間の被験液投与期間中、E/N1.2群で2日目、EAA群で5日目に各1例が輸液投与用 ポンプに起因すると考えられる被験液投与不良が認められた。これらの個体の被験液投与 不良日以降のデータは採用しなかった。

また、EAA群で7日目に1例の死亡確認と6日目と8日目に状態悪化による切迫屠殺を各1 例行った。これらの個体は全て死亡あるいは屠殺前日に嘔吐が認められ、また死亡前の採 血において血漿中NH3値が高値(lOOLLg/d1以上)を示した。これらの症状は被験液投与によ

る影響と考えられるため、死亡日までのデータを採用した。

体重及び臓器重量

被験液投与開始時から試験終了時までの体重変化量及び臓器重量を表5-1-2に示した。

10日間の被験液投与に伴い、TPN群の体重は減少し、腓腹筋重量も低値であったが群間に 差は認められなかった。

肝臓重量は、摂餌群間に肝臓重量に差は認められないのに対して、EAA群の生存のl例 は肥大を示し、E/N3.2群はE/N1.2群と比較し有意差が高値を示した。

腎臓重量は、Normal群に比べてCRF対照群は有意な高値を認めたが、E/N3.2群、E/N1.2 群はNormal群と同等の重量であった。

BUN及びCre濃度

BUN変化量及びCre値を図5-1-2に示した。BUNは被験液の投与により各群ともに低下し、

E/N3.2群はその低下が最も大きかった。Cre濃度は被験液投与開始後低下したが、各群間 に差は認められず、また投与期間を通じてCRF群はNormal群に対して有意に高い値を示し た。

血漿中蛋白質

血漿中TP及びAlbの変化量を図5-1-3に示した。

E/N3.2群は、TRAlbとも4日目まで低下したが、以後回復傾向を示した。ややばらつき があるものの、E/N1.2群、EAA群は、おおむね被験液投与期間を通じて低下した。

血漿中NH3濃度

血漿中NH3濃度の変化を表5-'-3に示した。

2日目よりTPN群で投与EAA比に比例したNH3値の高値が認められた。特にEAA群のNH3 値は、時間経過に伴い高値を示した。その後、状態悪化に伴う切迫屠殺のため低下した。

尿中尿素窒素とオロチン酸排泄量

TPN群の経日的な尿中UN及びオロチン酸排泄量を図5-1-4に示した。

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